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「……で、結局、お兄さまと未白先輩はどうなりたいんですか?」


 黒松みやびは、ホワイトココアチップフラペチーノをちゅーっとストローで吸いながら、訊ねてくる。


「まず、もともと俺たちは繊細な人間なんだ。ストレスに弱く、心拍数が上がると眩暈がして、気持ち悪くなってくる。そうなってしまうと回復までに大変な時間がかかる。ちなみに俺はまださっきのドキドキから回復していない。だから、熱々の抹茶ラテを味わうことができないでいる」

「その、ごめんね、堂島。胸なんて当てたりして。わたし、なんであんなことしちゃったんだろう……? 具合悪くなってきた……」

「ちょっと、おっきなお兄さんお姉さん方、二人揃って倒れないでくださいよ。まったく、赤ちゃんですか」

「赤ちゃんならまだいいよ。かわいいし。俺はもう高校生になるんだ。情けないよ。また眩暈が……」

「堂島が不安になってくると、わたしも……」

「ちょっと、ゲーしたいですか? 本当に調子が悪いようなら、自分で解決しようとしないで、病院で診てもらった方がいいですよ?」


 俺は軽く首を左右に振る。


「じつは、病院にもいったんだ。ストレスで心臓が痛くなるって。結果は軽い逆流性食道炎って言われた。けれど、もっと大きな原因がある気がする」

「堂島も食べたもの上がってくるの? わたしもなんだ。はー、なんか安心した。わたしだけじゃなかったんだ」

「うん、俺もちょっと落ち着いてきた。抹茶ラテ飲もうっと」

「おいしい?」

「ホッとする」

「よかった〜……」

「ちょっと〜、二人で仲良しこよししないでくださいよ〜っ! 老夫婦ですか!」

「年取ってくると落ち着くっていう話は聞いたことあるな」

「あ、わたしもある」


 いけない。二人の世界に入っていたら、黒松みやびがぷくーっと頬を膨らませてしまった。


「微笑ましいです。日本はストレス社会ですよ? 社会人になったら、もーっとたくさんのストレスを抱えることになります。緊張したら眩暈がしてきた。温かい抹茶を飲んだらホッとした。よかったね? ねー、なんて言ってたら、時の流れに置いてかれちゃいますよ」

「もっとゆっくりしていいと思うんだ」

「わたしもそう思う。わたし自身、焦りやすい性格で、苦労してきたからさ。急かしたりされるとうずくまってしまいそうになる」

「もーう、かわいいーっ! でも、未白先輩。お兄さまはわたしがちゃんと面倒見て、立派な夫にしますからね」

「みやびちゃんも俺たちと一緒にゆっくり生活しようよ」

「そうそ。競争は疲れちゃうからね」

「はー、ダメだこりゃ……」


 黒松みやびもぐでーっとなってしまった。


――――――

 あとがき


 気持ちを言語化することで僕もchillってます。

 皆様も今夜、ゆっくり休めますよう願っています。

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無感情な金髪金眼の美少女が俺の前だけ照れるんだけど りんごかげき @ringokageki

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