第2話

「ここは俺が抑える!そのすきにここから離れろ!」


「そんな事は出来ません!!」


「出来る出来ねぇじゃねだろが!俺たちがここで失敗すればどれだけの命が失われる?そんなこともわかんねーのか!!」


「でも…でも…」


「でもも、へったくれもあるか!!そう長くは持たんこれが最後のチャンスなんだ!早くいけ!!」


眼前に迫るS級モンスター。ここで引いてしまえば国が亡ぶ。何が起ころうと抑えきらなければ…


ひとたび足を踏み入れれば最後…誰も戻る事のない魔境にして聖域…喪失の森

その境界に位置する我が国は現在存亡の危機にある…

数日前に喪失の森とは反対側から大規模なモンスターのスタンピードが起こった。まだ国境まで距離があるとは言え喪失の森に逃げ込むことも出来るはずもなく…このまま何もせず滅びを迎えるか滅亡覚悟で迎え撃つ。の2択しかない。ただどちらを選んでも待つのは滅亡…そんな最中に神託が下りた。


“ 喪失の森の奥に救いの光あり その者漆黒を纏う ”


たったそれだけで詳しいことは何もわからない。しかし残された時間は少ない。向かう以外の選択肢は無いのだ…

森の奥には神の住まう場所があると言われている。実際に誰も辿り着いたことが無いので真相はわからない。だから単なるおとぎ話だと思われてきた。多分そこまで辿りつければ救いがあるのだろう。ただその場所まで辿り着ければの話であるが…


時間が限られている。スピード重視で移動しなければならない。大人数での移動は時間がかかりすぎる。そこで少数精鋭で向かう事が決まり、実力で右に出るもの無しと言われる者達が招集された。


英雄 聖女 賢者 堅牢 拳王 の称号持ち達とシーフ、ポーター、エンチャンターの世界でトップの実力を持つ計8名が招集された。


英雄の称号を持つこの国の第三王子、聖女の称号を持つ創生教の教主、賢者の称号を持つエルフ、堅牢の称号を持つドワーフ、拳王の称号を持つ獣人族、解除できない罠は無いと言われるホビットのシーフ、スキル・アイテムボックス持ちで無限の容量を持つと言われる人族のポーター、その双子の弟の一緒に組めば失敗する事が無いと言われるエンチャンター 


「この国…いや世界の危機に際し集められた者達よ そち達にこの世界の命運は託された。生きて戻れぬやもしれん…それでもそち達を送り出さねばならん…申し訳ない。その上残された時間も少ない…失敗したとて誰もお主らを責めわせぬ。しかし何としてもやり遂げてもらいたい…あらゆる支援はしよう。使えるものは何でも持っていくがいい 使命を全うし無事戻ることをすべての民が祈っておる。さあ行くがよい 時間は有限なのだから…」


その後早急に準備が進められた。宝物庫に眠る数々のマジックアイテム 伝説と言われる武器や防具 使えるものが全て与えられその日の夕刻には喪失の森に向け出発した


本来であれば夜間の移動など命とりだがそんな余裕はどこにもない。早急に移動せねばならない。皆が理解している。誰一人として弱音を吐かずただただ深部に向かって進んでいく。

そろそろ疲労に色が見え始める頃中間地点に差し迫ろうとしていた。本来であればモンスター等に襲われても不思議はないのだがここまで一度も遭遇する事なく進んでいる。

時間が無いとは言え疲労困憊では目的も達成できない。一度休憩をとるべきであろう。丁度いい具合にキャンプを張るには最適な場所を見つけた。水辺も近い。


「一度ここらで休憩を取ろう。疲れのせいで目的を達成できなかったなんて勘弁してほしいからな。それにお互いの事もろくに知らないままだと今後困る事が起こるかもしれない。ある程度はお互いを知っておいたほうがいいだろう。丁度いい場所もあるようだし」


「そうですわね。気を張りつめた状態ですと万全にとはいきませんものね。皆様いかがでしょう?」


「時間は少ないと言ってもそこまで切羽詰まっとる訳ではないしの。そろそろ腹も減った。腹が減っては何とやらと言うしの」


他のみなも頷いている。


「それではここで休憩とする。ポーター殿頼んだ」


そう言われポーターはアイテムボックから色々取り出した。

空間魔法を施されたテント 魔物除けの結界を張る魔道具 テーブルや椅子 魔道コンロ 暖かい食事など


「本当に便利なものだな。これだけの物が持ち運べるというのは。ましてや作り立ての料理まで出てくるとは」


出てくる料理をテーブルに並べ全員で席に着き食事を始める。誰一人話す事無くただひたすらに食事をする。全員が食べ終わり使った食器など片づけ魔道コンロで沸かしたお湯でお茶を入れる。


「さて…一応自己紹介でもするか…まずは俺から…」

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