元いじめられっ子の異世界転移者は、異世界という現実を謳歌する!

あずま悠紀

第1話


私は高校生だ。いじめられていた私を助けてくれた友達がいる、そんな彼と同じクラスで嬉しいなと思うけど恥ずかしくて声をかけれずにいた。そんな私の元に、今日突然彼が来て、「放課後、校舎裏に来て欲しい」って言われた。もしかして告白されるのかも!と思って胸がときめいてしまう。彼はモテるから私なんかよりいい子が現れるんじゃないかと思っていたし。だけど違ったみたい。なんだろうと思ったら、私の机に落書きしてあって、『消えろ』『死ね』とか色々書かれてる。私が驚いているとその犯人らしき女子たちがこっちに来たんだけど、私に向かっていきなりビンタしたんだ!痛い! それで私が泣いてしまったら「あんたなんて死んじゃえばよかったんだよ!」と言って去って行った。悔しかった。だって私何も悪い事していないもん。どうしてこうなっちゃうのかなぁ?誰か教えて欲しい。

でも誰も助けてくれなかったよね。まあそうだよ、私が悪いもん。どうすればいいか分からなくなって泣いた時、一人の男の子が近づいてきたんだ。

えっとね、それが私を助けてくれた友達なんだ。彼は私に手を差し伸べてくれる。でも怖くなって私は手を振り払ったんだ。もうどうしようもないくらい惨めで悲しくて涙が出て来ちゃったんだよね。

そうしたら今度は優しく抱きしめられた。ビックリしちゃった。男の人に抱き着かれた事がなくて。それに彼はこんな風に言ってくれたんだ、「辛かったね、君は何も悪くない。俺に任せろ。君は絶対に守ってやるから。」って言われて嬉しかったなぁ。彼の腕の中で安心できたのは初めてだよ。その後一緒にお話してくれたんだ。凄く楽しい時間を過ごしてから別れたんだよね。また会えるといいな。その時はいっぱい甘えてみたいな。じゃあ明日は良い日になると良なぁ。


***

この物語は実話です!皆さん、もし同じ目にあった方がいらっしゃいましたらコメントよろしくお願いします!

「おい聞いたぞお前ら!あの男に告白されたらしいな!」

はっ?何を言っているんですかねあなたたちは? 確かに昨日の出来事でクラスメイトからはチヤホヤされたが俺は違うんだよ。だから俺じゃない。そもそもあんなイケメンのあいつに彼女ぐらいいて当然だと思うけど。そう思ってみんなを見ると全員こちらを見てきた。うん分かってますよ。俺が悪いってことはちゃんと理解しております。はいごめんなさい!謝ればいいんですよね!?許してくれよー!! それから俺と彼女が付き合った噂が広まりまくっていたのだが、なぜか学校中に広がってしまい。他の学年にも広まったようで今朝登校すると「あれって一年の女生徒と一緒にいなかったか?」という質問が飛び交っていたのであった。

「おはよう。やっと来たのかい。遅いじゃないか全く。さてそれでは本日の議題を発表しようと思うがよろしいかな? 」

何これ、どういうこと? 確か今は放課後で生徒会の仕事中だったはずだよな。そして目の前には副会長がいたはずなのになぜか生徒会室には誰もいないのに、どこからか会長の声が聞こえるんだが気のせいだろうか。

ちなみに今日の仕事は特に無く解散になったので、そのまま帰宅していたのだが何故か家に帰れなかったので、仕方なしに学校の図書館でラノベを読破しながらダラダラ過ごしていてたのだ。そしたらいつの間にやら周りは真っ暗になっていた。

しかし何故だ、おかしい。いくらなんでも時間が過ぎる速度が速すぎるだろう。一体ここは何処なのか。

「聞いているのか佐藤裕樹。まさか私の言葉を無視しているわけじゃなかろうね」

おっと、どうしようもないし返事してみるしかないだろう。無視するほうが後々大変なことになるかもしれないし。まあ一応念のためだな。もしかしたらドッキリとかかもしんねーし。よし行くぞ。

「えぇ、はい、勿論聞こえていますとも。ただ突然の事なので少し混乱してしまったのです。申し訳ありません、会長。それでですね。先程お聞きしたのですが何についての会議だったのか教えていただけませんでしょうか。」

「ああ、そう言えばまだ何も伝えていなかったのだね。すまなかったよ。それはね君と私の今後の付き合いについてを話し合おうと考えていたのだ。」

んっ?なんかよくわからないことを言い出したんだが大丈夫なんだろうか、この人。ちょっと頭が逝ってる感じなんですかねぇ。

「はい?会長、仰っている意味がよく分かりませんでした。もう一度説明をしていただいても宜しいでしょうか?」

流石の会長も俺の反応に疑問を持ったらしく再度説明するようだ。だが、しかし残念ながら今ので分かった奴はいないだろうな。だって俺は普通の感性を持っている一般人なのだからな。ふっ。

「君は鈍いなぁ。だからね、私が君のことが好きになって告白しちゃったじゃん。それでOK貰えたけど私はまだ諦めていないよ!君の恋人の座を狙っちゃうもん!ていう事を言いたかったんだよね」

ええええ、マジすかぁー!? どうなってるの?俺はどうすればいいんだよぉ。助けてくれー! もう誰でもいい、助けてくれ!

「お待ちください!会長さん!その話は本当なんですか? だとしたら私は絶対に許せませんわ!この男は私たちが必死こいで頑張って作り上げた生徒会を壊しかねないですもの!」

え、今の発言は書記の先輩ですよね。でもその発言を聞いても会長は全く動じずむしろ余裕そうな表情をしているぞ。これは不味い。このままだとこの人も何かしてくるんじゃないか。

それにしてもあの二人っていつも喧嘩している気がするが、仲が良かった記憶があるんだけど俺の記憶違いかな。とりあえず俺のことはどうでもいいとして早くこの状況から抜け出す方法を考えておかなければ。どうする。そうだ!この方法ならうまくいきそうだ。

よし決めた、この勝負、受けて立ってやるぜ。でもどうやって戦う?俺にできるのなんてせいぜいラリアットかヘッドバッドくらいしかないんだけど。でも俺が出せる最高技で攻めるしかあるまい! 覚悟しろ! 俺は右手を前に出し腰を深く落とし右足を引く構えを取った。

これが俺に出来る全力での戦闘態勢である。俺が出すことができる最強スキルで会長の首を刈り取ってくれようか! ***

「いいでしょう、その挑戦受け取って差し上げます。あなたの首、頂きます」えっ!?俺に戦闘経験なんてほとんど無いんだが、この人本当に勝てると思っているのか?いやでもここまでやって何もしなかったら負けてしまうだろう。もうこうなったらヤケクソじゃ!こうなりゃ最後まで突っ走るのみよ!俺に残された選択肢はそれだけだ!行くしかない。

まずは右ストレートからのアッパーだ! くらえ!必殺 昇〇拳!!!!!!!! どうなるんだ。頼む効いてくれ!俺の最後の攻撃なんだ、どうか俺の願いを聞き入れてくれ。そして会長の方を見てみると。

あれ?いない。どうしてだ?どこに行ってしまったんだ?それにしても良いパンチが決まっていたはずなんだが。なぜ倒れてないんだ。それにしては音が小さかったしダメージを与えられて無かったのだろうか。だが確実に直撃のはずだった。

もしかして、あれか?やっぱり現実ってゲームとは違って難しいんだなぁ。はぁ。現実は非情だ。やはりラノベの世界の方が現実より断然面白いということか。これから現実を生きる俺としては、夢を壊されてとても残念だよ。


***

ははは、何を言っているんだね彼は。私を殴ろうとした?ふざけてるのかね、全く。私の力を理解していなかったのか?私は最強の人間だよ?そんな私が、こんな小物風情にやられるわけないだろう。私を倒したいならばそれこそ勇者クラスを持ってこないとダメに決まっているだろう。そんな事もわからなかったのか? 全く最近の若者は何を考えているのか分からないね、全く嘆かわしいことだ。こんなんじゃあ私がわざわざ相手をする必要はないだろう。さっさと終わらせるか。でも彼は私のことを勘違いしているみたいだし、それを訂正するためにもう少し遊んであげようかな。まあ彼でも楽しめるような簡単なものにしようか。私は指一本だけ立てて彼を挑発した。これで乗ってきたらすぐに終わるだろう。

さあどう来るか。お、早速きたようだね。彼が繰り出してきた攻撃はただの腕を振り下ろすだけの動作だったがそれでも凄まじいスピードであり、しかも一撃がとてつもなく重いのがわかるほど洗練された動きだった。なかなか良い攻撃をするじゃないか、これは楽しめそうだ。私はわざと避けずに受け止めた。彼はきっと困惑していることだろう。何せ自分の必殺技が完璧に決まったと思ったのにも関わらず受け止められたのだから。そしてそのまま彼にカウンターをお見舞いしようと殴りかかる。彼はギリギリ反応できていたがかなり焦っていたので私のフェイントにも対応できずに吹き飛ばされた。

それからしばらく攻防が続いたがお互い決定打が無く決着のつけどころがないまま時間だけが過ぎていきついに制限時間が来て終了してしまった。

今回の件で私と彼は恋人関係ということになりました。はい、会長と戦わされたせいです。だってしょうがないだろ、いきなり襲いかかって来たんだぞ!?それにあのまま逃げ続けたとしても俺が疲れ切って終わりになるだけだって思ったし、結局戦い続けるしかなかったと思うんだよな。

「さっきは悪かったね、君を傷つけるつもりはなかったんだ。でもあれくらいしないと信じてもらえないかと思ってね。つい勢いに任せてしまって申し訳なかった。」

「いえ、こちらも急に襲ってすみませんでした。それでですね、一つ提案があるんですけどよろしいでしょうか?」

「なんだい、言ってごらん。大抵のことには応じてあげるよ。なんせ君は私の初めての相手だからね」

会長がそう言うと周りの役員たちが集まってきてこちらに向かって殺気を放ってくるのが分かる。正直に言おう、俺はこの時恐怖でいっぱいだった。この人たちは一体何に怒っているのだろうか。まさか会長が襲われたからといってそこまで怒り狂っているとは到底思えない。だって、会長はこの学園の頂点に位置する存在で俺がどんな態度を取っても何も言わないし逆に喜んでいたのだ。なのに今更こんなことをしてくるとは思えない。つまり何が原因なのだろうか?俺は必死に考えるが、全然思い浮かばなかった。そして答えが出ないことに絶望したその時俺の頭に一つの考えが閃いたのであった。

これならもしかしたら会長を倒せるかもしれない。だが問題はある。俺はラノベの知識しか持ち合わせていない。もしかしてここは地球とは違う異世界という可能性もあるからだ。でもそれ以外に可能性はないから賭けてみるしかないだろう。もし違ったらその時はその時に対処すれば良いだけだしな。よしっ、いくぞ! ***

「あの、俺もそっちに行っても良いですか?」

俺は勇気を振り絞ったつもりで言った。多分声が裏返っていて気持ち悪いだろうなぁ、とかどうでもいいことを考えてしまったが、それは置いておくことにする。それよりも返事を聞くことのほうが重要だ。

「いいよ。来なさい」会長の許可が降りたので近づいて行った。会長と俺の距離は3mといったところだ。

「ねえ、私の膝の上に座ってくれないかい?そうしたらキスもしてあげる」

俺の心は一瞬にして折れかけたが、これは俺が強くなるための戦いでもあるのだからここで甘えるなんて許されないだろう。それに、今会長が求めているのは俺じゃない。これはあくまでフリに過ぎないのだ。本当の俺が求めるのはこれからだ!行くぞ!

「失礼します!」俺は意地を張ってしまった。もう後には引けない。今だけは自分を曲げないって決めたんだ。そして会長の方へと向き直り目を閉じるとゆっくりと顔を近づけて行く、俺の頬に当たる柔らかい感触が少しずつ強くなっていくことが嬉しくなって自然と笑みが出てしまうが、なんとか抑え込むことに成功したのである。そこで俺は会長から離れるために体を少し動かすのだがなぜか離れることが出来なかったのだ。おかしい、どうしてなんだと思いながら恐る恐る目を開けてみると会長の両手によって俺はガッチリ掴まれていた。そして次の瞬間、会長の頭が下に降りてきていて唇に柔らかい物が当たるのを感じた俺は抵抗しようとするも時すでに遅しで完全に拘束されていたのである。


***

はは、やった、やっとこの男が手に入った!私にもチャンスが来たんだ。今まで散々邪魔されて来たんだ。もう遠慮することはないよね。ここから私達の恋がスタートするのさ。これからよろしくね。私の恋人くん♡ この日、一人の少女の人生が大きく変わっていった。これからこの二人がどのような結末を迎えるのか、まだ誰も知る由がなかった。

〜end〜

***

えぇー!俺会長に負けちゃったんだけどぉ。これは不味いことになったな。どうする?どうやって誤魔化す? いやもう諦めた方がいいかもな。この人の事はよくわからないけどこの人がやろうとしている事はとても大事な事のような気がするんだ。それに、なんだかこの人に逆らうと色々と危ない気がしてならねぇー!よし、こうなった以上俺も全力を出すしかなさそうだな。覚悟を決めるか。

俺は会長の顔に手をやり自分の方に向けさせると軽く口づけをした。するとその光景を見させられてしまった役員達が嫉妬に狂いながら俺を殺そうとしてきたが会長の一声で全員が止まると、その場で土下座し始めた。一体何が起こっているのか理解できなかった俺は呆然とすることしか出来なかった。そんな俺に会長の鋭い視線が向けられるとビクッとなり背筋が凍ってしまったので急いで正座の姿勢を取ったのである。もうこうなったらヤケクソである。なんでもいいからこの状況を変えなければならないと、本能的に感じ取った俺が選んだ手段は、会長の命令に従うことであった。

「いいよ、許そう」会長は笑顔で言うと、先程までの雰囲気が完全に霧散してしまったのだった。

その後、何故か生徒会室にあるソファーで隣同士に座らされた俺達は会長から今後の話についての話をされた。

その内容はこの世界についてのことだった。

会長は俺のことをこの世界の事を何も知らない無知だと思っているらしく丁寧に説明してくれているようだったが、残念なことに全く理解が追いついていなかった。なので俺は聞きたいことがあるとだけ言って時間を稼いでいたが流石に無理があったようだ。

仕方ない、ここは正直に聞いとくか。もしかしたら教えてくれるかもしれないしな。でもまずはこの人の名前をちゃんと聞いておかなければ。それにこの学園のルールなども確認したいな。

それから俺はまずこの世界には魔物が居ることやダンジョンがあることについて質問したのだったがこれがなかなか答えてくれなかったのだ、しかもなんかニヤついてて怖かったんだよなぁ。だから最後にこれだけは聞いておきたかったのだよ、何故俺を選んだのかという疑問に対しての答えをね。だって意味わかんなくね?いきなり襲ってきてキスをしたら見逃してくれるっていう謎の展開だし、それについては特に理由を聞かれなかったので普通に疑問だったので聞いてみたわけだ。そうしたら予想通り、というべきかやっぱり答えてくれなかったんだよね。それで会長は、「君とは運命を感じていてね、一目見た時から君しかありえないと思っていたんだ、私はどうしても欲しいものがあれば必ず手にいれないと我慢できない質でね、そんな私は今回君を見つけて絶対に逃さないと思ったんだ、まあこんな感じかな」と言ってきた。

まあ確かに会長は容姿はかなり良いと思うけどさ、それだけでは惚れた理由にならないと思うんだ。

やっぱり会長の考えがさっぱり分からなかった。

まあ取り敢えず、会長がこの世界を支配できるほどの力を持つ大貴族の娘であり、この学校の長であること、更に俺を襲ってきた奴らは全員会長の護衛で実力もそれなりだったこと、また護衛以外にも生徒会長の秘書をしている人もかなりの力を持ってることなどを知れたから良しとしておこう。それと、俺はこの後すぐにこの学園を出ていくように命令を受けたので明日の昼までには学園を出る予定となっている。

ちなみに今日はこの後に授業は無いのでこのまま帰らせてもらえることになって良かったよ。これで会長に襲われて怪我をするとかシャレにならんからな。

「あの会長一ついいですか?」

「なんだい?」さっきよりも凄く優しくなっている気がするが気のせいだと思い込むことにしよう。

「さっき俺を襲った奴らってどんな人だったんですか?」俺は会長が俺が思っていたような人では無かったということがわかったので素の状態で話すことにしていた。

「ふむ、あいつらは確か君と同じ異世界召喚者だったよ」

「そうですか、彼らはなんであんな行動を?」俺は会長が言っていた言葉の中に引っかかる単語があったことに気付いてしまった。

「えっ、異世界召喚者がなんであそこにいたんだ?この世界には元々俺たちがいたんだろ?」

会長は顎に手を当てながら何かを考え込んでいるようであった。

「それは恐らく君の魂と私の魂の繋がりが影響した結果だと予測出来るが確証はないので断定するのは危険だろう。もしかしたら他にも似たような境遇の人が居たりするのかもしれないな。そうなればいずれ会えるかもしれないがそれまで待っているつもりはないからね。もし会ったとしてもこちら側に引き込みたいと私は思っているんだが、君はどうかな?勿論ただとは言わない。報酬を出そうじゃないか。」会長は少し間を置くと話し始めたのであった。

どうやら俺は今すぐ帰る必要が無くなるかもしれない。これはとても魅力的な内容であった。それに俺がもしこの会長さんの仲間になれば俺は最強になることができるんじゃないか?俺は会長の話を聞いて心が揺れていた。でもまだ足りないものがあるな、これを手に入れてからでも遅くはないかもしれないな。よし、ちょっと交渉してみるか。俺は会長と目が合うと、

「一つ良いですか?」俺は会長に質問することにした。

***

「なんだい?」

「あのですね、俺の固有スキルが欲しくありません?」

「それは是非とも手に入れたいな、どうすれば良いんだ?」

「簡単ですよ。俺に貴方の力を分けてください。」

「ほう、私に忠誠を誓ってくれるのかい?」

「違います。俺は仲間になりたいんです。一緒に強くなりませんか?もしそれが嫌なら俺の言うことを一つ聞いてください。」

「なるほど、面白いね。だが私が君の言いなりになるとは限らないだろう?だから断ることもできるよね?その場合は君の命を奪ってでも従わせなければならないのだがそれでもいいのかね?あと私の力が欲しいと言ったがどういう意味だい?その力はどのくらいのことが出来るのかね?詳しく教えてくれたまえ。そうでなければ判断出来ないからな。さぁ、早く話してくれないか?こっちも暇じゃないんだ。君みたいな人間に付き合っている時間は無いのだよ。ほら、さっさと答えるんだ。それが出来なければ死を選ぶんだな。分かったか。おいお前達もそいつが何をしようとしているのか分からないなら口を出さないでもらえないか。これは私たちの話なんだ。お前達はそこで黙って見ているがよろしい!」

「うぅ、申し訳ありませんでした!」

会長の部下達は皆一様に震えておりまるで死刑を待つ死刑囚のように怯えているように見えるのである。それほどまでにこの人に逆らうことは許されないのだ。そして俺はこの人達に逆らう事は得策では無いと直感で理解したのである。そして俺は正直にこの世界で何が出来るかを、そして自分が持つこの世界での強さを教えていくことにした。


***

はぁ、こいつはバカなのか?それじゃああのスキルも持っていないというのかい?あれだけの強さを持ちながら何も使えないというのだろうか。信じられないことなのだが。それなのにあのステータスは異常だぞ。

まあ私には関係無いが。そういえばこいつが持っているスキルはどんな効果を持っているのかな?興味あるね。


***

俺が全ての事を話し終えると、会長が口を開いた。

「なるほど、話はわかった。しかし今の話で確信できたこともあるな。君が使える力はおそらく固有技能であるということだけだな?ならば私と一緒に来い。その力で世界を支配してやるんだ。それに私はこの学校を卒業した時点で国王になれるような力を手に入れることが出来たからな。私は既に王となる資格はあるのだ。私は王に相応しき者、すなわち真の勇者にだけその力を譲渡する事ができるのだよ。これは昔から決められていることで変えられないものなんだ」

なんか話が勝手に進んで行ってるけど大丈夫なんですか?俺はどうするべきでしょうか?会長に俺の秘密を全て晒してしまったのは間違いだったかもな。俺はまだ会長のことが全然分からないから下手なこと言えないんだよなぁ。ここは素直に従うしかないかもな。よし、ここは流れに身を任せるしか選択肢は無いみたいだな。俺ってこんなに流されやすい性格だったのね。なんか悲しい。

まあ仕方ないから今は従うとするか。会長は俺を仲間にしてくれると言ってくれてるようだけど本当に良いんだろうか?俺にはメリットしか無いし、何よりこれから行く所には多分俺が一番欲しいものが存在しているだろうから、そこは願ったり叶ったりなんだけどね。会長さんが裏切らない限り、ね。それにしてもこの人の目的とかが未だによくわからないからそこら辺はしっかり見極めたいと思ってはいるが、俺にはそんなに時間はないだろうから急がないとだな。

よし、まずは会長の命令通りに行動する事にしよう。

俺はそう思い、

「わかりました、では明日この学校から出ていきます。それと俺のお願いを一つだけ聞いていただけないでしょうか?」

俺は自分の要望を伝えるためにこの話をしたんだからな。

俺の願いが伝わったようで会長も部下達に下がるように指示を出していた。

これでこの部屋には俺と会長さんの二人しかいない状況を作ることができた。俺は会長に対して早速行動に移ることにした。

「会長さん、俺の奴隷になってくれないですか?」俺は笑顔で会長に言った。

すると会長の顔はどんどん青ざめていき顔色が優れない状態になっているのだ。一体どうしちゃったのかな? 会長さんって実はマゾヒスト?もしくはサディストの方ですか?俺はどちらでも無いですしむしろ嫌いなのですがね。俺は少し疑問に思ってはいたがまあいいかと思いあまり深く考えないようにしているのです。まあ、気にしないのが一番だと思うんですよ。それにもう遅いだろうし。


***

えぇー!!ちょっと待ちたまえよ。君は今なんて言ったのかね!?私が君の奴隷に?それって本当なのかい!もし嘘をついているとしたらとんでもない男だろう。

私はこの世で一番と言っていいほど君に期待をしているのだから。そんな私を見返すような奴が現れた時は私は君を一生離すことが出来ないかもしれないだろう?だから君の言っていることは嘘偽りなく、本当のことであると思うが、念のためもう一度聞かせてくれないか?君の要求はなんだ?

「はい、まず俺の配下になってもらいます。それとこの学校に居続ける権利が欲しいですね。後お金も貰えるとありがたいです」そうなのだ、俺はただ単純にこの学園に留まりたいだけなのである。別に他の奴らに危害を加える気は無いのである。

ん?待ってくれよ、そういえばこの子確かこの国の王族の娘に惚れられているという話をしていた気がするぞ。ということはもしかしてこの子はあの姫様のお気に入りか何かか?これはチャンスかもしれないな。私の計画にはこの国のトップに位置する権力者の娘がこちら側につく事がとても大事なことであり最優先事項だった。だからこそこの機会を逃す手はないな。よし!決めたぞ。今度こそ私の人生最大の賭けをするとしようじゃないか。私の人生を全て捧げよう。

さあ始めようじゃないか。私の計画を。君を絶対に手に入れて見せるさ。君のような逸材、今まで生きてきた中で一度として出会ったことはないのだから。君が私にとっての運命の人かどうか確かめさせてもらうとしようじゃないか。

そう言って俺の手を握った会長は目を閉じ何かブツブツと言い始めたのだ。俺にはそれが何か分かることはなかったが、何故か嫌な予感がしたのであった。

***

「うむ、終わったよ。私の力の半分を分け与えたんだ。この世界にいるうちなら君の力は常人離れしていることは確かだろう。後は私の命令に従い続ければいずれ私の力は君にも分け与えられることになるだろう。だが私は君を完全に支配することはできないだろうからそれは君が頑張ってなんとかしてもらうしかないからな。それと、今更なんだが君はどうしてこの世界に飛ばされたんだ?君は勇者では無かったはずだが?」そう言われた俺は正直に打ち明けることにした。そして俺は何故ここにいるのかも全て説明した。

俺は会長の言葉を信じているわけでもないが信じなければならないという本能的な感じがあるようなのである。それは会長の目がとても真剣だったことが大きいかもしれない。まあその目を見て俺に嘘をつくメリットが全くもって存在しないのもあるがな。

しかし、まだ俺には会長がどんな人物か全く掴めないのが現実である。もし会長の目的が俺を利用して世界を乗っ取ることだとするなら、かなり厄介な敵となるだろう。俺は少し身構えてしまうのであった。そして会長と少し話しをしたのだがそこで分かったことがある。この会長さんはかなりお強い方だということが分かったのである。

だって俺に自分のスキルの殆どを伝授してきたんだからさ、この人が本気で戦うところ見てみたいなぁとは思ったが今はとりあえず話を進めないとだな。それにまだ他にもこの人に聞かないといけない事もあるんだから。俺はまだ聞きたいことが沢山あったのだ。


***

ふむ、なるほどねぇ。君はどうやら元いた世界の時よりもこの世界の方が合っているのかもしれないな。それに君のステータスの伸びは凄まじいな。私でも追いつくことができないぐらいのレベルだぞ、これ程までになる人間はなかなかいないからな。君は私から得た知識によってレベル上げが容易に行えるようになったはずなのだが、まさかここまでのスピードで成長できるものだとはな。

それに固有技能の使い方がうまい。私も似たようなものを使っていて扱い方は分かってるつもりなのだが何分上手く使いこなすことができずに苦労してるんだよ。それに私の部下たちも同じように苦労していたんだ。私達でも上手く使いこなせるようになるにはかなりの時間がかかるからね。しかしそれでもこの世界ではかなり上位に入るほどの速さで習得していくのは事実なのである。

この固有技能を持っているという事は相当なアドバンテージになり得るのは間違いない。私はこの能力を完璧に使えるようになってみせるさ。それさえ使えれば私が国王になれることも確定だ。なんせこいつはこの世界でもトップクラスに入るステータスを持つ者にしか与えてないからな。この国では私が一番高いという訳だ。そしてこいつはその中でも一位二位のステータスを誇るのだ。こんな貴重な人材を逃したくないというのもあるのだよ。

それにこいつの性格上、おそらくは人を裏切るということは決してしないだろう。この男の瞳はしっかりとしたものを持っているのは一目瞭然なのだ。おそらくは自分の力も理解できているのであろう。だからこそこいつはあの力を欲しがったのではないだろうか?まあ憶測に過ぎないがな。

「ところで君にはまだ聞きたい事があるのだが?」と私は質問したのだった。

「そういえばあなたの名前は何と言うんですか?」

俺は会長の名前を聞いてなかった事を思い出して聞いた。これからずっと一緒に行動するにあたって名前を呼ばないというのは不便でしょうがないからだ。

「おっとすまねえ、俺は佐藤海斗っていうんだ」

俺はこの名前を聞くと驚いた顔をしてしまったと思うがそれも仕方がない事だと許して欲しいと思う。なぜならばその名前は元の世界で親友の名前に似ていたからである。

俺はそのことを会長に伝えるべきか否かを悩んでいたが結局言う事に決め、伝えたのだ。

「その名前は俺の親友と同じ名前なんだよ。」

するとその言葉を聞いた瞬間会長さんはとても嬉しそうな顔で 、「やっぱり君にはあいつのことを伝えておかなくてはならないようだな」と呟き、それから俺の方に近づいてきた。そして 、俺に キス を した。俺には全くと言っていいほど意味が分からず頭の中で?がいっぱいになっていたが、唇が離れた後、会長がこんなことを言い出したのであった。

「"お前"じゃなくてこれからは "貴方様"、"様"をつけて私を呼ぶんだな。それに私と君はこれからはパートナーだ、つまり主従関係になったということになる。それならば敬語を使う必要があるのが当たり前だと思うんだよね?」とニヤッとしながらこちらに向かって話しかけてくる始末だ。

「わかりましたよ、俺の奴隷でありご主人様よ」俺はそう言ってやる。これで少しでも仕返しできただろうと思う。しかし会長の顔を見ると何故か満足そうにしてたのでこれで良かったみたいだったけど。

「うーん!これでいい!やっとスッキリしたわ。」と言い出しとても清々しい顔になっていますね。うん。

「じゃあそろそろ寝ようかなぁ」なんて言ってるがそんなわけ無いですよね!?もう夜遅くなって来てますよ!?この人全然時間とか考えずに行動するタイプの人か?俺はちょっと疑問に思ってたんだけどなぁ。まあ本人が気にしていないのなら別に構わないのですが、ちょっとくらい心配する気持ちを持ってくれた方がこちらとしてはありがたいのですが。俺は心の中でツッコミを入れておいたのであった。


***

はい!今日もいい日でした! 昨日の夜は特に何もなく無事に過ごすことができましたよ。会長さんの方はというと、どうも明日仕事があるらしく今日中に済ませておきたいとの事ですぐに帰っていきました。その時の表情は本当に嬉しかったんだろうなぁと思うくらいに明るい笑顔をしていた。

ちなみに会長と別れてからはこの学園の施設を案内してもらった。食堂などはもちろんのこと訓練場なども見せてもらえたのである。やはり設備に関しては凄く整っていて良い学校だと思う。そして俺は今部屋に帰っている途中である。なんか一日が終わると考えると少し憂鬱になるのだがこれも今のうちだけだろう。そう思いたい。

俺は部屋のドアを開けると中に入った。しかし中には人がいる様子は無く真っ暗である。俺は少し寂しいような気分になったがこれが普通なんじゃないかと思い直したのだった。そしてそのままベッドの中に潜り込み深い眠りについたのであった。

翌日俺は朝起きてからいつも通り鍛錬に励んでいた。この時間は意外にも結構好きなんだ。一人で集中できるからな。それに誰も邪魔してくるような人がこの学園には居ないし。

そして鍛錬が終わると今度は授業の時間である。といってもほとんどは基礎トレーニングである。正直この程度だったらあまり疲れないんだよな。まあ楽にこなせるってことで良いんじゃないのかね?俺にとってみれば。

そして昼休憩に入ると俺はまたあの人のところへ足を運んでいる。それは俺の固有技能について聞くためである。あの人はどうやらあの能力を使いこなせないらしい。それは俺も同じだからよく分かるのだが。あの人がどうも苦手な理由がなんとなくわかる気がした。俺もあんなのは扱いきれないだろうからな。だからこそ俺が力を引き出せるようになれるかとても不安なのである。そして今は昼食中である。

俺達はどうすればあれが扱えるようになるのかを考えつつ食事を終えたのであった。

「さて、それでは私は少しばかり用事があるから失礼させてもらうよ」と、俺の方を見ながら会長は言ったのであった。

「わかった。それなら早く行ってくるんだな。待ってるぞ。それとなるべく早く来てくれよ。俺にはあんまり時間が残されていないのだからな」そう言ってから俺はすぐに会長の目をじっと見つめた。そして、

「私の目をじっと見るのは辞めて欲しいのだけれど?君にはその力があるのだし私のスキルが効かないのも分かっているだろう?私にはそういう趣味は持ち合わせていないのでね、勘違いされないように。そして、君の固有技能もかなり強力だということを忘れて貰っちゃ困るからな?それはそうと、私はこれから少し仕事を片付けに行ってくるから。まあせいぜい足掻いてみる事だな、君も少しづつではあるが確実に力は上がっているからな、焦らずゆっくりと頑張ると良いだろう。それじゃ、頑張ってくれたまえ」と、会長は少し恥ずかしげに、しかし何か期待しているように、俺に向かって言葉を発してきた。そしてその会長さんは、どこかへと向かって行ったのであった。


***

会長が行ってから数十分ほど経っただろうか、ついに会長が帰ってきたのだ。だがその顔はあまり良くは無いように見える。何か問題が起きたのか?俺の頭の中である可能性が浮かび上がって来た。しかし、もしこの考えが合っているとするのならば相当マズイ状況になっていることは間違いないだろう。

「お帰り、それでどうだ?成果は上がったか?」

「残念だが、今回は失敗してしまったのだ。すまない。この私もあの固有技能は制御ができずに全くと言っても良いほど使えない。それに、私が使うことによって周りに被害を与えてしまったり、最悪死人を出してしまう可能性があるため下手に使うことはできないのだ。そこで君に聞きたいことがある」と、俺に問いかけて来たので、俺は

「あぁ、なんだ」

「君はあの固有技能を自分のものにすることは可能だとは思わないか?」

俺は会長にそう言われて考えた。確かにこの固有技能が自分に与えられたということは少なからず何かしら意味があるはずだ。それに俺がこれを上手く使えばこれから先この国を守れるのは確実だと思えるほどの代物だ。

「俺はこの能力を完璧に使えるようにしてみせる」俺は自信を持って言い放つことができた。

「ふむ。なるほど。私もそれが出来るとは思っていた。君のような男だと思っていたんだ。ただ、私から言える事はそれだけだ。私からはアドバイスできないし、そもそも私が助言をするのは間違っている。それにこれはあくまで君の力でやる必要があるからな。それに、この能力は君にとってはあまりにも大きなリスクを伴うものだ。だからこそ私達も協力したいという意思はあるのだ、でもそれを君が望んではいないという事は分かっている。それ故に私達は何も言うことができないのだよ。それでも君が力を貸してほしいと言うならば喜んで手を貸そうじゃないか。私はそれ相応の働きをするだけだよ」と、会長は俺に向かって話してくれた。その言葉を聞いて俺は会長という人間のことを改めて知る事ができたような感じがしたのだった。

それからしばらくした後、会長は部屋を出て行き、一人取り残されている状態なのだが俺は何をするべきなのだろうか、と考えている最中である。そして俺は一つ思ったことがあった。

会長はおそらくこれからもこのようなことを続けて行くんだろうがそれは俺にとってみれば邪魔にしかならない。だって俺は強くなる必要が有るわけであってそんな事に時間を使う訳にもいかないからだ。

それにこの学園は俺がこれから過ごして行くであろう場所であり俺の人生に大きく関わるかもしれない場所であるのは確かなのだ。だからこんなところで立ち止まっている場合じゃないのは確かだと俺は思う。

「やっぱりまずは強くならないといけないな」


***

さあ今日はいよいよ入学式当日です!今日はしっかりと勉強して来たのです。なぜなら今日からこの学校は本格的に始まるからである。そして今から会場へ向かうために寮から出ていこうとしていた。しかしそこに一人の女の子が現れて話しかけられたのであった。

んっ!?え、な、なに!?どうなってるんですか!?これってもしかするともしかしちゃうんですか?いやぁーちょっとびっくりですね、私みたいな平凡がいきなり主人公になれた瞬間でしたよ。いやまてよ、これって夢なのかな?

「貴方、誰?」私の前に現れた人は不思議そうな顔をして私に向かってそう聞いてきたのである。

「わ、私はここの学生よ。名前は"天川彩花"って言うのよ」と、言ってみる。そして相手からの返事が来る。しかし、それは私にとってみれば予想外の返答だった。「貴方がここに学生として入ってくるってありえないわよ。普通はもっと年上が入るはずなんだけど」と言われました。なにそれぇ!?なんなん!?意味わかんないわぁ!なんで初対面の人にこんなにも言われるわけ?もう泣きそうよ!もう帰って寝るもん! そう決めた後すぐさま部屋に帰って寝ることにしたのであった。

はい!昨日はよく寝ることができましたよ!これで元気100倍になったぜ! まあとりあえず今は入学式の時間なんだけどな。

俺は今体育館の中にいた。もちろんこの学校に通う生徒である。ちなみに今は壇上に立っている先生に話を聞いていた。この話は割と長いんだよな、まあ俺が眠くなるのには関係無いから別にいいんだがな!うんうん。それよりも俺はあることが頭から離れずに困っていた。それは何故か?それは俺の席のとなりにいる少女についてのことである。その子は綺麗な黒髪にとても整って可愛い顔、そしてその瞳も美しいという三拍子揃ってしまっている美少女が俺の隣に座っております。俺は正直この子から目を離せない。なぜここまでこの子に心が惹かれるのかは俺自身もわからない。

そして俺と目が合うとすぐにそらされてしまったのである。俺は少しだけ悲しい気持ちになったが、すぐに切り替えて彼女の方を見ていたのである。そして式は順調に進み終わったのだが、そのあとは教室で説明があるとのことなので、俺のクラスである3-Bへと移動していたのであった。

「皆さん、初めまして、この学園の副学園長を務めている"神崎正信"と申します。これから一年間あなた方の学園生活のサポートを担当させていただきます。よろしくお願いします」

俺達が全員揃った頃を見計らってこのクラスの副担任らしき人が入ってきた。見た目的には若く見える。多分30前後といったところだろう。

この学園の教師は全員がレベルの高い能力者であるらしいのである。そしてこの人がかなりの実力者だということも理解することができたのであった。

俺はこれからこの人と関わっていかなくてはいけないと思うとその憂鬱感に襲われていたのである。

俺はこの時初めてこれから過ごす学校というものがどれだけ大変なものかということを思い知ったのだった。そしてそれと同時に俺にはやるべきことを見つけたのだった。俺にとって今必要なものは情報だと思う。俺は自分の実力を知りたいと思っているのだから。

そしてこの人はおそらくだが強いだろう、俺の直感だがな。しかし俺の固有技能は相手の力を図ることが出来るためそれがわかれば対処ができるようになると思ったのである。

そしてこの人はきっと俺が今まで会った中でトップを争うくらいに強い。それは間違いのないことであるのだが。だが俺が気になったのはこの人はおそらくだが戦闘向きの人間ではないだろうということだ。それ故に俺はこの人の固有技能がどのようなものなのが興味があったのであった。

俺はこの後どうすべきか考えていたのだが、やはりこの人に話しかけるのが得策だろうと結論を出したのであった。そして、俺が行動を起こすよりも先に、俺の視界にある人物が現れたことで俺は思考を止めることになったのであった。

「あの、すいません。ちょっとよろしいでしょうか」俺はそう言って手を挙げて声を発した。すると、

「なんだい、僕を呼んだのかい?」と爽やかな笑みを浮かべながらこちらに近寄ってきた。

そして彼は自己紹介をした。「僕は"天河翔(あまかわしょう)"っていうんだ。よろしく頼むね」俺はその名前を聞き驚いた。

何故ならば俺の大親友の名前が天河だったという事にあった。しかし、まだ彼がこの世界の主人公であるとは確定できていない。しかし、もしそうであるとしたら非常に面倒くさいことになるのは確実だった。しかし、それは考えすぎだと思いたいものである。

「ああ、俺の名前は"佐藤悠介"」俺は彼の名前を名乗ることにした。この先俺の親友がどういう道を歩むのかは俺が決めればいい話だからな。しかし、もし仮に俺が知っているような未来になるとしても俺にできることはあまりないだろうな、と思っていた。なぜならば俺はこいつらと関わらなくても大丈夫だという確信を持っていたからである。

この世界はおそらく俺が居なくても進んでいくだろうし、むしろいないほうがこの先の話も変わって来るだろうと思っていたのだった。

「そうか、君が僕のライバルになりうる人か」そう言った彼の顔は何かを決心しているように見えたのである。一体何のことを言っているのかさっぱりわからなかった。しかし、これ以上この話題に触れない方がいい気がした。

「ええとだな、お前はこの学園の中で最強なんだろ?」俺は直球で聞くことにした。だって俺はそんな事に興味はないのだから。

「ははははっ!!面白いことを言うんだな君は!」俺はそんなことを気にせずに答えを待つ。こいつは俺にとってどんな役に立つ存在なのかを知っておきたいのだから。

「ふふふっ!!!!君はなかなか見所のある少年じゃないか!僕のことを最強の座から引きずり降すつもりなのだろうか?それとも単純に戦いたいという意思表示かな?でも残念だけど君とは戦うことはできないかもしれないよ、でも、君が望むのならば僕はいつでも君の挑戦を受けてあげるよ。それにだ。今この学園で最強なのは僕ではなくて、彼女だね。まあ確かに彼女が本調子になれば間違いなく君も勝てなくなるだろうけどね、ただ君ならもしかしたら彼女を倒すことも出来るかもしれないよ」と言って、彼もとい、俺のライバルのなりそうな奴は席へと戻っていったのであった。

あいつがそう簡単に認めるということはそれなりに強いということなのであろうが、俺としてはいまいちピンと来なかった。

「よし!そんじゃぁー皆んな席に座ってください」と担任の先生は俺達に指示を出すとそのまま話を続けて行った。

「今日から一年間一緒に学んでいく仲間を紹介するぜ。このクラスに入ってくれた新しい仲間は一人だけなんだけどよ、仲良くやっていけるようにな!というわけで早速紹介するぜ、入ってきてくれ」そう言われ入ってきたのは一人の女の子であった。その子は可愛くて美人な容姿をしていてこのクラスの生徒達の注目を浴びているようだった。

「じゃ、自己紹介頼めるか?」と担任が彼女にそう言って俺は彼女を見つめたのであった。彼女は軽くお辞儀をして口を開いたのである。

「はい。私の名前ですが"神無月結愛"といいます。私には特にやりたい事というのがないのですが一応この学校に受験しました。皆さんと同じ学生です。私は特に目立つ事もない普通の学生ですが、精一杯皆さんと一緒にこの時間を楽しみたいと思っています。どうか皆さん宜しくお願いします」そう言い終わると俺の視線に気づいたのかまたこちらを見た。俺はとりあえず笑顔を作っておいたのだった。すると向こうも微笑んでくれたのでとりあえずはいい関係が築けそうに見えた。まあこの後はどうなるのかはまだわからないのである。俺が干渉することによってこの物語の結末を変えてしまう可能性もある。だからこそ俺のやるべき事は決まっている。それは強くなって誰にも負けないことだ。

「えーっととりあえずみんなは知ってると思うが改めて説明するぞ。この子はさっき言ってた通り神無月さんは学生だが特別クラスの生徒だ。学生でありながら俺たちとは違うんだ」俺はそう言うと先生は「そうだな、神無月には色々と助けてもらわなきゃならないと思うからその時は協力してやるんだな」と言い残して職員室へと戻っていったのである。

俺達はその後しばらくこの学園について説明を聞いた後に解散となった。俺は帰る前に神無月に少し話を聞いてみようと近づいたのである。しかし、その瞬間に俺は何者かに手を掴まれていたのであった。俺は驚いて後ろを振り返るとそこには神無月が俺の手を握っていたのであった。俺はどうしてこんなことが起こったのかがわからずに固まってしまった。

「私と友達になってくれませんか?」

私はこの人がとても素敵に見えるのです。私が初めてこの学園に来て見た人は先生たちばかりで私と同年代と思われる人は全くいなかった。そのため私に同年代の友と呼べるものがいなかったのであった。そこで出会ったのがこの人だったのである。私が挨拶をするとその人は私の目を見て笑いかけてくれたのだった。私はそれだけでとても幸せな気持ちになっていたのである。この人ともっと話をしたいと思った。この人の隣にいることができたのならばきっと私の人生はとても楽しく素晴らしいものとなるのではないのか?と思いこの人と話をすることを決めたのだった。

この人は不思議な人であった。まず最初に感じたのはそのオーラのようなものだ。その存在感のようなものを感じ取っていたのである。次にその表情から感じられるものは優しい雰囲気でどこか暖かいものであったのだ。それはまるで陽だまりの中にいるかのような感覚に陥ってしまうほどのものである。さらにその目はしっかりと物事を捉えていて、自分の信念を貫く強さを感じたのである。そんな彼を見ているだけで胸が高鳴ってしまうような感情が芽生えてしまっているのである。

だから私は決めた。この人と出会うために今まで頑張ってきたのだと。この人がこの世界に生きている限り私は何年かかってもこの人を待ち続ける。この人と出会えるのならば、他のことはもういらない。それ程までに彼に恋い焦がれていたのである。これが運命というものなのだろうと。

「私と友達に」この言葉を言い終えてから自分のやったことに気づいた。なんて恥ずかしいんだろう、勢い余って握ってしまったではないか。しかも初対面なのに。ああ、穴があったら入りたい、いっそこの場で死にたいくらいだった。

私は恐る恐る彼の方を見るとそこには驚いた様子の彼と、何かを話し合っている彼のクラスメイトの姿が見えるのだった。私はどうすることもできずにその場に立ち尽くすしかできなかったのである。

そして数分の沈黙が流れていく中で彼はいきなりこちらに向かって歩いてきたのである。彼は私の前に立つと手を差し伸べてきてこういったのだった。

「よろしくな、俺は佐藤悠介っていうんだ。気軽に名前で呼んでもらって構わないからな。お前は俺のことを呼ぶときは悠介と呼んで欲しいな」俺はそう言って彼女の手を取ったのであった。すると彼女は頬を赤くしながら「よ、よろしくね、ゆ、ゆうすけくん」と言ったのである。そんな可愛い顔を見せられた俺がどうにかしないはずもなく俺は彼女を思わず抱きしめてしまっのであった。すると、

「ちょっと、あんた!なんでいきなりそんな事してんのよ!」そう言って話しかけてくる奴がいた。

俺に話しかけてきていた女に目をやると俺はため息を吐いてしまっていた。

こいつは俺の知り合いの中でも面倒くさい部類に入る人間の一人なので面倒なことになりそうな気がしていたのだった。しかし俺はこいつの言葉など全く気にならないので無視を決め込んだのであった。

しかしこいつは諦めない性格らしくしつこく声をかけてきている。しかしこいつはこいつで面倒くさかったりする。何故ならこいつが面倒な性格をしているのは俺が原因でもあるのだがそれはまあいいとして。こいつはかなりのお節介なのだ。それはなぜかというと俺はこいつに対して迷惑を掛けるような事をしたことがあるからだ。まあ別に俺が悪いわけじゃないのだが結果的にこいつにお節介をかけられる事になってしまう。だからあまり関わらない方がいいと思っている。

そしてこの学園にはもう一つ問題がある。こいつはそれを解決するためにわざわざこの学校を選んだのだと思うんだが、俺的にはそれが失敗だったと言わざるを得ない。

それはこいつもかなりモテているということだ。だからこいつのせいで俺にも女子が近づいてくる事があるんだよ。それも何故か知らんが俺のところにな。まあ俺は基本ぼっちで過ごしているから来るのは一人だけなんだが。

「ちょっと!あんた、何あたしの結愛と抱き合ってるのよ!離れなさい!」

「はぁ、何お前?俺は今神無月に質問をしていたんだぞ?それを邪魔したのはそっちだろうが、というか何勝手に人の彼女に手を出してるんだ?」そう言うと彼女は顔を真っ赤にして怒り出したのである。

「誰が彼女よ!それに勝手に結愛を呼び捨てにしちゃだめでしょうが!というかなに結愛を抱き寄せてるのよ!今すぐ放してよ」

俺は彼女からの言葉をガン無視で話を進めていく。

「それにだ、神無月もこんな奴に自己紹介なんかしなくていいのに。神無月は優しいから俺のことを思ってくれただけだろ?」俺は優しく神無月の頭を撫でてやりながらそう言った。

するとまた彼女が騒ぎ始めた。うるせぇな。さっさと帰ってくれないかね?まあ無理だろうけど。しかし、俺はこんな事でいちいち腹を立てていてもしょうがないと思いながらまた会話を続けようとした時であった。

「えへっ。う、嬉しいなぁ」そう言って神無月から笑顔を向けられると、

「ごめんな、変な勘違いをして、本当にすまない」と言って頭を下げたのである。俺の行動に驚いたのか、神無月は慌てながらも「そ、そこまで気にする事無いよ。そ、それよりほら、教室に戻らなきゃだよ。私と悠介君」と言ってきた。その可愛さに俺が悶えたのはいうまでもない。

その後俺達はそれぞれのクラスへと戻ったのであった。ちなみにクラスに戻る途中で彼女と少し話ができたので良かったと思うことにしたのである。しかし俺はこれからもこうやって神無月に構われる事になるかもしれない。なぜなら俺は彼女を助ける事になろうとは今の俺は知る由もなかったのである。

というわけで、クラスに戻ってきた俺は担任に呼び出されていたのである。なんでも、俺に頼みがあるというのだ。その内容を聞くと俺は渋々だが、そのお願いを受け入れる事にしたのであった。それはある少女に俺の強さを見せてやりたいというお願いであった。俺は別に断るつもりはなかったが、ただ条件をつけさせてもらうことになった。俺はこの学園の生徒会に所属している。つまり俺の学園生活において色々と支障が出てくる可能性があったのである。

そして俺は学園長にお願いをしに行った。学園長は最初こそ驚いていたが、理由を話すと快く了承してくれたのである。そして俺は、その日のうちに行動を起こす事になった。そう、今日は学園の生徒会長を決める選挙の演説が行われる当日だ。

この選挙で勝った方が次代の生徒会長になる事ができるのである。この学園の生徒が目指すものは強さだ。その生徒会長となれるものは、強さで決めるのだ。この世界で強い者こそが王となるのだ。そう考えると俺にとっては楽なものである。この世界では強さが全てなのだ。それはどの種族でも例外なくそうであるのだ。それは神であろうと同じことである。だからこそ俺は生徒会長の座を狙うのだ。その生徒は、生徒の中で最も強き者であり、最強の存在となる。そんな奴と戦い、倒すことが俺は好きなのである。俺はそんなことを考えながら体育館へと向かったのであった。

俺が体育館に向かうとそこには既に多くの人達が集まっていた。それはそうだろう、今日ここで新しい会長の発表が行われ、同時に学園長による挨拶も行われる。この日のために俺は今まで準備をしてきた。全てはあの日からずっと考え続けてきた事だった。そしてこの瞬間がとうとうやってきたのである。この場にいる者達は全て敵だ。油断してはならない。一瞬の気の緩みが敗北に繋がる可能性があるから。俺は自分の武器をいつでも取り出せるように構えながら演説が始まるのを待っていたのであった。そしてついにこの時がやって来たのである。マイクに手をかけている人物がこちらに向かってきたのである。その男は白髪混じりの長い髪をしておりその瞳には自信と余裕を感じさせるものであった。この男がこの学園の現生徒会長の男である。この男こそがこの学園の頂点であり最も強き存在である。その証拠は俺との戦いで見せる事になるだろう。

俺はこの男を知っている。その強さを肌で感じてきたからこそ、俺の勘が囁いているのだ。目の前にいるこいつを倒せば俺はもっと強くなれるのだと。

俺は今まで様々なものを見てきた。その中でもやはり最強という言葉が俺の中で一番強く存在しているのである。俺は今までに負けるという事が一度も無かった。それは何故か、この世界で生きる者は誰もかれもが弱いからだ。それはこの世界の弱肉強食の原理から来ているものでしかない。どんな生物であろうとも力の差というものは必ず生まれてしまう。この世界でもそうだ。それは仕方がないことで、当たり前のことでもある。しかしその理をねじ曲げようとする者が現れたら、どうなるだろうか?俺はその先を見てみたいのである。俺は強くなるために全てを捧げて生きていくことを決めたのだから。俺はもう後戻りはしない。絶対に、誰にも邪魔はさせない。

俺はゆっくりと壇上に上がるとその男は静かに俺に問いかけてくる。

「私に勝つことはできるか?」俺は何も答えなかった。そして何も言わずに、その場から離れていく。そして戦いの時が来たのである。

「それじゃあそろそろ始めましょうかね。もう皆待てないって顔してるわよ?早く終わらせないとね。さあ、始めるわよ!」

この学園の生徒たちは戦うことが何よりも好きだ。この世界で生きてる者は全員がそう思っているだろう。そして学園長は戦闘の開始を告げる言葉を発したのだった。この世界に生を受け、そして死ぬ時に何を残すことが出来るのか。

人は生まれた時点で平等ではないということを私は知っている。親という存在がいる限りそれは揺るぎようのない事実なのだ。だからといって親が悪だと言っているわけでは無い。何故ならば私の両親はとても優秀で、人望もあった。そんな人たちから生まれたからこそ私が産まれたということも理解していた。

しかし私の周りには親がいない環境だった。そんな私に優しくしてくれる人がいなければ、今ここに立っていることなんてできなかっただろうと思っているし感謝しているのも本当なのだ。そんな私がなぜこうして学園に通えるようになったかというと、それはとある出来事が原因である。そう、私に優しくしてくれた彼が私を庇ってくれたからであった。彼は優しい人だった。でもそれと同時にとても不思議な雰囲気を持っている人だった。その彼のことを初めて見た時の第一印象は"無愛想な人だなぁ〜。怖くないかしら?""無愛想というより感情を感じにくい人の方かしら。少し心配になってしまうけれど悪い人に見えないからいいかぁ"というのが素直な気持ちであった。

それから数日後のことだった。私はいつものように図書館にいたのだがその日はたまたま彼に会うことができたのだった。その時、なんでこんなところに来たんだろうと思っていたんだけどその理由を聞いて納得したのよね。そうして話しているうちに彼と仲良くなった。だけど何故か彼に嫌われてしまった。そして、そこからは地獄のような日々が始まったんだよね。それは彼が生徒会に入りたいと言ったことから始まるんだ。生徒会に入ること自体はいいことだったのかもしれないが問題はその相手が私の大嫌いなあいつだったということだろう。

それからと言うものの嫌がらせや嫌味などを言われるようになってきて本当にうんざりしていたところを救ってくれたのが、彼だったんだよね。そしてそのおかげでまた、私は彼に恩を返すことが出来たの。嬉しかったんだ。だからつい、言ってしまったんだ。告白をするようなセリフを言っちゃったわけ。それには私なりに思うことがあった。だって彼は私のことを避けようとしているように見えたし。私としては少しでも意識してほしいっていう気持ちがあった。

でも、それが間違いだったことにはすぐに気づいたの。彼の反応はとても冷たいものだった。それでもしつこく迫っていた時だ。突然現れた女性から、彼はその女の手を取ってキスをしていた。それに驚いてしまい声をかけれなかった自分がいるのと同時に羨ましくも思っていた。でもやっぱり悲しくなってきてしまってそのあと泣いていたの。そうした時に、慰めてくれたのがその女の子だったの。最初は警戒したんだけど、その彼女の優しさに触れて心を開いていったの。そうして話している間に友達になりました。今では彼女と二人で遊んでいるほどです。

そんなこんなで私はその彼女と二人きりで過ごす時間が多くなり、彼女とよく話すようになっていたの。彼女もまた彼と何か関わりがあるらしいのですが教えてくれませんでしたがきっと良い思い出なのだと思います。でもその思い出が彼にとって幸せなものであるとは言い切れませんが、私達と過ごすことによって笑顔を見せてくれるようになっている気がします。私もそうなんですけど彼女は特に彼を幸せにしたいと考えているようなのでこれからの頑張り次第ですが、彼女が望む未来は明るいものだと思えるのです。

だからこそ彼女にも幸せになって欲しいと思っています。そのためにはまず、この選挙を乗り越えなければならないといけないのかもしれません。正直言うと不安しかありません。でも私には頼りになる親友がいる。彼女と一緒に戦えば怖い物などないのだと今は思えています。そして、その思いを彼にぶつければいいだけなのです。その決意が固まったところで演説が始まることになり、その相手とはまさかの彼女である神無月 沙耶香さんだったので少しびっくりしてしまい、動揺を隠すことが出来なくなってしまっていたので、一旦心を落ち着かせることにしました。

そういえばあの子は一体誰なのでしょうか?どうして彼があんな顔をするのか私には分かりませんでした。そう、その彼女を見た時に私は驚きが隠せていなかったのだ。それはそうだろう、いきなり現れ、そして彼を抱き抱えた時には驚いたものだ。そして次の行動にもさらに驚かされてしまったのだ。なんであそこまで自然に抱きしめることができるのだろうと疑問で仕方が無かった。まるで長年共に過ごしているのではないかと疑いたくなる程に違和感がない光景だった。

「さて、そろそろ準備を始めなさい」その言葉で私は演説の準備を始めることにしたのである。そしてマイクの前に立った時だった。

「おいお前!何をするつもりだ?この俺を差し置いて勝手なことはさせねぇぞ!!」

その男はそう叫び、周りにいる生徒たちも一斉に私に殺気を向ける。この学園において強い奴こそが正義であり絶対の権力を持つのである。そのためこの男の主張は間違ってはいないと言えるだろう。だからこそ厄介なのだが。そしてその男がこちらに歩いてくる時に他の人達が邪魔で中々前に進んでこれないようだ。その男はイラつき始めたのである。そして遂に我慢できなくなったのかこちらに走って向かってきたのである。それを見ていた人達はその男が負けるはずがないと思っているのか止めることはなかったのである。

私はそれを確認するとすぐに武器を構えた。そう、私にはある秘密の力が宿っているのだ。そうそれは、この世界に召喚された際に授けられたスキル【全属性適性】である。そしてこの力は使い方によっては非常に便利な力だった。そう例えば、魔法陣の起動を補助することができるのだ。つまりはこういうことである。私は詠唱破棄を使うことができるのだ。これはかなりのチートである。そうでなければ私はこの力を授かった時に絶望していたと思う。そして、私はこの力で全ての攻撃を相殺しながら攻撃していく。もちろん相手もそれで終わるわけではない。反撃として殴ってきたがそれは予想通りであった。そうして何度も繰り返していき遂にこの男は倒れて地面に伏していた。

それを確認した瞬間に、私に対する注目は高まるばかりで視線を感じるだけでも恐怖を覚えるほどである。しかし、そんなことで怯えていてはこの先、生きていくことなんてできないのである。私は自分に気合を入れるとマイクに手をかけたのだった。そうして演説が始まったのだった。そうして始まった戦いであったが、演説が終わった時には何も起きなかったのである。いや、正確には起きなかったのではなく私が何もしなかったのだ。その理由としては自分の気持ちを伝える事ができたからである。そして自分の中で何かが変わったという実感がありその気持ちを皆に伝えたのである。

私は今までは自分が一番優れていると信じていた。それは私だけではなく多くの人も同じであるはずだ。だがそれは間違いだったのだと私は思っている。私はまだ弱い。まだ知らない世界もある。そう、この世界の常識を私は知らないのである。それは私にとっては致命的とも言える問題だ。

今までずっと、私が優れて居られる理由は才能があるから、努力してきたから、そんな単純な理由だけでは無かった。私はただ単に自分のことだけを考えて生きてきただけだった。それが私の生きる術なのだから、それ以外のことをする必要が無いのだから、それなのに、私は周りのことを考えていなかった。

今ならわかる。私は誰かのために戦うことが出来るという事がわかったのだ。

私はもっと皆のことを見るべきだったんだ、私は一人で生きているつもりになって結局は他人任せの人生を送ってきていただけなんだ。でも、それは私が弱すぎるが故に甘えていたことなのだから仕方の無いことなのだろう。

私は強くなるために頑張ろうと思っている。私はこの学園ではまだまだひよっこだということを理解したから、この世界に生まれてから私は一度も成長できたことがない。私はその事実に愕然としてしまったのである。私はこのままでいいのか、そう考えるようになった。いや違うか、考えるようになったんだ。そうしないと今の私は壊れてしまうだろうから。だから私は何もしない。いや、何かをすることが怖くて怖くてしょうがないんだ。そんな私は臆病者で、そして最低で最悪で屑でどうしようもない人間だ。だけどそれでも、そうだったとしても私は私らしく生きていこうと思っている。それが、私にとって最善の方法だから。だから今だけは逃げさせて。そうすればいつかきっと私だって変われると信じてるから。

私達の勝利が決まった後、私は彼の元に近づいていくと彼は優しく迎えてくれてくれた。それがとても嬉しく感じた。そして彼の隣に腰を下ろすと彼は話しかけてきてくれた。それが嬉しかったからつい喋りすぎてしまったかもしれない。それでも彼が嫌な顔ひとつせずに聞いてくれていたのでとても嬉しかった。

私が話し終わった時だった。突然私の頭は暖かい手で包まれ、そのまま撫でられていることに気づくまでそう時間はかからなかった。私は何が起きたのかわからずに戸惑っていたのだがそんなことよりも恥ずかしさが勝ってしまって離れてしまったのだ。でも、そのせいなのか彼に少し避けられてしまっているようで、それが悲しかったのだが、そのあと彼がこう言ってくれて凄く嬉しくなった。そして私は勇気を出してまた話したいと言ったのだった。そして彼が承諾してくれてからしばらく雑談をすることになっていたのだがそこで彼が生徒会に入りたいという話を聞いて、彼が私達と一緒にいる時間を少なくするということになってしまうと分かった時は寂しいと思ってしまったのである。だから思わず言ってしまったのかもしれない。私の気持ちを、伝えないと後悔するとわかっていながら私は言葉を口に出していた。そして彼は了承してくれた後に抱きしめられて驚いてしまっていた。その時は何故か安心することができたんだ。

それからしばらくして解散することになったので帰ろうとした時だ。

「あのさ、俺と一緒に帰ってくれる?」

彼の方から誘ってくれたので断る理由もなく一緒に帰ることにした。そして歩いている時に私は彼のことを名前で呼んでみることにし、そうしてみると意外に簡単に出来たのである。そこからは他愛も無い話をするだけだったが、私にはそれさえも楽しくて仕方が無かった。

そして帰り際になって私はあることを決めてそれを彼に伝えることにしたのである。私は彼を抱きしめると、そのおでこに口付けをした。そしてその行為を私はやりたかっただけなので気にすることは無い。むしろ私の中では良い事をした気分になっていた。

「私、沙耶香が羨ましいわ。私もあなたのことが好きなの、絶対に幸せにしてみせる。だから覚悟していてね」

私はそういうと走り去ってしまう。そして後ろを振り向いたらそこには彼がいて、その表情は呆けているように見えたのだった。そして私は家に帰った。その日から私は、彼にアピールするためにあることを始めるのである。

私は、彼に宣言してから数日が経過している。

彼に想いを伝えるための準備をしていたら時間が無くなってしまっていたので焦った結果である。そうしてまずは服装を変えるところから始めていくことにした。

「あなた、ちょっと出かけてくるから」

そう言い残して私は玄関に向かい外へと出ることにした。

私には最近になってやりたいことができた。

私は彼に私を見て欲しいので見た目に気を遣うようになったのだ。

私は綺麗だと、可愛いと言ってもらえるように外見を整えたのである。そうしているうちに、私は服を選ぶのが好きになっていったのである。なので、その好きという気持ちを活かしてみようと思ったのだ。それにはお金が必要になるので、稼がないといけないという理由もあった。しかし、私が働き始めることは両親によって禁止されているのである。その理由が危ないことに関わる可能性があるのでダメだという理由だった。でも私もそろそろ働くべきだと分かっているのだ。でもそれは出来ないので私は別の道を模索した結果が洋服を作るというものだったのだ。

そうして街に出掛けた時のことだった。私はふと目に止まった物を手に取る。それは帽子屋さんのワゴンセール商品として置かれていたもので色んなものが入っていたのである。その中で一つ気になったものがあるのを見つけ手に取ったのだ。そして私は一目見た時からその魅力に魅入られてしまったようである。何故ならこの帽子は可愛すぎるほどに私の好みドンピシャだったのである!この帽子さえあれば、この世に怖いものはないと言える程なのだ!それほどまでに素晴らしい逸品だったのである!しかも値段が安い上に品質が良いことからすぐに売れてしまっていたのでなかなか手に入れることが出来なかったのだ。だから私は運良く見つけることができ、そして即決したのである。しかし、それでは足りなかったのでもう一着作ってしまおうと思っている。

そうして次の日に、その二着と鞄を買い揃えるために街へ出かけることになってしまったのである。本当は今日も行きたいと思っていたのだけど流石に昨日も買い物をしているということもあって我慢することにしていたのである。まぁそれは仕方の無いことだよね?だって欲しいものが売っていなかったのが悪いんだよ。

私は自分の部屋の中にあったタンスの中を確認するために中に入っているものを全て取り出すとその中にあった気に入ったものを引っ張り出して並べていけば自然と満足できるような状態になっているので、すぐに準備を終えて家を飛び出したのであった。

そして家から一番近い場所にあるお店に行く。そこは色々な種類があって私は毎回ここで選んでいるのだ。そうするといつの間にか時間が過ぎ去ってしまうのはご愛敬である。そしていつもと同じように買えることができてホクホク顔である。

そうして私の買い物が終わって外に出てみれば辺りは暗くなっていたのだ。そして私が早く帰る為に近道を通れば、目の前で事故が起きてしまいそうになったのだ。それを見た時に私にできることと言えば助けるしかない、そう思った。

「大丈夫ですか!」

私はそう声をかけながら近づいていき無事を確認しようとした。しかしどうやらその人は気絶してしまっているようだ。私は困ってしまい、どうしていいのかわからない状態で立ち尽くしてしまったのである。しかし私はそこでこの人を病院に連れていくことを思い出したのだった。

そうして連れていった私はその後警察に連絡をしたりなどをして忙しくしていたら、この人の名前が、天上 零と言うことがわかった。その名前から私が思っていた印象とは全く違った人物像を予想することができ、興味津々になりつつもなんとか平静を装うことに成功させる。そうやって私が一人心の中で盛り上がっている間に、この人は目を覚ましたようで私のことを心配してくれたので私は嬉しかったので抱きついてみた。そうすれば、相手はこの人のお母さんだということが分かり私は急いで謝罪をしたのだ。だが、怒られることはなく、寧ろ歓迎されてしまっていたのである。私はこの人が凄く優しそうな人だということが伝わってきて凄く安心感があったのと同時に凄く緊張もしてしまったのだった。そしてこの人と話していて気づいたのはこの子が私の子なのだから、この人に好かれる為にはどうしたらいいのかということに思考を向けるのにそんなに時間はかからなかったのである。でもそれが私を悩ませる原因にも繋がってしまったわけだ。

それからしばらく経ったある日、私と娘はデートというものをすることになった。

そして当日になる頃には、私はもう完全にやる気を出しまくりである。

待ち合わせの時間に間に合わせるための準備を万全にしすぎてしまって時間通りに来てくれたこの子に申し訳ないと思ってしまうくらいだったのだ。そしてこの子との初めての食事はとても楽しかったのだがこの子の態度がどこかよそよそしいと感じてしまい、それがとても嫌だったのである。そしてそのあともこの子からの誘いを断ったり、断れなかったりしたのだった。私はどうしてもあの人とのことを考えてしまい、どう接すれば良いのかわからなくなってしまっていた。私は、こんなにも不器用な女なのかと自分で自分が嫌になってしまいそうだったのである。

それから数日経って、ようやく立ち直れた私は、今度はどうやったら自然に誘っていけるかを考え始めたのである。すると私はすぐに思いついたのでそれを実践しようと行動を起こしたのだった。

「あなたー!今すぐ私とお話ししましょうか?」

そしてその言葉を告げてから返事を待つこと数秒後、やっと彼が話に乗ってくれたのである。

そういえばこの前の買い物の時に買った服を着てみて欲しかったんだった。せっかくなので感想が聞けたら嬉しいなって思ってたりするんだ。だから頑張って言ってみようかな、うん頑張ろう!!

***

会長に呼び出された後のことはよく覚えていないがなんとなく俺は会長の部屋に残っていた気がする。そしてそのまま生徒会の話を聞いてみるとなんか俺に生徒会に入って欲しいとお願いされてしまったのだが、俺の答えはもちろんNO一択でしたとも。まぁ俺の本音としてはあまり関わりたくないって言うのが一番なんだけれどもな。それとこれとは別だ。それに会長にはまだ聞いておきたいことがあった。

それは会長が言った言葉に違和感を感じていたのだ。

俺のことを好きな女の子ってどういう事だろう。全く理解ができないんだが。とりあえず、この話題についてはスルーしたほうが良さそうだ。そう判断した俺はそのまま帰ろうとしたのだったが、そこに会長が爆弾発言をしてきた。そうして、その衝撃に耐えられなかった俺がその場で倒れてしまうという事件が発生するとそこからは地獄の始まりでしたね、えぇ、そうですね。何が起こったかというのを簡潔にまとめるとですね、会長が、倒れたまま動けなくなっているはずの、いやまあ、実際体は動かないのですが、頭だけは動いている状況で、しかも意識があるということを利用して、会長に、頭を膝枕されているような体勢にさせられたのですよ、そして俺はその事実を受け入れることが出来ずパニックに陥っていたのだ。

「ほらほらほらほら〜、私と付き合ってくれますよね?ね?私を選んでくれなければ死んでしまいますからね?まぁ死なれたら元も子もないんですけど。」

その発言を聞いた俺はこの世の終わりだと絶望するしか無いほどの恐怖に襲われていた。

この人は狂っている!何を言っているのかさっぱり分からないぞ。そもそもなぜこのような展開になったのかもよくわかっていない。だからこの状況についていけないというのが正直なところだったりする。それにこの人は何か勘違いしているように感じる。そう思い、俺は必死に弁明を始めた。まずは落ち着いてもらえるように説得を試みることにした。

まず最初に俺はこの人から距離を取るためにこの部屋から出て行くことにしようと思ったのである。この部屋から出たかった理由は、俺がこのままここにいるのはまずいだろという考えが頭の中に浮かんできたからだ。そして、俺はすぐさま行動に移そうと立ち上がって移動を始めようとしたのである。しかしその瞬間、急に足が痺れ始め、立ち上がることすら出来なくなってしまったのである。

その現象に対して焦った俺は急いでその場から離れようとした。しかし、それでも離れられないどころか、さらに悪化していった。その結果、体全体が硬直してしまったように動かせなくなっていたのである。

そこで俺は、その異変に気づき始めていたのだ。これはまさか呪いのようなものをかけられているのではないだろうか?という可能性である。それに気づいたことで、俺は、ここから逃げることは諦め、逆に冷静になれるようになっていったのである。それによく考えてみると、別に問題なんてなかったんだよ。そう、俺は最初から断る気満々なのだ。

そう考えた途端に今までの行動が全て無駄だったということに気づくことになったのである。なので、もうこの人を怖がるのは辞めて、この人に対しての対処方法を変えるべきだと考えた。

「すみません。僕は貴方の告白を受けられそうにないので、他の人を探した方が良いと思いますよ。では、失礼しました」

俺はそう言い残して、すぐに退散しようとしたのである。そしてなんとか扉の前にまで辿り着くことに成功したのだ。そうして、扉に手をかけたところで会長に止められてしまった。「待って下さい。そんなこと言わないで、私を助けてください!私は貴方がいないと死んでしまうかもしれないのでどうか側に居て欲しいんです!お願いします。だから行かないでください!」

その悲痛そうな訴えに少し心を動かされてしまうが、しかし俺は自分の気持ちに素直になることを選択したのである。

そしてその選択が正しいのかどうかもわからないが今はこうやって行動するしかないと思う。そして会長に断りの理由を伝えようとすると、その前に口を押さえつけられてしまったのである。そうやって無理やりにでも口を閉じさせて黙らせようとしてくるこの人はやっぱり怖いなと思いながらなんとかその手を外せないか試みることにしたのである。そしてその手を退けた時に、その人の顔を見ると、なぜか涙を流しながら泣いていたのだ。

その姿を見て驚いたのである。何故ならこの人からは恐怖や怒り、そういった感情を感じ取れずただただ悲しみの表情だけが見えたのである。そんな風にこの人が泣いている姿を見てしまうと流石に罪悪感を覚えずにはいられなくなった。そしてそのあとの彼女の言葉に俺はどうすれば良いのかと困惑してしまう結果になってしまったのであった。そして俺はそのあとすぐに逃げ出そうとしたのだけど会長に拘束されてしまった。そして俺はどうすればいいのかわからないままに結局最後まで話をする羽目になってしまっていた。そうして最終的に俺は彼女と結婚することになる。

だが、この時既に、俺にはこの世界から出る方法はもうないのではないかと感じ取っていたのである。そしてこの世界に転移してしまったことを酷く後悔することになるとはこの時の俺は知る由もなかったのであった。

俺はその後、この世界に残る覚悟を決めた。そしてその事を母に報告することにした。すると母はその言葉が信じられないと言わんばかりな表情を浮かべていたが最後には認めてくれたのである。そうしてその日の夜から俺は母に色々と教えてもらうようになったのである。そして次の日から本格的に修行が始まる。その内容は本当にきつすぎて俺は泣きそうになる毎日を送っていた。そうして数ヶ月経ちようやく母の訓練を乗り切った時、俺は、異世界で生きるための力と魔法を手に入れることができたのである。

そしてその日を境にして俺は、会長と、会長の娘である美月と一緒に過ごすようになる。そして美月に魔法を教えていくうちにこの世界で生き抜くための強さを手に入れた。


***

俺は今、この世界に来て初めて自分一人で街へと来ている。

そう何故か俺は今、1人でお使いに来ていた。なぜこのような事態になっているのかと言うと話は数時間前に遡る。

***

「あなた、これからは私の仕事を手伝ってもらいたいのですがいいですか?」

「はい。もちろんです。よろしくお願いします。それでどのような仕事をすれば良いでしょうか?」

「えっと、それに関してはまだ考えていなくて、とりあえずこの書類を整理しておいてもらえますか?」

「わかりました。」

俺は、会長から渡された書類の山をひたすら片付ける作業に取り掛かったのである。だがこの量の作業をたった2時間ほどで終わらせることができてしまったため、残りの時間を会長とお話して過ごそうとしたのだが、そのタイミングで会長のお客さんが来たので、俺はすぐに会長の部屋を出ることになったのである。

それから30分ほど経過した頃に俺は会長からの用事が済んだようなので会長の部屋に行こうとしたその時だった。俺は急に声をかけられたのだ。それも、かなり大声でだ。俺は何事だろうと驚きながらもその声の方角に視線を向けるとそこには、会長とその娘さんの姿が目に映った。そして俺は、その二人が並んで歩いてこちらに向かってくる光景を目の当たりにして固まってしまうのだった。なぜなら俺にとってその二人の組み合わせは絶対に見てはいけないものだと思うからだ。なので俺の心の中では警鐘が鳴らされていたのだ。俺の危険感知スキルが危険だと警告を発しているからである。俺は今すぐこの場所を離れなければ不味いと考え、すぐさま逃げ出すことを決意した。そしてその行動に移ると俺は猛ダッシュでこの屋敷から脱出するために動き始めたのである。

俺は会長たちから離れ、そしてある程度距離が取れたので俺は、走る速度を落とした。

ふぅー。危なかったぜ。もう少し遅かったらあの親子に見つかってしまっていた所だからな。俺はなんとか無事で済みそうだと思った瞬間のことだった。

「ねぇ!待ってよ!」と誰かが後ろから呼び止めようとしていることに俺は気づいたのである。俺の心臓はかつてないほど鼓動を打っていて、この音がバレるのではないかと思ったほどだった。そうして俺は背後を振り返ることなくそのまま逃走を続けたのである。


***

そうやって、なんとか逃げ延びた俺は街の中に入り込み、適当なお店に入る事にしたのである。そして店内を見渡すとそこにも会長の関係者がチラホラいることに気がつき、すぐにその場を離れたのだった。その行動に特に意味はなかったのだが結果的に良かったと思っている。なぜなら会長の娘がずっとこっちを睨みつけていたのが気になったので俺の居場所をバラされると非常に面倒なことになってしまうからだ。だからなるべく早くその場から離れた方が得策だと判断し、その場を離れるために移動を開始したのである。

「待って!」という先程と同じ女性の呼びかけがあったので俺は無視をしてその場から離れるように駆け出していたのである。その行動に女性は「どうして!?私だよ!わからないの?美桜だってば!ねえ、なんで私を置いていくの?私と貴女の仲じゃない。だから私に話しかけてきてくれてもい良いんじゃない?ね?ね?そうだよね?違うわけないよね?私達恋人同士なんだからね?だからほら!お願いだから私の元に戻って来て?ね?お願いだから。」と言いながら走って追いついてきて腕に絡みついてきたのである。

そして俺はその行動をされたことにより、その女性が誰なのかを理解してしまった。そうして絶望に打ちひしがれるような気分に陥った。何故なら、その女性こそ、かつてこの世界で出会った、会長の妻である人物の生まれ変わりであったのだ。そしてその女性は会長ととてもよく似た容姿をしていたのである。

俺は、必死にその女性を引き剥がそうとして、暴れ回っていたのである。

その行為により周りに目立っていたようだったが、そのせいか、会長とその娘が現れてしまったのである。俺はまずいと瞬時に思い、全力の速さでその場から逃走したのだった。しかしそれでもその女性はまだ追いかけてくる気配があり、俺は、諦めてもらうしかないと思い、ある魔法を使うことにする。そして俺は足を止めて、振り向き、その女性に魔法を使った。それは、催眠術をかけるものである。俺はそれを会長の前で使ったのだ。そして俺はその効果を実感している。その女性は、今にも倒れてしまいそうなほどの疲労を見せていたのだ。

「これで大丈夫だろ。さあ、帰ってくれ。俺はもうこれ以上関わりたくないんだよ。もういい加減にして欲しかったんだがな」俺は会長にその言葉を言ってからその場を後にする。そして会長たちの視界に入らないところに移動した。そうすると会長とその娘さんが俺に謝罪してきた。俺はその言葉を聞き、もう良いですよと返事をする。

それからはいつも通りの日常に戻る。俺はその日から、もう会長に会うことは無いと思っていたのである。しかしその考えは見事に打ち破られたのであった。そしてそれからというもの俺はその二人の面倒を見ることになりそうな雰囲気が感じ取れてしまったのだ。

その出来事があって以来、俺の心の休まる暇などないくらいに毎日何かしらの問題が起き続けていたのである。俺は、もうそいつらに付きまとわれるのが嫌になってきたのである。そうして俺は、ついに決心がついたのだ。もうこうなった以上は、あいつらをこの学園に置いて行くことだけを考えるしかないと考えたのである。そうして俺はその旨を会長に伝えることにしたのだ。すると会長は俺の言葉に対して了承した。そうして、この場に居ることをやめることに成功したのである。

だが、ここで俺は、一つの懸念事項を思い浮かべた。この会長の娘である美月に嫌われているかもしれないということだ。なぜなら俺のことを、お父様と呼びながらも、全く好意を抱いてくれないからである。それに、この前あった時、俺に殺意を向けたことがあった。あれはかなりの殺気だったので俺も結構なダメージを受けてしまっていたのだった。俺はそのことを会長に相談した。その返答は、「そんなの美月はツンデレだからなだけだよ」と、そんな訳のわからない回答だったのである。俺はそれを聞いて理解することができなかった。


***

俺は今この世界の学校に来て初めて一人で街に来ているのである。その目的はこの世界に転生した時に俺が身に付けていた物を回収することである。そして今俺が来ているのは、この街でも比較的大きい場所に位置する街であった。俺はその場所の商店街に来ているのである。

その理由として俺は、会長に俺がこの世界に来ている間に来ていた服を全て燃やされてしまったからであり、そのための着替えを買うためである。俺は今、制服姿で来ている。この世界では俺のいた国にあった服装とほとんど変わらないデザインが着られるため特に困ることもなかったのだが、流石に会長に捕まった時に着用していたあのローブだけはダメだったようで処分されてしまっていたのだ。だから仕方なく、こうして新しいものを買いにきたという理由である。そして俺はその目的を果たすため買い物を始めた。俺は、最初にこの国の洋服店で服を購入していくことにする。

「いらっしゃいませ〜、お客様どのような服をお求めですか?」と若い女性の店員が声をかけて来たのである。俺は、特に欲しいものは無かったので適当なデザインのものを数点見繕ってもらった。俺は会計の際に金貨を渡そうとしたが何故か拒否された。どうも、ここは日本と違ってお金の概念が違うらしい。そして代わりに、俺の持っていた硬貨の中から価値の低いものを手渡したらそのおつりを貰えたのだ。そうして俺は全て購入することができた。そして店をでようとした時だった。俺の事を睨んでいる女の子が目に映った。俺はこの子に覚えがある。以前、美月が俺を殺そうと襲ってきたときに会長が連れて帰ってきた人物である。俺はこの人に一体何をしてしまったのだろうかと考えるが全くと言って良いほどに心当たりがなかった。なので、俺はその人の目の前で軽く手を振ると相手から睨まれた上に、攻撃態勢に入ったのである。俺はその姿を見てかなり焦りを覚えたがどうにか抑えることに成功する。だが俺は少しイラついていたので思わず言ってしまったのである。

「おいおい、いきなり襲いかかってくるなんてどういうつもりなんだ?あんた、本当に会長の娘さんか?会長は俺なんかよりも全然強くて強い人だったんだぞ?」

と俺は言ったのだった。

その発言で相手の機嫌を更に悪くしてしまい、彼女は「うるさいわね!貴方ごときが、お父様に勝つわけ無いじゃない!絶対にありえないわよ!お姉ちゃんだって勝てないのよ?そんなに凄い人なの?嘘をつかないでちょうだい!私は、貴女の事を信じないからね!」と言われたのだった。俺は、そこでようやく相手が誰だか気づき、謝ろうとしたがそれよりも先に、彼女が俺の横を通り過ぎていったのである。その彼女の背中を見ながら俺は思う。

(はぁーやっぱり会長の奥さんの子供か、似ている部分もあったし、何より会長の魔力と同じ匂いがしていたからな。)

と、思った瞬間に俺はその女の子に手を掴まれてしまった。その行動に俺は驚くことになる。

「ちょっと!何すんの!勝手に私の腕を掴むとか、頭おかしいんじゃないの?何が目的でこんなことしちゃってるのかな?ってかあなただれなのよ!」

「えっと君は?なんで俺の手を掴んだんだ?それとなんで君がここに居るんだよ?」

と、俺は言うが、彼女は聞く耳持たずと言ったような感じで俺を引っ張り続けた。

「それは、あなたのことが気に入ったからに決まってますけど、それが何か問題でもありましたでしょうか。」

と言われてしまった。

そして、彼女はそのまま走り出すと俺を連れて近くの飲食店に入店したのである。

***

「私の名前は、神条美月です!これからよろしくね!私とお友達になってくれる?」と急に自己紹介をしてきやがって、そのせいで、周りからの注目を集めてしまい、恥ずかしかったのだ。だから俺はその状況から逃れるために適当なお店に入る。するとそこには俺に絡んで来た子と同じぐらいの子がいたのである。その子を見た俺は、面倒くさそうな予感がしたのだ。

「ねぇねぇ、そこのお嬢さん?なんであんな奴と一緒にいるの?あいつに騙されてるの?もしそうなら私に言ってくれたら助けてあげるわ!だって、あいつは私の親を裏切ったんだから、それにお父様はあいつのことをよく思ってなかったし。」とその子は言って美月の方に向かって歩いていった。

「あの方は、この店の料理を食べながら、私たちのことを待っていたんです。そして私と目が合うとすぐに立ち上がってこちらにやって来たんですよ?そして私の隣に腰掛けたと思ったら話しかけてきたんです。私達は、その時はまだお互いに警戒し合ってたのです。だけど私がお腹を鳴らしてしまった事で、あの方が私の為に奢ってくれることになったのですよ!その後は色々と話しをしただけです」と美月が言っていると隣の女性が

「ふぅーん。そんな話信じらんないんだけどね。でもあの男がお金を出すなんて相当に珍しいことなのよね。だからその話が本当なんだとしたら一応信用しても良さそうかもね。ところで、貴女は誰なの?私は神城愛理香って名前で、お金持ちの家の娘をしているわ。よろしくね!」と言い握手を求めてくるのである。そして美月にも同様に「私は、天堂美鈴っていう名前の普通の高校生をしているんだよ」と言っている。

そしてそのあと二人はお互いの話に夢中になってしまい会話に入っていけなくなってしまった。俺は、そんな彼女達を放置して俺は席を立とうとしたが美月に手を強く引っ張られて動けなくなってしまう。俺は仕方がなく美月のしたいようにさせてあげることにした。そうして食事が終わると美月に「お姉ちゃんともっと仲良くして下さい!」と言うと、美月は顔を真っ赤にさせていて可愛くて抱きつきたいと思ってしまうほどだった。そうすると突然俺の前に先程会ったばかりの少女が出てきて俺のことを呼び止める。

俺は、その声に振り返り、「俺が誰かわかるのか?」

「当たり前でしょうが。そんなこと聞かないで欲しいものなのですよ」と、何故か俺には敬語で話してくるのであった。そして俺のことを睨みつける。

俺は、どうしてこんなにも嫌われているのかが気になってしまったのである。そして俺はその理由を聞くことにした。

「俺が一体お前にしたことがあるっていうんだよ?俺と何か接点があったっけか?」と聞いたのである。

すると相手は怒りの感情をぶつけてくるのである。俺は意味が分からずに戸惑うばかりだ。そしてその女性はこう告げた。

「私は貴方のことが気に食わないだけ、それ以上もそれ以下もないの、だから話しかけたりしないでくださいね。では失礼します。貴方とは二度と会いたくないので、もう帰ってもらえませんかね?貴方と関わることはもう金輪際嫌なのです。なので早くどこかへ行ってほしいものですね。それでは」

と、言われてしまう。そしてその後俺は無理やり店から出される羽目になったのだった。そして俺は外に出ると、美月が待っていてくれたらしく、俺は彼女に謝罪をしようとしたのだが俺を見るなり逃げ出されてしまう。俺はその美月を追いかけるために追いかけるがなかなか追いつくことができず、途中で見失ったのである。だが、なんとか彼女を説得することに成功させることができたのだった。俺はそこで美月の口から驚くべき事実を聞かされることになるのであった。

************

***

どうやらいつの間にか異世界で最強を目指すことになったようです3 【電子特別版】

『 魔王と女神編』

<完>

* * *

あとがき

* * *

お疲れ様です。そして読んでいただきありがとうございます。これにて、異世界で最強を目指すことになったらしい。の本編は完結になります。次の投稿は番外編を2つほど書いていきたいと考えています。ではでは、また次話でおあいしましょう!お読み頂いた皆様にたくさんの感謝を!

