エピローグ

『絶許団』との戦いは、俺と美雪さんの関係を深めるのに十分な出来事だった。


美雪さんのご両親は再び海外へ旅立った。どうやらまだ撮れ高が足りない、と番組制作会社から注文が来たらしい。

その模様は年末の特番として放送されるそうだ(美雪さんから聞いた)。


真紅郎は最近空手の通信講座を始めたらしい。

「また『絶叫団』みたいな奴らとやり合う事になった時の為に備えてるんだ」との事だ。


サクヤは…そういや最近見てない気がする。まあ、いつも通りどこかほっつき歩いてんだろう。


そして俺はというと……。


「タケル君、今日は何食べたい?」


美雪さんの家で一緒にご飯を食べている所である。


「じゃあ、ハンバーグとか」

「オッケー、任せておいて」


そう言って美雪さんはキッチンへと向かっていった。


「タケル君、ちょっといいかな」

「はい」


美雪さんはエプロン姿でフライパンで何かを作っている最中だったが、それを中断してこっちにやって来た。


「あのさ、タケル君……」


美雪さんの顔が赤い。


「私達って付き合ってもう結構経つよね?」

「そうですね」

「それでさ……」


美雪さんはそこで言葉を区切ると、深呼吸してから言った。


「そろそろタケル君の事、名前呼びしたいなって思ってたんだけど、どうかな?」

「えっ?」


俺は思わず聞き返した。


「だから、タケル君の名前を呼び捨てに……」

「あっ、そ、そうですよね…」



すると…呼び鈴が数回鳴った。


「誰かしら…」


美雪さんは玄関カメラの映像を見に行った。


「誰もいない?」


すると大きめにドアを叩く音が聞こえた。

俺も不審に感じ美雪さんと玄関に向かう。

ドアチェーンをかけたままドアを開くと…満身創痍のサクヤが壁に背中を預け、肩で息をしていた。


俺はその場で救急車を呼んだ。


その後、サクヤはすぐに病院に連れて行かれた。幸い命には別状は無かったがしばらく入院することになりそうだった。


数日後、個室に移されたサクヤに俺達は面会しに行った。


「タケル、美雪…心配かけたね」

「全くだぜ。お前ももう少し自分の身体を労わってくれよ」


俺の言葉を聞いてサクヤは苦笑した。


「いやー、今回ばかりは死ぬかと思ったよ……まさかあんなに強い奴がいるなんてさ……」

「どんな敵と戦ってきたんだよ……」

「実はね…」


それからサクヤはここ数日『絶叫団』の残党と抗争を繰り広げてた事を話した。

道理で最近見かけなかったわけだ。


「最初は『ラ・ペディス』に襲撃しに来た雑魚程度しかいないだろうとたかを括ってたら…この有様。情けない…」

「でも、生きて帰って来てくれただけで十分だよ」


美雪さんが言う。


どうやら、俺達に真の平穏が訪れる日はまだ少し先…。

上等だ、サクヤが完治したら今度こそ『絶叫団』を一人残らず地上から殲滅してやる。


「サクヤ、お前が退院したら俺と真紅郎と美雪さんとお前とで、最後の露払いするからな?」

「オッケー!」


サクヤは笑って力強く答えた。



完。

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ラ・ペディス 芥子川(けしかわ) @djsouchou

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