第60話 素敵な贈り物

 私の秘密を明かした翌日となった。庭に出ると宝石博物館が完成していた。プレシャスと一緒に中へ入った。

「想像以上に素敵な感じになっている。イロハお姉様に感謝しかない」


「イロハ様も喜んでいると思います。今後は宝石を捜す旅に出るのですか」

「世界を楽しみながら宝石を探したい。プレシャスも一緒に来てくれる?」

「アイ様はわたしが守ります。アイ様と一緒に見る景色はわたしも楽しみです」

「この家を拠点にして、イロハお姉様の世界を楽しみたい」


 見たことのない景色や宝石が私を待っている。プレシャスと話ながら、宝石博物館の確認が終わった。

 昼食を食べてからハンターギルドへ行った。


 上位魔物の消滅を受けて酒場は賑わっていた。リリスールさんやライマインさんも昼間から酒を飲んでいた。コララレさんを含めて知っているハンターはみんな無事だった。

 私はパメナナさんと一緒に踊った。酒場の盛り上がり方が凄かった。踊り終わると食事をご馳走してもらった。


 ハンターギルドを出ると神殿へ向かった。

 神殿に避難した人たちはほとんどが帰っていた。イロハ様へお祈りする人たちは後を絶たなかった。ターランキンさんは忙しかったので挨拶だけして家へ戻った。


 後日、畑仕事を手伝ってくれたライマインさん、お世話になっているリリスールさんたちを家に招待した。手料理をご馳走したら喜んでくれた。

 上位魔物が消滅してから何日も経過した。街のお祭り騒ぎも収まって普段通りになっていた。今日はマユメメイたちを家に招いて手料理を振る舞う。畑で育った野菜を使って料理を作った。


 マユメメイたちが家に来た。テーブルのある部屋に案内して食事も運び終えた。

「野菜は庭で育てたものよ。他の食材はプレシャスと一緒に近くの森で取ってきた。冷めないうちに食べてね」

「新鮮で美味しそうなの」

 マユメメイが料理を口に入れた。タイタリッカさんとキキミシャさんも食べ始めた。しばらくの間は野菜や料理の話で盛り上がった。


 食事が終わると自素石をテーブルの上に出した。蜜柑程度の大きさだった。気を失う前に入手して、そのまま私が持っていた。

「上位魔物の自素石よ。私にはどの程度の価値か分からない。成り行きで私が持っているけれど、如何すればよいと思う?」


「初めて見たが中位魔物よりも相当大きい。国宝級だ」

「魔法を付加したときの威力は想像もできませんわ。今までの常識が覆るかしら」

 白色の自素石は輝いているようにも見えた。


「過去にも上位魔物は出現したよね。そのときの自素石はどうしたの?」

「俺は知らない。消滅した場合は自素石が残らないと聞いた」

「ワタシも同じなの。聖女の魔法で魔物を弱体化できるけれど、消滅速度を進める程度なの。この自素石はアイに持っていてほしいの」


「俺の考えも同じだ。アイが持つべきだ。自素石は魔物退治した人間が獲得できる。下手に国で所持していると他国との均衡が崩れる」

 上位魔物の自素石はあまりにも貴重で強力みたい。他国への抑止力よりも自素石を狙われる可能性が高そう。


 上位魔物討伐には私の名前は出ない。私なら二人の女神様が守ってくれる。私が持っているのが安全かもしれない。

「嬉しい。お言葉に甘えて私がもらっておくね。収集部屋に保管するから盗まれる心配もないよ。宝石と一緒に飾ったら綺麗そう」


 イロハ様の世界にある宝石はまだ持っていない。旅に出たらいっぱい集めたい。

「アイに贈り物があるの」

 マユメメイがテーブルの上に小箱を置いた。革で作られた小箱で高級に見えた。マユメメイは小箱を私の前に移動させた。


「開けても平気?」

「早く開けてほしいの。アイなら気に入ると思う」

 手にとって小箱の上蓋を開けた。息を飲んだ。心が躍った。

「ハートシェイプのオパールね。幻想的ですごく綺麗な輝き」

 ルースで入っていた。見事な赤斑だった。顔の向きを変えて斑の動きを楽しんだ。


「喜んでくれて嬉しい。ワタシのお気に入りルースなの。王都ザイリュムから運んでもらった甲斐があったの」

「マユメメイからの贈り物。私の宝物よ」

「俺からも宝石を贈ろう。上位魔物を消滅させた祝いだ」

「わたくしからも宝石がありますわ。アイさんの好みなら嬉しいです」


 タイタリッカさんからはエメラルドカットのエメラルドを受け取った。キキミシャさんからはオーバルカットのルビーだった。どちらも綺麗なルースだった。

「嬉しい。一度に三種類も宝石が増えた。今日のこの瞬間は一生忘れない。三人ともありがとう。この宝石を宝石博物館に飾っても平気?」


「どのような建物なの?」

「宝石を展示するためよ。庭に新しい建物があるよね。あれが宝石博物館。私一人で宝石を眺めてもよいけれど、多くの人に見てもらいたい。だからイロハお姉様に造ってもらった。もちろん盗まれる心配はないよ」


「アイが展示したいのなら構わないの。イロハ様が造ったのならワタシも嬉しいの」

「大事にするね」

 箱からルースを取り出して何度も宝石を眺めた。どの宝石も素敵だった。イロハ様の世界に来て初めての宝石だった。宝石をたくさん入手してイロハ様の世界を楽しみたい。

 その日は夜遅くまで、プレシャスと一緒に宝石を語り合った。


(第1部 了)

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異世界女神様に溺愛された ~アイは宝石魔図鑑で世界を楽しみます~ 色石ひかる @play_of_color

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