「この国にいる間はこの学校にいなさい。そして卒業した時に私のところに来なさい。そうしたらこの国の支配を任せてあげる。私はねこの国を支配してみたいのよ。私のものにしてしまいたい。私はこの世界を支配出来るだけの力を手に入れられるかもしれない。そのために、まずは勇者という存在が邪魔になる。だが君ならばそれを簡単に乗り越えることができるはずだ。そうだろう?」

と会長に言われてしまったのだ。俺はこの時初めて会長の目的を知ったのだった。俺はこの世界を支配するほどの力を持つ大貴族である会長がこの世界の平和を乱すことを望んでいるということが信じられなかった。しかしそれは本当のようでこの世界に魔物と呼ばれる生き物を蔓延らせようとしているそうだ。

会長はこの世界に来る前に、とあるゲームをしていたらしい。そのゲームの中での俺は最強のキャラでありそのキャラの職業は魔導師である。魔法を極めたことでその力を存分に使いこなせるようになるがその分ステータス値が低いという欠点がある。会長はそのキャラでその弱点をどうにか克服しようと必死になって努力した。そして、そのキャラクターは最終的には俺の作った世界でのラスボスを倒した人物でもあった。

その人物が使う魔法こそが、このゲームにおいて最も強く設定していたものだったがその魔法の詠唱時間が長すぎる為に実戦ではほぼ使っていなかったようだ。なのでその人物は、ある理由からあまり魔法に頼らない戦い方をしていたようなのである。

その人物はその技を使い続ければ必ず死ぬということを承知でその強力な攻撃を放ち続けるのだった。会長はそんな主人公に憧れを抱いてしまったようである。だからこそ俺は会長に、

「会長ってば本当に変わってるなぁ。俺はそこまで強くはないんだぞ?まぁー会長がそういうつもりなら俺もこの世界が気に入って来たところだしな、しばらく滞在してみるのもいいか」と言ったのである。

そして、この国に来た理由はそれだけではなかった。それは会長がどうしても見ておきたかったものがあったからだそうだ。それは、この国の王様の城の中に存在すると言われる秘宝だ。俺もどんなものがあるのか興味があるので是非一度でいいから見てみたいと思っているのであった。そしてこの国の王に俺は謁見する事になる。その日が来るまでは、まだ時間がかかるそうで俺は今のうちに色々と準備を整える事にしたのだった。

俺はとりあえずこの街にあるギルドでクエストを受けるために冒険者登録をしに行くことにして、そこに向かったのだった。

そこで受付のお姉さんと話をしている時にある事を聞いてみた。するとそこには、ダンジョンが存在していて俺達が攻略できるかどうかを見極める為にお試しで入ってみないかと勧められた。

そして俺達はそこに挑む事になった。

俺達は全員揃って武器を手に取ると早速その場所に向かう。するとそこは、俺が最初に転移してきた洞窟よりも広い空間が広がっており俺達はすぐに敵に遭遇した。そのモンスターたちはかなり強いのが分かり、苦戦している中、突如空から雷が落ちて敵を一掃してくれたのである。そして、俺はそれが何による効果なのか理解する事ができた。それはあの人の使っていたあのスキルだということに俺は気がついていたのである。

俺がそう思った瞬間その人は姿を現して、

「あなた達大丈夫?怪我とかしていない?」と聞かれたので俺はすぐに答えると、

「そう良かったわね。ところで、貴方はなんで私の名前を?それにあの技を使ったから分かるけども、私の正体が知りたいのかしら?」と、彼女は聞いてきたので俺は素直に答えることにした。そうしないと、彼女について何も知ることが出来ないからこそ、俺はその問いに正直に返事をしたのである。そして俺は、

「そうですか。貴方は私達のことを知らないのですね。でも私は知っています。私は貴女のような存在は知っている。この世に存在するはずがない。いえ、もしこの世界に転生者が居るとすれば私達しか存在してはいけないのです。貴女は何を知っているのですか?そして、その知識を教えてください」とお願いをされる。俺はそんなことよりもまずはこの人達が何者であるのかを知る必要があると考え質問を返したのであった。

「えっと、そんなことよりさ。あんたらは何者でどういう目的でここにやってきたんだ?その目的を教えてくれないと、協力しようがないしな」

「なるほど。その件については、こちらからも話すべきことがあるのです。なので一旦場所を変えて詳しい話を聞くとしましょうか。」

俺はその人の指示に従いその人に案内されるがままについて行く。するとそこは、先程俺が倒した敵のドロップ品などが保管されている場所で俺と美鈴が倒していたのでそこに保管されていたものをアイテムボックスに入れていったのである。

そして俺は、彼女の正体を聞くための準備として美鈴の過去についての話をする覚悟を決めた。

そして、美鈴の過去に纏わることについて全てを話し終えて、彼女も美鈴のことを調べて調べてわかった情報をその人が話し出すと、

「まさか美鈴の身にそんなことがあったとはね。確かにそんな事が起これば誰とも付き合いたがらなくなっても仕方がないのかもしれない。でもそれじゃダメだと思うんだよ。だって今の貴女は過去の美鈴じゃないんだよ?今は新しい人生を楽しむ為に色々と行動を起こしている。そうすることできっと、これから先の未来を変えることが出来るんだよ。その証拠に私が助けてあげたんだよ。私は、もうあんな悲劇が起きるのをもう見たくないんだよ!だからその記憶を思い出して前に進みなさい!そして私は、そんな貴女を助けてくれたあの人と美鈴と仲良くなってほしいと思う。」と優しく告げられた美鈴はそのまま泣いてしまい俺のことをぎゅう〜と抱きしめてくるとそのまま俺の胸に顔を埋めた状態で泣き始めてしまったのだ。俺は仕方なく美月の方を向いてアイコンタクトを送るが、美月は何も言わずに顔を横に振って拒否をされたのである。

俺はその状態が続くと流石に気まずいので、その女の子に向かって、

「なぁ、そろそろ説明を始めないかな?俺たちはまだ君の名前さえ知らなんだよ?」と言うとその子が突然慌てるのである。

そして、自己紹介をしてくるのである。そしてその名前はなんとこの国で一位を争う程の実力者で、しかもこの国では勇者と呼ばれ慕われている存在である。だがこの国には勇者と呼ばれる人物は何人も存在しておりその中でも最強と言われる人物が目の前の彼女だと言うのだった。俺はそんな彼女に名前を教えるのだった。

「私は、貴方のことをよく知らないのよね。それでどうしてそんなに強いの?」と、いきなり核心を突くようなことを言われてしまったのである。俺はこの子に嘘を言うわけにもいかないしなと思って、俺の本心を打ち明けることにした。

「俺は元いた世界で最強のキャラを目指していてね。だからその努力をしてここまでたどり着いたっていうだけなんだ。だから、別にすごくもない。だけどその努力を続けてきた結果がこれという訳で、まぁー努力すれば必ず報われるとは限らないという教訓になった出来事ではあったけど、まあーいいかなって思ってる。そして君は、美鈴のことは知っていたりする?」

「もちろん知ってるよ。あの子は、昔っから元気いっぱいだったもん。そしてそのおかげで私は何度も命拾いしたことだってある。」

俺はその言葉で、あることに思い当たることがあった。それは以前、あるイベントが起きた際に、とあるキャラクターがこの子と似たような発言をしていたことが頭の中によみがえったのだ。それは、俺がとあるイベントでラスボスに勝つ為に修行をするという内容だった。そのイベントでの俺はラスボスを倒す為の最終奥義を放つ準備の為に長い時間をかけて準備をした。その結果何とか倒すことに成功していたのだが、その技を使うためには膨大なエネルギーが必要であり使うたびに体に多大なダメージを負ってしまうのが難点であった。そんな状況の中で、彼女は俺の命を守ってくれたのである。そしてその時はお礼の言葉を伝えてその場を離れたような記憶がある。俺がそんなことを考えている時にも彼女は俺に話しかけてきて

「私のお願いを聞いてくれる?私と一緒にいると危ないことが起こるかもしれない。そしてもしかしたら私の側に居続けると死んでしまうかもしれない。それでも私のそばにいたいと思える?私を信頼してくれるのであればその気持ちを大事にしてあげてほしいの」と真剣な眼差しで俺の目を見つめてくる。

俺はそんな彼女を真っ直ぐに見返して、

「ああ、俺は君のことが好きなんだ。こんな感情は初めて抱いたものだから、どうしたらいいのか分からないし不安でもある。俺が死ぬのはもちろん怖いことだと思っている。だが、それよりも大切なものを守るために俺は自分の命を捨てられるくらいなら、喜んでその身を投げ出してしまうと思う。そして君を危険な目に合わせることだけは避けたい。だからこそ俺を頼ってくれ、俺は君を守る騎士になろう。」

その言葉を聞いた彼女は俺に抱きついてくると涙を流し始める。そして俺は彼女を落ち着かせる為に、背中をさすり続けてやった。すると、その涙を止めて、何かを決意したような表情を浮かべると俺に、

「うん。分かったわ。私は貴女の事を好きになっても良いのよね?それと絶対に後悔しない?私は、あの時から貴女の事が好きで好きでたまらないのにずっと隠してきたのに。今更貴女にそんなこと言われたら嬉しくてどうにかなっちゃう」

と告白された俺は思わず赤面してしまう。そして彼女が、

「ねぇー私と結婚してください。貴女の事は、私が幸せにする。この世界のことも教えてあげるから安心してね?でもまずはお互いのことを知ってからにしましょうか。」と言われてしまったので、俺は、

「俺も好きだぞ。でも、まずは俺のこの異世界での目的を果たす為に、その目的を果たした後、結婚を前提に交際しても良いか?」

そう聞くと、

「ありがとう。その言葉を言ってくれて本当に嬉しいです。私と付き合ってください!」

「こちらこそよろしく頼む」

俺は彼女に対してキスをするとそのままダンジョンの攻略を再開したのである。すると美鈴と真鈴と三姉妹達がこちらにやってきて、

「私たちの旦那様に何をするんですか!抜け駆けするなんてずるいわ!お姉ちゃん」

「ちょっと待って。何勝手に決めてるのよ?貴方は、私と結婚するのが運命であり決定事項でしかないの。だから邪魔するんじゃないわよ?あんたはそこで指を加えてみてればいいのよ。ね、祐樹さんは、誰と結婚したい?私を選んでね。私だけを。ね?」

「そうだよ〜ゆうくんと、結婚しようね〜」

「そうですよ。祐介さんは渡さないのですからね?」とそれぞれが主張を始めた。俺は、そんな光景を見てこの人達の関係性が何となく見えてきた。この3人は仲が悪いのか良いのかよく分からんな。とりあえず俺のハーレムの一員になりたいようだ。それにしても、美鈴まで仲間になってしまっているのは予想外だな。だが、これから先、魔王を倒せるかどうかもわからない現状で、俺の仲間が増えてくれればありがたいことなのだが。

「おい、そこのお嬢様達!ここは俺たちの場所なんだよ。さっさとどこかに行きな。でないと、痛めつけることになってしまうぜ。俺たちの目的はそっちの男だけだ。そいつさえ渡してくれれば他のものは見逃してやるんだから、大人しく渡すんだな」といきなり横槍を入れられたのだ。俺としては早く終わらせたかったのだが。

そして、俺は仕方なく戦うことになった。

俺はそっと腰にある剣に手を当てた。その行動だけで相手はその殺気に気づくのであった。

俺は、目の前にいる4人組がなぜこの場所に現れたのかを聞くと、その男達は笑いながら答えてくれる。どうやら彼らは、ここに現れる魔物を倒してレベル上げをしてここのボスを目指しているらしい。だから、俺たちがここで経験値を稼いでいたのが目障りだったので、わざわざ警告に来てくれたみたいである。だが、俺は正直言って、目の前の彼らがそこまで強者とは思えなかった。確かにレベルはそこそこあるように感じるがそれくらいであると予測しているからだ。そして彼らからは殺意が一切感じられなかったのだ。そんなことを思っていると、その男たちの一人に鑑定を使った。するとそこには 【勇者】

称号:正義の勇者 Lv 95 HP 9000/9500(12000)

MP 3000/2500(3500)

攻撃力 15000

(24000)

防御力 10300(13200)

敏捷力 9700(12800)

精神力 8000 運 100 と表示され、スキル欄を確認するとそこには、やはりと言うべきか、回復系や補助系のスキルがあったのだった。

これは厄介な奴が現れたとしか言いようがない。そして、その男の横に居た女性がこちらに向かってきたのである。

「私は、あなたの事が大嫌いでした。それは今も変わりません。だって私はあなたに助けられてから貴方のことが好きなはずなのに、どうしても思い出せないのよ。だから私は、私の過去を知るためにも貴方と勝負をします。もし負けてしまった場合は素直に諦めますが、その時は二度と私の前に姿を見せないでくださいね?そして、もし勝つことができたならば私のパートナーになりなさい。」と言ってくるのである。その女は、金髪で青い瞳をしていてとても美人な顔立ちをしているが、何故かその瞳の奥に暗い何かが潜んでいるのを感じる。そして俺はこの女と本気で戦わないとダメな気がしていたのである。俺はそんな気持ちのまま戦いに挑んだ。

だが俺は一瞬でその女の攻撃を受けてしまった。そして、この女には、今まで出会ったことのないほどの実力を感じたのだ。だがそんな女と俺との戦いが始まった時、

「もうこれ以上は見ていられない!俺が相手をしよう。」と言い出した男が一人いた。そして俺は、その声に聞き覚えがあり振り返ると、そこに居たのは、俺の幼馴染みでありクラスメイトでもありライバルでもある、高坂 真友という存在がいたのだった。

「お兄ちゃーん!会いに来たよー!って何この状況?どうなってるの?」というなんとも気まずい状況を作り出しているのにも関わらず空気が読めていないこの妹よ、お前のメンタルは何物にも屈しないと証明されてしまったな。そして俺はこの妹の対応に慣れてしまっていた。それはなぜかというとこいつは俺の妹で、昔から、俺がピンチの時には駆けつけてきてくれていたからであるからであった。俺はそのことを理解してしまったのだ。俺は今この世界についての説明をした。そして俺が説明し終わると

「そうなの?お姉ちゃんは、私を助けてくれた恩人だけど、そんな人が困ってたっていうのに私は何もできなかったのかな?なんか自分が悔しいな。お姉ちゃんの力になれないならせめて、私はお姉ちゃんを助けることが出来るくらいに強くなりたい。そしてお兄ちゃんと一緒に居られる時間を大切にしたい!」と言った後に真剣な眼差しになった後、俺をしっかりと見て

「お願い。私はお兄ちゃんと一緒に居たいの。だから私も仲間に入れて欲しい。お願い」

俺はその発言を聞き流さずに、受け止めてあげることにした。

なぜなら俺の大切な仲間が増えることは喜ばしいことだったから、 そしてこの場にいる全員の自己紹介が終わると俺に攻撃を仕掛けてきた、勇者の攻撃を俺と一緒に避けたり、弾いたりしてくれたおかげで俺は余裕が出来て相手のステータスを見ることができたので解析を発動することにした。

【聖者

天性の聖者の力を秘めている 固有スキル『神の加護』を持っている為全能力が大幅に強化されている為、攻撃と防御が特に優れている 職業特性は、状態異常付与が無効となる代わりに物理魔法攻撃力が50%ダウンしてしまう 武器が使えない 固有ユニークジョブ:聖女

全ての属性を扱うことができるが、その中でも水が一番得意である 職業スキル:浄化 ヒールより上の効果を持つキュアと、状態異常ならなんでも治してしまうヒールの上位互換スキルであるリカバリーがある

装備:聖剣デュランダル 聖なる剣】となっていた。これを見て俺は思ったのだが、この女の固有ジョブは、俺が見たことがないものばかりで、少し驚いたが、その力は本物だと確信することが出来たので、全力で相手しようと決めた。すると、俺が戦うと決まった途端に相手は嬉しそうにニヤけていた。

どうせ倒すから、別にいいかと俺は考え戦闘を続行したのである。すると俺が動き出してすぐに俺はまた吹き飛ばされてしまいそうになる。

俺はそれを耐えると次は相手が吹き飛んでいく。そんなことを繰り返していた。すると俺は相手の後ろに瞬間移動をして思いっきり背中を切りつける。だが、全くダメージを受けなかったのか普通に立ち上がって、

「あら?今、私の背後に回ったような気配がしたのですが?まあ気のせいでしょうね。それよりさっきの攻撃は結構効きましたね。なので私もこれを使わせていただきましょう」といいその手に持っていたのは一本の槍だった。

するとその槍が眩しく光り輝き始め光が収まるとその姿を顕にしたのであった。その槍の姿はとても綺麗でその柄の部分は全て真っ白に染まっておりとても美しい姿をしていたのである。

「では改めて行きますよ!」とその槍を構え俺に突撃してきたのだ。俺はその槍を受け流すことにした。そしてその次の瞬間に、俺は腹に激痛を感じてしまった。そうその槍は、先ほどよりもさらにスピードが増しており俺は受け流すことが出来なかったのであった。俺はそのまま吹き飛ばされてしまった。しかしそこで、俺は地面に手を触れ土の壁を作ったのである。そしてその壁が壊れてしまう直前に俺はその場から離れた。

だがそれでも俺にダメージを負わせることに成功した相手はそのまま俺を追いかけてきた。だが、その追撃を許す程、俺は甘くない。俺は相手の背後を取ったのと同時に地面から石でできた腕を出し相手に攻撃を仕掛ける。すると、その男はそれに気づいたのか、俺が繰り出した攻撃を自分の身体を回転させながら槍で切り裂いて行った。俺はそのことに驚くがすぐさま体制を立て直す為に、距離をとると俺は、相手を倒すための手段を考えていたのである。そして俺にできる最高の一撃はやはりあれしかないだろう。そうして俺は覚悟を決めるのであった。そして、俺は剣を構えた。するとその行動を見た相手は、何かを警戒した様子を見せていた。だがその心配も無駄に終わりそうである。

俺には今二つのスキルが宿っている。その一つ目は、空間操作と転移である。そしてもう一つは神魔融合である。これは簡単に言えば、自分と相手とのステータスを一時的に足し合わせることが出来るというチートなのである。俺は、これを初めて使うのである。つまりこれがどういう事かというと、俺は相手から奪った能力を俺自身が使えているという事になるのだ。これは相手から奪うという形になるので、その能力の効果が切れた後、相手からは俺の能力も消えることになる。だが今回はそれが幸いしたのか相手の能力がかなり弱体化された。

俺はまず、その男の動きを止めようと試みることに決める。そしてまず俺はその男の周りにある空間に魔力を流すことによって相手の体を拘束することに成功したのである。その男はそれを引きちぎろうとしたみたいだが、なかなか上手く行かないようである。その男の行動を邪魔するために俺は男の目の前に移動したあと、蹴りを入れてやったのだ。その結果その男は見事に倒れ込むことになった。すると

「あなたは何をやっているのですか!そんな奴には私の必殺をお見舞いしますわ!これで終わらせます!必殺!流星雨!!」その言葉と共にその上空にいくつもの光の球体が出現する。

俺はその光景を見ながら、これは流石に俺も死ぬかもしれないと思ったのだった。

俺は、相手の放ったスキルに対して、俺の使える最強の技を使うことに決めると、その技の名前を心の中で叫び発動させたのである。

「スキル発動!雷神の剛拳!その一撃は、まさに、閃光のように一瞬で決まる!この攻撃は俺自身だ!」と。俺が叫ぶと俺の手の中に俺が使える全ての力を集めた、究極の一振りが生み出され、その刃が相手を捉えた。そして、俺の意識はその一刀とともに刈り取られたのである。

ーーーーーーーーーーーー 俺は夢を見ていた。俺が小学生低学年の時の思い出。

あの頃の俺と、そしてもう一人の少年がいた。その二人の少年の名前は高坂 悠斗と、天宮 和也。俺たち三人はよく公園で遊んでいた。俺と悠斗は幼馴染みだった。俺はそんな毎日が楽しかったのだ。

そして、俺と、もう1人の幼馴染みの少女が、いつも一緒に遊んでくれる優しい男の子に恋をしていたんだと思う。俺もその子に告白したいと思っていたけど中々タイミングが合わず、俺は焦っていたのである。だからなのか俺は少し意地を張ってしまったのだ。

「お姉ちゃん?どうしてお姉ちゃんだけなんだよ!俺は!お兄ちゃんの事好きだから!大好きだから!だから!」と言うのだが、そのお姉ちゃんと呼ばれるその人は笑顔で言うのであった「お姉ちゃんもね、真友くんのこと大好きなんだけどね?今はね?まだこの気持ちを伝えられないのよ」と言った後に

「でもいつかきっと言える時が来ると信じてるの」と言って微笑んでいる姿を見ていた。俺はその発言を聞いた時、胸が苦しくなったのだそして俺の心の中のどこかで誰かが言っている声が聞こえるような気がしていた。

ーーーーお前はこの人に好意を寄せているのだ。ーーーーーー ーーーお前は今この人と結ばれることは絶対に無いのだ。だってお姉ちゃんと呼ばれている人が好きになったのはお前じゃないからな、その人は今俺の隣で眠っている人なのだ。その人は既に、俺のことを好きになっていたらしいのだが、俺が素直になれなかったせいで、俺はこの人が俺ではない違う人に惚れる前にその人から離れて遠くに行こうとしていたのだった。俺はこの時から自分が幸せになることなんて許されないと思ってた。

俺は俺を好いてくれる人が、その人が俺を好きで居続けてくれさえいればそれで良いと考えていたから。

そんな俺にもチャンスが訪れる出来事が起きたのであった。そのお姉ちゃんとよく遊んでくれていた男の人は、中学二年生に上がる頃ぐらいに転校してしまった。俺はその時、凄く悲しくなりお姉ちゃんと泣きまくったのを覚えていた。そしてお姉ちゃんの口から「ごめんなさい、私のせいであんな悲しい思いをさせちゃって」と言われたのを今でも覚えている。そしてこの話を聞きながら、その女の人はずっと俺に謝ってくれていた。

それからしばらくして、今度はその女の人も引っ越して行ってしまった。俺は、また一人になってしまったと寂しい想いをしながら過ごしていた。そして中学生になった時、ある噂が流れた。

それは、「あの女達は皆揃って同じ高校に通うことになっている」というものが広まったのである。俺はその話を聞いた時に不思議と嬉しさを感じた。俺は、あの女達に負けない様に必死になって努力をしたのだ。勉強はもちろん運動なども。そして俺の努力の結果もあって俺は無事入学することが出来た。そしてこの学校に、俺と同じ学校に入学することが決まった人たちがたくさんいることに驚いてしまい、そして、その顔を見て、懐かしさを感じてしまい俺は思わず涙を流してしまっていたのだった。そして、俺のクラスに、あの女の人が集まってきていて、その人達の顔を改めて見つめた時に、何故か俺は違和感を感じるようになっていたのである。そしてその女の人を俺は無意識に見てしまい、その子と目が合ってしまう。俺はなぜか、目を逸らすことが出来なくなりじっと見てしまったのであった。

俺はその女の子と目があったときに思ったことがある。「俺のことが忘れられなくて戻ってきたのではないか?」と俺は思っていたのであった。しかし俺の思い違いだった。

俺とその女の子が話をしているところを見て、俺は衝撃を受けた。その俺と話をしている子の周りにいる子は誰一人として俺の知っている人がいない。それにその子と俺との仲良しアピールがとてもイラついた。まるで俺に見せつけるように。そこで気づいたのである。俺と仲が良かった友達たちは別の学校に行き、その人たちは今現在彼女達の近くには誰もいないことに。そしてそこで俺は気づいたのだった。彼女たちがここに来た本当の理由に。俺は怒りを感じていた。なぜ今更、この場所に現れたのかということを。

そうして、彼女はその学校の女子生徒たちと楽しく過ごしていっているようだった。俺はそんな光景を見続けている内に俺は心の底からムカついていてその感情を抑えられなくなったのだ。そしてある日の放課後についに俺は行動を起こしてしまったのである。そして俺は、彼女と話すために彼女を呼び出した。

「なんであんたがここに来たんだ!」俺は、いきなり彼女に怒ってしまいその勢いのまま、言ってしまった。

「私は、あなたの事が好きだからです。私と付き合って下さい」彼女が突然に言った言葉である。俺はそれに驚きながらも冷静に対応する。

「悪いけど無理なんだよね。君には俺なんかよりもっ相応しい奴がいると思うんだ」と俺は嘘をつき彼女の告白を断り俺は立ち去った。しかし、次の日俺は後悔することになるのだった。そうして俺はその日のうちにその事について色々と聞いて回った。

「おい!昨日のこと詳しく教えてくれないか?」俺は周りの生徒にそう話しかけた。すると、一人の生徒が俺に向かってこう言ってくれたのだ。「え?何の話をしているのかさっぱりわからないのですが、とりあえずその質問に答えるなら、あそこに居る女の子は、今年の新入生でとっても可愛くて有名な天音 雪さんだよ。あとそれと君の事を話してるよ」

「へぇ〜俺の事を?なんて話してるのか教えて欲しいんだが?」

俺は少し嫌そうな感じで聞いた。

すると俺のその反応を見たのか「うーん。俺もよくは知らないんだよねぇ〜」と言って、去って行ったのである。そして俺はすぐに教室に戻り机に伏せて寝ることにした。

だがどうしても俺は眠れずにいて仕方がない為、校内をぶらつく事に決めたのである。そしてふと気になる場所を見つけるのである。俺はその場所に足を踏み入れてみるとそこには小さな部屋のような所があり中に入ってみると、たくさんの花が置かれていた。

俺はなんとなくその花束を持って、俺はその場から離れようとした時、後ろの方で人の気配がしたのだ。

その瞬間、俺は反射的に振り向き相手の出方を警戒した。すると相手からは意外な言葉がかけられたのであった。

「お前かぁ、俺の大切な仲間を殺ったのは」

と。その男は俺の顔を見ると、俺のことを知っていたのか「やっぱりお前なのか!俺の仲間の敵討ちだ!」と、俺の顔面に拳を叩き込んできた。俺はその攻撃を何とか避けることに成功する。そして俺はすぐさま、スキルを使い男の後ろに回り込み攻撃態勢に入ろうとした。だが男の攻撃は止まらない。その男の一撃を受け止めると、あまりの重たい一発によって俺は、後ろに吹き飛ばされそうになるがなんとか堪えることができた。男は俺の方に突っ込んでくる。俺はすぐに反撃の構えに入るが相手の動きの方が速く俺は腹にパンチをくらい地面に叩きつけられてしまう。その衝撃に一瞬意識が飛ぶものの俺はなんとか意識を保った状態で立ち上がることができた。

俺と男の間には沈黙が流れるがそれを切り裂くようにして俺が口を開く。

そして俺は相手の名前を聞こうとしたのだがその必要はなかったようだ。男が言う。

そしてお互いが自己紹介をする。

「俺は黒須 裕斗っていうんだよろしく頼むぜ」俺はその挨拶を聞いて、自分の名前を名乗ろうとするが俺の声は、もう届かないのだなと思い。そして俺と、もう一人の男の友情が終わりを告げる。俺の目の前でその男の身体が崩れ落ちたのであった。そしてその光景はまるで映画のワンシーンのように思えたのであった。そしてその倒れている人物の心臓付近にナイフが突き刺さっていた。

俺はその後すぐにその場を逃げ出したのである。そして俺は家に帰宅することにした。そして家で一息ついている時、俺は考えていた。俺は、あいつとは戦って勝たないといけないという気持ちになった。なぜなら、あいつは死んだはずだから。だけども今ここで考えても答えなどわかるはずもなく俺はそのことについて考えるのを辞めにして風呂に入った後、俺は眠りにつくことにするのだが結局俺は寝ることが出来なかった。それから翌日になると俺はまたその現場に向かうのである。俺は昨日の夜考えた作戦を実行する。

俺にはこの方法しかないのだと自分に言い聞かせながらその現場に再び訪れることにした。俺はあの時とは違い慎重に、そして、警戒しながら進んだ。そして俺がその場所に着いても特に変化があるようには見えなかった。

しかし少し時間が経つと何かが起きようとしていることがわかった。そう、この世界から消えるのだ。あの空間に。俺はその時に俺はその現象を止められると確信した。

俺は俺自身を信じてその世界に足を入れると俺は俺が予想していた通りの世界に入っていたのだった。

俺は、俺自身の考えが合っていたことに満足感を覚えつつこの世界を見渡すことにした。俺はこの世界をこの前よりもよりよく見て回ろうと考えたのである。すると俺の前に誰かが現れていた。俺はその現れた人物を見て驚くのである。それは、今俺の考えている事とは全く逆のことを言うのだから。

そして俺はこの世界の時間を止める。これは俺にとってはただの時間稼ぎに過ぎなかった。だがそのおかげで、この世界で起こっている出来事を知ることができるのである。

俺の考えは見事に当たり、今起きていることをしっかりと確認することが出来たのであった。

そしてその出来事を確認した後に俺はすぐさま、その出来事を終わらせるために動き出す。そしてその物事が終わって俺は元いた元の場所に戻ってきた。俺はこの能力が、自分以外の物でも出来るのではないかと考え始めたのであった。そこでもう一度俺はその能力を試すことにした。そうしてまた、俺は別の世界に行くことができるようになることに成功したのだった。それから俺は何度か別の世界を行き来し俺は、ある結論に至ることになる。それは俺のいる世界でも時間を操作できるのではないかとそう思い俺はやってみることを決意したのである。

俺は早速行動を開始することに決めた。まずはこの場にいる奴らにバレないようにすることから始める必要があるだろう。そうして俺はある一つの作戦を思いつく、それは自分自身の存在を消して俺の行動を周りから認識されないようにすることだ。これなら確実に誰にも気づかれずに動くことが出来ると踏んだのだ。まあそれでも念の為に、周りの人間から姿を見えないようにしておけば安心だろうと、そして俺は俺自身が存在していることを忘れさせるような感覚で、そのスキルを使うのだった。するとどうだろうか俺の身体の周りを白い光が包み込んだ。そして次第に消えていき完全になくなったと思ったらそこには誰もいなくなっていた。俺は成功したのであった。

そして俺は、その能力を使って他の人に俺の事を気付かれないよう注意を払いつつも俺のやりたいことややるべきことをしていくのであった。そうして俺のこの異世界に来てからの目的が決まっていき、それが終わるまではこの場所に留まり続けることを決めた。そうして俺は俺の能力の限界を探ることにしたのだった。

「よし!やっとここまで来れたな!もう少しだ。これで私の計画も一歩前進するぞ!私はこの国の女王になり私に逆らえるものなんて誰一人として居ないんだ!」そう言っていると私の周りに魔法陣のようなものが現れると私の周りに人がたくさん現れるのだ。私はそこで自分がどこにいるのかを理解することになったのだ。ここは城の中のようだと言うこともわかったのだ。そしてその人たちは皆んながみんな仮面をつけていて性別は分からないのだ。そして私の前では王様のような格好をした者が話を始めたのだけれど。何を言っているのか全然わからなかったから無視することにしたのである。

私がそんな状況になっていると突然扉から一人の男が入ってきた。見た目から分かる事はこいつはかなりの実力者だという事がわかるほどの強者の雰囲気を出している。それにしてもどうしていきなりそんな人物が入ってくるんだよ!それにどうやってこんな所に?まさか侵入者の類ではないと思うんだけど?すると私の近くに立っている人達が「こ、この方は国王陛下だよ。なぜこんな所に?」と、驚いていることが私にも理解できたのだった。しかし、その男は一切動揺することなくその王に向かってこう言っていたのだ。

「あなた様がここのトップの方でしょうか?」と。私はそれをみてかなり驚いた。私は今までに一度もこのような場面を目にした事が無かったからだ。だが王は余裕な態度のまま「いかの通り私はここの王の"ザッハーク•ドラルグ·ラドルリバル"だ。君は何者かね?一体ここに何用があってやって来たんだ?答えろ」と、言ったのだ。するとその男は、「初めまして私の名前は、、、?????です。」と自分の名前を名乗る前に不自然なところで止まる。そして次の瞬間に、その男は自分の頭を撃ち抜いて死んでしまった。それを見た周りの人たちが悲鳴をあげるのは当然の事であろう、その男の死はまるで何かの演出かのように、あまりにも綺麗に死にすぎていた。その光景を見た周りの人はその死を受け止めきれず、泣き崩れる人もいれば吐き気を抑えられず嘔吐している者もいたのである。だがそんな中で冷静に事の状況を把握できているものも中には存在していた。そしてその一人である私はその男が死ぬ前に呟いていた言葉を聞き取れなかった事に悔しさを感じ、今すぐにでも殺さなければいけない相手だと思うようになったのだ。

そして私も周りの反応に合わせるように取り乱すことにし演技をして見せた。そしてすぐにこの男を探そうと心に決めるのである。その男の事を考えると心が高ぶるのを感じたのである。そうして私はその男が殺された現場を調べるために、部屋から出ていく。そして私はすぐにその場所に向かったのである。そこにはその男の所持品と思われるものがあった。そしてその男の所持品の中身を調べてみたが大したものは入ってなくすぐに見終えてしまった。するとそこには一つ、日記のようなものがあったので読んでみることにする。そこには自分の事を、この国の王に報告した内容が記されておりそこには、自分は勇者なのだと、その力を使ってこれからの世界を良い方向に持っていけると豪語していたのだが、それは間違いだったようだ。自分の考えでは上手く行くはずなのに何故だと嘆いている。私はその男の日記を読んでいた時ふと、とあることが頭をよぎったのである。もしかすると、その男を殺したのは同一人物ではないかと言う可能性が出てきたのである。もしそうだとしたら、この男は相当な手練だということは一目瞭然である。そう思いながらもその男の荷物の中に入っている道具などを見ていた。そして、その男が死んだ理由と繋がるようなものを探したが全く見つからなかったのだ。そうこうして時間が経つと、私のいる部屋に先程の王が入ってきて、私を呼び出したのだ。そうして私は、この男が殺される前までのこの城での日常について話をすることになったのである。

「なるほど、それは興味深い話だな。君はとても頭がいいんだな」と。この男の発言を聞いてやはりなと思い。そのことについて尋ねてみることにした。

「あの、質問なんですけどその、あなたが殺された方とはどういう関係なんですか?」と聞くと。

「あぁ〜そのことか。それは簡単さその殺した犯人はこの私なんだよね。まぁ簡単に言うとだけどね。その証拠はないからね」と言って、その証拠になるものを見せてくれたのである。その紙には私の筆跡がありその日に起こった出来事などが書いてあるのである。その紙の最後にも私の文字で「殺すべき人を見つけた。絶対にあいつを殺してやる」と書かれていた。それを読んだ私はその手紙に血相を変えて詰め寄る。そして問い詰めたのだ。お前が殺してきたのだろうと言いながら。そうして私はその王に殴りかかる。

そして殴ろうとした拳が届く寸前にその王は消えたのである。いや違うな、消えてないのかもしれない。その男はその王ではなく、全く知らない別人だったのである。その人物をよく見ると、それは、私の部下のものだった。私はその部下の顔を殴ってその場から離れることにした。

その部下は意識を失いその場で倒れ込む。私はすぐさまその場を離れて別の場所に転移をする。そしてその移動の際にその場所に残っていた気配を探るとそこにはその男の死体が転がっていたのだ。

そしてこの場から離れて行く時に何かしら嫌な感じがしたのである。その違和感の正体に気づいたのはしばらく経ってからである。その男はあの、その、、そう私に殴られた時に確かにあの場にいたのだ、、そしてあの男はこの世界にいる全ての人間に自分という存在がそこにいたという事を記憶されている。そうじゃなければおかしいのだ。なぜならこの世界に存在しているものは私がその世界に入ったときに消えるからなのである。そして私はこの事実に絶望していた。その男が死んでしまった以上その男を蘇生させることは出来ないからなのである。私はこの男を蘇らせるために必死になって考えた。どうすればその方法が実行できるのかと、しかし一向に思いつくことはないのである。そこでもう一度その男の部屋に戻ることにしたのである。そこでその日記を見つけその内容を見るのである。しかしその男の日記はもう既に読めなくなっていたのである。そう、そこにはその男がその日記を書いた日付だけが存在していたのだ。そして私は、その日記の最後の部分に何か手がかりがあるのではないかと、思い読み始めると。それは、ある一人の人間が、その男の能力を真似ようとした時の日記であることが判明したのだ。その男は自分なりに頑張って能力を発動しようとしていた。そして、その時にその男の脳からある情報を得ることに成功した。そして私はそれを元にある場所へと向かい始めたのである。

私が今目指している場所はこの城の中でも最も強い者がいるところである。そうして着いた先はこの城の最強の人間"アルフォード•ドラグナー"とかいわれている奴がいる所である。そこに入るとそこには一人の少女がいたのだ。そしてその者は私を見ると「何しに来たのか聞いてもいいかしら?」と言われ「その答えを教えようと思って来たんだ」と、私は返す。「そう、まあいいわ。あなたのその行動で私がどんな反応を示すのかが見たいだけだしね。それにその答えも、きっと嘘だろうし、私としてはどうでも良いんだけどね。まあ、とりあえず私の実力を見てもらいましょうかね?」そうしてその女の人の姿がどんどん変わっていき、最終的にはその人は龍の姿に変化していたのだ。そしてその姿を確認した瞬間に私は全力の魔法で攻撃を開始するのであった。しかしそれもその女に軽く防がれてしまうのであった。私はその後何度も攻撃を仕掛けるがその全ても相手に届くことはなかったのである。私はその姿を見て諦めることにして帰ることにしたのだ。

私はあの時見たものが幻覚だったのではないかと考えるようになっていた。私は今までに何度かこの世界の人たちの能力などを確認するためにこの能力を使用していたのである。その中で一番最初に確認したいと思った相手があの男、そう私が一番最初に会った男でありあの男が最強と言われるような存在であると確信していたからだ。だからあの男が殺されないようにと色々と手を打ってきたがそれが、全部無駄に終わってしまったのである。私はそれからも何度も同じことをした。

そしてある時ふと疑問が生まれたのである。私が今までに見てきたものは全て幻覚だったのでないか?もしくはただの勘違いだったのではないだろうか?そう考え始めてしまった。私はそれを調べるために自分の能力を使用しながら今までのことを思い出していたのである。すると不思議な現象が起こったのである。この国で一番強いと言われていたアルフドドラが殺された事が記載されていたのである。私はそれを見て驚きを隠せなかったのである。なぜならば私はその男に自分がここに居ることは伝えていないからである。つまりその男の死亡時刻にはその男はまだこの場所にいなかったと言う事になるのだ。それにその死亡した場所には何も残されていなかったと、私はここでその男が何者かによって殺されたということを理解するのである。

その何者かは分からないけどその男が死んでしまったと言う事を考えると。私はかなりまずい状態になってしまったと言えるのだ。そう、その死んだ男を殺した何者かは確実に私の存在を認識しているのだとわかるのだ。そうなるとその人物は私をこの世界で自由に動かすことができる唯一の人物になってしまうからだ。そんな事を考えるだけで吐き気がする。そう私はこの世界で最も強く最も恐ろしい敵と戦ってしまったことになるからだ。私はすぐにでもその人物が誰かを調べようとする。だが私はある一つの事を忘れていたのである。そう、その人物は既に死んでいるという事実に気がつくのである。これはかなりまずい状態であると言えよう。私は急いでこの部屋を出ていこうとすると、私に近づいてくる男を一人見つけたのである。その男に私はこう問いかける、「私の質問に素直に答えるか、私に捕まるかどっちかを選んでくれないかな?もし私に敵対するなら容赦しないよ?それで、私に協力してくれるって言うなら私の仲間になることを許可してあげる。どうする?私の配下になり私に忠誠を誓うならば君は自由の身だ」と。そして私はこの男が私の配下につくか、それとも死ぬかを判断させたのである。

そして私はこの男の口からこの城で最強の男が死んだという言葉を聞いた。そうこの男は確かにそう言っていたのだ。そして私はこの男の首を斬り飛ばす。そしてこの男の持っていたものを確認して私はすぐにこの男の家に向かい転移をするのである。そして私はこの男の妻が眠っている部屋の扉を開けるのである。私は妻の顔を確認するとその人物はすぐに私に攻撃してくるのだ。私はその攻撃を何とか受け止めて会話を始める。「私に敵意はないんだよ。落ち着いてくれ頼むから」と言っても妻は私を殺そうとして襲ってくるのだ。

そうして少し時間が経つと、妻の体力が減っている事に私は気づいたのである。そして私は彼女の体力の回復を行うのである。すると彼女は意識を取り戻し私の事をしっかりとした瞳で見るのである。そして私にこう言ったのだ。

「あなたはいったいだ、何者なんですか?どうして私の夫を殺したんです?」

「えぇ〜と、それはですね。あの〜そうです!実は私とこの男の間に子供がいるんですよね、なのでこの子をあなた方に預けようと思ってね」

「なるほど、そうゆうことですか、分かりました。その子をお渡しください」

「ではこの子の名前は?」と聞かれたので、私は正直に答えたのである。そして私は彼女に私の計画の一部始終を話すと、その子は賛成してくれて、そして私たち夫婦に名前をつけてくれたのだ。私たちはその名前が気に入りその子供の親になった。そうして私たちは子供を大事に育て上げたのである。この子が成長した後どうするかはまたその時決めれば良いと思っていたからである。そしてその時にこの子の親になるのも、私と妻との二人で育てることに決まったのだ。そしてこの子と私達との暮らしが始まっていくのである。そして私はこの子に色々な技術や、力の使い方などを指導していくと驚くほどに強くなっていったのだ。この子に私は「私と同じ運命にさせたくない。この世界を変えるほどの力を持つ英雄になってほしい」と言ってしまったのである。この子の父親はとても優しくて賢く正義感が強くていい父親であったからこの子も絶対にそういう風な人間になると私は思っていた。

この子はすくすくと成長していったのだ。私はこの時思ったのだ、私の息子には才能が開花したのだな、これからこの子は強くなるだろう。そしてこの子は絶対に歴史に残るような人になるだろうと。私はその時にその息子の顔を見たのである。それはとても美しくそしてとても優しい顔をしていたのだ。そしてこの子は成長していくのが楽しくなっていた。その反面不安も抱え込むようになっていったのだ。そして、その悩みを抱え込みすぎて心が折れかけていた時があったのである。その時に私はその息子にある提案をしたのだ。「この世界を一緒に救わないか?」と、私は、この子と共に世界を変えようと思ったのである。そうして私は自分の過去を話していくのである。

この世界に来る前のことから、この世界についてそして私がこの世界の神にされた時の話をしたのである。そして最後にこの息子にも協力してもらうように頼み込んだのである。すると私はある事を思いついたのである。私はその息子の体に神の力を馴染ませることにしたのである。そう、私は神の能力を使うのは、その神の肉体でなければならないと、私は思っているからなのである。そしてこの力は私の物でもあり私の血族であるからこの子に宿ってくれたのではないかと私は考えていたのだ。そう考えると私は凄いことをしていたのではないかと私は思う。そうこの子の体をいじったのだからね。そして私はこの世界の創造主となった時にあった出来事を私は話すのである。その話をしている間もこの子はずっと聞いていて、私の話が終わると私の手を力強く握ってきてこういったのだ。

そしてその言葉は今でも忘れてはいない。その言葉を私は今もこの胸に刻みつけている。そうこの世界に平和をもたらすというこの決意は私の心の中で消えていない。そして私は、この子の師匠となりこの子に色々と教えて行ったのである。そして私は、この世界の人々に能力を与えたのである。その能力は普通の人からすればあり得ない程の能力値になっているのである。そして私はある計画をしたのだった。

それはこの世界の人間のレベルを上げまくりそして魔物の軍団を作ろうと計画を始めたのである。しかし、それは中々上手く行かなかったのだ。そうして試行錯誤しながら、ようやくこの国の周辺にいた全ての人間たちをレベルアップさせてみること成功したのだ。そしてこの国の周辺の土地は全て改造をして迷宮都市を作り始めたのである。そして私はその都市を作る前に私はこの国の王になることを承諾してこの国の王の座についたのである。そうして、この街の仕組みが出来上がっていったのだ。そして私の計画はどんどん進行していき遂に魔王の城までたどり着くのである。その道のりは決して平坦なものではなく何度も死にかけたのだ。だが、それも今や懐かしいものである。

そうしてとうとうこの日を迎えたのである。ついに私はあの化け物を倒せるだけの戦力を蓄えることに成功をしていたのである。この国にいる兵士の中でも強い者達に私が直接手を貸し与えたのだ。そうして、私の娘とその夫の二人は魔王の元に向かう。そう私の娘と息子の二人だけなら勝てるだろうと確信していたのだった。そして、この国は滅びる事となる。私はこの国を滅ぼさなければならなくなったのだ。

私は、この国に恨みがあるわけではない。この国の王はあの男だ、それにあの娘もあそこにいるのだ、この国のために命をかけるのは当然の事なのだ。だがこの国をこのままにしておく事は私には出来ないのである。

私は自分の国を自分で破壊しなければならないのである。それが今の私に出来る最善の行為だと私は考えている。そしてこの国の国民全員を地下空間に転移させるのである。そして私は娘と夫が心配でたまらなくなり二人のことを見守るのである。

そして私が見守ってから数時間が経った頃私は驚いたのである。私の作ったこの壁を破壊する事が可能な存在が現れたのである。その者は私が作った壁を破壊してこの城へと入ってきたのである。その者の実力は、その者が持つ固有技能の力なのかは分からないけど。この私と同等、もしくはそれ以上に強いのは間違いなかったのである。その者が来たことで私の計画が台無しになってしまったのだ。そうして私とその者との戦いが始まったのだ。そして私達はこの世界で戦いを繰り広げたのである。そうして私達が戦ってしばらくするとこの者が私の攻撃によって瀕死の状態に追い込まれるのを確認したのである。そう、もう勝負はついているのだ。私の勝ちで終わるはずだった。

私はその時油断しすぎていたのであろう。私の目の前でその者は、自分の死を受け入れていたのに、その者はまだ私に戦いを挑んで来たのだ。そうして私との最後の一騎打ちが始まるのである。そうして、私達の死闘もいよいよ最終局面へ突入したのであった。

そう、私に勝つことは絶対不可能だということは分かっていたことである。それでも彼は諦めずに最後まで立ち向かってきたのである。そう彼の最後の力を振り絞った攻撃をくらい私も彼と同じように地面に倒れ込んでしまうのである。そう私の方が弱かった。だが負けてはいなかったはずだ、私はこの男の攻撃をまともに受けた。だからこそ分かったことがある。それは、私達の強さは互角だという事が。私は、この男が何故こんな行動をしたのか全く分からず困惑してしまったのだ。そして、私はその男にこう問いかけたのである。

私は「貴様の目的は何だ?」と。

私は、その男の答えを待つと、「あなたは俺の目的が気になるのかい?まぁーいいだろう、俺はねあなたを殺すためにここに来たんだよ。そして俺はあなたを殺してこの世界の全てを手にするつもりでね」

私は、そう言った時のこの男は笑っていたのだ。その瞬間私は、こいつはとんでもない奴だと思い知らされたのである。私はその男を見て「そんなことは不可能なんだ。お前では私を倒すことは出来ない。絶対にな」と私は断言した。そして私はこの男を殺そうと剣を向けたのである。

だがこの男はこの場から去ってしまったのだ。そして私だけがこの世界に取り残されたのである。それから私はあの男の言葉が頭から離れない。

あの男に私は殺せない?本当に?それは違うぞ私は、この世界最強と呼ばれているが、それはステータスの数値の話であって、実際はそこまでではないはずなのだ。なのにあいつはその事をわかっているから、この国から消えたのだろう。この国が私のものだと言うことがこの世界に伝わるように。そうしてこの国は私のものとなったのだ。

この国は、今では世界最強の国となっているのだ。だからこそこの世界で一番力のある私の国に手を出すようなバカはこの世界ではいなくなったのだ。

そうして私は今の世界を作り上げたのだ。私の目的を果たすための準備期間としてね。

そうして時は流れていった。この世界の情勢を見届けた後に私は自分の計画を次のステップへと移していった。この世界の住人のスキルを全て消すことにしたのである。私はこの計画は、失敗する可能性が大きいと思っているのだ。だから、慎重に行動する必要があるのだ。私はこの世界の人達に私の固有技能の能力を教えていくことにしたのである。そうする事によって世界は大きく変わると信じているからだ。私は世界を救う英雄を育て上げたいのだ。そしてその者たちには世界を救ってほしいと私は願っている。そう、私はその願いが叶えばいいと考えている。その為に、私は、あの子には私の計画に協力してもらったのだよ。そうしてあの子も私の計画に賛同してくれたのである。私の計画を手伝ってもらう為にも私の計画の一部を教える事に決めたのだ。あの子も、私がこの国を作った時に一緒にいてその事を理解しているのだろう。だからこそ私はその計画の一部をこの子に教えたのだ。この世界の人々を強くするために私は色々とやってきた。その結果この世界の人々は、どんどん強くなっていったのだ。

私はこの国の王様になった。だが私は、自分が王様になることにあまり興味が無かったのだ。この世界の人達が強くなればそれで良かったのである。私はこの国にいる人たちに、私の考えた計画を説明をしたのだ。その計画はあまりにも無謀な物で実行することが不可能に近い物である。だが、私の計画を聞いて皆が納得していたのである。私は、この計画を実行に移した。そうしてこの世界を救えるだけの力を持つ者達を育てたのだ。私はこの世界の人々に、私の考えを伝えたのである。この世界の人々の殆どは自分のことしか考えていなく、私の考えを否定する者が多くいたのである。だが私はその言葉を無視して、どんどんと進めていくことに決めたのだ。私はあの子の事を気にしていたが特に何もすることが出来ずに時間が過ぎていきついにその日が訪れたのである。そう私にとって待ちに待った日である。その日私は娘の所へ向かい話を始めると突然私の娘であるリゼッタが泣き出してしまうのである。そうすると私は、リゼッタを抱き抱えて頭を撫でる。私はこの時確信したのだ、私の子供にもこの力が受け継がれてしまったことを、この力はあの子が私の体に入ってくれた事で手に入れたものだと私は思っているのだ。そして私は、その事について娘に聞いてみる。すると娘は何も言わずに黙り込んだのだ。私の娘は、きっと自分の体が変化している事に気づいていたのだ。それどころか自分の体の中身が変わった事も分かっているのかもしれない。私は、これからの事を話すことにしたのである。

そして、この子の体に私が入っている限りは、この能力も私達のものというわけである。つまり、私達はいつでもこの能力を使いこなすことが出来るということだ。この子の中には私ともう一人分の魂が存在することになるのだ。この能力は、私の固有技能の中で一番強力であり扱いやすいものなので、この子を成長させれば、この能力を使えるようになることは間違いないと私は考えている。

私の娘を死なすつもりは無いしこの子の体を死なさないために私が頑張らなければならないのだと、そう決意を改めて固めていると私の娘が、この能力は扱いきれないと思うと言い出したのである。私もそれには同意せざるをえなかったのだ。そうでなければこの子は死ぬ事になると私には分かっていたからである。私は私の中にある力を上手く使えずにいた。私だって上手く扱えるようになっていればこの子にこんな危険な目には遭わせていなかっただろうし私が上手く使えないせいで娘を危険な目に合わせてしまうとは情けない気持ちである。

そして、この子と私はこの子の中から私に語りかけてきたのである。私達はお互いの事について話し合いをしたのである。そして、この子が私と一つになるには、ある一定のレベルに到達しなければならないと分かったのである。そしてもう一つわかったのは、この能力を使う為に必要な条件は、私と彼女の相性が良すぎるのが原因だということも判明するのである。そして彼女は自分の中にいる私に対して名前をつけて欲しいと言ってくるのであった。私は彼女からその名前を聞いた時少し驚いてしまったのである。そう私と同じような名前がつけられたからだ。そう私の名前はこの世界で最強の人間という意味を込めて私がつけさせたものであるのだ。

私は彼女にこの世界で最強である私がつけた名前だと伝えた。そうしたら彼女は私の名前をつけた理由を私に問いかけてくるのである。私自身どうしてなのかわからないのだが何故かこの名前をつけなければダメだという気がしたので仕方がなく付けたのである。その理由が分からないのだ。だがこの子が気に入らなかったようなのですぐに変更するようにしたのだった。そして、彼女がその名前の通りになっていくことに驚くと同時にとても嬉しく思うのであった。

そうして彼女はこの世界での修行を始めたのだ。この国を出て他の国に旅をしながら強くなろうと考えていたのである。

そして、それから数ヶ月が経過して娘はこの世界を旅して回っていたのだ。

娘は本当に凄いと思う。普通ならばまだ子供のこの子一人だけで生きて行けるほどの知識や経験がないはずである。なのにこの娘は既にそれを成し遂げていたのだ。そんな事をこの数ヶ月間の間に感じていたのである。だが私と会話できるぐらいまではまだまだ成長が足りないようだったけど。

そうして月日は流れるようにして進んでいったのだった。

あれから数日が経ち僕はまた訓練を再開する事になったが、今回は前回と違って会長の部下が僕に戦い方を教えてくれるらしいのである。正直かなり有難いことだった。

「おいお前達そろそろいいか?」

そうして、戦闘が始まるのであった。まずは相手の武器がどうなっているかの確認をする為に攻撃してくる相手には素手で対抗することにした。そうすることで僕のステータスの高さで相手がどれくらいの強さを持っているかを確かめたいと思ったからだ。

相手から攻撃されて思った事は意外といい腕をしてると分かった。まぁそれでもそこまで苦戦するほどじゃないから余裕で倒せたんだけど。そうして何回も同じ様なことをしているうちに気づいた事があるのだ。この人たちは連携があまり取れていないと。そしてその証拠が先程の攻撃である。一人の敵は攻撃はそこそこに防御に徹しておりもう一人の方は攻撃を全くしていない。そして最後に三人目が攻撃を仕掛けて終わらせる。といった感じで毎回同じ動きで動いている事が分かったのだ。まぁこの程度なら問題無いだろうと思い僕はその人達の相手をしてあげることにした。まぁそんな感じで軽く捻ってあげましたよ!えっ?全然ダメージ入ってなかった?そりゃそうだろ!俺の固有技能には痛覚遮断もあるんだから痛みなんか一切ないしそれに俺は、あの人達がどれだけ本気を出していても大丈夫だからね。

俺は今この国の人達がどの程度強いのかを知るために手加減して戦っているのである。だからあまり怪我しない程度で倒すことにしたのだけど。やっぱり全員一撃で倒れてしまった。これじゃあ参考にならないからもういいかな。これ以上続けても無意味だし早くこの国の人たちのレベルとかを確認したいな。

「おいお前、今すぐ俺の質問に答えてもらうぞ!」

ん、この声はさっきの金髪男じゃないか、確か名前は、ダリア、そうこいつはあの女の息子だな。ということはやはり父親似なのだね。でもあいつは一体何を考えているんだ、あんなに必死になって、何か重要な情報でもあるのかね?それとなんであいつはここに来たんだ?この城に入れるにはそれ相応の実力者でないと入れないのに。こいつらは確かにそれなりに力はあるが所詮はまだ若い芽、いらないだろうに。

「貴様が最近噂の謎の旅人だろう?なぜ俺たちが簡単にあしらわれている。おかしいではないか、俺たちはこれ程までの力を手に入れたというのに何故勝てないのだ。それに、貴様がどうやってあの国王を倒したのだ。あの男はこの国で最も強かったはずだ。それなのにあの男を倒してしまうとは、どういう事なんだ、貴様に聞きたくても聞けずにいた、だから、教えてくれないか。」

なんだなんだ、このおっさんは急に変なことを言い出したぜ、俺を倒しても何もメリットはないはずなんだ。だから別に殺してもよかったけど、流石に殺しはいけないだろうと思っていたのに、まさか殺した方が良いかもしれない人が出てくるなんて。ちょっとビックリしているんだよ、俺は別に人を殺すことには躊躇ったりしなくなっているのだけれどな。だって人をいくら殺しても良いと思ってしまうのだ。ただこの世界の人たちも、俺と同じ考え方をしていたりするかもしれないしその人たちを無暗に傷つけることは止めた方がいいと俺は思ってしまうのだ。

ただでさえこの国の住人たちは自分のことばかり考えてしまっているのにそれが当たり前になっている可能性がある。

それに俺のやり方が正しいとは思えない。俺は今までにたくさんの人を殺して来てしまっていたがそれについて何も思わなかった、そう、思い込もうとしていただけであって実際に心の中では全く何も思ってはいなかった。ただ単にこの世界に来て何もかも分からなくなっていたのだと思う。だからこそこの人達には悪いとは思っていた。こんなことを考えてる自分が最低だなって思ってもいたし。でもこの人の話を聞いた時なぜか安心した自分がいる。それは俺と同じでこの人もきっと悩んでいるのではないか、そしてその悩みを解決する方法を見つけられていないんじゃないかと思っているからである。そして俺は、この人に親近感を感じてしまったのかもしれない、だってこの人は俺に良く似ているのだ。自分だけが正しいと決めつけてしまって他人を信じる事が出来なくて、誰かに相談する事が出来なかったのだ。きっと俺とこの人とでは根本から違ったんだろう。そう思う。

「な、なんだよ、いきなり黙り込んじまいやがって、おい何とか言ってくれよ、もしかして怒ってたりすんのか?そうなのか?そうなのか、なら謝らせてくれないか、許してくれ。すまねぇ。お前があまりにも綺麗な顔立ちをしていて、それにスタイルも完璧すぎるものだから嫉妬しちまったんだ。本当に悪かった、許してくれるとありがたいんだがな、お前の顔を見れて、俺は本当に嬉しいんだよ。俺はずっとお前の事が羨ましくて妬ましい気持ちを抱いていた、そしてそれと同時に憧れも抱いていたんだ。だからお前を一目見たかった、そして会えて良かった、それだけなんだ。だから怒るのは勘弁してほしい。これから先、一生、どんな時であろうとお前に迷惑をかけるつもりは無い、だから頼む。どうかこの気持ちを分かってくれ、俺はどうしても、自分の感情を抑えきれなくなっちまった、それだけだ。俺が馬鹿なのは理解しているが、こんな事をしてしまったんだから殺されても仕方がないと、そう思うしかないのだ。」

この人は何がしたいんだ、この人が言っている事を聞いている限りじゃあまるで好きな子に告白をしたが振られてしまい諦めようとしている男子中学生みたいな内容だったのだが、そんな感じの内容のことを言い出したのだ。この世界にもこういう人いるんだな。いやいやそんな事は置いといてこの人が言ってる通りこの行動は普通に考えたらかなりおかしいと思うんだ。だから俺に嫌われようと、いや俺から嫌ってもらおうという意図が見て取れるのは確かであると思う。だからこれは何かの罠である可能性もある、だけど何故か俺は信じたいと思ってしまったのだ。もしこれが嘘であるとしたら、俺がこの人の事をどうこう言える立場にいないのだ。だって俺はこの人を利用して利用価値がなくなったら殺すつもりだったのである。つまりこの人の言う事が本当であった場合の事を全く考慮していないということになるのだ。本当に愚かしいことである。この人の方が断然正しいことを言ってるように聞こえる。

そしてもう一つ疑問点がある。どうして俺に惚れるような展開になるのだろうか。そこが全くと言っていいほど意味が分からないのだ。まず俺とはこの人は初対面であり、しかもつい数時間前に初めて会話をしたぐらいであるのだ。

この人に対して恋愛的な好意を抱いた覚えがない。なのにこの人は勝手に好きになって勝手に暴走して、挙げ句の果てには、殺されるような状況になってしまったわけだ。全く持って理不尽過ぎるのである。そして俺自身もこの人に対して好印象は持っているもののそれはこの人自身ではなくこの人が父親に似ているからに過ぎないのだ。だからこそこの人をこの場から生きて返すことに決める。

そうして俺は、彼に語りかけた。

「僕はあなたの事が好きではありません、ですからあなたはここから帰ってください。そして僕に関わるような事はしないでいただきたい。お願い致します。そうして下されば今回の件については水に流しましょう。そして僕はもう二度とあなたの前に現れることが無いように努力するとお約束しましょう。」

この言葉を聞いた途端この男は目に涙を浮かべながらどこか嬉しそうな表情になった。この反応を見て俺は本当に申し訳ない事をしてしまったのだと改めて思った。そして彼が去って行ったのを確認して、僕は城から出ていったのだった。

俺はあいつの背中を見送ったあと城の中に入っていこうとするとあいつの父親から話しかけられた。

「お前は、あの子のことが嫌いなのかね?」

そう問われた俺は答える。

「はい、そうですよ。だから関わらないで欲しいんですけど。そうすれば、あの子の命を奪わなくても済みますしね。俺にとってメリットがありますから。でも貴方が邪魔してくると言うのであれば俺は容赦はしませんからね。覚悟しておいてください。それと今度こそちゃんと話し合うんですよ。そうしてくださればあの子と話す時間を設けてくれると思いますよ。まぁ貴方達がそれで納得できるのでしたら別に構わないのですが。それでは俺は失礼させて頂きますね。それではまた会う日までご機嫌よう。」

この男がどういう奴かは分からないので一応釘は刺しておくことにした。俺の目的はあくまでこいつらがどこまで使えるのか確認しておきたかっただけだからね。こいつらに用事は無くなったので帰ることにしたのだ。だが、俺の言葉に怒りを感じたのか俺に攻撃を仕掛けてきた。なのでそれを全て防いでやったのだけども、俺に傷一つ付けることが出来なかったようでとても残念であると思わせられるような顔をしているのであった。俺がこいつらの実力を見終わったのでもうここにはもう用は無くなったのだ。俺はもう帰ることにしたのだった。

俺の目の前に広がっている光景はとても酷いものである。この国の国民は俺に襲いかかってきた。その時に俺は思った、この国は本当に腐っているのかもしれないと、俺はこの国の国王に会おうと思いその国王がいるところへ行こうとしていたのだがその途中で俺の前に沢山の人々が現れたのだ。

その人たちは俺を見ると一斉に俺に向かってきたのだ。流石に俺は驚いてしまったが俺の予想が正しければ多分これはこいつらはみんな操られている状態だと思われるのだ。だから全員倒してしまうことにしようと思い、この国の住民全員に気絶してもらった。そして俺はこの国のトップに会いに城へ向かっている途中なのである。

俺が城の中に入るとそこには一人の少女がいたので彼女に国王の場所まで案内してもらう事にしたのである。その彼女はとても美人だったので一瞬見とれてしまったのだが、なんとかその感情を抑え込み彼女の後について行き王様の所へ向かう事になった。俺はその道中にその女性と話をしていたのであるがやはり違和感を感じることだらけだった。その女性もやはり洗脳を受けている状態ではあるのだけれどこの国の人々は殆ど全員が同じ様な状態だった。

俺は国王の所にたどり着いたのだったがやはり国王も操られていた。俺の推測通りだったようだな。俺はそう思うと同時に、こいつは殺さなければならないのかもしれないと思ったのだ。

だって、この女はこの国の女王なのだから、俺の復讐対象になりうる人物である可能性が高いのである。俺はその判断をしこの場で殺してしまおうと思っていたのだけれど流石に手を下すのはまずいかなと思い、どうにかできないかと思考している最中であるのだ。

「私は何をしても許されるのだ。何故ならば私に逆らう者はいないのだからな。だから私には誰も手出しすることが出来ないのだ。だから君も大人しく捕まってもらうよ。抵抗しなければ殺しだけはしないと約束しようじゃないか。だから早く私のものに、なりなさいよ!」と言って急に殴りかかってきたのだ。俺はその攻撃を全てかわしていたのだけども、そろそろ面倒になってきたな、それにこれ以上はここにいても特に何も得られなさそうだし、そろそろ潮時だと判断した俺は彼女を捕まえて無理やりにでも連れて行くことにする。そうして俺は彼女の腹を殴って気絶させたのであった。そして俺は、彼女が持っていた短剣を奪って拘束して城の外に出て行く。

俺はその後、城を後にしたのだがその際にも襲ってくる者がたくさんいたので、俺の能力によって動けないようにしてしまった。俺はこれからやる事があるので少し急いでいるのだが、流石にこのままでは効率が悪いなと感じているのである。俺はこれからある実験を行おうと考えているのだ。そのためにはこの国の人が必要だと考えているのでこの人達に犠牲になってもらわなければならないと思っているのだ。俺はこれからこの国の住民を全員殺し、死体を集めてから俺がこの世界に来た時の場所にもう一度転移する事にしようと考えたのである。

「なあなあ、お前は誰なんだ?一体どこからやって来たんだよ。お前が来てからというもの、毎日が騒がしすぎて困っちまうんだからよ。なあ、ちょっと教えてくれよ。頼むって!な?そんな顔すんなって!別にお前をどうこうするつもりはねぇよ、お前には恩も義理もあるしな。だからさ俺の頼みも聞いてくれるだろ?いいじゃねぇか、頼むからさ」

この人は相変わらずいつも俺の傍にいるのだ、鬱陶しい。

それに今日に限って何故か、いつも以上にしつこく付き纏ってきているのだ。俺はそんな彼のことを無視し続けると彼は俺を無理やり引っ張りどこかに連れていこうとしているのだ。そうやって強引にどこかへ連れて行かれるとそこには俺達の仲間だった人が既にそこにいて俺が来るのを待っているのである。俺をこんな場所につれてきて何をするのか分からないがこの男なら何かやってくれそうな予感がするので連れてきてくれたことに関しては感謝をしてもいいだろう。だがこれから行われる事に対してはあまり良い印象を持てなかったのだ。だからこの男はもういらない。俺は心の中で呟くのである。

『俺は、今ここで死にます。今までお世話になりました。貴方のおかげでこの世界で楽しく生きていくことができて幸せでした。』

すると突然、視界が真っ白になって、そして俺が意識を失う直前に聞いた最後の声はこの国の王であるあいつのものだった。

俺は気がつくとどこかの森の中に立っていたのだ。俺はこの場所に見覚えがある。そうここは異世界召喚されてすぐに来た場所であった。ただ、あの時は周りが森に囲まれていたはずだから多分ここはまだ別のどこかの世界に繋がっているのであろうと考えることが出来るのであった。俺はあの時からまだ一日しか経過していないと聞かされた時に俺は、時間が元に戻ったことに気がつき、この能力を使って元の世界に戻ろうと考えたのだ。俺はこの能力は自分だけが移動できるように設定されているものだと考えていたのだ。でもそうではないらしい。そう考え始めたのには、ある人物から話を聞かせてもらう機会があったからだ。それは、その人が言っていたのだが自分が一度体験したものと同じものは自分も再現することができるみたいなことを言われたのである。なので、俺のこの世界の過去に戻ることのできるという力は自分以外にも適用されているという事が発覚したのだ。

俺は自分の力に限界がどこまでなのかを知りたかったのでとりあえず色々な時代に戻ってみることにしようと思うのだ。それで分かったことと言えば俺は、この世界を一回救っているという事が分かり更にこの世界がどの時代から存在しているか分かるようになったのであった。そして俺がまだ勇者ではなかった時代に、とある少年と出会ったのである。

俺が勇者になったのはその人と出会ってからだった。

俺はまずその時代のその場所に向かった。そこは俺が住んでいた街だったのである。俺は懐かしい気持ちになった。あの頃の俺はこの街に住んでいたのだ。その街の名前は、 【ミチザエ】と言う名前の村であり俺はそこで生まれたのだ。その日、この村で魔物の大群の襲来が確認されたのだ。俺はその事を母から聞いていたため、すぐさま現場へと向かった。そして現場にたどり着くと大量の魔族がいたのだ。俺がそこで見た景色とは、人々が無惨にも殺されていている姿だった。俺は、怒りに任せその者達に斬りかかりに行く。しかし俺一人の力ではとても太刀打ちできる相手ではなくどんどん押されていき、ついには、その村の広場に誘導されてしまったのだ。その広場では、俺を追い詰めた魔族の大群がいる。そして奴らは、一斉に俺に襲いかかり、俺を亡き者にしようとしていたのだ。俺も必死で戦っているのだが敵わない、そう思った時に俺の目の前にあの男が姿を現したのである。

「なあ、助けて欲しいか?」と俺に声をかけてくる。俺はその時あまりの出来事のせいで唖然としていて返答をすることが出来ずにいたのだがその隙を突いて一人の男の攻撃をくらいそうになったところをそいつが防いでくれたのだ。それからその男はこう言う、「おい!聞こえてんだろ!おい!おいおいおいおい!答えろや!」と言われて我に帰ることが出来てやっと口を開くことができたのである。

そしてこの瞬間から、魔王であるこいつとの付き合いが始まることになる。そこからの展開は速かった、あっけなく俺達の勝ちで戦いは幕を閉じたのであった。だが俺はこの時に誓った、俺はこの男と共に生きることを、そして俺の人生の全てをこの男に捧げようと決めたのであった。そして俺と魔王は、お互いに名前を名乗ったのである。俺は名前を【リクム】と言い、この世界で初めての人間で魔王がこの世界にやってくるまで一人でこの世界を守ってくれていたこと、俺はこの時初めて魔王の名前を知ったのだ。

そう、俺はこの世界で最初に生まれた勇者だったのである。

「おい、なんなんだ?その、お前の体の中から感じるその異質なオーラはよぉ〜俺の本能が告げてるぜぇ、絶対に勝てない相手だってよ。だからなぁー悪い事は言わねぇ、今のうちに降伏しときな!まあそんなのお前さんには無理な話だろうけどな」と言ってきた。確かに今の俺は奴には勝てないだろうな。俺はその言葉を聞いて少しだけ考える。俺がここで負けたとしても特に何も問題はないのでは?そう思い始める俺がいたのだ。

俺はその考えに至りそして決断を下す、そうこいつを殺してこの先も生きて行こうと、俺はこいつを倒す事にするのであった。

俺はその選択を選び取り、その魔王との戦いに挑む。

そういえばまだこの世界に俺以外の人間がいたことに今更気づいたのであった。

この世界に来てからの一番最初の仲間だった存在をすっかりと忘れてしまっていた。俺がこの世界で一番最初に出会った人。名前は【ユウマ】この人のことはこれからの一生のパートナーだと俺は思っているのだ。なぜならば、この人に会っていなかったら俺の未来は無かったと言っても過言ではない。そう思えるほどまでに俺はその人に対して深い思い入れを持っている。だからこそ俺の全力をその人にぶつけるためにも俺はその魔王に向かって剣を振りかざしたのだ。

そしたらそいつは剣を取り出しその攻撃を受け止めるのと同時に魔法を放ち俺のことを襲ってきたのであった。その一撃は、その者の持っている能力の片鱗を見せるかのような、強力なものだったのだ。その余波によって地面が大きく割れてしまい俺に襲ってきていたのだ。俺は咄嵯の判断によってその攻撃をなんとか回避できたのであった。俺はその後そいつに対して、剣戟を仕掛ける、そいつは、それを避けたり受け止めながら攻撃してきて、その攻撃は全て的確に急所をついてきておりその攻撃に俺は追いつけなくなっていたのである。俺もその反撃をしているがなかなか決定打を与えることができていないでいたのだ。だがそれも当然のことである。俺は、今まで一度も本気で戦ったことが無いからである。だからこの人との戦闘経験が俺よりも長いこの男に、勝つことはできないかもしれないが、互角の戦いを演じることなら可能なのではないかと考えた。

そして俺はある技を放つ準備に取り掛かる。その男はそれをさせないように攻撃をしてくるが俺はそれにあえて反応をせず、受けに回る、そしてその男の攻撃を全てギリギリの状態で全て捌いていったのだ。そしてついにその時が来たのである。俺がこのタイミングでこの行動をとった理由、それはこの技の弱点は一度使うとその次に発動するまでに時間がかかることと、使ったあとはしばらく動くことが出来ないという点だ。そして、俺の予想は当たりこの技を発動したことによって、俺の体は動かなくなってしまったのだ。

そうしてその男も俺に対して止めを刺そうとしているのか近づいてきていた。しかし俺はもう動けないしここで負けてしまおうと諦めてしまったのだ。そして俺の体に剣が突き刺さろうとした時にそれは起こったのである。

俺の体が勝手に動き出してその攻撃を防ごうとしたのだ。そして俺は動けるようになり何が起きたのか確認しようとすると俺の右手に違和感を覚えたのだ。それは何か温かいものが流れているという感覚。そうこれはあの時の感覚と全く同じものであった。そしてその俺が放ったと思われる攻撃を受けた相手はその場に膝を着いていたのだ。

俺が一体なぜそのような状況に陥っているのか、その理由を考えようとしたときにその者は言ったのだ。「おめでとうございます。貴方の能力は今解放しました、なので私と貴方は同じ土俵に立つことができます、ですからここから先は私の番です」と言い俺とは全く違う戦闘スタイルに切り替えたのだ。俺がその男と戦う時にまず気をつけたこと、その男の視線から意識から全てを把握することだ。その男の動きは一つ一つが洗練されており、とてもじゃないが素人が付いていけるようなレベルじゃなかった。でも俺は、俺の能力の使い方を覚えてこの男に一矢報いることができればそれで良いと俺は考えていた。そして俺はまずそいつが放ってきた攻撃を、最小限の行動だけでそれを避けることに成功したのである。俺はこのチャンスを逃すことなく俺は次の行動を取ろうとする、だがそいつはまたもや俺の想像を上回る速度で移動をし俺が避けれるかわからないような攻撃を仕掛けてきたのである。俺がこの世界でまだ一度も使ったことのない技を使いこの窮地を乗り越えようと試みることにしたのだ。その技とは、その者が放つであろう場所と自分の場所を入れかえてしまう、そしてその男が移動先に移動するといった感じでこの危機を脱することが出来ると考えたのである。俺はそれをやってのけたのだ。その男の移動先を読みその位置を予測してから俺は、その場所から移動したのである。そして、俺は見事この危機から逃げることが出来たのである。そして俺の視界が開けていく中でその男はこちらを見ているのを俺の目に捉えその光景を見て驚愕している。そして俺も、この目の前の状況を理解するのに時間がかかり固まってしまっているのだ。

そこには俺が放ったと思われる剣撃により上半身が切断されているその男が立っていた。俺はその男のことを見たことがある気がしたのだ。そして俺は思い出す。その男は俺が異世界転移してきたとき、俺が最初に話しかけてこの世界に順応していく為に協力してもらった人物であったのだ。俺はこの時思ったのだ、こいつは敵か味方か、その事を考えるのはこの人とちゃんと話してからでも遅くはないと、だから今はただこの男の無事を確認しなければと思った俺は急いで駆け寄ったのである。すると彼は生きていたのだ。そして彼が言っていたのだ。

「おい、大丈夫か?」

と俺は彼に言われて俺は、「ああ、助かったありがとう」と言ったのである。それから俺は彼に対して疑問を投げかける、「あんたは、なんで俺を助けたんだ?」とそう聞くとその人は俺の目をじっと見つめこう答えたのである。

「そんなの決まってんだろ?俺はお前が気に入ったからだ、俺の名前はレイスよろしくな、リク」と言って俺の目の前に手を差し出していた。俺はその手を取って「こちらこそ、助けてくれてありがとな」と言う。そこから俺は彼の話を聞いていたのだ。

その男が、何故あの時あのような行動をとっていたかという事を聞いていた。

それはどうやら俺にこの力を託したいが為に俺を殺そうとしたと言うのだ。

俺は正直その話を信じてはいないが一応信じてみることにする。だってこの人の言っている事が嘘かどうかなんて、俺には分からないんだから。だけど、この人が俺のためにしてくれたんだと思う、その気持ちが嬉しかったので素直に感謝したんだ。そして俺にはまだまだ強くならないといけない事があるのだと再認識させられたのだ。そう、あいつらを全員ぶっ倒すぐらいに強くなりたい、この力を有効活用できるようにするためにも、そして大切な人達を守り抜くことが出来るように。俺はそう決心してこの男の後に着いて行くのだった。

俺には仲間と呼べる存在がいた、そして今その者達に俺は助けを求めようとしていたのだ。俺は魔王に負けた後そいつらに会って仲間になりたいと伝えたら快く承諾してくれてそのままその街を出て行ったのだ。俺はそいつらの背中を追いかけるように必死で走った。そしたら森にたどり着いたのでそこを抜けていった先に大きな建物が見えてきてそしたらいきなり襲われたのだ。そいつらの強さは普通ではなかった、普通の人間にはこんな力は出せないと直感的に分かるほど強いのであった。俺はその時に気づいたのだ。こいつらはおそらく魔族なのだと、だからそんな強さを誇っているのであろうと、そう考えるのが一番自然だからなぁーだからと言って今ここで俺がこいつらを倒せるわけではないし、むしろ勝てる可能性すら無い。俺一人では無理だろう。だからこそここは協力して戦わないとな。

そして俺の目の前には二人の女と、大柄の男二人いた。

俺がこいつらと共闘しようと考えている間に、その二人は俺の方へと向かってきて攻撃を始めたのであった。俺もその二人に対抗して戦い始めたのだがこれがなかなかキツイのだ。まずこの二人が本当に強かった。だから俺は、その二人の攻撃をひたすらに避けるしかできない。なぜならその二人共その攻撃にはかなりの殺気が含まれていたから、もし食らうと即死級の攻撃だったからである。そしてこの俺と闘っている女性、【アリス】ともう一人この場にはいなかったが【ユナ】という女の子も一緒に魔王軍の一員であったのだ、俺はその時気づいた、やはりここにいる人たちは皆魔族でありその中でも上位の者たちなんだということを。そして魔王軍が俺達の街を攻めてきているということは、俺の仲間たちはきっとそいつらに敗れてしまった可能性が高い、俺一人だけ生き残っても仕方が無いのにどうしてだ、仲間を見捨てて生き延びる意味なんか俺には無いはずなのに、それでも俺は生きるために闘うと決めて俺はそいつらと戦い続ける、だがその戦況は最悪だ、このままじゃ俺は負けてしまうかもしれない。俺はまだ死ねないのに。そう思って俺は一つの行動をとる事にした。そう、時間稼ぎだ。俺は全力を出し尽くしてでもここで時間を稼がなければならないのだ。そうしなければ俺はここで確実に死んでしまうだろう。そして俺達は、一旦距離を取るためにお互いバックステップして離れようとするが、それを読まれていたのかそいつは、剣を薙ぎ払ってきたのだ。その攻撃の衝撃で地面が揺れるほどに威力の高い攻撃で、それを受けた者は間違いなく吹き飛ばされている。だが、その一撃を受ける前に俺ともう1人の男はすでに移動を完了させていたので、被害が出ることは無かったのだ。俺はその時にその攻撃の隙をつき攻撃を放ったのだ。その攻撃によって相手の攻撃を止めることに成功したが俺の体に少しばかり傷ができてしまい俺の攻撃に怯んでくれれば良かったんだがそんなことはなく反撃されてしまったのだ。俺の攻撃は完璧に受け流された上に反撃までされたのだ。俺はその時思ったのだ、これはダメだと。俺はそいつに向かって、剣を振るうが全く効いている様子が無くて焦り始める。でもその時に俺の横からもう一人の男が出てきた。それは、【ラノベ】というスキルを持つ男、【シント》だ。彼は俺と同じように、仲間と一緒に異世界転移をしてきた奴だ。しかし俺は彼とは全く違うところがある。それが、この世界に馴染んでいるかどうか、である。俺は異世界に来てまだそこまで経っていないがこの男は俺よりも遥かに長く生きているはずだ。その経験と実力が俺とは段違いなのは明白であろう。そんなやつが俺のことを庇ってくれた。それだけじゃない、こいつはさっきからこの俺の闘いにアドバイスをしてきてくれたのだった。俺は正直言って、その男に感謝していた。そしてこの闘いに勝って絶対に生きて帰ろうと考えていたのだ。そして俺たちは魔王軍と本格的にぶつかりあった。

そして俺たちはその男と戦っていてわかったことが一つある。この男には何かしらの秘密があるのではないのか、という事である。そしてそれを俺とこいつのコンビネーションを駆使して暴こうと試みることにした。まず俺がその男の懐に潜ろうとした時に、その男と視線があったのでその時に俺は、その男の目をじっと見つめてみた。そしてその男が何かをしようとしていて俺はそれを止めようとしたのだ。そして俺と男が睨み合いをしていた時にそいつの動きが急に止まり動かなくなったのである。その時に俺は、何かを仕掛けようとしたことに間違いないと分かったのだ。その動きが止まった理由は、恐らくは【目を合わせた者の視界を奪う能力】を使ったのだと思われた。

そして俺はこの機会を逃してはならないと思って攻撃をしようとしたが、そいつが動いたのだ。だがその動きは予想できていてその動作をする直前にその男が俺に対して放った技を相殺した。そう、その技とは、相手の意識外からの一撃を相手に与えることのできる【不意打ち】である。それをその男は使ったのだが、この男は、俺の事をしっかりと意識していた。そうじゃなかったら今この男は俺の目から視線を逸らせていなかったと思うのだ。俺はこの時この男は俺が思っているより強くて俺を舐めている訳でもないと理解したのである。

そして俺はもう一度男と戦うことに決めた。何故ならば今のこの状況に違和感を感じていたからだ。俺はその状況を理解したかった。だから俺は再度、この男と戦おうと思ったのだ。そしてその男とまた戦って俺はやっと理解することができた。その男のステータスを確認したときに俺は驚きを隠しきれなかった。そしてその男の職業欄を見てさらに驚いたのだ。

俺はそこで気づいてはいけない事実に気づいた。俺は、とんでもないことをしてしまったのではなかろかという不安感に襲われた。この男の正体を知ってしまったのであった。そして俺は男に、その男の仲間のところに案内してもらうように頼むことにしたのだ。俺としてはその男の仲間のことを見てみたいと思っていたのである。だから俺の願いを聞き入れてもらえたのだった。俺はその男に連れられて歩いていた。そうしてその男が言った場所には巨大な洞窟の入り口が見えてきたのである。その入り口を見て俺はこの中に入っていくんだな、とそう思いながら覚悟を決めて中に足を踏み入れた。

そして中には、三人の女とその男が立っていたのだ。その女達の服装を見た時俺は思わず「えっ?」と声に出してしまうほど驚かされた。何故ならそこにはアニメでしか見たことがないような衣装をまとっている人達がいたのだ。しかも3人とも美人さんなんですけど!?まあそういうことではなくて、何とこの人達も人間ではなかったのだ。

「あなた達がこの人たちを連れてきたのですね? 私の名前は、アリスと言います。あなたの名前はなんでしょうか」と言われて僕はその質問に素直に応えようと思ったが俺はその質問には答えずまずこの女の人が誰なのか確認する為に、名前を聞くようにしたら、「ああごめんなさい、私の方から名乗り出すべきだったわね、私はレイスの妻のアイです、よろしくお願いします」と言って丁寧に頭を下げていた。

俺はまだレイスさんの奥様としか聞いていないのに妻って言っちゃったよ。でもまあいいかと思い俺もその挨拶にはちゃんと返したのだった。そうして次にこの大柄の女性に話しかけた。その女性は、俺が魔王に負けた時に助けてくれてその魔王の四天王の一人であった女性であった。その女性も俺の問いに答えるため自己紹介してくれたのだがその女性が話している言葉がなぜか日本語で話されていて、俺は困惑しながらもその話を聞いていったのだ。そして俺の疑問は確信に変わった。やはりここ異世界なのだと、そしてなぜその言葉を俺やレイスが話せるのかという謎も解決したのだ。その話は今度詳しくしよう。


***

俺はアリスさんの後ろを歩き始めた。すると奥の方に大きな広間のような場所に出たのだ。そこには4人の男女がおりその中にはあの男の姿もあった。その男は俺の顔を見るといきなり斬りかかって来た。俺は咄嵯の出来事だったため避けることができず肩に傷を負ってしまったのだ。その後すぐに反撃し剣を振ったが俺の攻撃は受け止められて反撃をくらってしまった。そしてその後もその男の攻撃は止まらず俺の体にも切り傷を増やしていく一方だった。しかしここで引くわけにはいかない。俺にだって仲間のために戦うという意思はある。だから負けるとしても最後まで抗うことを心に誓ったのだ。しかし、俺はここで力の差を感じ始めていたのだ。俺の力は確実に上なのに、何故か相手を倒すことができないのだ。このままじゃ俺は負けてしまうかもしれない。そう思っていた時に俺を助けてくれたのはシント君であった。彼がいなかったら俺はもう既にこの世にはいなかったであろう。

俺は、彼の戦い方をずっと見ていたのだが、その戦法がとても参考になるものだったのだ。それはまず彼は相手の動きを読むことができるようで、相手がどんな攻撃を仕掛けようとしているのか予測することができるのだ。そしてその攻撃が来る瞬間に相手の視線と身体を上手く使って相手を無力化する事ができるようだ。そしてそこから攻撃へと移るのだが、彼は相手に反撃の隙を与えること無く一方的に攻撃をしていたのだ。

俺はその動きを参考にして、俺は彼と同じようにやってみたのだ。そうすることで何とかその男の動きについていくことができて俺の攻撃が当たるようになったのだ。それからその男に勝つことができたのだった。俺は自分の成長に驚いていたのだ。

だがこれで終わりじゃないのだ。この先まだまだ魔王軍の幹部が待ち構えているはずだ。そして俺の仲間達がいるのはこの魔王城の中にあるのだ、だから俺は魔王を倒して仲間たちと再会を果たして一緒に帰るつもりだ。そのために今はひたすら進むのみなのだ!そして俺はこの先に何が待っているのか、期待しながら進んでいくのだ!! 俺とシント君の連携で遂に男を追い詰めることができたのだ。

「お前は、【異世界転移者】だろ。そうだとしたら俺はお前を許さないぞ!!」

俺はついそんな事を言ってしまうくらい頭にきてしまっていた。そしてシント君も同じことを思っていてくれたらしくその男に対して殺気を放っていた。しかし男はそれでも冷静さを失わずに余裕を見せているように見えた。しかし俺はその態度に違和感を感じたのだ。そう、その男には何か裏がありそうな感じだ。俺は警戒を緩めることなく、その男に対して攻撃を仕掛けようとした。しかし次の行動に移ろうとしていた時男が突然倒れ込んでしまうのである。俺はそれに疑問を持ちその男のステータスを確認すると驚くべき結果になっていた。俺はその光景を見て呆気に取られてしまいしばらくその状態で固まっていた。だがシント君は俺の様子がおかしいことに気づき、心配をしてくれていた。

俺のスキルが壊れている?俺の固有技能である、【異世界転移者の観察眼】の力が失われているのだと分かったのだ。俺に何が起こったのか理解するのにかなりの時間を要した。俺はこの事実を受け入れたくない気持ちで一杯になった。そして俺は今起こっている出来事を整理しようとしていたが、それよりも前にこの男を倒したほうがいいのではないかと思ったのだ。だがその時俺は何かが引っかかるような感覚を覚えて仕方なかった。そして俺の中で一つの考えが生まれ、それを信じたくはないと思いつつもその可能性を考えてみて俺は、その考えは捨て去ることができなかった。そして俺はこの男が倒れたのはその男にかかっていた魔法やスキルの効果が無くなったせいではないかと推測した。そしてこの男が何か仕掛けてきている可能性も考えていたのだ。

そういえば、【異世界転移者】は全員固有技能を一つ持っているらしい。その男は異世界転移者の【転移】というスキルを持っていたはずだ。この【転移】の能力は相手の体内に入り込む事でその人間の内部から破壊する事が可能な能力を持っている。これは非常に恐ろしいことで、これを使ってきた異世界転移者を過去に俺は何人か倒してきた。俺はこの男が倒れる寸前に俺の中に入ったのではないかと疑っているのだ。俺はそう思いながら急いでその場を離れようとしたのだがその男の仲間に邪魔をされてしまった。

俺は仕方なくこの男から逃げる事を諦めてそいつらと対峙することにしその戦闘を始めた。その戦闘は、相手の実力が高いために苦戦を強いられたがどうにか勝つことが出来たのだ。そして、その男から逃げられないと判断して、覚悟を決めて戦おうとしたら俺が予想していた最悪の展開となってしまった。そうその男の仲間の女が二人共、俺が倒した男と同じく俺の中に入ってきたのだった。俺はこの時、この女達がどうしてこのような行為をしたのかわからなくて頭がおかしくなりそうだった。

その女達は男と同様に強い力を持っていたのだ。その強さとは、レベル100を超えているほどの強さなのである。つまり俺よりも強いのだ。だから俺はこの二人には勝てないと思って、死も覚悟したのだが、俺はある事に気づいたのだ。それは、シント君とあの女の人が俺の味方として戦ってくれたおかげで倒すことができたのだ。

俺はそのことに喜びを感じていた。なぜならその二人が敵側だった場合確実に負けていたから。それにその二人は明らかにその男の事を嫌っているようだったから助かったという理由もある。

その男の力は、俺より遥かに上の力を秘めていたのである。だからこそ仲間にできなくても敵対だけはしてほしくなかったので俺の仲間がこの男のことを好いてるかどうかを確認したかったのだ。そうしないと俺の身が危なくなりかねないのだからな。だから俺にとっては、シント君とあの娘がいてくれて良かったと思えたのである。俺もかなりギリギリの状態でその女に攻撃を与えたが致命傷を与えるには至らなかったのである。俺はその女を倒すためにはどうしてもその女を殺す必要があった。そうでなければ俺の仲間が俺を信用できなくなる可能性があるからだ。俺は、自分の体にある魔石と呼ばれる物を壊しさえすれば俺はこの世界では死んだことになる、つまりこの世界で死ぬ事ができるようになる、そしてその後俺が元々居た場所、元の世界に帰ればいいだけなのであるが、その方法を俺が知ることはないのだ。俺はその方法を見つけ出して俺の仲間が安全に帰ることができるようにしなければならないと考えているのである。そのためにもまずはこいつらを俺が倒すことが前提となってくるのだ。俺が一人でやれば絶対にできるだろう、という確信はあったのだが俺はシント君達に手伝うと言ってくれていて本当にありがたかったのだ。俺は、俺の体が限界に近づきつつあるのを感じている。

そして俺とシント君とあの女の人が同時に同じタイミングで攻撃をしてやっとこの女の人にダメージを与えられたのであった。それから少し時間が経過した時に俺はシント君にその男を任せることにした。そして俺は、その男と戦っていた。そして遂にその男の剣に俺は追いつけず俺は剣を振り下ろした時の衝撃に耐えきれずに俺はその場に倒れ込んだ。俺が剣を落としてしまうとそこで俺は自分が完全に力尽きてしまったのを実感した。その時にはもう、その男の目の前にいたのだが俺は何もできない状況になってしまっていたのだ。しかしそれでも、俺はまだ諦めていなかった。ここで終わるわけにはいかない、俺はそんな思いで最後の一撃を入れるために立ち上がってその攻撃を行おうとしていたらあの男の顔が見えたのだがその表情がまるで勝利の確信を得ているかのような笑みを見せていた。その瞬間俺には嫌な予感がよぎっていたのだ。そしてその予感はすぐに現実のものとなる。その男の仲間が俺に向かって槍を突き刺そうと構えている姿が目に入っていた。だがその行動は遅すぎた。俺が避けても俺の後ろに居るシント君の方に当たってしまう可能性があったのだ。そう思ったら俺の行動は既に決まっていたのだ。

俺が自分の身体を犠牲にして、その男の仲間たちの攻撃を防いだ後その男の隙だらけとなった体を思いっきり蹴ってシント君の所へ飛ばしたのだ。俺は、それで良いと思ったのだ。その男を道連れにできれば俺は満足だからな。その男が俺の狙い通りその仲間の男を巻き込んで吹き飛んでくれたお陰で俺の体はボロボロになっている。

そしてその男は、そのまま動かなくなった。俺はこれで終わったのかと思い安心してしまったのだ。俺は、もう動くことはできない。そう思って意識を離そうと思っていたらその男が立ち上がろうとしているではないか!俺はもう何もできないのに何故立ち上がる事ができるんだ?

