縁起の中に描かれた真実
それはまだ数年前のこと。
この地に
彼らは故郷と一族を奪った土岐氏を深く恨み、いずれ一矢を報いようと
その
里人と尼たちの
しかし、一昨年前のこと。
阿守氏の存在を脅威とした土岐軍が大挙して攻め寄せてきた。
寺は焼かれ、多数の尼と関わった里人たちが、反逆者として本堂で殺された。
最後まで
唯一、山上にあった
しかしその頃から、
里人は
そして
「戦世ではどこだってある光景さ。俺だって……」
言いかけた凌介が急に言葉を切り、二人に冊子を開いて示した。
真咲の胸が小さくうずいた。
凌介も同じく一族を
真咲の横で、新九郎は黙って
春、本堂。尼たちが熱心に
境内で走り回る子供たち。それに交わる地侍の姿。咲き乱れる美しい花々。
やがて沸き起こる惨劇。
土岐軍の襲撃。血まみれになった
赤子をかばい、背後から槍で貫かれた若き尼たち。
天を呪うように突き出された、老いた尼の細腕のこぶし。
それは、この寺に起こった悲劇の瞬間を、
「
「……知らなかった。同じ国、同じ時代に生きていたというのに……」
真咲が苦しそうにつぶやいた。
その言葉に新九郎も目を伏せたが……、
「ちょっと待ってくれ。ここにはあの老僧がどこにも描かれていない。じゃあ、和尚さんは……
「俺もそれを思ったよ。」
そこには四季の花咲き乱れる美しい
そしてその横に
「まさか……!」
不意に身を起こした新九郎は、驚く真咲の制止も聞かず、激痛の身体を引きずり上げるように
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