昼休みに栄光あれ

夏生 夕

第1話

あと、15分。

そろそろ準備するか。


踏んづけた踵を履き直し、机の下で足首をぐりぐり回す。

あの時計の針が90度進むと鳴るチャイムがゴング。鳴れば廊下は戦場だ。

あちこちから走り込む足音が地響きのように迫り、荒い息遣いが重なる。

思い出して身震い。



あと、10分。

経路確認。


黒板側の扉から出て東階段へまっすぐ、昇降口を突っ切り集会室前へ。

いや、昨日は少し人波に足を取られた。新作の上評判のせいなら、今日も同じだけ混むだろう。西を行こう。

急がば回れ。



あと、5分。

狙いを固める。


そう、目指すは新作。そして定番やきそばぱん、王道カレーぱん。ダークホースのコーンぱんも捨てがたい、あのプチプチ食感に甘味と塩味のハーモニーが素晴らしい。

いかん集中しなければ獲物を逃す。

深呼きゅ


「佐々木、聞いてるか!」



へぁ、


「はははぁい!!」


ゴングが鳴る。



しまった、待っ、あぁ!




あぁ私のホイップコーヒークリームぱん…。

明日こそ必ず仕留める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

昼休みに栄光あれ 夏生 夕 @KNA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