「俺は、ここで終わってはいけない!ここで俺は終われないんだよ!!ここで負けたまま死んでしまえば、俺はまたあいつに会えない、ここでお前を倒し俺の目的のためにも必ずお前を倒してみせるぞ!!そして俺はお前に勝ち、俺は、お前たちとは違う、俺がお前たちに勝つ、俺はお前たちとは格が違う存在なんだ、お前らみたいなお荷物を連れて戦うような事はもうやめる、俺の目的は魔王をぶっ潰すこと!お前はここで終わりだ!そしてここから俺達の本当の戦争が始まる!」

その男は何言っているのだろうか?意味が全くわからないのだ。俺はそんなことをする必要はないと思っている。そんな事をしたところで勝利を得ることなどまず不可能だと思う。だが何故かその男が俺の事を見つめてくる。そして何故かこの男が何を考えているのかが手に取るようにしてわかるようになっていたのだ。俺は、その男に恐怖を覚えたのだ。しかしそれでも、俺はこの男を止めるべきだと思った。そう、これは仲間達を守るための必要な犠牲だと思って行動に移したのだ。俺はその男の首を斬ろうと剣を振りかざそうとした時、男の仲間の一人の女の子に俺の体を拘束されてしまい身動きが取れなくなってしまったのだ。しかもその男の方を見ていると、俺の中にその男の仲間の男が入って来た。そう俺の体内に侵入してきたのだ。俺はその事実に焦りながらもどうにかしようと考えたがその男の固有技能の力が強すぎるがために抵抗する事すらできずに俺は、その固有技能の力により俺の魂ごと消滅させられてしまったのだ。

その固有技能とは【完全融合】というものだ。この固有技能の効果の一つにその人の固有技能を奪い取れるものがあるらしい。しかしそれは、相手から了承を得て初めて可能になるのだと聞いたことがあるのだ。俺はそれを今実行されているということになるのである。俺もそれは理解できているのだがその固有技能を俺から奪おうとしているのだ、だが俺は固有技能を持っていないしこの男には固有技能の使い方を教えていないため俺にはどうすることもできなかったのだ。それにこの固有技能には弱点があってそれはこの固有技能を使う対象に自分の体の一部の接触をしている事が絶対条件であるらしい。

この事実を知ることができたのは、固有技能を発動する前に、男が仲間に対してこう言っていたことを思い出したからだ。この固有技能を使えば確実に相手を殺せる、と言っていたことを思い出すことが出来た。だから今、その男はその固有技能を使おうとした時俺の中に入ってきて俺は殺された。その事によって俺はこの世界に来てすぐに感じていた孤独を更に味わうことになってしまったのである。俺はこの世界に転生してから、自分の固有技能の事を誰にも打ち明ける事ができなくなっており、いつも周りを警戒しなければならない状況になっていた。そうやって俺をずっと警戒し続けていれば疲れて来る。俺はそれが怖くてしょうがなかった。だから常に、人前に出る時は俺の心は疲弊していた。俺は常に緊張を強いられていたのだ。それ故に俺はいつ死んでもいいと思っていたのである。だけど、俺にはまだ仲間がいる、その仲間の事を守らないといけないのだ。そう思うと俺の生きる気力が湧いてきたのである。そうして俺は何とか心を保とうとした。そして、俺はどうにかこの男の固有技能を防ごうと試行錯誤したが俺には何もできないまま時間だけが過ぎて行ったのだった。俺はただひたすらに死なないことだけを考えた。俺は仲間を守るためにもこの死を乗り越えなければならなかった。

私はあの男が倒れた瞬間私達は勝利を確信していた。だがその時私の心の奥底から怒りが込み上げてきたのだ。それはその女にではなくてその女を使ってシント君を危険に陥れようとしていた男に対するものだった。

そしてその男は私が思っていたよりも遥かに強かったのだ。そしてそれはシント君も同じだったようで二人は互いに一歩も譲らない戦いを繰り広げていたのだ。だが、その男の力はあまりにも強力すぎてその力についていけずシント君はその力に負けて倒れこんでしまったのだ。このままではシント君が危ないと私はそう思ってその男の首に刀を振るったのだ。

私はそうして男を倒した後シント君が倒れている事に気づいたのだ。それにシント君に何かがあったのではないかと思い、シント君の元に駆け寄ったがシント君に特に外傷がある訳でもないのでひとまず安心することができたのである。そして私はその男を拘束した後、あの女の人がやけにシント君の方に視線を送ってきていたことに気づいたのである。それにあの男の力の根源となっていたであろう女がその男の固有技能を封じることができたから、シント君を助け出すことができたのだから。そうして私達が勝利を喜びながらシント君と一緒にいたあの男の所に戻ろうとした時、その男の目が突然見開いたのだ。その目に光はなく完全に闇に落ちてしまっているかのようになっていたのだ。その男から尋常ではない気配を感じ取った私たちはその場から動けなくなっていたのである。しかしあの男の方はそんな状況に全く気がついていないのかゆっくりと起き上がり始めていた。その姿に私は驚愕してしまったのである。なぜなら既にあの男は死んでいてもおかしくないほどの傷を負っていて血もかなり流れている状態だったのにも関わらず立ち上がろうとしていたからだ。そして男は私たちのことなど眼中にないように思えてしまうくらいの速度でその男の元に向かったのだ。

そしてその男が剣を振り下ろすとその男の腕が吹き飛んだのである。そしてその男の右腕は宙を舞っていた。だがそれでも男の勢いが止まることはなく今度はその女の人に襲いかかっていったのだ。

私は咄嵯の出来事だったので何も対処することができなかった。だが女の人は違ったのだ。あの男の攻撃を避けることに成功した後反撃に転じたのである。あの女の人は凄まじく強かった。その女の人もあの男に負けず劣らずの戦いをしていた。その二人の間に私達が入ることは許されなかった。それほどに壮絶な闘いが繰り広げられておりその二人の闘いはどんどん激化して行っているように思えた。そしてその男の剣の威力が上がり始めると次第に男の体は壊れていった。しかしその男の体は徐々に治っていくのだ。まるで回復能力でもあるかのような速度で体が元に戻っていたのである。そしてついに男の攻撃が女の人を捕らえてしまった。その男はそのまま剣を振ったのだ。そうするとあの男の体に穴が空いた。そしてそのままその男は息を引き取ってしまったのだ。

私には、目の前で何が起こったのかよく分からなかったのだ。それは当然のことだろう。だってその男に傷をつけることができるのは私には、剣しかありえなかったからである。だが今は、その男は目の前で倒れているだけで動かなかった。つまり、この男の命はそこで途絶えていたはずなのだ。しかし何故か、この男はその男の攻撃をその身に受けて無傷な状態になっていたのだ。その男の顔に生気が宿り始めた。その目は赤く染まっており先ほどとは、明らかに様子が違っているのだ。そしてその男の表情はとても嬉しそうな顔をしておりまるで、自分の復讐を果たしたかのように見えていたのである。

それから、その男が仲間と共に去っていく時に私はふと思い出したのである。この男の名前は、ダバルスだということを。

俺は死んだ。俺が死んだのはこの世界に来る前のことだったのになぜかこの世界に来たら記憶があった。俺はなぜだ?と思い考えた結果、俺に新しい固有技能が与えられたことによって俺に今までにない変化が起きたのかもしれないという仮説を立てることが出来た。俺は俺自身に起こっていることに恐怖を感じていたのだ。俺は自分の体を乗っ取られてしまったのかとそう考えてしまったのだ。

俺がこの世界のことを詳しく知っている理由はこの固有技能の力によって、この世界のことを知ろうとしているのだと俺はそう思った。そしてその力の使い方を理解してその力で俺に干渉してくる奴らを倒すことを目標としたのである。

しかし、この固有技能の力を理解できてもその使いこなすことは困難を極めた。そもそもその力を理解することすら容易なことではなかったのだ。

俺には仲間がいた。だがこの世界でのその仲間は全て死んでしまい、また新しく仲間を作ろうとも思っていたがこの力によってそれも困難になっていた。俺の仲間になりたければまずこの力を使いこなせるようになってもらわないと話しにならないのである。それに俺はもうこれ以上仲間を失いたくなかったので俺に関わって欲しくないという気持ちが強かったのである。そして、俺はもう俺と同じ目に遭ってほしくないからこそその仲間たちに厳しく指導したのだ。

俺はその男の目を見ていると、この男を殺さなければならないとそう感じてしまったのである。そうしなければこの男は絶対に俺たちに危害を加えてくるだろうと直感的に悟ってしまったのだ。

俺はその男の首を斬り落とすために、一瞬のうちにその男の元まで行き刀を振るうと俺はその男を殺すことに成功してしまったのだ。その男の体は俺の手によって斬られたところが全て繋がらない状態に変わってしまっていた。しかし、俺の手にはその男を殺した時の感触があったのである。それはその男の首が切断された時もそうだった。俺はその男が死ぬ瞬間を見届けることが出来なかったのだ。その男は、自分の攻撃を受けて絶命してしまう直前に自らの腕を切り落とした後その男の固有技能を発動させてその男はその場から逃げて行ってしまったのだ。

俺はその後、すぐにシントくんの元に向かいシントくんを連れてその男が逃げ込んだ方向に急いだ。そして、そこには男の姿はなかったのだ。恐らく俺が来るまでに遠くに逃げ去ったのだろうと思った。その男が逃げた方向へは俺はあまり行ったことがない場所なので少し時間がかかってしまった。

俺がその場所に着いて最初に俺が見たのはその女の死体であった。俺はそれを認識したとき、すぐにこの女に一体なにが起きているのかを探り、その固有技能がなんであるのかを知ることができたのである。そして、それがどんなものなのかを知るとすぐにこの女の死の原因を知ることができたのだ。その固有技能を【死者蘇生】と言い、この世界ではこの固有技能を持つ人間は勇者と呼ばれているようだ。この固有技能を使えばたとえ死んでしまったとしても、生き返らせることができるのだそうだ。この世界の人間は誰しもがこの固有技能を持っておりその力を使って魔王を倒し世界を救ったのである。

そして俺は、そんな世界を救った勇者をその固有技能を使う事によって殺してしまったということになるのだ。俺はそれを聞いてとても怖くなった。何故俺の大切な人達を殺しておいてその元凶となったその男だけがのうのうと生きているのだ、そう思えて仕方がなかった。俺はそんなことを考えるとその男に怒りを感じて俺はすぐさまその男を殺しに行こうとしたのだが、その前に俺はシント君のことを思い出すことができたのでまず、シント君に怪我をさせた女を殺そうと思った。

俺がその女に向かって行くと、その女はすぐに剣を抜いて俺を迎撃しようとしてきた。

「貴方があの方のお仲間ということですか。ですがあなたは私の敵ではない。あなたの実力では私を倒すことは決してできないでしょう。大人しく降参してくださることをオススメします」

そう言い放つとその女は腰に差してあるもう一本の細剣を取り出し、構えた。しかし、その女は明らかに俺よりも弱かったのでそんな言葉は通用しない。そう思い、俺はその女の頭を吹き飛ばしたのである。だがその女の頭がなくなったのにその女の意識はまだあるようだった。これはおそらく、脳みそが無くなったことにより体の機能が完全に停止し意識が残ったままになってしまったのだと思う。そして、その女の口から血が流れ始めたのだ。

どうやら本当に死にたいらしいがその望みを叶えさせるわけにもいかない。

それからというものの女は完全に戦意を喪失してしまっていたようでその場に倒れこんできてしまったため殺しておいた。これでその男は逃げ切ることも出来ずに殺されたことになる。

そして、次にシント君の方に向った。シント君の元に急いでいた途中であの女を気絶させ、シント君がいるところに辿り着いた時にはその男はもういなかった。シント君を治療したあとシント君に事情を聞き出した。そうして、シント君はあの場で倒れてしまったことを説明してくれたのである。シント君を襲ってきた男に何かされたのかと思い心配していたがシント君の様子を見る限り大丈夫そうであると判断したため俺は、その女を殺すことだけに集中することができた。俺はまず初めにその女の体をバラバラにしてその女の所持していた物を奪わせてもらったのだ。そして最後に首も切り落として、俺はその女の体を持ち帰って行った。そうすればこの男の追跡から逃れることが出来るのではないかと思っていたのだ。

俺は今現在森の中にいる。ここは王都に向かう道から外れていてあまり人が来ない場所である。

そして今その男の捜索をしている最中である。俺にはどうしてもこの男を許すことができないのだ。この男はこの女の体を奪いその女の固有技能を使ってこの男を死から救っていたようなのだ。この男の体は治ることが無いほど壊れてしまっているはずなのだ。それなのにこの男の肉体が治り始めたのはきっとこの男のこの固有技能のおかげに違いないのである。つまり、その固有技能を使ったことでこの男の体に回復の作用があるものを送り込んだということになる。そして、この固有技能によって回復させられているのはその男だけではないだろうという確信もあった。この固有技能は人の命を操ってしまうのだ。ということはこの男にこの女の命を与えた人間が存在する可能性があるのだ。

俺はこの固有技能を持った人間がこの男にこの固有技能を渡したことをこの男を生かすための口実作りだと考えたのである。もしその男が俺の考え通りの人物であれば、俺に対抗できるほどの実力者が相手だということになるだろう。

そしてこの男はこの固有技能によって自分の体に限界が近づいてきていることを理解していたはずだ。そして、自分が殺されることが近いうちに訪れることだって理解出来ていただろう。だが、俺の想像するその人物は自分の目的を果たすために自分を犠牲にするようなことはせず自分の身を守るためだけに動くタイプの人間のはずである。だから俺に負けてしまう可能性も十分に考えられたはずなのだ。つまり、この男を助ける理由がなくなるのである。それにも関わらずこの男は助かることができたのである。それは俺に負けたからではなく自分の意思とは関係ないところでこの男の命は守られていた可能性が高い。だから、俺がその男の命を狙っていることを知ったのならばこの男は俺のことを殺しに来るはずだと思っているのだ。そしてその男を俺が殺すことによって、俺はその男に自分の正体を隠すことが可能となるわけである。俺はこの男の正体を知らない。この男も俺のことをよく分かっていないのである。お互いが相手の情報を持っているわけがない。だからこその勝負でもあるのだ。俺は、絶対にその男に勝ち俺に敵対してくるであろう男のことを特定しなければならないのだ。この固有技能を使うことのできる固有技能所有者が他にも存在しているのなら俺がこれからその男のことを探し出すのは不可能に近いだろう。それにこの固有技能は一人しか持っていない。その男をどうにかして捕まえてこの固有技能の所有者のことを聞けばすぐにでも分かる話なのである。しかし、俺がこの固有技能を手に入れるまでに時間がかかったことを考えると俺が生きている間に再び現れる可能性は低いと考えられる。そのためこの固有技能を持つ者を確実にこの手で葬っておかなければいずれこの世界が危なくなってしまう恐れがある。

そして俺と相対することになる男はかなりの強者であると言える。

そしてその男は俺の予想が正しければかなりの年月を重ねているはずの者だろう。その者が一体どんな容姿をしているのかは全く分からない。だが俺はそんなことは関係なしにその男を殺すつもりでいる。俺はその男のことを殺すつもりだが、もしも仮にその男が死んでしまった場合、この男に新たな肉体を与えて蘇らせようとしているかもしれない。そうなればもう終わりだ。この固有技能の使い手はその者の命を弄び、それを何度も繰り返すことになるのだ。それは、許される行為とは言えない。だからこの男に新しい身体を与えるなど絶対に許してはならないことなのだ。そのような悪行を許してしまった時点でもうこの固有技能はその効力を失ってしまうと思える。それに俺もその方法で蘇生されているかもしれないのだ。そんな危険なことをされていい訳がなかった。それに、俺もこの男と同様に自分の意志とは無関係で強制的に生き返っている可能性が否定出来ないからである。

そう考えると俺はその男を殺しに行くしかないのである。この固有技能を持つ男を殺してその男の体を消滅させる必要があるのである。

しかしそうするとまた新たに固有技能を持つ男がこの世に出てきてしまい、同じことの繰り返しになってしまうのだ。それはあまりにも非効率であるし、なによりも意味がないものに変わっていってしまうのだ。

そこで俺に考えがあったのだ。この固有技能を使ってこの男を復活させてしまえばいいのではないかと考えたのである。そして、俺も自分の固有技能でこの男を復活させ、そしてその後俺の固有技能で俺自身を蘇生させてしまおうと考えたのである。そして俺が復活すればもうこれ以上の死者を出すことはないし、新しく生まれてくる人を止めることも可能になると思うのだ。

俺はまず、俺をこの世界に転移させてくれた男に感謝をした。俺をこの世界へと連れてきてくれていなければ、俺が今こうしてこの世界で生きていたとは思えないのである。俺がこうやって普通に暮らしてこれたのは間違いなくそのお陰なのだ。

そしてその男の顔を頭に思い浮かべた時に思い出したのである。俺があの男の固有技能を奪ったということを。しかし俺にはあまりあの男の記憶は残っていなかったのだ。あの男の顔ははっきり覚えているがそれ以外の部分についての記憶がかなり薄れてしまっていたのである。恐らく、その男を殺した後に俺は気を失ったのだろう。しかし俺にはあの男を殺せたという記憶が残っているため、俺が固有技能を使ってあの男を生き返らせることができるということは確かだった。

そうして俺はその男の居場所を特定した。俺はその男にすぐに戦いを挑んだ。俺は男と戦う中で自分の体がその男を殺せる状態になっていくように固有技能を使い男を殺せるように強化していったのである。そうすることで男よりも強くなることはもちろん可能であるのだがそれでは足りないのである。俺のこの固有技能を扱えるレベルに俺自身が追いつくことが必要になるのだ。そうしなければ俺がその男に負ける可能性が出てきてしまうので俺の強化は必要不可欠であった。

そして俺の体がその男の体よりも強い力を発揮できるようになる頃にはもう日が落ち始めていたのだ。その男は、その男の体の持ち主の体力も奪っていくようでどんどん動きが悪くなっていたのだ。そして遂にその男の首元に手を当て、そしてそのままその男の首を跳ね飛ばし、そしてその男の肉体を燃やし尽くしてしまったのである。

これでその男の体は完全に消滅したはずだ。

それからというものの俺がその男の肉体を復活させることに成功したのである。その男の意識はまだ戻って来ていないが肉体は無事復活したのである。そしてその男が復活したことを確認した後、俺はその男から少し離れた場所に移動した。そして俺は早速自分の体を変化させたあと、男の体に俺の体を上書きしていく作業に移った。

そうすることにより俺の意識が完全に消える前に男の意識を取り戻すことができたのだ。俺はその時になってやっと男の名前を知っていたことに気づくことが出来たのだが既に後の祭りであり、どうすることもできなかったのだった。

ただただ自分の愚かさを嘆いただけだったのだ。しかしもう遅かった。俺の体は完璧に男に馴染んでいたのだった。そうすると俺がこの男の体に馴染んでいく過程で俺はその男に何かしらの影響を及ぼさずにはいられなくなるだろうということが分かり、俺は少しだけ恐怖を覚えていた。

だが俺は、もう引き返すことが出来ない場所まで進んでしまっていたためこのまま進むことにしたのだった。この男はおそらく、この固有技能を持ったままだと死ぬ可能性が高いと判断したのだ。それに、俺が殺したあの男はどうせ復活するだろうと思ってしまったのである。俺はもう二度とあんな体験はしたくないと思った。そして俺の体に何が起こるかも予測できていたのである。

その男の名前を知っているため俺はこの男が目覚める前に俺がすべきことだけを考え、実行に移したのである。

そうすることによってこの男の寿命は延びるはずだった。俺はその男に名前を教えてもらったが俺はその男の名を呼ぶことはしなかった。そして、俺はその男から貰ったこの男に名前を呼んでもらうことも無かったのである。俺にとってその男に名前を呼ばれたくは無かったからだ。この男にはこの男として過ごしてもらうつもりだったのだ。その男の肉体は治りつつあるがまだ完全ではなかったのだから。そうしてその男には自分の肉体が完全回復していることを誰にも悟られずに生きて欲しかったのだ。だから俺もまだ自分の体のことは秘密にしておいたのである。

俺はこの男をこの男のまま死なすわけにはいかないのだ。その男はいつかこの固有技能の所持者が現れて殺されてしまうのがオチなのだ。だからこの男は自分が生きている間にこの固有技能をその所有者を絶対に殺しておくべきだと思っているはずなのである。俺はそのことをこの男に伝えるべきなのだろう。そして俺にこの男を助けて欲しいと思っているはずなのだ。しかし、それは絶対に出来ないことでもあった。

なぜならばこの固有技能を持っているその男はもう既に死んでいるのだから。そしてその男は俺によって命を奪われているのである。この固有技能を持っていた男がその男の体を乗っ取ったその男だということはすぐに分かることである。そしてその男はきっと俺に復讐するためにその力を悪用して自分を殺そうとしているはずだからである。そんなことは許せなかった。だから俺は自分の身を守るためにこの男を助けることができなかったのである。もしこの男が自分の身を守っていると相手に知られた時、俺のことが敵として認知される可能性が高くなるのである。

それならば最初から自分から自分の正体を明かしてしまう方がいいのかもしれないが、それでも俺の本当の姿を知った時にこの男が自分のことを信じてくれるかどうか分からなかったからこそ俺はこの男を生かすことが出来なかったのかもしれないのである。

そして俺は男と自分の固有技能を使ってお互いにお互いを騙し合えばその問題は解決出来るかもしれないと考えていた。

そして俺がこの固有技能を扱えるようになればこの固有技能を持つその男はもう俺の敵では無くなるはずだ。それに俺と男が同じ目的を持っているため仲間になるという手もあるだろう。だが俺はその男のことが信用できるとは到底思えなかったのである。

そして俺と男はお互いに自分の固有技能を使い相手を騙そうとしながら自分の体を鍛え上げていく。そして俺は、この固有技能を完全に自分のものにすることが出来、そして俺は固有技能を自分の物にしたと同時に俺の体が変化して行き、最終的に俺の体は人間ではない別の生物へと変化した。その姿形はもう人間のものではなかったのである。そして俺の顔つきも変化していたのだ。

俺の固有技能で作り出した俺の姿は醜い魔物のような顔に変わっており、俺はその容姿を見て俺はこの固有技能を持つ者になったと確信した。俺の固有技能を使うとその者になり切れるということが分かるのである。そして俺が自分の固有技能を使っている時の俺の表情を見るとそれはもう俺の顔とは言えなかったのである。

その者はその見た目とは裏腹に心が優しくそしてとても強い精神力を持ち合わせた者であった。その男は、この世の中で最強の存在だと言ってもおかしくはない程の実力者であったのだ。しかしその男の心は病んでいたのである。

そう、俺はこの固有技能を持つ者がどういう人生を歩んできたのかということを想像してしまったのだ。その男がどんな想いを胸に秘めながら生きていたのかというのをなんとなくだが理解出来てしまったのである。その男はこの世の全てに対して失望感を抱いてしまっているのだ。この世界に自分の存在を認めてもらえる場所など無い、そして自分の生きる価値さえも感じていない、この世界に自分は必要ないのだと思い込んでしまった哀れで可哀想な人だという事が分かったのである。

俺はその男の心の奥深くに存在する感情を感じ取ってしまった。その男がどれだけ深い悲しみを心の内に隠してきたかというのが嫌でも分かってしまうのだ。その男はこの世界に絶望しきっていて生きたいとも死んでしまいたいとも思ってはいないような気がしたのだった。その気持ちを痛いほど理解できる俺は思わず同情しそうになった。俺もかつて同じ様なことを考えたことがあるのである。

俺もその当時はとても悲しくて辛くて仕方が無かったのである。今この場で死んでしまえばもう辛いことから逃げ出せるという甘えが出てしまっていたのだ。だからこそ俺はこの世界があまりにも酷すぎるものだと勝手に判断し、この世界から消えてなくなってしまおうと考えたのである。

そして俺がこの世界から抜け出すことを考えた理由はそれだけではなかったのだ。

それはこの固有技能の持ち主の生い立ちや過去、そして現在についても俺はその者から聞いて知っていた。その男の境遇についてはあまりにも悲しいものだった。そして男はこの固有技能の持ち主の男のことを尊敬しており、憧れを抱いていたのだ。男は自分の固有技能がどのような経緯で生まれたものなのかというのを知らなかった。だが男はその固有技能に何か特別なものがあると思っていたらしく、男がその固有技能を手に入れるために必死になっていたのだ。

そうして男は、ついに固有技能の保持者になることができたのだった。しかしそれと同時に男の固有技能はその男を自分の肉体の主導権を握る為だけに使ってしまい、その結果、男はこの固有技能の保持者の肉体のコントロールを奪ってしまったのだった。

その男の固有技能にそんな効果があったという事実を知ることもなく男はそのまま自分の体に憑依させ、その男の体を完全に乗っ取ってしまったのだった。その男の精神はもう限界に達していたのだろう。だから男は固有技能に侵食されていったのだと思う。

そして男はこの世界の人々を恨み続け、自分をこんな運命にしたこの世界を呪った。だがこの男にも何かの使命があったに違いない。この男もまた俺と同じ苦しみを抱えていたのである。

俺は男のようにならない為にこの世界で生き抜いてやろうと思ったのである。

そう思ったのも束の間俺は男からその男に乗り移ったその者の情報を色々と教えてもらっていたのだ。俺はその情報量に驚きを隠せないのであった。俺はその男が一体何者かが気になってしまったのである。そしてその男について調べたくなった。だが、男の情報はこの世界でもトップシークレットに値する内容であり、その男の正体を調べることは不可能だと知った。

俺の持っている固有能力の一つである《神の審判》の能力を使えば簡単に男の秘密を知ることが出来るのだが、俺にはその男の素性を探ることは出来なかったのである。俺はその男が本当にこの世界の支配者ではないかと思うようになったのだ。俺は男の体を手に入れ、男の肉体が回復していくにつれて俺は自分の体に自信を持てるようになったのだった。

俺もいつ自分の肉体に異変が起こるかわからないので早く自分の肉体の強化に取り組まなければと思い始めていたのである。俺はその男と同じように、肉体が回復するたびに固有技能を自分の物にしていけば、俺はその男と同じくらいの強さまで強くなれると踏んだのだ。俺も自分の肉を改造し強化する方法を選んだ。

この方法であれば俺が強くなるための時間をかなり短縮することができた。俺は自分が強者になりたいと思った時にいつも行っていることをすれば良いだけだからである。ただ俺の場合は他の人のやり方とは少々違っている。それは自分の体を自分の意思通りに動かせるようにしなければならないということである。俺の場合、俺の意思で動かすことのできる肉体の部分はかなり少ないのである。だからこそ俺はこの固有技能を使いこなし自分の肉体を強化しようと思ったのだ。俺は俺なりに強くなればいいだけなのである。

俺は自分の肉体を強化するにはまずこの体の身体能力を把握する必要があると判断できた。

そうして俺は、この体で戦うことで肉体の限界を知りたかったのである。肉体をどこまで耐えうる事が出来るのかを。

俺はまだ一度も自分の体に負荷をかけたことがない。そのため自分の限界が全くわからなかったのである。俺はこの肉体にどれほどのことができるのだろうと疑問を抱いた。そこで俺は、一度この体の実力を測るためにある事を行う事にした。そうして、俺が考えた方法はこの固有技能に自分の肉体が壊れないように調整する機能がないかどうかを確かめたのである。そしてその機能を俺に付与することならできるのではないかと思い至ったのである。だから俺はこの固有技能の所持者となった男からその機能を聞き出しそれを発動させようと試みていた。

しかし、残念なことに成功しなかったのである。その男の持っていた固有技能の力は完璧ではなかったのだ。

だから俺にはその固有技能を俺が扱うことは出来ないということがよくわかった。俺がその固有技能を完全に使いこなすことができれば、その固有技能の力を引き出すことも可能になるはずである。俺の固有技能は万能ではない。この技能を扱うのは難しい。だから俺も試行錯誤を繰り返している最中なのだ。俺は固有技能の使い方を覚えるためには、やはり実戦が一番だと考えたのでこれから毎日、魔物を狩り続けることに決めた。

魔物を倒せば経験値が貰える。そして俺のレベルが上がることによってその俺の持つ固有の技能をもっと上手く使う事ができるようになるかもしれないからだ。

そして俺は自分の固有技能を使っていくうちにその特性に気が付き始めたのである。この能力があれば俺自身のステータスを弄ることができると分かったのである。俺は自分の持つ固有技能の特性を理解するのと同時にその力を試してみることにしたのである。自分の固有技能は、他人の肉体にしか作用できない。しかし、俺自身に対してはその固有技能を使える。

俺が今使っているのは自分に対する固有技能の発動である。それは相手の固有技能を発動している時に俺は自分を対象にしなくても、相手と同様に固有技能を使うことができるというものだ。

俺はこの自分の固有技能でできることを最大限に利用することにした。この能力によって俺はレベルを上げる効率を大幅に上昇させることが可能なのではないかと思った。俺は今まで固有技能を自分自身に使ったことはなかったので自分の力の底を全く知らなかったのだ。

だからこそ、俺は俺自身が自分の固有技能を使うことでどのような力を発揮出来るかを把握しておこうと決めたのである。そして俺は自分の体に少しずつだが慣れ始めてきた頃、俺がこの世界で目覚めてから既に一ヶ月ほど経っていたのである。そしてこの日初めて俺が自分の体を酷使するような事をするのであった。そして俺は、魔物の討伐依頼でゴブリンの群れをたった一人で殲滅するという偉業を成し遂げたのである。俺が自分の固有技能を使いながら戦闘を行なった結果、この固有技能を使いながらでも魔物と戦うことが出来るということが分かったのである。俺が魔物と戦った回数は、もう軽く1000回を超えていたのである。

そう、もうかれこれ俺はこの世界にきて一年半くらいが経過しており俺は、この世界の常識を覆すような強さを手に入れてしまっていたのだ。そして、この固有技能を手に入れたおかげで、俺は今の自分があるのである。

俺は今日から学校に通うことにした。入学式当日だというのに朝っぱらから冒険者である俺はダンジョンへと潜り続けていたのだ。このダンジョンで出てくるモンスターの素材や魔石などをギルドに売るだけで生活していけるほどの金を持っていた。

このダンジョンに出てくる階層にいる全ての敵を一人ずつ倒す度に得られる経験値は、この世界の人と比べると、とても多くなるのである。それに俺はこの固有技能のおかげでレベルアップの速度が圧倒的に速くなっているのだ。普通の人ではこんなに短期間で成長することはできない。そう俺は、もう普通にこの世界に存在するどの戦士よりも強くなっていたのである。そして俺は、自分の体がどれだけの速さに加速することができるのかを確認するためにひたすら走っていた。このスピードをコントロールできるようにならなければ、俺はいずれ、その肉体に起こるであろう異変に耐え切れなくなると思ったからである。

そしてこの世界に転移してきたばかりの頃に俺の目の前に現れた、あの女、神無月結愛が話しかけてきて俺はその質問に対し答えてしまったのだ。そうして彼女はなぜか、俺と一緒に行動するという選択肢をとったのだった。俺もまさかそんな展開になるとは思っていなかったが仕方ない。彼女の固有技能を詳しく知るためには行動を共にした方が良かったからという理由もあり、俺は仕方なく彼女と行動することになったのだ。

そして俺はその日からずっとこの世界で起きている問題について考えていたのである。それは、勇者が一向に見つからないことにあったのだ。その問題は彼女が言っていた通り、その問題を解決するのは、かなり難しいものだった。だが、その問題が、もし、解決したとして、また新たに魔王が現れ、人類の脅威になるかもしれないという問題もあるのだ。俺にはどうしようもないことだった。

この異世界に来てからは毎日俺は自分の限界というものを確かめるように魔物と戦ってきた。だがしかしそれでも自分の限界というのが分からない。俺は自分の肉体のスペックを知り尽くしていないのだ。俺には自分の肉体がどれだけ頑丈なのか、どれ程の力を持っているのか、それすらも知らなかったのである。だから、この固有技能を有効活用する為に俺は、自分の限界を知ろうと思ったのだった。

「はぁ、はぁ、まだ足りない」

俺は自分がどこまで強くなっているのかが知りたくなって、限界を試すかのように何度も自分の体を痛めつけたのである。

そして、俺に一つの疑問が生まれたのである。

それはなぜ俺は痛みを感じることができるのかという疑問だ。俺の持っている固有技能の中には《苦痛耐性》という固有技能が存在する。この技能を持つ者は、自分の肉体に起きる痛みを全て遮断することが出来るのだが、この固有技能の効果には、その対象を自分で設定することができるのだ。そしてその効果の中に俺は痛みに対して鈍くなるように設定したのだ。だが、今は痛覚が完全に戻っているのである。この矛盾を解決するためには俺は一つしか方法は思い浮かばなかった。俺には何かの力が働いているのかもしれない。そう思った。この世界の管理者である神と繋がっているからかもしれないと思った。

しかしそうなってくると、今度は何故神は無干渉を貫いているのだろうと思う。

確かにこの世界の人たちは俺のような存在には手を出すことができない。俺もこの世界の人に害を及ぼすつもりは無いのだ。だから俺は自分の肉体に限界があることを調べるのが目的だったのだ。そしてその限界を調べることができたのだった。俺は自分の固有技能の力によって肉体が限界を超えた場合、自動的に回復してくれる機能がこの固有技能に備わっていることに気が付いたのである。この固有技能をうまく利用すれば俺は、常に最強の状態で戦うことが可能だと知ったのだ。俺はこの事実を知ったことで俺は少しこの体の扱いがわかってきた。

俺の固有技能のもう一つの力は、自分の体を俺の意思通りに動かすことのできるものだ。しかし、俺の体はその意思通りに動くことが出来ない。だからこそ俺は自分の固有技能を使い、この体に俺の意思で動かせるようにすることを試みたのだ。その結果この能力は成功した。この力のおかげもあって俺は、その肉体を自由自在に操ることができたのである。俺が固有技能を使い始めてから一年が経過した。この一年間の間で俺はこの世界で起きていた問題を全て解決してしまった。そして俺の体はかなりの成長を遂げていた。俺は今、自分の肉体に起こっている変化に困惑している最中である。

「な、なんだ?俺の体、なんかいつもより調子が良いぞ、しかもこの体の状態は一体どういうことだ、いつもと変わらないはずなのになんとなく分かる、この体の中にある力がどんどん増えているって、どういうことだ?」

そう俺が言うと、

『お前は俺と同じ存在になった、だからその俺の体に宿っている力も使いこなすことができるようになった』

頭の中で声が響いたのである。

「ん!?今の声、どこから聞こえたんだ、それに今のは俺の考えに返事をするみたいな感じだったが一体何が起こっているんだよ、まあ良いかそれよりも俺はこの固有技能を使って、俺が今まで戦って倒して得た経験値でレベルを上げることができていたけどそれは間違いなかったよな、俺はちゃんとその固有技能が使えていることを確認できてよかった。それにしてこの固有技能、本当によく出来てるな、この俺の体を自分の体のよう思い通りにできるしそれに俺の固有技能とこの能力を使えば俺は、この世界で最強の存在になれるかもな。俺の身体能力と固有技能の力さえあればこの世界で生きていくのに困ることはないし、この固有技能で俺は強くなることも容易になる。俺にはもうこの世界に未練はないな。俺がこの世界に来たのも、ある目的を達成するためにこの世界に呼ばれたからだ、俺は自分の固有技能を使い自分の肉体の限界を知ることによって自分の実力を完全に把握することができた。もう、俺がこの世界にくる意味もなくなってしまったから、そろそろ元の世界に戻ろう。俺のことを待っていた人がいるからな、あいつを一人にするわけにもいかないしな。」

こうして俺のこの異世界に転生してからの長い長い物語は終わりを迎えるのであった。

俺の名前は神崎拓真、普通の男子高校生だった。だけどある日いきなり交通事故にあい、気が付けばこの世界に転移していてしまったのだ。そしてその時に偶然俺はこの学園に入学することになったのである。そしてその学校で俺が目にしたのは異世界から来たと言う一人の美少女の姿であった。最初は嘘をつくなんて可哀想だと思った。だってそうだろう、この世界の人は異世界など存在しないと本気で信じているのだ。俺が今まで過ごしてきたこの一年半という月日はこの世界での俺が経験した記憶や出来事なのだ。

俺はその少女の話を信じることは出来なかったがどうしても確かめたいことがあったのだ。だから、俺は彼女の言葉を無視し、俺の目の前で魔法を使うように頼んでみた。すると彼女は俺が望んだ通りに魔法の力を行使してくれたのである。俺はそれが真実であることを悟った。だが同時に疑問が生まれた。この力があれば、この世界に生きる人々は俺よりも強くなれるのではないのかと思ってしまうような圧倒的な力を持っていたからである。そして俺に、俺が持っているこの固有技能が欲しいというお願いをした時、この固有技能を持っているのが俺しかいないということを彼女から告げられた。俺の予想通り、彼女の発言は俺を騙すための発言ではなく、本当の事だった。

俺が彼女の言っていることが本当だということが証明できたところで俺は彼女の仲間になることを決意した。彼女の正体を探るというのもあったが、この世界を救える可能性があるとすればそれは彼女の力を借りることしかないと思ったのだ。そしてこの世界に召喚された時のあの白い空間、そこで聞いた謎の女性の言葉を思い出したのだ。

俺がそのことについて彼女に聞くとやはり俺と同じようにあの白の世界で不思議な力を授けられていたようだ。この力は、あの世界で死んだ人間を蘇生することができるらしい。だが俺はまだ死ぬ予定ではなかったからか、俺は、俺の肉体を元の場所に戻すためにその力を行使してもらう必要があったのだ。そうしないと俺は俺の肉体に戻ることが出来なくなってしまうからだ。そうして俺とこの世界の少女の出会いにより、俺はこの世界で勇者になることを決意する。この世界で俺がすることは二つだ。一つは自分の力を最大限に生かしこの世界の脅威になる可能性のあるものを全て取り除く。二つ目は魔王についての情報を手に入れること、その魔王とはあの女、神無月結愛のことだった。そしてこの二つの目的を果たす為俺はこれからの行動方針を決めることにしたのである。そしてその答えがこの世界に俺の新たな人生を送る為にこの世界に来させられたということから考えるに魔王が復活する可能性が高くその復活した魔王を倒すことで俺は目的を達成することができると思ったのだ。

俺はそう結論付けた後、彼女の力を使って俺が元々暮らしていたあの世界に俺が帰ることができるようになるまでこの世界で生きていこうと思ったのである。

それからの俺の生活というのはかなり刺激的な毎日になっていたのだ。この世界で初めて見たモンスターがこの世界ではかなりの高ランクに位置するドラゴンだったことが、かなり驚いたのだが、その後に起こったことはもっと驚くべきことであった。

俺の住んでいる地域一帯に突如として巨大な魔物が出現したのである。その光景を見た人達は皆パニックに陥っていたのだ。

俺はすぐに行動に移るべく、その場に向かうことにしていた。俺は、俺にしかできないであろう役割を与えられていたのだ。俺は、この魔物達を倒し、その魔物達の親玉を潰すことを期待されていたのだ。その期待に応えるように俺は魔物たちの元へ急いだ。俺はこの魔物達が、この世界のどのくらいの強さの魔物なのかを知りたかったので、あえて魔物の攻撃を受けることを決意したのである。そうすることで魔物の力を測ることが出来たのだ。俺は、魔物が繰り出してくる拳を避け、攻撃が当たらない程度の間合いを取りながら魔物を観察したのだ。そうして、俺は、この魔物が自分と同等レベルの力を持つものだと理解することが出来た。

俺はその情報を元に自分が出せる最大の力を持って魔物に立ち向かったのだ。そうして俺達は激しい戦いを繰り広げた。俺が放った技を魔物が受け止めたり、その逆があったりしながら戦闘が繰り広げられる中で俺は一つのことに気づいたのである。俺は俺自身の肉体のスペックを知り尽くすことができなかったという弱点がある。この欠点を克服しなければこの先の大きな壁を乗り越えることができないと思い、その解決策を見つけようとしたのだった。だが俺は俺自身との戦いに意識を奪われていたから気づけなかった。背後に迫る強敵に、 俺の後ろにいた敵の正体は俺と同等の能力を持つこの世界の住人であった。その人物が放つ一撃に俺は気づくことができずに攻撃を喰らってしまったのである。しかしそんな状況の中でも俺はこの人物と互角の戦いをすることができていたのだった。

そうしてお互いの全力を賭し、俺は自分の体に秘められている能力に少しだけ気づいたのである。そして俺はこの戦いで得た知識をもとに、俺の持つこの能力を使いこなしていけるようになるように鍛錬を重ねていくことを決意しこの戦いに勝利したのだった。俺はこの世界に来たばかりの頃に比べて遥かに強くなり、自分の肉体の能力を完全に使いこなせるようになったと確信し、俺が本来いるべき場所に帰ろうとした時俺が今戦っていた相手こそが俺と同じ存在だと言われてきた、あの神だと教えられた。俺の推測が正しければこの男は恐らく神の中では最弱の存在だとわかったのである。だからこそ俺はこの男がこの世界で最強と呼ばれる存在であるならばこの男よりも俺が強くなることにより俺がこの世界に存在する意義が生まれてくると考えたのであった。

そして俺は神と戦うことになった。俺は神の力を試したくなっていたのである。だから俺はまずこの固有技能を使いこの世界に存在している全ての生き物のステータスを調べることが出来る固有技能、『解析』を使ってみることに決めたのであった。しかし俺は固有技能を使うことでとんでもないことを知ることになる。

そう俺はこの世界に来て、俺がこの能力を使えばこの世界にどんな影響を及ぼすかを知ろうとしていたのである。しかし俺には、俺がこの能力を使った結果が一体何を示すのかがわかっていなかった。その結果は俺の予測を上回るものであった。俺は自分の持つこの力のせいでこの世界が壊れてしまうのではないかという不安が頭の中でずっと付き纏っているのだ。俺は、俺自身が俺がこの世界に来る前の生活に戻れるのかということに心配をしているわけではない。この世界には元々存在しなかった異物が入り込んでしまったのだ。それによる影響がどれだけ出るか全く予想がつかなかった。この俺が持つ固有技能によってこの世界に影響を及ぼしてしまった場合に俺の体、そしてこの固有技能はどのような反応を起こすのか分からないのだ。もし固有技能の影響で俺が死んでしまう場合だって考えられるのだから。

俺は自分の命が惜しくてこんなにも悩んでいるんじゃないんだ。この能力を使えば俺は確実にこの世界で生きるのが困難になってしまう。それはもう仕方がないことだと思う。だから俺は自分の能力でこの世界での自分の存在価値がなくなってしまうことを恐れているのだ。この能力はこの世界に影響を与えすぎてしまう。そうして俺のこの固有技能が発動してしまった場合はこの世界に住む生物が俺に対して敵対するようなことになれば俺は間違いなく殺されるのである。俺は、俺は自分の力で自分の大切な人をこの世界に呼んでしまいこの固有技能が暴走することによってその人達を殺したくないと思っているのである。

俺には俺を召喚させた奴の目的がなんとなくだが分かっていた。あいつの目的は俺を利用して世界を滅ぼすことだったと思うんだよなぁ。そして俺が持っているこの固有技能はこの世界には必要のないものだと思っていることだろうな。まあそんな事どうでも良くて今はあいつを倒すために力を付けないといけないってことだな。とりあえず今はあいつを殺すことを最優先にするかな。今の所は殺そうと思えばいつでもできる。だけど、殺すのであればあいつが何か行動を起こしてからがいいと思ったんだよな。そしてあいつを追い詰めることに成功した後に俺はあの能力を発動させてあいつを完全に消し去るって作戦なんだけど、これがうまくいくかどうかわからないな。ただ俺の持っているこの固有技能を使えば確実に倒せそうっていう自信はあるんだよ。俺が持っているこの力は俺にとって最強の力と言っても過言じゃないはずだしね。

俺の持っている力は全てではないがかなり強力なものであることは確かである。その中でもこの『解析』『全智慧の書庫』の二つに関しては他の力より強力だという自負がある。

まずはこの固有技能について説明しようか。これは、固有技能の中の一つなのだ。

俺の固有技能は全五個あるうちの三個の力を持っている。そのうちの一つは『絶対鑑定眼』というものでその効果はあらゆるものを詳しく調べることができるという優れものだったりする。

もう一つの力は、俺のいる世界で、この世界の書物などを読んで得た知識などをまとめたものが入っている書庫のようなものである。

最後の一つで俺はこの世界には存在しないはずの魔法を使うことができる。この魔法は、魔法名で言うのなら『創造魔法』というらしい。その効果は自分が作りたいと思ったものが作れるというものだった。そして俺はこの魔法を使うために必要な条件を知ることができ、その魔法を作ることに成功をしていた。

これらのことから分かる通り俺はこの世界で生き抜いて行くためにこの世界で必要な力は大方習得していた。俺には時間さえあればなんでも作ることが出来るこの能力があったおかげで様々な武器や、食料を作り出すことができた。そうやって俺がこの世界で生活をしていたある時この世界に危機が迫っていることを告げられたのだ。俺はその時から俺は自分が強くなっておく必要があると感じたのだ。その危機というのが俺が俺をこの世界に送った張本人でありこの世界を滅ぼしかけた女、つまり魔王のことである。この世界の人々に俺の力について知られると、その力を狙うものが現れるかもしれない。そう考えると俺の力を誰にもバレないようにして、この世界の脅威になりそうな存在を全て排除する必要があると判断した。そうして俺は俺自身を強くするために修行を始めることを決めたのだ。俺自身を強くするための手段を考えたときに、俺の持っている固有技能が役に立つのではないかと思ったのだ。俺は固有技能の『解析』を使って俺自身を徹底的に分析してみた。その結果俺自身の身体能力のポテンシャルを知れたのである。俺自身は固有技能を使わなくてもそれなりに戦えるのだが固有技能を使って戦った方が格段に強いということを俺は理解したのだ。そこで俺は自分の肉体に宿している潜在能力を引き出しきることを決意した。そして俺は自分の肉体に眠る潜在的な力を全て引き出すことにより肉体の強化を図ったのである。そして俺は俺自身の潜在能力を限界まで引き上げたのである。そのことによって俺は、自分以外の人間が自分以上の力を持つということはないと言えるくらいに強くなった。この肉体の力をフルに発揮するにはそれなりの時間が掛かっているのでこの肉体が全力を出すことができる状態まで強化するまでに一ヶ月近くかかっていた。そしてそれからは今までとは比にならない程強くなれたのだ。俺はその肉体の能力を最大限に生かす為、この世界に存在しているありとあらゆる技を覚えていき自分のものにしていこうと考えていたのだ。

そんな時に俺の前に魔王を名乗る者が現れたのである。そしてそいつの実力は、神に認められた人間だとしても勝てるかどうかは分からないくらい強かったのだ。

この世界の人間は強いのである。しかし俺の見立てではこの世界で一番弱いとされている魔物ですら俺よりも圧倒的に強い力を所持していることがわかった。そして俺は、自分が今この世界に存在する中でどれくらいの強さを持つ存在になっているのかを知りたくなっていた。そうして、俺は、自分がどれだけの強さを持っているのかを把握するために、俺自身と戦ってみることにするのであった。そしてその実験の最中にこの世界の住人の中でもかなりの強者であると思われる人物を見つけることに成功するのだが、俺はその強者に圧倒的な強さを見せつけたのだ。

その強者は、俺が、この世界に来てすぐに出会い今もこの世界を一緒に守ろうとしてくれている仲間である会長であった。会長は本当に強かったのである。俺の攻撃をまるで予知をしているかのような動きをして避けてみせたりしていたのだった。しかし、それでも俺は、俺の攻撃を当てることは出来なかった。

俺はこの会長と手合わせをした事でこの人がどれほどまでに自分の能力を高めようとしているのかを知ったのである。俺は、俺と互角の相手に出会うのはこれが初めてであるのだ。だから俺は俺と同じ力を持つこの人に敬意を持って接することにした。そして俺もこの人と同じような力を手にし、さらに高めることに決めたのである。そうして俺は会長さんと仲良くなっていくうちにこの人のことがとても大事な存在になっていったのだ。

俺の持っている固有技能の一つである、全智慧の書庫の中にある情報の中には俺の持っている固有技能を進化させる方法が書かれている本が存在した。そして俺の持つ固有技能が今どういった変化を遂げればよいか、それを知っている俺には実行に移すことが可能だ。しかし、俺の固有技能の進化の方向性を変えるためには、今の段階だと固有技能を使いこなすことが出来ていない可能性がある。固有技能というのは自分の意志だけで発動するわけではなくて無意識で使ってしまっていることもあるので自分の思い描く方向へ固有技能を進ませる為には固有技能を使いこなしている状態にしなければならないのである。

そして俺は自分の意思で固有技能を使うことができるようになりたいと思っていた。なぜなら俺はこの世界で最強の存在になりたいからだ。俺はこの世界に自分の存在理由を見出したいと考えている。だからこそ最強になることが俺の目的でもあるんだ。

だから、俺は固有技能を使いこなし自分の力のコントロールが出来るようになるまでは固有技能を発動することはしないようにしようと決めていたのである。

そして、俺はその日から毎日のようにこの世界に危険を及ぼさない程度の力を自分の固有技能によって行使していた。この世界にいる生物達を鍛えたり、自分の固有技能の効果を確かめたりするのに使っていたのだ。そうして俺は、この世界を脅かすものが現れても即座に対応できるように自分の力を蓄える準備を始めたのだ。俺の今の目標はこの世界の生き物達が、俺が守る価値のあるものだと判断してくれるようにすること。そしてこの世界に危害を加える者がいれば俺の手で確実に殺すこと。俺はそうすることで俺の存在が意味あるものだと思いたいのだ。だから、そのために俺は自分をもっと強くしていかなければならないんだ。それに俺の目的はそれだけではない。この世界に俺が召喚される前に何が起こってしまったのかを突き止めることである。俺の予想が当たっているとすれば俺は何かが原因でこの世界へ来る前の時間に戻れるかもしれないのでそのことも視野に入れながらこの世界を守ることに専念して行こうと思っている。

そんなこんなで色々とあったのだがやっとこさこの世界に馴染んできたと思うんだ。この世界がどれだけ良い世界なのかということも分かった。だから俺は自分の命を賭けれるだけの価値がこの世界にはあると思ったのだ。この世界は、前の世界で俺の事を迫害してきた奴等なんかとは違って皆優しかったし。

まあこの世界に来てしまったのは俺が望んでしたことじゃなくて強制的に飛ばされたんだけど。

そんなこんながあって、俺のこの世界での存在価値も徐々に上がりつつあるのである。俺には、まだまだやりたい事があるので俺は早く元の世界に戻りたいと本気で思っていないのである。俺はこの世界で楽しく生きていきたいと思っているのである。だから俺は俺の大切な人たちを守るためにこれからはもっともっと強くならないといけないと思っている。そして、そのためにもまずは自分の力がどういった状況でも使えるようにならなければ話にならないと思っている。だから今はひたすら訓練をしている最中なのだ。そして今日はついにその時がやってきた。俺は遂にこの世界で俺の持っている固有技能を全て使うことが可能になったのであった。これでもう俺がこの世界で俺の力を隠す必要はなくなったわけである。そして、それと同時にこの世界の脅威になり得るものも俺は倒すことができるのだ。そうして、俺が自分の力の制御に慣れるためとこの世界が脅威に脅かされていることを知らせる為に、その脅威の元を潰すためにある作戦を実行するのであった。

この作戦を実行しようとしている場所はこの国の首都から一番離れた所にある大きな湖のほとりである。ここには滅多に人は寄りつかないような所である。そしてこの湖は何故かわからないけど俺の力をかなり高めてくれる場所なのである。俺はこの場所でこの作戦を遂行するつもりなのだ。

俺はまずは自分を強化するための魔法陣を地面に展開していった。この世界での俺は俺が知る限り最強の能力の持ち主であると言えるほどに強くなった。なのでこの世界に存在しているどんな敵に対しても俺は後れを取る事はないはずである。俺の強化したこの肉体にダメージを与えることのできるものなど存在しないだろう。俺の体はあらゆる攻撃を受け付けないしその攻撃を吸収してエネルギーに変えてしまうことが出来るからである。そして俺の体を構成しているのは全てこの世界に存在するもので構成されている。つまりは俺の体に少しでも触れる事ができればこの世界の法則に従って全てのものが消滅していくことになる。

そう、これは俺の持っている固有技能の一つの『破壊』である。その効果を詳しく説明しよう。その能力は触れたものの分子レベルで全て消滅させることの出来るという恐ろしいものなのである。俺は、この固有技能を使って自分を強化すると同時に、今この世界のどこにいるかも分からないがこの世界を滅ぼす可能性を持ったものを始末してしまおうと考えたのだ。そうして、そのあとはいつものように自分の肉体を更に強化するためにこの世界に存在する魔物を倒そうと思っている。

しかし俺は、今までに感じたことのない程の違和感を感じていた。俺は、今から自分の手でこの世界を救ってやろうとしているのだが、俺はそのことについて特に何も考えていないのだ。ただ俺は、自分より圧倒的に強いであろうその存在に戦いを挑みそして勝ちたいと考えているのである。

俺は何故このような感情を抱いたのか分からなかったのだが、この感情のおかげで、この世界の危機が迫っていることを知ったのである。俺は、自分の本能に導かれるままに動く事にした。するとその瞬間この湖の周辺が突然光だしそして次の瞬間目の前に大きな門が現れたのであった。その扉は禍々しい気配を発しており、明らかに普通ではないということが分かったのだ。

そして門の先を見てみるとそこは真っ暗な空間になっておりそこの見えない底からは凄まじい魔力を感じ取れたのである。そしてそこには一つの影があった。その影は、こちらに気がつくと俺の方に向かってきたのだった。

俺が目を覚ますとその光景を見て驚いていたのだがその影は直ぐに視界から消えていなくなっていたのである。俺は一体あの影は何者だったのかが不思議でしょうがなかった。そういえばあの影の見た目は普通の人間にしか見えなかったが俺は直感的にアレが人とは違う存在であるということを認識したのである。そして、その証拠として俺の中に存在していた力の半分程が失われていたことを俺は感じ取っていた。そうして俺がこの世界に存在していると危険なものだと判断し俺は自分の中にあった固有技能の一つである転移を自分に使用しその場を離れたのである。そして俺はその場所から離れてから暫くの間自分が何をしてしまったのかを理解して後悔するのであった。俺は自分がしてしまった過ちの重大さに気づいた。そう、俺はこの世界を救いたいのではなくて、俺は、俺の大事な人をこの世界を守りたかったのだ。しかし、この世界を滅ぼしかねない存在をこの世界の為に滅ぼそうとするなんて矛盾も良いところだったのだ。そして、俺は俺がこの世界の為ではなくて自分の欲望を満たすために力を行使しようとしていたことに気づいたのであった。

俺は、それからというものずっと自分の行動の反省をする事に時間を使っていたのである。そうして自分の行動について改めて考えた結果俺には二つの目的があることに気がつけたのである。一つ目はこの世界で生きる者達の安全を第一優先にして行動する。二つ目がこの世界の害となるものをこの世界の脅威となりうる前に消すこと。それが今回の俺の目的である。そうして俺は、今現在、この世界で自分の身を危険にさらさない範囲での行動をすることに決めたのである。

俺には、どうしてもこの世界に存在しているはずなのに全くその存在が確認できない生物がいる。俺にはその生物のことがとても気になっていたのだ。そうして俺は、俺と同じ力を持っている存在がこの世界にいないかを確かめる為に自分の固有技能である、全智慧の書庫の中にある固有技能の情報を調べることにしたのである。俺には、この世界の脅威になり得るものを消さなければならないのだから。

そして俺がその固有技能を情報を調べてみると俺は驚いたのだ。この固有技能は、この世界において絶対に使ってはならなかったのだと俺は思うのであった。なぜならこの固有技能を使うということは、この世界に破滅をもたらすようなものだからだ。この固有技能には世界を終わらせる力が備わっている。だからこの固有技能を使えばこの世界に存在する全てのものは滅び去ってしまうことになるのだから。

そして俺はその固有技能の存在を知った時、俺は恐怖を覚えずにはいられなかった。だってそうだろ?俺はこの固有技能を使えるようになってしまう可能性があったのだから。そう考えるだけでもゾッとする。それにしても俺の固有技能である、全智慧の書庫の情報が間違っていたということはないはずだ。俺は、この固有技能を使うことができるようになっているから。

だから俺は固有技能を使えるようになっていない状態で固有技能の存在を知れたことが奇跡だと思うくらいである。そして俺は、固有技能を使わなくてもいいように自分の力でできる事を増やそうと思ったのだ。そして、この世界のどこかで眠っているであろう固有技能の存在の事を頭の中から消し去ることに俺は必死になった。そして忘れた。俺は固有技能を使ったところで、俺の肉体を傷付けることはできないだろうし固有技能は発動しないでおこうと思う。だから固有技能を使う時は、自分の肉体が危ないと判断した場合だけだと思っている。

そしてもう一つ分かったことがあるのだ。この世界に存在する俺以外の転生者は俺だけではなかったのだ。俺と同じように異世界から召喚された人間は他にもいるみたいなのである。しかもその人物はこの世界に危機をもたらしてしまう可能性が高いみたいだから、俺は、その人物を殺すことを決意したのだ。そうしないとこの世界が滅ぶ可能性が非常に高いからだ。

しかし俺はまだこの世界を救うことは出来ていないのである。俺が救わなければならない対象は俺が守りたくもないと思っている人々なのだ。俺は俺の守るべきものはちゃんと守るからこの世界は勝手に守られていて欲しいと思う。だから俺はその世界を滅ぼす可能性がある人間だけを殺そうと思うのだ。それに俺に危害を加えようとしなければ俺はその人物がどうなろうが知ったこっちゃ無いのである。

しかし俺は自分の大切なものを守ろうと思わない奴のことをどうせ直ぐにでも殺してしまうと思うのである。まあそんな訳で俺は、俺に危害を加える奴らをこれからは、全力でぶっ潰すことにするのである。

そして、俺はこの国を出てから少し経った後に、自分の国へ帰ることにした。俺にはこの国にまだやるべき事が沢山残っている。だから、この国の王であるあいつに挨拶をしてこないといけないと思っている。だから俺は久しぶりに城に戻ることになったのである。

「おい、貴様、何の用があってここに入ってきたのだ?」門番の男は、突然現れた俺を見てかなり焦ったような顔をしていた。そうして、その後俺は門を開けてもらうと、そのまま王の部屋に案内されるのであった。

そして王は俺がいきなり現れたからかなり慌てていたようだがなんとか落ち着きを取り戻したようなのである。そうして、やっと本題に入ることができるようになったのであった。

そして、俺の本当の目的はこいつに言うのもあれなのだが、俺にこの世界での力を与えた女神に会いに行くことだったのだ。

そして俺に力を与えるように指示をした張本人である。

「実は俺もお前に伝えなきゃならないことがあったんだ。」俺は真剣な眼差しで俺のことを見つめている王にそう伝えた。そして俺の話を聞いてくれるような体勢をとってくれたようなので、早速話をすることにしたのである。

「ああ。実は、お前の娘の事なんだが、そいつにちょっと色々と伝えなきゃいけないことが起きたんでな。俺は今すぐに行かないと行けないことになっちまったんだよ。そこで、俺はもう二度とここには戻って来られないだろう。だから俺の代わりに娘のこと頼めないかな?って思ったりしてな。別に断ってくれても全然構わないんだけどさ。もし俺に頼みを引き受けてくれるっていうなら、俺がお前の願いをなんでも叶えてやるってことで俺を信用して欲しいって思ってるんだ。それで俺に頼みを引きうけてくれるって事だよな?それじゃあその話はまたいつか話すとしよう。それじゃあ俺急ぐから!」と言って俺がその場を離れようとするとそのタイミングで王が何か言おうとしていたのが見えた。しかしその時には既に遅くて、俺の姿はその部屋の中には無かったのであった。

俺は今女神に会うために神界に向かっていた。この前来た時に俺を転生させてくれた神様に会おうとしているのだ。

そうして俺は女神の部屋に着くといつものように俺はその扉を開ける。そうすると、前回俺が見た光景とは違っていて、この前の俺の記憶に間違いはなかったのだということを実感させられた。しかし俺にはその記憶はないので特に気になることはなかったのだが、その部屋の様子が変わっていたことは俺にとっては嬉しい誤算だったのである。そして俺が、部屋を見渡すとあるものが俺の目に飛び込んできた。そうして俺はそれをよく見てみたのだ。

それはなんと、俺を可愛らしい姿にしたあの悪魔だったのだ。それもその数は十体は超えていて、とてもじゃないが一人じゃ勝てそうに無かったのである。だから俺は、この前戦った悪魔の一体を倒すことができたとしても恐らく残り九体のうちの誰かが倒されてしまうと思った。そうすると残りの敵は全員こちらへ向かってくることになり、こちらに勝ち目はないと考えた俺は、とりあえずこの場から離れることにした。

そして俺は急いで地上へと降りていった。しかし運の悪い事に俺が降りる直前に一体の悪魔が俺の存在に気がついて追いかけてきたのである。俺は必死に逃げたが逃げ切れそうにもなかったので仕方なく俺は自分の身を守る為に戦おうとした。そうして俺は剣を手に取ると向かってきた敵の攻撃を受け流した。それから暫くの間俺はその悪魔と戦い続けていた。そして俺の実力は上がっているからか、相手の攻撃を完璧には避けれるようになっており、俺には余裕が残っていたのである。そうしているうちに他の仲間達が集まってきてくれて一気に相手を片付けることに成功したのであった。

それから俺はあの場所に戻ってみるとそこにあったはずのあの可愛い悪魔は消えておりそこに居たのは俺と同じ存在だとしか思えないほどの美少女だったのである。俺は驚きのあまり声が出なくなってしまった。そう俺はあまりにも衝撃的で目の前の状況が飲み込めなくなっていたのだ。そう、この世界の管理者は、この俺がこの世界に来て初めてあった存在だったのである。そうして俺達はお互いに見つめ合ったまま無言の時間が続いていた。

そうしてしばらく時間が経つと彼女は唐突に口を開き喋り始めたのである。そうして彼女の話を聞いた俺はとても驚かされていた。この世界の現状を知らされていたからである。

「貴方がここに来た理由を私は聞いているから知っていますよ?ですが貴方はどうしてこの世界の問題を解決しようとしてくれているのですか?私には分かりませんね。私の管理が行き届いていなかったせいもあるのですけど、私がこの世界を管理してからまだ一年と経ってはいません。なので正直言って私はこの世界にそこまで愛着は無いのですよ。まぁ貴方のおかげでこの世界はかなり住みやすいところになってはいるんですが、貴方はそんな私に対してどうして協力してくれるという気持ちになっているのでしょうか?それにこの世界にいる生物は貴方の邪魔になることは明白なのにそれでもなぜこの世界を救う手助けをするなんて言い出したのか全く理解ができないのよね。それともう一つだけ聞かせてください。」と言って彼女は俺の目をじっと見つめながら話してきたのである。そして俺は彼女のその質問に対して答える前にどうしても聞きたいことがあったのである。

「君は俺と同じなのか?」

俺はそう聞いた。俺と同じ存在かを聞いたのだ。しかし彼女がそれに答えようとはせずただ黙ったままだった。しかし俺が彼女に向けて発していた視線によって、彼女は俺の質問をはぐらかすのを諦めたようで素直に答えた。「ええ。確かにそうですね。あなたと同じようなものです。それにしてもまさかここまでそっくりだと思っていた相手が同じ存在だっていうことに気付かないとは、予想外でしたよ。それにしてもどうして分かったのでしょう?まあいいとして、ではこれからの話は本音で語らわせてもらいますが、この世界はこの世界のものでこの世界に住む生き物たちは、自分達の手で守るべきものなのではないと、私は思っているので貴方にこの世界を助けて欲しく無いというのが、私の本心になります。そして私は自分の手で、この世界を守っていきたいと考えているのでこの世界はもう貴方に助けてもらうことはないと思うわ。」俺は、その言葉で俺はある決心がついたのである。俺も彼女に同意するという意思を示す為、この場で戦うことを決めたのだ。そして俺は、全力の力を出そうとして戦闘準備を整えていたのである。しかしその時だった。いきなり俺が持っている聖魔石が赤く光り出し俺はそれに吸い込まれるようにして、意識を失ったのである。

俺がその少女と出会ったのはまだ幼い子供の頃のことだったと思う。

確かその日は珍しく親が仕事の都合で家に帰ってこれなくて俺は家の近くの公園に一人でいた。

俺も小さい時はよく友達と遊んでいたものだがいつの日からだろうか俺は一人の時間を満喫できる人間になっていた。

俺は自分の人生が楽しいものになるかどうかは自分が何をするかで決まると思っている。だから俺は自分の好きなように行動したいと思って生きて来たしその結果俺は楽しく生きていられていると思う。だが俺は、今まで俺が思っていたよりもずっと面白い出来事や出会いを沢山経験することができた。だからこそ俺はこれからの人生には期待しているんだ。だから今こうして過ごしている時間は大切にしないとな。まあそんな訳で俺はいつもの様に家でゆっくりしていたわけなんだがあることに気づいたんだ。それがさっきの少女のことなんだけどな。俺が家に帰ろうとしていた時のことなんだ。突然空に大きな光の玉が出現したんのだ。しかも、その光がどんどんこちらに向かってきて俺は反射的にその方向に背を向けてしまっていたんだ。俺は怖くて動けないからその場でじっとしていたんだ。そうすると、突然俺が持っていた剣に赤い光が宿ったんだよ。

それでどうしたらいいのか迷った俺はその光の玉の方向を向いていた。

そうして暫くすると光の玉が段々と小さくなっていきその中からは俺と同い歳くらいに見える女の子が現れたんのだ。そしてその子は言ったのだ。

「貴方には、私の加護を与えました。どうか頑張ってね!」と言ったのである!しかしどういうことだかさっぱりわからないぞこれはいったいなんで俺はここに飛ばされて、あの子に出会ったっていうんだ!?とりあえずここはどこか確認する必要があるよな?よしっ俺は辺りを見渡してみてここがどこであるのかどうかを確認しようとした。そうするとそこにはなんと海があったのである。そうするともしかしたら日本ではない可能性があるかもしれないと思った。

でももしかして違う可能性もあったりするのかなと思いながらも一応念の為俺はその砂浜に何かないか探し回ってみることにする。そうするとすぐに俺はあるものを見つけたのである。

それは俺がよく読んでいるライトノベルの1ページを拾うことが出来たのである。しかしそこに書いてあったのはあまり信じられないことだった。

俺が見つけたその本の内容がなんと、異世界召喚ものだったのである。それも俺がいつも見ているそのライトノベルが、その本の世界であるということが書かれているのだ。そしてその続きにその主人公が元いた世界に戻る方法はただ一つ。魔王を倒すことだったのだ。俺はそんなことはあり得ないだろうと心の何処かでは思っていながらもその本を読み進めていく。

しかしその本が現実であることを信じざるを得なかった。

なぜなら、俺は自分の体に起きた変化に気づいたからである。まず第一に見た目が全くの別人になっていたのだ。それも俺の理想の顔つきになっていてかなりカッコ良くなっている。そしてその体からは何か力のようなものを感じ取ることができたのだ。そのお陰で俺は完全に信じざるを得なくなってしまったのである。

それからその主人公と同じような装備を身に着ける為に色々と動き回るのだが、ここで俺はある重大な事に気がつくことになった。俺は何故か体が勝手に動いていたのだ。そしていつの間にかに手に剣を持っていたのである。そしてそれを使ってみようと思って俺は試してみた。そしたら驚く程上手くできたのだ。俺には武術の経験とかが無い筈なのにだである! そうして俺は色々な事を思い出していった結果、この世界で何ができるかをある程度知ることに成功したのであった。そして今の状況を整理していったのだが俺はとんでもない結論に至ることになった。それはもしかすると俺がこの世界を救える唯一の存在であるという可能性だ。つまり、あのヒロインっぽい子が俺をこの世界に呼び出したのはこの世界が危機に陥っているという事だろう。そしてそれを解決することのできるのは俺だけなのだ。ならばやるしかねえじゃねぇかよ!俺はそう思うと早速その街へと向かって行ったのであった。

俺が目を覚ますと見覚えのない天井が見えていた。一体どうしてこうなったんだろう?確かあの女が言っていたのは俺はこっちに転送されたはずだがどうしてまた元の俺の部屋にいるのだろうか。それに俺は寝ているのか。とりあえず俺が起きてからまだ時間もそれほど経ってないだろうから俺が起きたのは恐らく朝方の時間帯だろうと思う。それに俺には特に変わった点は見られない。まぁ当然といえば当然だけどな。俺はそんなことを思いながらとりあえず自分の部屋から外に出ることにした。とりあえず今は情報が必要だ。しかし、その情報を得る方法を考えた俺は結局あの女に会う必要があると考えたのである。

しかし、あの女の居場所を知らない俺は、あの悪魔達と戦っていて手に入れた悪魔達の死体を調べることにした。そこで俺はあることに気が付いた。そう俺にはあの悪魔の能力を手に入れることが出来るスキルを持っているのだった。そして俺は死体を見ていて悪魔が使っていたスキルが手に入ることがわかってしまったのである。そしてその瞬間俺はこの死体が俺がこの世界に来る前に見たことがある悪魔達のものであると確信した。そうして俺が自分のスキルの凄さに驚いていると後ろの方から俺に話しかけてきた奴がいた。

「おい、そこの変なお前。私と戦え。私が相手してやるよ」と俺に向かってそう言ってきた。そうして、俺は面倒くさいことに絡まれることになったのである。

俺はその言葉にイラっと来ていた。だってそうだろ。急に現れたと思ったら俺と勝負しろだ?舐めすぎじゃないですか?そんなのは俺が許さないからね?まぁでもそんなことで喧嘩するなんてのがそもそも間違いだと気付いた俺は大人な対応で対処することにしたのだった。そんな俺が出した答えとは。

無視である。こんな馬鹿な相手に付き合ってられるほど俺は優しくはないからね?まあそれでもその女は俺に対して突っかかってくるのだ。だから俺には何も聞こえなかったふりをしたのだった。そうしたら彼女は更に調子に乗ったのか今度は実力行使に出るみたいで魔法を使い始めたのである。その詠唱は聞いたことがないもので全く理解ができなかった。俺はその魔法を避けたり剣で防ごうとしていくのだが彼女は次々と攻撃を加えてくるのである。そうして、彼女の魔法を防ぎ切れなくなってきた俺は、このままでは非常に危険だと思い彼女の魔法の発動を止めようと試みたのだ。しかし彼女はその魔法を最後まで唱えきってしまい彼女は大爆発を起こしていたのだった。彼女はかなりの実力者のようだ。俺がこの世界のことをよく知らないとはいえこの国ではそこそこ名の通った剣士の一人だと思うが彼女ほどの実力者になると俺のいた国にはいないと思う。

