終末ライフ
らん
第1話 目が覚めると
冷たい木の感触を感じる。
その木は自然に生えた木ではなく人に作られた木だ。
「んぁ〜?」
目を開けるとそこには見知らぬ景色が広がっていた。
規則的に並べられ木製の机と椅子、棚に並べられた何種類もの珈琲豆、そこは知らない喫茶店だった。
店員やお客さんがいる気配はしなかった。
ふと、自分がさっきまで寝ていた机を見る。
そこには1枚の文字の書かれた白い紙が置かれていた。
俺はそれを手に取り、書かれた文字を読む。
・この世界は君たちの暮らしていた世界では無い。
・この世界には君たちしか存在しない。
・この世界はあと100日で終わり、もし世界が終われば君たちも死ぬ。
・世界の終わりを防ぐにはどこかに隠された“救いのお守り”を見つけなければならない。
白い紙には無機質な文字で4つの情報が箇条書きで書かれていた。
「どういうことだ?それに君たちって...」
そう思っていると俺は机を挟んだ向こう側に一人の少女が眠っているのに気がついた。
白いパーカーを着ていて、黒髪で長さは短い、体は俺より小さいが恐らく歳はそんなに離れていない。
しかし、俺の知っている人じゃなさそうだ。
だが、とりあえず今は寝かせておこう。
「さて、何から始めよう。俺はそもそもなんでここに来た?」
過去の記憶を辿ってみる。
確か、今日は学校があった。
でも別に特別なイベントがあった訳じゃない。
それで、学校が終わって家に帰った。
確か家に帰ったあとは眠くてすぐ寝た気がする。
そして起きたらここに居た。
ダメだ。なんでここに居たのか全くわからん。
そもそもこの紙に書いてあることが本当なら考えるだけ無駄だ。
現実じゃありえないことばっか書いてある。
多分、不思議な力で連れて来られたんだろう。
「とりあえず、まずはこの世界でどうやって過ごすかだな」
見た感じこの喫茶店の外にも人はいない。
となると電気とかは使えるのだろうか。
電気だけじゃない。
ガスや水道、インターネットだって使えるか分からない。
今までのような生活はできるのだろうか。
「まずは店内を回ってみるか」
そう言って俺が椅子から立ち上がろうとしたその時、
「ん...ここどこ?」
後ろから声が聞こえた。
声は俺じゃないもう1人の少女から出たものだった。
彼女が起きて顔を上げてくれたおかげで彼女の顔立ちも分かった。
彼女は結構可愛い。
どうせならもっと他の形で会いたかったぜ。
「おはようございます」
一応挨拶はしておく。
「おはよう...ございます。えっと私、寝ちゃってました?」
少女は不思議そうな顔で訊く。
「まぁ、ぐっすりと」
「それはすいません。もう帰らないと」
彼女はそう言って椅子を立ち上がる。
さっきは座っていて分からなかったが、彼女は黒いロングスカートを履いていた。
彼女はそう言ってこの喫茶店を出た。
しばらくして、彼女は俺のところに戻ってきた。
そして申し訳なさそうな顔でこう訊いた。
「あの、ここってどこですか?」
残念。
俺も分からない。
「さぁ。僕も目が覚めたらここにいたので。とりあえずこの紙を読んでみてください」
そう言って、俺はさっきの白い紙を渡す。
彼女は紙を取り、書かれた文字を読み始める。
「へ?どういうこと。この世界はあと100日で終わるとか、救いのお守りとか、なんの事?」
彼女は呟いた。
「僕も詳しい事は分かんないですけど、多分書かれてることはイタズラとかじゃなくて本当のことだと思いますよ」
「それって結構まずいんじゃ...」
まぁ、まずいよな。
「とりあえず、まずはお互い自己紹介でもしませんか?」
今後のことについてはその後に話したっていいだろう。
「随分と冷静なんですね。まぁいいですけど。私は一ノ
一ノ瀬瑞希、か。
やっぱり名前も聞いたことないし、過去にどこかで会ったことあるわけでも無さそうだ。
「僕は
俺はそう言ってちょこっとお辞儀をした。
「年下だったんだ。これからしばらく一緒に行動しなきゃ行けなくなるだろうし、お互いタメ口にします?」
彼女はそう言って首を少し、右に傾けた。
「それじゃあ、よろしく瑞希」
「こっちこそよろしくね響くん!」
少女は微笑んだ。
やっぱりこの人可愛い。
「響くんはどこから来たの?」
「俺は岐阜県から。瑞希はどこ出身?」
「私は北海道の函館ってところ」
函館...
オシャレだな。
憧れる。
「やっぱりタメ口はまだ慣れないね」
瑞希は少し恥ずかしそうに言った。
「そうだね。まぁすぐ慣れるよ」
というか慣れて欲しい。
この世界には2人しか人間はいないのにその人間と距離があるままだったら寂しすぎる。
「話は変わるけどさ、救いのお守りっていうの聞いたことある?」
俺は瑞希に訊いた。
さっきの紙に書いてあったことが本当ならこの世界から抜け出す方法はただ1つ、救いのお守りを見つけることだ。
今はまだ余裕があるにしても、100日以内に見つけられなきゃ俺たちは死んでしまう。
早めに見つけておいて損は無い。
「その事なんだけどさ、私なんかの本で見たことある気がするんだよね。確か、どこかの街の西の方にある山奥の神社にそのお守りがあるとか...」
どこかの街の西の神社...
「ごめん。そんな曖昧な情報じゃなんも分かんないよね」
「いや、なんにも情報がないよりいいよ」
やっぱり、まずはこの世界のことを知らないとな。
「瑞希、少し外とかも見てみよう。何か手がかりがあるかもしれないし」
それにずっと喫茶店にいるのもなんか息苦しい。
「うん。そうだね!」
そう言って俺たちは喫茶店を出た。
終末ライフ らん @Ranruntarou-26
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