夜の散歩
夜の散歩は私の日課である。いつも親には危ないといわれているけど、やめられない。イヤホンを耳につけて歩く。大音量にして周りの音が聞こえないのも怖いので昼間より音量を下げている。
なんか、前住んでいた町から引っ越してきたみたいだ。知らない町、知らない風景、知らない友人、クラスメート。ただ、違わないのは私と両親、あとゆうき。
家が建っている場所は住宅街ど真ん中なので、大きな公園などはないが、小学生が帰ってきてすぐ集合場所に使われそうな小さな公園を見つけた。
ブランコ、滑り台、砂場にシーソー。小さなころはよくこんな公園でみんなで集まって遊んだな。そう思いながら、もう今の私には小さくなったブランコに腰かけて休憩する。まあ、家から全然歩いてないし、疲れてはいないんだけど。
ほんとに現実みたいだ。ここにきてから何回そう思っただろうか。けがをすれば痛いし、人との会話も前と変わらない。両親もなぜかいつも通りだし、平然と世界は回り続けている…。なんちゃって。
とにかく、ゲームの中だなんて信じられないほどによくできている。現実と違うのはゲームウィンドウが出てくることと、リトライできること。でも、できればあのつらさはもう経験したくない。あの時は体中の水分が汗として全部出てしまうかと思った。
それ以外は現実と一緒。リトライもしなければいい話。現実に何で戻りたいのかわからなくなってくる。ここは快適だ。しかもうまくいけば、好きな人だってできるかもしれない。前の生活では全然色恋沙汰は起きなかったし、恋バナなんて、人のを聞いるだけで終わっていた。
一人で悶々と考えていると、自分のプレイリストが一周してしまう。夜にあった静かな曲を選んで、いつもそれが一周したら帰ることにしている。散歩した後はすっきりした気分で家に帰れるのに、今日はなんだか沈んだ気分だった。
リトライしますか? Scent of moon @twomoons
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