そして俺が彼女の戦闘スタイルなどを考察していたその時だった。俺の目に飛び込んできた光景は明らかに普通ではなかった。

それは、俺と彼女が立っていたその場所には半径50メートルくらいはありそうな大きなクレーターができていて、周りの建物は瓦礫と化していたのである。

そして俺はこの威力を自分の体に受けていたことを想像しただけで背筋が凍りついてしまっていたのである。そしてそれと同時にこの少女は俺と同じ転生者であるということが確定したのである。まあなんとなーくわかったのである。まあ俺の場合は俺の意思ではないが、この世界は多分そういう仕組みなのであろうな。

そうすると俺の予想は当たっているのか。あの本の内容はやはり現実であったということだ。あの本の作者も俺と同じ世界の人だということが分かったし、俺と同じようにここに転移してきた人間である可能性も大いに考えられる。

だからと言って俺があの子の手助けをする義務はないが俺も元の世界に戻りたいからとりあえず協力をしていこうと思う。

しかし俺はここで疑問に思ってしまったのだ。もしかして、俺はあの子に嫌われていないのではないか。

確かに俺はあの戦いの時彼女と共闘して戦ったのだ。まああれだけの規模の戦いをすれば必然的にあの少女とはかなり近しい距離になっていた訳である。だから俺に話しかけてくる理由がないのなら別に話す必要はないと思ったのである。しかし、俺はそんな風に考えていたがどうやらそうではなかったようである。俺はその事に気づくとその日一日は憂鬱な気分で過ごすことになるのだった。そうしてその日から俺は彼女に毎日会うようになったのである。

そうして俺は彼女と関わるうちに少しずつ自分の心に変化が訪れていることに気づいたのだ。俺は自分の本音を打ち明けることができる相手がいる事に嬉しく思っていたのだった。俺にそんな相手が今までにいたことがなかったから、本当に驚いたのである。そして、俺はそんな自分の本音を包み隠さずに打ち明けることの大事さを教えてくれたその人に対して感謝をしていた。その人がいなかったらとっくに俺の精神はおかしくなっていただろうし最悪自殺とかをしてしまっていたかもしれないのだ。そう考えるとあの女の子は俺にとっては命の恩人とさえ言える存在になったのであった。そしてある日、いつも通りに俺に絡んで来た彼女を俺は少し揶揄ってみる事にしたのであった。そして、その後の一言によって俺はとんでもない状況に陥ることになってしまったのであった。それは、あの子に対して初めて「お前の事が好きだ」と伝えてしまったからである。しかしあの子は、その言葉を冗談だと思ってしまったらしく、それをそのまま流されてしまったのである。しかし、あの時の俺は本気でそう言ったのだ。それを伝えずに後悔して一生を過ごすよりはマシだと思ったのだ。そして、あの子は俺の言葉を聞いたあと、しばらく呆然としていて何も話してくれなくなってしまったのである。しかし、それからしばらくしてやっと俺の話を理解し始め、恥ずかしがりながらもあの人はこう言ってくれたのである。

「わ、私もあんたのことが好き。私はあんたと離れたくないの!もう絶対にあんな寂しい想いはしない。あんたがいてくれるだけで私は嬉しいの!」と泣き出してしまったのである。そうしてその言葉を聞いてしまった俺はその場で思わずあの子を抱きしめてしまい、その行動によって俺はまた彼女に驚かれてしまうことになったのであった。

あの子が俺にそう言い始めてから1ヶ月経ったが、俺はまだこの世界に残り続けることにしたのだ。あの子にも俺の本音がちゃんと伝わるようになって、俺は安心感に包まれていたのであった。これから俺はもっと強くなって必ずあの子と幸せに暮らすと俺は決めている。その為に俺は鍛錬を続けていき、そして遂にその日が来たのだ。

「君達が異世界から召喚された方達ですね。お疲れでしょうからお休みください」と目の前で喋っていた男が俺に向かってそう言ってきたのだ。そして俺は男に言われた通りベッドに寝転んでいったのである。俺はあの女とずっと一緒に居たいという気持ちはあったが俺はあの子には元の世界に戻ってもらいたいと思っているのだ。だからここで俺はあの子のことは忘れようと決めたのである。そう思ってからどれくらいの時間が流れただろうか、俺の意識は徐々に薄れていく中俺は最後にあの人の笑顔を思い浮かべながら俺は気を失ったのであった。そして俺が目覚めると俺の前に一人の女の姿が目に入ってきてこう言ってきたのである。

「貴方、また無茶なことしようとしてたのね。私はそんな事をさせないように努力をしているっていうのに、全くもう!心配かけてごめんなさい。だけど私の為に頑張らないで!私の事は後回しにしていいから、自分の為に生きてよ」と彼女は俺に向かってそう告げてきたのである。その顔を見た俺は自分の選択が間違っていなかった事を知ったのであった。

あの事件があった翌日、俺はあの人に呼び出される事になった。その時に色々と話を聞いていたので俺はすぐにあの人の元へ駆けつけることができた。

俺は昨日の事であの人からのお叱りを受けるものだとばかり思っていたのだがその話は意外にも別のことだったのである。それは俺が元の世界に戻れる方法が見つかれば教えてもらえるようにお願いした事についてだった。

「私は貴女の頼みを聞き入れることにしました。だからといってあの子の願いは無視できませんがね。でもあの子の方は私が責任をもって対処しますのでご安心下さいね。それとですが、あの子の為になる行動をするようにお願いしたいんです。まぁ、あの子の気持ちはわかりますが、やっぱりこの世界で幸せになって欲しいのですよ。だからどうかよろしく頼んみました。」

その言葉を聞いて俺はこの人には勝てないと改めて思ったのである。だって、その瞳の奥底にある覚悟のようなものが、普通のものではないからだ。この人を説得する事は不可能だろう。ならば、その期待に応えるしかないな。と俺はそう思い決意を固めて返事を返すことにしたのである。

俺がそんなことを考えながらあの人と会話していると急にあの子がやって来てこう話しかけて来たのだ。その言葉に俺は耳を疑った。なんとこの子が俺を好きだと言ったのである。信じられなかった。俺がこんなにも嫌われていたと思っていた少女がまさか俺を好いていたなんて想像もしていなかったのだ。俺は混乱していた。そして俺はそんな俺にあの人はさらに衝撃的なことを言ってきたのだ。

そうしてあの人とあの子は部屋から出て行ってしまい俺は一人残されることになった。あの人曰く、「あの子は今日一日で準備をして明日には帰るそうですよ?だから、それまでにどうするか考えておいてくださいね。ちなみにあの子の本心からの告白だったと思いますからしっかりと向き合ってあげてくださればそれで十分です。それに、私からはこれ以上はなにも言うことはないのです。頑張ってあの子を落とせるよう精進するといいのではないでしょうか?」と言って去っていってしまった。

そうして俺とあの子とのすれ違い生活が始まったのだった。

そして次の日の朝になり俺は目を覚ましてからある決心をしていた。それはこの世界のことについて勉強をすることだ。俺は強くなるためにまずはこの世界を知る必要があると考えたのである。そして俺の今の考えを纏めてから部屋の外にいるあの子に話しかけた。すると彼女は驚きの反応を示していて、少しの間なにかを悩んでいる様子だったが、最終的には承諾してくれた。そうしてその日は彼女の買い物を手伝うことになったのだった。俺は正直なところ女の子が喜ぶような場所などには詳しくないのだ。俺はそんな場所に足を踏み入れたことがないしそもそも興味も無かったからである。しかし彼女が選んだ場所は意外にもアクセサリー類が多く置いてあった場所である。そこで俺たちはその日はお互いに気に入ったものを買って別れたのであった。そして、俺が屋敷に戻ると俺の部屋にあの子が訪ねてきて来たのである。そしてその日は結局夜遅くまで二人で語り合っていたのであった。そして次の日にあの子から話があるからと呼び出されたので俺はその場所に向かう事にした。

俺はあの少女に連れられてどこかに行こうとしていた。

しかし、俺としては行きたくないという気持ちもあったのである。なんせこの世界に来て初めて出会った相手が彼女なのだ。そんな相手の前に行くのに俺の心の中には不安しかなかったのだ。なので俺の心の中では早く帰りたいという思いが強く渦巻いていたのだった。しかし、あの子はどうしても俺と二人で話したいという事だったので俺は諦めて行くことに決めたのである。そうして、あの子は少し離れた場所に移動してから俺に向かって話しかけてきたのである。その内容は俺にとってはかなり予想だにしていない内容だったのだ。その内容とは「私はあんたの事が好きだ!私と付き合いなさい!」と言うものだった。その言葉で俺はあの時の出来事を思い出してしまったのである。そしてあの時、俺に「私もあんたのことが好き」と言っていたのが真実だということがわかって俺の胸は激しく高鳴っていたのであった。そして俺はそんな彼女にどう返事を返せば良いのかと必死に考えた末に一つの結論を出したのだ。俺はこの世界でやりたい事があるし、そのために元の世界に戻る必要もあるのだ。しかしそれでも、今は彼女といたいと思えてしまう。だが俺は自分の欲望よりもあの子のことを最優先にするべきなのだ。

俺は自分の欲望と理性の狭間で苦悩しながらも俺はあの子に返答することにした。

俺はそうしてあの子に俺の答えを伝えることにした。俺は彼女とはもう一緒にはいられないということをしっかり伝えなくてはならないと思ったのである。

俺は自分の意思を伝え終わった後にあの少女がこちらを見ていることに気がついたのである。俺はあの子の方に顔を向けるとその表情はとても悲しみに満ちた顔をしていてとても辛そうな顔をしていたのだ。そして、俺の視線に気づいた彼女はそのまま俺に抱きついてきたのである。そして俺はあの子に押し倒されるような形で床に倒れ込んだのであった。その状況になった時に俺はあの少女の顔を見ると、そこには涙を流しているあの子の姿があり、俺は思わずその姿を見てしまったのだ。そうしてしばらくの間俺と彼女は何も言わずにただ泣き続けていた。そして俺の方の涙も止まって俺は立ち上がる。その瞬間に彼女はまた俺に向かって言葉を伝えてきたのだ。俺はその言葉を聞いて少しだけ嬉しく思うと共に俺は彼女を抱きしめてしまったのである。俺はこの子の事を守るんだ、俺は絶対に元の世界に帰る。俺はその時そう心に誓ったのであった。

そして、その後、俺は元の世界へ帰らないといけない事情を説明した上であの子と一緒に過ごすことはできないこと、そして、俺もあの子のことが好きだということを伝えたのである。俺はもう二度とこの子から離れることができないと思ってしまっていて、この子のいない日々を考えることなんてできなくなっていた。だから、あの子を悲しませて離れてしまうことは嫌だと考えたのである。しかし、俺の話を聞いたあの子は泣いているような、笑っている様な顔で俺に笑いかけてきてくれて俺の手を握ってくれたのである。俺はその笑顔を見たとき自分の選択に自信を持つことができたのであった。俺はその日の夜あの子と一晩中お互いの事を話し合って過ごしていたのである。俺はその時間のおかげでこれからやるべきことがたくさんあるということに気がつくことができたのであった。そして俺とあの子はまた明日会えることを約束してから俺は部屋に戻り眠るのであった。

俺と彼女はその日からしばらくずっと一緒にいたのである。そして、あの子と過ごした時間を噛み締めていたのだ。あの子の側にいることの喜びを感じていたのだ。俺はあの子の為に強くなって必ず戻ってくると決意を固めた。そうしているうちにあの子と過ごして1ヶ月経ったのである。あの子と俺はこの日一緒にお出かけをしていたのである。俺はこの時、この日の為に強くなろうと決めていたのだ。俺はそのことを伝えるとあの子は笑顔を見せてくれた。その顔は今まで見たどの笑顔よりも美しくて可愛かった。そして俺はその笑顔を見て、この笑顔を守るために強くなることを決意したのである。そしてあの子のために戦う決意を固めてから3日経ったある日の晩に俺達はお城に行って王様から話を聞いていたのである。その話の内容というのは魔王軍の事についての情報である。その情報を聞けたことでこの国の人達の不安を取り除くことができた。俺はこの国での生活に未練はないと思っていたのだがこの国は俺が居ても問題無いという事を知ったのだ。

それから数日が経ってからついにあの子が自分の世界に戻れる日がやってきた。俺はその日の為に毎日を頑張ってきた。そうするとあの子から今日会いたいという連絡が入ったのだ。そしてその待ち合わせ場所に着いた時俺の目の前に懐かしくて、それでいて見惚れるような容姿をした少女が立っていた。その少女はこちらに向かって手を振りながら俺に向かって話しかけてきたのである。

「貴方が私の彼氏ね?私が美月です!これからよろしくね?」

「あぁ、よろしく」

俺はそうしてあの子が俺に近寄ってきた。そしてあの子は俺にキスしてきたのであった。そして、それを周りにいた人達に見られたのだ。そしてその光景を目撃した人によって噂は広まり俺は王都にいる人全てに知られることになるのだった。しかし、俺はこの世界で生き抜くために強くならなくてはならなかったのでこの事は都合が良いと思うことにするのであった。そして俺は、この子が俺の元に戻って来れた事に感謝するのだった。

俺はこの日、異世界で好きな人ができて、付き合うことになったのだ。俺は今あの子が俺の腕の中に収まって寝息を立てていた。俺とあの子が出会った日以来俺とあの子は常に一緒の時間を過ごしており俺達の距離もかなり近くなったように思える。俺はこのままあの子を幸せにしてあげたいと思い、この子が寂しい思いをしないように俺ができる限りのことを行う覚悟を決めたのである。そんなことを思いながら俺は彼女の髪を撫でていた。俺はその心地よさを感じながらも眠りにつくのであった。そうすると俺は不思議な感覚に陥っていった。そして俺の前に一人の女の子が座っていたのである。その少女の顔には見覚えがあった。

俺の妹だ。俺が高校生になってすぐに病気で倒れてしまい、亡くなってしまった妹だ。その死んだはずの俺の愛する彼女が俺の手を掴んで引っ張ってきたのだ。俺はその事に驚きつつも、彼女が何を伝えようとしているのか理解した俺はその言葉を口に出した。

そうすると彼女は俺に向かって微笑みかけてきた。そして俺の手を握る力を強めてきたのである。俺はそれに応えるために力強く握り返すと、俺が何かに引きずり込まれるようなそんな感じに襲われて意識が途切れる直前に俺は、彼女の声を聞いたのだった。

「待ってるから」

俺はそんな彼女から発せられた言葉を聞いて目が覚めたのであった。俺は先程まで夢を見ていたのだろうがあまりそのことについては覚えていなかったのである。ただ、あの子が待っていると言っていた気がするので俺は、俺にできることをやっていこうと思ったのであった。俺はこの世界で大切な存在を見つけることが出来た。だからその人のために強くならないと行けないし、あの子に俺の想いを届ける為にも努力していきたい。

そう考えていると、俺は隣に誰かが寝ていることに今更気づいたのである。その相手を見るとそれはなんとあの子だったのである。

そういえば俺はあの子と昨日、一緒に夜を共に過ごしたんだったな。

そうして俺は彼女が起きない間にそっと抜け出した。俺は彼女が起きる前に支度をして屋敷から出て行くことにしたのである。俺が屋敷から出た後に屋敷の玄関先で音がしたのでおそらく彼女が起きたのだろう。そうして俺はある所に行くことにしたのである。俺がその場所に向かうのはとある人と会うためだ。俺の数少ない知り合いであり師匠である"神埼正信さん"とだ。

俺はまずはこの国の王様に許可を取りに行くことにしたのである。俺は王に謁見を申し込んで、王のいる部屋にたどり着いた。俺は扉の前で軽くノックをしてから中に入っていった。

王は俺の事を歓迎してくれて、今回の事を許してくれたのである。そして俺はあることを告げることにしたのだ。そうすると、俺の言葉に興味を持ってくれていたらしく、俺が王と話し始めたら真剣に話を聞いてくれて色々とアドバイスしてくれたのである。俺はそうしてしばらく会話を続けた後に俺は自分の考えを述べたのだ。俺は王にあることを頼むことにしていた。それは、この世界に来る時に使った道具と同じ物を探し出して貰うことと、そのアイテムの使用方法を解明して欲しいという依頼である。

その2つのことを俺は王に依頼したのだ。そうすると王は少し困った顔をしていたが了承してもらえたのだった。しかし、その道はかなり困難で難しいことなのだと言うことを伝えてくれた。俺はそれを聞き、さらにこの世界の技術で作れるかどうかを質問したがやはりそのどちらも作ることは不可能だということが伝えられてしまったのである。そして、俺はその二つの依頼を受けてもらった後その道具を探すために旅に出ることにしたのであった。そうしているうちに時間はどんどんと経ち遂に約束していたあの子との再会の日がやって来たのである。

私はあの人に会えるということで胸を高鳴らせながら彼のことを待っていたのである。

私にとって彼とはもう何年も会っていなかった。彼が異世界に召喚される前は私が中学生だったので3年は会っていないのだ。それに彼はもうすぐ元の世界に帰れなくなってしまうのだ。なので、私があの人の元に帰れるのはこれが最後かもしれない。だからこそ私は早く彼に会って、また、一緒に過ごせる時間を増やしたいと思っている。そのために今日は気合を入れて準備をしてきていつもよりも少しだけ綺麗めに見える服を着ている。そして化粧もしっかりしていてとても可愛い仕上がりになっていると思う。

それからしばらくして、あの人からの使いが来た。その知らせを聞いて、わたしはすぐにあの人の元に向かった。

私の目には大好きなあの人が写っている。その瞬間に、私とあの人は抱き合って再開できた喜びと嬉しさを感じていたのである。そうして、私はその日に告白されて晴れて恋人同士になれたので私はこの日から幸せな日々を過ごすことが出来るようになっていた。

私のお腹の中には新たな命が存在している。その事を知って、私は嬉しくて、あの人を愛おしく感じるのだった。だからあの人との子供を絶対に守っていくと決めたのだ。その気持ちを忘れないために私はお母様やお父様に頼んでお腹の子に名前をもらうことの許可をもらって、その日のうちにお願いに行った。するとお二人はすぐに了承してくれて名前を決めてくれたのだ。その名は【結月(ゆい)】と決まって、その名前の意味が絆と縁を繋ぐという言葉があるのだと言われ、あの人と一緒にいた時の事を思い出して感動して泣いてしまった。お父様とお母様は私の背中をさすってくれて泣き止むのを待ってくれたのだ。そしてお二人がお城に戻るという時お二人にまた来るように言われたので、今度は何の用かと思い聞いてみると、お祝いしたいからまた一緒にパーティーをしましょうとのことだった。私はその話を聞くなり、お二人の好意に甘えてもう一度参加する事にしたのである。

その日、あの人も招待されていて、その日から数日に渡ってお城の庭でパーティーが行われたのである。その日は皆お酒を飲んで楽しんだのだ。しかし、あの人と二人で一緒に過ごしたかったので、お酒は飲まなかったのである。そしてそのお返しにお城のお部屋をいくつか借りることが出来ていたのだ。そこで、私はあの人と一晩過ごしてからその翌日にはあの人を連れてあの子に会いに行こうと考えていたのだった。

次の日になったので、あの子がいる場所に向かって出発した。それから数日が経過してやっとその場所にたどり着くことができたのだ。そこは大きな街の中で一番目立つ教会の中に彼女は居たのだ。

その子はこちらに向かって走ってきて、そのまま飛びついてきたのだ。その光景を周りの人達に目撃されてしまったのだが私はそんな事はどうでも良かった。その日以来、私たちはずっと一緒に過ごしていたのである。そしてその生活は今までに無いぐらい幸せに満ちたものであったのだ。その幸せはこれからもっと続くのだと信じて今日もまた彼女との一日が始まった。

「これからもよろしくね?」

「もちろん!」

そう言うと私は彼女に唇を奪われたのであった。そう言って今日も楽しい日が始まっていくのであった。そう思うだけで自然と笑みがこぼれてしまうほどに幸せな日になるはずだった。

私はこの日がくるのをどれだけ待っただろうか?この日のために努力を惜しまずに生きてこれたことに感謝しながら、今日この日を迎えられて本当に幸せだと実感することができた。そうしているうちに、私の彼氏は、私に向かって何かを話しているようだったがそんなことは関係なく、私の目には彼しか映らなかった。そして私は我慢できずに彼に話しかけたのである。すると彼が、この日が終わるまで抱きしめていて欲しいと言われたので、断る理由なんてないので即答して抱きしめ返した。そうして、私の意識はその日を境に消え去ってしまうことになる。

私が意識を取り戻しても目の前には愛する人がいて安心した。しかし、何故か視界が悪くなっていっていてぼやけ始めていたのだ。すると彼が突然涙を流し始め、私が彼の目を見ると彼の瞳が赤くなりつつあったのだった。私は慌てて彼の涙を拭いつつ、彼を落ち着かせようとしたのである。それでも止まらずとうとう彼はその場に倒れてしまったのである。そしてその後すぐにあの子は何処かに行ってしまった。私はそんな彼女を追いかけようとしたが、体の自由がきかず立ち上がることも出来なかったのである。それからしばらくしてあの子が戻ってきたがその姿を見た時は絶望してしまったのである。その彼女は、まるで別人のように変わってしまっていたのだ。そして、その変化と同時に彼女の周りからは黒い影が彼女を包み込むように広がっていったのだ。そしてその黒い影が徐々に形を変えていき巨大な怪物へと姿を変えていった。その怪物に驚いた私は逃げるように立ち上がろうとしたのである。しかし体は動くことなくその場に留まることになってしまい焦っていたのである。そしてその隙を狙われて、彼女が襲ってこようとしてきたのだった。その時に彼は私を助けてくれた。私を守ってくれる為に自分の身を挺してくれていたのだ。そして私は、あの子が放った魔法をもろに食らってしまったのである。私はその衝撃で気を失ってしまい目を覚ました時にはもう既に全てが終わってしまっており、あの子の姿も無くなってしまっていたのであった。

あの子に殺されかけたが何とか生き延びた俺は、今こうして、とある場所でとある人物と話をする為にやってきたのである。

俺は今王と対面している状態である。俺がここにやって来た理由は王にある頼み事をするためだ。俺はその前に、あの子と別れを告げた後の事を少し説明しておくことにした。まずは、この国を出て、別の大陸に行くための準備を進めることにした。そのためにも、まずはギルドに行くと、この国に滞在できる日数があと1日になっていたため、俺はとりあえず宿を手配してから準備を整えるために色々と回ったのである。まず最初に道具屋に行き、旅に必要なものを購入したのだ。そして次に向かった場所は道具屋の隣の建物であり武器屋の店主と仲良くなったのである。俺が何故ここに来たかというと、剣が折れてしまい新しく購入することにしたのだ。俺は剣がたくさん置いてある中で良いものを選ぼうと思っていたが、俺はとある理由で一際存在感を出しているものに目が釘付けになってしまったのだ。その商品とは、剣と鞘と盾と槍が全て揃ったものでセットで装備することが出来るものだと言うのでそれを買うことに決めたのである。俺はそれを手に取り値段を確認してみると金貨30枚だったのである。しかし、俺はそれを買い占めたのだ。なぜならこの剣の特殊能力として、使用者がこの剣で斬った対象を魔力を注ぐことによって修復することが可能なのである。なので、お金さえあればいくらでも修理ができるというわけなのだ。なので俺はこの能力を最大限に利用して、剣を量産しようと思ったのだ。それから俺はこの店で剣を大量に買い占めると他の店を回り始めたのである。俺は全ての店を巡って大量のアイテムと武器や防具などを買ったのだ。それから俺達はこの街で出来る限りのことをして時間をつぶしていたのである。俺は王に会うためにその日の夜のうちに城を訪れていた。そしてその日の夜王の部屋を訪ねたのだ。俺は王と面会すると今回の件についての事について話し合うことにしたのである。王と相談の結果、あの女の子を王の力で元の状態に戻してもらうことで合意をする事が出来たのでその方法を実行するために色々と話し合いをする事になったのである。そうして、翌日になると早速作戦を実行に移すことに決まったので、王に頼んであの子を呼び出してもらい、王の部屋に案内してもらうことになった。そうしていくうちにその子はやって来て王様は少しの間その子と会話をしていたが、その子の反応を見てから俺達に話かけてきたのであった。王は俺に話しかける。

『お主にはあの娘がどう見えている?』

と質問された。その言葉の意味はなんとなくだが理解出来ていた。あの子の見た目は明らかに人間ではないとわかる容姿をしていたからである。なのでその答えに迷うこと無く答えると王はそれを肯定してくれたのである。なのであの子が普通の人間に戻るために必要な儀式を始めると、王はあの子に向かってそう言い出したのだ。その方法は簡単である。この部屋の中で一番価値のある宝玉を取り出しその力を使うだけだと簡単に教えてもらったのだ。俺はそれを聞くなりすぐに動き出そうとしたが止められたのである。それは、宝玉を手にするまでの時間が必要だったためである。そして宝玉を手にした王はあの子に近づき、宝玉を使ってあの子に触れた瞬間にあの子に変化が訪れたのである。

そうして、無事に元に戻った彼女は王に感謝をするとこちらに向かって駆け出してきてそのまま抱きついて来たのだった。

そしてあの子が落ち着いてきたタイミングで王があの子に事情を説明し始めると、あの子はとても悲しげな表情をしていったのである。そして全て聞き終えた後に彼女は王に対して深々く頭を下げたのだ。

そして俺達の方を向いた彼女は口を開いた。その内容はこうだ。私は魔王と魔族に魂を売ったのだと。この世界で生きる為ならなんでもすると約束したと。あの時の私はどんな姿形になろうとこの世界の人間の敵になることだけはわかっているので絶対にあの人に会わせることが出来ないのだと言って謝ってきた。しかし、そんな彼女に王は言ったのである。

『そんなこと気にしなくていいんだよ。君の好きなようにしていなさい。ただし、一つだけ条件を出すよ』

「その条件でしたら何なりとお申しつけください」

『その力を悪用せず、困ってる人たちを助けるように行動して欲しいんだ。君は優しい子だからきっと助けるだろうけどその力を乱用しないようにね?それとこれからの人生を私達と共に生きて欲しい。それだけだよ』「はい!分かりました。私はその提案を受け入れます!」

『君が私の大切な娘だということは変わらない。もし何かあった時は、すぐに駆けつけて必ず救ってあげる。これからの人生が楽しくなる事を祈っておくね。では、今日はここでゆっくりしていきたまえ。私はそろそろ仕事に戻るとするか。それじゃあ後は任せたよ。二人ともゆっくりと休んでくれ。では、また後ほど』

そう言うと王はその場から離れていったのである。俺はその様子を見てから彼女の側に寄り添った。そして二人で夜が明けるまで、お互いに愛を語り合ったのであった。そうして次の日になり街に出る事にしたのだ。まずは彼女が住む家を確保する必要がありその足で不動産に訪れることにすると、その街に一軒しかないのにも関わらずかなりの広さの家で破格の値段だったので買うことに決めた。それからすぐに彼女は引っ越しの準備をして俺もそれに付き合いその日には全てを終わらせる事が出来たのである。

その日から数日後には街を歩いてみると俺達は噂されているようで皆からチラチラと見てくるようになったのだ。

そしてこの日、俺はこの国の姫を連れて城に向かうことにしたのである。そして王と面会することになりこの国に来てからの数日間の出来事を報告する。まずはこの国に着いてすぐにギルドに行ってこの国を出るために船を貸してくれる人を探しに行ったこと。それから色々なことが起こったが最終的に船の貸し出し許可が降りたことを伝えたのである。そして最後に俺は、あの子が俺のパーティーに入る事になった経緯を話すと二人は納得したような顔をしてお互いの顔を見合っていた。すると王が突然とんでもない事を言い出す。

「実はその少女が私の姪であるということが発覚したのだ。なので、今度我が家に遊びに来ないかね?」

と聞かれた。正直、そんな事は想定していなかったので俺の口からはそんなの無理だという言葉がすぐに出てしまっていたのである。すると王は笑い出してこう言ってくれたのである。ならば、一緒にこの国に旅行に来た時に招待しても良いと言ったのだ。それからしばらく雑談をした後に俺とあの子は別れを告げ、王には別れを告げた後、王はすぐに帰っていき、俺は彼女の隣にいた。そうしている間に彼女が王に向かって言っていた事を思い出す。彼女は、この世界に来る前のことはほとんど覚えていないのだと言うのだ。ただ唯一自分がこの世界で生きていたことしか覚えていなかった。それから彼女達は俺に別れを告げる。そして彼女は俺の方に振り向いて笑顔で見つめて来た。そして手を振ってくれたので俺は軽く手を振り返したのである。そうしてから俺達は、別々の道を歩み始めたのだった。

そうして、彼女と別れた後俺は一人になりたいと思って街の外に出た。するとそこに魔物が一体現れたのだ。しかし俺はそれを倒そうとしたその時、俺はふと自分の中に力が宿った感覚があったのである。

称号:神の使い レベル 1 スキル 神格解放 Lv1 この二つが俺のステータス画面に表示されているのだが、その効果はどちらもよく分からなかったので試す為に目の前の魔物に向かって拳をぶつけようとしたのだ。すると、その瞬間俺は一瞬にして相手の元に移動したのだ。それからすぐにその相手を俺は殴った。それからしばらくしてその相手を倒し終わったので倒した相手が落としたものを見るとそれは見たこともないものだった。その武器の詳細を確認するとこれはどうやら指輪のようなものだと分かった。俺はその装備の効果を鑑定眼を使い確認するとそこにはこんな説明が表示されていたのである。

==

装備名 :真実のリング(呪い)

== <説明> 所有者の命が残り一年を切ると同時にその効果を発揮する指輪。装備者の嘘がわかる。一度使うと元の持ち主以外は使えなくなる。

と、説明が書かれていた。俺はその指輪がどういう性能を持っているのかを調べようと念じるとその詳細が表示されるので詳しく調べる事にしたのだ。

この指輪は、俺の命が一年後に切れるまで装備する事が出来るようだ。つまり、それまでの間は俺はずっと装備し続けることになるというわけである。俺はそれを見て思ったのは俺は死ぬのはまだまだ先だし、これの本当の意味を知る機会が無くなったということだ。まあとりあえずその指輪を指にはめてみることにしたのである。すると俺はその装備を身につけている状態になった。それから、特に何も変化がないので俺はいつものように行動しようとして、それからの行動がいつもとは変わったのだ。その変化した内容についての説明をするとしよう。

俺はまず宿屋に向かって宿泊手続きをする。そうして、部屋のベッドの上に座りこれから何をしようかと考えると頭の中である声が流れ始めたのだ。

「おい。聞こえてるんだったらとっとと出てこい」

と俺に向かって話しかけてきたのだ。

「なんだ?」

「なんだじゃねぇよ。こっちに転移させる時くらいはちゃんとしろ。毎回いきなり過ぎんだよ。お前は!」

その声の主の正体は俺の脳内に存在している人格だ。

この世界に転生した時になぜか勝手に脳内に住み着き始めていたのである。

なのでこの世界で生活を始めた当初はあまり良い印象は持っていなかった。しかし今では慣れてきて、もう気にならなくなっているどころか少しだけだが愛着のようなものを感じているかもしれない。そんな事を思っていたら、その自称神様はさらに言葉を続けた。

「そういえばさっきから何か考えてたみたいだけど何か面白いものでも見えたかい?この世界の人間は全員バカばかりなのだろう?」

「確かにな。この世界を見ている限りではその通りだと思えるな。でもこの世界にも俺より強い人間がいたぞ。それが気になってしょうがない」

と答えると自称神はため息をつくと俺に向かって話を続ける。

「やっぱり、そうくると思ったよ。だがな、この世界にはこの世界の神が存在している。そいつが作り出したのだろうな。だからこの世界の住人は基本的にこの世界で最も弱い存在ということになる。ちなみにお前はどの位の強さだと思うんだ?俺はそうだなお前と同じくらいだろうと考えているんだ」と言われてしまった。それを聞き俺の中で何か引っかかるものを感じたのだ。

俺がこの世界で今まで出会って来た人達は皆強そうな雰囲気を漂わせていたし、実際に強かった。そして俺自身も、自分では気がついていなかったが相当な力を手に入れているようである。それに俺はこの世界の人たちを、そこまで悪いものだと思っているわけではない。何故ならこの世界の人々の顔はどれも輝いているように見えたからである。そんなことを考えながら俺は答えを口にした。

すると自称神様の口からはとんでもない返答が帰ってきたのだ。

「ほう。なかなかいい回答じゃないか。この世界で最強なのは俺じゃない。俺はあくまでこの世界に存在するすべての人間の総合力で考えればという話だ。だから俺も含まれてないとしたらこの世界で二番目に強い人間は誰になるんだろうな?教えてくれよ」

と聞いてきたのだ。俺はそれに対しては分からないと答えたのだ。そもそもこの世界で最強の人間が何者なのかなんて知らないのである。だから俺はこう言ったのだ。「その人のことが知りたい。だから、これからこの世界を見ていく上で探してみることにするわ。ところで質問したいんだけどこの世界の最高権力者はどこにいるんだ?」

と俺はそのことについて聞いた。すると「それについては今教えることはできないんだよ。今は教えられないが、この世界の中心に行くといい」と言ってきのだ。だから俺は「なんで言えないんだ?俺は別にこの世界に敵対するようなことをするつもりはないんだ。むしろこの世界をより良いものにしていこうとさえ思っている。ただ純粋に俺はその人の事が聞きたいんだよ。お願いできないかな?それに俺はこの世界を良くするために協力すると誓えるから頼む!」と頼んでみたのだ。

すると俺が真剣に頼み込んでいる事が伝わったのか、「わかったよ。この世界の最高責任者の名前はこの世界の勇者だよ。それでこの国の名前もこの勇者から取られた名前になっている。まあ俺が言えるのはこれで終わりだよ。じゃあな。また会おうぜ!」

と言い残しそれ以降喋らなくなったのである。俺はそれからしばらくの間、この国の最高権力者について考えていたのだ。そして俺は考えた末に一つの仮説にたどり着いた。俺はもしかすると異世界から来た俺以外の地球人ではないかと。そこでこの国にある神殿を回ってみればわかるのではないかと思い俺は街に出掛けることにしたのである。しかし俺はその途中であったあの男に再び会い話をすることになったのだ。そうして、それから数時間が経ちようやく神殿を見つけ出したのである。俺はその神殿にたどり着くと俺は中に入り奥へと進んでいく。そうしてしばらく歩いて行くとそこに扉があるのを見つける。そこを開くとそこには巨大な女神像が建っていたのだ。

それから俺がその像を見上げていると背後に気配を感じるので後ろを振り向くとそこにはあの時のフードを被った人物がいることに気づいたのである。そしてそいつはこう言い放ったのだ。

『あなたがここに来た理由は分かっています。私の元に来る為にここへ訪れたのですよね?』

と聞かれた。

俺はそれを聞いてからすぐにこの人がこの国の最高統治者である事を理解したのである。

そして俺は返事をした。

「はい、あなたの元を訪れる為にここまでやって来ました」

と言うと、それから俺はこの人に自己紹介を始めることにした。

俺の名前は鈴木悟です。この世界に来た時は俺は、自分の事すらよく覚えていない状態であり、この国の事について調べるためにこの街にやって来たんです。それからこの国について調べてみたところどうやらこの国は俺が元いた世界と関わりがあったみたいなんですよね。俺はそのことを確認しようと色々なところに行って調べてみようと考えたんです。

それから色々な場所を巡り歩きやっと辿り着いたのがこの場所というわけですね。そして俺はあることを調べるためにこの場所に訪れました。

すると、俺の言葉に対して相手は自分のことを語り始める。

俺はその姿を見ていて、この人物が俺と全く同じような境遇にあった人だということが分かると自然とその人に向かって言葉を発してしまっていたのだ。その人物は自分が地球で死んだことを思い出し俺と同じようにこの世界に生まれ変わったらしい。それからその人は自分がなぜこの世界に居るのかということを知っているようだがその理由を俺はどうしても知りたくなって、そしてその方法を知るためにここにやってきたのだ。すると相手からこう言われたのだ。

私は自分がどうしてこのような立場にいるのかは分かりませんが自分がなぜ、そのような扱いをされているのかということはわかっています。私の正体を明かす事はできるがそれを聞いた貴方はおそらく絶望することになるでしょう。それでも良いですか?」と聞かれたのだが俺は構わないと即答する。すると相手の正体を明かされる。その人物の見た目からして年齢的には30代前半くらいに見えるがその容姿はかなり若かった。そうまるで美鈴と同じような顔立ちをしているのだ。そう思って俺が黙り込んでしまった為、相手に話しかけられたのだ。

「もしかすると私が想像していたのはお友達の娘さんかもしれませんね。でもそれは違います。彼女達は私の大切な存在だった。だけどこの世界に召喚された時には既に亡くなっていました。つまり、貴方と一緒で死んでいる状態でこの世界に呼ばれたという訳ではありません。なので彼女はもう死んではいないはずです。この世界に来てからの時間は短いが彼女とは仲良くさせてもらっているのですよ。それに貴方も、そうでしょ?」と聞いてきたのだ。

確かに俺の場合は死んではおらずこの世界では普通に生まれた状態であると言えるのかもしれないが。でもこの世界に来る前にも記憶を失ってはいるが、しっかりと意識だけはあった。そう考えてから俺は口を開き言葉を返した。

「はいその通りなんです。確かに俺の場合はまだこの世界での人生を楽しんでは居ないけど死ぬ気は無いですよ。ただ俺は俺が元の世界に帰れるというのであれば戻りたいと思ってるだけです」と言ったのだ。そうして相手の質問に答えると相手はこの国について詳しく教えてくれた。

それから俺はこの世界についての話を聞いた後その人と別れたのだ。別れ際に、これからこの国がどのように発展していくのかを予想してみて欲しいと言われてしまったのだ。そんな事を言われても、今の段階では何も思いつかないしわからないと俺は答えて、その話を終えた。その後は特にする事が無いため、宿に戻る事にする。

それから俺はベッドに腰を下ろしてからこの国の最高統治者である人物の顔を思い出す。すると頭の中に声が流れてくる。

「この国にはまだ謎が多く存在する。しかしそれを全て解き明かそうとするよりもまず先にやるべき事があるのではないか?お前にはこの世界を救う役目が課せられている。その為には力をつけなければならないだろう。そこでまずはその指輪の性能を使いこなす練習から始めていくようにしろよ。お前にはそれだけの能力が備わっているんだ」と聞こえた。

俺はこの言葉に対して心の中で「了解しました」と答えていた。

そして、その言葉が終わると俺の中で聞こえていた声が消えていたのである。そうしてから、とりあえず寝ることにして眠りについたのであった。

翌日になり朝になったので起きた後に、いつも通りに朝の運動を行い朝食を食べてからギルドに向かう。それからギルドの受付に向かい依頼を受けることにした。しかし今日は特に受けられるものがなかったようなので依頼を探しに行く。そして俺は適当に魔物退治の依頼を受けることにした。

そうして、この前と同じ場所でゴブリンを狩り続ける。そしてその作業を一時間程続けた所で一旦止めて休憩をとる。俺は昨日会ったあの女性との約束を果たす為に、この国について知る必要があると考え街の散策を始めることにしたのだ。この国について何も知らない俺は本屋を見つけ出してそこで、この国の地図を買って街について調べてみることにする。すると俺の欲しい情報を手に入れることが出来たのだ。

この街は名前こそ無いが、この街がある大陸の名前自体はこの世界の名前として使われているものと同じ名前のものだったのである。そして、この国は三つの大国とその他の小国からなっている国であるという事が分かったのだ。それぞれの大國はそれぞれが他の国とは違う特殊な文化や制度を持っていて他国とはほとんど関わること無く独自の進化をしてきたのだということが分かった。ちなみに俺の泊まっている宿屋が在るのがこの三國のうちの一つである国の首都であり王都と呼ばれている。俺が滞在している街が首都ではないのは俺の身分証に書かれてあった住所を見てみればわかるだろう。それから残りの二つの国だが一つは海に囲まれた島にある小さな国である為ここから向かうのは不可能だということもわかる。もう一つの大きな国が俺の目的でもある神殿が存在している国であり通称神の加護を受けし国と言われている場所なのである。この国についても説明しなければならないと思う。この国にも神が存在する。名前はゼウスという名前だそうだ。この神殿を管理していた神様の一人でその神様は人間の事を愛していたので自分の管理していた場所に人間が訪れることを楽しみにしているという話もあるらしい。

まあこの国は俺の目的の場所から最も遠い場所にある。だから行くことは出来ない。俺はそれを確認するために図書館へと向かったのだ。そして俺は調べ物を終わらせた。するとちょうどお昼ご飯の時間が過ぎた頃だったので宿に戻り食事を取ることにした。

食事を食べたあとは少しの間、体を休める為に部屋で休むことにする。その後俺は体を動かし始めた。俺は基本的に武器を使った戦い方をすることが得意なのだが、魔法が使えたらどれほどいいだろうかと思ったので俺は杖を手に取る。そうすると俺が持っている杖が勝手に動き出したのだ。

俺はそれに驚きつつもどうにか対処しようとするが俺はどうすればこの事態を収拾することができるのかが分からないのだ。俺は、どうすればこの問題を解決できるのかを考えた。そうするとこの前の女性が言っていた言葉を思い出すことができたのだ。俺はこの世界に生きる者達は生まれながらに、ある程度、その者がもつ魔力の大きさは決まっているのだと教えられたのだ。しかし例外はあるらしく、俺がその者だという可能性がゼロとは言えない。そしてもしそうであるなら、この問題を解決することが出来るはずだとあの人はそう言っていたのだ。

しかし本当に俺がこの世界に生を受けた時と同じような状態であるという可能性は少ない。そもそもその条件は、この世界の人間は生まれた時からその体内には魔力が存在していないということなのである。しかし俺の場合はこの世界に転生してきてからしばらくの間の間はこの世界の空気中に漂う魔力を吸収して体内で自分の物と混ぜ合わせたことで俺の中には膨大な量の魔素が存在するようになっているのである。この状態になってしまえばもう、ほとんど無限といっても過言ではないだろう。

そしてその状態になったおかげで俺は魔法の習得が可能になるはずであるのだ。それから俺は、自分の体に存在している魔力を操作するイメージを頭に思い浮かべたのだ。すると、俺の中にある魔力の流れのようなものを感じることができるようになりそれから自分の魔力の動かし方というものを理解したのだ。それから俺は杖を使って簡単な火の玉を出してみてそれを飛ばすことに成功できた。それからさらに俺は魔力を操作し続け水の玉を出しそして風を起こすことに成功した。それからも俺は練習を続けついに俺は魔法を使うことができるようになる。俺は魔法を発動する際には自分の頭の中に想像できるものを想像することによって発動させることが可能になった。それからはひたすら同じことを繰り返し続けた。俺はもうこの時にはかなりの実力を身に付けることができた。しかし俺は満足しない。まだまだ成長段階であると考えたからだ。そうして俺はそれからも訓練を続けた。それから数時間経ち俺は、これ以上続けても意味がないと感じたから一度この特訓を終了することにする。

そうして、次の日にもう一度この訓練を再開させ、それを繰り返す。

俺はこの世界で生き抜いていけるだけの力をこの数日のうちに手に入れたと確信した。

この数日間に俺は様々な経験をする。その時にこの国にはギルドが存在しないということを初めて知った。しかし俺はそんなこと関係無しに毎日の日課としてゴブリンを狩ることをする。そしてゴブリンを倒すことによって手に入る経験値によって俺はこの国の中でかなりの強さを手に入れたことになるのだった。この世界での一般的な成人男性がどのぐらいのレベルなのかということは俺はわからない。なぜなら今までの人生をこの異世界で過ごしてきた中で俺の年齢の時にはレベルが2だったのだ。

つまり俺は普通とは言わないが、そこそこ弱いのかもしれない。しかし俺はまだ自分が強くなることはできるという自信があったので特にそのことを気にすることはないのだ。それよりも、今一番重要な事はどうやって元の世界に戻れるかという方法を見つけることだ。そのためにもこの世界に関する知識を手に入れなければとそう思ったのである。そこで俺は街に買い物をしに行く。この国にどのような店があるのかを知るために俺は出かけることを決めた。まず初めに武器屋に向かった。そしてそこで短剣を購入することにした。次に服を買ったりしてその次は食べ物を売っているお店で何か食べようと決めて移動した。俺は串焼きを食べることに決めたので早速購入することにする。

そうして、この世界で初めて味のある食事にありつけたことに感動しつつ俺はその肉を頬張ったのである。俺はこの世界に来てからは料理という物がどんなものか分からずずっと、ただただ空腹を満たすためだけに木の実を口の中に入れて噛んでから水で流し込んでいただけだったので、久しぶりとなる美味しい食事を楽しめた。そしてこの後は、俺は街の中で一番大きい市場に行く。そこではたくさんの種類の野菜と果物、それと調味料などを購入し終えた後すぐに、この街で一番大きな図書館に向かうことにした。そうして俺はその建物に入るのだが、そこで驚いたことがある。それは、この世界で使われている文字は日本語だということと、その言語を俺は問題なく読み書きできてしまうということだ。俺はそこで、この街について書かれている本を数冊ほど借りて読むことにする。

この世界の名前はアトランタルという。俺はその世界にある五つの大陸のうちの一つにある街に滞在していてこの街のことを勉強しているところだ。俺の居る街の名前はラダッドと言うらしい。

この国は三つの国とその他の小国からなっている。俺が今滞在している国はこの三國のうちの一つであり王都と呼ばれており、この国の首都となっているようだ。そして俺がこれから会いに行かなければならない人物というのはその国の王でありこの国のトップである人ということになる。そして、俺にはもう一つしなければならないことがある。その国で勇者と呼ばれる称号を与えられているという人に挨拶しなければならないのである。その人がこの国の現状においてどういう役割をしているのかはわからないがとりあえず、会うだけ会っておく必要があると判断したので俺は今日からその人の所に行こうと思っている。そういえばこの前、この世界に召喚されてこの国から旅立ったとされている人物は、今はどこかの街に滞在しているのではないかという話を聞いて俺はその街を目指すことを決意する。俺はその場所を確認する為に本を読み始めた。

その街の名前をアルフヘイムというらしいのだ。

俺がその本を読むのを中断して本棚に戻す。それから本を探すことにした。本棚は結構な数が並んでいたので目的の本はすぐに見つかったのだ。

俺はこの街について調べていた時に気になる情報を目にしていたのだ。この街にある遺跡について書かれた本を読んでみると、この街の近くにある遺跡の中にダンジョンが在るという情報を得ることができたのである。俺はそれが気になったので明日はその遺跡に行ってみるつもりである。

俺はそう決意してから寝ることにした。

そして翌朝になり俺は再び宿を出たのである。

俺は街から出て遺跡へと向かう道中に森を見つけたのである。そこには俺にとって興味を惹かれるものが存在していた。そうそれは魔物である。俺は、ここ数日で強くなったのにも関わらず俺に襲い掛かってきたゴブリンを相手にして戦っていたのであるが、今の俺なら一人で戦うことも容易であった。だから、この前戦った時は俺の方が格上だったので簡単に倒せたがこの前の敵は違う個体であり、強さも全く違っていたのだ。俺は自分の力を試す為にこの森に生息しているゴブリンの群れと戦ったのである。その結果俺の圧勝で終わらされてしまった。この辺りの森に生息をしているのは俺にとってはそこまで脅威とはならなかった。だから俺は余裕を持ってこのゴブリン達を狩り尽くしそして俺はその奥地まで進んでいったのである。

それから俺はゴブリンを倒しまくっていた。俺が持っている剣は普通のものとは違っていて魔力を刃に変えることが出来るのだ。これは魔法剣士とか呼ばれる者がよく使うものである。

それから数時間が経ち、俺はようやく目的の場所に到着することが出来た。

俺はこの世界で始めて見る景色に興味が湧きその場所から少しの間動くことができなかった。そうして俺の目の前に現れた場所は洞窟のような作りになっており中に入ることも可能なように入り口が作られていたのだ。

俺は、この先に一体何があるのかを調べる為に中に入り探索を開始した。俺はそうすると不思議な感覚に襲われる。それは、まるで自分の心の内側を覗かれているような気分に陥ったのだ。そして俺の脳に直接言葉が響き渡ってくるのだ。

「我の名はゼブル、我が名は魔王なり。お前が此処に来た目的は何なのだ?答えよ。さもなくば死あるのみだぞ。」そう言葉は聞こえてきたのだ。そしてそれと同時にその男の正体が何者であるかということがわかったのである。そうこの男が、魔族の王にして邪神でもある魔王である。俺はそれを一瞬のうちに理解することができた。そうして俺は魔族との戦いを覚悟しながら質問をする。そうすると、魔王は笑い声を上げ始める。その光景は俺に恐怖を与えるのには十分なもので俺の心は完全に屈してしまいそうになったがどうにか堪える。しかし俺の心はどんどん侵食されていくようだった。そして俺はこの場にいることの危険性を感じ取ったのでその場から離れようとする。

それから少し時間が経った後に魔王との会話を再開する。

そして、俺と魔族の王はお互いの情報を共有してお互いに相手の存在を知れば知るほど相手に自分のことが見透かされてしまうのではないかと思ってしまい、相手のことを警戒するのだった。

俺と魔族はそれからしばらくの間は睨み合いを続けていた。しかし俺はこのままこの場所に居てもしょうがないことに気が付き、とりあえずこの先へと進むことにしたのだ。そうすると魔王が話しかけてくる。「貴様、面白い存在ではあるなぁ〜しかしそれでも人間であることには違いない。だが安心しろ。俺の方にも色々と理由がありお前を生かしておかねばならないのだ」「ほうっ?」俺はその魔王の言葉に疑問を抱いたのだがそれを聞き返すことはできなかった。なぜなら既に戦いが始まったからである。それから俺は必死に抵抗するものの俺は魔王の力の前に敗北してしまいその場で殺されてしまうのかと思っていた。

しかしその瞬間に突如現れた黒い光の塊によって助けられたのである。その光が消えると同時に姿を現したのは一人の少女だった。彼女は黒髪の長い髪をしていて見た目年齢は十歳くらいの可愛い少女に見えるのだがその正体は分からない。ただ分かることといえば、その力はとても強力なものであり俺でもその少女と本気でぶつかり合った場合勝てる見込みはないと思う程であるということだけである。その圧倒的な力を秘めた少女の姿を見て俺の体は震える。そして俺は、自分がまだ生きていることに驚きながらも彼女に問いかけたのだ。

そうして俺は彼女と共に行動することを決めることになったのである。俺はその少女にこの世界に来てからの事を一から説明をした。

そして、俺が今まであったことや感じていたことを全て包み隠さずに話し終えると彼女が話を始める。

「私もあなたと同じ異世界人ですよ。それに、あなたの考えていることは概ね間違ってはいないです。まず、私のことはレイカとお呼びくださいね。」俺はその発言を聞いた時に驚いたのだがすぐに納得してしまった。彼女の雰囲気からは確かに他の人間とは全く異質の物を感じたからだ。それから俺と彼女はこの世界について話すことになった。

俺達がこの世界で生き残る為にはどうしたらいいのかなどを話すことになるのだが、俺が知っていることは大体全て話したのでもうこれ以上は俺の持っている情報があまりなかったのだ。なので、俺は彼女との話を楽しみながら情報を集めるために行動を開始する。そしてこの世界を生きるためには何をすべきなのかを話し合い決めたのだ。それは、この世界に起きていることについて俺達は詳しく知らないので、まずはこの世界の歴史を知る必要があるという結論に至ったのである。俺がまずやるべきこととして俺は、歴史について記されている本が有るという図書館に行くことを決めたのである。そこでこの世界の歴史は、かなり長い年月をかけて編纂されているらしいのだ。その図書館は国が管理しているらしくそこに入れるのは一部の人だけしか許可されていないらしいのだ。そして俺はそこに入る為に必要な身分証明書というものを持っていないのだ。そのため俺達は一度その図書館のある国へと向かう必要があった。そこでその図書館を管理している人に会う必要も出てくるだろう。

そしてその道中で俺達はゴブリンに襲われてしまう。そこで俺はこの世界に存在するステータスを見ることができないのでどれだけの強さを持つのかわからない魔物と戦わなければならないのだがそんな状況の中で俺は何故か笑えてしまっていたのだ。

何故ならば今の自分はかなり強くなっていると感じているからこそこんな雑魚な敵に負けるようなことがないと思っているからかもしれないと自分に言い聞かせて戦っていたのである。そして結果的には俺はその敵を倒すことに成功してしまうのであった。その後から俺と彼女で協力して残りのゴブリン達を片付けることに成功するのである。それからしばらくした後にようやく、この遺跡の近くに存在すると言われている街に到着した。この街の名前はエルザレスと言う街だそうだ。そういえば、前に立ち寄った時にこの街の近くの遺跡の中で冒険をしていた者達がいたが彼らは一体何処にいってしまったのだろうかと思ったので、俺は遺跡の場所を聞くためにこの街に滞在している冒険者に聞きにいくことにする。そして、街にたどり着いた俺は、早速行動を開始する。まず俺はこの辺りにいるという魔物の情報を聞こうと思って酒場で食事をとっている人達に質問したのだ。すると俺は予想もしていなかった事実を聞かされることになってしまう。なんと、今この国で発生している異変というのは魔人が原因だということが判明したのである。俺はその魔人がどういう奴で今現在どういう状態になっているのかを問い詰めたのである。

そして、話によればその魔人は既に討伐されてしまっているらしい。その話を聞いて俺は心の底から安堵していたのだ。もしも魔人が生きていたら確実に今のこの世界の情勢はもっと悪かっただろうと想像がついたからである。

そして俺は、これからのことを考えるのであった。

私はこの街に滞在することにしたのだ。その理由は単純で私がこの世界での初めて訪れる場所だからというだけの理由でしかなかった。それに私は、この世界の常識にそこまで詳しくはないしそもそもそんなものを知っている必要性を感じていなかったのだ。

私は、これからこの街を観光しようと考えていた。だけどその予定は大幅に狂う事になる。この街には私と敵対している組織があるようなのだ。しかも、その存在の力がどれほどのものかを調べることができないので下手に手を出すわけにはいかないと判断したのである。そして私は情報収集を開始した。

その結果、やはりこの世界において一番重要なのが魔王の存在なのだということが判明する。この世界には現在三人の魔王が存在している。しかし、そのうちの一人である魔族の王である魔王ゼブルがこの世界に出現したことでこの世界の状況は一気に変わり始めてきているというのが現状であり魔王を崇拝し魔王のために行動をする者たちが現れたりしてきていて、その影響で魔王を崇めずに人類のためになることをする者達に対して反発する動きが目立ってきたようだ。だから、私はその二つの勢力に対抗する勢力を探さなければならないと感じたのである。だからその為にも早く仲間を探さないければならないと思いつつとりあえず今は、魔王についての事を調べることにしたのだ。そうしないと何時になれば目的を達成することができるか分からないのである。

私はこの世界での生活を快適に過ごすことができる場所を見つけるために旅をしている最中である。そのためにこの国に訪れている。そしてそのついでに色々なところを巡るつもりなのである。それで、現在はこの国の観光名所を巡っている途中だった。そして今日はたまたま気になっていた店に立ち寄る事にしたのである。その場所に辿り着いたのだがそこには可愛らしい小物が売っているお店で店主も若く見える美人なお姉さんだったのである。私はつい興奮してしまい商品を見ていく。その中でも一際私の目を惹くものがある。それはブレスレット型の魔道具でありそれは、腕にはめていても邪魔にならないくらいの大きさでとてもシンプルなデザインなのだがそれこそが私の心を掴んだのだ。

私はそれを買うことにして値段を確認した。すると意外にも安い価格だったのでその金額を見て思わず驚いてしまった。そしてその値段を提示されてから改めて確認すると本当に安すぎると思ったのだ。しかしこれは何か罠なのではないかと思いもう一度よく考えると、確かにこれを買った人は全員幸せそうな表情をして帰って行くのだが何だかいまいち釈然としないのである。しかし結局そのブレスレットはあまりにも安すぎて買うことに決めるのだった。そうして会計を終えようと店の主人に近寄って行った。そうして、お金を渡すときに私は少しだけ違和感を覚えてしまったのである。そうしてそのあとにブレスレットを手に取り見て見ると明らかにおかしい点が見つかった。それは、魔力が全く込められていないただの綺麗な宝石のアクセサリーに思えたのである。

「あの〜?これって魔石が組み込まれているはずですよね?」私はこの店の商品がどう見てもただのアクセサリーにしか見えなかったので聞いてみることにしてしまう。

「ああそうですね。しかし残念ですがその通りですよ。ただそれはその指輪には特殊な仕掛けが施されているんですよ」と、言われた。そしてそれから彼女は私の手に持っていたそれを勝手に持っていかれてそれを眺め始める。すると彼女は突然笑い始めた。「あ〜面白い!貴女なかなかやりますね。まさかこの程度のトラップにも引っ掛からない人が現れるとは正直予想外ですが面白そうなので今回は無料で譲っちゃいますよ」と、言われてそれを受け取らないのは失礼な気がしたのでそれを受け取る。そして彼女はそれを見ながら楽しげに笑っていたのである。その態度を見ていて思ったが恐らくだが彼女のその言葉は本当だったんだろうと思うことにしたのだ。ただ彼女はこの指輪を鑑定していないにも関わらずその正体に気づいたみたいでこの品物の正体を言い当てることができたという事が分かっただけでも良かったと思うことにしようと思う。

私はその店を後にするとまた別の場所に移動するのであった。そして、その後も私は色々な場所を訪れていきそこで色々と情報を仕入れたり買い物をしたのだ。そうしていくうちに私は完全にこの世界に馴染みつつあった。そして私はこの世界に居る他の転生者や転移者がどこに集まってくるかという情報も得ることができたのである。まずこの国の城の近くに大きな図書館が存在するとの話があった。なのでそこにいけばその図書館でどのような本が所蔵されているのかを調べられるだろう。そしてそこで私は自分がこの世界で生き残れる方法や、私にとって必要な能力を手に入れるために必要な情報を手に入れなければならないのだと思っている。

そしてそれから数日間私は街を巡り続けたのである。そうしているうちについに私はこの国にある全ての名所や施設などを制覇してしまったのだ。それからしばらくは特にやることもなく暇になってしまった。なので私は自分の能力をより高めるために特訓をすることに決めて、私はダンジョンへと足を運び鍛錬を始める。それから数日かけてひたすら戦闘を続けることに没頭していったのである。

それから数週間が経過して私はようやく目標とする領域に辿り着くことが出来たのだ。なのでここからは更なる高みを目指すためにこの世界に存在する魔王について知るために調べることにしたのである。なので私は再び旅を続けることにする。そして、私はこの街に戻って来た時のように再びこの街を訪れることになるのであった。そしてそれから数ヶ月が経過したある日の昼下がりにそれは起こってしまうのである。

私はこの街に滞在をしてから数年が経過することになるのだがこの数年間は特に何も変わった事がなく平穏に暮らしていたのだ。だけどこの国に訪れたのが間違いの始まりである。そしてその日は私と敵対していた組織の人達は私を捕まえようとしているのだ。その理由はこの国は、今や私達が支配しようとしている国でこの国が私たちの国を滅ぼそうとしているのだという。つまり私たちは敵同士で戦争状態にあるということになるのだ。そして私がここに訪れた時に最初に立ち寄ったあのお店も実は敵側である。なぜなら、そこは魔王崇拝の過激派組織が運営している店舗だからだ。この世界には三つの宗教が存在してそれぞれ、光の神を崇拝する神聖教、闇の神を崇拝する邪神崇拝、そしてその二つを合わせた邪神信仰と三つに分かれている。

ちなみに私はその三つのうちの一つの神聖教徒の人間だ。そしてその敵側が魔王崇拝をしているというのならば敵として戦わなければならないのである。でもこの争いはできれば戦いたくはなかったのだ。何故ならばこの争いをすることによってお互いにかなりの犠牲者を出す結果になり、最終的にはこの大陸を制圧される可能性があるからである。私はこれ以上の犠牲が出ることを防ぐためにもこの争いだけは避けたいと考えているのだ。そうは言っても相手が襲ってくるのならば戦わざるを得ないのである。そして、その組織は私がこの世界で暮らして行く中で敵対する可能性が高いと思っていた相手だったのだ。そしてこの国に存在するもう一つの宗教が魔族の王を崇拝する魔王教団だ。だからその二つの勢力のどちらが勝つにせよこの世界から魔王が現れてしまう。それだけは阻止したいのだ。

だからその争いを止めるために、私は全力で抵抗することにしたのである。

俺の目の前にいきなり魔人が現れたのだ。それも二体もいるのである。その瞬間俺は恐怖心からなのか、体が硬直してしまうのであった。

ーー精神力 25000→25100 俺は何とか心を落ち着かせようと深呼吸を行うが、それでも動揺を抑えることはできなかったのだ。そしてその時だった、俺に向かって攻撃を仕掛けようとしていた奴らが攻撃をやめると、何かを話し合っていたのである。そして、話を終えるとそのまま消え去って行く。その後すぐに俺はその場に座り込む。

俺は先ほど起こった現象について考える。なぜあんなにもあっさりと引いたのだろうかと、もしあの時どちらかの個体が殺されてしまっていたのなら確実に俺たちは皆殺しにされていたはずなのだ。なのにどうして、彼らは引き下がったのであろうか?もしかしたら何らかの話し合いが行われていたという可能性もあるかもしれない。

そしてその魔人たちがいなくなったことで、今まで魔人がいるので近寄れなかった人たちが、一気に魔人に群がって行くのであった。その様子を見ているとどうにもこの世界の人間は、魔物を恐れすぎているような気がしてならないのである。そしてそんな事を考えていた俺に話しかけてきた人物がいたのである。その人はこの国の王様で、この国に訪れている冒険者だった。そうしてその人から話を聞いたところによるとこの国には昔から伝わる伝説の武器というものが存在しているらしい。しかしその伝説は何百年以上前のものであり今は存在していないと言われているのだ。その伝説というのは、その昔魔王が封印された際に使われたという杖が、この国にあったそうなのだ。しかしその武器が一体どこに行ったのかは不明らしい。そうするとやはりその伝説の武器は、まだこの世界に存在しているのではないかと思われる。その根拠としてはこの国を訪れた人が一人もいなかったこととこの国に訪れてから魔族の襲撃があったことが偶然とは思えないのだ。しかしいくら考えてもその武器についての情報が一切なかったのである。

それから数日後、俺たちはこの国にある迷宮と呼ばれる場所に訪れていたのだ。そのダンジョンの階層はとても深くてこの国の王族でさえ、攻略したことはないといわれている。

「ここって本当に存在するんだな」と、その迷宮を見ながら俺のとなりにいたレイナが呟いたのである。そしてレイナは続けて、この国の人たちはこの場所には絶対に近づくなと言っていたのだがその意味がよく分かったとそう口にして少し怖がっていたのであった。

「なぁ〜シンはどう思う?本当にここは存在したりするのか?」と、聞かれたので、

「そうだな確かに何か特別な気配を感じる気がするが、とりあえず中に入ろう」と、俺は答える。そして俺とレダは、このダンジョンの中に入っていく。しかし中に入った後、俺たちはある違和感を覚えたのであった。この迷宮に入ってから魔物に遭遇することが全くと言っていいほどなくて不気味に思えたのである。それにこの階層はかなり深いはずであるがなぜか階段を上っている感覚もなく、同じところをずっとぐるぐすると歩いているだけのように感じられたのだ。そこでこの迷宮の構造を把握しようと考えたのだが地図が存在しなかった。なので仕方がないので、自分たちが来た方向とは別の道を選び、その道を進みながら探索を行っていくことに決める。するとそこで、俺たちの前方の方に何かが落ちていたのである。その落下物を確認するために進むのを止めてその物体の側に駆け寄ってみると、そこには宝箱があったのである。しかもこの宝箱は、このダンジョンで見つかった物ではなくこの階層に落ちている時点でこの空間自体になんらかの変化が起きたことは間違いなくその宝箱の中に入っていた物は普通のものではないと思ったのだ。なので警戒しながらその宝箱に手を伸ばし、ゆっくりと開ける。するとその中には、この国では絶対に見られないような綺麗な装飾が施された一本の長剣が入っていたのである。それを手に取り鞘から刀身を抜き出してみると、その綺麗な刀身に思わず目を奪われてしまったのだ。そしてこの長剣からは凄まじい力が伝わってくる。それはこの長剣自体がこの世界の中でも上位に位置するほどの力を秘めているということが分かる。だがしかしこれは明らかにおかしいのである。だってその力は俺や、レイナが持つよりも強い力を感じたのだ。だから俺はその疑問を口に出すのである。

「レイナ、この長剣がなんなのか分かるか?」

そう質問すると、その答えは予想外だったのだ。だってそのレイナは自分が持っている長剣について知らなかったのである。それを聞いた瞬間俺の中でその答えが出たのだ。

この長剣がこの世界で誰の手にも渡ることがないということは、恐らくだけどこの世界にはまだ、その所有者が不在のはず。つまりこの剣の所有者は現時点では誰もいないということになるのだ。

そして俺は自分のステータスを確認し、その所有しているスキルと所持しているアイテムの数と、そして新たに習得できるようになった新しい技や能力などを一通り確認しておく。そうして俺の能力は以前より遥かに向上していたのであった。なので俺はこの長剣を使って戦うことにする。その長剣に認められたら俺はこの世界に存在する全ての種類のモンスターを倒すことができる。その事実だけでワクワクしてきたのである。そうして、俺はまず自分の手に持っていた長剣に鑑定を行いこの長剣の名前を知ることができたのだ。

その名称を見て驚いたのである。

それは聖剣だったのだ。

この世界で確認されている最強の装備の一つであるのだ。だから俺は嬉しくなってしまってその感情を抑えることができずに笑みを浮かべたのであった。そしてその喜びの感情のままにその長剣を両手に持ち構えをとる。そうするとその長剣の本来の姿が目に映ったのである。その長剣の刃が発光しており眩しかったのだ。そしてその光り輝いている剣はまるで意思があるかのように俺に問いかけてきたのである。

《お前の実力を見せてみろ》 と、言われた瞬間に、この聖剣と戦わなければならないと感じてしまい、この聖剣の力を使いたいという欲求に支配されそうになる。その欲望に打ち勝ちなんとか踏みとどまると、俺は全力で聖剣と戦い始めたのである。そして俺は全力で戦い続けたのだ。そしてその結果は、俺はボロ負けしたのである。でもこの長剣は認めてくれて俺に名前を教えてくれたのだ。

この長剣の名前は"エクスカリバー ソード オブ グローリー" 俺はその名前を気に入っている。

なぜなら、とても厨二病心がくすぐられるのだ。

俺は今、迷宮を彷徨っている。

その理由として先ほどまで俺と戦ってくれていた長剣が折れたのである。それも一瞬で粉々になり跡形もなく消え去ったのだ。だからもうこのダンジョンには、俺と戦うことを望んでいる相手はいなくなったのである。だから仕方なく俺は出口を探しながら迷宮をさまよっているというわけだ。しかし一向に出口が見つからない。だから一旦外に出ようと、俺をここまで案内してくれたレイナを呼び戻そうと決めたのである。そしてその事を、レイナに伝えようと、俺は彼女に連絡を取ることにしたのだ。その方法はスマホという魔道具で連絡する事ができる。その魔道具の起動方法を教えるとすぐに使い方を理解し、今ではレイナは、俺の代わりにギルドの仕事をしてくれているのだ。そんなレイナといつでも話ができるこの魔道具のおかげでこのダンジョンの脱出の手助けになるのではないかと思い俺は、彼女に連絡することにしたのだ。

俺は、その魔道具を耳に近づけると彼女は直ぐに俺の言葉に返事を返してくれる。そうして、彼女がその言葉を伝えてくれた後に俺はこう言ったのだ。

「分かった。こっちに来てくれるんだね。うん、わかった。じゃあ、ここで待機して待ってるから早く来てくれるかな」

俺は、彼女の返答を聞くとその声を聞き逃さないようにと耳に集中してしまうのであった。そして俺はそのまま彼女を待ち続けること数十分、ようやく彼女と再会できたのだ。

「お待たせ。ってシンどうしたのその傷は!?」と、そう言いながらレイナは俺の体の怪我を見ている。しかし、その怪我は全て回復薬で治療することができる程度のものだった。そして俺とレイナが話をしながら移動を開始しようとした時のことだった。俺たちの前方に何かが現れたのである。そうして、俺とレイナはその魔物と目が合うと、

「シン、あれって何なの?」と、レイナに聞かれる。その魔物の正体は、俺も分からなかったのだ。その正体が分かった時には俺たちはこの場から離脱しなければならないかもしれないと思ったのだ。だから俺はその魔物を観察するために近寄っていく。そして、魔物は近づいてきた俺に対して攻撃を行うことはなくこちらを観察してくるだけだったので、俺たちも観察して見ることにしたのだ。そうして俺たちがその魔物について考えていると、突然俺に向かって攻撃してきたのである。それを何とか避けることができた。そして攻撃を行ったその魔物の容姿を確認した。それは、俺の想像を超えた化け物のような存在だったのだ。その外見を簡単に言うと二足歩行の巨大芋虫である。そしてその見た目からは考えられないほどのスピードを持っており動きは予測ができなかったのだ。そしてその魔物は俺のことを敵と認識したのか、俺に向かってまた攻撃をしようと接近してくる。俺はそれに驚き後ろに飛ぶことで距離を取った。

「シン!そいつは何?どうしてこんなところにいるの?」

「それが俺にも分からないんだよ」

そう、俺にはその質問に答えれるだけの情報を持っていなかったのだ。しかしレイナには俺が嘘ついていると思っているようで俺のことを見てくるのである。なので俺は、正直に答えることにするのであった。そしてその化け物と対峙することになったのだ。

その化け物との戦闘は今までで一番過酷なものとなった。俺の攻撃が全て避けられるだけでなく俺の攻撃を全て回避してカウンターを何度も喰らう始末なのだ。それでも俺はどうにか戦闘を続ける事ができたのである。だがレイナの方に目をやると、俺が必死に戦っている中レイナの表情は絶望しているようであり、体が震えていたのだ。だからレイナをこの化け物にけしかけてはダメだと判断する。そこで俺はレイナに逃げることを提案する。すると彼女は俺の提案に乗ってくれて、逃げることに決めたのだがその選択をした直後に俺は地面に落ちていた瓦礫に足を取られ転倒してしまうのである。

「くそっ」と、言葉が自然と出てしまったのだ。しかし転んだと言ってもこの程度のダメージでこの強敵を足止めすることができればいい方であると俺は考えながら、急いで立ち上がりレイナと一緒にこのダンジョンから逃げ出すことを決めたのである。するとこの化け物は俺たちを逃すまいと攻撃を仕掛けて来たので俺はそれに反撃をする。

この怪物相手に剣で切りつけたり魔法を放ったりするよりも、もっといい手があることに気が付き俺の行動は変わる。そうするとその化け物は急に苦しみ始めるのであった。

そう、俺はこの迷宮に入る前にあるモンスターを倒して得たスキルを使って見たのだ。そうしてスキルを発動した結果そのスキルの効果が現れる。その効果は状態異常を与えることができるというスキルである。

その状態で俺はレイナを連れてその場から離れようとするが、レイナはなぜか立ち止まっていたのだ。俺は慌てて彼女に何かあったか確認しようとすると彼女は俺に何かを伝えようとしていたのである。

「私を置いて行って欲しいの。私はここでこの化け物を足止めしたい。だって、このモンスターを放っておいたら多くの人が被害に遭うと思うの。それを止めるのは私がやらないといけないの。だからお願いします。私の我ままを許してください。それとこれを受け取って」とレイナが言ってくる。その顔を見ると涙を浮かべており、無理をしていることが伺えた。そして俺が、その申し出を受けるかどうか躊躇っている間にもレイナとの距離はどんどん離されていってしまう。

「レイナ、必ず戻ってくるからそれまで絶対に死ぬなよ。約束できるな?」

「えぇ、大丈夫よ。だからシンはさっさと逃げてね。あとその剣はちゃんと使いこなせてるみたいだからそれを使いなさい」と、俺の手に握られている折れた長剣を見てレイナは俺に助言してくれるのであった。俺はそんな彼女の姿を見ているともう迷っている時間はないと感じていた。なので、俺はその言葉に素直に従うことにしたのである。そしてその言葉を聞いた俺は直ぐにその場を離れたのだった。そして俺がその場を離れていくのを確認していたレイナは俺に背を向けている状態から俺の方へと振り返ったのだ。その目には先ほどまでの悲しそうな目ではなく強い意志を感じさせる力強い目をしていた。俺は彼女が何をしようとしているのかを理解する。彼女はその身を挺してこの怪物を足止めするつもりなのだと。だから俺は全力疾走でレイナの元へ駆けつけようとするも間に合わずその化け物の攻撃が彼女を襲ったのだ。そうすると俺は怒りが抑えられずにいたのである。だからその感情をぶつけるように俺は手に持っている折れた長剣でその怪物を攻撃したのだ。そうすると今度は攻撃を避けることができず直撃した。すると長剣は一瞬で砕け散りその長剣を持っていた腕にもその攻撃による衝撃と激痛を感じてしまうのであった。そしてその攻撃を受けたことによって俺にさらなる隙が生まれてしまったのだ。そこをこの怪物に狙われてしまい、攻撃を受けてしまい吹っ飛ばされる。俺は壁に激突してしまい口から血を流していた。そしてその一撃だけで俺は戦闘不能に陥り意識を失ってしまうのである。

俺はその怪物と戦っていたがついに俺の限界が訪れることになる。もう身体に力が入らず動くこともできず、その力の差に恐怖を覚えていたのだ。その化け物が一歩ずつゆっくりと俺のところまで迫って来る。そして、その鋭い眼光をこちらに向けてくるのだ。もう駄目だと思い死を覚悟していた時であった。その少女が目の前に現れる。そう、俺がこの世界で一番信頼している仲間が、その剣を構えながら現れ俺の前に立っているのだ。そして彼女はこう叫ぶのであった。

「ここは、私に任せて!」

彼女はそう言い残し、そしてその言葉を合図にして戦いが始まった。彼女の持つ大剣はその巨体に似合わない速度でその斬撃が何度も繰り出されるのを俺は見ている。そしてその攻撃を喰らい続けるあの魔物の姿はだんだん弱っていくようにも感じられたのだ。その証拠として魔物から出る液体が、次第に勢いがなくなっていくように思えた。その光景を見ていると、その魔物がレイナに追い詰められていっているのが分かる。そうして遂に魔物が膝を付くことになりレイナの勝利で終わると思っていたが魔物はレイナに向かって攻撃を仕掛けてきたのだ。

その攻撃が当たればレイナの体がどうなるかわかったものではない。だが、そんな状況であっても彼女は怯まずに攻撃を回避し続ける。そして彼女はこう言葉を口にする。

「これで最後だよ。あなたをここから消し去ってあげる」

そう言葉にした彼女の手には聖剣がありそれを構え、魔物に向かって振りかざすとその刀身から聖なる波動が魔物に向かって一直線に進む。そしてその攻撃を魔物の胴体に当たった途端魔物は苦しみ出すと動きが止まりそのまま消滅したのである。

そうして、彼女が俺たちの元に駆け寄りこう声をかけて来たのだ。

「二人とも無事?」

俺はその声を聞きながら気絶しているシンの顔を見る。そして俺は彼の顔を見ているとあることに気が付くのである。

彼は自分の傷口を押さえていることにだ。

俺は、シンが心配になり彼に近づくとそこには大量の血液が溢れていたのだ。そして俺はシンの手を無理やり引き剥がすと俺は絶句してしまったのである。何故なら、その手は骨が見えていてとても危険な状態だったのだ。それにこの出血量、おそらく命に関わるかもしれない。そう思いすぐに治療を始めなければと思ってレイナに回復魔法の使い方を聞く。するとレイナは少し戸惑いながらも教えてくれると、そして彼女は俺のことを抱きしめてくる。

「ごめんね、私のせいなの。私が無茶なことしたから」

そう、彼女は自分が犠牲になるつもりだったようだ。しかし、彼女はまだ幼い子供なのだ。こんな年端もいかない子供を戦場に連れていくのは明らかに間違っている。しかし彼女は、この国の姫君でありこの国が滅びそうになった時、自ら率先して行動を起こしていた。この国に暮らす民のことを誰よりも考えている良い子なのだ。だからこそ俺も彼女を責めようとは思ってないのだ。そして、俺はシンのことを見つつあることを考えたのだ。それはシンの持っていたスキルについてである。俺は、シンの持っていたスキルを思い出しその効果がどのようなものなのか想像が出来たのだ。だから俺はシンのことを抱き上げながら彼女に言うのである。

「この少年を助けるためには君の魔力が必要なんだ。お願いできるかい?」

「はい、大丈夫です」

そう言うとレイナの身体が光始め俺の中に流れ込んでくる感覚があるのだ。しかし、俺は気にせずに俺はレイナの手を握るとそこからはレイナと心が繋がるようなそんな気がして俺はある一つの魔法を唱えたのである。するとレイナの魔力がどんどん流れ込んできた。それと同時にレイナと俺の身体が一体化するようなそんな気がしたのである。

それから数分経つと俺の中から何かが失われていくのを感じると俺は意識を失うことになったのである。

私は、彼が目を覚ました時には、私の事を恨んでいるのではないかと不安になっていたの。だけど私が彼に謝罪すると逆に謝られてしまうの。どうしてかと聞くと私は彼を試していたと話す。そこで初めてシンに出会ってこのダンジョンに入ってきた理由を聞かされたの。その理由を聞いて私はなんて自分勝手で傲慢なんだろうと思いながらシンに頭を下げて謝罪した。シンには迷惑をかけたこと。そしてこの国を救うのを手伝ってほしいと伝えると、シンはすぐに協力してくれたの。だから私は、シンと共にこの城から出ていきこの世界を救いたいとそう思った。そして私はまだ戦えるとそう思っていたのだが、なぜか身体が重く動かなかったのである。それでもどうにか立ち上がろうとすると急に目の前が暗くなりそして意識を失った。

「お姉ちゃん大丈夫? ねぇ返事してよ。お姉ちゃんが死ぬわけないもん。嘘だよね、私を置いて行かないでよ。お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします。」

俺はそんな叫び声によって目覚めると俺は誰かに抱きしめられていたのだ。俺が起きたことに気づくとその人は離れていき俺はその子を見てみる。

そしてそこに居たのは俺よりは二つほど年下の女の子であった。その子はとても可愛らしい顔つきをしておりその目は涙に濡れており、俺の服を掴んでいたのだ。

そうすると俺は周りを確認するとこの部屋はかなり広く、この子は一人でここにいた。さらに部屋の奥にも扉があったのだ。そしてこの場所はどこかおかしいと感じ始める。なぜなら、俺達がこの城に足を踏み入れた時のような雰囲気ではなかったからだ。そう俺が考え込んでいるとその子が俺の服の裾を引っ張ってくる。そしてその子が泣きそうな表情をしながら俺の顔を見ていたのだ。

「えっと、どうしたのかな?」と問いかけて見る。しかしその答えを俺に聞いてきたのだ。

「助けて」

俺にそんなことを言ってきたのである。そんな状況で、この子を放り出していいのかと悩むことになると俺の脳裏にある言葉が流れ込んできたのだ。

『お前の大事な人を護れる力を手に入れる』と。そして、俺は何故かはわからないけど俺に語り掛けてきた人の正体がわかったのである。そう、俺に力を与えてくれた存在。その声は俺に力をくれた人のものであり俺は、その人に聞き返すことにした。

「力を貸して貰ってもいいんですかね? その力を使う覚悟はあるんでしょうか?」

そうすると、俺はまた不思議な声が頭に響き渡り、その力は、覚悟のある者しか使うことが出来ない。だからその覚悟を問うために現れたという。そして、俺に話しかけて来た人物は、「貴方はこの世界の未来を変えることが出来るのだろうか、それが楽しみでしょうがない。これからよろしくね」と言って消えてしまったのだ。

「さっきまでいた人が誰だったのかは知らないがこの子の事を守る為の力を得るとしよう。俺にその力が使えるのであればだがな。それに俺が持っているこのスキルが使えたらかなり強力なはずだ。とりあえず使ってみよう。ステータスオープン」

そう言って俺はこの子に気づかれないようにして自分の能力を確認してみると、そこには今までとは全く異なる項目が表示されていたのだ。そこには【聖騎士:剣】というものが存在していた。しかもレベルまで存在していたのである。この能力は剣の扱いに長けている者に付与される職業であり、更にその剣の攻撃力や防御力、俊敏性を上昇させ、剣を扱う際におけるあらゆる身体能力が上昇する効果があるとのことだった。他にも様々な恩恵が付与されていたのである。

その剣に関する恩恵が表示されていると俺の心の中で声が聞こえてくる。

「今からあなた様の剣となりあなた様にこの剣技を使いこなすための稽古を付けます。あなた様の好きな時にいつでも呼び出せるように設定しました。それとあなた様の能力に合わせて剣にそのスキルを付与しておきましょう」と。

その言葉の後剣に光が集まって行きその光が収まると、そこには剣が一本置かれていたのだ。その剣を手にとってみるととても軽く感じたのである。その重さもちょうど良く、使いやすそうだ。俺はこの子の前で剣を鞘から抜き放つ。その動作だけで、俺はこの力が本物だと確信できたのだ。

「その武器を使って何をするつもりですか」と、その子が少し警戒したような声で質問してくる。俺はそれに対して笑顔を向けてからこう言葉を返した。「大丈夫、この剣を使えばこの城から出ることは簡単だし。それにもう安全になったんだよ」と、 俺はそういうとその子が驚いていたが「本当なの?」と言って来たのだ。なのでもう一度微笑んで見せてから俺はその部屋の扉を開くとその子は付いてきてくれと言うようにこちらを向く。俺はそんな様子を確認した後、ついていく事にする。そして廊下に出た時俺は驚愕することになったのだ、この城の造りがまるで違うことに、この城に来て見たことがある建物など無かったからである。それどころか全くの別世界に来たかのように思えるほどの変貌ぶりなのだ。そのことに俺は戸惑いを覚えつつもその子供について行った。その途中でこの城にいる兵士の姿を確認出来るようになる。その姿も俺の知る者達の姿ではなくその体から溢れ出ている魔力も異質でありこの国の現状を理解したのだ。そして子供と一緒に外に出ようとしたときあることが俺の中である仮説を立てることが出来たのだ。そう、あの男についてだ。その男は俺達と同じ異世界から来た可能性が高い。

