やめろーっ!ソシャゲ広告は人を傷つけるためにあるんじゃない!
ギヨラリョーコ
第1話
「現在のソシャゲクソ広告バトルの環境デッキとはなにか?」
辻ソシャゲクソ広告バトルの横行する治安乱れた街、その路地裏でフィールドとなる展開型巨大液晶画面を挟んで二人の男が立っていた。
「その問いに対して、君のデッキは非常に美しい――そして非常に醜悪な解を出した」
フィールドに並ぶ様々な絵の描かれた、無数の正方形のパネル。その上には「Tap the panel!」の文字が大きく明滅していた。
列をなして徐々に告に迫るパネルのうち、同じ絵をタップすることでパネルを消去できるタイプのカジュアルゲームである。
規定ライン、この場合は告の立っている場所までパネルが達すればゲームオーバー。告に大きなストレスダメージを与えるだろう。
告がそのうちの一枚、猫のパネルに触れた瞬間――出現した「ダウンロードはこちら!」のポップアップが告に直撃しライフを削る!
しかし告は完全にそれを予見していたかのように泰然とした態度を崩さない。
「一見ゲームの体験プレイを促す類の広告と見せかけて、その実そのような機能は一切持たない、ただタップしたものにダウンロードリンクを踏ませるためだけの広告。意図せぬダウンロードページへの遷移によるストレスダメージと、リンクを避けてもゲームオーバーを見守るしかないため生じるストレスダメージという、隙を許さぬ二段構え。実に素晴らしい、考えつくされた戦略だ」
「何を御託を並べている? 現に貴様のライフは半減、このままもう半分を次のターンのゲームオーバーによるストレスダメージでいただく!」
対戦相手は吠え、パネルたちは加速する。
しかし告はその佇まいを崩さない。
ただ、その眼鏡の奥の目には、炎が燃えていた。
「僕の答えは違う」
告の展開した広告が、フィールドに広がっていく。
相手の展開したものに酷似した、絵の描かれたパネルが無数に並ぶものだ。
絵はすばやく何かを暗示するかのように明滅しシャッフルされる。
その動きに誘われるように、対戦相手の手がフィールドへと導かれていく。
「手が、勝手に……!」
指先が2枚の猫の絵のパネルに触れた瞬間、男が身構えていたようにポップアップは現れず、代わりに軽快な音を立ててパネルが消失し、男のライフが加算される。
「なぜライフを回復させる?!」
疑念に満ちた言葉とは裏腹に、男の手は次々とパネルをタップして消去していく。
素早い消去によりコンボが決まり、ライフはさながら数字マージゲームのごとく倍々に増えていく。
告はその姿に、指を突き付ける。
「僕の広告は展開される絵のパターンによってサブリミナルに視聴者の手を動かし、ゲームを体験させる。ひとが最もストレスを感じるのは、期待を裏切られた時だ。動くと思ったものが動かない、体験できると思ったものが体験できない、そんなストレスを与え好感度を下げるなど僕の広告はしない!」
男のライフが16桁に達したとたん、ライフゲージの色が反転し、表示が「-1」へと切り替わった。
「強制的な体験によってゲームの面白さに没入させ、過剰回復させたライフをオーバーフローさせるだと?!」
「僕の広告はソシャゲ広告バトルを破壊する。そのために生みだした」
「YOU LOSE」の文字が踊り、対戦相手の男は喉から血を吐いて倒れ伏す。
「てめえの広告……違法じゃねえか……」
相手の断末魔になど耳も傾けず、告は踵を返して歩みだす。
ソシャゲクソ広告バトルのもたらすストレスが跋扈する、悪夢の街へ。
「このふざけたソシャゲ広告バトルは、俺が終わらせてやる」
告のソシャゲ広告バトル破壊道は始まったばかり!
次回「テレビじゃなければサブリミナルは違法じゃないのか?! いや倫理的にまずくないか?!」スタンバイ!
やめろーっ!ソシャゲ広告は人を傷つけるためにあるんじゃない! ギヨラリョーコ @sengoku00dr
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