燦然(さんぜん)と輝く鐘楼の光
よろめきながら本堂に戻った新九郎は、正面の大きな
傷口にも似たその穴からあふれた
「おい……これは……これって……し……信じらんねえ……」
寺に貢献し、寺で死んでいった優しい尼や里人たち。
そして勇敢だった
かつてこの寺を愛した人々が怨霊となってさまよう姿に、心を痛めた本尊が、ついに老僧の形を取って
「
立ち尽くす新九郎の横顔に、凌介が静かに話しかけた。
「行きに日暮れの鐘が聞こえたよな。もしかしてあの老僧が
結局、過去にここを訪れた旅人の中に、無事に鐘を撞けた者はいなかった。皆、あのすさまじい怨霊の
ところが何かのはずみに外界に
怨霊の刃に立ち向かう力を持った武人たちを。
その前には旅の絵師が、鐘の秘密を描いた冊子を無事に
冊子と武人。どちらが欠けても鐘が
「和尚さんが言ってた。自分たちでは聞こえない、外界の人の手で撞いて欲しいと。そういうことだったのか。始めからはっきり言ってくれりゃ良かったのに……。」
新九郎が、じっと本尊を見つめながら言った。
「神仏が
珍しくまじめな真咲の声にかすかに笑うと、新九郎はぎこちなく背筋を伸ばし、本尊に向かって両手を合わせた。
「俺の一族は信心深くてな……。ありがとう、和尚さん。いや、ご本尊様。あなたに助けてもらった命、大切にするよ」
少し
朝日が照らす山中に、馬のいななく声がして、一隊の人馬が、にぎやかに
本堂から出てきた三人に、先頭の
「おい、どうしたお前たち、ぼろぼろじゃないか。なんだ
気が抜けて思わず笑い出す凌介。
半泣きで魂が抜けたような新九郎。
そしてこの上なく凶悪な
「
「なんだと? お前たち、よく探してくれたのか?」
「この寺の本尊様がそう言ったんだから、ねえんだろうよ」
「なに? 本尊様がそう言った??」
一瞬沈黙。
そして……
「もう少しでおっ
真咲の絶叫が、晴れた大空にどこまでも響き渡った。
【呪いの鐘撞堂・完】
呪いの鐘撞堂(かねつきどう) 甲路フヨミ @miyamakasumi
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