その男がどんな能力を秘めていようとも今の俺たちに負けるはずがないのだ。何故なら俺は神に近しい力を持つ存在だからだ。

俺はまず自分の体に魔力を流し込んでみる。するとその魔力が体中を巡っていくのを感じることができるのだ。そこで俺は自分が手に入れた能力を思い出しそのスキルを使用してみたのだ。そのスキルの名前は【覇王の神威:全属性完全適応者】というものだった。その効果の説明文には「全てに適応することができる」という説明があり、そして全ての魔法に対して耐性と回復の効果が付与されるとのことだった。

そして俺が自分の体を見渡して、この力の確認を終えると、目の前の光景が変わったのだ。俺はそこで、この空間が何で作られているのかをようやく知ることができたのである。そこは白い世界であったのだ。この白い世界に俺は立っているのだがこの白の世界は、現実に存在するわけではなく。あくまでもこの世界での景色を投影しているに過ぎない。この世界の外では俺は普通に動いているのだがこの白い世界では一切動くことができないのだ。そして俺は目の前の存在を見るのである。そう目の前には何もいない。いや正確に言えば目の前の景色の中にいるのだがそこに実体は無いのだ。

そうすると目の前に半透明の何かが現れたのである。そしてその存在から言葉が告げられるのである。

『私は貴方の味方であり敵でもある存在です。貴方には二つの選択肢があります。私と共に歩むか、それとも私を倒すことで私の存在を消すかの二つに一つのどちらかになります。』そうすると俺は疑問に思う。どうして俺を殺せば俺の中から消えるようなそんな言い方をするのかと。俺の頭の中では俺を騙す為なのか。もしくは何かを企んでいるのかもしれないと考えていたのだ。そして俺はそいつに向かって問いかけた。「どうしてお前を殺す事で俺の中からその力が消えると言い切れるんだ?」すると、その相手からは俺の考えを読んでいたのかと驚く回答が返ってきたのである。

俺が考えていたことは全てお見通しだったのだ。この世界の創造主は本当に何でも知っているみたいだった。そして、その相手に、その問いに対する返答を聞くと衝撃的な内容が帰ってきたのだ。

それは、その力を与えた者は、この世界を崩壊に導く可能性があるとして危険視していた人物で、俺にこの力を渡したのも世界を安定させるためだという。そして、もしこの力で世界を破壊してしまうようであれば殺すしかないと言われてしまったのである。俺はこの事実を聞きながら心の中で納得してしまっていた。この力があれば確かに世界なんて簡単に滅ぼせるだろうとわかってしまったからだ。だが、それでも俺に力を託した理由は分からなかったが。

そして俺にその話をした後は俺は、その者からスキルを受け取ることになるのだが。俺がこの世界で手に入れられるスキルには制限があって、基本的には同じ種族の者が持てる上限は3つまでと決まっていた。しかし、この世界の住人に俺の持つ【魔獣契約:使役可能】と【超成長】の二つをセットで与えたら俺は新たなスキルを得ることが出来るようになったのでその力を手に入れて俺が使えるように設定しておいた。それから俺がその者との別れを済ませるとまた元いた場所に戻ってくる。

俺がその子供に案内され歩いていると城の外に繋がっているであろう場所に辿り着くのである。そして扉を開くと俺の目に飛び込んできた光景に唖然としてしまう。そこには魔物が大量に存在し、さらに兵士達は一人もおらずに死んでいたのである。そして俺が、周りを確認している間に女の子は、その魔物の大軍に向けて攻撃を開始する。その攻撃を俺が見ていても分かるぐらい凄まじいものだった。

その一撃によって一体の魔物を屠っているのである。俺はその子に声を掛けようとしたが俺の目の前に一筋の光が走ったのである。

そして、俺は何が起こったのかわからずに、その場に膝を突いてしまった。そして俺の前に一人の青年が姿を現した。そして俺の顔を見て驚いた顔をしたのである。俺はそんな顔が目に入ったのは、一瞬だけで、そのあとすぐに、また気を失いそうになるが俺は何とか耐えて見せる。そしてその俺を見たその男が俺のことを抱きしめてくれたのである。俺の体はボロボロの状態だったので、俺はそのまま気絶してしまい意識を失う。そして俺が目を覚ました時に俺はこの国に来てからの記憶が消えていることに気づいたのだった。

俺は俺自身が何者かがわからなくなってしまい。そしてその少女は何処かに消えていた。俺は自分の体を見ると傷だらけの状態でしかも服すら破れていたのであった。そして俺はとりあえず安全な場所に移動することにする。この場所はあまりにも酷い状況になっているのでまず最初に自分の家に行くことにした。その家に辿り着いた時違和感に気づくと家の状態も変わっていたのだ。俺は家の中に入るとそこにはリゼッタがいたのだ、俺はその事に驚き、思わず駆け寄った後に声を上げるのである。「どうなっているんだ? ここは俺の家なのになぜ、あいつがいるんだよ」と、 そう言っても何も答えてくれずただ黙って俺のことを見つめるだけしかできないようだった。そしてその瞳に涙を浮かべながら抱きついてきたのである。俺はそんな様子の彼女を受け止めると彼女は声を震わせて泣き始める。「よかった無事で」と言う言葉を漏らしながら俺の体を力強く抱きしめてくる。

俺は訳もわからないままに彼女に連れ出される形で家を出ていくことになってその後を付いて行くと、城の方向へ向かっていったのである。その道すがらに彼女と会話を交わすのであるがその表情は明らかに暗く何かを悩んでるようで心配になってしまった。だが、城の近くまでたどり着くと彼女の足が止まり、俺の腕を掴む手が強くなる。俺は彼女がこんな反応を見せるのは初めてだと思っていたのだ。その証拠に俺は腕を掴まれていた手から微弱な痛みを感じるのである。俺はその痛がり方に疑問を抱きその手を確認すると、そこには爪が食い込むほどの力で握られていたのである。それだけ彼女にとって辛いことがあったのだという事がわかると、俺はこれ以上深く聞くことはせずに城に入る。そして城の中には誰もいないのである。そのことに不思議さを感じながらも俺は城の中を進んでいくのであった。

俺はこの城に誰かがいそうな気配を察知したので、そこに向かって移動をしている。そうするとその場所には先客が存在したのだった。そしてその人物は、俺のよく知る人物であったのだ。そして、俺がこの場に到着した瞬間に、俺は何故か動けなくなってしまった。いや体が勝手に動きを止めてしまっているようであった。そして俺が目の前の相手に何かを言うのである。その言葉を俺は発したのだが、俺はその相手が誰なのかが全くわからなく、その言葉を聞いてもその言葉の意味が理解できなかったのだ。そしてその人物が俺に手を差し伸べてきても俺はその手を取ることができないのである。そこで突然俺はその手を払いのけてしまう。そうしないと殺されると本能的に思ったのだ。だが俺はその時に俺はとんでもない失敗をしたと気づいたのである。俺の体の支配権は、目の前の人物に奪われたのだ。その人物に操られた俺はその人物の言われるまま行動していた。俺は抵抗しようとしたけれどなぜか上手く力が入らない状態でされるがままになってしまう。そして、俺の意思に反して城の外に出るのである。俺はその時にあることに気づくのである。俺自身の体に変化が起きていること、そう今の今まで、俺の魔力量が桁違いに多くなってることに気づいていなかったのだ。だがそれもそのはずだ、今の俺は神の力を得ており、それに加えて【超成長】の効果もあり魔力量の伸びが格段に早くなっていたのだ。俺はそのことを忘れて、俺は自分の体に起きた変化に対して疑問を抱いてしまっていたのだ。

そんな俺に更なる追い打ちがかけられるのだった。なんと城の外で俺を殺そうとした相手が現れたのだ。そして俺は咄嵯のことでその男を殺してしまうのである。俺は俺の身体の中に流れるその力によって無意識のうちに相手を殺めてしまった。

俺は、自分が何をしたのかを理解するとその場で頭を抱え込んでしまう。何故ならこの力があれば簡単に人を殺したり、傷つけてしまったりする事ができるということに、この力を他人に与えるという事はそういう事なのだと改めて感じさせられたからである。そして俺はその場を離れ、俺はリゼッタを探すのだが見つからない、だが俺はリゼッタを見つける為に城内を探し回るが一向に見つかることはないのである。そこで俺は一旦家に戻ることにした。すると、俺の部屋に知らない奴らが立っていたのだ。

俺は、俺の部屋の前で俺が帰ってくるのを待っていたらしいが、全く覚えのない人物達が目の前にいることに関して俺は警戒するしかなかったのである。そうすると俺の体に纏っていた力がなくなり自由になった。俺はそこでようやく俺は解放されたことを認識できたのだ。そして俺は、この目の前にいる存在が何者なのか確認すると俺は愕然としてしまった。そう目の前にいたのは国王と姫達であったからだ。そしてその国王は、俺のことを見るなり俺にこう言ってきたのである。

俺は、この国の王から呼び出されていた。そして俺をここに呼んだのは俺にこの国に滞在してほしいと言われたのだ。そして俺はその申し出に断ろうとしたのだが。俺が断りを口に出そうとすると、それを遮るように王女が口を挟んできたのである。俺はどうしてかその言葉を聞く気にはなれずにその誘いを断った。すると王様の顔が曇ってしまう。そして俺はその顔を見てもう用はないので立ち去ろうとすると俺の視界が一瞬暗転して目の前に見たこともない景色が広がっていたのである。そこは、何処かも分からない洞窟の中で俺は地面に腰を付けていて今の状況について考えていたのだ。俺は何が起きたのかわからずにいた。それにしてもここは一体どこなんだ、そして俺の記憶が間違ってなければ俺はこの部屋を出た後リゼッタに連れ出され、その道中に城から出たはずだったのだが、そこからのこの一連の流れはどう考えてもおかしいと思えた。そう俺はリゼッタに城を追い出されてから、リゼッタを探して城内を探していたはずなのに気が付けばこの空間にいたのである。この空間の地面は砂地となっていて壁は岩で覆われていた。天井からは謎の発光物がぶら下がっており、まるでこの部屋の中を怪しく照らす光源となっていた。そして俺の前には大きな門が存在している。その門の前には一人の女の子が存在していた。

その女の子の服装はかなり変わったもので、この国で一般的に使われているものとは違っていたのである。俺の記憶が正しければ確かこの国では貴族が使っている服だったと思う。しかし俺が見る限り、かなり裕福な暮らしをしていたと予想できるような服だったのだ。そして俺のその女の子は俺に話しかけてきたのである。

「私は、あなたを待っていたの。私の名前はアルムです。あなたの事をここで待っているようにと言われてここを守っていたのです。それとあなたの名前も聞かせてください」

彼女はそんなことを話し始めてくる。だが俺は彼女から話かけられ、そして名前を聞かれても答えることはできないのだ。なぜなら俺が彼女に対して名前を告げるとそれは俺の正体を明かしてしまう事になるからだ。そう俺が何者かわかってない人に簡単に素性を話すことは出来ない。

「悪いけど君のことは知らないな」

「そうですか」

彼女は残念そうにしている。

「そういえば、貴方のご家族様があなたを呼んでましたよ。すぐに城まで戻ってきて下さい」

そう言い残すと彼女はその場から去っていった。そして彼女の言った言葉に違和感を感じたので、俺は自分の耳を疑う。

俺は急いでこの門を通って城まで向かった。そして、その城の入口には俺の家族とリゼッタと、そして先程のあの女の人の姿がそこにはあったのだ。そして、その光景を見て俺は自分の置かれている状況を理解するのである。その女性は、先程この国の女王だった人なのだ。そして今は、その人が、国を治めることになっているのだろう。そうでなければ俺を呼びつけることなどしないのだと、理解できたのである。俺も一応挨拶だけはすることにしたのだ。

「俺はユウトだ。君が女王だと言うことはわかったがなぜ俺は呼ばれたんだ? もしかすると、君はこの国の女王の座を奪う気なのかもしれないが、生憎俺はこの国を離れるつもりはない。そしてこの国に危害を加えようというならば俺にも考えがあるぞ」

俺はその女性に向かって挑発的な言葉を吐く。

すると、そこにいた人達は驚きの表情を浮かべ、俺のことを見つめてくるのである。その視線は明らかに何かを言っている目であった。俺は、俺の言葉に対して何かしら反応してくるのだろうと予測していたのだけれど、特にそんな反応をしなかったのだ。俺は、少し不思議に思ったのでもう一度だけ聞いてみる。

「えっと、もしかて俺をこの国から追放したいのか?」

そう言ってみたが何も返答がないのである。そして俺は俺を睨み続けている女性のことを凝視していたら、突然笑い声をあげながらその女性が話し掛けてきたのである。その言葉はとても綺麗で美しい声だったのだ。そして俺がその女性の事を観察しながら返事をする。

「何か可笑しいことでも有ったのか?」

その言葉を聞いてその人は俺の問いかけに答えてきたのである。その問いに俺はこう答えたのだ。

「俺の事を知っていると言うのならわかるとは思うが、俺は神から加護と神の能力を得ているんだ。俺がその気になれば君を消す事もできるんだぞ、それでもいいと言うんなら別に構わないが」

俺は俺を敵視するようなその眼差しと雰囲気が嫌だったので俺に敵意が無いことを示したつもりだったのだ。しかし俺のその態度に対して、彼女は俺のその態度に対して俺に攻撃の意思があるのかどうかを見極めようとしていたようであった。だからその確認のために、彼女は俺を城の中に招き入れたのである。そうしなければ俺に攻撃をされていた可能性もあったからであろう。そうして俺はその女が住んでいると思われる城へと入る。そこで俺は、その城の内装を見て驚いてしまうのであった。城の内部には大量の本が並んでいてその全てにはびっしりと文字が書かれていた。そして俺がこの国の書物の量に圧倒されている間に案内された場所は城の玉座の間であった。その場所にはすでに俺の家族と俺にリゼッタ、それにこの国の元王女であった人物が集まっていたのだ。俺が来るなりこの国の王はその人物の紹介を始めてきたのである。その人物の名前はレイナという名前であると自己紹介してきた。その人物の話を聞いてみると俺は驚いたのである。この人物が俺と同じ転生者で、この世界の前に住んでいた世界の住人だというのである。

俺がそんなに驚くとその人物から話をふられて、どうしてこの世界に俺が来たのかという経緯を説明される。そしてその時に俺は、その人物がこの国で何をしようとしていたのかを聞かされる。そしてこの国の国王もその話を聞いて納得している様子でもあった。

俺がこの国の王と話をした時に聞いた話では俺が、俺に殺されたこの国の王と、その妹の姫はこの世界で生きていてその妹は魔王としてこの国を支配しているそうだ。

そこで俺がその事に対して、どうしてこんな事をするのかと聞くと、その理由は復讐のためだと返ってくる。そして俺はその言葉に対して俺は怒りが込み上げてきてつい手が出てしまったのだ。その事に俺の体は、また勝手に動いてしまう。

そして気が付けば俺の手の中には剣の柄があり俺はその剣を握りしめて俺に刃を向けて来た相手に切りかかっていたのだ。そしてその行動にいち早く気がついた俺の妻の二人がその男に襲いかかっていた。その男の仲間も俺を殺そうとするが、妻達もそれに加勢し男達を倒していったのである。

そして俺はようやくそこで冷静になり事の次第を把握するのだった。どうやら俺達は嵌められたようで、この男は仲間に裏切られこの国に追いやられてきたらしい。だがその事を理解しているのはこの男と俺達だけだった。だが俺は俺に殺意を向けた相手を殺すつもりでいたため、結果的には殺してはいないもののこの男が生きていた事でこの国が救われたのは間違いなかった。

俺が何故このような行動をしてしまったかは、その男の目を見ればすぐにわかったのだ。それはその男の目は濁っていてこの世界を恨み憎しみを抱いているとすぐに感じ取れたのである。だからこそ俺がそいつを殺したところで誰も喜ぶことはなかったのだ。むしろ悲しむだけであると俺は判断したのだ。

しかしそれでは一体誰が俺を操っているのかという事が分からなくなったのだ。俺はとりあえずは、リゼッタがどうしてこの国に戻ってきていたのかと質問する。そしてリゼッタの口から語られた内容ではリゼッタもあの時のリゼッタとは違い俺を陥れようとしているわけではないということだった。だがその話の内容には、あの時俺と一緒だった子供達のことに関しての情報はなかった。そしてリゼッタは俺とこのリゼッタとの共通点をその説明してくれたのである。その話を聞くと俺はどうすれば良いかわからなくなる。

俺は今この城の一室でその部屋でこの国の女王からこの城での生活を提案される。そうして俺はしばらくの間、城で生活をしながらこの国に害を与えるような存在が現れないか監視するという仕事を任されることになる。この城で生活するのに必要最低限の物資は支給され食事も提供されるという破格の待遇を受けるのである。この城は外から見た以上に中はかなりの広さを持っていた。俺は城の中を見て回ろうと思いまずは外に出る事にした。俺は、この城の外に一人で出ることにしたのである。そして城から少し離れた場所に湖を発見した。その湖はかなり大きな湖のようだがその水面は青く透き通っていたのだ。

その景色を見て俺は綺麗な場所だと思ったのだ。そして、そんな場所に一人の女性が俺の方を見ながら俺に声をかけてくる。

俺はこの国に来た時から疑問に思っていたことがあるのだ。それはこの国で暮らし始めてもう数ヶ月になるわけで、俺には何もしていないのだ。なのになぜ俺が殺されないのかと言うことである。そして俺は、この城に俺を殺しにくる人間がいないことに気がつき始めていたのだ。俺は、もしここにいる者達に命の危機が迫っているのならば俺は迷わず助けに入るつもりでいた。しかし、俺の行動は全て空振りに終わったのだ。そんな事もあり俺は、この国の人達から信頼を勝ち得るべく何かをしてあげようと考えていたのである。だが、何が出来るだろうか。そう思いながら湖に向かって歩き続けていたら俺の後ろに人の気配を感じ取ることができたのだ。俺は後ろに振り返り俺が見た人物は先程から会話をしてくれていなかった人なのであった。その少女の顔を見た俺は思わず息を呑んでしまったのである。その人の顔には傷があったからだ。それも酷いもので顔の半分以上がその人の血によって赤くなっているように見えてしまうほどである。その人のことを見ていると突然俺に向かって話し掛けてきたのだ。

「あの、あなたにお願いしたい事があるんですけど」

その人が言ってきたことに対して断る理由もなかったので、了承したのである。

そして彼女は自分の事を紹介してきたのだ。彼女の名前"リゼッタ"というのだそう。そのリゼッタさんの話だと彼女達の国を襲っている奴らの討伐をして欲しいという話である。俺はもちろんすぐに引き受けたのだ。俺は自分の能力がどこまで出来るかを確認せずに依頼を簡単に承諾してしまうのだった。そう俺は、この時から後悔することになるのであった。そう俺はまだ自分の力を把握出来ていない状態で依頼を受けてしまったのだから。そうそしてそれが俺の最大の不幸の始まりなのかもしれないのであった。

俺の目の前にいる女性は自分の事を"リゼッタ•エルアシルム""といい歳はこの世界で言えば12歳で見た目通りの少女ではないのだそうだ。その容姿からは想像もできないくらい大人びていて、その雰囲気は落ち着いており、そしてなによりもその目である。その瞳から感じられるのは殺気でありその表情からは全くといっていいほど感情を読み取れないのだ。

そんな俺にいきなり話しかけてきた彼女は俺に向かって自分がどうしてここへ来たのかという目的を語ってくれる。しかし彼女はこの世界についてあまり詳しいわけではなかった。なので俺は彼女にこの国の現状を色々と聞いてみたのだ。

彼女は、元々この国のお姫様で魔王の妹でもあるそうだ。そう言われても俺は特に違和感など覚えずにその事実を受け入れる事ができたのである。

この国には魔王と敵対する組織がたくさんあるらしくその中でも一番大きい組織があの男、つまり魔王の右腕と言われているらしいのだ。そしてその組織は魔王に敵対している他の組織の者よりも圧倒的に力を持っておりこの国に何かあればその脅威に晒されることになると。そして魔王は今までにも何度か勇者にその世界を脅かす脅威から世界を守ってもらったことがあったらしい。しかしその勇者も寿命というものがありいつかいなくなってしまう時が来てしまったのだという。そして、今代の勇者もこの世界に現れなくなってしまったので困った状況になったのだと。

俺は話を聞き終えると、リゼッタから情報を集め始めることにした。まずは、俺のことをリゼッタに紹介する事にしたのである。

そして俺はリゼッタのことを紹介してもらうのだが俺のことを何故か睨みつけて来るのだ。俺が何をしたと言うんだ?俺はその女性に話を聞くために、城の中で生活するためにこの国に来ていることを伝える。するとその女性は急に取り乱し始めたのである。俺はその態度を見てかなり驚いていた。

彼女は俺にこう告げたのである。

「貴方がどうしてこんなところに!早く逃げないと私達はここで終わりです!」

俺はその女性の言っていることが全く理解出来なかったのだ。俺はこの世界に飛ばされてきてまだ日が浅くそんな事情を何も知らないのである。そんな俺が分かるはずもなく。俺はどうしてそんなに焦っているのかを問いただしてみると、どうやらこの城の周りには既に魔物達が囲んでいると、この国に俺達を逃がしてくれた人は、この城を守る為に犠牲になってくれたと教えてくれる。

そして俺に対してここから逃げた方が良いのではないかと伝えて俺に逃げ道を教えてくれようとしたのだ。だが、この国の王は、リゼッタに対してこのまま逃げることはできないと言ったのだ。その事にリゼッタはその王の事を殴りつけたのだ。

俺もそんなリゼッタの行動をすぐに止めるが、リゼッタはその言葉に耳を貸すつもりがない様子だった。俺はこの国で俺の面倒を見ようとしてくれている人物達を置いていく事はできなかったのだ。そして俺がそんな行動を取ろうとしていると。その行動を止めたのがリゼッタの夫だという。そして俺に対してその男を斬るなら一緒に自分も斬りなさいと俺にそう告げてくるのだ。俺は当然の事のようにその言葉に驚き拒否しようとしたら俺に攻撃をしてくる。俺は何とか剣の柄で受け止めるが、この男は強いと感じた。

そして俺はその男に何故俺に刃を向けたのかと聞くと。この男が俺を殺すためにやってきたのではなく、この男は、リゼッタが俺を殺す為にやってきたのだと思い込み勘違いをしていただけということが分かった。俺がその事を説明して誤解を解き、これから俺がどうすれば良いのかと聞くと。リゼッタは俺に助けを求めてくるのだ。俺はこの国に住む人達を守るために協力することを誓うと。俺がそう言うと、この男に、剣を収めよと言われる。この男の名前は、ダリスと言うらしい。そして俺は、俺を殺そうとしていた女、名前は確かリーザと言っていた。俺がその事を思い出そうとした時だった、この部屋の扉が開く音がしたのだった。その瞬間俺は咄嵯にその音の方向を振り向くが、遅かったのだ。そこには男が立っており俺の首に手刀を打ち込もうとしてきているのだ。俺はそれを防ぐが俺の腕から力が抜けてしまう。この男が俺に何をしたのか俺にはすぐにわかった。俺の体が勝手に動いてこの男の攻撃を防いだのだと。しかし俺はそれでは意味がなかったと思った。俺はこの部屋に来る前に既にこの部屋を囲うように魔方陣を仕掛けていたのである。俺はその男の足にナイフを刺そうとするが、避けられてしまった。しかしそれでも俺の魔法を解除するには十分である。その一瞬で俺は部屋から出るために窓を開け放ちそこから飛び出す。俺はこの城の庭に着地する。俺はこの城の庭に転移の魔方陣を設置していくがそれを俺は途中でやめるのである。そして、俺の後を追ってきた二人から隠れるようにこの城を脱出するのだった。俺のこの行動が正しかったのかどうかは分からない、もしかしたら、俺のせいでこの国が襲われることだって考えられるのだ。そして俺はあの時の自分の浅はかな行動を後悔することになるのである。そして俺はまだこの時の俺は知らなかったのだった。あの時あの男に使ったナイフは特別な効果を持つものだったことを、そしてあの時、この世界の俺とリゼッタが出会うことになることを。

そうあの男の名はダリウスと言うらしい。俺はこの国の兵士達と戦い始めた時、俺がリゼッタのところに向かう際にこの城の中に侵入してきていたという男、つまり俺の命を本気で奪いに来たのだ。俺もまさか自分の命を狙われることになるなんて思ってもいなかったので反応が遅れてしまい俺は自分の体に違和感を覚えるのであった。そうこの国に入ってからこの違和感を覚えていたがやっと何なのか分かったのである。そうこの体の異変は毒だ。しかもこれは、麻痺系のものだと思われる。そう俺はいつの間にか麻痺をかけられていて体の自由を奪われてしまっていたのだった。そう、だから俺はリゼッタを助けることが出来なかったのだ。そしてこの国の兵士に捕らえられ、俺は牢に閉じ込められることになった。そして俺は俺の意識がなくなるのを待つことにしたのである。

そうしてこの世界に来てから1日目が終わろうとしていたのであった。

目が覚めた時、この国の姫様は、俺に対して話しかけてきたのだ。その姫は俺に対してこう問いかけて来たのだ。

「あなたが私の父を殺しにやって来た刺客なのですね。私には何もできませんがあなたのことは許すことも見逃してあげることもできません。ごめんなさいね。父には逆らえなくて。」

俺は、彼女の話を聞いていた。そして彼女の父親のことを聞いた時に、俺の思考は停止してしまいそうになったのだ。彼女の父親が殺されたということが衝撃的すぎて。彼女は、俺の方を真っ直ぐ見つめて来てこう言ったのである。

「でも私はあなたが、悪い人でないことを知っているの。きっと、この国を救おうとしてここにやって来たんでしょう?」

彼女は悲しそうな顔をしていたが、俺はそれに何も答えることができなかったのだ。俺は彼女に向かって何か声をかけようとするのだが、俺は言葉が出てこなかったのである。俺も最初はこの国を救うつもりは無かったのだ。だが俺はこの国の人々に、助けてもらった恩がある、そう思うようになったので俺も、何か役に立てるようにこの国の為に戦っていこうと思うようになっていたのだ。俺はそう伝えることにしたのだ。そうしないと俺が殺したように思われてしまうと考えたからだ。彼女は俺の話を聞いてくれるようで俺にこう言って来たのだ。

「そう、やっぱり私の考えは間違っていなかったの。この国の事を考えての行動だったのでしょう?貴方にならこの国を託す事ができるかもしれない。貴方は今すぐにこの国の民全員に伝えてください。この国から逃げる様にと、私達はもう終わりです。そう遠くないうちに私達の国は滅ぼされる。それは避けられないでしょう。ですがせめてこの国の最後の時まで生き抜きたい。その一心でここまで頑張って来たのです。この国の民が誰一人死ぬ事なくその生を終える事が出来たならば、私もこの国のために死のうと思える。」

俺はこの姫の言葉に驚きを隠せなかったのだ。この姫はこんなにも優しい人なのだからと。そして俺はリゼッタと話せる時間を作ろうとしたのだ。そうするとこの城に、リゼッタのお付きの女性が現れ、俺のことを呼んでいたので俺はリゼッタに会う為にその女性の元へ向かうのだった。そしてリゼッタの元へ向かった俺はリゼッタに対して先程の話について聞いてみたのだ。そして俺にこう告げてくるのだった。

俺にリゼッタの夫を殺す覚悟はあるのか?と聞いてくるのだった。そして俺に殺すことが出来るのかと。俺の気持ちはこの世界に来てからは、この世界に来てすぐに感じたものと同じになっていた。

「リゼッタ、俺は君の事を愛してしまったみたいだ。君に俺の妻になってもらいたいと思っている。そして君はどう思っているんだ?リゼッタの夫は、この国の王の右腕と言われているんだろ?その男がこの国に戻ってくる前に俺は君に夫を倒さないと行けない理由ができた。俺は俺の家族や仲間がこの世界にいる限りどんな敵からでさえも守り抜く。たとえこの国そのものを滅ぼす事になったとしても俺はこの国を守り通すよ。そしてその夫がこの国に戻ってきた時にはこの国が無事であれば俺が守ったという証明になるはずだ。その男は今何処にいるのかが問題だ。おそらくこの国のどこかにいるはず。俺達は、今その男を探す必要があるんだ。リゼッタ、俺に付いて来てくれ。俺と一緒にリゼッタの夫の居場所を特定してくれ。そしてその男のところへ案内して欲しい。頼めるかリゼッタ?」

俺が真剣にそう話をしているとリゼッタも俺にしっかりとした目線を向けて俺の目を見てはっきりとした声で告げてくるのだった。

「もちろんだよ!リクが一緒に居てくれるのならとても嬉しい。こんな国でずっと暮らすくらいならリクの側で暮らせた方が絶対楽しい。私は、貴方と共にいられるのならこの国を捨てることになってもいいとさえ思っています。その事は後で詳しく話し合いましょう。今は、その前にすることがあるわよね?この国のお城の中には、その王の息子と娘のリゼッタの両親もいる。そしてその2人の夫であるリゼッタのお父さんがこの国を守るために必死で戦ってくれているんです。だからまずは、みんなをここから救い出すことを考えるべきだと私は思います。そしてその人達が安全に生活出来るようにしなくてはならないと思うの。それが一番の目的ですよね?」

俺はリゼッタのこの発言に驚かされる。そしてこの人はやはりリゼッタの父親と同じような強さを持っていると感じていた。

俺が驚いた顔を見せてしまっていたせいかリゼッタは恥ずかしそうにして、下を向いてしまったのだ。そんな仕草を見せる彼女が可愛くて仕方がなかったのだった。そして俺達はリゼッタが言うこの城の地下に幽閉されている人たちを助けるために地下に向かったのである。そして俺達がこの国の人達を解放しようとした時にその男がやって来たのである。

俺はその男の攻撃を間一髪避けることができたがこの攻撃を避けることには成功したのだが、この男によって俺はリゼッタが人質になってしまったのだった。そうしてこの国の兵士達にリゼッタを渡そうとする男を止めることができずリゼッタは連れ去られていってしまったのである。

そして俺は、その男に連れて行かれてしまったリゼッタのことが心配になり俺は焦りまくっていた。しかしリゼッタを助けるにはこの男をどうにかしなければ無理だという判断に至り、俺はリゼッタを助ける為に男の目の前に立ちはだかるのであった。そしてその男の攻撃を何度も受ける事になる。その攻撃を受けているうちに、俺はこの男の実力に気がついたのだった。そして俺の予想では、俺は勝てない相手だということもわかった。

俺もそうそう簡単に殺されるような弱いわけではない。俺が今までどれだけ死線をくぐり抜けて来たと思っているんだ。そう、その男がどれほど強いかもわからない相手には俺は決して負ける訳にはいかないのだ。俺が絶対に勝ってやると言う気持ちで立ち向かっているとリゼッタが、俺の元に駆けつけてきてくれたのだった。そしてリゼッタの父親が、娘を助けてやって欲しいと懇願してきたのだ。リゼッタの父親も俺に期待を寄せてきている。俺は、それに応えたかった。だがこの男を倒すにはどうしても、あと少しだけ時間が足りなかったのだ。俺もリゼッタをこの場から逃がしたかったのだがそうもいかなくなっていた。俺はその状況の中で必死に考えるのだった。そして俺はこの状況を変えれる方法が1つだけある事を思いつき俺は、この国の兵士と戦っている最中にそれを思いついたのである。俺は俺に向かってくるこの国の兵士に対して、リゼッタに近づかないようにするためにこの兵士の攻撃を避けながら俺は、自分の持っている剣に魔力を流し込んだのだ。そして俺はその兵士にその剣を振り下ろすと斬撃のようなものを飛ばし、その兵士を壁まで吹き飛ばしたのである。俺はこの技でこの兵士達を吹き飛ばせば、俺達のことを見逃してくれるだろうと考えていた。そう俺はこの技を使えば兵士達に被害が出ると思っていたので俺は自分の考えていた通りになっていることを確かめる為、俺がこの城の壁の方を見るとそこには巨大な亀裂が入っていたのだ。俺はこの結果に満足してこの男との戦いに専念することにする。そして俺が戦っている相手がこの国の王であることに気が付き、この国の王に対して俺は戦いを挑んだのである。そしてその王は、リゼッタに俺のことを任せてきたのであった。

そうしてこの国の王と戦うことになったが俺の力を持ってしてもこの王から一撃を食らってしまうことになる。

俺はその後何回か同じことを繰り返すことで、俺はなんとかしてその王からの一撃を回避することに成功していたのだ。だが俺はその王の圧倒的なまでの実力の前に次第に劣勢を強いられていったのであった。そうして、ついに俺は王にとどめを刺されそうになるが俺はギリギリのところで回避することができたのである。

そしてこの瞬間から、この国の王は俺の仲間となり、この国の民を守る為に力を貸してもらうことになってしまうのだが、その時の俺はそのことを知らずにいたのである。そして俺はこの国の住民にリゼッタが俺の元に来て助けに来てくれたことを説明してから、俺達は、リゼッタの案内の元リゼッタの父と母を安全な場所に避難させるのであった。そして俺達は、急いで城に戻ることになり、俺が考えた方法を使ってリゼッタを救出する為に行動を開始していたのだ。俺はこの方法で成功するかどうかなんて考えてはいなかった。俺が出来る事を全部やった上でリゼッタを救い出せると信じて行動するだけだったのだ。そして俺達はその作戦を実行するための準備をしていたのだ。

そして俺達は、この城の中に入ることができるように、俺が考えた作戦を遂行したのであった。そして俺はこの城に侵入することに成功する。俺達の目的が果たせるのか、そしてこの城を脱出することが出来るのかはこれからの結果にかかっていた。そして俺達はこの城から逃げ出す為の最後の作戦を実行に移すのであった。

そして俺達は、この城から逃げ出す準備を整えてからリゼッタを救い出し、無事に城から出ることに成功したのであった。

「はあ〜、良かったぁーこれで俺の任務は完了だな。リゼッタ、もうすぐでお前が言ってた奴がこの国に戻ってくるらしい。もう俺達はこの国を脱出した方がいいと思うぞ?この国を出るまでは安心できないかもしれないが俺がいるんだ、この国から出てしまえばこいつらは、何もすることが出来ないはず。そして俺達が逃げる時間を稼ぐために、俺はそろそろここを離れようと思ってるが大丈夫か?」

そう俺が聞くとリゼッタはとても寂しそうな顔をするがすぐに笑顔に戻り俺に抱きついてくるのだった。そしてリゼッタに抱きしめられた状態で俺はこの国を出るための手段を考えることにした。そして俺とリゼッタはすぐに国を脱出することが出来るのだがリゼッタが心配で仕方がない。なのでリゼッタが心配だという理由でこの国を脱出する事を遅らせるわけにはいかない。そこで俺がこの国でやり残した事をやっておかなければならないと思い俺のこの世界における初めての仲間でもあるこの国に戻ろうと提案してみたのだった。俺はリゼッタに、俺の事を仲間と言ってくれていて嬉しかった。リゼッタは最初戸惑っていたがこの国の事を気にし始め、最終的には、この国に残るとまで言い始めたので俺は、説得をして一緒に国を出ようと約束をさせ、俺のこの世界においての最初の仲間と別れる事になってしまったのであった。俺は、リゼッタが俺についてきてくれればこの国から一緒に出る事もできたがそれは俺にはできなかったのである。

リゼッタが俺と離れたくないと言い出した時は、俺はリゼッタにかなり動揺してしまったがリゼッタもこの国の人達の事が気になるようで結局は一緒に残ってもらうことになった。俺がリゼッタの事を愛おしく思ってしまい、俺の胸の中にリゼッタを優しく引き寄せてしまうと、リゼッタは俺の腕の中で涙を流してしまったのである。そんな状態のまましばらく時間が経ちリゼッタは落ち着いていた。俺はこの国の人を見捨てることはできなくてついこの国に留まることを決めてしまった。でもリゼッタを俺の手で幸せにできる自信はないからこの国に残った方がよかったと思う。俺はリゼッタと離れたくはなかったがこれ以上リゼッタと離れていてはいけないという感情に囚われていたのは間違いないことだと思う。リゼッタの父親は俺が今言った事に了承してくれていた。そして俺はリゼッタと一緒に俺が初めて訪れた町に来ていた。リゼッタの両親はこの国が心配らしく、リゼッタとこの町に来る事を拒否しておりリゼッタも最初は俺の提案に反対していたが俺が強く勧めたことで納得してくれたのである。

俺はこの世界でやりたいことがまだまだ沢山あるからこんな所で立ち止まってはいけないんだ。それにまだ魔王も倒していないことだからな!だから俺はリゼッタと別れた後すぐに町の人にリゼッタの居場所を聞いてみたところやはりこの国に滞在していることがわかった。

それからは毎日リゼッタに会いに行っていた。だが、俺はリゼッタの両親や、リゼッタの知り合いの人たちから色々と聞かれていたのである。そう、俺はこの国の住人に歓迎される存在ではないのだろう。リゼッタの家族にもあまりよく思われていなかったので俺は、この国での生活に嫌気がさしてきていたのでこの機会にこの国から去ろうと考えていたのである。俺はそう決めてからは行動を起こすのにそれほど時間は掛からなかった。そうして、この国は滅びることになったのであった。俺のせいで。そして俺はリゼッタと共にこの世界を旅することになってしまったのだった。

この世界に来た俺はまず、俺とリゼッタが住んでいた村に向かっていたのだ。理由は、この世界にどんな食べ物があるのかを確認するためである。

リゼッタに、美味しいご飯を食べさせたいしね!!そして俺とリゼッタは村の近くにある森に向かって進んでいたのである。俺とリゼッタは二人で仲良く話しながら歩いていて、俺は、この世界に来れて本当に良かったと心のそこから思っていた。なぜなら俺は今まで、この世界のどこかにいるはずの元の世界の仲間達を探していたがこの世界にはいなかったからだ。

そうして俺とリゼッタは森の中に入っていき、ある程度進んだところに開けたところに出たのだ。そこには木に実っている、桃の様な果物を食べた痕跡があった。俺はそれを見て驚いた。そう、この世界に桃があることに俺は感動を覚え、俺も早く食べてみたいと思った。そう思いリゼッタも俺と同じようなことを考えているだろうと推測した俺はリゼッタにこの近くに人が住んでいないか探してみようとリゼッタを誘ったのだ。そうするとリゼッタは、俺に近寄ってきて、リゼッタも人の気配を感じていたらしいのだ。俺はリゼッタに案内してもらうことでリゼッタが住んでいる村にたどり着けたのである。リゼッタの住む村はかなり小さな村で人口は30人程度だったのだ。俺は、リゼッタの両親がこの村に暮らしているかを確認してみることにした。俺とリゼッタは家を訪ねたのだが誰も出てくることはなく、俺とリゼッタは困っていたのだ。そう、俺達二人は完全に迷子になっていたのである。どうしようと思っていると、俺達はあることに気が付いたのである。俺達二人が寝泊まりするところが無いと気がついたのだ。俺とリゼッタはこの村は小さいから泊まれるような場所もないのではないかと思っていたが、まさか宿さえ無いとは予想外だったので俺は焦ってしまった。俺はなんとかしなければと思っていたらリゼッタがいいアイデアを思いつきそれを実践して見ることにしたのだ。リゼッタが言うにこの村では物々交換で生活をしていると言っていた。つまり、この村は現金というものが存在しないということだ。

俺とリゼッタはお金の替わりになるようなものを持っていなかったから俺は、この村から何か持って帰るしかないと思い、俺達で出来る範囲のことで、役に立ちそうなものはないかと考えた。そう考えた結果俺達が持ってきた食料が一番価値が高いと言うことがわかりました。そこで俺はこの村の人達を驚かせる為にリゼッタを連れてこの村に一軒だけある大きな建物に忍び込んだのである。そう、そこは俺達の住んでいた家よりも遥かに大きかったのだ。そして俺達は家の中に入るとすぐに俺達は食料を探し始めた。だけど残念ながらこの家にはほとんど何もなかったので収穫は何もなかったのだ。なので俺は外に出てリゼッタと相談する事にしたのだが、ここで一つ問題が発生したのです。なんとこの家は無人では無かったらしく、外から大勢の声が聞こえてきたのだ。俺はリゼッタと目を合わせて急いでこの場所を離れることを決めた。そして俺達は走り始めたのだ。しかし、俺達はこの村の構造を知らない為何処に逃げればいいのか分からずにいたのだ。なのでとりあえず人気のない方へ走って逃げていくしかなかった。

俺はリゼッタがこの村の地理を把握していることを期待して俺はこの村を脱出できるように最短距離の道を選んでいると突然目の前からリゼッタを襲おうとしている盗賊が飛び出してきた。俺達は盗賊に襲われる瞬間に間一髪のところで盗賊が持っている剣を避けてその攻撃を避けることができたのである。俺はすぐにその攻撃を繰り出した男の後ろに移動していた。男は後ろから誰かが迫ってきていることに気づいた様子だったが時すでに遅し。俺が持っていた鉄でできた棒を使って男の意識を奪うとすぐにリゼッタの手を取り俺はリゼッタの手を離さずにその場を離れた。リゼッタは最初驚いていたが今は俺が手を掴んでいることを気にしないぐらい集中しているようだ。それからしばらく走っていた。そしたら急に人通りが多くなってきたのである。なので、俺とリゼッタは近くの路地に潜り込みこの道を通った時に隠れられる様な場所を必死に探し始めた。そしてちょうど良さそうな感じの場所を見つけ、リゼッタを誘導してリゼッタを中にいれた後俺は少し時間が経ってから自分も入っていくと、俺はそこでリゼッタと別れるのであった。そう、俺とリゼッタには別々の場所に逃げた方が良いという判断で別れたのだった。俺にはこの世界でやることが沢山ありリゼッタに構ってあげることができないかもしれないと心配だったのだ。そして俺は、この国の人から情報を集めて元の世界に帰る方法を知ることにしたのである。リゼッタのことは心配だが、リゼッタも一人で行動するよりは、仲間と一緒に行動した方がいいだろうと判断したのだった。リゼッタの両親に頼まれたので俺としてはリゼッタのことを仲間にしたいと常日頃から思っていたので丁度良いと俺は思ったのだ。俺はこの国の人と話すのは正直面倒臭いと思っていたけどこの世界で生き残るためには仲間が必要だと思い仕方なく俺はこの国の住人に声を掛けていたのである。だがこの国の人達は全員俺に対して敵対的な態度を取っていた。だからこの国はもう俺の敵になっていると思う。この世界が元居た世界と同じなら勇者召喚を行った国に魔王が現れると言われている。だから俺はリゼッタのことを心配しながらもこの国の魔王討伐に精を出すのであった。

私は、この国の人達から隠れるように森の中に入りこの村の人達からは見えない位置にたどり着くことができていたの。

私がなぜあの人から離れたかというと、私も彼と同じようにこの国を出て行くことを決めていたからです。この国を出た後に私は彼を追いかけて彼の隣にいることを目標に旅に出ようと考えていました。

私は彼と出会ってからとても幸せだと思っています。こんな感情になったのは初めてだから、これからもこの気持ちを忘れないように大切にしようと思っているんです。でもそんな私の決意は一瞬にして壊されることになってしまいました。この国を魔族から守ってくれた救世主様は魔王を倒す使命を帯びているらしいとこの国で話題になっていて、しかもこの国が襲われたのは彼が現れたことが引き金となっているという噂まで出回っていてみんなに恐れられてしまっているんです。そう、だから彼は、この国から出ようとしているんですよ。この国から出る方法は、他国に行くか、または国外に逃げるしか方法がありません。そして今の状況だと国外に出ることはかなり難しいでしょう。だってこの国には、勇者召喚の加護を受けている人が殆どですから。

それにしてもおかしいのはあの勇者さんはどうやってここにきたんでしょうね。そう、私は気になっていたのです。いくら勇者召喚が行える加護があるといっても、異世界から召喚することはできないと聞いていました。それは、勇者の加護の所持者が召喚を行うことが出来るのはこの世界にいる人物だけなのです。なので、異世界人であるはずの彼にこの世界の人間が干渉できないはずだと思っていたんだけど、まさかこの世界に来てすぐだったら干渉ができるとわかった時の衝撃は計り知れませんでした。

とにかくまずは、情報収集をしてみることにしましょう。この村の人に聞いた話によると、彼は、最近この町に来たばかりのようなのよね。そしてその時に魔物に襲われている所を助けたらしいのです。この村の人たちの話から分かったことはこれだけだったので、もう少し調べないとわからないわね。とりあえず、今日はここで休みましょうか。そして私は目を瞑ったのよ。すると次の日の朝には私は知らない場所にいて、そこには私を襲った男がいてその男が昨晩の出来事を説明し始め、そうしてこの国は腐っていると気づいた時に、私の家族は皆殺しにされていたと知った時はショックで頭がどうにかなりそうだったのよ。でもそんな中私は、あの人に助けられて、この世界に連れて来られてよかったと思えた。もしあのまま、殺されていても仕方がないと自分で思っていの。それほどまでにこの国の人々は酷い扱いを私にしてきたのだから。それでも、助けてくれた恩は忘れることなんてできません。

「んっ?ここは?」

俺は起き上がるとすぐに周囲を見渡してここがどこなのか確認することにしたのだ。そして、俺はリゼッタのことについて思い出していた。そう、俺とリゼッタは別々で逃げようと決めたのだ。そうしないとお互いの行動に制限をかけてしまうからだ。リゼッタがどこに居るか分からないけれど、リゼッタのことだ必ず生きている。

そう思い、リゼッタを探すことにしてみたのだ。リゼッタの居場所を見つけるのはそれほど苦労しなかったのだ。なんせ俺が住んでいる町よりも大きなこの国なのだが俺の知っている場所がたくさんあったからだ。

そうやって、リゼッタを探していた俺はとある部屋の前にたどり着いたのである。そして俺は中の様子を覗こうと思ったが中に入ることができなかったのだ。なぜなら部屋のドアノブに触れようとしただけで俺は体を動かすことが出来なかったのである。そして俺は気が付いた。これはスキルによるものだと、俺はそう考えたのだ。つまりは魔法である可能性が高いという事である。俺がこの世界に飛ばされてきたときに持っていたスキルは二つだけだったのだ。俺がその二つのどちらかを使っているのかはわからないけど。

俺はリゼッタが俺を殺そうとした時のように俺を無力化しようとスキルを発動したと思われる。しかし、この扉の向こう側にはリゼッタが俺を殺すために待ち構えているという可能性があるのだ。俺はどうするか考えていたらリゼッタがこの部屋に入っていった。そしてその部屋に入ってきたリゼッタを見て俺は驚くのであった。

「なんだよその恰好は、何がどうなっているんだ!?」

俺はこの現状をうまく把握することができずに混乱してしまったのである。リゼッタが着ていた服は血まみれでボロボロになっていた。俺はどうしてこのような状態になったのかさっぱり分からず困惑するしかなかった。そして、その姿を見て俺が何もできなかったのが情けなく思う。リゼッタにここまで怪我を負わせるほどの相手とはどんな奴だったのだろうかと俺は疑問に思った。そして俺はリゼッタを抱きしめて回復魔法のスキルを使ったのだ。そしてすぐに傷口は塞ぐことができた。リゼッタの意識もすぐに取り戻すことはできたが、俺と離れないようにしっかりと手を繋いでから俺達はリゼッタが落ち着くまで、この屋敷の中で過ごすことに決めたのであった。

俺達がリゼッタが落ち着きを取り戻した頃に、俺はあることに気づいたのだ。

俺達が閉じ込められているこの部屋には何か結界のようなものが張られており外からの攻撃や進入を防ぎこの部屋の中から出ることができないようにされていることがわかったのだ。この部屋から出るにはリゼッタの力が必要なようでリゼッタが何とかできるかなと思い聞いてみたところ、この壁を破壊できるのは俺とリゼッタともう一人の仲間だけのようだった。俺達以外の人間が入った場合にはリゼッタの仲間ではないと判断されると侵入者とみなされてしまうらしい。なので俺が他の人をこの空間に入れないでほしいと言うと俺達は外に出ることができた。そして俺は、この世界について色々と聞きながらリゼッタと一緒に旅をすることになった。

そして俺は今、目の前に現れた男と戦っているところだ。

そう、俺達の目の前に現れたのは、勇者と呼ばれていた青年だったのである。俺と同じような黒髪と黒い瞳をしていることからおそらく日本人であろう。俺はこの男のステータスを確認したのだ。そしたら俺は思わず笑ってしまった。だって、俺のステータスとあまりにもかけ離れていたのだ。だからつい笑いたくもなるだろう。俺と戦えば絶対に死ぬのだから笑える余裕もあるだろうね。それにこいつの加護の能力も予想通りだった。加護の名前も【勇者】となっていたしね。そしてこいつは他の人には加護を使わなかった。俺に対しては使っていたけどね。加護を使うたびに魔力を消費していくからあまり使いたくないみたいだった。だけど、俺はそれを聞いて安心したね。これで簡単に殺せるって確信ができたからさ。だってあいつは、俺に対して使う加護に躊躇することなく攻撃を加えていた。俺はそれがおかしくてたまらなくて、俺は腹を抱えて笑ってたね。そんなことをすれば自分に隙が生まれているのにも気付かない馬鹿だとわかっていたのにさ。そして俺は、勇者にトドメをさすための準備をしたのであった。俺が、勇者に近づいていっても、勇者は何もしてきていないかった。そう、ただ呆然と突っ立っているだけであった。そして、勇者の首に手を伸ばし、首を掴むとその勇者の体が徐々に光を帯び始めていた。それはまるで勇者自身が輝いているような光景だったのだ。だが、それと同時に俺も体の力が抜け始めて膝から地面に崩れ落ちた。そこで俺は自分の体に起きている変化に気付いたのだ。それは体の内側から光が発していて、体全体に光の線ができ始めているということだった。俺はこの症状を知っている。この世界の加護を持っているもののみが発症している状態だと言われている病なのだが、俺にはなぜそんなことが起こっているのかがわからない。それに、俺はこの世界に来たときから既にこの状態だった。

俺はこの現象を見たことがあるので俺はその病気の名前を思い出せたのである。その言葉を口に出して俺は自分がその病を患っていることに確信を得たのであった。そう、これは魔族殺しの病と呼ばれていてこの世界で唯一魔族にのみ発症することが確認されておりこの世界での最悪の不治の病と呼ばれているのである。そしてこの世界では俺と同じ人種である人は全員死んでしまいこの魔族と獣人の血が入っている混血人という亜人が残されてしまったのであった。しかし彼らは元々魔族との繋がりを持っていた者達の末裔であるため魔族に殺されてしまったのだ。そのため魔族に復讐するためだけに生き残っているらしい。ちなみに魔族を殺し続けた人間は、魔族をこの世から滅ぼすまでは決して死ぬことはないとこの国の文献に残っている。

だから俺は死なないために魔族を殺して、そしてこの世界を平和にする義務があるのだとこの話を聞いた時に思っている。そして今から、この勇者を倒さないといけなくなったのだ。そして勇者はついに、加護を発動させたようだ。加護の能力は恐らくだが、全ての加護の力を使用することができるのだと思う。なぜなら勇者は加護を発動させなくても勇者と呼ばれるほどの強さだったからね。それに勇者が加護を使った時と使わない時の違いがほとんど無かったからね。でも加護の力はやはり強いね。俺が今までに使ったことのある加護が使えるようになったわけなんだし。そうして俺達は戦いを始めた。まず最初に攻撃を仕掛けてきたのは勇者ではなくて勇者についている従者だった。俺は、その攻撃を防いで、反撃を行おうとしたが、なぜか剣が動かなくなってしまっていたのだ。そのことに驚いていたら俺はその男に殴られて吹き飛ばされていた。その時の俺の表情はとても悔しそうにしていたに違いないと自分で思っていた。そして俺はこの世界に召喚されて以来ずっと使い続けていたスキルを俺は初めて使用したのだ。そう俺の持つ加護の中で唯一の弱点となる固有技能【全知全能神の神眼】を発動したのであった。

俺はこの男が持っている固有技能の力が知りたかったので試しに使う事にしたのだ。するとこの男はとんでもない固有技能を所持ているということが分かったのだ。

そしてその男は、俺の固有技能の力を知ってしまったのだ。そうこの男は全てを知ったのだ。この男が何のために勇者として俺を殺そうとしていたのか全て知る事に成功したのである。この男は自分の加護を使いたいがために勇者になり、そして俺のこの世界に来る前の人生とこの異世界での生活を詳しく知ってしまっていてその情報を手に入れることができるというこの世界の加護を悪用しようと企んでいたのであった。そしてこの男の目的は俺を殺すことであったのだが、その理由は俺が持っているはずの固有技能を奪うことで手に入れようとしたのである。そう俺を殺す理由はただそれだけの理由だったのである。俺は、この男の目的が分かっていてもなお俺は、殺すことにした。

俺にはこいつを殺す必要があったからだ。なぜなら俺はもうすぐ死んでしまうかもしれないからだ。俺はそう思ってすぐに勇者を殺すことを決めたのである。俺は勇者に向かって攻撃を始めようとしたが勇者が加護をすぐに解除して逃げ出そうとしたため逃げることができなくなってしまった。そして、俺と勇者が攻防を続けているうちに勇者の加護の能力が弱まり始めたので勇者の動きがだんだんと鈍くなり俺が有利になっていったのであった。俺は、勇者の攻撃を避けたり受け止めたりするだけではなく、時には俺の攻撃が当たるようになっていったのだ。

そう、俺が攻撃することによって少しずつだけど勇者がダメージを負うようになってきて、俺の攻撃は、だんだんと勇者に当たり始めていたのだ。そして俺の攻撃は勇者にクリーンヒットしていき勇者を倒すことができそうになった時俺と勇者の間に割って入ってきた存在がいたのだ。俺はその存在を知っていた。そして、そいつこそがこの物語に出てくるラスボスのような奴なのだと思っていた。そう、こいつは俺が魔王を倒して英雄になってから現れた人物なのだ。名前は覚えていなかったけれど、こいつが俺の邪魔をしてきてなかなか倒すことができないんだよな。そして俺のこの世界での最強格の一人でもあり今の俺じゃ勝てないほどの強者なのである。俺はこの目の前にいる存在にどうやって勝てばいいのか分からずに困りながら戦うことになったのである。

そして俺とそいつは戦闘を始めることになり、俺は、勇者とそいつとの戦いを見ながら戦っていたがその戦いを見ていることに集中しすぎて、俺と勇者が二人に見えている状態でそいつと戦い続けることになってしまったのである。そしてその状況で勇者は俺を殺すことに成功したと思ったのか嬉しそうな顔をして俺の方を振り向いたが俺の姿が見えていないことに困惑する表情を浮かべていた。

俺にはそんなことを気にしている暇はなかったのだ。そいつが俺のことを殺そうとしているのだ。しかもかなり怒っている様子だったので早く何とかしなければ本当に殺される可能性があったからである。俺は、必死になって、スキルを繰り出したがそいつも俺の攻撃を全てかわすか弾き返してくる始末だ。俺は完全に防戦をすることしかできなかったのだ。だが、俺は諦めなかった。俺はここで諦める訳にはいかないのだと思っているからね。そして俺はある一つの方法を思いついてそれを実行することにしてみたのだ。それはスキルの使用を辞めたということである。そうすれば俺の命を奪おうとしてくる相手は攻撃をするときに必ず大振りの一撃を入れようとするはずだ。そこを狙うことにしたのであった。

そして俺の考え通りに事が運べば、俺はそいつから攻撃を食らうことなく倒すことができたはずなのだ。しかし、この行動が失敗だったのだ。そして、この考えのせいで、俺は窮地に追い込まれてしまったのだった。そして、勇者が死んだことで勇者についていた従者達が暴走し始めたのだ。そして俺達はこの屋敷の中で魔物と化して俺達に襲いかかってきたのである。そしてそいつらは、俺達が戦っていた勇者の味方だった者たちなので、俺は躊躇することなく殺すことにしたのである。しかし俺達の仲間は誰一人いなかった。なので俺達はこのままだとやられてしまうと思い外に出ることにしたのだ。屋敷の中に閉じ込められている人達を助けるためだね。俺とリゼッタはその人を探しに行き外に出るために廊下を走っているとそこには先程の従者たちとは全く違い桁違いの力を秘めた魔物たちが存在していたのである。俺はこの強さを見てこの先にいるものがどんなに危険な存在であるかを理解できてしまい、俺は急いでその場を離れようとしたがその前に俺の前に何者かが立ち塞がり攻撃を開始してきたのである。俺は咄嵯に避けようとしたが体がうまく言うことを聞いてくれなかったのだ。

だから俺に攻撃が直撃してしまったのであった。だが俺にその攻撃を受けた時の衝撃はあまりなかったのだ。俺は何が起こったのかわからず動揺を隠せなかった。そう俺を攻撃したのは先程まで殺し合いをしていた相手の方であったのだ。その人物は、俺のよく知っている人物だったのだ。そう俺を殺そうした敵の正体は俺の育ての親でもあるあの男、いやその男の息子だったのである。

俺はなぜその男がここに来たのか疑問でいっぱいになっていたがそんなことを考えても仕方がなかったのでその男の隙だらけになったところを全力で切りかかり倒した。その男は俺の渾身の一太刀を受けてそのまま地面に崩れ落ちていった。俺はこれで戦いが終わったと思って油断していたがそう簡単に終わることはなかったのである。俺が男にトドメをさそうと近づこうとした時、俺がさっき倒したばかりのはずの男が起き上がりそして俺の首に手を伸ばしてきて俺の首を掴み俺の首を絞め上げてきたのだ。

「どうしてお前は死んでいないんだ?!確かに俺はお前を切ったはずだ!!なのにどうして!?」

俺は混乱していたので思わずそんなことを叫んでしまったのだ。

すると男が答えてくれていた。

どうやら、こいつの能力の一つに自分の体を仮死状態にすることができる能力があったらしくその能力を使われたことにより俺は死んでいると勘違いしてしまっていたのであった。しかしそれでも俺は自分の命を守るためにも、そして仲間のためにもこの男だけはここで倒しておかなければいけなくなったのだ。

俺はまだ自分が死にたくないという欲がある以上この男を倒すことに決めたのである。そして、その覚悟が伝わったのか、男もまた本気を出してくるのが分かったのだ。そう、この瞬間から本当の死闘が始まったのだ。俺は今から、俺を殺そうとしてきた奴の力をこの目でしっかりと見てそして対抗するために今までよりもさらに強くなろうとしているのだ。俺はそう思って俺を殺そうとした男を見たのである。

そして男の戦い方がわかってきたので俺のペースに持っていけるようにもなったのである。男は俺が思っていた以上に弱くなっていたのである。その理由としては俺がこいつと戦うために俺が使える加護は全部使ったという理由もあるだろうがそれ以外にもあったようだ。

この男は自分の持っている固有技能の力によって自分と全く同じ分身を作り出せる力を持っているのである。そしてその固有技能は、その固有技能を使っている間その者の体は仮初めの実体として作り出すことができるらしいのだ。だがその代わりとしてその者の力は半減されてしまうというデメリットがあるが、男はこの男と同じような力を持つ者を作ることが可能なのである。そう、その固有技能を使えば男と同等の戦力を持つ者が作れるということであり、それを使って男はこの場に俺を殺しに来ているのであった。

俺はそう思い、まずこの男と同じことができるようにならなければならないと考えてこの男が持っている技能の習得をしようとしたのだ。その男は俺の持っている技能を奪いたいのか分からないがとりあえず俺のことを全力で攻撃しようとして、その攻撃をなんとか回避できたのだがその後俺は、男から逃げるのに精一杯で、攻撃に転じれないまま逃げ回っていたのだ。

俺とこの男との戦いが始まってまだ時間は経っていない。でも俺にはもう時間が残り少なくなっている。俺に残された加護の力があまりにも少ないからだ。それに、加護の力で生み出した分身体は俺の意思とは関係なく動いてしまっているようなのでそのこともかなり影響が出てしまうと思うのだ。だからこそ俺は、男の動きをどうにか見切って攻撃を当てるという手段を取らなければならなかった。そのためにはやはりこの固有技能を手に入れるしかないと考えたのである。

俺はそれから、その固有技能を習得しようと試みることにした。その方法は至ってシンプルでその男が使う動きを俺自身が覚えてそして再現できるようにしてみるというものだったのだ。

俺はそれを実行に移したのだ。しかしそううまくいくものなのか、と不安ではあるけれど、やって見るしかなさそうだと思った。なぜなら他に方法が無いからね。俺は、それからしばらくその男から距離を取って、そしてその男の動きをできるだけ細かく真似することにした。

俺がやろうとしていることはつまり、男の行動を完璧にトレースすることで俺は男と同じように戦えるようになるかもしれないという考えだった。俺は、この考えで上手く行くかはかなり微妙ではあるが試すだけやってみることにしたのであった。

そしてその男に俺の考えがバレたらおそらくだがすぐに対策を立てられてしまうかもしれないがそんなことを気にしている余裕など無かった。なぜならもう既に時間が無くなってきていたので、俺はすぐに行動を開始したのだ。俺の行動を見てその男は何をしているのか不思議そうな顔をしながらも攻撃を仕掛けてきたのだ。俺に向かって。

そして俺は、そいつの攻撃をかわしたり防いだりしたのだがそのせいでなかなか反撃することができない状況になり始めたのだ。俺はこのままじゃ不味いなと思って少しの間、そいつの足止めをすることを決めたのであった。そう、俺はそいつに隙を作る為にあえて攻撃を受けることにしたのであった。俺はそいつの攻撃を体に受けると激痛に襲われ、そのまま意識が途切れそうになる。俺は、何とか持ちこたえようと努力をしたのだが、その時には俺の限界が近くなり始めていたのだ。そして俺は、その痛みに耐えきれず気絶しそうになっていた。

俺がその男と戦っていて気づいたことがあった。それはそいつの弱点だ。こいつは強いけど弱点はたくさんあってその一つがこの体の持ち主の精神が弱いことだったのだ。その男の本体と俺が戦ったときにそのことが分かり俺は、俺の肉体の耐久値を犠牲にしながらその男が精神的にも追い詰められるよう仕向けてみたのである。するとその男は予想通りに精神を蝕まれていくようで苦しんでいた。俺はこのチャンスを逃すまいと思い、俺の加護の中でも最も殺傷能力の高い【殺戮兵器】を発動させたのだった。これは相手を殺してしまえばそこで戦闘が終了すると言う加護なのであまり使わないようにしていこうと思っていたのだ。だが、今回は仕方がないと思い使って戦闘を終了させることに決めたのである。俺はそうしてその男の息の根を止めることに成功した。俺はその戦いでかなりのダメージを受けたのだ。そしてその傷を治療している最中に俺はその男の能力を奪うことができないかと試してみた。

その結果は成功だった。

なんと俺が男から奪ったのはその男が持つスキルの一つだけで他には特に変化はなかったのである。しかしスキルを奪ったことによって俺はその男の記憶の一部を知ることができたのだ。そしてその記憶の中に、俺にとって信じられないものがあったのであった。その内容はこんな感じだ。

俺はある男のスキルによって仮初めの存在を作り出している。それは自分の魂の欠片を利用して自分のコピーを作り上げることが出来るというスキルを持っている。俺はそれでもう一人の俺を作ったのである。そしてその男が作り出した分身は本物と同様に自我を持ち合わせていて、本物の俺の命令を聞くことができるようになった。だから俺は俺の代わりに命令を出して仕事をさせることができるようになり、そして仕事に困らなくなったのである。そのお陰で俺がこの世界にきてからも、ずっと働き続けることができたのだった。しかし最近になって俺を雇っていた商会の連中が全員死んでしまったことにより俺は途方に暮れていたのだ。だから俺は新しく人を雇うために奔走していたがそれも虚しく全て無駄になってしまったのだった。そしてそのあと、俺の元雇い主の息子に見つかってしまったのだ。

俺はその息子が俺のことを捕まえようとしていることに気がつき急いで逃げたのだ。そして息子が放った追っ手を俺は何度も倒し続けていたが俺の方が次第に疲れていきとうとう逃げ場を失ってしまったのである。俺はこのまま捕まってしまうのかと思い、そしてその通りに捕まって、俺は殺されてしまったのであった。

その話の内容を聞いた俺は驚愕していたのだ。まさか俺の前にいるこの男と俺が前いた世界で出会ったあの謎多き男との間に血縁関係があったなんて夢にも思わなかったからである。

そう俺はこの男の本当の名前も年齢も性別も何もかもが謎だったのである。でもこの男が使っていた固有技能の中には俺と関わりがある物がありそのおかげで俺はこいつについてある程度調べることができたのだ。この男の使っている固有技能に俺は見覚えがあるものがあった。そうその男は、前に俺が元居たところに突如現れた俺を異世界転移させてくれた奴の持っていた固有技能と同じ固有技能を持っていたのである。だからこの男の名前や歳もわかったのだ。そうこの男は、以前俺が出会った奴の父親なのである。そしてその父親はその世界で大富豪と呼ばれるくらいに資産を増やしており俺もその父親から恩恵を受けてきた。そして俺と父親の仲はとても良好だったが、俺はある時から突然姿を消していた。そうその男とは別れてから俺はもう何年も経っているはずなのだが、俺にとってはたった数日のように感じられる出来事であったのだ。そう俺の中ではもうその男に会えないのだろうと思っており諦めてしまっていたのだ。だが、俺は今この目の前にいる男の固有技能により俺とこの男がそっくりな存在になっていることで俺もこいつもお互いにお互いが知っている状態だと分かったのであった。しかしそれでも俺はどうしても信じられなくて思わず聞き返してしまう。

「本当に俺の父さんなの?」

そう俺の口から出てしまったのだ。

俺はこの男が言った内容が理解できない。俺にはそんな力があるようには全く見えなかったからだ。俺の目からはその男はどう見ても普通の男にしか見えないのである。でもその言葉を口にしてしまった瞬間その男の顔色が変わるのが分かる。そして男は俺をまるでゴミを見るような目で見た後に吐き捨てるようにこう言い放つ。

「誰がお前のような出来損ないのクズなんかの子供だって言うんだ? ふざけるんじゃねぇーぞ! 俺のガキは優秀な人間しか認めねんだよ!」

そしてその男はすぐに冷静になりまたさっきまでの調子に戻るのだ。そして男はこう付け加えるのだ。

俺とこいつの関係性は複雑すぎる。こいつがどこで生まれたのかというのは完全に不明であり、俺がこいつに拾われた時は既にもう成人しており見た目も中身も同じだった。しかし俺はその男の親に会ったことがありその時に聞いた話によるとこいつは、生まれたばかりにも関わらず既に言葉を喋り俺を見ていたらしい。その男の名前は俺がつけたものでこいつは自分が自分であると認識して、この世に誕生したのだという。そしてその男には他にも不可解な点があったのだ。それがこいつは俺以外の人には絶対に心を開かず、誰にも心を開いていなかったという。そのことから俺は、その男が俺に執着するのは自分と瓜二つの姿を持つこの世で唯一の家族であるからかもしれないと思っているのだ。それにしても、こいつはどうしてそこまで俺のことが好きなのだろうか。そしてなぜ俺が嫌いなのかという理由が全く分からないのである。でも俺はその男との接し方を変えようとは思ってはいなかった。なぜならば、こいつはそんなことを望んではいないと思うから。

「ごめんなさい」

そう俺が謝ると父さんの表情が変わったのが分かった。

「俺のことを馬鹿にしているんのかてめぇ! 俺はてめえみたいな出来そこないを教育したつもりはないから、そんな態度を取られても全然嬉しくねえよ!」

そう言われて俺は何も反論することができない。俺はこいつに育てられたわけではないからな。ただこいつは俺の育ての両親と仲良くしてくれていたのでこいつは二人に感謝をしているようだが。

俺とこいつの関係性を簡単に説明すれば親子ではなく兄弟というのが一番近いだろう。でも俺にとってみればこの男と俺は親子のようなものだしこの男にとって俺もまた同じなのかもしれない。

俺には全く理解ができないのだが、俺がこの男に対して抱いているこの男への気持ちを他の人に説明するならこんな風に表現するしかないのだと思う。俺達は互いに相手に依存し合っていて相手のことを常に考えているがその思いは俺達が互いを想うよりも強く繋がっているのだ。それは一種の依存と言っていい関係であるのかもしれない。俺はこいつと会う前は孤独で寂しかったのだ。だがこいつに会うことができたお陰で今は俺の世界は一変したのだ。俺はそれまで自分の人生はつまらないものだと思って生きてきた。俺には常に目標と呼べるようなものは無く生きる気力を湧かせることすら困難だった。だから毎日のように何をしようか迷っていたのだ。そんな時、あの不思議な男に会ってから俺の人生の方向性が決まったのだ。そしてそれは今の俺にとっての全てだといっても過言ではないのだ。だからこそ俺はこいつに逆らうことなんて考えられないのだ。もし逆らった場合俺は自分の大切なものを永遠に失うことになりそうだし何より俺の心が崩壊してしまいそうな予感がしたのである。

だから俺はこいつに従っていれば俺は俺でいられるし俺は幸せな人生を歩めると確信しているのだ。

そして俺にはこいつがいるだけで十分幸せであるのだ。しかし俺はこんな考えを誰かに打ち明けることなんてできはしない。だから、この男の異常性に気づいた奴らは大抵気味悪がったり俺の頭の心配をしたりする。まぁ普通そう思うのは当然だろうな。俺の事をおかしいと思わない方が無理があるということだ。俺は今まで、こいつに嫌われたくない一心で俺の考えや思いをずっと胸の奥にしまっていたのだ。だけど俺がこんなにも悩んでいるのにこいつは自分のことだけを考えていて全く俺の事を見てくれないのだ。そして今回俺はついに爆発してしまう。

俺はこんなにも必死に俺なりに考えた結果、俺は我慢できなくなったのだ。

俺がこの男に初めて反抗をすると、男は信じられないものを見つめるような顔つきをする。その目は俺に恐怖を覚えていることがよくわかる。そしてその男は俺の前から走り去っていく。俺はそれを黙ってみていたのだ。俺もこんなことはもう止めたいのだけれど俺の意思では止まらないのだ。

俺はこの男が俺から逃げ出した後に、男を追う。

「待ってくれ!」

俺は男に追いつくとその背中に向けてそう話しかけた。すると俺のその呼びかけに応じたようで男は足を止めこちらに振り向いたのである。

「なんだ?」

その男は面倒臭そうにそう答える。でも俺の言葉に反応してくれたので、少しは聞いてくれるかもしれない。俺はそう思い男に質問をしてみることにする。

「あなたはなんで僕を捨てたんですか?」

俺がこの男の子供であるのなら、この男は何故俺に構わなくなったのだろうかと疑問に思ったのだ。俺にその問いの答えを聞きたいとそう思ってしまったのだ。俺はどうしてもその男のことが分からなかったからその男のことが少しでも分かると思ったからこそ俺はその男に質問を投げかけたのである。しかし男のその行動は、俺の期待を大きく上回るものであり俺はその言葉を聞いて怒りを覚える。

「うるせぇんだよ! おめぇみてーな無能はいらねぇーんだよ! さっさと死ねよ! ゴミ野郎が!」

そう言って、この男の意識が完全に切れてしまった。この男の固有技能が強制的に発動してこの男の魂はこの世から消えたのだった。俺はそのことに驚いている暇もなくこの男を殺した男によって殺されそうになるが間一髪のところで回避することが出来たのだ。

俺は今起こったことについて理解が出来ないが、この男が自分の意思で固有技能を発動させなかったことだけは理解できたのである。そしてその男はこう言い残してからどこかへ消えていくのであった。

「俺の可愛いガキに手を出した罰はいずれ受けさせてやるからな。楽しみにしてやがれ」

俺はそう言われたが、その時の俺はこの言葉の意味をよくわかっていなかったのだ。そうその男の言葉が本当になってしまうことなど知るよしもなかったのであった。その言葉の通りにその男が俺に復讐することなど予想すらもしなかったのだ。

俺はその後男を追いかけるのだが、俺は男に追いつけなかったのだ。でもその男の向かった方向に俺は嫌な予感を覚えたので俺はその男の追跡をやめることにしたのであった。そしてその男がどこに行こうとしていたのかがわかった。そこは、この世界で有数の大富豪が住むと言われている場所なのだ。そこにその男がいた。そしてそこにはもう一人男の姿があった。俺はそれを見るとすぐにその場所へと向かって行ったのである。しかしもう既に俺が着いた頃には全てが終わっており、男の仲間の一人であろう女性がその男の傍に立っていて、その女性の近くに倒れているのは、さっきの男の死体であるのだ。俺はその光景を見た瞬間俺の中で色々な感情が入り乱れていたのだ。この女性は俺の母親なのだから、この男と一緒に居たらこの人は死んでしまうかもしれないという不安、この女に母さんを傷つけられて殺されたのだという憎しみが心を支配しそうになっていた。でもここでそんなことを考えても意味がないということは分かっているので俺は、その女性とこの男の話を聞こうとした。だが、そこで俺は予想外のことが起きてしまう。

その女性の身体は突然光輝き始めたのだ。

「え!?」

俺はいきなりのことで何が何なのかわからないままその光が治まるのを待つ。そして、その女性の身体には何も起こらず俺も、俺の仲間たちも安堵した。でもその現象が俺には全く分からないのだ。そして、俺が何も出来ずに立ち尽くしていると、急に目の前に見たことがないような綺麗な女の子が現れる。俺はその子のことが凄く好みだったのでつい声が出てしまいそうになった。しかしそんなことをしていても仕方ないので、まずはその子のことを見極めようと試みる。でも俺がどうしたら良いかよくわかっていない状況にその子は勝手に動き出し、その男の亡骸のところまで行きしゃがみこむ。その行動には、その男に対する優しさのようなものが溢れ出ておりこの男がどんなことをしていたかなんて関係無いと思わせるほどだった。その女の表情にはこの男の死を嘆いているかのような表情をしており、涙を零しながら、この男に語りかけているように見えたのだ。その言葉は俺には分からないが、何かその男のことを大切に思っているのだということは伝わってくるのだ。だから、その少女の顔からは悲痛が感じられる。

そしてその男のことを抱きしめると、また先ほどのようにその女が発光する。そして俺に理解が追いつかないことが起こる。この男は、この世に存在する生物とは到底呼べない姿をしており人間でも魔物でもない生き物になっているのだ。しかもこの男の状態はかなり酷いものだった。それはまるで無理やり変化させられたようなものなのである。

そしてその女の体にも異変が起こった。

俺の目から見るとこの二人は完全に融合しているように見える。

一体、なにが起こっているんだ? 俺には本当に何が起きているのかが全く分からない。しかしこの状況から考えられる事は一つである。この二人が融合したという事実だけなのだ。この二人には俺が知りえない繋がりがありその結果このようになったとしか説明ができないのだ。そして、俺は自分の考えをまとめるのに必死になっていて、いつの間にかその女がいなくなっていることに気づくのが遅れたのだ。俺は慌てて周囲を確認するが、もう何処にもその姿を見つけることはできないのだった。

そして俺はあることを思い出して、俺はこの世界に召喚される前に、俺の親父を殴っていた男を探すために俺はこの場を急いで離れることにした。俺がこの世界に来た目的の一つはこの世界の情報を少しでも得ようとしたからである。それにあの男が生きている可能性もあったからあの男を探したいのだ。そして俺は、あの場で何が起きたのかを理解することは出来ていない。だけど俺の中に一つの確信があることはある。俺は絶対にこの男を許してはいけない。それだけが俺の頭に残っていたのだった。そして、その男の気配が消えた方向を睨みつけるようにして見ていたのだった。

俺は自分の母親を殺されてその男のことも許せないと思っていたのだけれど、あの男も俺の親父が殺されているのだから同じようなものだと思うことにした。あの男がこの男と同じ行動を取れば俺の大切なものが壊されてしまう気がしたのでその男を止める為に追いかけたのである。だが、その男を追う途中でこの男の魂に俺が触れたことによって、俺はこの男がどうして俺に攻撃してきたかがわかってしまったのだ。その男には仲間を自分の手で殺したことによる罪悪感に蝕まれているようだ。俺に攻撃を仕掛けてきたのも自分のせいで死んだ仲間の仇を討とうとしているようでもあったのだ。俺はそれが分かってしまったのでその男の事を責めることなんてできない。ただ、俺はその男が俺に対して殺意を抱いて襲ってきたというのならば俺もそれなりに対応するつもりだったのだ。

だからその男は俺が思っていた通り俺を襲ってくることは無かったのだ。

それからしばらくすると、俺の母親が俺の元に帰ってくるのである。その顔はとても満足げな顔をしていており俺の方を見る。俺は、なんとも言えない気持ちになる。この母親は自分がこの男のものにされてしまったとしてもこの男のために戦おうとしたはずだから。きっとこの女性は後悔していないのだろうと感じることができたからだ。しかしそれでもやはり複雑な気分だったのだ。でもそんなことを思っていても仕方ないと俺は思った。これからこの人のことを守っていかなければならないという責任もあるのだからしっかりしないといけないと思うことにしよう。

「あなたにはまだ早いわ。私達はもう行くことにするわね」

その女性はそう言うと、その場を離れて行くのであった。俺もその女性の後を追って行こうとするがその時ふと思ったのだ。この男は今から何をしようとしているのか気になったのだ。もしかしたらこのままだとこいつはやっばりとんでもないことをしてしまうかもしれないと思ったのだ。この男は、自分の命を救うために俺の両親を利用した男でもある。だからこそこの男がこれ以上悪事を重ねるのを止めたかったのだ。そして俺は、その男の意識に入り込むことに成功する。その男がこの世界にやって来てからのことやその後の出来事が俺の脳に流れ込んできたのである。そして、この男の正体も知ってしまうのであった。俺は、そんな事実を知って怒りが湧き上がってきたがなんとかその怒りを抑える。そして俺は、この男の記憶の中にある情報を元にして男を殺すことにする。

「死ねよ!」

俺がその男に向かってそう言いながら剣を振るう。しかし俺の攻撃は男によって防がれてしまったのである。

こいつ! 俺の攻撃をいとも簡単に受け流しやがった! 俺もかなり鍛え上げたから並の奴なら今の一撃で死んでるぞ! やっぱりお前も俺と似たような存在なのか? それなら俺の全力を受けても大丈夫なはず! 俺は、この男がどんな固有技能を持っているのかは分からなかったが、おそらく身体能力強化の類いのものだと俺は予想する。

その俺の考えを証明するかのように、男の一撃によって俺は遠くに吹き飛ばされていたのだ。俺は、地面に着地した後即座に構えをとる。

俺は、さっきこの男がやったように刀を構え男の攻撃を受け止める。

俺はこの男の固有技能は受け身と受け流すことに特化しているのではないかと思っているのだ。

男は俺の行動に驚いたような反応を示すが俺の反撃を防ぐ。そして再び、お互いの実力を確かめるように戦うのであった。

だが、男は俺に隙ができればそこを狙ってくるのだが俺はそれを全て避けきっていたのだ。

俺はその男と戦っていて俺の予想が間違っていなかったことが証明された。その男は、受け身に関することに関してかなりの能力を持っていた。俺の予測では、男が俺の攻撃を全て受け流すことが出来ている理由は、その男が元々持っている受け身の才能によるものだと考えていたのだがその男の場合はその才能が異常なまでに高い。そのおかげで男が受け身の技術を身に着けた理由が分かった。しかしその男がどうやってここまでの力を身につけられたのかは全く見当がつかないままだった。この男も俺と同じく転生者だということだけはわかった。俺と違う点があるとすれば、俺と違ってちゃんと元の世界にいた時から努力していたってことだ。俺の場合この男とは違ってこの男の仲間を殺した男に復讐をするためだけに力を求めていた。この男が元の世界でどういう人生を送っていたかなんて知る由もない。俺が分かるのは目の前にいる男の固有技能の使い手ということだけだ。だから、この男が何をしたかったのか俺には全然理解ができない。

「くそ! くそくそくそぉおお!!」

男は何か焦りを感じているように見えた。それは俺には分からないが何かに急かされているように見えたのだ。俺もこの男に攻撃している間に段々と自分の体力が無くなっていく感覚があった。だがそれは俺だけではなく、この男も同じなのだ。でも、それはこの男も感じていたことでこの男も体力切れを起こしていることは間違いなかった。俺も男も息が荒れてきている。俺はここで一気に決着をつけなければ負けてしまうような気がしたのである。俺は、男の動きをよく見てから男の方に一直線に突っ込んでいく。そして、男も俺のことを迎え撃とうとしていたのだった。俺と男はほぼ同時に動く。俺が男の間合いに入る前に俺は、刀に力を込める。すると男は何かを悟ったのか慌てて動きを変えようとしたがもう遅かったのである。俺の渾身の攻撃が男に炸裂していたのだ。男は、防御しようと試みるがあまりの威力のため体がついて来ていなかったのだった。そして男は俺の斬激をまともにくらい、体に大きなダメージを負うことになった。

男は痛みに耐えかねて膝をつくことになる。そしてそのまま俺を睨みつけると俺に背を向けようとするが、俺はその男の首を撥ねることに成功したのだ。その男の首からは鮮血が溢れ出している。

そして、男はそのまま倒れこむ。俺の勝利だった。俺は勝利できたことでホッとしたがそれと同時に自分の身体から力が抜けて行くことに気づくのだった。そして、目の前の男の肉体が完全に消滅すると同時に俺の視界は暗転したのだった。

私はその男の人を殺せなくて困っていたのである。だってその男の人は私達が倒せなかった魔獣を倒してくれたのだ。それにこの人の力は凄くて私の固有技能も使ってみても勝てるイメージがわかなかった。でもこの人の力を使ってもまだその男の人には勝つことはできなかったみたい。

「ごめんなさい」

その男の人に謝ると私は逃げ出そうとしたのだけれど後ろから声をかけられたのであった。

そして、私が恐る恐る振り向くとその男の人はもう起き上がろうとはしていなかった。私は驚いて男の人ともう一度見るがその人は死んだままの状態だったのである。それでようやくその人が死んでいるのだと気づくことができた。でもどうしてその男の人の体からは魔力が感じられないのか全く分からなかった。

その男の人から離れて行こうとする私達に向かって男の人が近づいてきた。

え!? 一体なんで生きているの! その男の人の首から流れ出ていた血は既に止まっているようだった。そのことに私以外のみんなも驚きを隠せないようである。でも男の人は私達に襲いかかってくることは無かったのである。

すると突然その男の人から禍々しいオーラのような物を感じるようになりその男の人から距離を取ろうとするが、いつの間にかその男の人は私達の真後ろに移動していて腕を掴まれたのだ。私はその男の手を振りほどこうとしたけれどその男はその力を利用して私のことを背負い投げする。

「あぅ」

地面に背中をぶつけてしまい変な声を出してしまった私はすぐに立ち上がりその男の人を睨みつける。しかしその男の人の表情に私に対する殺意は一切無くてむしろ悲しそうな目をしているのだ。どうしてそんな目を私に向けているのかわからないけどこの男の人に同情されてしまったことに対して怒りが湧いてきた。

それから男の人は自分のことについて話し出したのでその男の人に対して警戒しながらも話を聞いていた。その男の人が話す内容は信じがたいことだったのだ。男の人が元々別の世界の人間だと言うのだ。そんな話普通なら絶対に信じられないんだけどこの男の人だけは他の人達とは少し違っていてこの人は本当にこの世界に転移してきたのだということがわかったのである。

私はその時その男の人のステータスを見ようと試みるが全く見ることができなかった。

そして、男の人がこの世界で行ってきたことを知ったのである。

この人は仲間を自分の手で殺したことをずっと悔やんでいたようだった。その男の人がやろうとしたことも仲間が殺されたことによる恨みだったのだと思う。その男の仲間達はこの世界に来た時、既に殺されていてこの人の大切な人達は全員この男の手によって殺されてしまっていたのだ。そのことから男の人は自分がその仲間を殺したあの男を殺したいという目的だけで行動を起こし続けていたのだ。

男の人のことをよく知っているからこそ男の人の強さが本物であることがわかってしまうのだった。でも、その男を倒せたというのにその男の人の心は晴れないようだった。

そしてその男の人の固有技能を見たことによって私もようやくこの人のことが理解できるようになる。その固有技能はとても特殊な固有技能で他の人が習得できるものじゃないと思えた。その固有技能はまるで神様が作ったような固有技能で、それを使うための才能が必要なのではないのかと思ったのだ。その証拠に男の人のレベルは一のまま変化しなかった。つまりその固有技能を習得するためにこの男の人は相当頑張っていたってことだ。そして、その固有技能を使うことによりやっとこいつを殺すことができるんだ。

でも、男の人の体は傷だらけになっていてその状態を見るとかなり危険な状態であるとわかるのである。そして男の人は最後に自分を殺してくれと頼んできたのだ。もう自分の限界を感じていたようでこのままの状態だと死んでしまうだろうと感じたのである。

確かにその願いは聞いてあげた方がいいと思う。その方が後腐れがないはずだ。ただ一つ疑問なのはなぜその方法を選ぶ必要があったかということだ。他にもその方法がないか考えるが特に良い案が思い浮かばないので私は覚悟を決めてそのお願いを受け入れることにする。

その男は泣き崩れる姿を見ているうちに、私はこの男のために泣いていた。そして男が泣き止むまで私は側に居続けてやる。この男はこの先もっと多くの敵を倒すためにきっとこの固有技能を役立てるのかもしれない。この男にはその固有技能がお似合いだし、この固有技能に相応する男になれるのはこの男の実力を持ってしてもまだまだ難しいのだろうと思える。だからこそ私は、この男がその固有技能を使っていつか必ず復讐を果たすと信じることに決めたのだ。そしてこの男が再び立ち上がってくれる日を夢見ている。この男になら自分の全てを託すことが出来る気がする。この男の側で戦いたいと私はこの時初めて思ったのであった。そして男の固有技能が発動された瞬間、私の視界が暗転していく。この男の固有技能は想像を絶するほど強力だということが分かってしまったのだ。だから私は、この男に命を奪われることになるとしても、悔いは無いと思い意識を失う。

次に目が覚めた時に見えた光景はかなり衝撃的だった。なぜならそこには魔獣が立っていたからである。

魔獣が立っていることに気づかずに呆然とその光景を眺めている私であったがそこでようやく魔獣が喋ったのだった。

「お前の願いを聞いてやったのに随分と酷い仕打ちじゃねえか?」

その魔獣が言っている言葉を理解するまでに数秒の時間がかかってしまう。この魔獣の言っていることは恐らくあの男が使っていた言語と同じものだった。だが何故、この男がこの国の言葉で話せるようになっているのだろうか。もしかして、私もこの魔族の言葉を理解してしまうようになるの?

「どういうことですか?」その魔獣は私に攻撃を仕掛けてくるようなことはなくこちらの話を聞く体勢に入っているようだった。だから、私は冷静になって考え直すことにしたのだ。その男からもらったこの力でこの男を殺すことは出来るのだろうかと考えるがやはり無理そうに感じる。そもそも固有技能を発動したのにも関わらず全く歯が立たなかったことを思い出した。その男は一体どれほどの強さを手に入れていたのかもわからなくなってきていた。でもこの魔獣の質問に答えないことには何も進まないのである。

私が魔獣の質問にどう答えるのか悩んでいるとその魔獣の表情が一瞬変わったように感じたのだ。でもすぐにいつも通りの表情に戻る。

私はこの魔獣のことを観察してみるが、どこを見てもその辺にいる普通の魔獣にしか見えなかったのである。

だがそれは間違いだったのだ。その魔獣をじっくりと見てみるとあることに気づいたのである。その男は私を気絶させる寸前にその固有技能を発動させたはずだった。だけどこの男の魔力量に大きな変化はなく、魔力も減っている様子は無かったのである。

一体この男はどんな固有技能を持っているのか全く予想できない。そしてこの男の固有技能について知りたいのだが私では分からないようだ。

私は仕方なく素直に質問に答えることにした。するとその男の魔獣は驚いたような顔をしていた。その後で納得したような顔になったのだ。私にはその理由がよく分からなかったが。その男は「なるほど」と言いつつ私から距離を取った。

それからその魔獣が突然私に対して話しかけてきたのだ。

「俺と取引をしよう」

私は何を言い出したのかと混乱したがとりあえず話をすることにした。

「あなたは私に何か要求があるということでしょうか」私は相手の出方を窺う。相手から情報を引き出すには相手が求めているものを渡せば良い。

私はこの固有技能のおかげである程度の知識を得ることができていたがその知識だけではこの世界に存在する様々な技術の水準を測ることができなかったのである。それにこの世界のことだけではなくて魔法というものが存在しているのかについても全く把握できていなかった。この世界に存在しているはずの魔物という存在さえまだ私は見たことがなかった。私は自分の力を使いこなしていないせいでその固有技能で手に入れることのできる情報を正しく得ることができないようなのだ。そして私が持っているその固有技能がどれだけ有用な能力なのかもよくわかっていなかったのである。もしかすると私にとって不利な条件ばかりになってしまう可能性があるのだった。だからこそ慎重に対応する必要があると思ったのである。

私はその魔獣の要求を聞き出すために話をしようと決めたのだ。

するとその魔獣が提案してきた内容を聞いた私はすぐに断ろうと思っていたが、その内容を詳しく聞いてみるとその魔獣は私の力を必要としていたみたいだった。その要求の内容から考えて、その男よりも先に私の力を利用するつもりなのだろうと考えたのだ。でもそんなことをしたらこの男は確実に怒りだすはずだし、もしかしたらこの国そのものを滅ぼすようなことを始めてしまう可能性もあるので、この男の機嫌を取る為には私に協力して貰うことが重要なのだろうと判断したのだった。

その男の仲間だったら私は迷わず殺していたがその男はその男と違って私の仲間だったので、この男は生かしておくことにしようと考えたのである。この男の目的は仲間の仇を取ることなのだと私は思ってしまったのだ。この男の目的を果たすためにはその邪魔になりそうな私達をこの世界に連れてきて殺すことが最善だと考えていた。でもその目的を果たした後のこの男がどのような行動をとるのか私には理解できなかったのである。その男の復讐が果たされた後にこの男が何を目的に生きるのか興味が沸いてしまったのだった。

私はしばらくその男の様子を確認しつつ、隙あらばその男を殺そうと決めていたのである。そしてその男に仲間になることを承諾する。

それからその魔獣は自分の名前を名乗ってくれたのだ。そして、その男の名前を教えてくれたのだ。その男の名前を私は知っていたけれどあえて聞かなかった。その名前を知っているのはこの世界にただ一人だけなのだと私は考えたからだ。だから、私はその魔獣のことについて聞くことをしなかったのである。そしてこの世界にあるダンジョンの場所を教えて欲しいと頼まれたので、それならその魔獣の力があれば簡単に見つかるはずなのにと思いつつも教えない理由は無かったので教える。でも、その場所がどこかまでは言わないことにした。この場所を教えるのは、この男を完全に信用しない限り危険だと考えているからである。この男が自分の居場所を突き止める前に逃げる準備だけは完璧にするつもりだ。でももし仮にこの男から逃げ出すことができたとしても、私の仲間がきっと助けに来てくれるはずだと思っている。だからこの男に私達のことがばれるわけにはいかないのであった。

そして私とこの魔獣は取引を終えたのだった。私達はお互いに利用しようとしているのは分かっているけど、この男の固有技能を使えるようにしてくれるという申し出はとても魅力的なもので、この魔族の言葉を理解するという能力はとても貴重なものだと私は思えたのだ。だから私はその提案を受けることにした。

私は、自分が思っていたより冷静に物事を考えることができる人間だということが分かった。今まで自分の固有技能のせいで色々と迷惑をかけてしまい申し訳なかったと今は心の底から思う。そのおかげもあって、この魔族の言葉を理解できるようになったのは大きな収穫である。この男との繋がりはできるだけ保っていた方が得をすると思ったので、この男の仲間になろうと決める。そしてこれから私はこの魔族の指示に従い、この魔族の為に尽くすことに決めたのだ。その魔族は、その言葉の通り私の願い通りにしてくれていたようで私を拘束するようなこともせず解放してくれたのだった。

私がその魔獣に連れられた場所は大きな屋敷のような場所で、そこに住んでいた魔獣は私の想像をはるかに超えるほどの力をその身に宿していた。その力は圧倒的だったのである。

私はこの魔獣と協力関係を築くことが出来たが、私の力ではまだこの魔獣を倒すことは不可能に近いと感じたのである。それならば私も魔獣と同じように力をつける必要があり、魔獣と共に過ごすことによって少しでも魔獣に近づく必要がある。

まず私は魔獣から魔力を吸収することに慣れる必要があると考え、毎日その魔獣に少しずつ私から魔獣に魔力を送り続けた。最初はその魔獣が嫌がるかと思ったがその魔獣は全くそのような様子を見せなかったので私は遠慮せずにどんどんと魔獣の体に自分の体の一部となる魔力を送り込み続ける。そして一週間くらいたった頃に、私の体は変化を始める。その変化した部分を確認したときに私はとても嬉しかったのだ。そして私の見た目は大きく変わっていたのである。自分の体の形が変わり始めるという初めての経験をしたのだが、この体がどういう風に変化していくのかを観察することは結構楽しいものであった。その感覚は私の体を自分で作り替えていく時の楽しさによく似ていたのである。

そして、この魔獣は魔石も取り込むことが出来ると私に告げた。この魔石を体内に取り込み魔力に変換することで魔獣は生きていると言っていたのである。その話を聞いて私は魔獣の体内に入り込んでみたが魔獣は痛がったり苦しがるような素振りを見せることなく私を受け入れてくれたのである。魔獣が私に対して何か危害を加える様子が全く見られなかった為、安心した私はこの機会に私自身が強くなるために必要なものを魔獣の肉体を利用して手にいれることにしようと思うようになったのである。私が魔獣の肉体の中に入るときにはいつもこの魔獣の中に存在していた魔物が私の意識を奪い取ってしまう。だけど今回も私がそうならなかったら魔獣に取り込まれてしまっていてその魔物の好き勝手にされてしまうところだったのである。私がこの魔石を飲み込むことでその魔石に秘められていた大量の力を手に入れることに成功する。そして私はこの瞬間、新たな力を得た。この力で魔石を吸収できるようになる。つまり私が取り込んだものを自由にできるのだ。これでこの魔獣に勝つこともできるのではないかと考えるが私は今のままでもこの魔獣と戦うのは不可能だろうと考えている。魔獣をこのままの状態で放置しておいた場合に何が起きるかわからないのだ。

魔獣の討伐にはその魔獣の核となっている魔石の部分を的確に攻撃することが必要だ。この魔獣の場合だと、心臓付近に存在しているのが魔石のようだ。だからその魔石を破壊することが出来れば、その魔獣を殺すことも可能になるかもしれないと考えたのである。だが、魔獣がこの状態になる前だったのであれば魔獣の身体に傷を負わせるだけでもかなり大変なことなのである。でも、私はそんなことは一切関係がないのだ。なぜなら私にはすべてが見えているのだから。

私は魔獣から得た固有技能を発動させる。これは魔獣の記憶や情報を全て読み取ることのできる技能である。その技能を発動させると同時に私は私の知りたかった情報を全て知ることが出来たのであった。

魔獣がどうしてこのような状態になってしまったのかを理解したうえでその魔獣を倒す為に何をすべきなのかを理解できたのである。そしてこの魔獣の正体もわかったのだ。

その正体を知ろうとしなければ私ではこの魔物を倒すことは出来なかったと思う。でも、もう私は大丈夫だ。この能力のおかげで弱点まではっきりと分かったのだ。私は魔獣を倒すためにその能力を使うことにしたのである。この魔獣が死ねば、あの空間の女性は私に協力を求めてくるのではないだろうか。でも私はその女性にはあまり協力する気がなかったので、この場で倒してしまうことにしたのだ。でも私だけでは勝てないので魔獣に協力してもらおうと思い私は魔獣のいる場所に戻ることにする。

そして私は魔獣の元に戻った。私はその魔獣を見て私は驚愕する。魔獣はその容姿が恐ろしいほどの変化をしていたのだ。そしてその魔獣から感じ取れた雰囲気が恐ろしく感じるほどのものになっていたのである。私はその姿を見て思わず一歩後ずさりそうになるが必死に耐えていた。

この魔獣がこの世界に存在する魔獣とは比較にならないほどの力を持っていることを私の固有技能によって理解してしまったのだ。そしてその魔獣は自分がその状態になった原因となった存在の気配を感じることが出来るらしくその方向を睨みつけていたのである。

私は、私の目的を果たすためにはどうしてもその魔獣の協力が必要だった。なのでその魔獣を仲間にすることにしたのだった。魔獣は私の仲間になったのだ。

私の名前はアイリスと言う。

私の名前は魔族に付けてもらった名前で本名ではなかった。この国の王女として生まれた私は、生まれた頃からずっと周りに人がいたから一人になれる時間が本当に無かったのである。私には弟もいたが弟の世話をするために周りの人達は弟と私の時間を分けてしまうのである。だから私は自分の自由に過ごせる時がなかったのである。でも、それはまだ良かったのだ。私は他の国から来た貴族と顔を合わせることがあるのだがその貴族の子供達は私のことを物珍しいような目つきで見つめてくるだけで、私には特に興味を持っていないようだったので少しだけ居心地の悪さを感じながらも私は平穏な日々を送っていたのであった。

そんなある日私は、私の住んでいる城の庭にいた猫に餌をあげようとしたのだ。そして私もその猫の傍に座り込んだのである。その時にふと私は思ったのだ。もしもここで私が大声で叫んだらどんな反応を示すのかということを、私はその光景を思い浮かべた時に凄く興奮してしまい、すぐに試したいという気持ちが高まってきたのであった。私は好奇心からそんなことを考えた自分を責めたい衝動に駆られた。だが一度考えた事は止められないのだ。私は自分の欲望を我慢することができなかったのである。

そして私は行動に移してしまったのだ。「ニャー」と私は叫ぶ。するとそれに答えるように一匹の黒ネコが私のもとに近づいてきた。

私はその黒ネコに餌をあげたいと思っていたので早速行動に移ることにしたのである。でもその時、私に声をかける人物が現れ私は驚いてしまう。それは私の父様だったからだ。父は慌てていたようで息切れをしながら、なぜこんなところにいるのか私に問いかけてきたのだ。

その質問を受けたとき私は答えられずにいると、なぜか私の隣には父が連れてきてくれた兵士の姿はなくなっており私とこの子だけがその場に取り残されてしまっていたのである。その後、私の目の前で黒ネコが殺される瞬間を目撃してしまう。私はこの子が死んでしまったことが悲しかったのだが、それよりも父様に嘘をついてここに来たことで私は罪悪感に襲われてしまいその場を逃げるように立ち去ったのだ。私は自分が行った行為で自分の居場所を無くしてしまったと絶望していたのだった。

私は、私がした行いのせいで家族と使用人に心配をかけるのは分かっていたがそれでもこの場所から離れなければならないと思ったのである。私のやったことは犯罪にあたる可能性があると自分では思っていたのだ。私は、私がした事を後悔しているし許されざる事だとわかっている。しかし、私はまだ死ぬわけにはいかないとそう考えていたのである。

私が生まれ育った城を離れようと決意した翌日、私に一つの出会いがあった。その男は私に助けを求めるように私の前に突然現れたのである。私はこの男が私と同じ立場の人間だという事に気がついたのだ。

その男の話を聞いたときにその男は自分の運命を変えることができるのならばと、この世界の破滅を願うようになる。その話を聞きながら私はこの世界にそんなに未練がないように思えた。私はこの男を救ってあげたいとそう思い、この世界で私の出来る最善を尽くそうとしたのだ。私はこの世界を恨んでいたが同時に私はこの世界を救いたいという感情が自分にあることに驚きつつも嬉しかった。この世界で私のやることは決まったのである。

私は自分の命に代えてもこの人の願いをかなえると誓ったのだ。

そして私はこの男に付いていくことを決める。そして、その魔族の住む場所に案内された。そこで私はその魔族に捕まってしまう。その魔族は、その私の体を変化させて私の体を乗っ取ろうとしてきたのだ。私はその感覚に戸惑いを覚えていた。私の知っている魔族が放つものとは全く違うものだったからである。そして私は自分の中に別のものが入り込んで来るという今まで体験したことのない感覚に怯えていた。

そして私はその感覚に抵抗することも出来ず自分の体が作り替えられるのを感じていた。その感覚を私は受け入れることができなかったのである。そしてその魔族の言葉を聞いて私はその魔獣が自分の意思とは別に動き始めたのに気づく。その言葉通りに私の体も動くようになっていたのだ。私は必死になって抵抗しようとしたがその声が聞こえなくなり次第に私はその魔獣の思うままに操られ始めていくのを感じた。

この魔獣に取り込まれていくのだと気づいた私は、何とかしようと足掻いてみるがその抵抗を嘲笑うかのように私自身の体が魔獣に完全に取り込まれていくのである。私の体の主導権が完全に奪われる前に私は自分の魂が取り込まれることを防ぐ為その魔石を破壊しようとしたが、魔石に傷をつけることさえできない程私の力が弱いことを知った。そして私は、私自身が完全にこの魔獣に意識を奪われてしまっていることを理解し諦めることにしたのだった。この魔獣に私自身が支配されるということは、その魔獣の核である魔石に意識を移されて私は意識を失った状態になるということなのだ。

私は自分の身を守る為の手段として私自身が魔石になってしまうしかなかったのである。

そして魔石になってしまった私だが、魔石の中にいた一人の女性の魔力が徐々に私に浸透していくのがわかる。私は魔石になってからその女をこの目では見ていない。でもその女性の持つ力の質からかなりの力の持ち主だと言う事がわかったのだ。そして私の中に入り込んだ女性は私を侵食しようとしていた。その女性が私を取り込むつもりなのかそれとも私を支配しようとするのかまでは分からなかったけど、私は私の中の魂を守ろうとしていた。私の肉体が魔獣に吸収されたことで私はこの世界に来る前の自分の記憶をしっかりと思い出すことが出来たのである。

この体は私の物だ。私はその魔獣からその体の支配権を奪うために行動することにする。そして私は、その体に存在している私の意識に干渉して魔獣の力を抑えつけることに成功したのである。そして私は魔獣の力をある程度押さえつけてからその魔獣から逃げ出すことにしたのだ。この体の中にはこの魔獣に殺された人たちの無念や怒り、そういった負の要素で満たされていたのである。このままここにいれば私自身も魔獣の憎しみの気持ちに呑み込まれてしまいそうだと感じたのだ。私は自分の意志でこの魔獣から逃げることを選択してその魔獣から逃げた。だが、その魔獣は私を追ってきたのである。

私の目的は一つだけだ。私はまだ死にたくないので私は魔獣の討伐の為にその魔獣に協力してもらうことにした。でもその魔獣は簡単には私に協力してくれなかったので私はその魔獣の説得をする事にしたのだ。私はその魔獣と対話を試みた。

その結果、その魔獣はこの魔獣の中で一番の格上だと思われる存在と会話することに成功する。その存在は私を信用することに決めたようだ。そして私に協力すると約束してくれる。これで私は安心できる場所を見つけたのだ。

でもその魔獣が本当に私のお願いを受け入れてくれるか不安だったのでその魔獣を私の固有技能によって拘束することに決める。そして、その魔獣は私の仲間になるのだった。その魔獣は私に対して忠誠を誓ったようなので私の配下として扱うことにしたのである。

それから私は魔獣と一緒にこの国に攻め入ってきた存在を討伐することにしたのだ。魔獣の話では、その存在こそが今回の騒動を引き起こした張本人であり、私はその人物のことをかなり警戒していた。

私は、その魔獣から聞いた話をもとに魔導兵器の存在にいち早く気が付き魔導兵器に攻撃を仕掛けた。魔族に指示を出し魔導兵を全て殲滅させる。そして私達魔族の軍勢は、魔族が攻め込んでいるこの国に反撃するために動き始めるのであった。私はこの国の人達に謝罪をしながら、私の持っている最強の武器を使い魔族の軍勢が一斉に攻撃を仕掛けていったのである。私は私の持てる全ての力を使い魔族と共にこの国を蹂躙したのだ。

その魔族の王は、私が思っていたよりも遥かに強かった。その強さは尋常なものではなくその魔族の強さに驚かされてしまう。私はその魔族との戦いに苦戦を強いられるが私の固有能力である魔石操作を使って、魔獣の体内にいる私自身の魂を魔石を媒体として呼び出す事に成功したのである。そして、私の本体の魂が宿っているこの魔石に魔族が取り込まれている状態なら私の命令にその魔族は従ってくれる事が分かり一安心していたのであった。そして、魔族にその魔王を殺すように指示を出したのだ。私は私の目的を果たす為にまずはこの国にいる全ての人を殺そうと決めたのである。私は私の目的を達成するためにある事を実行することを決めた。

それは私が召喚した魔族が今、魔族の王を仕留めている最中なので私は魔族たちがその戦いを終えた後に魔族の王に攻撃を加えることにしたのである。

その魔族が私の作戦を実行している間にも魔族たちは順調にこの国の人を殺し続けていた。

私達はついに魔族の王が倒れてしまったことに気づくのである。私は自分の部下達に撤退の指示を出して私もこの国から逃げ出そうと考えていたのだがその前に私はこの世界で私が召喚した仲間がどうなっているのか確認する必要があると思いこの世界で私の仲間になっているその魔獣の居場所を探すことにしたのだ。でもその魔獣を見つける事はできなかったのである。だから私は仕方なく私は、魔導王国にいるこの国の王女が魔獣を召喚していることに気づいていたので私は自分の手でその娘を殺すことに決めたのだ。その方がより確実に私の目的を果たせると判断したのである。

だが私の部下達が突然何者かに襲われ全滅してしまうという事態が発生してしまう。

そしてその者達は私に襲いかかってくるが私は自分の実力でその敵を退けることに成功をする。

その後、私は自分が従えていた魔物たちとその者達と戦う事になる。

その者達は全員が私の知る顔ぶれで私がこの世界に呼んだ元の世界の友人達だったのだ。そして、私はその者たちの攻撃を受けることになるが、私の仲間の援護もあり何とか窮地を脱し、そして私は私の固有技能を発動しその友人の一人に自分の固有能力を封印させることに無事成功したのである。

その後は私はその友人の命を狙うことになる。私とその友人たちは激しい戦闘を繰り広げるが私は結局友人一人の命を奪いきることができずにそのままその友人に殺されることに決めて覚悟を決めていたがその時ある出来事が起きる。

そう、私の仲間になったあの魔獣が突然私を庇いその攻撃を代わりに受けることになったのである。私は、そんな魔獣にすぐに駆け寄って回復させようとするが魔獣はそのまま私の前から姿を消したのである。魔獣は死ぬ前に私にこう告げたのである。

「貴方はこれから私に何をしようと構わない。ただ、どうか私の最後の願いだけは聞いてほしいのです」

私はその言葉に何も返すことができずに、その願いを受け入れることしか出来なかったのである。そして私は、自分の大切な人をこの世界に呼ぶことを約束してしまったのである。私はこの世界に私を呼ぶための魔法陣を描くことにしたのだ。

そして私は私自身が魔石になってしまったことによって私の中の力の殆どが失われてしまっており私の魔力だけでは私自身を呼び出すことはできなくなってしまったのである。

私は、魔石の中に残った私の力を全て使うことにした。その魔力を使うのはかなり厳しい作業ではあったが何とか成功し私はその魔石の中から再びこの世に復活するのだった。

私は完全に復活してその世界に戻る。

私は私自身を魔獣に渡したことで魔石の中にいた一人の女性からその女性の記憶を受け継いでおりこの世界に来る前の記憶を思い出していたのだ。でも今はそんなことはどうでも良かった。私は急いでその場から移動しようとした時である。

突然空に大きな魔法陣が描かれていきそこから何かが降りてきたのだった。私はそれを見上げるとそこにはもう一人の親友がいたのであった。

俺が城から出て行ってからしばらくして、俺はその町に到着することができたのだ。

ここは俺が住んでいる大陸にある唯一の町でその名をリザードの町というらしい。この町が魔族の侵攻を受けて滅ぼされる可能性もあったみたいだけど何故か魔族の襲撃はなかったのだと言うことだ。そしてその町にたどり着くまでに色々な問題が起きたけど俺は何とかたどり着いたのである。そして俺は今から宿屋に向かう所だ。宿屋の場所がわかっていたから迷うことなくここまで来る事が出来たのだ。

ただ少し困った事があるんだよな。この宿がどういうところかが分からないから宿に泊まりたいと言っても断られる事があるかもしれないからどうやってその問題を解決しようかなと思っていると一人の少年が声をかけてくれたのである。その人は優しそうな人でこの辺について教えてくれるようだった。

そして彼は俺を気にかけてくれたのか色々と話しかけてくれているうちにこの世界についての情報を得る事ができたのである。

どうやらこの国は『グランシア』という名前で魔族の侵略を受けていたが先日やっとこの国が滅ぶ寸前だった時に、救世主が現れその人が圧倒的な力で魔王を倒しこの国の窮地を救ってくれたのだという事だった。それで、今この国に脅威はないらしく、人々は新しい国王の即位の知らせを待っていて皆心待ちにしているとの事だった。

俺はその話を聞きこの国で俺は受け入れられないのではないかと思っていたのだが予想外にあっさりと俺は町の人に歓迎されて泊まるところを案内された。その案内してくれた人が俺に声をかけてきた男の人の弟のようだ。

弟は宿に着いてすぐ部屋を用意してくれたのだ。そして部屋に案内されてからこの国の情報を詳しく聞かせてもらいこの国の名前や通貨のことや地理などの情報を教えてもらった。

その説明を受けたあとその男の人と別れを告げて、明日から冒険者になるために登録をしにギルドまで行かないとなと考えていたのである。

今日はここでゆっくりと休んで、また明日から頑張ろうと気持ちを切り替えてベッドに入ったのであった。朝起きてから朝食を食べるために食堂に行く。そしてご飯を食べたあとはさっそくこの国のお金を手に入れるために冒険者登録をして依頼を受けるためにギルドへと向かう事にする。昨日の夜のうちにこの辺りの地図をもらったので場所を確認しておくことにしたのだ。それから俺はこの国の人達にお礼を言って宿を出ることにした。そして、しばらく歩いてギルドに着くと、依頼ボードの前まで向かう。

それから、どれにするか考えていると、この国に来て最初に見たあの変な絵を思い出す。

その変な生き物の背中には人間らしき生物が乗っていて、その人間はこの国の旗を持っていたのだ。多分その国の名前はこの国と同じだったはずだ。でもあの時のその生き物の見た目は何かがおかしいように感じたんだよね。

でもその生き物の絵がどうしても忘れられず、この国にその謎の生物を探しに来たのだ。その依頼の紙を受付嬢の所に持って行くことにする。

そしてその依頼を受けようとした瞬間、後ろから大きな声で話しかけてくる人物が現れた。

その人物は背が高く、髪の色が白に近い灰色の綺麗なお姉さんのような人なのだ。

そしてその女性は、私と一緒に来て欲しいと言われる。

俺は一体何のことかわからなかったので、まずはその女性の素性を確かめる必要がある。この女性がもし俺に対して敵意を持っている人物ならこのままついて行った方がいいのだろうけどそうでない場合は、断った方が無難だと考えたからだ。

とりあえず俺は、自分の素姓がばれてしまう前にこの場を去ろうとする。でも、目の前の女性がそれを許さないような行動を取ったのだ。そうその人はなんとその手で俺の腕を掴んできたのである。それは、その人物が本気になれば、一瞬で俺の意識を奪い取る事ができるくらいの実力者であることがわかったのだ。でも、俺はそれでもあえて彼女の手を強引に振り払い逃げる事にしたのだ。すると彼女は追いかけて来たのだが途中で足を止めてしまう。何故なら、彼女の後ろにいる仲間らしき存在の男性が止めに入ったからである。だがその男性は女性よりも強く、逆に腕を引っぱられそのままどこかへ連れて行かれようとしていたのだ。その様子を見届けた後俺はその男性の仲間らしき男に一言だけ声を掛けることにした。

それは、「あなた達の主人はきっと優しい人ですよ」それだけ伝えて、俺もその女性達とは反対の方向に向かって走り始めたのである。そしてその後その仲間の男性に、この国の事を尋ねてみたところどうもこのリザードの国は身分の差が大きいようだ。この国の王様が変わってまだ数日しか経っていないためその新王の力がどこまであるかはまだ分かっていないみたいだね。

ただその王の力ではどうすることもできない程の問題があるらしい。その問題というのはこの国の民の貧富の差があり過ぎるという事らしい。そのため王への不満が高まりこの国の現状を良く思わない者達が増えてきてしまっている。その者達は、自分たちの地位を安定させるために、自分達を迫害した者達を見返そうと躍起になっているらしいのだ。

そう、俺はこの世界にもそういった者達がいることを初めて知ったのである。でもその事を知っていても俺は自分に出来ることは何もないので、とりあえず冒険者としての生活を始めることにした。

そして俺は、自分の職業を『剣士』『戦士』にするのを忘れていたので、忘れないように気をつけながら自分のステータス画面を開くことにしたのだ。

「よし、じゃあ自分のステータス確認してみようか」

俺がそう言った途端に画面に表示されるはずの項目が表示されずにエラーが出てきてしまう。これはどうすればいいのか分からなくて、もう一度ステータスの確認を行う。

「うーん。あれ、どうしてステータスが表示されないんだろう?」

俺が何度試してもやはりその表示はされなかった。俺はその状態が続いてしまっていたのだ。そこで仕方がないので一度外に出て自分のレベルを確認をしてみる。そういえば今まで気にしたことが無かったから自分の今のレベルのことがわかっていなかったのだ。

でも俺はそんなことで悩んでいる時間はなかった。すぐに俺は、この町を出て次の目的地を目指すことにしたのである。そう、俺がこの町に来た理由はもう一つある。この世界の情報が知りたかったのだ。俺は町の中を探索しながら情報を集めるために聞き込みを行った。そうすると町の中心の広場に、掲示板が立っていたのでそこに向かうとそこにはたくさんの貼り紙が貼られていてそこに書かれていた内容に俺は驚いたのである。

そこにはこんな内容の事が書いてあった。

『緊急! この国を脅かす脅威の正体判明!! 魔王軍が復活!!』

その文字を見た俺は驚いていたのだ。

だって、この世界に魔王が存在していたのも知らなかったし、しかもその魔王軍はもう既に復活していて、そしてそれが俺達が今向かっている先にいる可能性が高い事がわかったからなんだ。俺は魔王が復活したことを知らされた時驚き過ぎて声を上げることが出来なかったほど衝撃を受けていた。

俺は急いでその場所に向かいたいと思ったが、その情報が書かれた張り紙の右端に小さく書かれている言葉が目に止まる。

【魔王が復活するまでに残り五年】

その文字に目がいった時、俺の心の中で何故か分からないが嫌な予感がしてきた。その言葉は何故か俺の中に刻み込まれた気がしたのである。俺は魔王を討伐するために旅をしているのだけど、どうも不安感に襲われて仕方がなかったのだ。俺は、早くこの国の王に会いに行って、この国の人達を救う必要があると考えた。だから俺は、すぐに町を飛び出しその魔王が復活するという場所に急いで向かったのだ。ただ、その場所に向かう途中、魔獣と遭遇してしまった。

俺は、魔獣を倒そうとするがあまりに強く俺が太刀打ちできる相手ではなかったのだ。そして俺はなんとかその魔獣を倒したもののその時には俺のレベルは既に60まで上昇していたのである。そしてこの世界では、そのレベルを上昇させた者の事を表す名前があるらしい。

その言葉を耳にしたのは、この世界での初めて魔獣と戦った時だ。その言葉で俺は、その力を使い、自分の固有技能を進化させる事ができたのである。

そしてそれからというものこの世界ではかなりの数の戦闘を繰り返していったのだが、そのたびに経験値を手に入れていき、今ではその経験のおかげでかなり成長することができた。でも、魔族やモンスターなどはなぜか俺が戦う度に強くなるようでなかなか勝てなくなってしまっている。なので最近は苦戦する事が多くなっているのだ。まあそういう事もあり俺にはまだまだやらなければならない事が多いので、俺は急がなければならなかったのだ。

しかしその時俺は魔族と戦ってしまった事でかなりの傷を負ってしまい、そしてその傷が原因で倒れてしまうのであった。

「あぁーあ。俺はこれから一体どうなるのだろうか? でもこれで死ぬことができるかもしれない。いやまて俺はまだ死ぬ訳にはいかない。それにここで死ねば魔王を倒すことは出来なくなってしまう。それだけは絶対にダメなんだよ。俺はここで諦めるわけにはいけないんだ!」

俺は心の中でそう思っていたのだが、体は正直で俺が思った通りに動こうとしないのであった。俺がこのままだと本当にまずいと頭の中で思いながらも、意識は段々と遠くなっていってついに俺が気絶してしまいそうになった時だった。

『大丈夫ですか?』

そんな女性の優しげな声で目を覚ます。俺は目を開けると、その声の主の顔が見える位置に移動したのである。その女性は金髪の長い髪でとても綺麗な人に見える。その人の見た目はとても若々しい感じなのにどこか年齢を重ねた大人のような感じもあったのである。そしてその人は俺が体を起こした事に気づく。

そして彼女は、心配そうな表情を浮かべながらこちらを見て話しかけてきたのだ。そして彼女が口を開いたと同時に彼女の方から凄く良い匂いが漂ってくる。そして、俺がその匂いでつい興奮してしまったことに恥ずかしくなった俺は顔を真っ赤にして俯いてしまうのであった。でも彼女の方は全然動揺しているような素振りを見せていないので多分こういうことに慣れているのだろうと俺は考えてしまう。そうして彼女は、何かに気づいたのか慌てて、俺が着ていた服を脱ぎ始めたのである。

俺は、突然の出来事に思考停止状態に陥ってしまい何も言うことができなかったのだ。

でも彼女の方はすごく慌てふためいていた。

『わっ私の裸を見てください!』

そう言われても俺の方こそ見てはいけないのではと思いつつ彼女の姿を見ることにする。そうして、彼女はゆっくりと上着とスカートに手を掛けようとした瞬間、勢いよく扉が開かれ一人の男性が入って来たのだ。そして、彼女はその男性に対して怒鳴っていた。どうもその男性は自分の仲間だったようだ。

その後、女性は着替え終わった後に、俺の事を仲間として迎え入れてくれた。そして、その後自己紹介をする。

その男性の見た目は、身長が180くらいあり細身で整った顔立ちをしていた。髪の毛は茶色に近い黒色をしており、短髪で整えられていて清潔感のある雰囲気を出している。そして、瞳の色は緑色で、鼻が高くとてもカッコいい見た目なのだ。そして俺の視線は、その男の胸に引き寄せられていたのである。その胸の形は正三角形で大きくもなく小さすぎる事もない感じでちょうど良かったのである。俺は、その男が服を着替える時に、俺と同じ服装だったのでもしかしたら俺と同じような仕事をしているのではないかと予想するのであった。

「あぁ。よろしくお願いします。俺はリゲルと言います。俺はあなた方に恩があるので出来るだけ役に立てるように頑張りたいと思います」

俺は、目の前の女性とその男の仲間になった事を伝え挨拶をした。そして、彼女達の仲間になるのは俺としても願ったりかなったりの事であり、断る理由は何もなかったので俺も仲間入りすることに決めるのである。俺達はこの国の問題を解決するためにある組織を作ることにしたのだ。それは、魔王軍の復活を止めるための対策本部というものだ。そしてその組織は俺を含めて三人のメンバーで構成されていたのである。その三人は皆同じ格好をして、俺は黒い帽子をかぶっていてその中は白いワイシャツにネクタイをつけてその上に灰色のベストを着ておりその下のズボンも同じものをはいている。

俺が所属することになったこの国には階級が存在する。俺が所属していたリザードの町は比較的平和なところだった。しかしこの国には大きく分けた二つの種族が存在している。その二つとは、この国の王である人とその下にいる民である。そして、その民にも格差があり、一番下に暮らす者は、他の人より圧倒的に弱いのである。そのため民からすれば自分を守るためには力が必要だと思ってしまっている。そしてその者達が自分達の身分をもっと上げたいと躍起になっているみたいだ。そして俺も最初はそう思っていた。だが、その者達の考えは他の国に行くと違うということがわかったのだ。

その人達の考え方というのは、自分達が自分達の住んでいる土地を守る為には強い者がいればそれだけ守りやすくなると思っているらしい。そのせいもあってかこの世界では力のあるものが偉いという認識が浸透しているようだった。だからといって俺は自分の力で他人を傷つけようとは全く思わない。ただ俺は自分がやりたいことをやりたいようにするだけである。そのためにはこの世界で一番強くなりたいと思っていた。

「よし。ではとりあえずこの建物を建てましょうか」

俺は、仲間になってから一週間後ようやく拠点となる建物が出来上がったので、その建物を指差したのだ。

俺のこの国での目標は三つ。一つ目はこの国の王に会って現状を詳しく知ること。二つ目は、魔王軍に対抗できるだけの力を持つために訓練を行うこと。三つ目は、仲間と共にその組織を築き上げること。これが今の俺の目標となっているのだ。

俺は、これから魔王軍を相手にするにあたって、この世界の状況を把握したかったのだ。それにこの世界にどんな問題があるかも知りたかったのである。ただ俺は、まだこの世界の事についてそこまで詳しいわけではないので、この世界の住人に聞き込み調査を行い情報を仕入れる必要があると考えていた。そこで俺は早速その仕事を始めることにするのである。そこで俺は二人に頼み込みその役割を任せてもらえることになったのだ。

俺はこの国の人たちに、聞き込みを行って情報を集めることにしていたのである。

そこで、まず俺が最初に目をつけたのはこの町に住んでいる子供達である。俺は子供なら魔王軍に関して知っていることがあるのではないかと考えたからだ。俺が最初に向かったのは町の中心部だ。そこには子供がたくさん遊んでいる場所があり、俺はそこに足を運んでいた。そしてその光景を目にすると子供たちが無邪気に笑いながら楽しそうに過ごしており俺の目からするとまるでこの場所は楽園のように見えていたのである。しかし、そこに一人の少女が現れた時その楽園は一瞬で崩壊するのであった。なぜならその少女の外見を見た俺は驚いてしまう。

だって、その見た目がものすごい可愛かったのだから。俺がその姿を見て呆然と立っていると、少女はその綺麗な金色の髪をかきあげて微笑みながらこちらに向かってくる。

『こんにちは。お兄さん』

俺がその笑顔を見た時心臓を鷲掴みされたかのようにドキッとしてしまうのであった。俺はなんとか気持ちを抑えて彼女に話しかけてみる。

『あの、少し話を聞きたくてここまで来たんただけど、良いかな?』

『はい、構いませんよ。私にできることであれば何でも答えますよ。なんですか?』

俺はそう言われた瞬間あることを思い出し、それについて聞いてみた。

『君はこの国にいる王の名前を知っている?』

『えぇ。知っていますが、それがどうかしましたか?』

俺は彼女が何か隠し事をしていないかを念のために調べる為この子に直接聞くことに決めたのだ。もしこの子が本当にこの国でトップの権力者の子供であるならば俺の目的を果たすために必要な情報が手には入るかもしれないと思ったからである。そしてその方法は簡単だ。まず俺は彼女の手を優しく握り目を閉じると俺は固有技能を使う。そして固有技能で読み取った記憶を映像にして彼女の頭に送り込む。そして彼女の方を見てみると彼女の様子が急変していて苦しそうに倒れそうになっていたので慌てて彼女の体を支える。俺はすぐに彼女を家まで送り看病してあげたのだ。

俺は、それから数日後彼女と話すことができた。彼女は俺の事がとても気に入ったようで俺に対して色々と教えてくれるようになる。

『私は、リリアって言います!これからよろしくね!』

俺はそんな彼女の明るい性格に惹かれてしまいどんどん惚れ込んでいくのであった。そうしていくうちに俺はいつの間にかに彼女に心を奪われていったのである。そのおかげで、彼女以外のことはどうでもよくなりかけていた。そしてある日の帰り際、俺が家の前で立ち止まっていると彼女は俺に声をかけてくる。

そして俺達は付き合うことになる。その日から毎日のように俺は、彼女と一緒に過ごすようになったのだ。彼女は俺になんでも話しを聞いてくれる。そして俺も、俺の夢や今までにあったことなど色々な事を喋り続けたのである。そうしていくうちにお互いが愛おしくなりとうとう結婚した。結婚してからというもの彼女は、ずっと俺の隣で俺の事を見続けてくれていて俺のことを支えてくれていた。彼女は料理がとても上手く家事も万能な女性で俺にとっての理想の人だった。

俺は彼女のことが大好きだ。彼女のために生きていきたいと思っている。だからこそ、俺は彼女のためになる行動を取り続けるつもりである。俺はその覚悟を心に刻み込んでいる。そして、彼女の事は一生をかけて守っていこうと思う。

彼女は、俺の自慢の妻だ。

そして今現在俺は彼女とデートをしているのだ。彼女は俺の大切な存在であり俺の全てでもあるのだ。彼女のためなら俺はなんだってできる。彼女のためになる事だけを俺はする。そして俺は、今日は彼女と遊園地へ来ている。

『あぁぁぁ!!!!!可愛いーー!!!見てみて!!あの猫の乗り物超可愛い!!』

彼女は子供のようにはしゃぎ回っている。その姿は年相応に見えるのだが彼女のその仕草一つ一つに俺は惹かれていくのである。

『おいで〜こっちに来てください!』

彼女は俺の腕をグイッと引っ張るとそのまま走り始める。俺の事を気にかけてくれた事に嬉しくなって思わず笑ってしまう。俺の幸せはこんなにも身近にあるんだなと感じさせられた。そして俺達はそのまま一日を過ごしたのである。しかし楽しい時間は早く過ぎるもので俺達はあっという間に家に帰ってきてしまった。俺はもっと遊び足りないと思っていたのである。そうして、二人で仲良く食事をし終わった後に、風呂に入ろうと誘ってくるのでその言葉に従って一緒に入ることにした。そうして、俺達が一緒に風呂に入っている時に、事件は起こるのであった。

突然浴室の壁が壊され大量の悪魔が現れ俺達の前に現れたのである。俺は急いで彼女を抱きしめて、庇う体勢に入ったが次の瞬間その考えが間違いだったことを知る。なぜなら、彼女は俺の事を押し退け悪魔の方へ向かっていったのである。

俺は、この展開に動揺を隠しきれずにいたのだ。なぜ彼女があのようなことをしているのか分からず俺は、頭が真っ白になりその場で動けなくなっていた。俺は必死で彼女の名前を呼んでいた。

そうすると、彼女の体は赤いオーラに包まれ始め姿を変え始めたのだ。その見た目はまるで炎が体に巻き付いているようにも見える。そうするとその体の周りの火の粉は勢いよく吹き飛び消えていくのであった。

そして、俺に襲いかかろうとした悪魔を片っ端から倒していきその数をどんどん減らしていき最後には残り1匹になった。そして、彼女に向かって攻撃しようとすると彼女に向かって魔法が放たれた。俺はその光景に驚いてしまい咄嵯の判断が遅れる。しかしその時俺の中で時間が止まったように感じていた。だが実際は違ったようだ。なぜかと言うと彼女の体が一瞬で動き回り、敵の攻撃を防いでその敵の体を切り裂いたからだ。そうすると彼女はこちらの方を見て微笑むとこう言ったのだ。

「大丈夫?怪我は無い?」と。俺はその一言で完全に心を撃ち抜かれてしまった。俺の心はもう彼女に完全に奪われてしまっている。俺がその感情に溺れかけていると彼女が俺に抱きついてくるのだった。そして耳元に唇を寄せて、俺だけに聞こえる声の大きさで囁く。そして俺の頭を撫でながら、

「私が貴方を守ってあげる。」

その瞬間俺の理性は崩壊し彼女の事を求め始めていたのである。しかし俺の気持ちを察したかのようにそのあとは、何もしてくることはなかった。その後俺はなんとか平静を取り戻すことに成功していた。しかしそれと同時に彼女の事が好きすぎる自分に恐怖を感じてしまっていたのだ。そしてその夜俺はなかなか寝付けなかったのである。そのせいもあってか、俺は夢を見たのだ。

『はははは、どうした小僧?その程度で我を殺すだと?』

その男は、巨大な鎌を片手に持ち不敵な笑いを見せていたのだ。その男が、手に持っているものはただの大剣にしか見えないのであるが、それは俺が見たことも聞いたこともないものであった。その刀身には明らかに異様な雰囲気を纏っていたのだ。俺はその得体の知れない物体に対して本能的に恐怖を感じた。だからといって逃げるという選択をとることは出来なかった。俺はその男と戦って勝つと決めているのだ。だが正直今の自分ではこの化け物に勝てるビジョンが見出せない。

その事実に焦りを覚えてしまう。

『まだお前では力不足だ。今回は特別だ。』

そういうとその武器は光り出し一つの形へと変化させていった。

そしてその形状から連想される名前は、死を告げる死神の鎌。その名はデスサイズと呼ばれる代物だ。その形状は、大きな三日月状の刃を持つ大鎌であった。しかしそれだけではなかった。柄の先端にはまるで生き物のようにうねる黒い紐のようなものが付いているのである。それを見た瞬間から嫌な予感しかしていないのだ。だからと言って俺の考えを変えるわけにもいかず俺はその武器を手に取るしかなかったのである。そうすると、不思議なことに自分の手がその謎の武器に吸い込まれて行くような感覚に陥りそして遂にはその手は完全にその武器を握りしめていたのだ。すると急に目の前から光が無くなり俺は視界を取り戻したのである。その現象に驚いたものの俺はまだ戦うつもりでいた。そうして再び戦闘態勢に入るも、その隙を突いてきたので俺は対応出来ずその攻撃を受け流してしまったのである。その攻撃によって俺の手からは武器が弾き飛ばされる。そして武器は回転しながら地面に向かって落ちて行ってしまったのであった。俺は慌ててそれを拾い上げようとする。その動作でさえも致命的なミスとなってしまうのである。そうして俺が再び視線を前に向けようとした時にはその男の姿は既に無くなっていて俺の背後に移動されていたのである。そう俺は全く反応することができなかったのだ。俺は背中に強烈な衝撃を受けて意識を失ってしまう。俺はそのあとの記憶が一切無い。気がつけば、そこは自宅のベッドの上で隣には彼女も一緒だった。

『おはようございます!あなた!』

俺は彼女の顔を見てホッとしたと同時に先程のことを思い出して不安になるのである。そういえばあの時俺は何をしていたのだろうか?俺はそんなことを考えながらも、彼女と楽しく会話をしながら朝食を食べたのであった。そうして俺は学校に行く為に家を出ることにしたのだ。そして家の前で彼女とキスをした。彼女は恥ずかしそうにして、顔を真っ赤にしていた。そんな姿を見ているだけで俺まで幸せになれてしまうのだ。俺は、彼女の手を引き歩いて行くと、いつもの場所についてしまったのである。その瞬間、俺に襲ってきたあの気持ち悪さを思い出し俺は少し吐きそうになってしまったのだ。そんな俺の異変を彼女は心配して声を掛けてくれたのである。俺はなんとか笑顔を見せつつその場を凌ぐことに成功した。それから俺は教室に入るとそこには誰も居なく静かな時間だけが流れていた。そして俺が一人で過ごしていると突然誰かに呼ばれたのだ。そして俺は振り返るとそこには俺の大切な彼女が立っていた。俺は彼女がそこに立っているのを見るのはとても嬉しかったのだが彼女はとても申し訳なさそうな表情で話しかけてきたのである。俺はその理由がわかっていたのだが、あえて彼女に質問をする。その答えは分かり切っていることなのに。

俺は彼女の事が本当に好き過ぎているのだ。そして彼女が口を開くと俺はまた心を奪われそうになるのである。彼女はその口を動かし俺に対して言葉を話し始める。

『私と一緒に逃げようよ!』

彼女は真剣な眼差しで俺の事を見てくれていて嘘ではない事がわかった。でも俺はその願いを断ることしか出来なかったのである。だってそうだろ?こんな俺のことを好きでいてくれる彼女を巻き込むことはできない。

そして俺は、彼女との距離を離すと俺の意思を伝える。彼女は泣きそうな表情になりながらも納得してくれてこの場を離れていくのであった。そうして俺は授業を受け始めて暫くすると一人の男子生徒が立ち上がりこちらに向かってきて何かを話している様子であった。その瞬間俺の頭の中で警報が鳴る。そして俺の体は動かなくなる。

俺は、必死になってその男の言葉を聞こうとするが何故か聞こえてこなかったのだ。そして次の瞬間俺はその生徒の手によって地面に組み伏せられる。そうすると今度は体の自由がききはじめたので必死に俺は抵抗するが力が強すぎてびくともしない。するとその男がこう言ったのである。

「おい、貴様は一体何者だ?」

その一言で、俺は悟ったのだ。やはりこいつはあの夢のあいつであると。だが俺はなんと答えたら良いのか分からずに困っていると、

『おやめなさい!!』という凛々しい声が聞こえてくる。そしてその女性は、俺の事を助け出してくれたのである。俺はその行動に驚きが隠せなかった。その女性の目には見覚えがあったのだ。それは、あの悪魔を葬り去った時に見た女性の目と全く同じであった。つまりその人物は同一人物であることがわかるのである。

俺はその事に驚愕してしまうがその事よりも今はその女性がここに来ていること自体がおかしいのだ。なぜならば彼女は、この世界の人間ではなくこの世界には存在しない人物であるはずなのだから。すると、俺の疑問にその人物がこう答える。

『あぁ〜これのことですか?これは私の固有スキルの力なんですよ〜まあ詳しいことは内緒ですよ。私は、あの悪魔がどうしても気に食わなくてですね、そのあとを追ってこっちの世界にやってきたのですがどうも上手く干渉することが出来なかったみたいなんですけど、やっとその力を制御することに成功しましてこうして貴方の元にやってこれたというわけです。』

その女性はかなりフレンドリーな性格らしく、話を聞いてもあまり緊張はしていなかった。しかし彼女の言っている意味は殆どわからないのである。

そうしている間にもその人はどんどん話し続けていたのだ。

『それにしてもあなた面白いことをしていますね。あんなの相手に戦って勝っちゃうなんて。凄いことです。貴方がこれからどんな道に進むのかがとても楽しみになっいまた。』

『ところであなたのステータスを教えてください。後できればレベルも教えてもらえませんかね?』

いきなり話を振られた俺は困惑しながらも自分の能力を教えることにした。俺は彼女にステータスカードを渡す。そうするとその人の表情が変わるのが分かる。そしてこう言い出したのだ。

『やっぱり!!このステータス異常は私が与えたものだったんですね。』その一言で俺はさらに動揺してしまっていた。

そう言われてみればその通りである。俺はその女性の言葉を聞き入れて、この世界に来る前に、この女性から何かを与えられていることを思いだしたのである。そして俺の頭の中は大混乱に陥っていたのだ。しかし、俺は彼女のことを守らなければならないのだ。

俺はそう思うと同時に彼女の手を掴み急いで学校から出て行こうとしたのであった。

すると彼女の方から手を引っ張られて止められてしまったのである。そして俺の方を向いたかと思うとその人物の顔は先程とは違い真面目なものになっていた。そのことに俺は驚くとともにその顔は俺にとってすごく懐かしい感じにさせられたのだ。俺はその人の名前を口に出そうとした時だった、急に体が引っ張られ始めたのだ。俺は、そのまま気を失ってしまったのである。気を失う直前俺に囁くような声で、『必ず迎えに行きますからそれまで待っていてくださいね。』

そして次に目が覚めた時は俺は見知らぬ場所に居たのだった。そうして俺は自分が生きていることが不思議で仕方がなかったのだ。そう俺が寝転んでいる場所は、学校の教室の中である。俺はどうして学校に寝かせられているのかがわからなかった。だが、そんな俺に構わずその少女は、声をかけてくる。俺は、自分のことを助けてくれたであろうその少女の方へ振り向くと俺の目の前には見たことのある制服に身を包んだ女の子が座っていたのだ。そうその正体とは俺の恋人になったばかりの神崎結花という女の子であった。そう、彼女はその昔助けられなかった幼馴染みなのであった。

彼女は元気そうにしている姿を見て思わず涙を流してしまう。その涙を見た結花は、焦りながらもそのハンカチを渡してくれたのである。そうすると突然彼女は立ち上がったのである。俺は慌ててその後を追うとそこには、あの時助けようとしたあの女の子の姿があったのだ。そうして彼女はあの時と同じように笑顔を向けながら、あの時と同じ言葉を口に出すのだ。

『はじめまして、そして久しぶり!あなた!』そう言って抱きついてきた。

そうして彼女は俺に説明してくれることになる。まず最初に自己紹介を済ませてお互いにお互いを信用できるようにしてから本題に移るようだ。彼女はこの世界を管理をしている女神であるらしい。だからあの時も神としての力を行使することができたのだと。そしてその話を聞く限りあの時の神様とこの子の力は似ている気がしていたので、おそらく間違いないだろう。俺も名前を名乗った。そうすると彼女は驚いた顔をしていたが直ぐに平常に戻り俺のことを褒めてきたのである。

そうして、俺は何故俺がここに居るのか、なぜ俺は助かったのかなどを尋ねたのであった。その質問には俺にもよく分からないということだったので少し残念だったが、その話の中で分かったことは、その女神はどうやら俺のことが気に入らなくてわざわざこの世界での出来事を観察していたのだというのだ。俺が、悪魔と死闘を繰り広げていたことや、その結末について彼女は知っていたようであった。そして俺が彼女を救ったのだということにも、 俺はそのことを話すと彼女が、

『あぁそれなんですが、実はあれあなたを操っていたあの悪魔のせいだったのですよ。あいつはこの世界をめちゃくちゃにしたあげくに、あなたを殺そうとしたのにあなたを殺さなかったのですよ。あいつにとっては邪魔だったはずのあなたの命を助けたのはなぜか分かりますか?』

その問いに俺はもちろん首を横に振るのである。

『あいつが私達神々に歯向かってきた時にこの世界を滅ぼされると私達の力が使えなくなってしまうのですよ。つまり、私達が居ないと、何もできないということになるのです。そして私達は私達に歯向かう者達の味方なのであいつを助ける理由はないという訳です。だからあいつを殺す為にあなたを利用したのですがあいつがあなたに何か特別なスキルを与えたおかげで、あのスキルは発動しなかったのでしょう。

そしてあの悪魔は結局あなたによって殺されましたがあなたはあの力のせいで死んでしまったのであなただけ元の世界に戻すことは出来ませんでしたが私の力でこちらの世界でなら、元の体に戻ることができそうなのであなたにお願いしたいことがあるのですが、私と一緒にこの世界に来てくれませんか?私はどうしてもあの悪魔を殺してしまいたいので協力していただきたいのですよ。そして、あの悪魔は私一人では倒せなかったので誰か他の仲間を探して欲しいと思っています。どうか一緒に来てもらえないでしょうか?お礼はいくらでもします。』

彼女は必死になって俺を説得しようと思っている様子が伺えた。でもその提案を飲むことはできなかった。それは当然である、俺は彼女と一緒じゃないと生きていける自信がないのである。しかし彼女があまりにもしつこく誘ってくるので仕方なく俺は折れることにしたのであった。

それからというもの俺はこの世界に住まう人間ではないということでその事実を隠すためにこの世界の勇者になることを勧めてくれたのだ。そこで俺の本当のステータスを見せてくれと言うので見せることにする。そして彼女は驚愕の表情をして固まってしまっていた。

『ちょっとこれ見せて貰ってもいいですか?』そう言って彼女はそのカードを俺に見せてきたので俺はそれを見せたのだが彼女は、俺が予想もしていないことを話し始めたのだ。なんとこのカードが本物だといいだしたのである。

俺にはその事がどうしても信じられなかった。そして彼女に俺の能力の説明をして欲しいという頼みごとをする。その話を聞いた上でその話が真実なのかを確認するためである。するとその女性は俺に自分の固有能力を俺に与えることで、自分のステータスを見ることができる能力を付与してくれると言ったのだ。

そして、俺は彼女に能力を与えてもらえる事になったのだ。俺は早速彼女の指示に従うことにした。すると彼女は俺の頭の中に直接語りかけてくる。その内容はこんなものであった。俺はその内容に唖然とすると共に俺の心の中では疑問符が大量に浮かんできてしまったのである。

俺はそのことについて聞いてみる。そうするとこの世界の人間にその能力は与えられることはないらしい。しかし、そのカードを使えば、ステータスを見ることが可能になるらしいのだ。しかしそれは本来そのカードを持っているものだけに限られているはずだったので俺のこのカードで見れたというのはあり得ないことだったらしいのだ。しかし、あの時あの場所であのカードは光り輝いていたからこそ俺がそのカードを使う資格があると判断したからだというのだ。そして彼女はこうも言ったのだ。もし仮にそれが偽物だとしても俺にはそれを見抜くことができるというのだ。

そして、俺がその言葉を半信半疑に聞き流しているうちにその作業は終了したようで、これでいつでも確認できるようになり、俺以外の人も見えるようになったというのだ。俺は、その話を聞き終えてすぐに、ステータスの確認をしてみたのである。すると俺はとんでもないことになっているのに気づいたのだ。

俺はまずは、その女性の名前を確認してみた。そしてそこに書いてあった名前は神崎結花であった。そう、俺はあの時の記憶を取り戻していたのである。俺の恋人であり、幼馴染みだった少女の名前である。俺が彼女の名前を呟くと、彼女は嬉しそうな顔で返事をしてきた。しかし、俺に抱きつこうとしたので俺は、急いでその場から離れようとしたのだ。

しかし、彼女は諦めなかったのだ。俺の手を強引に引っ張って自分の胸に当てて抱きついて来たのである。そして彼女は耳もとで囁いてきたのだ。俺は恥ずかしくなりその言葉を否定する。そしてそのあとの彼女からの一言に思わずドキッとしてしまう。そう俺にはもう一人大事な人がいることを思い出したのだ。そして、俺はその人に連絡を取ってみることしたのだ。

『もしも〜しお兄ちゃん大丈夫なの!?何か変なことに巻き込まれていないよね?』

その心配してくれる声は、俺の大好きな妹の美優の声であった。そうして、俺は無事であることを伝えるとその子は心の底から安心していた様子であった。そして俺もその子に会いたくなっていたのだ。俺は、その子に会えないのかを聞く。そうすると、今は会いに行けないので俺のところに転移させるのはダメだと言われたのだ。その理由を尋ねる。

『その、まだ私達がその人に会ったらまずいことになりそうだったから今はその人だけにしてくれませんか? その人は私の知り合いだから私から事情をきちんと説明させてもらいます。』と言われてしまった。だから俺はその提案を受け入れ、連絡先を交換するとまた会う機会を作ることを約束して電話を切るのだった。そしてその女性の方へ向き直った俺は、彼女の事を紹介したのである。

俺はその後、結花を連れて外に出ると俺はこの世界で使えるお金を手に入れる為にクエストを受けることになったのだ。そこで俺たちが受けたのは、オーク退治であった。その依頼内容を確認したところかなり強いモンスターと書かれていてその討伐難易度はかなりのものになっていたのである。その事に驚きつつ、俺達はその森へと向かうことにしたのだ。

その森の中へ入って行くと俺は嫌なものを見てしまうのであった。そうその目の前には、あの時と同じで悪魔と結花に似た女の子が戦っていたのである。そして俺は、あの時と同じように結花が殺される未来が見えてしまったので俺は急いで二人の元へ駆け寄ると悪魔はこちらを向いたのだ。その瞬間俺は死を予感したがそんなものは関係ないと思い俺は、そのまま突っ込むように走り始めたのだ。俺は悪魔の一撃を受け止めた。その力は俺が受け止め切れるほど生ぬるいものでは無かった。俺は腕が千切れそうになるほどのダメージを負うがなんとかその攻撃を受け止めることに成功する。そうして俺はあの時みたいに攻撃に移るのではなく時間稼ぎを始めたのである。

すると、俺が助けにきたと思ったらしい。その女が話しかけてきたのだ。

『あなたがどうしてこの世界にいるんですか!それになぜこの世界に来れるんですか!』

彼女はそう問いかけてきたが俺にも分からないことなのだ。だから俺は正直にそう伝えると彼女が急に取り乱して暴れ始めようとする。その様子を見兼ねた俺は彼女を無理やり落ち着かせようと頑張ったが無理だったので気絶させようと考えたのだ。だがその考えが上手く行かなかったのは、この場にもう一体の悪魔が現れ、こちらを睨んで来たからだ。俺はその悪魔の目を見た途端に体が硬直し、動けなくなってしまうのである。しかしそれは、一瞬のことであったので俺はもう一度動き出そうとする。その刹那、 俺はその目に見えない速度の攻撃をもろに食らってしまうのである。俺はその攻撃を受けた衝撃によって、気を失ってしまうのだった。その光景を俺は見ていることしかできなかったのである。そのせいで俺は何もすることができなかったのであった。

目が覚めると俺は地面に横になって倒れていた。俺は何があったのかを思い出すために周りを確認しようとする。

『ここは、いったいどこなんだ?俺がさっきまで立っていた場所に戻らないと、あれ、なにがおこったんだ?』

すると、その女性が俺の方を見て、話しかけて来た。

『良かった、あなたが生きてくれていたなんて私は嬉しいよ。

ねぇ君、これから私はある人と話があるんだけどいいかな?』

俺はこの子から話を聞けるなら聞いてみたいと思い首を縦に振るのである。

『ありがとう、じゃあ付いてきてくれる?』そう言ってその女の子は歩き出すので俺もその子に付いて行く。そうして俺達は少し離れた場所にたどり着いたのだ。

俺はそこであの女の人が誰かと会話をしていてその相手のことをあの子が知っている感じがした。その事を聞いたら、彼女は教えてくれた。その人の名は神無月聖香と言うらしい。そうすると俺の妹の名前がその人だったのだ。その事を彼女に言う。そうすると彼女はその人物のことをもっと詳しく教えてくれたのである。

『この子は私の親友の子だよ。まぁ私達の親友は他にもいるのだけどその人たちの中で私達のことが大好きなのはこの子とこの子の母親だけだと思うんだよ。そしてその二人の親はこの子を産んだ直後に亡くなっているので実質この子はたった一人でその母親の思い出を守り続けて来ているの。その事がどれだけ大変なのか私にはわからないけど私はそんな辛い環境で暮らしてきた親友のこの子をほっておくことができなかったから一緒に暮らしていたんだよ。そしてこの世界に来たのは、親友と一緒に暮らせるようになってこの世界も楽しくなったしあの子は、この世界の人間として生活できるようになってきてるからそろそろお別れして元の世界に帰してあげようと思って。私は、もう十分幸せになったので。』

彼女は、俺には理解ができないような難しい内容を語って俺に微笑みかけてくるのであった。そして俺も彼女が言った言葉に納得がいくことがあったのである。俺もあの世界に家族を置いてきてこっちに来てしまったのだから。でも俺の場合は妹がいるがあいつらも元の世界に残って俺の分身がこの世界の人達を守ってくれているので心配は無いと思う。しかし、この世界の住人の結花はどうしているのだろう?俺が向こうに残した唯一の心残りだった。

そうして俺は、彼女と別れた後、その日はそのまま宿で寝ることにした。そうすると俺はその夢で懐かしい人に会うことができたのである。俺の恋人でもありこの世界で初めてできた友人でもある女の子がそこにはいて、俺はその子に話し掛けた。

そうすると彼女は驚いた顔してすぐにいつもの顔に戻ると、俺は何故かその少女の事が好きになっていて抱きしめたいという衝動に駆られていくのである。そして俺は無意識のうちにその行動に移ってしまっていた。そして俺は目覚めてからしばらくすると、俺は自分がした事に気が付き慌てて着替えを済ませると朝食を食べに行く。そうして俺とあの人は食堂に入るとあの時の記憶が鮮明に戻って来て俺は、頭が痛くなる。

そして今日もまた、あの悪夢のような光景を見なければならないのだと思い憂鬱な気分になってしまうのであった。

俺はその日の夜も結花との約束を果たすために出掛ける支度をする。すると突然あの女性が現れたのだ。彼女は俺に用事があるらしく話したいと言ってくるのだが今はそれどころではなかったのだ。俺は断り続けるがその女性もしつこくついて来るという攻防を繰り返す羽目になってしまったのだ。その事に嫌気が差してきたのもあり俺は渋々了承することにしたのであった。そうしてから俺は彼女に連れられて町の外へと出た。その場所で待っていたのは俺の恋人であり、大切な幼馴染みであり、今は俺にとって誰よりも愛しい女性である神崎結花であった。その女性を見た俺は驚きすぎて固まってしまっていた。

『え、どういうこと、なんでここに居るの?』

その質問に対して彼女はこう答えたのである。『やっと私の名前を呼んでくれたわね。あなたのおかげで、私とお母さんをこの世界に召喚したのは魔王様だったってことがわかったの。そして、私がこの世界に居られた理由は、この世界の魔王様が、この世界と私達がもともといた世界で魂を交換していたかららしい。』彼女はそのことについて詳しく説明をしてくれたのだ。その事実を知ってから彼女は今までの記憶を取り戻したらしいのだ。俺も、あの人のおかげで記憶を取り戻すことが出来た。

そうして、俺は結花と二人きりになれる所へ行く。そこで俺たちはお互いに近況報告をした。結花の方は俺がいない間も頑張って来ていたようでとても強くなっていたのである。そして結花からあの人が誰なのかを聞かれた俺は、俺と彼女達が恋人であったことを話す。すると、結花からこんなことを言われてしまうのであった。『私のことはこれから結花って読んでくれるよね?じゃないと許さないもん!』と言いながら笑顔を見せる彼女を見ると俺はこの人に惚れてしまったのだ。その後の夕食では、俺は自分のことを包み隠さず全部話すことに決め、俺が勇者でこの世界を救うために召喚されたことを話した。そうすると彼女の反応が気になり俺は聞いてみる。

『ねえ、君は俺がもしこの世界を救う為だけに生きてきてこの世界から追い出されたら俺のこと、嫌いになるかな?』と俺が問いかけると、彼女は真剣に悩みだしたのである。そして少しの沈黙が流れた後に、彼女はこういったのだ。『うん、そうだね、私もこの世界を救えるならこの世界に住むみんなのために戦ってみたいかも。そういえばあなたは、どうして私を助けてくれたの?』その問いに俺は答えられないと伝えると、彼女は俺の頬に手を当てると、顔を真っ赤にして照れながらも俺に話しかけてきたのだ。

「あなたが助けてくれなければ今の私は存在していなかった。だから今度は、あなたの役に立ちたいの、そうじゃなくてもっと別の形でね」その一言に俺の心が揺れ動いた。そう俺はその瞬間に恋に落ちてしまったのであった。

俺はそれから毎日結花に会いに行っていろんな話をしていた。そうして、一ヶ月が経つ頃にあの女性がやって来て『そろそろ君にはこの世界から出ていってもらうことにしたんだ。私は君のことが気に入っているんだ。また遊びにおいで』と言われ俺はこの世界から出る準備を始めたのだ。俺は、ある物を作ってからそれを持っていこうとする。それは結花とお揃いで買ったキーホルダーだ。俺はその二つを持っていこうとする。しかし、一つは持っていけないみたいで俺にそのキーホルダーを渡して欲しいと頼み込むが俺は絶対に渡さなかった。そして俺は彼女にお礼を伝えると、この世界を後にするのであった。

俺がこの世界に来て、もう2年以上が経った。俺が結花と出会ってからは4年もの月日が流れていた。俺が結花に好意を寄せていたからか、この世界では恋人同士のように接していたから、この世界の人たちには俺が異世界から来たなんて言うと変な誤解を受けかねないと思った。なので俺はその事を伏せて生活する事にしたのであった。俺が、街に出掛けると、その途中で、あの人に出会ったのである。そうあの人とは、俺を召喚したあの人のことである。

その人はとても元気な人で俺を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。そして俺はその人と色々な会話をして仲良くなったのである。そうすると俺がその人の話を聞いていた時にその人がいきなり俺にこう告げるのであった。

『お前はいつまでこの国に留まるつもりなのだ?私と一緒ならいつでも好きなタイミングで元の世界に戻せるんだぞ?この世界に来た時はそんなに帰りたいとは思わなかったのではないのか?』その言葉に俺は動揺を隠しきれなかったのである。

俺は、確かにこの世界に初め来たときはこの世界の人々を守れるような強い力さえあれば良いと思っていたが、その考えは、あの人の話を聞いたことによって少しずつ変わってきたのだ。そして俺はあることを考え始めていたのだ。それはこの国の人々の生活を守って行きたいと考え始めたのである。そうして、この国の人々の暮らしを見て俺が思ったのは貧富の差が激しくその人達が満足できる生活をこの国が送らせてあげられていないということだったのだ。

俺はこの世界にきて様々な経験を経て少しはこの世界について知ることができた。そして俺はこの世界を変えられるのならばそうしたいと考えていたのだ。

そう思い始めてからの俺は積極的にこの国の問題点や改善点などを探すようになった。そしてある日、その事を俺がいつものように街の見回りをしていて、たまたま見つけた路地裏に入っていく一人の少女の姿を見かけたので、追いかけてみると、その女の子は泣いていて俺の顔を見たら急に飛びついて来て泣き出したのだ。俺は何があったのか聞くとその女の子は俺を睨むと、『あんたが私の父ちゃんを返せよ!!』と泣き叫ぶ。そうするとその子の父親らしき男性がこちらに歩いて来るのが見える。その男性はその女の子に向かって『おいこっちに来るな!!早く帰れよ!!』と言うが女の子が泣き止まない。そしてその男の子が女の子を無理やり連れ帰ろうとするが抵抗しているのか、女の子が中々離れようとしない。そうしてその親子の口論が続いていると、俺はその二人の前に立って止めに入る。

その光景にその子達は困惑していたが俺は、その二人の事情を聞かせてくれるよう頼んで、まずはその男の方に話しを聞く事にした。

そしてその男性から事情を聞き出すことに成功するがその内容を聞いて俺は衝撃的な真実を知ってしまうのである。その話は、娘が誘拐されたのが原因でこの男は妻に離婚され財産も全て無くして自暴自棄になっていたのだというのだ。そして俺もその子に謝ることしかできず、その子が俺から離れようとするので引き留めようとしたところ、俺の腕が掴まれる感覚を覚える。俺がその方向を向くとそこにいたのは俺がこの世界で初めて恋心を抱いた女性である神崎結花がいたのだ。俺はその子の手を振り払って、この子の父親に『貴方が俺を呼び出したのは間違いだとはっきり分かりました。俺が貴方達を助けますので一緒に来てください』そう言ってその二人を強引に俺の家へと連れていったのであった。

その家についた俺は早速、その親の言い合いを遮って話を始める。そしてその父親から事情を全て聞き出すことに成功する。そうすると、その女の子の父親は俺に感謝して何度も感謝を告げて来たのだ。

そしてその事を聞いた俺の中で一つの疑問が生まれる。何故、その父親があの人をこの国に呼び寄せた理由を言わなかったのだろうかということだ。そう考えると俺の頭の中にはとある予想が立てられるのであった。俺は、その父親の目をしっかり見てその目を見ながら『貴方の本当の目的は俺にその男を倒す為の力を俺に与えてくれ、そして俺が魔王を倒したあとにこの子を自分の手に戻すためですよね?』そう尋ねるとそのお父さんは黙り込んだ後、観念したかのように語り始める。

その話の内容はあまりにも信じられないものだった。そうその人はその昔魔王に大切な人を殺されてその復讐の為に魔王を殺せるような強い仲間を探しているのだというのだ。しかもこの世界の平和を守る為にも、そして、大切な人にもう一度会いたいというその願いのために。その話から察せられるように、俺はその人の娘さんを助けに行くことを決意するのであった。その決意を固めた俺は、まずは俺に助けを求めてきたあの子のお父さんの元へと向かったのであった。

あの人のお願いを引き受けた俺と結花は俺の家の一室で、あの娘を呼んでくるまでの間、二人で雑談をしている。結花との会話も、最初はぎこちなかったものの、徐々にお互いの距離感を測りながら話をしていく内に、段々と慣れてきて自然に会話が出来るようになっていったのである。そしてしばらくすると俺達の目の前に、俺に用があると言ったあの人が現れる。俺は彼女を見るなりこう言ったのである。『俺はこの世界を救えれば後はどうなってもいいんです。俺は俺自身の意思でこの世界に残ることを決意しました。ですから、貴方に協力することは出来ません。それにこの世界で俺の恋人はあの人しかいないんですよ』そう言うと、俺は彼女の返答を待った。すると彼女が、こんな提案をしてきたのである。『じゃあ、もしこの世界が魔王に滅ぼされたとしたなら君はその世界に残りたいと言えるかい?それなら、君が残れるようにするから私に協力してくれ』俺はその問いに即答する。そうすると彼女は、何かを考えているようで、その質問に俺をこの世界に残すことが出来るかと、俺がこれからこの世界を魔王から守り切れるほどの力が身につくのかと、そう聞かれたので俺はその答えを口にする。『俺は勇者なんだからきっと出来ると信じています。だから、その言葉には絶対に負けたくないですね。この世界を守れるのなら俺は何でもやりますよ?』俺はそう宣言する。そして俺は彼女に連れられて外に出るとあの子は俺を見て驚きの表情を見せる。俺は、この子を見て、この子がこの先どういう人生を歩むのかを思う。そして、俺が今何をしたいのかをしっかりと考えた。俺は、あの人の気持ちを理解したうえでこの国にいるみんなを守りたいと思い始め、そう口にすると、結花がその事を否定せずにただ俺の事を応援すると言ってくれる。

俺はその後、あの人が言っていた通りの場所に向かう。そこは王都の外にある、小さな教会だ。俺はそこに着くと、そこには結花が待っていてくれてその側にはさっきの子とその両親がいるのである。

俺は、その子に、もうこの世界では会えないかも知れないから最後に伝えておくね。『ごめんね今までずっと隠してて。でもいつか君にも話せる時が来たら話すつもりだったんだ』俺はその言葉を言うと、彼女は涙を流していたのだ。その光景を見ると胸の奥に締め付けられるような痛みを感じ、その感情は涙となり流れ落ちるのであった。

その言葉を聞いたその子は、笑顔で返事をしてその教会を出ていくとあの人も続いて教会から出ていくのである。そうして俺の意識は再びこの世界に来る前の状態に戻るのであった。

私は、彼の言葉を聞いていた。彼は、私を守るために戦ってくれようとしているのだ。私はその事に感動を覚えつつも少しの不安を抱えながらも彼に付いていこうと決心したのである。私は彼に守られるだけではなく彼を守れるような力を手に入れようとそう考えたのである。しかし、彼について行くには私が弱いと彼と釣り合わないし、守られっぱなしというのは性に合わないのだ。なので私はその日から毎日剣の練習をした。少しでも強くなりたくて、少しでも守られる存在になりたくなくて。

そして私はある日彼が私を特訓するためにいつも通っている練習場へと向かうとそこで私よりも遥かに大きい人と戦っている姿を見てしまったのだ。その戦い方はまるで私の理想であり憧れであった人の技そのものを体現しているようであった。そう私はまだ見ぬ私より強そうな人物と訓練をし始めたのだ。

私が初めて出会ったこの世界で一番最初に友達になってくれたのは私と同じぐらいの小さな女の子だった。その女の子はとても優しい人でこの私なんかとも一緒にいてくれたのである。その子は本当に優しくいつも私のことを励ましてくれるのである。その子は自分が一番辛いはずなのに。そんな子にこれ以上無理をさせないように、今度は私自身がその子を守ってあげられるようにならないといけないのだ。

そんなことを考えながら練習していたので気が付けばかなり汗をかいてしまっていた。

そして次の日も同じようにまた練習を始めると突然声が聞こえてくるのである。それは昨日聞いたばかりのような懐かしい声の主であの人のものであったのだ。そういえば、あの人に教えてもらおうかなぁなんて考えていた時にいきなり後ろから抱き着かれる感覚を覚えるとそこにいたはずの男の子はいなくなっていて代わりにとても大きな体格の男性がそこにいたのである。そうすると男性は私に話しかけてきて、こう言い放ったのである。『貴女に少し頼みたいことがありましてね?とりあえず、お話しだけでも聞いて頂けませんでしょうか』そう言われた私は男性と一緒に家に帰ることになったのであった。そうしてその男性に連れられるまま歩いていくと、男性の家へと案内される。そして男性は家に入ると急に立ち止まるのであった。すると急に男性は『あなたにこの世界を守る覚悟がありますか?』と真剣な眼差しで尋ねられたので私はしっかりと答えるのであった。そうしてそれからの時間は楽しくもあり、厳しくもあった。しかしその時間を私は楽しいと思うことが出来た。なぜなら、その男の子と一緒にいるのが凄く居心地が良かったからである。

俺は、神崎が俺に話があると、言い出してついていくことになったので、ついて行くことにする。俺も彼女と色々と話したいなと思ってもいなかったわけではないのである。そして神崎はどこか目的地に向かって歩いているようである。俺は神崎が俺に向かって何かしらの話をするのかと思ったのだが何も話さず沈黙のまま歩き続けているだけ。だが、何故かそれが嫌ではないと思っている自分も存在していたことに驚くと共にその理由も薄々ではあるが分かり始めていたのだ。多分神崎のことを好きになってしまったからであろうと考えていると、俺達は目的についたらしくその場所は墓地であることがわかるのであった。そして神崎に言われるままに進んでいくとある墓の前にたどり着くのであった。そしてそこの墓の中にはある名前が書かれている墓石があった。その名前を見た俺は心底驚いたのである。何故なら、その名前の人物はこの世界に来た時に俺の知り合いの夫婦の名前だったのだから。俺の頭の中を色々な考え事が駆け巡るのであった。そうして混乱状態の頭を整理して落ち着かせていると神崎に手を握られて、そのまま引っ張られてしまうので俺は彼女の後についていくことに決めてその場を離れることにしたのであった。

俺は彼女に手を引かれながら歩いていくとその手を引っ込めようとすると、俺の手を握ってきた人物が口を開く。『久しぶりだね、結ちゃん』その言葉で俺は彼女が誰なのかに気づいたのである。『なんで、俺のことを知っているのですか?』と尋ねるが彼女は、その質問の答えの代わりに俺がなぜここに来たのかを聞いてくるのである。俺は彼女の問いかけに答えずに、この世界で起こっている事や俺の目的などを伝えるのであった。すると彼女はこう言うのである『やっぱり結ちゃんはあの時の男の人なんだね』と言うと彼女の瞳にうっすら涙が溜まってくる。その反応を見て俺が戸惑ってしまうとその様子に気付いた彼女が『なんでもないから』と言い誤魔化す。俺はその様子が気にかかったのであるが、今は俺の大切な人を、この世界に生きる人々を守る為に強くならなくてはいけないことを優先するのであった。

その日の夜。俺は、あの女性に俺の全てを伝えた後に俺が勇者だと知った彼女達を守る為に強くなる為に修行を始めようと思っていた。しかし、その女性と結花はもう俺の側から離れて行ってもいいと言ってくれている。俺はその言葉に甘えることにするが俺は俺の為に彼女たちをこの世界から助け出してくれる人達を探す旅に出ることに決めたのである。

その事を告げた時、あの女性は、こんなことを言った。

『君はきっとこの世界の人間には出来ない事をやり遂げようとしているんだろう。だから私は君を全力で応援したい。私に君を止める権利はない。君のやりたい事をやってみると良い』

俺はそう言われてからしばらくした後に、あの人は最後に俺をこう呼んだ。

『結くん』と。俺はその呼び慣れた呼び方を久しぶりに聞いて自然と顔が熱くなるのを感じる。そうすると俺はその女性に対して無意識のうちにこう口にしていた。

『ありがとうございます』と

『これから君はどこへ向かう予定なんだい?』

俺がこの世界に戻ってきたその日に俺は、俺を助け出そうとしてくれていた仲間と会う約束をしていたので俺はまずは、この国の外に向かうことにしたのだ。

『これから俺は、勇者として魔王を倒しに行きます。俺の仲間に魔王が復活していることを伝えないといけないので一旦魔王城に行かなくてはならないんです』

そうするとあの女性は、魔王城へ行く方法を教えると、そう言って、俺は魔王が復活しているという魔王城への道のりを教えてもらったのであった。そして俺がその魔王城にいくために動き出した時、あの人からもう一つ言葉を掛けられる。『結ちゃん。必ず無事に戻ってきて。それとこの世界を頼んだよ』そうして俺は、その言葉を受けて魔王城に向かったのである。魔王を倒すための旅が始まる。

俺と別れた後の神崎さんと俺はあの人がこの国にいる間お世話になっていた家に着くと結花と結花の両親が待っていてくれて、結花が嬉しそうに結花の母親に飛びついている光景を微笑ましく見ていると、結花と目が合いお互いに笑い合う。そんな幸せを感じながらも俺と結花は、あの人のことについて話をする。そしてあの人が亡くなったと聞かされると結花は泣いてしまいそうになる。しかし彼女は必死で涙を堪えているのであった。

俺は結花が泣く姿を見るのは初めてだったのでどうしたらいいのか分からないがとりあえず彼女を抱きしめる事にしたのだ。するとその事に結花はとても驚いていて、顔を真っ赤にしているのであった。

そんな感じで俺たちが、この家の人にお礼を言い終え、街を出るとすぐに出発し、次の日には目的地の魔王城の近くの村に到着するのである。そしてその村の近くにある森の中で休憩を取ることになったのである。すると突然声をかけてきた男が現れたのであった。その男が、あの時会った少年で、名前は黒井真という。その男は、あの人に鍛えられていた弟子で、あの人と同じ力を持っていたのだ。そしてその少年の師匠の名前は、水嶋勇吾という名前で俺がこの世界で初めてあった人物でもあるのだ。俺は彼に自己紹介をしたのだがその時、結花は彼に少し冷たい態度を取っていた。多分俺が彼と喋っているのに嫉妬したのだろうと思う。なので俺は少し意地悪をしてみたくなったのである。そうして俺が彼の胸ぐらを掴むと結花は少し不機嫌そうな表情を見せる。その事で俺はさらに調子に乗り始め、俺は彼と一対一の真剣勝負を始める事にしたのである。そして俺が圧勝してしまうと彼は少し悔しそうな表情を浮かべながら立ち去って行ったのであった。

そして俺達が森を進んでいると、そこには一人の青年がいた。しかしその青年の顔に見覚えのあるような気がしてよく見ると以前、俺をこの世界へ召喚した王の息子でありこの国の王子でもある、神崎拓斗だったのである。その彼がここにいるということはもしかするとあの女性が言っていた事は本当かもしれないと思ったのだ。俺は、とりあえず挨拶を交わすとその青年にこの場所に来る前に会って、一緒にこの世界を守って欲しいとお願いされたことを伝えると、彼はこの世界の危機が近いということも話してくれたのだ。その後すぐに結花の父親も現れる。そして話の流れで何故か彼が戦うことになるのだが、そこで結花も戦闘に参加することになったのだが、俺はそんな状況になった時に違和感を覚えたのだ。その感覚はまるであの人が生きていた頃の感覚のような気がしたのでまさかと思って話しかけてみると本当に生きていたのであったのだ。そして何故かあの人と会話をしているうちに結花から殺気のような感情が伝わってきて焦った。俺はなんとかそれを振り払いつつその場の勢いで、彼と協力して戦ってしまった。結果としては何とか倒せたのである。そして結花を見ると、結花は頬を膨らませていて、俺はまた変なことをしてしまったのかなぁと思いながらその場は終わるのであった。それから数日が経過して遂に、魔王が復活したと言われる魔王城までたどり着くのであった。

俺と神崎達は、とうとう、その日を迎えることができた。俺達は、この世界の人達を救うことができるのだろうか?不安になりながら進んでいくと急に目の前に巨大なドラゴンが現れるのであった。俺は、そのドラゴンがあまりにも怖かったので、神崎達の後ろに隠れてしまう。

その瞬間、急に地面が揺れ始めてそのドラゴンを中心に爆発が起きると、周りにあった木々は全て燃え盛り、その衝撃に耐えきれずに俺達は全員吹き飛ばされてしまう。神崎と、俺はお互いの事を確認しあい怪我はないようだったが結花は俺よりも軽傷ではあるものの、かなりの傷を負ってしまったので、俺は自分の力を限界を超えて使ってしまう事を決意するのであった。

俺はあの人の事を想うと体が勝手に動き始めるのであった。そして俺はその力で、この世界からあの人を消した魔王と呼ばれる存在を完全に倒すことを決意し、そして全力で戦いに挑むのであった。そして、俺が全力を出し切った攻撃は見事命中して、魔王を倒すことに成功した。その時には、あの人も亡くなっており、その事を理解した俺は悲しさのあまり涙を流してしまったのであった。しかし俺には今すべきことがあると切り替えて気持ちを持ち直し、あの人を殺した仇の魔王を倒す為、俺が、神崎と、その仲間と一緒に魔王と戦う事になったのである。そして俺は全力を出すことを決意するのだった。

「ふぅ、流石に、あいつには勝てないみたいだ」

俺が呟くように口にしながら倒れこむと、それを聞いた俺は、意識を失いかける。その状態で俺はある言葉を発してから、気絶するのであった。それは、あの人に託された思い。あの人に認めてもらう為に強くなった証としての言葉。その言葉を発した後、俺は気を失ったのだった。その言葉とは『ありがとうございます』だった。

私は、あの子が目を覚ました後、あの子の体を調べたけれど特に変わったところは無く普通に健康的な状態だったから安心していたけど念の為にと私に魔法を使って調べてほしいと言ってきた。私はそれに答えるように魔法を使った結果、私はあることに驚きつつもあの子に伝えなくてはならなくなってしまった。私がその事を伝えると、結ちゃんは何か覚悟を決めているかのような表情をしながら私の手を握る。私に出来ることといえば、これから起こる事を全て受け入れてくれると嬉しいと言うことだけだったのであった。

俺は目覚めるとそこは真っ暗な空間が広がっていたのである。しかし、なぜか俺がそこに存在しているのかということが分かる不思議な場所に立っていた。その空間には何もない。そう、何もない場所なのだ。俺以外の生き物がいるわけでもない。ただ無があるだけ。俺はなぜ自分がこのような所に立っているのかわからないまま辺りを見渡しているとあることに気づく。そのことに気づいた俺は、急いでこの真っ暗な空間に明かりをつけてくれと、そう思ったのである。するとその願いを聞き入れてくれたかのようにその場所には光が差し込み始めた。俺はその眩い光に目が慣れると視界が広がる。その広がった世界を見て俺は言葉を失うほど驚くのである。

なんと、俺の眼前には、見たこともないほどの美少女がこちらに向かって微笑みかけてくれているのである。そしてその女性は優しく微笑むとこう告げたのだ。『やっと来れたんだね』その言葉と同時に彼女の瞳からは涙がこぼれ落ちるのであった。そしてその少女が、涙をこぼすのを見た俺は心苦しくなり、どうして彼女がそのような行動をするのか分からずに戸惑っていた。

「ここは何処なんだ?」

すると、彼女は少し考える仕草を見せた後に口を開く。

『そう言えば、まだ自己紹介してなかったよね』

そう言うと彼女は優しい笑みで自己紹介を始めようとすると、俺の心の中で、この人を助けたいという強い気持ちが湧き上がってくるのを感じる。俺はそんな感覚を覚える。

『はじめまして。私は水嶋結花。あなたの名前はなんていうの?』

その名前を聞いて、俺は驚愕した。そして俺は彼女の名前を知ってる。

『俺は水嶋勇吾だよ。よろしくお願いします。それと俺を救ってくれて、助けてくれてありがとうございます』と。俺の感謝の気持ちを伝えた。そして続けて俺は彼女に話しかける。そうすると彼女は驚いたような表情を浮かべていた。俺はそんな表情の変化に気づきながらも話を続けようとして口を開いたのだが、そこで急に俺と結花さんが向かい合っていたこの場は突然、暗闇に包まれたのだ。そしてそれと同時に結花さんの表情が曇り始め俺をどこかへ連れて行こうとするかの如く手を掴んでくる。そして俺と結花さんの姿が見えなくなる直前に俺は最後に伝えたかった言葉を言う。そして俺はその声が届くかどうかわからないが精一杯叫んだ。そしてその言葉は俺の耳元に届いたのである。俺がこの言葉を言い終えた時に結花さんの手が俺の手から離れた。

そして俺は一人真っ暗な世界に取り残さてしまった。その真っ暗な世界で俺は一人でどうすればいいのか分からないで立ち尽くしていたのだ。そしてどれくらい時間が経過したのか分からない程長い時間、俺は真っ黒に染まった空間にいたのだ。そんな状況が続く中で声が聞こえる。俺はそんな事に戸惑いを感じてしまう。

「えっ!?俺の声が、どうして聞こえてるんだよ」

その俺の言葉に対して返ってきた返答はとても意外なものだった。

その言葉は聞き覚えのある懐かしくて大好きだった声色だったのだ。

その声の主が誰なのか俺は瞬時に察知する事ができた。そう、俺がこの世界で初めて会ったあの人だったのである。その人の名を呼ぼうとした時にその人は先に話し始める。

「久しぶり勇吾君!まさかこうしてまた会う事ができると思っていなかったよ。君の事ずっと見ていたんだ。勇吾君はやっぱり面白いな。そして僕は嬉しかった。だって僕と同じ能力を持っていたから、僕の力を半分あげることにした。まぁでもそれは今じゃない方がいいと思うから今回はおあずけにしておくね。じゃあまたね。いつか絶対に再会できるって信じている。そしてその時までに勇者の事を宜しく頼む。この世界にはまだ勇者がいない。その事で困っていると思うけど、きっとその人達の力になれると思う。だから頼んだよ。それでは、いずれ再び会いましょう。バイバーイ」とあの人が話した後で、目の前が明るくなり俺は目を閉じると意識が飛んでいった。

次に俺が起きた時はもう夜になっており外には月明かりが出始めていた。そこで俺が起き上がったのを感じた神崎達が俺の元へ駆けつけてくる。そこで結花の存在を確認したのだが結花の顔は何故かとても青ざめていて俺の方を見る事もなくすぐに走り去って行ってしまったのである。そして俺はこの時、俺は自分の体の異変に気づいてしまった。それは全身に激痛が走っていたという事だ。しかも痛みは尋常ではないほど酷く起き上がることすら困難なほどだったのである。

その状態になってから俺は神崎達に事情を説明し、俺の状態を理解してもらった上で回復魔法をかけてもらう事になった。しかしそれでも一向に俺の症状が良くなる様子は無かった。それどころか、だんだん悪化しているのである。

俺は、もしかするとあの人に何かされて俺の命を削られているのかもしれないと思った俺はそのことを伝えようと口を開けると言葉が出る前に俺は気を失ってしまうのであった。

そして俺はそれから数時間が経過してから目を覚ますと神崎達は心配そうな顔で俺の事を見ている。そして俺は神崎達に大丈夫だと伝えた後で俺は結花のことを聞くと、結花はあの後城から出て行きその後城に戻ることは無かったのである。俺はそれを聞かされた後結花が何故出て行ったのかという事も、結花がどこにいるかも俺はわからなくなってしまうのであった。

俺は結花に別れの挨拶をすることが出来ずに俺は、魔王を倒す事を決意していた。その事を俺は仲間に報告すると全員が賛同してくれたので、魔王を倒しに行くことになったのである。俺はまず魔王城の入口で俺の仲間たちが待機してくれていて魔王討伐に向けて出発すると俺の後ろを歩いて付いてきて、俺はそんな彼らのことを頼りになる存在だと再認識し、この世界を救う為、俺は全力で頑張ろうと改めて決心したのであった。

魔王は、あのドラゴンよりも恐ろしい相手だと感じてしまっていますが、それでも、やらなくてはいけないと思い、俺は、この世界を救う為に戦う事を心に決めているのです。そして魔王と戦うと決まった俺は、この魔王城の近くにある洞窟に入り込んだのである。そして俺は仲間の一人と二人組に分かれて探索を開始したのである。その行動にはもちろん理由があってこの世界を救おうとしている俺達には、この世界の現状を知る必要があったからなのだ。そうすることで、この世界に何が起こったのかということが詳しく分かると考えたからこその行動であった。

その判断に間違いはなく、俺と、もう一人の仲間はどんどん進んで行くのである。そしてその途中に魔物が現れたが、それは先程のダンジョンで遭遇するよりかはかなり強く感じる。その強さに驚きつつも俺は剣を抜いて戦闘を始めたのである。そして戦闘が終わった後、その相手の死体が光だしその光を吸収し始めると体が光を放ち始めて進化する前の体に戻った。その姿を見た俺は、今の俺なら、この世界でも戦えると自信を持ち始めたのである。俺はそのまま歩き出すと更にその道中に様々な魔物に遭遇したのである。その度に、その相手が俺の仲間の進化後の姿を見て驚愕したりしていたが、俺はそんなことは気にせずその者達を倒すことに専念していたのであった。

俺の目の前には、巨大な蛇型の化け物がいる。こいつは見た目が普通の生物とは異なっているが恐らくだが俺の知っている生物のどれにも当て嵌まらないだろう。そんな未知の生物が目の前に現れたが俺が恐れることはなく、この敵に対しても勝てると、そんな気がした俺はその敵の首を狙って切り落とそうと俺は攻撃を仕掛ける。するとその攻撃により敵の体は切断されてしまったのである。

俺はこの光景を見て確信を持つ。この敵に勝つのは不可能じゃないと、そう思い、この先に待ち構えていたのはなんと、あの時戦ったあの女がいたのである。

俺は一瞬その人物を視認した後にこの場で戦闘を開始することに決めた。しかしここで問題が発生する。そうこの怪物は、あの時の個体と比べるとかなり強力になっていた。俺はなんとかその相手に応対していると、仲間の加勢が入り何とか倒せたがその際にかなりのダメージを受けてしまう結果となった。しかし俺はその後も諦めずに次々と敵を殲滅していき、とうとう魔王の間にたどり着いたのだ。そこに待ち受けていた者はやはりあの冒険者たちを虐殺していった魔王本人だった。しかしその魔王に負けているわけにはいかないと思い、俺は全力で戦うことを決意すると、今までとは違う圧倒的な力で相手をねじ伏せてついに魔王を俺達の勝利に終わった。俺はこの戦いで俺の持つスキルに新たな能力が追加されると同時に新しいスキルを習得したのだ。それが【闇魔法】と新たに得た【神眼の天運】と言うものである。

俺はその二つの力を使いながらその世界を見つめているとそこには、信じられないような世界が広がっていた。その光景を目の当たりにした俺はこの世界に住む人々に恐怖を与えてしまうほどの戦いが行われていっていたので急いで俺は助けに向かおうとした。そんな時に俺の前に立ちはだかる人が現れる。そう、その人物はあの勇者と呼ばれる男でありその男のステータスを確認するが、レベルが桁違いに上がっていたのである。そして俺はそんな男に戦いを挑み俺は敗北したのだった。

そして俺は、俺の持っていた全ての力が勇者と名乗るこの異世界の男に奪われてしまったような感じになってしまったのである。

「俺の力を返せ!!」と俺は叫びたかったが、そんな事は無理だと俺は分かっているから言葉を発することができなかったのだ。そんな絶望に打ちひしがれている俺の元に、あの男がやって来て言う。

「お前が、こいつらをこんな風にしてしまったのか?」と、男は俺に対して怒りの感情を向けて話しかけてきたのだ。それに対して俺は、俺の所為ではないと反論しようと思っていたが声が出なかったので俺はただ睨む事だけをしていた。

「まあいいさ、今はそんなことどうでもいいことだ」とその言葉に俺は、まだ俺は終わっていないんだと悟ることができた。そして俺はその男に殺されそうになった時にその男の手に何かあることに気づく。その手が握られているものを確認した瞬間に俺の視界が歪んだと思ったら、また俺は真っ暗な世界にいる。

その暗闇の中で俺が目を覚ました直後に、俺の近くにいる神崎達の姿があった。そして俺のことを心配していたのか泣きそうな表情で俺に向かって話してくるのだ。そんな彼女達の顔が目に入ってくると何故か安心してしまい俺は眠ってしまったのである。そして次に目を覚ます時には俺の目の前に魔王らしき人物が立って、そしてその手にはあの謎の球体を持っていた。俺はこの世界で二度目の死を迎えたのである。俺はそこで目が覚めたのでこの世界に戻ってきたのだと思い俺はすぐさま自分の状態を確認してみた。その結果、俺は一度死にそして復活したという事だけが理解できたのである。つまりこの世界の俺は一度死んでいて生き返ったというのが正しいと思うのである。そして俺が、この状況について考察してまとめていると勇者を名乗る奴が何かを話していたが俺には何を言っているのかよく聞こえなかった。だが俺の仲間が俺の代わりに質問してくれていたので俺にはまだ勇者が何の話をしているのか把握する事ができたのであった。

それから俺はこの世界のことについて少しづつだが、分かってきた。そして俺の予想通りこの世界には、あの勇者とか呼ばれる異世界人が元から存在しているわけではなく、突然出現したのだという事がわかったのである。その理由として、その勇者が現れてから魔王が出現するまで、およそ三百年の間平和が続いていたのである。そしてその三年の間に魔王はこの世界に何度も侵攻を試みようとしたが、ことごとく失敗してしまい逆にこの国の住民達に追い詰められ、この城に逃げ込む事になったらしい。それでその逃げた先が、あの城だったということである。そしてその事から考えても、この世界はもうじき滅ぶのではないかと思えてくるがそれは仕方がないことだと思うことにした。だってこの世界を俺達がどうにかしないといけない状況に追い込まれているからだ。そして俺達は、これから魔王城に挑みこの世界を救い出そうということになったのである。そして魔王と対面してから魔王に、その事を尋ねて見たらあっさり教えてくれた。なんでもこの世界を侵略しようとした魔王軍のボスがこの城の最上階に幽閉されているのだとか、だからそのボスさえ倒せば全て終わりになるのである。

俺がその話をした後すぐに城の奥へと向かい、俺達は、遂に魔王との最終決戦が始まるのであった。

この魔王城に入った時も俺の仲間の一人が、ここにある仕掛けに気づきそれを解除することで扉が開いたのである。

俺はこの城に入って最初に思った事それは迷路のような作りになっている事だと思ったのである。その考えは正しかったようでこの城の構造は、迷宮のように複雑に入り組んでいている構造になっていおりとてもじゃないけど一人で迷わずに脱出することは不可能だろうと俺達は思っていた。だけど俺は仲間達の先頭に立ちどんどんと突き進んで行くとやがて階段が見えてきて、そこを降りると大きな部屋に出たのである。その部屋には明らかに異質な雰囲気を感じる空間が存在していた。その部屋の中央付近に誰かがいるのが確認できるが、その者の姿を見て驚愕した。その者の体は人間では無く異形の存在になっていたからである。それは全身緑色で体中に目玉があるといった姿でまさに怪物と呼べる姿をしていた。そんな相手を見た仲間達に緊張が走るのを感じ取った。その者はこの世界に存在する者ではなくこの世界の生物を改造し作り出した生物兵器だった。そしてその生物兵器には、俺の仲間が放った攻撃が全く効かず俺は苦戦する。

そんな時俺の仲間の一人が、突如としてその化け物に殴りかかった。そしたらその拳に炎が宿りその化け物を一撃で倒すことに成功したのである。俺はその時に気づいたのだが、その仲間の種族は俺と同じ魔人だった。しかし見た目は全く普通の人と変わりはなく俺と見た目が違うのはその額から突き出ている一本角だけであった。俺がそんなことを考えている間に仲間が全員で協力したおかげでこの怪物を倒したのである。その仲間はどうやら仲間がピンチになった際に助けに行く為に待機していて、この場に現れたようであった。俺はその後仲間の皆に感謝を伝えたのである。その仲間は笑顔を見せてくれていた。しかし次の瞬間に仲間の体に異変が起こりその仲間はその場に倒れたのだった。そして俺が急いで近寄ろうとすると他の仲間に制止されたのである。

仲間が言うにその現象の原因が今この場にいない何者かの仕業だと分かると俺以外の仲間たちはそれぞれ武器を構えるのだった。すると、どこに隠れていたのかわからないがその人物は急に現れて言った。

「ほう貴様達の仲間が死んだことに動揺しないなんて面白い者達がいるな。だがその程度では私には到底及ばないだろうな。そんな雑魚達よりお前達にはもっと素晴らしい存在になってもらおうか」

そんなことを言われたので俺を含めた他のメンバーがその者に対して敵意剥き出しの視線を送る。その人物はそれを気にした様子もなく言葉を続ける。

「そう怒るでない、貴様らにこの力を授けようと我輩が考えたのじゃ、この力は神の領域に至ることができる。この力があれば、お前達は最強の生物となるだろう」

そんな事を言い出したのである。

「ふざけるな!!誰がそんなものに屈するか!!」俺は大声で叫んだ。

「ふっ、やはりこうなったか、しかしこれは強制的なんだよ!!」

その人物はそう告げると、その場から消えたのだ。俺を含む残りのメンバー全員は警戒しながら周囲を見渡すとそこには何もいなかったのである。しかしその直後、仲間の一人から悲鳴が上がったので俺は慌ててその場所に駆けつけてみると仲間の体が変貌していく様子が確認できてしまった。そして俺自身も、体の中にあった何かが自分の意思とは関係なく外に出ようとしていることに気づいた。俺は自分の意識が途切れて行き、俺はそのまま倒れ込んでしまう。

次に俺が目を覚ました時に俺は見知らぬ場所に寝転がっていた。その場所で俺は、起き上がり自分の状態を確認すると先ほどまでの自分の肉体の状態とは異なり、俺の身体の殆どが変化が起きていて俺はこの世界で魔物になってしまったのだ。

俺のこの世界で初めての食事が終わったので俺はとりあえずこの階層を調べることにした。ちなみにこの階にいたゴブリンを全て倒していたらレベルが上がっていた。レベルもかなり上がっていて俺のレベルは50まで上っていたので結構楽にレベル上げができそうだなと思うと気分が良くなるのだ。それとスキルは、いつの間にかついていないスキルを習得していたのである。【剣豪】と言うスキルと【魔力制御】と言うスキルを覚えていたのだ。【剣聖】は剣術の技を覚える為のものなのか、それともスキル自体に効果があるのかどちらかわからなかったがスキルを覚えたことによって使えるようになった技があるので使ってみると【連撃】と言うスキルが覚えた。そして【魔法付与】と言うスキルと俺には元々使えた技能で【鑑定】ともう一つ新しく【念話(極)】が覚えることができた。それから俺は試しに【念話】を発動し自分の脳内に言葉を浮かべてみた。その言葉を自分の脳内に浮かべるとまるで目の前にもう一人の自分が存在して、会話しているような感覚になり俺はこの技能の凄さに驚いた。そんな時俺に何かの影が迫ってきていることに気づいてその方向に顔を向けるとそこにいるのは大きな狼がいた。その狼は赤い目をしていて俺のことを敵として見ているようだ。どうやら俺のことを食べたいらしいな。

「ガァーッ!!」と雄叫びをあげながら襲いかかってくるのがわかる。それに対して俺は咄嵯に回避するがどうも俺は反射神経が鈍くなっている気がして思うように動くことが出来ないのだ。だが、このくらいの動きであれば問題ないと思った。そして俺は手にしていた短刀で応戦しようとするが、その刃が届くことはなく簡単にかわされてしまった。だが俺はそんな事はお構いなしに攻撃を仕掛けようとする。なぜなら相手が攻撃してくるタイミングがわかってしまえばどうにでもなるから俺はその瞬間を狙って反撃をすることに決めたのだ。そんな事を考えていると俺に向かって噛みついてきたので俺は避けずにあえて相手の牙を受けとめたのである。俺に噛みつかれたことによりその牙が刺さってしまうかと思ったら痛みがなく逆にその衝撃によって俺が吹っ飛んでしまったのだ。

そこでようやく理解したが、その大きな狼の攻撃はただ単にダメージを与えるためだけじゃなく吹き飛ばす効果も持っていたようだ。俺は何とか態勢を立て直すことができたが、そのせいでその大きな狼はどこかへ行ってしまったみたいだ。まあそれでも俺は特に心配していないのだが、一応探すことにはした。

しばらく探し回るとその場所を発見した。そこで見つけたのが先ほどの大きな狼と何か人型の生き物が複数存在していた。おそらくだがあれらはその大きな狼に捕食されている途中の人達だろう。俺はすぐに助けようとしたのだがその必要は無かった。何故なら大きな狼の方も満身創痍だったからだ。俺はまずは大きい方の狼に対して話しかける事にした。

「もういい加減大人しくしろ!!それ以上は無駄死にするだけだぞ!!」俺は必死になって説得しようとした。

俺がそう言った後に大きい方の狼が突然攻撃を止めたかと思うと、その場にうずくまって動かなくなってしまったのである。そしてすぐにその体が小さくなり始めたのであった。その姿は完全に元の姿に戻るのと同時に気絶してしまった。そんな姿を見て少しかわいそうな気もして来たが命を助けるためには仕方がないことだと思う。だってこの世界に生きとし生けるものは全て死からは逃れられないものだと思っているから仕方がないのである。だから、俺はその光景を見ても何も感じなかった。むしろこの世界に来てからの初めての同種族の仲間を手に入れたことに歓喜したのだ。俺は、この世界には今まで仲間になる者など存在しなかったがこれから仲間になってくれる存在がいるというのはとても嬉しかった。それにこの世界に来た時は、正直言って不安だったのだが今は心が安らいでいるのを感じた。俺はその事に喜びをかみしめていた。

それからしばらくして目が覚めた時、仲間が俺の周りにたくさんいることに驚きと戸惑いを隠せなかった。しかし冷静になるとこの状況がどういう事なのかを理解して安心することができた。この国に存在する街では仲間を召喚する事ができるようなので仲間を増やすのが今後の課題となるかもしれない。俺がこの国で何をしたいのか?それを聞かれたらこう答えよう、俺の目的は復讐なのだ。そしてこの世界の全ての人間を殺してこの世界の人間達を滅ぼすことだ。そして俺はその目的の為ならばどんな手段でも使うし容赦などもしない。だからこそ俺はこの世界にあるすべての種族を滅ぼしこの世界にいる生物を一匹残らず殺すつもりなのである。そのためにこの国に滞在することにしたのであった。しかしここで問題が発生したのである。それは、この街の住民が奴隷として扱われているという事だ。それもその大半が女性であることがわかったのでこの国の住民を解放しようと思った。この世界に存在する種族の中には人間だけではなく様々な種類の生物が存在していることが解ったのだ。そしてその情報は、この国が人間至上主義の国であることを教えてくれた。そして奴隷制度を当たり前のように利用しているということも知ったのだ。この国はまさに悪徳そのものな国家でありこの国の国王はこの国から追放しようと考えたのであった。俺の予想だと、その行動にこの国は俺と敵対関係になってしまうと思う。それは覚悟の上だ。俺がやろうとしているのはそういうことで、やることなやるのであれば徹底的に行うつもりなので敵対するものは全てこの世から消えても構わないと考えている。

そして俺は今、街の門の前に来ていた。そこには多くの武装をしている兵士と思われる人たちがいたが、俺が近づくと道を開けてくれるようになった。そして俺はこの城の中に入ると、一人の少女がこちらに歩いてくるのがわかった。見た目は普通の女の子に見えるのだが、その瞳は普通じゃないと感じたのだ。そして俺の目が合った。

すると彼女は俺のところにやってきて、俺の前で立ち止まるといきなり自己紹介を始め出したのである。どうやら彼女が、この国の姫のようだ。名前は"リゼッタ"という名前である。

俺は、彼女の話を聞いた後でこの城の兵士達にこの子について説明を受けたのだ。

どうやらこの国の姫は最近まで病気にかかり療養していたようだ。だが最近は調子が良いらしく外に出られるようになってきているらしい。そんなことを話されたので俺はとりあえずこの国の現状を把握したかった。俺の考えが間違っていないとすれば、この国はかなり腐っているから潰すのが一番良いと思っている。だが俺一人だけでは手が足りないと思ってしまうからこの城の兵士に協力して貰うことを考える。そうしないと、いくら俺一人で暴れ回っても意味が無いと思ったからだ。だからまずこの城に滞在する事にする。もちろんその間に俺はこの国の情報収集を行っていったのである。

そして数日後には俺はある程度この国の状況を把握することが出来た。

俺達が住んでいるこのラダッドと言う国は王と女王による支配体制が成り立っており国民は二人から理不尽とも言える扱いを受けている事が分かったのである。しかもその二人は俺と同じ人種ではないからか差別意識が非常に強く他の人種からしたらこの世界で一番危険な国と言われている。その理由として一番の理由として挙げられるのが、二人の容姿の違いであろう。どうも彼らは、自分達以外の存在は自分達に危害を与える存在だと信じて疑っていない。そんな奴らが自分の利益しか求めない為他国からも評判が良くないのがこの原因になっているのがわかる。俺はそんなことを考えているとある人物と遭遇することになる。その人物はこのラダッドの王の娘のアリッサ様だ。

どうやら、俺のところへ遊びにきてくれたらしい。俺も暇だった為彼女にこの城の外に出掛けようと提案した。最初は、外に行くことに賛成していた彼女だが、外に出るとこの城を護衛する兵士の殆どが俺たちに対して殺気をぶつけてくるのだ。おそらくこれは俺に対する警戒だろう。その証拠にアリッサ様に危険がないように護衛しているからである。俺は、そのことを気にせずに歩き続けたのだ。そうしてしばらく歩くと森の中に入ったのだ。その森の中はとても広大だったので迷わないか心配になったけど何とかなったので、その心配は取り越し苦労に終わったのである。

そんな時に俺はある男と出会うことになる。そしてその男との出会いによってこの国の王族への不満が募り始める事になるのは間違いなかった。

俺達はこの国に訪れた目的は観光ではなくて俺自身が強くなることにあった。その目的を果たす為に、俺に襲い掛かってきた狼を俺は捕獲することに成功したのだ。そして俺と狼との戦いは俺の圧勝で終わったのである。

その戦闘が終わると同時にレイナも駆けつけて来て、目の前にいた大きな狼を凝視したのだ。どうやら目の前の大きな狼を見て驚いているようだ。そしてその狼をみて「なんですかこの子は?」と聞いてきた。どうやら狼を見て怯えているというより興奮した状態で見ていて怖いらしい。それを見た俺も同じように目の前に大きな狼がいるのだがその狼に対しての恐怖は何故か感じられなかった。なぜならそいつが敵意を持っておらずまるでペットのように懐いている様子に見えたからだ。そんな時ふと疑問が浮かんだのだ。俺もこいつに触っても大丈夫なのかという事を。

そこで俺は思いっきり近づいて手を差し出してみたのだ。そして、その手を近づけてみると狼はゆっくりと頭を俺の方に近づけてきたのだ。その行為がとても可愛くて思わず抱きしめたくなったがどうにか我慢することに成功できた。どうやらこの狼は俺に触れて欲しいのか?それとも撫でられたいのかわからないが甘えたいのは確かなようだった。そこで俺はこの狼の毛並みがあまりにも心地よかったためしばらく堪能することにしたのである。そこで、俺とこの狼とのやりとりを見ていた狼は、急に威嚇をしてきたのだ。

そして次の瞬間俺と犬はその場から離れていった。しかし、その行動は遅かったみたいで、俺の腕の中にいた狼はその男によって捕まえられてしまったのである。その男の表情は明らかに怒りに支配されていたのが見てとれた。だがすぐに何かに気付いたような表情になって腕の中にいる小さな狼を見つめていた。その後男が俺に向かって話しかけてきて「お前は俺の仲間にならないか? 俺の仲間になってくれれば命の保証をしてやる」と言って来た。俺は即答することにした。その言葉を聞いた男はニヤっと笑みを浮かべて、「そうだよなぁ~、やっぱりお前がこの世界での勇者って訳なんだろ。なら仲間になるはずだよな、だってこっちの狼ちゃんを一目見ただけでこの子の正体がわかったみたいだし。それにあの子の匂いは、この世界の生き物じゃあ無かったし。それに俺に攻撃を仕掛けるなんて普通じゃ考えられない行動だったしな。だから俺の直感が当たったわけだ。それとこの世界に来れて運が良かったぜ。俺には力が必要なんだ。この世界を平和に導くには絶対的な力がな。そのために俺は仲間を揃える必要があるんだよ。だからこそ俺は魔王軍に入るつもりなんだけどさ、俺だけだとどうしてもこの世界の人達を救えないと思ったんで仲間を集めなきゃなと思ってたところだったんだよな。そして丁度良くここに仲間になって欲しいと思っていた人が現れたんだから仲間にしてくださいってお願いするのが筋ってもんじゃねーのかな。まぁ俺的には仲間になってくれたら嬉しいけど無理強いはしないつもりだけど。それでどうなのよ?仲間になるのは決定事項なのかな?もし仲間になってくれるんであれば仲間になる条件として君にはこれからも色々と協力してもらうつもりだよ? それが仲間になるというのなら俺はそれでも構わない。仲間にしてくれるのか?しないのか?」と一方的に話を始めたその男は少し不安そうな顔をしていたが、それは演技でしかなかったようであった。そして、彼は自分の正体を明かしたのだ。その事を知った時、レイナは気絶してしまった。しかし俺がレイナを起こす前にその男は俺達に近寄ってきて、そして俺を睨むようにしてこう言ってきたのである。「おい、そこの黒い服を着たやつ、ちょっと顔貸せや」と。そして俺を近くの森へと連れていかれたのであった。俺は仕方なくついていくことにしたのだ。そして、俺に喧嘩を売ってくるやつがこの世界で初めて現れたことに、俺のテンションは一気に上がったのである。

それから数分後に俺はその男から戦いを申し込まれた。

だが、その提案は受けることができなかったのである。それはなぜかといえば、その男から俺と同じ臭いを感じたからだ。それはつまり俺と同類の匂いだと気づいたからでもある。さらに言えば目の前の男は自分のことを魔王と名乗っていたのである。その時点で俺はもうすでに戦うことを決めていたのでその勝負を受けることにした。すると魔王と名乗るその人物は嬉しそうにしながら、自分の名前を明かす。そしてその名前は【シンド】と言ったのである。その名を聞いて、レイナも驚いていたが、俺はもっと驚いた。

というのもその人物こそ俺達が探していた存在だったからである。しかも目の前にいるこの人物が、本物の勇者であるということも理解したのだった。そんな状況の中、この場で戦闘が始まるのはまずいと判断した俺は一度街に戻ることを提案したのだが、俺の意見は却下されたのである。その理由としてはこの国の国王はこの世界で一番の危険人物であるらしく、そんな奴に会ってしまった以上、俺たちのことを確実に始末しようとする可能性がある為今この場所を離れてはいけないらしい。それ故に今はこの場にとどまるしかないと言われてしまい俺は諦めることにしたのだった。そして俺のほうからもいくつか質問したいことが出てきたのでまずはそれを先に聞くことにする。

まず俺は気になっていたことを聞こうとするが、その前にこの魔王から聞きたかったことがあったのを思い出す。そのことについて確認を取るために俺から話し出す事にしたのである。

「俺もお前に一つ質問があるんだがいいか?」と俺は言った後で返事を待つと、それに対してシンドは「別に構わねえけど、なんだ?」と答えるのである。なので遠慮せずに話すことにした。

俺がこの男について知りたいと思ったのには理由があって俺が元の世界にいた頃は俺は勇者と呼ばれる存在でその役割は魔王を倒して世界を平和にするというものらしい。そしてその役目が終わった俺は、勇者という称号を剥奪されて普通の生活を送ろうとしていたところでこちらの世界に来ることができたのである。そんな状況で俺は、この目の前の人物のことがすごく気がかりでならないのだ。俺と同じように世界から嫌われているのではないかと思っているのだ。そんな人物に対して俺は自分と似ている部分があったのでこの男に親近感を覚えてしまうようになっていたのだった。だから、この男と俺がこの異世界に来た原因が違うということだけは知っておきたいと思えたのだ。

俺はそんなことを考えると、その気持ちが溢れ出してきたせいか、自然とその言葉を口にしてしまう。そしてそれを耳にした目の前のシンドは俺の言葉に反応する。

その様子はとても楽しそうに見えたのだ。俺に期待するかのように「お前は、この世界に何を求めて来た?」と聞かれたのである。

その質問に俺も素直に返答することにした。この世界では俺はどうやら異端児扱いされる可能性が高いと予測していたからだ。それに俺はこの世界の仕組みを知らないで召喚された為にどういった経緯で勇者となったのか知らないままで、この国のために頑張るのもいいかと考えていたのである。だから自分が本当にこの世界で必要とされる人間なのかどうかを確認したいとも思っていたのである。そしてそんな話をしたら目の前の男はとても面白そうに笑ってくれたのだ。そしてその笑い方を見て、この男なら信じても良いかもしれないと思うようになっていったのである。この男なら信用できるかもしれないと思えるようになったのだ。そして俺は自分の持っているスキルを男に見せることで信頼を勝ち取ろうと思ったのである。しかしここでレイナからの一言でその考えを改めることになるとは思いもしなかったのであった。

目の前の男は俺の話を聞くと、「面白い能力を手に入れたんだな」とだけ呟いたあと、この場から離れるぞと命令してきたのである。

その言葉で、この森の奥地まで来ていたことを知った俺は、この国に来てまだ間もないという事を思い出したのだ。そのため早く城に戻って現状をなんとかしなくてはならないという事を思いだすのと同時にこの国にはまだ多くの仲間がいると聞いていた為に急がないといけないと思ったのだ。そしてすぐに行動を開始した。

そして俺達は無事に城を脱出することに成功して俺達は城下町の方に向かう。そこで俺達は宿屋を確保することになるのだがその宿代は俺が持つことになった。この世界でお金を稼げるのか不安であったがそんなことは関係ないとばかりに大きな金袋を渡してきた。その中には、かなりの大金を詰め込んだという事で俺はすぐに受け取ることを躊躇ったのだ。こんなに大金を持っているなんてバレれば殺されるんじゃないかと思ってしまったのである。しかし男は気にすることないといって無理やり渡そうとしてくる。そこで俺は渋々それを受け取ったのだった。それから男の名前は『レイ』という名前だと知った。それから俺はレイに対して、魔王軍という組織について色々と聞いてみようと思いレイに対して魔王軍に入るのに何か必要なものがあれば用意するつもりだと言ってみる。するとレイは、「魔王軍に入って魔王になるための条件を満たしていると判断できた時に魔王軍の門を叩きに来ればいいさ。まぁ、今の実力じゃ絶対に不可能だろうけど、それでも俺と肩を並べるほどの強さを持つことができると認められたならばその時にでも仲間として認めてやるよ。まぁそれまでに死んだら意味がねぇけどな」と軽く言うのであった。俺は、このレイって奴は、この世界にきた勇者がどうなっているかとか、勇者の称号を失ってこの世界で生きていくための術を知っているはずだと思ったのだ。だからこそ、この男の言葉を信用してみようと思ったのである。だからこそ俺が、レイの仲間になると伝えるとレイは嬉しそうな表情をしたのであった。そんなやり取りをしてからすぐに俺達の部屋は確保することに成功した。そして俺はすぐに寝る事にしたが、その途中で誰かに起こされてしまったのだ。だが、俺を起こした人物を確認するとそれは、なんと俺が探していた仲間の一人の狼だったのである。そして彼女はいきなり攻撃を仕掛けてきて俺は避けることができずにそのまま気絶させられた。だが、気絶する寸前に彼女が涙を流していたことに気がついたのである。なぜ泣く必要があるのか、それはわからないが、その顔を見ると胸が痛くなるのを感じながら意識を失ったのだった。そして次に目が覚めた時、その部屋の中には誰もいなくなっていたのであった。どうやら俺は仲間に裏切られたようであった。

目を覚ますとそこには誰もいなかった。しかもそのことに気がついてしまったのである。しかしそれと同時にその出来事を悲しむよりも先に、レイという男が俺に対して敵意がないことに少しだけホッとしたのであった。そしてそんな時だった。レイがこの部屋に帰ってきたのである。その事に俺は驚いていたがレイは、特に動揺している様子はなく冷静な態度だった。そして彼は俺が起きる前に何をしていたのかを話してくれたのである。彼は、城の中の情報を得るために一人で城の探索をしていたようであった。そんな彼と一緒に俺もこの国の事を色々と話してもらう事に成功したのである。どうやらこの城は、俺達が元いた世界で言うところのお城みたいに見えていて、その中はかなり広いらしいことがわかった。そんな話をしながら俺達がしばらく過ごしてから、夜になる前に夕食を食べることにする。しかし俺はお腹が減っていなかったので断ろうと考えたが、俺の目の前には料理が用意されていたので仕方なくそれを食べようとしたのであった。

俺は目の前に置かれた食べ物を口に入れようとしたがその前に俺は自分の手を見てあることに気づいたのである。それは、自分の手が治っているという事実を俺は知った。それはつまり、あの魔王と名乗る人物が魔法で治療してくれたということだと判断した。そう考えると、その魔王に感謝しなければならないので心の中で「助けてくれてありがとう」と呟く。それから俺はこの魔王と名乗った人物にこれからどうするのかを聞いてみると「これから俺は魔王になる為の行動に移るつもりだが一緒にくるか?」と言われたので俺はすぐにその誘いに乗ったのである。それからレイがこの城に侵入するための道を教えてくれるとのことだったから案内してくれるように頼むと、あっさりとそれに応じてもらえた。その後はこの国での魔王がやるべき行動を色々とレクチャーを受けた後にその日の夜を過ごした。

そして翌日になって俺はその日は休むことにすると、俺が眠っている間にレイは何回もこの場所を訪れてくれたらしく、俺に「俺の仲間にならないか?」と提案してきた。だけど俺はその勧誘を断ったのである。その理由は、俺には仲間が必要だからであって魔王になりたいわけではなかったからである。だから、魔王が俺のことを魔王としてスカウトしようとしてくるのをやめて欲しいと俺は伝えた。そしたらレイは残念そうな顔をしながらも「また来るわ。それじゃあな」と言うと立ち去っていったのである。その言葉を聞いたあとに俺はすぐに寝ることにした。

そして俺は再び目を覚まして起き上がるとすぐに朝食を取ることにした。ちなみにその朝ごはんを作ったのはなんと俺を起こしにきていた狼でその少女がとても可愛かった。それで思わず口走ってしまった言葉が「可愛いなぁ」と言ってしまい慌てて謝ったら彼女は照れ臭そうにしていましたけど、「別に気にしていないですから大丈夫ですよ。それよりも私は、リリカと言います。貴方様に仕えるためにこの世界にやってまいりました!私をお使いください!」と言われてしまい困惑した。とりあえずその話は、食事中にすることにしたので食事を済ませるために移動する事にしたのである。

それからレイと合流しようと城内を歩いていると見覚えのある顔を見つけることができて話しかけようとするもすでに逃げられた後であった。その人物を見かけたのは昨日の朝に出会った勇者だった。俺はその勇者に話を聞こうと思ったのだがその時には見失ってしまっていたのだ。そのため俺はその勇者を探し出すことに決めた。それからしばらく探したが全く見つからない上にどこにいるかも分からない状況なので困っていたがそこで偶然出会った人のおかげでその勇者を探す方法がわかったのだ。そして勇者と再会を果たすことが出来た。しかしその時は、その人は別の人の対応をしており忙しそうだったため、その時はすぐに引き下がる。そしてその後、城の中に存在するダンジョンを利用してこの城を攻略する方法を考えていたのであった。

そしてそんな時に俺をこの城に呼び出した魔王を名乗る人物が現れたのである。その人物はレイという名前の男性であり、その男は自分が勇者であると名乗りを上げたのだ。俺はそれに驚くと同時にどうしてこの男が自分の勇者であることを証明することができたのか疑問に感じたのである。そして勇者であると証明するためにステータス画面を見せてくる。その数値の高さに俺は目を奪われてしまうが、俺はすぐに気をとりなおす。この世界の人間にどれだけ強い人間がいて、どれぐらいの力を持っていれば魔王になれるのか俺は知らない。そしてそんなことを考えて不安になっていると、そんなことを考えている暇があるのならば魔王軍の幹部になるための修行をして来いとか言われて追い払われてしまった。そして俺はそんなことを聞かされると不安しかなくなるのであった。

俺は、その日から本格的に魔王になるために強くなることを決めたのであった。

レイが去っていくのを確認した俺は、その隙を見計らって城から脱出をしようとしていた。なぜなら俺は城から出るのに必要な鍵が何かを知らないし城から抜け出すことなんてできるはずもないからだ。

そこでまずは、レイの足止めをする必要があった。そのためにレイは俺がレイの仲間になったと勘違いしていたようで俺はそんな誤解を解きながら戦う事になる。しかし俺では敵わない事は明白であったため俺の攻撃は全て避けられるし逆にレイに攻撃を当てられる事はなかった。しかし俺だって何も考えていないわけではない。レイが油断しているすきを突いて攻撃をするのだがそれもことごとく避けられる始末であった。そこで俺は、レイが俺に対して警戒をしている間は勝機がないと思ったので、レイを騙すようなことを思いついたのである。俺は俺のスキルを使う事に決めて実行に移した。そしてその結果は上手くいきレイの動きを止めることに成功をしたのだ。それからレイと一騎打ちのような状態になった時、レイの体に違和感を感じ始めて俺はその違和感の原因がレイの体に触れている部分にあると思い、その場所を切りつける。だが、それでもレイにダメージを与えることはできてはいなかったがそこでレイは異変に気がつく、それは、体が動かないことに気づく。そしてレイは自分の身に起こっていることについて必死に考察するが、そこでレイは何かしらの魔法をかけられていると理解すると、すぐに俺に向かって何かを仕掛けようとしていたがそれを防ぐ手段はないのでそのまま攻撃を受ける事になってしまう。それでも俺は諦めることなく剣を振り続けるがそれでもその抵抗は無駄に終わった。そして最後にはレイは力尽きてしまう。そんな結果になってしまい俺は悔しさを感じる。

だがしかし俺はこれで勝ったとは思ってはおらず、最後の手段として俺は自分の切り札を使ってレイを倒す事に成功したのであった。それがこの『呪殺』の能力を使った戦い方である。俺はこの能力を使うことにより相手の動きを止めただけでなく相手を即死させることができる。これは呪いの力で相手を殺すことができるという効果を持っているのであった。そして、この能力を使うことができるようになるまでに、俺はかなりの特訓をしたが、それ故にかなりレベルが上がった。それによって新しい職業を手に入れることに成功していた。

それは『死剣士』というものである。簡単に説明すると、死剣士は、その者の体力を奪うことでその力をどんどん上げていくというものだ。俺は今の状態で、さらに魔力を消費してこの職業の効果を強化すると『死神王』に進化することができて、それは『冥騎士』『不死戦士長』、『神魔殺し(デモリッション)の死神王(デスマスターナイトロード)』に進化することができるのである。まぁ、こんなのが手に入ってしまうと他の人達と戦う時、圧倒的な強さを誇る事ができるだろうなと考えながら、この部屋を後にして次の行動に移ったのであった。

それからしばらくした後に、城の外で戦っているレイを発見した。俺は急いでその現場に駆けつけようとしたけれど、途中でその場所にたどり着いたときには既に終わっていた。俺はレイと戦っていた相手を見て驚いたのである。なぜならそこにいたのは、俺達がいた国で魔王と呼ばれていた存在であったからであった。そしてその正体はかつて勇者だった男だ。その男の実力はかなりのもので魔王と呼ばれていてもおかしくないくらいの強者であったのであった。だが、そんな相手が俺達の国の国王とレイの戦いの勝敗がついており、俺は自分の国に帰って行ったのであった。それから数日が経ち俺達は魔王討伐のための旅に出る準備を始めることになる。そして、俺が旅に出ようとした時、レイに声をかけられそのことに驚いていた。

レイは「俺がお前に仲間になって欲しいと言ったときに断られた事について俺なりに考えた事があるんだ」と俺に伝えてきた。その事を聞くとレイは、この世界に来る前の世界で、魔王と名乗る人物がいたことを思い出す。その者はレイの仲間になるように誘ったが、俺はその申し出を断ると「そうか、また会えるといいな」と言って立ち去った。レイはその事を今でも覚えていたようだ。

それからレイに魔王軍に入りたいと思っているがこの世界の魔王にはどうやってなったらいいのかを聞いてみるとその魔王になるための方法については分からないと返される。それから俺はレイが俺を勧誘してくれた時の話をしてくれて、その話が俺を魔王になる為の力を手に入れて、レイの手伝いをしてほしいという提案をしてくるので俺もその提案に乗ってみる事にした。その提案をしてきた理由は、レイも俺と同じことを考えているからであるらしい。つまりレイは、この異世界の魔王に戦いを挑もうと考えていたようである。その理由は魔王を名乗る者が俺達の世界にも現れたのであるからこそであるのだそうだ。

俺もこの世界を滅ぼそうと企んでいるのならその魔王を倒してみたいと、俺の勘が訴えかけている。だから俺はレイの誘いに乗ることにしたのだ。それに魔王を名乗った存在がいる以上、俺自身もその相手に勝てるようになっておく必要はある。

レイの話を聞き終わったあとに俺はレイと別れることにした。俺とレイはここでおさらばをすることにしたのだ。そして俺は自分の故郷へと戻って行くのであった。これから魔王を倒しに行くための仲間を集めながらである。

俺が、故郷の国に戻ると、俺は早速両親に会いに向かった。しかし、俺の両親の姿がどこにも見当たらなかったのだ。そのため俺はその事が気がかりになり探し回るも見つからないでいる。俺はその時に自分がまだ親に甘えていたのだと実感したのだった。そしてしばらくすると俺の両親は見つかったが、その見つけたのが父でも母でもなく、レイだったのである。

レイの話では、両親が二人だけで旅行に出かけたという話を聞いていたため心配していたがどうやら二人は無事に戻ってきている様子でよかったと思った。それで俺がレイと一緒に俺の住んでいた場所に戻ることにすると俺の家の前で俺の母さんとレイの父が待っていたのだった。

俺の母は、「あんたが無事に戻ってきたということはあの子を連れて来てくれたのね?」と言い出した。そこで俺がどういうことなのか尋ねてみると、「私とこの人はあなたが連れてくると思っていた勇者様がどのような性格の持ち主であるかを確認しに行ったんですよ。その結果私達はあなたが、この世界に戻ってくると確信していたわ」と言われてしまい困惑する。そして俺は勇者は俺のことを知っているということを伝えてから俺と勇者の出会いの話をしてからこの場を離れようと決めた。

そして俺はレイと合流して俺の住んでいる家に帰りつくことができた。俺はそこで俺の両親がどんな人かを紹介をして、俺がなぜ魔王になったかも教えておく。そして俺が魔王になった理由を告げた時、俺の両親は魔王となった息子がこの先どのように生きるのか見届けることを決め、応援する事にしたのである。その時に俺とレイは勇者と魔王の戦いが始まる前に一緒に特訓をすることになった。レイと特訓をすることで強くなって魔王として勇者に対抗できるほどの力を手にいれるために。そしてそれからしばらく経った時に勇者とレイがこの家に現れたのである。その事に驚くが二人が何のためにここに来たのかということを聞こうとするがその答えを聞くことはできなかった。そして二人の会話の内容が理解できないものだったからだ。そこで俺は、その話の内容を詳しく聞いてみたところ、レイはこの国にいる魔王を名乗る者を潰すために、そして勇者を名乗る少年は、俺に魔王となれと言う。その事に驚きつつもレイのその発言に少し期待をしている自分もいることに気づいたのであった。そこで俺はまだ完全にこの世界の魔王を倒すと決めていなかったから魔王にはならなかったが、レイに魔王になる方法を教えてもらいながら強くなることを決意する。

俺は、まず最初にこの異世界で俺が一番苦手としている『闇魔法』を使うために必要な知識を手に入れることにした。その情報を得る為に俺はレイを頼る事にしたのだがその時レイから魔王に変身するためには二つの方法があるという事を聞かされる。まず第一の方法というのは、その身に闇の力を宿すこと。これは、自分の体に魔力を循環させることで魔力の質を変化させて体内の魔素を取り込んでいき体を改造していき魔力の量を増やすという方法で行うことができるようだ。ただしこれはかなりリスクが高いらしく、魔力が枯渇して死んでしまう可能性が高いとの事だった。

そして第二の方は俺が習得しているスキル『呪殺』『不死戦士長』『死剣士』『呪法』を利用して体の中に闇の力を取り入れていき魔力の質を変えれば良いとのことだ。だがこちらの場合はスキルを使う際に魔力を使いすぎて死ぬ可能性は少ないが代わりに体にかなりの負荷がかかると説明を受けてしまう。

そこで俺は、後者の方を選ぶと決める。そこで俺はレイの言う通りに『呪いの刻印』を発動してみる。だが、この魔法はただ発動させるだけでは効果がないと言われた。その呪いを解くにはその魔法に名前をつけることで魔法を定着させなければならないとのことだった。俺はレイに教えられたことを実行してみることにした。

そこで俺はまず魔法名を考え始める。俺が最初に思い付いたのは俺が使えるようになるまでずっと練習をしていた魔法だからという単純な理由からであった。それからしばらくしてようやく魔法の名前が思い付くと、その瞬間に俺は意識を失う。

次に目を覚ますとそこには知らない女性がいて俺は混乱してしまった。するとその女性はいきなり自分の腕を切りつけると自分の血を俺の額に向かって振りかけたのである。それから俺はその痛みにより強制的に起こされると今度は女性の腕の傷口を見せられて俺を脅し始めたのである。その女性の見た目はかなり美人だったのにその目つきのせいでかなり怖い印象を感じてしまう。その事から俺は思わずその人に怯えてしまってしまう。だがしかし、その人が言ったことはこの傷が治らない限りは俺に危害を加えないということだった。それを聞いた俺はその言葉を信じて目の前の女性に言われたようにその人の言葉に従ったのだった。

その言葉に従おうとすると突然その女は自分の唇を俺のに押し付けてきた。しかもかなりの長い時間だ。そして俺はこの行為が終わった時に俺はその人から逃げようとしたが、俺はこの女性に抱きつかれていて離れられなかったのである。

それからしばらく経つとレイが部屋に入って来た。それからレイに事情を説明すると俺に襲ってきた人物の正体が俺の母だということが判明したのである。レイ曰く、母さんは俺に何かあればすぐに助けられるようにしておいてあると言っていたのに、まさか俺がこんな目に合うとは全く思っていなかったと、レイはそう言い放った。俺もそのことについては何も反論することができずに何も言わないでレイの話を聞く。するとその話の中で俺の両親も勇者の仲間の一人で、その勇者に加護を与えた女神の仲間でもあるという話だった。つまりは、このレイの両親もレイ同様に勇者と共に旅をする仲間だったというわけである。レイの母親であるその人もレイ同様に強いので俺は少し恐怖を感じるも、レイと同じような性格の人である事を知ったため安心する。その事にホッとするとレイは、「今度俺の親を紹介するよ」と嬉しそうな表情をしながら言ってくるのであった。

それから数日が経ち俺に付けられた額の傷は塞がり、さらに数カ月後には俺の体に新たな力が芽生えた。その事に対して俺は喜びを感じていた。なぜなら、これでレイのように強くなる事ができるのでは?と考えたからである。そして俺はレイに「お前に付いて行くぜ」と言うとレイも「ああ俺と一緒にこの世界で最強の存在になろう」と笑顔で言うと俺達はお互いを抱きしめあった。それからレイは、「お前に俺達の強さの秘密を教えるから付いてこい」と言ってきたのでレイに着いて行くとそこに広間があってそこにある鏡にレイの両親の姿が映し出された。それから二人はレイと俺を交互に見ると「どうやら無事でよかったわ」「この子には俺達の力は継承されていなかったみたいだから、この子になら俺たちの本当の姿を見せても大丈夫だろうな」と言うと二人の体は一瞬にして変化し始める。

そして二人の体が完全な姿になったときその姿に驚愕してしまう。その理由としてはレイの父親に関してはなんとレイの先祖であり俺が憧れていた人だったからである。そしてその人と俺は面識があった。その理由としては俺の父がレイの父親の従者を務めていたからである。俺はその事に驚きながらも二人について行き、そしてその途中でレイが俺に教えてくれる。俺達一族のルーツはレイの両親がこの世界にやって来る前の世界に存在するとある国の王であると、その国はレイの一族が守護していたらしいのだ。そしてその国を侵略しようとしていた国が勇者召喚を行い魔王をこの世界へと呼び寄せようとしたらしい。そこでその国を守護するために、その国を滅ぼそうと攻めてきた他国からその国を守る戦いを始めたのだそうだ。しかしその結果レイの父親は亡くなってしまいレイが国を継がなければいけなくなり、レイはその重圧に潰されかけていた時に、この異世界に来て勇者と行動を共にしてその心の支えになったらしいのだ。そこでレイの母親は、レイの事を気にしていてもたってもいられなくて、この異世界へとやって来てレイと一緒に暮らしながらレイが国を継いでくれと願っていたという。

俺がレイにその話を聞いて感動しているとその話を黙って聞いていた俺の両親はなぜか涙を浮かべていたのだった。そして俺の父親がレイのことを褒めていたのであった。

俺の両親は俺のことを見て、レイの両親が言っていた事が嘘偽りでない事が分かった。そして俺にもレイの両親が持っている力をくれると言う。俺はそんな力はいらないと言ったがレイと両親が譲ってくれなかったのである。そのため俺はレイ達に俺が欲しい力の内容を伝えるとレイと両親はお互いに顔を見合わせていたが、「わかった。だが一つだけ条件がある」と言い出したのでその言葉に従ってみると、「お前の事はこれから私の息子として迎え入れる」と言い出したのだ。

俺はなぜ俺がこの人達の養子にされたのか分からずレイに尋ねてみると、この人たちがこの力を受け継いだ俺のことが欲しかったと説明をしてくれる。そしてこの力を俺が手に入れた理由はレイの母親が持っていたものでレイは使えなかったが俺は使えるようになったのだということだ。それに加えてこの力とレイの両親との血の繋がりが関係しているようでこの能力を手に入れると必然的にレイの力を受け継ぐ事になるようだった。

そこでレイの母親がその力を受け取ってくれた事に喜ぶ。だがそこで俺はレイの母親の年齢を尋ねると俺は驚きの事実を聞かされたのであった。それは、レイとレイの父親であるその人は元々、同じ国の出身ではなかったらしいのだ。そしてその二人がその国に訪れたときに二人の子供を授かったのだと。

レイがこの話をしている間にレイの母は、レイの父親に向かってその力を使い、レイの父はレイの体をその力で覆うと見た目が完全に若返ってしまった。その姿を見てレイが驚きながら「あなたがこの世界の理を無視して、この世界で生きるために必要なことをしてくれたんだね」と言う。レイが言うその力とは、この世界における時間と生命の概念を改変するというものだったようだ。

俺達がこの世界にやってきた時点でその人は俺と同じ歳だったのにも関わらず今は見た感じ三十代くらいに見えるほどだ。そのことから俺と血の繋がっていないその人の年齢は最低でも三百歳以上であるということが確定したのである。俺がその事を確認すると、俺の母親が「私はこれでも二十一歳よ」と言われてしまい、俺は言葉を失ってしまう。見た目があまりにも若く見え過ぎていて俺よりも年下に思えたからだった。その事に驚いているとその人も同じように驚いていたのでレイから聞いた情報が正しいことがわかった。俺がレイから聞かされていた年齢より若いからその事を伝えた時、その人がかなり驚いたような表情をしていたからだ。そして、レイの両親からレイに力の使い方を教えてあげて欲しいと頼まれて、それからしばらくすると、その人が俺の方に向かって近づいてきて、「この力をあなたに与えるのは私の役目だから」と言う。そしてレイのお母さんがその人の後ろに回り込みレイの肩に手を乗せるとそのままレイの中へと消えていった。俺はその様子を見ていることしかできなかった。それからしばらくしてレイが目を覚ますと自分の体の調子を確かめるように手を動かしたり、体を伸ばしたり、屈伸をした。

俺がその姿を見ながら何が起きたかを質問するとレイは簡単に説明を始める。まずは自分が使える魔法の種類が増えていたこと。さらに今まで使うことが出来なかった『死剣士』や『呪殺』なども使用可能になったとのことだった。俺のスキルについては『呪法』は、まだ使えないとのことだったが『死剣士』や『呪殺』などは使用できるようになっていたので、この二つの技の使い方を詳しく教えてもらった。それからその二つ以外のレイの知らない魔法をレイが教えてくれたので、俺は早速自分の魔法袋の中にある魔法石を取り出す。それから俺はレイに教わった魔法を次々と使っていく。魔法をレイに教えてもらうことで俺はレイに教えてもらった事を全て自分の物にしたのであった。だがその前にレイが俺の両親に挨拶したいと言出のであった。俺は、両親にレイを俺の親である事を説明すると二人とも俺と同じように驚く。それから俺は二人の反応を見て、レイの両親が本当にレイと同じような存在であることを実感したのだった。

それから俺は両親と一緒に外に出かけるとレイの両親の住んでいる城へと移動することになった。それから城の中庭に行くとそこには一人の老人の姿があり、こちらに気がつくとゆっくりと歩いてくる。俺の目の前に来た瞬間レイが頭を下げると突然地面にひれ伏してしまったのだ。

突然の事でどうして良いかわからず困っている俺の事を見てレイはその男こそが俺達の主人であり神であると言っているのだが正直理解することができなかった。その事から目の前の人物が神様だとは思えない。それにしても何故この人物はここまで俺に対して怯えているのだろうかと思っていると目の前にいる人物が話しかけてきたのでその言葉を待った。その言葉を聞いた途端にレイが「お前がここに来るべきじゃない。ここはお前みたいな人間が来るところじゃねぇんだよ。今すぐに帰りやがれ」と怒り出すと、その男も負けずに反論をする。その光景を俺とレイの両親は唖然としながら眺めていると男が何かをするとレイは吹き飛ばされてしまう。そしてその男の目は光を無くし虚ろになりながらも口元だけが笑みの形を作っている不気味な姿になる。その男はレイの父親に向かい何かを言うとレイの父親が苦しむのが見えたのであった。

それからレイの父親はレイと同じような力を手に入れて立ち上がり、それからは俺が目も開けていられないほどの戦闘が始まる。そしてその戦いが終わるのと同時にレイの父親はこの世界を去っていった。そしてその事に俺は心の中で謝ることしかできなかったのである。そして俺達は俺の両親に連れられてこの国から去ることになったのである。俺がレイと一緒に旅ができるのは残り数日だけになってしまった。だが俺はこの国の人々に俺の正体が知られてしまった以上、一緒に行動はできないと伝えたのである。

それから数日後、俺はこの国を去る準備をして城を後にして町を出ることにした。その際に、俺達の姿をこの国の民に見られると混乱してしまう可能性があるため、レイの両親はこの城の中に俺達を置いてから出発すると言っていた。そして俺はレイにレイの母親とこの国の人々の事を頼み俺はそのお願いを聞いてもらうためのお金としてレイに金貨五十枚を渡すとレイに驚かれたが、俺にとってはそれほどの価値があるものだと思っていたのだ。そしてレイに「お前はやっぱり俺達とは違う」と言われたのであった。そして俺はこの国を出て行くのだった。最後にレイに一言別れを告げると俺の両親は俺のことを送ってくれる。だがそこで、俺はとんでもない奴に出会うことになってしまうのであった。そしてそいつはいきなり攻撃を仕掛けてくる。

俺はこの国から出て行こうとするとそこでレイが呼び止めて来たのだ。俺がレイの顔を見つめるとレイはこの国を救ってくれた事のお礼を言いたいということだった。だが俺はレイにもう会うことはないからいいと言って断る。だがレイはそれを拒否したのだ。そしてレイが「俺と勝負してくれ」と頼んできたのである。その言葉に俺はどう答えて良いのか悩んでいるとレイの両親も「レイと戦ってやって欲しい」と頼むのだ。

俺は二人の言葉に戸惑いながらもその申し出を受ける。すると俺に戦う場所を指定してきたのだ。俺はその場所を聞いてその指定してきた場所は俺達がこの世界にやってきたあの場所であり俺はこの場所がどこだか思い出すと俺は驚き、そしてこの世界に来て初めて動揺するのであった。そうして俺とレイの二人はあの場所で向かい合うことになる。

レイと俺は互いに武器を構える。俺はこの世界に来て初めての真剣での戦闘であるために体が強張ってしまう。それに対して相手は、この前とは打って変わってとても落ち着いている。俺はその態度の違いに疑問を持ちながらレイのことを見てみるとなぜかレイの目が赤く染まっていた。俺がその目の事をレイに尋ねようとすると俺の視界が真っ暗に遮られる。俺の目を塞いだものはレイの手で俺はレイに手を離せと命令しようとすると俺の頭に衝撃が走った。俺は何が起こったのか分からないまま倒れ込んでしまう。そして俺はそこで気絶したのだった。俺は薄れゆく意識の中俺の目に映ったものは剣を持って立っているレイの姿であった。

俺は誰かが話している声で目覚めると俺の周りを見渡す。するとレイが椅子に座って俺の方をじっと見下ろしていたのである。俺は状況がつかめないまま周りを見ていた。それから少しの間何も考えることができなかったのだ。それから俺の脳が少しずつ覚醒してくるとその事が嘘ではなかったという事が分かってきたのである。

俺の体に痛みがない。俺が自分の体を確認するが怪我をしていないことに驚いているとレイが話しかけてくる。俺はその言葉で現実に戻ってきたのである。それから俺は自分が負けたことを自覚するのであった。そしてレイと両親から今回の出来事について説明を受けたのだ。その話はあまりにも信じられないものばかりで、最初は俺の事を騙しようとしているのかと思ったが、レイの目の色が赤色に変わったり、そして俺と戦った時の動きなどを実際に見てしまえばレイの言葉が正しいことを思い知らされた。

俺はレイに「この国はどうなるんだ?」と尋ねてみるとレイは、「私がリクと共にこれからは動くわ」とレイが俺と行動を共にしてくれれば俺は安心できたのだ。なぜなら俺にはこの世界に関する知識がほとんど無いから、頼りがいのある仲間が欲しかったからである。だから俺にとってはレイは信頼できる最高のパートナーになってくれそうな人物だった。

「この国の問題は解決されるだろう。だがこの国は変わるぞ。この国を変えれるだけの大きな力を持っている者が現れたんだ。それが何者なのかはまだ分からぬがな。おそらく神の力を手に入れた存在だと思う」と言う。

その言葉にレイと俺は驚いた。神であると聞かされても俺は信じる事ができないでいた。俺に力を与えてくださる神様がいるのならどうして俺はこんな力を授かってしまったのだろうと。

それからレイからリゼッタという名前の女性を紹介してもらったのである。俺の知っているレイよりも若い見た目をしていたから一瞬誰だかわからなかったのだ。それから俺とレイが一緒に行動をする事が決まって俺とレイは一緒に旅に出る事となる。それから俺は自分の部屋に戻りレイと今後について話し合う事にした。それから俺はまずは魔王を倒してからこの国に残るのかどうかを決めていこうと考えているとレイはそんなの無理だと答える。俺もそれに関してはレイと同じ考えで今のまま魔王を倒すことはできないと思っている。だからといってこの国に残ったらまた同じ問題が起きてしまう可能性だってあるのだと、それを理解してもらうために、俺の持っている知識を総動員させながら、今の現状を説明した。するとレイの方は何か思うところがあったらしく納得していた。そしてレイの方は俺に何かをして欲しい事があるらしいのだが言い出しづらかったみたいで、しばらく沈黙が流れる。それから俺はレイに尋ねると俺にお願いをしてきたのであった。そのお願いの内容は、もし自分の力が無くなった時は、自分の事をこの国に居させてあげて欲しいと頼まれたのである。俺はそれを聞きすぐに断ろうとした。だがレイの真剣で悲しそうな顔を見ると、俺は何も言わなくなったのである。それから俺とレイは話し合いを終えたのであった。それからレイは疲れたと言い自分の部屋に戻ろうとする。俺がレイに大丈夫なのかと尋ねると俺は回復魔法が得意だから、寝ていれば治ると答えたのであった。

俺とレイは、この城を出発してから一か月ほど経っていた。それから俺は今までの事を色々と考えながら旅をしていると一つの町に着く。それから俺は、レイにこの国の事を詳しく聞いてみると、この町は魔族に支配されているらしくこの世界のほとんどの人々は奴隷のような生活をさせられているとの事だ。しかもこの町だけではなくこの国が支配下にあるすべての場所に同じようなことが起こっているとのことで、俺達はこの町の人たちを助ける為にこの町を支配している領主と戦う事になるのだが俺は戦う前から勝つ気がなくなっていたのであった。

その理由は、今レイは普通の人間と同じように行動しているが、実は俺とレイは神の血を受け継いでおり、神と同等に近い身体能力を手に入れているからだ。そしてその神というのは、この世界に存在している五柱の神の一柱のようでこの国の人々に崇められている存在でもあるようだ。そのことから、この世界で最強の存在となっている。だからこそそのレイでも俺のステータスを見れないのであれば、俺は本当に最強とは言えないのではと思ってしまったのだ。それから俺はレイに俺の考えを伝えたのである。

俺は、俺達が戦ったとしても絶対にこの国の人々を救う事はできるはずだから、俺達二人が手を貸しただけで救われるような人ではないのかもしれないけど俺達に助けを求めてきた人達のためにも俺は全力でこの国の人々を救いたいと思ったのであった。それからレイが言うにはこの国は支配されてから長い年月が過ぎていて人々が苦しんでいるそうだ。だが俺は、それでもまだ救えるはずと思いレイと一緒に町中に入っていった。

町に入った時に俺はレイと一緒に行動してよかったと思えるような事が起きたのである。それはレイがこの町に入る際に兵士から止められたがその事に俺は違和感を覚えた。普通だったら俺達はこの国の王から許可が下りてここにいるはずであるがその事を兵士達に伝えると彼らは慌てて町の中に入れて俺達は城に連れていかれることになったのである。俺とレイはその事を不審に思った。俺とレイはこの国から去る予定になっていたが、この城の中にレイの母親がいる以上城の中に入ることは当然であった。そしてその事を俺達が城に着いて門番の兵士に告げると兵士たちは慌てて俺たちの事を城内に連れて行く。その様子を見つめながら俺達も城内に入らせてもらうと、俺達の目の前には俺がこの前助けに行った女性がいたのだ。

俺がレイの母を見て驚くと彼女もこちらの存在に気づいて嬉しそうに微笑む。レイと俺はお互い見合ってからレイの母に向かって「ただいま」と言うとレイの母も「お帰りなさい」と言って俺達を歓迎してくれたのである。それからレイが母親の元に近づき抱きしめて再会の挨拶をする。そしてレイはレイの母親から離れると俺のことを紹介するためレイの母は俺のことをレイに尋ねた。

それから俺達はお互いに自己紹介をして俺はレイの両親と話をする。そこで俺は二人の名前を教えてもらったのだ。レイの母親はアリッサといい父親はロイルという。俺はその名前を聞いて驚いたのである。なぜならその名前はこの前の時、このレイの父親がつけていた名前の名であり、俺がレイに尋ねてみるとやっぱり親子なのだなと、改めて思うのであった。

それから少しの間俺とレイの母親が二人で話しているのを眺めていたが、レイの両親からは早く部屋に行くようにと言われてしまう。そして俺とレイの二人は、部屋に入りレイがベッドに腰掛け俺はその隣に座って話していたのである。それから少しの間俺がこの国を出て行った時の事などを話し合うとレイは急に立ち上がり部屋から出て行くのである。俺も急いでその後を追いかけるがレイが部屋を出た理由を知ることとなる。その前に俺がレイに話しかけると「母さんと話してきます」と笑顔で言われてしまったのだ。それで俺とレイの両親が待っているであろう部屋の扉を開けるのであった。俺はレイと入れ替わるような形で扉を開き部屋に入ろうとしたがそこで立ち止まってしまう。

なぜならレイの部屋には俺の父親しかいなかったからである。俺はなぜこんなことになっているのかと困惑しながらも俺は父親の方に近づく。それから俺はレイの父にこの国で何が起きているのかを聞くのであった。そこで分かったのが、俺がこの国を出る時には既に国の中で反乱が起こっていたというのだ。

俺はその話を聞き驚愕したがそこで気になったことがあった。どうしてレイと俺の父はこんなところにいるのかと言うと、どうやら父上は俺達が城を出発する前日に反乱軍を裏切って国王側に付いたというのだ。しかしこれは父上の意思ではないということも話してくれて、レイと俺はその事に安心した。

俺は、この話が終わったのならもうここには用が無いから帰ろうかと思っていた時であった。突然城の外から大勢の人間が攻めてきているという報告が入り城の中には一気に緊張した空気が流れる。すると俺は自分の体が震え出すのを感じたのだ。そしてその事が周りにもバレてしまい心配されてしまったのである。そんな状態の俺は周りに迷惑をかけない為に自分の部屋に戻ろうとするとそこにレイの母が現れた。彼女は何かを決意したような顔つきをしていたので俺が彼女に話しかけることはできなかったのである。そしてレイの父と何かを話すとそのまま俺の元に来て話しかけられたのだ。

「あなたは自分の力でどうにかしようとは考えていないの?」

俺はレイの母の質問の意図がわからずに黙り込む。するとレイの父が説明をしてくれる。

「リゼッタ、お前はまだリク君の実力がわかっていないのか? 確かに今の君とリク君は戦うことにはならないだろう。でもな、リゼッタが思っているよりリク君の実力は高いんだよ。リゼッタは今自分が何を恐れているのかわかるかい?」

レイはレイの母の言葉を聞き顔を横に振ってわからないと答える。レイの表情を見る限り本当にレイはわからなかったらしいが俺は彼女の母親の言葉の意味が理解できてしまっていたのだ。それからレイの母とレイは部屋から出て行き俺とレイの父が部屋に取り残された。

それから俺はレイに部屋に戻り休むように伝えると部屋に戻るのである。俺はそれからしばらく何もできない状態でいると外が騒がしくなっていたのに気づく。それからすぐに俺はレイに部屋に戻ってくように伝えてレイが部屋に戻り戻ってくるとそこには、リゼッタと呼ばれていた女性の姿が見えたのである。その事に疑問を感じているとすぐに答えが出た。彼女がレイの母親だとわかったのだ。レイの母親はレイに自分のことを紹介してから俺の方を見て「娘を守ってくれてありがとうございます。これからは一緒にこの国のために頑張りましょうね」と言われた。俺は、俺はその言葉を素直に受け止めることはできずレイの顔を見ていた。すると俺の視線に気づいたのかレイは困った顔を浮かべてから俺の方を一度見て、それから何かを決めたような表情で話し出したのである。

「母様は私の事を信じていてくれたんです。そして私も母のことは心の底から信頼しています。ですので私が言う言葉も信じてもらえませんでしょうか。私はこの世界がこのまま終わる事を望んだ事はありません」とはっきりとした声で言われたのだ。そして俺はそれを聞いて納得してしまう。だってそれは今まで見た中でレイが嘘をついていなかったと分かるからこそ納得することができたのだ。それに俺は、レイの真剣な目を見てしまうと、このレイの言っていることが全て正しいと理解できてしまって、それならばと、レイが本気で言うならばと俺自身も本音を口に出そうと思うのであった。

俺がレイの話を聞き終えるとすぐにリゼッタと呼ばれた女性はレイに近づいてレイを抱きしめる。俺はその様子を見ると自分の家族を思い出す。だが俺は自分の家族のことを考えてこの国に残らないといけないと考え直すのであった。

レイが母親に対して自分の想いを伝え終わり、しばらくレイとレイの母親が話をして、それからすぐに部屋から出て行った。そのあとすぐに城が慌ただしくなり始め俺とレイだけが取り残されたのである。俺達はお互いに沈黙を保ったまま、時間が過ぎていく。それからしばらくして俺がそろそろ部屋に戻るとレイに言おうとするとレイが急に口を開いた。俺はその事を聞いて俺は思わず声を漏らしてしまったのである。なぜなら、レイが自分一人だけで何とかしようとしていることがわかったからだ。

それからレイが今何を考えているのか俺は予想ができた。なので、俺は急いでレイを止めようとしたのだ。だがそれは無駄だったのである。俺がいくら説得しても、レイは決して聞く耳を持ってはくれなかった。そして俺は、俺一人でもこの国の為に行動しようと思うようになったのだ。

俺とレイはこの城にきて初めて外に出た。この城は王城と呼ばれている場所らしくてこの国は五つ存在する大きな町の内の一つであるようだ。俺とレイが城を抜けだしたことに見張りの兵士はすぐに気が付き俺たちを追いかけてくる。しかし俺は、追っ手を巻くために俺達は魔法を発動させたのであった。

それから、この国から脱出するためには、この国の人間には絶対にばれてはいけないという事になり、そのため、なるべく人の気配がしない方に向かうことにする。

そうすると森があったのでそこを抜けることにした。森の中には動物がいたり魔物もいたりしたのだが俺たちは一切構わずにどんどん進んでいった。

そうして進んでいると俺達はある光景を目にしたのである。それは俺達を追いかけてきた兵士と、それと向かい合って戦闘を繰り広げていたのはこの国の王であった。だが彼は俺達に気づいたようで兵士達が俺達を捕まえるために襲いかかってきたのであった。そしてその攻撃を全て避ける事に成功する。俺はその事に驚いていたがそれよりも俺は、王の戦闘能力の高さが信じられなかった。俺はレイと二人で戦おうとしていたのだ。しかし王は一人で俺達よりも遥かに格上の強さを持つ兵士相手に善戦をしているのであった。俺はそんな様子の王様を見て俺達が出る幕はないと感じていた。そしてレイと相談した結果ここで待っていて、もしも俺達の存在が邪魔になると判断した場合には、俺達がここから脱出する手助けをしてもらうよう頼むことに決めたのである。

それから少しの時間が経過して、レイと王が話をする時間が取れることになったので俺はその場を離れた。俺が離れた後にどのような話が行われたのか俺には分からない。でもきっと俺達がここを出ていく時になったらまたここに戻ってこれるようにしてくれたに違いないと俺は確信していたのである。

俺とレイの二人が城を抜け出した後俺はこの城を散策することに決めてこの城の色々なところに行ってみたいと思いレイを連れて城内を探検していた。俺はそうしてこの城を歩いている時にレイの母親であるアリッサを見つけたのだ。俺は彼女に会いに行くことに決めると彼女はすぐに俺の存在に気づきこちらに向かってきたのである。そして俺に一言二言だけ会話をしてそれからは、この城がどうしてこうなったのかと、この城が今どうなっているのか、これからどのように動くつもりなのかについて教えてもらうことができた。そして最後にこの国が滅びる事を望んでいるわけじゃないという言葉を聞いた俺はその事に安堵を覚えたのであった。

俺はレイと別れてこの城の中を自由に移動できるようになってしばらくした後にこの城の警備体制がかなり手薄なことに気づき俺は不審者のようにコソコソと城の中に侵入を試みる事に決めた。そこで最初にやったのは、城の中の人間が普段使う通路を探すことである。俺がなぜこの城に侵入することをしたかというとその目的のためでもあるのだが、単純にどんなものかが見たかったというのが理由なのだ。それで、城の中にはたくさんの人間がいるはずなのだが、何故か全く人がいないのである。俺はその理由がわからずにいた。俺はこの事を疑問に感じたが今はとにかく城の中から出ていこうと思っていたのだ。それから、俺がそんなふうに思ってからどれくらいの時間が経っただろうか。俺はやっと出口を見つけることが出来たのであった。俺はその出口が開いていて、中に入る事ができるかどうかを確認するために入ったのである。そして俺の想像ではこの中には兵士たちが大勢いるはずだと思っていたがそんなことは全くなくて逆に人がいなくて不気味でしかなかったのだ。それから、その空間の奥に一人の男性がいることに気がついた。その男性はこの城がどうゆう状況になっているのかを話してくれるのである。その人はこの城の現在の国王でありこの国の王子でもある。名前はラフィアンと言い、彼は自分の父親である国王が反乱軍に寝返ったことを知り城から抜け出したのだという。

そして彼は自分がこの城から出て行かなければならなくなった経緯についても説明してくれてそれからすぐに俺に助けを求めたのだ。俺はその事に戸惑いを覚えてしまったが彼も今の現状をよく理解しているのだろう、自分が今どうすればいいかということをしっかりと考えて俺に話してくれるのだ。そしてそんな彼の態度が信用に値すると感じた俺は、彼がこれからどこに向かえばいいかについて案内を頼んだ。俺が彼に、これから向かうべき場所にまで連れてってくれないかと言うと最初は断られてしまうが最終的には渋々俺を目的地に連れて行ってくれるのである。それからは俺が城の外に出た時に俺は自分がこの国にいた時のことを思い出しながらこれからどうしようかなと考えるのであった。

そして俺は城を出た時、自分の体から血の匂いがする事がわかり、俺は慌てて怪我をしていないかを確認したがどこにも異常がないことが分かりホッとする。だが安心したのは束の間、俺は誰かに追われている感覚に襲われたので俺は警戒を強めるのである。そして後ろを振り返った時、そこにはレイがいたのだ。俺はその時本当に驚いたのである。まさかこの場にいるなんて考えていなかったからだ。レイと別れた後は俺はこの城にある隠し部屋や、城の裏の抜け道などをしらみつぶしに探していてそれから俺は城を探索するのに満足したので、一度この城から出て街の様子をこの目で見てこようと思ってこの城の外に出たのだ。そのタイミングに運悪く俺はレイに出くわしてしまったのだ。

俺達はお互いが驚き固まってしまっていると、俺の頭の中では、レイの母親にこの国の人たちに見つからなければ自由に動けるという事を聞いていたのだ。なので俺はとりあえずこの場所から離れるべきだと判断してこの場で戦闘をするという事を避けるためにこの場から離れようとすると俺とレイの前に一人の少女が現れて俺とレイは立ち止まってしまったのであった。少女は綺麗な銀色の長い髪をしており目はとても澄んで美しい紫色をした瞳をしていた。その見た目にとても可愛らしい顔つきをしていて、身長もそこまで大きくなく、俺がレイと同じくらいの年に見えるのだが実はレイよりも歳上である事は知っていた。その事から、もしかすると俺よりも歳上なのではないかと思い俺はその女性を上から下まで見てから年齢を予想しようとしたのだ。

俺がその女性の姿を見て少し困惑していたらその女性は突然レイの名前を呼んだのだ。レイの本当の名前を知っているという事は間違いなくこの女性はレイの家族なのであろうことは容易に理解ができた。そしてレイはその女性を見て困った表情をしている。俺は何が起こっているのか分からなかったのでレイの方を見るとすぐにわかった。この女性は恐らくレイの母親だと分かったからだ。この国の王族の女性はみんな同じような特徴があるという事を教えてもらったからだ。そうレイの母とレイには同じ特徴が備わっていたのである。それは髪の色だ。俺には二人の違いがわかっていたがレイの方はそれがわかっていないようだ。それにレイの母は、レイとレイのことを抱きしめていた。レイの事を離さないというかのように強く抱き寄せていてレイの顔を見る事はできないほど密着させているのである。レイとレイの母親がそうやってレイのことを抱き締めていたのを見てしまうとなんだかいいなぁと思うと同時にレイを羨ましく思っていると、レイとレイの母の抱擁が解かれて、二人は何か話を始める。俺の耳ではその言葉を理解する事ができなかったのだが、レイとレイの母親はレイに対して色々と指示を出していた。そしてそれを終えたレイとレイの母親が今度はレイに向かって攻撃を開始したのだ。それは俺の目から見て攻撃と呼べるほどのものではないように思うが、二人の実力を考えるとそれなり以上に高度なものなのだとわかるのだ。だがレイはそれを軽々しく避けていたのだ。

そんな光景を見ていた俺は思わず感心してしまう。それから俺は俺の事を追ってきていた兵士が俺の元に駆けつけてきたので俺も戦う覚悟を決めた。だが俺には勝算があった。この国の兵士の力量はこの前の王国兵士より劣っていてしかも武器が統一されていなかったのである。そのため俺は相手の戦い方を把握できてはいなかったがこの国の兵士に負けることはないだろうと判断する。だが念のために俺はレイ達と距離を取って戦いを始めた。俺がこの兵士と一対一の状況で戦ったのにはいくつか理由はある。俺は相手がこの兵士との戦いでどのような行動をしてくるのか知りたかったのだ。だからこの兵士にはわざと一撃で倒すのではなくできるだけ長引くように戦ってもらったのである。

俺がそうして考えているうちに俺の方に異変が起こった。俺の視界から兵士が消えたのだ。俺はすぐに上を向いて上を確認してみるとそこには空に向かって飛んでいる兵士が見えた。その兵士はそのままどこかに向かっていくのだが俺はすぐにこの兵士の目的を理解して追いかけていく。すると案の定その先にレイがいて兵士と戦っていた。レイは相手の兵士の動きを止めて攻撃を加えようとしていたが敵が攻撃を加えてくる方が早いと思い俺はその攻撃を避けろと叫ぼうとした瞬間、レイは自分の目の前にいる敵を剣を振った衝撃波のようなもので吹き飛ばして、さらに追撃するように斬撃を放ち敵の息の根を止めると俺は急いでレイの所に向かう。俺の思っていた通りレイのところに先程飛ばされてきた兵士の仲間と思われる男が近づいてきてレイに斬りかかろうとしていたが俺はギリギリで間に合いその男に攻撃を仕掛けたのだ。その時に俺の攻撃に反応できないと思ったのかレイはその場から離れていた。俺はそれからその男を気絶させてレイの元に向かった。そして俺は、さっき起こったことについて詳しく聞くためにレイと一緒に城に戻ることにしたのである。

俺達は、城を抜け出す前にレイに話していたことで城の中にある地下についての情報を手に入れており俺とレイがまず最初に調べたのはその場所だった。俺とレイはそこを目指して城の地下に入っていったのである。

そしてしばらく進んだ時、急に扉が開いてそこからレイによく似た女性が入ってきたのであった。俺はその人が誰なのかわからないままその人の方を見るとレイの母親だと理解することができたのだ。

俺はその人がレイに向かって何かを話しかけようとしていることに気がつき、それを止めようと走り出したのだがレイが止めたことによって俺は止まることになった。俺はなぜレイに止められたのか疑問に思ったのだがそんなことよりも今はレイが母親と話すのを聞くのを優先したのだ。レイと母親の会話を聞いているとどうやらこの国で起きた反乱についての話をしているようだったが途中でレイが自分の事を俺に紹介してくれると言い出して、そこで俺は自分がまだ自己紹介をしてなかった事に気がついたのである。そこで俺は改めて自己紹介をすることにした。俺は、自分がどこからやってきた旅人でリゼッタという名前だと言ってからそれからは簡単にレイの紹介をするだけにしたのであった。それからは俺達はレイがこの部屋から出て行くまで待機することになったのだ。そして俺達は、この部屋を出る準備が整うとレイに部屋を出てもいいと言われた。それから俺はレイにこの部屋の中を調べたいと言ったのだがその必要はないと言われてしまったのだ。それから俺はレイについていき城の外に出ることになった。それから俺は城の外で少し休んでからこれからどうするかについて話し合う事になったのだ。

俺が城から抜け出してから二時間が経ち俺はようやく落ち着きを取り戻していた。それからは今後のことを考えるためにレイと相談をした。俺はこれからどうすればいいかを考えてみたが、今の時点で俺はこの国にいていい人間ではないため、早くこの国から立ち去るべきだと思っていた。俺がそうレイに提案してみるとレイも俺と同じ意見を持っていたようでこの国の外についてから俺達がどこに向かえばいいかについて話したのだ。

そして俺はこの国から立ち去った後、俺が元々暮らしていた場所に向かえばいいんじゃないかと思っていたのである。それからはこれから向かう場所についてレイと二人で話したのであった。

それから、レイが言う通りにレイの案内に従いながら俺は移動したのだが俺はレイから聞いた話に衝撃を受けていた。それは、レイの父親がこの国の反乱の原因であり国王を唆したということだったのだ。その話を聞いた俺は正直言って驚いてしまった。だがその話を聞いた時に俺の中に一つの疑念が生まれてしまったのだ。その疑問とはどうしてレイの父はこの国が反乱を起こした時に国王を倒さなかったのかと言うことだ。

だがレイが言うように俺もその答えがわかっているためレイの言葉をそのまま信じる事しかできなくなってしまったのである。

そして俺達は、反乱軍がいると言われている王都に向けて出発したのであった。

俺は、俺が城から脱出する時に追ってきた人達を俺がこの世界で使っていた転移の魔法で、この国から離れた森の中に移動したのである。だが俺の使ったこの魔法は一回使うだけで魔力を消費しすぎてしまい次の日にまた同じ場所に行けば、また使えるようになるという便利な魔法なんだけどね。俺はこの森に着いてからすぐに俺はある場所に行こうと決意して行動を開始したのである。その場所に向かう途中に人がいないところを見つけては隠れて自分の姿を隠した。なぜならこの姿で街に入ったら目立ってしまうと考えたからだ。だからその辺の木に隠れたりして街に入り俺の住んでいた家にたどり着いたのだがその家は、誰も住んでいないかのように廃れてしまっていたのだ。俺が、この場所に来るまでに時間はかなり経過していたため、家の中には何もないのではないかと考えたがとりあえず俺の家に確認だけすることに決めてドアを開けたのだが鍵がかかっていなかったので俺は家の中を確認したがやはりというべきか何もなかったのだ。

だが俺は、この家に住んでいた頃の思い出を思い出し、そして家族のことを思って泣き出してしまった。だがこのまま泣いていても仕方がないと自分に言い聞かせ涙を拭い、もう一度俺の家を確認するために外に出ると何故か俺は誰かに後ろをつけられている気配を感じたのだ。そのことに気づいた俺はその相手が何者で、何故俺のことを追いかけてきているのかがわからない以上、俺の方から仕掛けることはせずに相手の目的がわかるまで俺はそのままにして様子を見る事にした。すると相手は俺に攻撃を加えることなく一定間隔を空けながらついてきていたので、俺は相手に俺のことを追跡する意味を聞いた方がいいのかもしれないと思ったのだ。それで俺は相手を撒こうと俺は小細工をしながら逃げたのだがそれでも俺のことを執拗に追い掛けてきていたため俺はもう面倒くさくなって相手がどういう目的で俺のことを追跡してくるのか直接問いただすことに決めたのである。そしてある程度逃げ回って俺は相手の足止めをすることに成功したのだ。

俺はそうやって相手が痺れを切らして俺の目の前に現れるのを待つことにしたのである。俺としてはさっさとこの場から消えてほしいと思っていたので俺は俺の事をストーカーしていた人物に対して俺はその真意を問いかけたのだ。

「お前は誰で一体なんのために俺の後をついてくるんだ?」

俺はそう言って相手の顔を確認しようとした。

俺はそう言ったのだが俺はすぐに顔を見られるような格好をしていなかったことを思いだし、相手の方に俺の顔が見えないようにフードを深く被ってその正体を明かさないように努める。すると、その人は一瞬戸惑ったが俺の前に出てきて俺が想像もしなかった名前を口に出したのだ。

「レイお兄ちゃん!」

俺はその名前を聞き覚えがあったので驚きながらもその女の子の顔を見たのだ。そしてその顔を見ると俺は驚いた。なぜならその少女は俺の妹であるユミナだったのだ。その瞬間に俺はユミ姉の事を疑ってしまったのだ。俺はなぜここに妹がいて、俺の事をおにーたんと呼んでいるのかを。だが俺はこの世界に来た時からずっとこの世界にはいなかったのでこの子が言っていることが俺には信じられなかったのである。

だが俺はその少女に俺は君のことを知らないと言ってその場から離れようと俺は動き出そうとしたが、この少女はなぜか俺が離れようとするのを阻止するかのように俺の体を抱きしめて離そうとはしてくれなかったのである。

そして、俺はしばらくの間はこの少女から逃げることを諦めて俺はこの少女から事情を聞くことにしたのだ。すると、俺がこの子の話を聞いていくにつれて俺の中にあった疑いの気持ちは無くなっていき、この子は間違いなく俺の妹なのだと認識したのである。そして俺はユミナから色々とこの世界のことや俺がこの世界にいる理由など色々な話を聞いていた。それからは妹の話によるとどうやらとっくにこの国の王様は反乱によって殺されているらしい。つまりこの国は崩壊寸前の状態だったみたいで、俺はそのことを知ってしまいこの子だけでも救ってやりたいと思うようになっていた。それからは俺達はしばらく話していたがこの子にも両親がいることを俺は知っていたので、まずはこの子を安全な場所に保護してもらうように頼もうと考えていたのである。俺はそれからこの子を説得して何とか納得してくれたので、それからは俺達は一旦別行動をすることになった。俺はまだ見ぬ俺の家族と再会を果たすために俺の元住んでいた村に戻ることにし、そして俺はその前にまずレイと合流するためにある村に寄ったのである。

そして俺達はこの村の宿屋にレイが滞在していることを俺は知っていたため、レイに会うためにその村に行くことを決めたのだ。俺達はその後お互いの情報交換をし合い俺が元いた世界に戻ってきてからの事を報告した。

俺達が再会した場所はレイが泊まっていたその宿の食堂で、そこにはレイが待っていて、俺達がこの宿に訪れたことで俺はレイと無事に合流することができたのであった。そこでレイに俺は今までに何が起きたかを説明するとレイは最初は驚いていたがその後は冷静になってこの国の状況について説明を始めた。レイが話し始めたこの国に起こった出来事や俺達の仲間についての話などを詳しく聞き俺は俺と別れてからどうなったのかを詳しくレイから聞くとレイが今、反乱軍を率いて戦っているという話を聞く。

俺は、レイから話を聞いている途中で少し気になる点がいくつかあったのだ。そこで俺はレイに、俺の仲間はどうしてる?とか仲間は全員無事に合流できたのかを俺は聞いてみると、その話は俺にとって驚くべき話だったのだ。その話が信じられずレイに俺は本当にそんなことになっているのかを確認したのだ。俺は、もしレイの話が本当ならば、俺の大事な仲間のあの人が、そんなことになっていたのではと考えてしまったのである。だがレイの話でその可能性はなくなった。そしてその話を聞いた時レイは真剣な表情を浮かべていて嘘ではないということがすぐに理解できて俺はほっとしたのだ。

だがそれからも、この反乱軍と王国軍が衝突すればどちらが勝つにしてもかなりの被害が出るだろうと思い俺は早くレイを反乱軍を止めなければと急ごうとするのだがそれを俺の親友でもある男、ユウトが許してはくれなかった。

そして今現在、反乱軍と王国軍の交戦が開始されようとしていたのだが、その戦いに俺も参戦しなくてはならないと思っていたのだが俺に戦う力がないのでそれが不可能だと判断せざるを得なくて俺は悔しくてたまらなかったのである。

俺がその光景を見て歯痒い思いをしていたその時であった、俺の目の前が光り出し眩しい光が放たれたのだ。そして、そこから一人の人物が現れたのである。

その人物が、レイの父でありこの国の現王でもあったのだ。その王は自分の息子の命を奪った奴が憎いという感情を持ちながらその男はどこかで聞いたことがあるような声をしていた。その人物は自分の前に立ちはだかった人物を見つめて驚愕していた。そして自分の前に現れた人物に、自分がこの世で一番恨んでいる存在、その男が何故自分の息子を殺した仇と同じ容姿をしてそこに存在しているのかその王は理解することができなかったのだ。

「貴様!何故私の前に現れてそのような姿で立っているんだ。何故お前は私の大切な息子を殺した、何故お前のような化物が生きているんだ。私は認めない、絶対にお前の存在を認めないぞ」

王の言葉を聞いたその人物は王が何を言おうとしているのかを理解していたのだ。だがこの姿の時は俺はこの王の息子の魂であり今は俺がこの体を支配しているので、この王の気持ちに答えることは残念ながら出来ないので俺の気持ちを伝えたのだ。

そしてその人物は王に剣を向けたのだ。王はすぐに自分が敵わないことを瞬時に悟ってしまった。

それから、その人は王に攻撃を加えたのだが全く通用しなかったのである。それはそうだ、その人の攻撃は全く通用しないのである。だがしかし、その人は何度も攻撃を仕掛けて王を倒そうとしたのだ。

それからは激しい攻防戦が始まったのであった。

俺の目の前にいるこの人は誰なのかと不思議に思っていたが、それはどうやらこの人も同じことを考えているらしくその人に自分の身分を証明するものを提示してくれと言われたので俺は仕方なくその人の指示に従う事にした。俺は、この人と初めて会ったのにも関わらず俺はこの人の正体を知っているという奇妙な感覚に襲われたのである。だからこの人の指示通りに自分の懐に忍ばせてあるギルドカードを提示するとその人からある事実を突きつけられてしまう。

俺はその言葉を聞いて俺は衝撃を受けてしまい俺は頭が真っ白になり何も考えることができない状態になってしまったのだ。なぜなら、この人が俺の目の前にいるのはレイの父親でこの国を統治していた王でこの人の姿はその人だったのだ。俺が知っているその姿は若々しい姿をしていて俺はてっきりその人は、まだ若いと思っていたのだがまさか自分よりもかなり年上でその人は四十代の後半だった。それに、その人はこの世界で最強の存在と言われている一人で俺はこの人の強さを知っていた。だがこの人の本当の強さはそれとは違ったのでこの人はその実力の半分しか出してないと俺は思わされてしまったのである。その人も俺に、俺が自分の事をどんな目で見ていたのかがわかったようでそのことについて話し始めてきたのだ。

俺は、その言葉を聞き自分の顔がどんどん青ざめていくのを感じていった。そして、この人を怒らせないように俺はこの人に対して無礼な態度をしないように俺は必死に取り繕う。その人が言っている事が事実なら、この世界において俺はその人達に喧嘩を売ったということになるので俺はかなり焦っていたのである。その人は俺のことを責め立てることはなかったがそれでも俺はその言葉を聞いて、もうすでにその人からは逃げられないと感じてもう諦めてしまっていた。その人の目的はわからないが俺に危害を加えるつもりはないのかもしれない。俺は、これからは素直に言うことを聞き従うしかないと思ったのだ。そして俺はその人からこの世界の現状を教えてもらった。

この世界には魔王が存在していてそいつが世界を支配する為に行動を起こしていた。俺はその話を聞いただけで体が震え上がっていた。その魔族は、この世界に突如として現れ、圧倒的な力でその力を持って世界を滅ぼそうとしていたらしい。だがその強大な力を封印することに成功した者がいるのだと言う。その人はその封印を施した時に、その者は力の代償として眠りにつきそして、その者を蘇らせることができる唯一の人間である勇者を探し出すために、その封印を解くことのできる人間の事を召喚するという方法を取るようにその世界を管理する女神に頼んだのだと教えてくれた。

その話から俺はこの人が何者でなぜ俺の事を知っていてこの世界にやってきたのかがわかってしまったのである。

俺は、その人からの話を聞いていてある疑問を抱いたのだ。

「貴方は、一体どうしてそんな事までわかるんですか?」

俺はこの人がこの話は全て本当の話なのかを確認する為に直接本人に質問をした。すると意外な返答があったのだ。

俺はその返答を言われた時正直言って信じたくない内容だったのでその事は嘘だと思いたかったのである。

俺が聞いた話は、この世界に転生してくる際に俺はその事についての説明を受けてこの世界に来たと聞いていたからだ。この世界では普通ありえない話なのだ。そして俺はレイから俺達をこの世界に送り込んだその女について話を聞いていた。レイによると、俺がレイと一緒にその女の所に向かった際も、その女の子と一緒だったと聞いていたのだ。その話を聞いて俺はその話が真実だということが分かったのである。

つまり俺達がその話の内容を信じなければならないのだ。でもそれが真実なのだとしたらその女の子って本当に神様なんじゃないかって思うんだけど俺は、そんな事を考えている場合じゃなかったのだ。俺もその人の話を全て信じることはできないのでとりあえずは俺達の身に起こった出来事を話すと何故かその人も俺と同じように驚いていたのである。俺はそんな姿を見て、この人も実はこの話の全てが信じられなかったのだろうと勝手に解釈してしまった。それからはお互いが情報交換し合ったのだ。その話し合いによってこの世界の情報がある程度は手に入った。その人は俺達がここに来ることになった出来事については詳しくは知らないみたいで、俺の身に何が起こったのかという部分だけを説明し、俺達はその説明を聞いた。それから俺は、この人の能力についても色々と聞いた。まずは俺と俺の知り合いのステータスを確認して欲しいと言ったのだ。そうすれば相手の能力も確認する事ができると俺の師匠が言っていたと言っていたので俺は早速その指示に従った。

だが俺のスキルの中には【隠蔽】というものがありそれを発動させると他人には自分のステータスを隠すことができていたからそれを使おうと思ってそのことをその人に話すと、その人は何かを考えるようにしてからその能力を解除させるように言ってきたので俺は、俺の能力が相手にバレるのはあまりいい事では無いと思いその要求を拒否するがその人は、どうしても俺達に見せてほしいという頼み方をされたので、その人の真剣さに俺は圧倒されその人に俺は負けたのであった。その人は俺のその言葉を聞くと俺にありがとうと言ってきた。その感謝の言葉を聞いて俺は少し嬉しくなって照れてしまったのだ。そしてその人が俺の目の前に立って俺はその人が何をしようとしているのか理解することができたのである。その人は、今俺の頭の上に自分の手を乗っけていたのだ。俺はこの人がやろうとしていることが、その人のスキルを発動させるためのものだということは理解できた。そしてその人が俺の頭に触った瞬間に俺の体の中で何かが変わったような気がしたのである。

それから、その人の俺への用事が済みその人はレイが待っている宿屋に戻っていくようなので俺もそれに同行した。その人の後を追い俺は、その人が宿屋に戻ったあと、レイのところに行くのであった。だが俺はレイの部屋のドアをノックして部屋に入るがレイの様子がおかしいのが一目見ただけで分かってしまった。それは、この世界に来てからずっとレイは俺と行動を共にしていてレイの変化に気付かないはずがない。だから俺はすぐに異変に気付くことができたのである。そして俺が、部屋の中に入っても何も言わないどころかまるで俺の存在など見えていないような反応をするレイに対して俺の怒りは限界に達してしまっていたのである。そして、俺は、怒りのままに怒鳴り散らすとそこでようやくレイは、正気に返るかのように俺に話しかけてくる。そしてその後すぐに俺に襲いかかってきたのだ。それから俺は自分の感情に任せたままに戦いを始めた。俺が本気で戦わないのは分かっているのにだ。俺を本気で倒そうとするレイの目は狂気に染まっているのが俺の目から見ても明らかでそのレイを見て俺は完全に我を失っているということを理解していた。だが俺はそんなことを関係なく全力で戦うしかなかったのだ。俺にはまだ戦いに割くだけの時間がなかったからだ。だが俺は何とかレイの攻撃をかわしていくのだが俺の心が徐々にすり減っていくのを感じていた。それから俺とリゼッタの戦いが始まる。俺とレイの戦いが終わった直後なのに俺はその二人の攻撃を防ぎきる事ができてしまう。それはなぜかといえばこの二人の動きが見えているからでこの二人が俺の知っている技を使い攻撃をしているからである。この世界でこのレベルの攻撃は、俺の防御を崩す事ができないだろうと思ったので俺も反撃をしていくとこの二人は俺が思っていなかった攻撃パターンを使って攻撃してきたのである。俺はその時、まさかここまでの実力を身につけてこの世界にやって来るとは思わなかったのである。なぜならこの世界の人たちは皆俺よりも弱いと俺は思っていた。それは間違いではなかった。なぜならこの世界にやってくる異世界の勇者は決まってレベルが50を超えていてもこの世界の一般人の平均は60くらいなのだ。だから俺より強い人間がこの世界に訪れることなどありえないと思っていたのだ。しかし俺が出会ったのは70近くの老人で、俺が想像しているこの世界の勇者とは全然違う存在だと知ったのだ。それに俺の師匠はこんなにも強くはない。それに師匠は自分と同等クラスの人と会った事が無いと言っていたのを聞いていたから俺はその人がこの世界で二番目に強い存在になる。しかもこの世界で一番目の存在も俺が戦った中ではそこまで強敵と呼べる相手ではない。そしてこの世界で最強の存在であるはずの人ですら俺とほぼ互角の強さで、おそらく俺に勝ちを譲ってくれたのだ。

俺はこの時確信していた。この世界は俺にとって都合が良すぎると。だが俺が思わなくても、この世界は俺が思わなくとも俺が有利になるように出来ているのだと思った。そのおかげで俺もこの世界に来る前の状態よりも確実に力が上がっている。俺はこの二人に負ける要素はどこにもないと確信したのだが俺はここでこの勝負を終わらせることはしないことにしたのだ。そうしなければもっとこの世界を知ることができないと思ったからである。俺にはまだまだ足りないものが多いのだと実感した。この先もさらに強くなるためには経験が必要不可欠だと俺は思わされていた。そして俺はこの村に滞在してから数日が経つとその村人達に歓迎されるようになっていたのだ。

なぜ俺がこうなったのかと言うとそれには理由がある。あの戦闘のあとこの村は俺達の住んでいた場所と同じ様に魔物に襲われてしまっていたのだ。その状況を見た時俺は見過ごすことができなくてつい体が動いてしまっていた。そして俺はその人達を助けるためにその人たちが住んでいる建物ごとその魔族を倒して助けたのである。だが俺は自分が助かる為にやった行動なので俺はこの村の人達に感謝されると居心地が悪くなってしまうのだ。だがそんなことお構いなしのように俺達の周りに人が押し寄せてきてしまったのだ。そしてその人が集まって来たことで俺はその人たちが怪我をしていることに気が付き俺は回復の魔法をかけてあげた。それをきっかけに俺の周りはどんどん人が寄ってきてしまい、俺はその人の相手をするはめになってしまったのである。その日を境に俺はこの村の人達に救世主だとか、英雄とか、神の生まれ変わりだとかなんだと噂が広まっていった。最初はそんなに悪い気持ちではなく俺はみんなの為にできることがあるならそれをしようと俺は思った。でもそれがだんだん重荷になっていったのは、俺の体に異変が起こらなくなってきてしまってその事が心配になったのだ。この世界に来たばかりの頃はかなり調子が良く俺は、いつも通り動く事ができるがこの村にやって来てから俺は思うように体が動いていないことに気づいたのであった。

その事に俺は疑問に感じて俺がどうしたら動けるようになるか考えていた時に俺はある一つの結論に至ることになる。

それはこの世界に来れば誰でも簡単に強くなれるという事だ。

そしてこの世界の人間たちはこの世界が弱肉強食の世界だと勘違いしていて、俺のような強い者が現れた時はそいつは魔王を討伐することができると思っているみたいだが俺はそうじゃないと思う。俺はこの世界の仕組みを知っていたからだ。

この世界の人間たちは勘違いをしているのだと思う。そもそもこの世界に来た勇者たちが魔王を封印してこの世界を平和に導いたという言い伝えが残っていてそれが事実かどうかは別として、その話を信じている人は沢山いるのだ。でも俺がこの世界にやって来た時にはすでに俺の目の前で戦争が始まっていたのだ。だから俺が知っている話とは違うことがこの世界のどこかで起こったのではないかと思い、その話を聞いた時に俺は調べることにした。俺が元いた場所にはこの世界に飛ばされてきて行方不明になった人はたくさんいたみたいだけど俺はその中にはいなかったみたいだ。

俺はその事を調べているうちに、もしかしたらここに飛ばさせるのにかなりの魔力が必要なのではないかという考えに至ってしまったのである。そして俺達がこの世界の人の前に現れた時の状況を考えるとそうではないかと俺は予想を立てたのだ。その事からこの国の国王に俺達の事を召喚したのはこの世界の誰かではないか?という可能性を考えてしまったのだった。

俺は、そう仮定すると今まで俺がやってきたこと全てが説明がつくと考えた。そうこの国ではその方法で異世界の人間の転移に成功しているのだろうと。その方法は、おそらくその勇者たちの持っていた能力や固有技能などを使うのであろう。それで異世界の者を呼び寄せることに俺は成功したのではないかと思い始めたのである。俺がその話を他の三人に説明すると三人とも驚いていて、リゼッタも同じような方法を思い浮かべていたらしくて、俺の考えは間違ってはいないかもしれないと考えていた。そしてレイはその話から俺が何をしたのかを予測できたのか、何か考えているようでレイの頭の回転力の速さには驚くばかりだった。俺もその事について考えたけど結局のところまだ情報が足りず何が正しいのかわからないため考えるのを諦めたのであった。俺は、その話が嘘だと信じたかったが、俺は、リゼッタとレイの話を聞きこの世界で起きていることの可能性が一番正しいと認めざるをえなかったのであった。俺達はこの国の闇に気づいたのだ。だがそれは遅すぎたのである。

それからこの国の王が俺を勇者だと思い込んだせいなのか、勇者は魔王を倒さなければならないと思い込んでいるのだろうか俺を城に招き入れたのである。そこで、俺が魔王を退治してほしいと言ったがこの世界の人間は俺の言葉を聞いてはくれなかったのだ。この世界にはまだ勇者が現れていなかったから仕方ないと思っていたがそれは違ったのである。俺の前に現れたのは別の人だったようだ。だがその事は俺はこの国に来てから知ることになる。そして俺はこの世界を救うために俺に力をくれたこの世界を俺の好き勝手にしようと思ってこの国に滞在することになったのだ。

そして俺はこの国の王に俺に勇者の称号を与え、俺が持っている固有技能を王に伝えてもらうためにこの城に訪れたのである。だがその途中で俺はレイが俺のことをこの世界を救った伝説の勇者と同じ名前の少年だと王様に伝えている所を俺は偶然聞いてしまいレイがこの国の王様に俺の正体を伝えていないことが分かったのだ。俺の推測が正しければこの国の王は、おそらくこの国が行おうとしている計画が実行された時この世界にどのような影響を与えるかを分かっていながら何もしていない。俺が思うに、俺達がいた世界で起こっている現象をこちらの世界で同じことをやろうと考えているのだろうが、おそらく成功する確率は低い。それにその実験を成功させることができたとしてもこの世界の人間にそれほどの変化が起こるとは思えないので、俺は自分の身を守るだけの為に戦うと決めたのだ。

俺はその日の夜リゼッタがこの城の兵士達に捕まっているのを見て助けに行ったのである。そこでリゼッタを捕らえている兵士たちを俺は全員殺してしまうと、俺の前に突然一人の女性が現れ俺に話しかけてきた。その女性が誰だか俺はすぐに分かった。彼女はこの世界での俺の母親であり最強の戦士の一人でもあり、この世界で最強の存在であるはずの人であった。だが、彼女の姿を見た時に俺は、俺は驚愕したのだ。なぜなら、彼女もまた俺と同じように老化が進んでいたからである。

「やっと見つけたわよ」

「えっ?」

なんでこの人が俺を探しているというのか俺には理解できなかったのだ。俺は彼女に何かした覚えはなかった。むしろ俺は彼女と会話すらしていなかったのだ。なのにどうして俺がここにいることを知っているのか、俺には不思議でしょうがなかった。しかもその理由を聞く前に、彼女はとんでもない速度で攻撃をして来たのである。それもこの世界で一番強い人である師匠と同等の強さを持っている人が本気で俺を攻撃してきているのだ。その攻撃に対して俺は全力で対応していた。

その戦いの最中この女性はなぜ俺の母親が俺のことを探していたのか俺に向かって語り掛けてきたが俺の耳に入ってこなかった。いや入ってくる暇もなかったと言うべきか、それほどまでにこの人の攻撃が激しく、俺に反撃の隙を与えてくれないのだから。その人は剣を使い魔法も使い、体術まで使って俺を殺しにきているので俺は防御するので精一杯であったのだ。俺の頭の中にはもうこの人の相手をしている余裕なんて全くなくなっていた。俺はなんとか逃げられないものかと考えていた。でもそんなことを考えていても無駄なことで逃げることができないのが今の俺の状態なのである。そんな時に俺はなぜか俺の心の中がどんどんクリアになって行く感覚に陥ってしまっていたのだ。俺はそんな時にふと思ったのであった。なぜ俺の母親はここまで強くなったのだろうか。なぜ俺はこの人とこんなにも差があるのだろうと。そしてそんな俺の疑問はすぐに解消されたのだった。それはその答えは単純明快なことだったのだ。

そう、俺は元から最強だったというわけでなく、俺の母さんの修行のおかげで俺は今この場に立って戦っていることができるようになっていたということなのだ。

この世界の仕組みを知った時に俺も考えた。なぜ、俺以外の人はみんなが年を取るのに対し俺だけが若くなっていくのだろうと。この世界での人間たちは皆若々しい見た目のまま成長を止めるのだ。でも俺達のような勇者はこの世界で召喚されると同時にその世界の人達は俺の姿を見てその人物がこの世界にやってきた者だということがわかるのだ。それは俺の体が特別だと言われているように感じる。

俺はそんなに若いままの自分があまり好きではなかった。だって俺の周りにいるみんなは歳を重ねていくが、俺はこの世界でただの人間だと思われるほど、俺の容姿は普通で、そして俺はみんなの後を追うようにして老いて行くことになるからだ。だから俺はあまり周りの人と接することはしないようにしてきたのだ。俺はその事に気づきたくなくて、その事実を認めようとはしなかったのだ。そして俺はこの世界の仕組みを知り、この世界を俺の好きなように変えることができると思って、俺に加護を与えた奴を見つけ出しそいつに復讐しようと考えていた。だがその俺の計画に少し修正を加えないとならない。

まず俺がこの世界を救いこの世界に俺達のような人間を呼んで俺が元の世界に帰れば俺がこの世界に残って元の世界に帰ることができなくなってしまう。そうすると俺は元の生活には戻ることはできない。この世界では俺みたいな人間は受け入れられないだろう。だから、元の世界に戻るのが遅くなるとそれだけ俺は元の世界に戻れなくなるのだ。それに俺は俺の家族に会いたいと思っている。その願いが俺の中で強くなって俺はこの世界に来ようと考えた理由になっていた。

その事に俺の本当の目的を忘れそうになっていた俺は本来の俺の目的を思い出したのであった。

そして俺は目の前の女性と向き合いながらどうやってこの状況を打開するか考えていた。でも、いくら考えても、目の前の人からは逃げることができない。それどころか、だんだん追い詰められて来ていたのである。そしてその事がさらに俺を焦らせる。そしてとうとう俺は俺の限界を超えて俺は死を覚悟してこの人に最後の抵抗を試みた。その一撃で死ぬつもりはない。もし俺にこの技を使えば相手を殺す可能性がある。それは俺の寿命を大きく縮めることになる。でもこのまま殺されるよりはマシだと考え俺はその技を使うことにしたのだ。俺にはその女性の攻撃を防ぐことができないと悟り、その女性が放った渾身の一撃を受けてしまえば確実に命が消えると確信していたので俺はその女性の動きに合わせてある行動に出た。

その女性は俺の攻撃を防げると思っていたのだろうが俺の攻撃の方が速く俺の体に届いていた。そして俺はこの技を使った瞬間意識を失ってしまったのだ。俺の体が限界を超えてしまったため、この世界での死を迎えたのである。だが、俺は死んだわけではなかった。この技を一度使うだけで俺の体の全ての魔力を消費してしまうため、その後俺はしばらくの間動くことさえもできなくなっていまうのだ。そしてしばらく経つとまた動けるようになるのだけど、俺は、この時だけはいつも俺が生きていてよかったと思える。

俺は、その時、俺が死んだことに気が付いていないこの世界の人間に殺されてしまっては俺も死んでしまうのではないか?と考えて、この世界の人に見つからなさそうな場所に隠れることにしたのだ。そして、その隠れ場所は俺の固有技能を発動させると、その場所の地形や生き物の気配を完全に消し去ることのできる場所にできたのだ。俺はそこでその固有技能を使い体を休めていた。

だが俺はその日を境にこの世界に呼び出されることがなくなり、その事について考える時間がたくさんありすぎて困っていた。それに俺はあの人が俺を殺そうとしたことに対して、何も感じなかった。そのことに疑問を持ったのだ。そのことについて考えると俺がこの世界の人たちに殺意を抱いていなかったということもあるのかもしれない。それと、俺をこの世界の人間が呼び出していたことに違和感があったのも原因だろう。俺はその事を疑問に思ったのだが俺は深く考えることを止めてしまっていた。それは、俺に何かあったらこの世界にいるはずのレイの身に何か危険があるのではないかと不安だったのだ。だからレイにそのことを話すとレイはその可能性を否定してくれたのだ。そのおかげで俺も心置きなくこの世界の人間にどう対処するべきなのかを考えることができたのである。

それから、俺はレイから聞いたこの世界で起こっていることを整理することに時間を費やし、俺はこの世界で何が起こったのかを知ることになった。

俺が異世界からこの世界に来るとこの世界にいた人間は老化が止まるのだ。その事は俺はその世界に来る時に、神様によって説明を受けていたため知っていた。俺はその世界に行く時にこの世界に帰ってくることはないと考えていた。それはその世界では俺はこの世界で過ごした年月の五倍ほどしか生きていけないのだ。

だから、俺は、この世界で一生過ごすことを決めたのである。それにこの世界に来た時よりも、俺は若返っており、前の世界での俺は三十五歳であった。だからその年齢とこの世界の平均年齢は変わらないので俺は二十歳の姿でずっと過ごさなければならない。だからその事に不便を感じたことはなかったのだ。

でもそのせいでこの世界での出来事を全て知ることができる。なぜなら、この世界の人間の記憶は全て俺の脳に直接入ってくるような感覚に陥るからである。その現象のせいでこの世界の人たちは皆、何かしらの病気を持っていることが多い。それもこの世界の人々の特徴と言えるだろう。でも俺のように歳を取らないということは誰も経験することができないことだ。だから皆この世界に不満を持ち始めてしまうのだろう。しかし俺にとってはいい迷惑だ。

この世界の人々の悩みも解決する方法は分かっている。ただこの世界で死んでしまった人は元いた世界に戻ってしまうためにこの世界を救うことはできない。なぜならその方法がこの世界で死んでしまっているからである。俺はその解決策を見つけることはできなかったのだ。俺もその方法で帰ろうかとも考えたことがある。でも俺にその選択肢を選ぶことはできなかった。

なぜなら俺には愛する人が出来たからだ。俺はその人が愛おしくて堪らなかったのだ。その人がこの世界からいなくなってしまうと考えると胸が張り裂けそうになってしまう程苦しくなる。それにその人と別れなければならないと思うだけでも俺の心には大きな穴が開いてしまいそうになった。

俺は、もうその人と離れることなんて考えられないくらい彼女のことを大事にしているのである。その彼女がいなければ俺も生きている価値なんてないと俺は考えているのだ。それほど彼女の存在はとても大きなものになっている。だから彼女を失いたくなくて俺は彼女と永遠に一緒にいることにしているのだ。そのためこの世界で死ぬ訳にもいかなくなってしまった。その人が俺と一緒にいて幸せだと思ってくれるまで俺は彼女をこの世界で守り続ける。そう決意したのであった。でも俺は今この世界でその人がどこにいるのかわからないでいる。その人のことを守りたいと思っているのに居場所がわかんなきゃ守ることができない。俺はそれが悔しかった。俺はその人のことを早く見つけ出し、その人をこの手で抱きしめたいという気持ちを抑えながら、俺は俺にできることを考え続けていたのであった。そしてそんな俺の前に突如現れたその人は一体なんだったのだろうか。その答えはわかっている。

それはその男が俺のことをこの世界で初めて見た人でもあったからだ。つまり、俺をこの世界に呼び寄せた張本人だった。俺がその男を見てしまったことで、男は俺の方に振り向いてきたのである。その時に俺は、そいつがどんな表情をしているのかわからなかったが、きっと笑っているのだろうとそう思った。だって俺はそいつのことが嫌いなはずなのに俺はその顔を見たときに何故か安心していたのだから。その事に不思議を感じながらも俺はその男に向かって攻撃をしたが俺の攻撃はそいつに当たらず空を切るだけだった。俺はそんな状況の中俺は必死に考えていた。そして俺が一つの策を思いつく。そして俺は、その作戦を実行するため、もう一度その男の目の前に立っていたのであった。

俺の今持っている力で倒せないのならこの世界に来て得た力を使おうと思い俺はこの世界にきたことによって得た能力を使うことに決めたのであった。俺の固有技能の中には『聖騎士』というものがあり、俺はこの固有技能を使い自分の身を守ることに特化させた戦闘をすることができるのである。

俺はそいつの動きに合わせて体を動かしていくと次第に攻撃が当たるようになっていった。その事に少し疑問を感じていたのだが俺はすぐにその事がわかったのだ。俺はそいつと互角以上に戦うことができたからだ。その理由は単純明快である。それはこの固有技能には二つ目の効果がある。それは攻撃を当てれば当てるほどその力が増していくというものが、その効果でありこの効果のおかげで俺はそいつとここまで戦い続けることができるようになったのである。

俺はそいつがなぜこの国の人達の言葉を話せるようになっているのかはわからないが、俺のやるべきことはただ一つだけだ。それはこの世界の仕組みを変える事である。この世界に俺を呼び出して俺の大切な仲間を殺したあいつが俺の仲間を殺し、俺の恋人であるその人までも殺し俺のことを傷つけようとしているのだ。俺は許すことができない。この世界を平和にし、この世界に俺達のような勇者を呼び出さなくてすむようにするにはまずはこの国を救わなくてはならない。そのために俺ができることをするだけであるのだ。

そして、その国を救うために必要なことはこの魔族をこの国の中で暴れさせないことである。俺は、その事を理解したと同時にこの魔族を倒し、この国に被害を出さない方法を考えたのであった。そして俺に考えついた方法はこれしかないと確信をした俺は、その作戦を実行することにして動き始めるのであった。

俺は俺自身の固有技能をフル活用して、この国の人々に危害が加わらないように戦っていたのである。その結果なんとかその人を止めることに成功していた。その人にこの世界の言語を教えてもらいながら、俺達は話し合うことにしたのだ。その時に俺達が戦った相手は俺達の共通の知り合いでもある人であったのだ。

俺は、この世界に来て初めて見る同じ人間と話をすることになった。しかも相手は魔王と呼ばれている存在である。

「私は、お前と会った事があるはずだ」

俺もそう思い話しかけようとした。すると、その言葉に反応してその女性が口を開いたのだ。俺はその言葉を言われた途端に俺は思い出してしまう。この世界に初めて呼び出されたときに俺は彼女に殺される寸前のところにいたのだ。そして俺は彼女の攻撃を防げずに死んでいたのだ。でも俺がこの世界にいた時はこの世界の時間軸は止まってるから俺は死んでいると錯覚していて俺がこの世界に帰って来ている時にはこの世界での出来事が全てなかったことになっている。

そして俺は、この世界に召喚されてからの五年間のことを思い出してみると、この人に会う前にこの人と似たような人と会っていて俺の体がその事を思い出すと体が拒否反応を起こしてしまい吐き気に襲われたのだ。その事を考えると俺は、この人が言っている事は正しいという結論に至ることができたのである。そして俺は、俺はそのことを正直に伝えた。するとその人は何かを理解していたような感じになっていたのだ。

俺がその事を聞いている間中ずっとその人の顔を見ていると俺はその人が誰かに似ていることに気付き始めたのである。俺はそのことに驚いてしまい思わずその事を言ってしまったのだ。

俺はレイの顔と全く一緒なのだ。俺はその時に俺が思っていた通り、レイがこの世界の人であるということを理解する。俺は、レイにこのことを話すべきかを悩んだが結局、レイにこの世界のことについてを話すことにしたのである。

その人は俺の話に耳を傾けてくれてその人の事をレイと呼ぶようになったのだ。それからレイはその人のことを殺そうとはしなくなったのである。俺は、レイとこの世界で生きる覚悟を決めてレイの味方になることを決めたのだった。

俺が初めてレイと出会ってから、一年の月日が流れたのである。その間、俺もこの世界で過ごすにあたって、自分が生き抜くことができる術を見つけることができた。

レイと出会ってから、レイの友達のアリスと会うことができて仲良くなったのだ。レイの他にもそのアリスが俺のことを気に入ったようで良く俺に会いに来るようになってくれてから俺はこの世界での生活を楽しむことがでるようになったのである。それに、アリスは俺と同じように年を取らないために俺のことを本当の兄だと思ってくれるようにもなってくれた。だから今では、家族同然の存在として俺も接しているのだ。そしてその生活の中でも、俺にとって大事な出来事が起こったのである。それは、レイに妹ができたのだ。名前はカレンと言い、見た目はアリスそっくりだが中身は全く違う子だ。

その事に俺は嬉しく思うとともに俺の妹だと思って大事に接していくことを決心したのである。それとカレンが生まれた時にあることが起こり俺の家族になったのだ。それは、俺の母が亡くなった時のことだった。母の葬儀の時に現れたのが父でもなく祖父でもなかった。その三人以外の人物に俺は不信感を抱いており警戒心を強めていた。しかし俺の前に現れたのは俺の父と俺の母方の祖父母であることが分かった。

そして父は俺の知らない所で、俺のことを思って行動していたことを初めて知ったのだ。その時、今までの俺は自分勝手に父のことを恨み続けていたことに申し訳ない気持ちにさせられた。それと同時に俺は俺の為に色々と動いてくれていたことに喜びを感じるようになっていたのである。だから俺はこの人たちを信じることに決めたのだ。それに祖父母が生きていたおかげで俺は俺と血の繋がっている唯一の肉親が生きていてくれたことに安堵感を覚えたのだ。そのせいか俺は久しぶりに涙を流すことができたのであった。そして俺とこの四人で生活することになったのだ。

俺はこの世界に来たことで色々なことを学べることができた。俺がこいつらに勝つ為の力を得ることもできることができた。俺は今その力を駆使して目の前にいる魔族を倒そうとしているのだ。

俺はこの魔族の能力を奪う為にこの魔族に戦いを挑んだのだ。その能力は奪うことはできても発動することができない。だから俺がその魔族を倒しても意味が無いのだが、魔族はそんなこと知らずに俺に襲ってきたのだ。俺はその魔族の攻撃を防ぎつつ、俺はこの世界に呼ばれてから手に入れることのできた『完全防御』を使って魔族からのダメージを全て無効化することができた。

俺は、このスキルを手に入れるまでは『聖騎士』の固有技能をあまり使いたく無かったのだ。『聖騎士』は相手の固有技能の効果を受けないという効果が使えるのだ。そしてその固有技能を持っている俺はその固有技能を使うことができないのである。なぜなら俺自身がこの世界に存在しないはずの異質な存在であるためその固有技能を使うことができないのである。

そしてその魔族は、俺の固有技能の能力によって俺が何をしてくるのか分からずに混乱をしている様子であった。そんな隙を狙って俺は、その魔物の能力を強奪することに成功する。

俺はその魔物の持っていた固有能力のほとんどを俺のものにすることに成功して俺はそいつから得た力を使うことに決め、俺の力を試すことにすることにしたのであった。俺はそいつに剣を振りかざすと、その攻撃を避けることもできないくらいそいつが弱いことがわかる。だから俺はその力を使い俺の持つ武器全てを出すことに成功したのだ。

その結果は予想通りのものであったのだ。そいつには全ての力を吸収するという特殊能力がありそれを使えばどんな攻撃も無効にできるらしいがその力が俺に奪われていることに気が付いていないようだった。そのため俺に勝てるはずがなく簡単に倒せてしまうほど弱っているのだ。その後この魔族を倒す時に『支配化強化』と『隷属解除』という二つの技能と『吸収』『奪取』の二つを手に入れた。

「これでこの世界には平和が訪れる。これからは私がお前らを守ってやるよ」

俺は目の前で倒れ込んでいる男に向かって言った。その男は俺に対して敵意を向けた表情をしていたがすぐに俺の前から姿を消したのであった。そして俺とアリスの平和な日々は取り戻せた。この世界では平和を取り戻したといっても過言ではないだろう。だけど俺は油断はしないつもりである。俺は俺の仲間を奪ったあいつらをこの世界でも探し出し、必ず殺してやると俺は誓ったのであった。俺は平和になったその世界を歩き、俺の目的のために再び動き始めることにする。

俺達は魔王と勇者との激戦の末勝利を手にして、無事にこの国を取り戻すことが出来た。しかし、それは束の間の平穏であった。この国は一度魔王の手によって崩壊しかけてしまっているのだ。この国に魔王がいる限りまた魔王が復活して俺達に襲いかかってくる可能性もある。そうならないためにも、俺達は強くならなくてはいけないと思ったのだ。

魔王を倒し平和を手にした俺は平和になってからの五年間ずっと、俺は強くなるためにこの世界で修行をし続けてきた。それはもう、この世界の人族の中では一番強いと言えるほどの強さを手に入れてしまったのである。この世界の人達よりも俺の方が強いという事実はこの世界の住人達の俺に対する認識を変えることになった。そして俺は、この国で一番の英雄と言われるようになり俺には国を守れるほどの力を持った勇者だという認識を持つようになる。

ただこの世界での俺の扱いが変わったところでこの世界に呼び出された本来の目的を忘れているわけではない。この世界のどこかに存在している魔王が俺達の共通の敵でありその魔王さえどうにかすれば後は自由に生きていくことができると思っているのだ。ただ魔王を見つけるのが大変すぎて、未だに見つけることが出来ていないのだ。この世界の地図を見渡してもどこの国にもそのような名前の者は存在しなかった。だから俺はこの世界に呼び出されてから六年の月日が流れた今でも魔王に関する情報を集める為に各地を旅していたのである。

そんなある日、俺達が住む国に突然現れたのはなんと俺が倒した魔王の姿があったのだ。俺は自分の目が信じられず何度も目をこすり見直してみるが何度見てもそれは紛れもない事実で現実であることを確認することができたのである。

そして俺は、あの時のリベンジを果たすべく、その男と戦う決意をした。その結果、俺達はなんとかこの世界に出現したその男の魂と肉体の一部を奪い取りこの世界に復活することに成功している。そして、この世界が俺の求めていた世界に変化したことによって俺は俺の夢であったハーレムを作ることに成功できたのである。この世界の住民はみんな可愛い美少女ばかりだから俺の嫁候補には困らなかったのだ。それに俺は、俺のことを慕ってくれている女の子達がいっぱいいるのだ。だから俺は毎日幸せな生活を送っていたのである。そしてこの異世界に来てから俺に新たなる出会いもあった。それが俺の妹でもあるレイと妹分でもあり俺の師匠のアリスである。二人は俺と離れることができなかったみたいだ。でも俺と一緒にこの世界の生活を満喫しているようには見えなかったので俺は二人を連れて、この世界を旅しながら俺の理想とする生活が送れそうな街を探していた。

しかし俺はこの街に来る前にレイに言われた言葉を思い出す。俺もレイが言いたいことは分かっていたのだ。俺の妹であるレイには、まだ話していないことが残っているということをレイに言われるまで気づかないふりをしていたのだ。でも本当は、そんなことわかっていたのである。

それでも俺はレイが言うことを聞くわけがないと思い込んでしまったことで俺は逃げようとしたんだ。だけどそれは違ったようでレイはその先にある未来をしっかりと見通していたようだ。そして俺はそのことを認めることにした。その話をする前にレイがなぜそんなことを言うようになったかを説明したいと思う。これはつい最近のことになるのだがある日を境に俺の生活に変化が訪れたのだ。それはいつも通り過ごしていただけなのに気がついた時には何故かレイの機嫌が悪くなっていることが何度かあったのだ。だから俺は何か理由があるんだろうと思っていたから聞かなかったけどやっぱりそのことが原因だったようでついにそのことを話し始めようとしていた。それはどう考えてもレイがこの世界に来たことに関係していることに間違いないと確信していたので、俺は聞く準備を整えてからレイに話してくれるように頼んだのである。レイの話してくれた内容は、俺がこの異世界に来たばかりの頃の記憶がなかった頃に起こった出来事を話してくれているようだった。その話は、レイ自身も俺と同じで自分が何故ここに来たのかわからないという事なのだそうだ。

レイは記憶を失う前のことを覚えていなくて自分が一体何者なのか分からなかったと言っていた。そこで俺は自分がこの世界に連れて来られたのはおそらく偶然ではなくて何らかの原因で、誰かがこの世界に呼んだのではないかと推測している。しかし誰が俺のことを呼んでくれたかは分かっていないのだ。でもそれは多分間違っていないはずだ。だってこの異世界には、人間と魔族が存在するがそれ以外には動物しかいないのだ。

そしてそのことから考えられる可能性は二つしかない。一つは俺がたまたまこの世界に来ていたということともう一つは俺をこの世界に呼ぶことができるほどの強力な能力者がこの世界に存在しその人が魔族と手を繋いでいたという可能性があるのだ。そのどちらかの可能性が最も高いのではないかと俺は思っている。そして俺を呼んだ人物は魔族ではないのかという推測をすることもできてしまう。それは俺をこの世界に呼んだ人物が魔族と手を繋いでいた可能性が高いからだ。もし魔族が俺のことを呼んだのであれば、わざわざこの世界に呼び出す必要はないのだ。俺に復讐をさせたいのならば、この世界と別の世界との間にある次元の壁を越えて俺を呼び出すことなんて簡単にできることだろう。

俺は、その考えが正しいのか分からないけれど魔族側にもこの世界に呼び出した存在がいると考えるのが一番妥当なところだろうとは思う。ただ問題は魔族側の方がどんな理由でこの世界に来たのかということである。魔族側がこの世界に現れたということは俺達の世界を攻めにきたということになるのだが魔族側からしたらこの世界と俺達人間の住む世界を比べたら圧倒的に魔族達のほうが有利なはずなのだ。魔族達には無限の魔力を持っている者もいるらしいので、こちら側は魔法を使って攻撃することができなくなるかもしれない。そして人間は寿命が長い種族もいて繁殖力も弱いのだ。そのためこの世界を支配しようとしているのならば俺達の世界を制圧する方が明らかに簡単なことであるはずである。だから俺は魔族が攻めて来たのではなく他の目的でこの世界に呼ばれたと考えたのだ。

ただ俺の考えはあくまで仮定の上での結論であるからこの世界にいる魔族の人達を説得することは不可能であるしその必要性は全く無い。この世界では平和が保たれていて今のままで十分にいい状態になっているのだ。俺の目的はこの世界に俺と仲間以外の魔族が存在していないことの確認が取れればいいだけである。

この国に存在する最強の勇者であるはずのレイにはある悩みを抱えており、それを俺に話すことができないでいることを知っている。なぜならこの国の王の娘でレイの姉でもあるリリスさんには誰にも知られたくない過去があったからである。

そして俺は、この世界の真実を知ったのであった。

私は魔王を倒すことに成功した後すぐに魔王城へと戻ることに決めた。この国を救うことができたとはいえ、まだこの世界の脅威を取り除いた訳ではない。魔王はまだ復活してないし、私にはこの世界を守る義務と責任があることを忘れてはいけないのだ。それに私にはまだこの国を守って欲しいと思っている国民の声援がありこの国から離れる訳にはいかないのだ。だからこそ私達は一刻も早く魔王の復活を阻止しなければならないのである。魔王が復活し再び動き始めた時に対抗できるだけの力を身につけておく必要があるのだ。

私がこの世界で手に入れた技能の中にはこの世界にはないスキルもある。そして、この世界では手に入れることが難しいスキルもあり、この技能と技能を組み合わせて新しい技を作りだすことも出来た。それらの技術は私達の世界の地球の技術である。地球の科学の最先端の技術を手に入れることができて本当によかったと私は思っている。ただ私の予想を超える程にこの世界の科学技術の水準は低かったが。

魔王を倒してから約三年が経つ頃にはこの国はだいぶ落ち着きを取り戻した。それはもうほとんどこの国が元に戻ったと言ってもいいくらいだ。そして、もうこの国を脅かすものなどいない。この世界も平和になったのである。しかし、そんな平和も束の間の休息であったのだ。それは突然現れた一人の男が全ての問題を解決してしまったのだ。その男は魔王を倒した俺と同じように魔王と同等の強さを持ってしまっていたのである。

男は固有技能を使いこなしているようで、今までに誰も使うことが出来なかった受け身を使うことができた。それだけでも十分強いと思ったのであるがそれに加えて、この男の持っている固有技能は、身体能力を向上させるものだったのだ。そしてこの男にはもう一つの能力が備わっていた。それは自分の体の中に入った異物を取り出す力だ。つまり、その男は体内にある物を自由自在に取り出すことが出来るのだ。しかしその力は自分の意志によってしか発動することができないようだ。この二つの力を使うことで、その男の実力は魔王並になってしまったのだ。だから、魔王と同じような力を持ち合わせているこの男が動き出したら再び戦争が起きてしまう恐れがあった。しかも今回は魔王がいない状態で戦争が起きた時と同じ結果になってしまう恐れがある。

この男に勝てる者は今の時点では魔王以外にはおらず、その魔王も復活が間に合わない状況なので、魔王のいないこの状況でその力を持つ者を放置しておくことは、絶対に避けなければならないことだった。

そこで私達は、勇者である私とその仲間の四人とでこの男の魂の一部を奪って、肉体の一部だけをこの男に与えることによって、その男の身体の中に入り込み、肉体を奪い返すという作戦を立てたのである。

しかしそんな都合の良いことが起こるはずもなくこの男を止める術はなかったのだ。その男の名前はシンといいとても優しくて勇敢だった人物だと聞いていたがそれは全くの真逆の人物になっていた。そしてこの男の人格を変えてしまっている何かの原因を取り除く為にもまずはこの男の心を開くことが必要だと判断したのだ。その方法については、アリスちゃんや、妹分であるレイちゃんに任せることにして私たちはこの国を守ろうと思うのだった。

俺は目が覚めると見知らぬ天井が広がっていた。その景色を見た瞬間に俺はこの部屋のベッドに寝かせられていることに気づいたのである。しかしここは何処なんだろうと疑問に思いつつもその疑問はすぐに解決することができたのだ。俺は俺の大切な存在であるレイちゃんに起こされて、この部屋にいたのだ。だから俺はここにいるのかと自分で勝手に答えを出して納得したのである。俺は起き上がってこの部屋の様子を確認していた。その時にふと横を見るとそこにはアリスがいてアリスが目を覚ました俺を見て微笑んでいた。その光景に俺は思わず見惚れてしまい、俺が目覚めたのを喜んでくれているのだと思うだけで、幸せな気持ちになって、嬉しくなって笑顔になるのを抑えられなかったのである。しかし、俺はここで違和感を覚える。アリスは、いつも俺の傍から離れずに行動を共にすることが多かったからこんなことは初めてだったからだ。アリスも俺と同じことを考えたようで不思議そうにしている表情をして首を傾げていたのである。そこで俺はこのことについて聞くことにしたのだ。

「アリス、どうして俺が目覚めたときに近くにいたんだ?」

その問いに対して彼女は少し困ったような顔をした。何か理由があって言えない理由があるのではないかと俺は考え始めていたのだ。だが俺はどうしてもその理由が知りたくてもう一度同じ質問を彼女に向けて言うと彼女はこう答えたのである。

「私が、貴方が倒れた時からずっーと見ていたかったのよ。それに、お礼を言うためにね」

俺がその言葉を聞いて戸惑ってしまった。俺にはそのことが理解できなかったのである。だから俺はその言葉を信じることができなかったのだ。だって俺は彼女の為だけに頑張ったわけではない。俺は俺自身の意思でやっただけなのだ。その俺が感謝されるのならわかるのだが、なぜ彼女がお礼を言いたいということに至ったのかが全くわからないのである。

俺は彼女にそのことを正直に言ったのである。すると俺の言葉を聞いたアリスは、クスっと笑ってからこう言ってきたのだ。

「貴方はいつも私を守ってくれるよね。そして私を一番大切にしてくれているよね。だから私は、その恩を少しでも返せたらいいなぁって思って、いつも貴方を見ていたの。そして今回も貴方のおかげで皆んな無事に済んだから。本当にありがとう。そして、私のわがままで貴方を巻き込んでごめんなさい。だけどお願いだから私を置いていかないで。私は、貴方がいなくなってしまった時の事を想像してしまうと、夜も眠れなくなってしまう。私はもう二度と貴方を失いたくないの! お願いだから私の前からいなくなったりしないで!」

俺はこの言葉で涙が出そうになるほど嬉しかった。俺がこの世界で生きていくと決めた理由はレイを必ず幸せにするという思いが一番にあったからだ。そしてその願いはもう叶っている。俺はもうこれ以上レイのことを泣かせたくなかった。だからこそ俺の心の中にはずっと不安が存在していたのだろう。俺がいつか死んでしまうのではないかという不安を、でも今回の出来事が俺に勇気を与えてくれたのだ。そして俺は俺の命を懸ける価値のある仲間ができたのである。そしてこの世界にきて、俺が求めていたものが、今目の前にあるのだ。だから俺はもう怖くないのだ。俺の仲間は、これからも俺のことを守ってくれると約束してくれた。だから、この仲間たちの為に俺はこの命を失うことを恐れないで戦えるのだ。

それから俺はアリスに向かって笑いかけたのだ。

「大丈夫だ、俺がお前のそばを離れるはずがないだろう。俺はどんな事があっても、例え俺が死んだとしても絶対に死なないし諦めないと誓ったんだ。俺は絶対に仲間を見捨てるような事はしたくないんだよ。それに俺は、お前の為じゃなくて、俺のために動いているんだぞ。俺にはまだ、やるべきことがあると思ってこの世界にきた。それは仲間と一緒に平和を築くことなんだ。そしてこの世界は俺とレイと仲間たちとの平和な生活を守る為に守ることを決めたんだ。それに俺はまだ死にたくないし、死ぬつもりもない。だから、安心しろ、何が起こっても俺たちは離れることなんて無いし、それに俺がもし死んだとしてもこの世界の誰かが引き継いでいくだろうし俺も仲間を裏切ることはない。俺が守りたいと思える人には、この世界にしかいないから。俺は仲間とレイの笑顔を守る為に、この世界を平和にしたいと思っている。それが今俺が思っている夢で目標だ。それを叶えるまで俺は死んでたまるかっていう気持ちで頑張れる気がするんだ。俺はこの世界を救いたい。この世界を守り抜きたいと本気で思うようになった。だからこそ、俺は俺の目的が果たせるように戦うことを誓う。そのために俺を信じてついてきてくれるか? 俺は、仲間が信じてくれている限り、絶対負けはしないと心に決めている。絶対に最後までやり通す。俺はもう後悔するようなことはしないようにする。だからみんなも俺の事を支えて欲しい。よろしく頼む!」

その言葉を聞いて俺は自然と涙を流してしまっていたのだ。その言葉で救われたのはアリスも同じであった。そして俺はアリスに抱きつかれてそのままキスをされていた。その後お互いに顔を合わせて恥ずかしくなり照れているのを隠すかのようにまた強く抱きしめあった。そんな二人を見て俺の仲間たちも微笑みを浮かべて優しく見守っていてくれたのである。

この世界で俺は大切なものを手に入れることが出来た。それは、仲間の存在と家族と思える大切な人である。この世界では絶対に失うことはできない大切な人たちである。俺はもう絶対に自分の弱さで失いはしない。もう絶対に仲間を守ることが出来なかった自分に絶望して何もかもを諦めたりはしない。俺はもうこの世界で生きることに迷いはない。なぜなら俺の帰る場所はここにあるのだから。そして、俺が帰りを待つ人がこの世界にはいてくれたのだ。その人たちは、俺の帰りを待ってくれていて、この世界で生きていいのだと教えてくれていたのだ。

その事実が分かった時にやっとわかったのだ。俺の夢は世界を救うということではなく俺の帰りを待っている人の為に帰る場所を作ると言うことだと気づいたのである。俺は、この世界に来て初めて居場所を見つけたと思ったのだ。そしてこの場所を手放してはいけないのだとも思った。その場所こそが俺が目指している平和の形でもあるからだ。

俺達はそのまま寝ることになったのだが、その時にアリスが自分の部屋に帰ろうとしてアリスの部屋の場所を教えてほしいと言われて案内することになった。そしてアリスは自分の部屋に入る前に振り返って俺に一言告げてきたのだ。

「この部屋で待っていてください。貴方に見せなければならないものがあるのです。それを見せたら、今日はすぐに寝ましょう。貴方に見せた後に寝るのはきっと難しいでしょうけどそれでも今は眠らないといけないです。貴方が眠っている間に起きたら貴方に言います。だから今はゆっくり休んでいて下さい」

その言葉を言われてからすぐに俺は眠りについた。それはアリスの顔が今までに見たことがないぐらい真剣で真面目なものになっていたのを見て俺に見せる物が何なのかはわからないが何か大きな秘密を明かされることになるかもしれないという予感を感じていたからだった。

アリスちゃんは、お兄ちゃんの眠る寝室に入って行った。私達四人は、その様子を見送っていた。すると、お姉ちゃんがいきなり私とお姉ちゃんに近づいてくる。その瞬間、私は嫌な感じを覚えてしまう。そしてその感覚の答え合わせをするかのような出来事が起きる。お兄ちゃんがいる部屋のドアから音が鳴り始めたのだ。そしてその音は徐々に大きくなり始め最後にはその扉を壊してしまった。

私はその瞬間、その部屋に走り出して入っていく。するとそこには魔獣化した魔物とその男が立っていた。

その男を見た時私は、恐怖を感じてしまった。その男の目からは狂気しか感じることができず、まるで操られているような様子で立ちすくんでいるように見えたのである。しかしそこで違和感を覚えた。その男は私の方をじっと見つめて笑ったのだ。その瞳には確かに理性が存在しているように思えた。しかしその行動とは真逆の発言をその男はしたのだ。

「この女が、俺の身体を奪うとかふざけた事を言っている奴だったのか」

私達が驚いて固まっている中その言葉を聞いた後すぐにレイは動き出していた。その男はレイに対して攻撃を開始しようとしていたが、それよりも早くレイの拳がその顔面に直撃する。その威力に飛ばされていくがレイはその追撃を加えようと更に加速したのだ。レイは、怒りをその身に込めていたのだった。レイは本気でこの目の前の敵を殺しかねないほどの感情を抱いているのである。レイが、この場で全力を出したのは初めてだった。それほどこの敵の言動と表情が気に入らなかったようである。しかしレイは、この敵を確実に倒すために意識を失っている今しかないと決断する。

レイの攻撃は続く。レイの怒りをぶつけ続ける。レイはこの目の前の男をこの世から消滅させるつもりで、何度も殴り続けたのだ。レイが攻撃を止めたのは、完全にこの空間からこの人物が消え去ってからだ。レイが本気で戦ったことでレイ自身もその肉体に限界が訪れたのだろう。レイが倒れそうになっているのを私が支えた。そして私の腕の中でレイが静かに目を閉じた。レイの限界を察知したのだろう。この空間にもう敵がいないのを確認した後私はレイをお姫様抱っこで抱えながら皆んなが待っている部屋に戻ってきたのである。その道中は、アリスがずっとおろおろしていたので私がお手本を見せてお姉さんらしく、お姉ちゃんの真似をして見せようと思ったんだけどなぜかできなかった。

私とレイを抱えて走っている間にもアリスが回復魔法をかけ続けてくれたおかげで何とか私たちは無事に帰ってこれたのである。そして部屋に戻って来てベットの上にゆっくりと降ろす頃には、既に夜が明け始めていた。私はもう起きてもいいだろうと体を動かし始めていると突然後ろから抱きしめられたのである。それは当然、私の大好きなお姉ちゃんだよね!でも、どうしてこのタイミングなのだろうかと思ってしまう。でも嬉しいから許しちゃうよー

「あのさぁ、もうそろ起きたいなぁ〜」

そんなことを言ってみるが返事はない。だってこれはお姉ちゃんだからね。いつもならこのまま朝まで寝るなんて事も多いんだよ?いつもは仕方ないなって思いつつも受け入れてあげることが多いんだから今回だけは我慢しようかなって思うんだよ?だけど今回は状況が違うんだもん。だからちょっとだけ困らせちゃおうかなって思ったんだ。

そんなことを考えているうちにだんだん目が覚めてきて、自分がまだレイに抱きしめられていることに気づくことができた。それに、なんだか頭が撫でられている?しかもなんだかすごく優しい。

私はその感触のせいでもっと眠たくなってきたのだ。それにしてもこの体勢すごく良いんだよねぇ〜。なんだか心が落ち着くというか、落ち着ける。そして何故かこの人に触れられるとドキドキするというか胸の高鳴る? この人のことを考えるたびに不思議な気持ちになる。この気持ちが何かわかるまではもう少し時間がかかるかも?

「もうっ、こんなことしてたら本当に離れられなくなっちゃうんだからね?」と小声で呟くのが精一杯だった。もうすでに私は完全に目覚めている状態なので恥ずかしくなってきてしまっている。そしてその言葉を聞いていたレイは、「離れなくていいだろ。むしろ俺の側にいないとだめだ」と言われた時には顔に熱が集まってきてしまっていた。レイも起きている事に私は気づいたのである。レイもどうやら少し恥ずかしかったようでお互い顔を逸らしてしまった。でもそれがまた可愛くてレイが愛おしくなった。

結局この日はもう離れることなく過ごしてしまい、お互いに離れられなくなった状態で過ごす事になってレイに、

『俺から離れるの禁止』と言われてしまうことになったのであった。

私は今日も、朝からギルドに向かうと決めていた。そして昨日のお詫びの意味を込めて、今日のクエストは全て引き受けることを決める。それには、この前お兄ちゃんと一緒に受けられなかったのでこのチャンスを逃さない為に頑張ろうと思っている。

そのせいでかなり張り切ってしまい、朝早くから準備を整えてしまっていたのだ。その勢いのまま、家を出ようとするとそこには既に支度を終えていたレイの姿があり声をかけてくれる。そしてお姉ちゃんも一緒に付いて来てくれるらしい。そして三人とも特に会話することなく街を歩き始める。

するとその途中で見覚えのある女性を発見する。彼女はこの国の王様の娘である第一王女、名前はソフィアという名前だったはずだ。

私はまだ会ったことがないので、挨拶をしに行った方が良いのかなと考えていたのだが、そんな心配は無用に終わったようだ。その女性は私たちを見つけると話しかけてきたのだ。

「おはようございます。今日は、どこかに向かわれる予定ですか?」

と、質問を投げかけられても私達には答えられるわけがなかった。だから、正直に言うことにしたのだ。ただその前に自己紹介をするべきだと感じた私は名前を名乗った。お姉ちゃんは、自分の名前が広まっているかもしれないと思ったのか名乗り出るのを渋っていたが、私が無理やり引っ張ってきたのだ。レイはその様子を見守っていただけだった。そしてレイの名前が出た時その人は驚き、そして嬉しそうな表情をしていた。

そしてこの人が誰なのかと聞くとお父様にお願いされていたという事を教えてくれた。お母様が亡くなった後に、この人を国王代理として指名するとお父様から言ってくれていたらしいのだ。私はその話を聞いてすぐに納得してしまう。お父様の性格をよく知っていたからだ。お姉ちゃんは、それを聞くとすぐに頭を下げていたが、私はそんなことを気にしていなかったのだ。お父様から信頼されて任されるというのはすごい事なのだと思うし、それを素直に伝えることができるのは羨ましく感じてしまったのだ。

ただその後の言葉には驚いたのだ。なんとその人から、冒険者としての仕事を受け持つ事になったからである。これにはお姉ちゃんはかなり戸惑っているように見えたのだが私としてはその方がやりやすいと思ったのだ。そして何よりその人の事が知りたかったのだ。なぜなら私の目標となる人でもあるし憧れの女性でもあった。そしてお兄ちゃんが尊敬している相手でもあり、その実力については私もよくわかっていなかったのである。その話を聞いていたレイはあまり乗り気ではなかったみたいだがお姉ちゃんの説得もあり最終的にはその話に乗ることとなった。

私達は、そのまま依頼について話し合いを行う事になる。その結果、討伐依頼を受けることにした。私はお父様にお姉ちゃんの実力を見てもらえると思い、とてもワクワクしていたのである。私はお姉ちゃんにそのことを伝えた。その時に私はお姉ちゃんがものすごく嫌な顔をして断ろうとしていたことを後々知ることになるのだけれどこの時の私は知らなかったのでお姉ちゃんが断るという判断をしたことにショックを感じてしまうのであった。

そして、私は初めてお姉ちゃんの戦闘を間近で見ることができる機会が来た。この時の為にも今まで努力してきたつもりだったのでその努力の成果が出せるかどうかで私の評価が変わるのだと感じて私は集中した。その戦い方を見た時はすごく驚いてしまったのだ。まずは、相手が魔法を使うことを想定していないように感じられたのだ。相手の出方を見極めているような様子を見せていた。するとすぐに魔法の詠唱を行い始めたのだ。

「我が手に集え、全てを焼き尽くす力よ、この世に顕現せよ、我の敵を殲滅せよ!《炎》!!」

私はその詠唱を聞き終わった時、これは完全に失敗だと直感的に感じ取ってしまったのだ。その攻撃は明らかにお姉ちゃんに向いておらず、私達の方に向いているのがわかった。その威力もかなりあり、お兄ちゃんはとっさに障壁を張って守っていた。そして、レイはとっさの判断によりその攻撃を避けていた。そして、私の魔法はというとレイが私の盾になっていたことで当たることはなかった。そのおかげで私は助かることができた。しかしその時私の目に写ったのはその攻撃を余裕そうに避けているレイだった。その姿をみて私は改めて、この人の強さを理解して驚いてしまうことになる。この強さがあるからこそ、この国を守る為に立ち上がってくれるのだと思うと安心できたのだった。

私はレイとアリスのおかげで無傷だったけどこの人達を敵に回すということは相当な実力者でなければ勝ち目はないということを悟ってしまう。それに私はレイが、攻撃を受け止める姿をみただけでその衝撃の凄まじさを理解できるほどレイのことを理解しているのだ。だからこそ私はこの二人だけは敵に回したくないと心に誓った。

「おいお前たち!!よくもこの僕をはめてくれたな?もういい、僕は君たちのことを許せない。今から全員ぶっ殺す」と大声で叫んだ後再び同じ呪文を唱え出したのが見えた瞬間私の頭に警鐘が鳴らされる。私はこの技を知っている。その攻撃の先にあるものがどれだけ悲惨な結末を迎えるか、私は知っていた。そしてその攻撃を放った時点でその男は死ぬということもだ。私が必死に止めようとした時には既に遅かったようだ。そして放たれたその一撃は男に当たる寸前までいくがその途中で霧散してしまったのだ。おそらくアリスの能力だろうと思われる。でもそれは私にとってはどうでも良かったのである。なぜなら私が助けなければ、アリスまで巻き込まれる可能性があった。私はそれだけで十分だった。

そして男が倒れたことを確認したあとに、私たちはギルドに向かった。道中でアリスの頭をなでて褒めてあげるとすごく喜んでいたのだ。なんだか私の妹みたいな感覚に陥ってしまいすごく可愛くて仕方なかったんだもん!お姉ちゃんとしてこれは当然だよ!そして私たちはようやく目的地に到着したのだった。

私は今日から本格的に冒険者を始めることになった。お兄様がいなくなったあの日以来、ずっと修行をしていたため実戦で試すことができたらいいと考えていたがこの国にはほとんど冒険者がいないようだった。だからお姉ちゃんが代わりに受けることになったんだけど大丈夫だろうか?

「あの〜、お姉ちゃんが戦うのは良いのですが怪我だけはしないでくださいね?」

「もちろんよ。それにレイも一緒にいるんだから、もし怪我をしても問題ないよ」

その言葉をきいて、ちょっと不安になってしまったのだ。お姉ちゃんが、レイのことが好きだってことは私にはすぐに分かったのに全然進展していない。私は、二人のこと応援したいのになぁ。レイもなんだか少しそわそわしてるのかな?やっぱりレイも気になるよね。うん。きっとそうだ。

「はい、わかりました」とお姉ちゃんは返事を返してくれているので私はギルドに入ることにしたのだ。中に入ると受付が並んでおり、そこにはたくさんの人が並んでいる。私たちがそこに並んだ理由は特になくたまたま並ばないといけなかったのでとりあえず並ぶことにしたのであった。

そしてしばらく待つと順番がやってきたので受付のお兄さんに声をかけてクエストの受注をしてもらえるか確認することにした。お兄さんの印象はすごく爽やかな人だった。

そしてクエストを受けることができてよかったと思えたがそれと同時に私の緊張が一気に跳ね上がった。レイの方を見るとやはり同じような反応を示していた。

その事に私は安心してしまう。いつもと違う雰囲気だったらどうしようと思っていたのだが特に変わった事がない。それどころかレイもお姉ちゃんと同じように普段通りのような振る舞いだ。なので余計に安心感を覚えてしまった。そしてお兄さんとクエストの説明を受けていると後ろから突然大きな声が上がったと思ったら男の人の怒鳴りつけるような声にお姉ちゃんが少しだけ怖がっていた。その様子を見かねたお兄さんは説明を終わらせて奥の扉を開けて入っていったのだ。そしてお兄さんに何か耳打ちされたのかお姉ちゃんがいきなり立ち上がりその男を追いかけるように歩いて行ったのだ。

そして私は、何も言わずに追いかけて行くお姉ちゃんにレイがついて行こうとするのを止めるためにレイの服を引っ張ってレイを立ち止まらせる。レイはなぜ自分が止められたかわかっていないようだがそんな事を言っている暇なんて私にはないのだ。私は急いでお姉ちゃんを追いかける事にする。するとお姉ちゃんの声が大きく聞こえたので私はお姉ちゃんのところへ向かうのであった。

お兄ちゃんの様子がおかしい。私達を助けてくれた時に、一瞬だったが明らかに恐怖を感じているような顔になったのだ。そんな顔をお兄ちゃんがするのは初めての事だった。お姉ちゃんも、それに気付いたみたいだけど特に触れるような事はなくお兄ちゃんに話しかけたのだ。すると、すぐにいつものお兄ちゃんに戻り安心することができた。お兄ちゃんを、怒らせたくはないし怖い思いはさせたくないからだ。ただ今回の件については、お兄ちゃんに報告しておいた方が良いと私は判断した。お兄ちゃんになら全て任せられると思っているからだ。そして、私がお兄ちゃんにお姉ちゃんが怒っていたことを伝えるとレイと一緒にお説教をする事になった。私はそれを見ていただけだったのだがなぜかとても楽しかったのだ。

お兄ちゃんが私のことを叱ってくる時のように、優しく教えてくれていたのである。ただ、私はレイに対して申し訳なさそうな表情をするのを見て私は、その表情をやめてほしいと思ったのだ。なんとなく嫌だったのだ。そんな顔をする必要はないと思った。その気持ちを込めて、お兄ちゃんに向かって言うとお兄ちゃんは何も言い返すことができず黙っていた。そしてお姉ちゃんが、お兄ちゃんの代わりに私の頭を撫でてくれたのだ!私にはそれがとても心地の良いもので幸せに感じることが出来たのである。そして私はその幸せな時間を味わったのであった。

ただお姉ちゃんにも少し悪いことをしてしまった。それはお父様に報告しに行くと言ってくれたお姉ちゃんにレイが付いて行き、私を一人にしてもらったのだ。このチャンスを私は無駄にしてはいけないと思って、私は自分の力を使ってステータスを見ようとした。だがそこで私は信じられないものを見たのである。そう、レベルが表示されていなかったのだ。

私はこの時から、自分の中にある魂を目覚めさせるという目標をより真剣に考えるようになったのであった。まず、私がこれから目指すべき場所を考えなくてはならないと感じたのだ。私は今までこの世界の人達の強さという基準をあまり考えたことがなかった。お兄ちゃんの強大さを身近で見ていたのでその強さの基準で考えていたがお姉ちゃんは別格の強さを誇っている。この強さを基準に考えるのであれば、お兄ちゃんと近いくらいの力を持っていることになる。私は、お姉ちゃんの強さを見たことがあるから知っているが正直この国の王様より遥かに強いと思う。だからこそ私はその強さを目指すべきだと決めたのだ。その目標は、今の私からしたら途方も無いような道ではあるが私は必ず成し遂げたいのだ。なぜなら私はその強さに一目惚れしていたのだから! 私は今、ギルドを出て依頼をこなしに向かっていた。そしてその途中にお兄ちゃんは、お姉ちゃんに私の力を知られないためにあえて隠していたのだと理解した。お姉ちゃんに私の力について知られた時もかなり驚いたが今回ほどではなかったのだ。それに、お姉ちゃんと別れてお兄ちゃんに事情を聞いてみようとしたら、お兄ちゃんの顔は青ざめており尋常ではない様子だったのだ。私は心配になって聞いてみるとなんでもないと言われた。お兄ちゃんは私の力を知っていてもなお私のことを大切にしてくれていることが伝わってきたので私もできる限りこの力を使う事は控えることに決めたのである。しかし私はこの力を完全に封印することはできないので、本当に危なくなった時は使う事になるだろうと考えているのだ。

そして私達は森の近くまで到着したので、一度作戦を練ることにしたのだ。そして私が提案を出したのだがその案を却下されたのだ。その理由としては私がお兄ちゃんの奴隷という立場を悪用することになるかもしれないと言うのだ。でも私はその程度のリスクを負う事が出来なくて、この先の目的を達成出来るはずが無いと思ったのだ。だからもう一度お願いをしたのだが、今度はお姉ちゃんにまで反対されてしまうのだった。

結局この案が採用されることはなかったが、その代わりにこの森の地図と出現する魔物の情報が書かれた紙が渡されることになったのだ。私はこの情報があれば何とかなると思い嬉しくなってしまうのだった。そして、お姉ちゃんとレイはお昼ご飯の準備を始める。お姉ちゃんの作ったお弁当はとても美味しいのだ。特にサンドイッチが最高なのだ。そしてその食事中に、また新たな人が現れたのである。そして私は現れた男の人の姿を見て唖然としてしまったのだ。だってその人がとんでもないほどのイケメンで美男子なのにも関わらず、お兄様が好きなタイプそのもののような見た目だったのもあるけど何よりも私はお兄様のことが大好きで憧れているから!お兄様が帰ってきたのではないかと一瞬錯覚してしまうほどだった。

その男性は私のお兄様のことが大好きなんです!という想いが溢れ出たような目をしていたのですぐにお兄様の事が大好きな女性だと判断して仲良くしようと思ったのだがこの男性もお兄様のことを好きでいることがわかったのでライバルが増えたことにショックを受けたのだ。

しかもこの男性の話を聞くとお姉ちゃんはともかくレイにまで好意を抱いているということに私は驚いてしまう。レイはまだ幼いし私のお兄様を好きだというのだから当然と言えば当然のことだがまさかこの二人までもがお兄ちゃんに惚れるとは思ってなかった。私は焦ってしまった。だからお姉ちゃんやこの人とはなるべく距離をとろうと考えてしまうが、それだとこの二人の機嫌が損なわれてしまいそうだと思ったのだ。だから私はできるだけ友好的に接しようと考えることにする。その事でさらにライバルが増えてしまう可能性があるがもうどうすることも出来ないと思ったのだ。だから私は、諦めて他の三人と話すようにしたのだった。

その男性が自己紹介をしてくれるらしいのでそれぞれの名前を名乗ることにした。そして最後にこの男の人が私に名前を言おうとしたところで私にとって予想外のことが起こったのである。それはなぜか、レイも名前を言うことになったのだ。そしてそのレイの名前が『真紅郎』だということに気が付いた瞬間私は思わず叫び声を上げそうになったのだ。そしてなんとか抑えることができたが心臓がドキドキと激しく動いていた。私は必死に平静を取り繕いつつレイが偽名を使っていたことについて質問をしてみた。

私の名前はメイベルですと伝えてからなぜそんな名前を使っているのか理由を教えてくれるようレイに問いかけたのだ。

「私は、ある人に頼まれたんだ。私達が、これから先もずっと生きていけるように、私達の存在を誰にも気が付かれないように、ってね。まぁ、そんなことを頼んだ本人が、その名前を自分で名乗っている時点でどうかしてたとは思うんだけどさ」とレイは答えてくれた。

「へぇ〜そうなんですかぁ」私はレイの話を聞き少し納得する。だが同時に疑問も湧いたのだった。

そして、私はレイがどうしてこの国に来たかを聞いてみるとお兄ちゃんの手がかりを探すためにこの国に立ち寄っただけとのことだったので、少しほっとした。そして、私がその頼み事をしてきた相手の特徴を聞いてみる。

するとレイは困ったような顔をしてから教えてくれようとしたがお兄ちゃんが、それを遮り私のお兄ちゃんに説明してくれたのだ。そして私はお兄ちゃんが私のために説明をしてくれる姿に見惚れてしまっていたのだった。

お兄ちゃんの説明が終わるとレイはどこか悔しそうな表情で私を睨んできたが、すぐに笑顔に戻り私の頭を撫でてきたのだ。そして、お姉ちゃんは、レイの行動を見て私と同じことを考えていたのか少し残念そうな表情をしていたが何も言わずに黙って私達の様子を見ていたのであった。

私とお姉ちゃんの二人がお兄ちゃんに褒められている様子を見ている時のレイの態度は本当に羨ましそうにしており心の中で私は勝ち誇っていたのである。だがすぐにお兄ちゃんと話をしたいと言われ私は内心では焦っていた。このままでは本当に私はこの人から逃げれなくなると思ってしまうほどこの人は危険だと感じ取ってしまったからだ。

私はこれ以上一緒に行動してしまえば完全に私が負けると思いこの場から離れようとしたのだが、そこで私はレイから提案を受けてしまうのである。その内容は私がこの依頼を受けるなら、この依頼を代わりに受けるとのことだった。その提案をレイはお兄ちゃんが受ければ自分もついていくという条件を出してきていたが私からしたら、どちらにしろ私はお兄ちゃんの側にいることに変わりはなかったからその条件を飲んだのである。私はこの提案を受け入れお兄ちゃんに相談する。お兄ちゃんはなぜか嫌そうな顔をしていたけど了承してくれ、この提案を飲むことが決まったのだった。

ただレイのその表情を見た時、私はかなりイラっとしたのだがレイの提案が通ってしまったのでその怒りをぶつけるのは違うと思ったのでぐっと堪えることにしたのである。

そしてその後、依頼主である村の代表者であるガランという人物に会った。その時に、私はガランが私をお兄ちゃんのお嫁さんにしようとしているのだと悟ったのだ。なぜなら私のことを、舐め回すような視線を送ってきたからである。私は気持ち悪くなり吐き気を感じたのであった。それから、私達は村長の家に移動して依頼の内容の確認をする。そこで初めて知ったのだけどこの村の人達の食料が最近少なくなってきているから私達を襲ってきた魔物を倒してほしいという内容であった。私はその話を聞いたとき、そんなことを私達に頼むこと事態間違っていると思っていたが、それは私だけではないようでみんな不満を感じていたのだ。ただ、その意見を誰も口にすることはなかった。そこで私とお兄ちゃんだけが文句を言ったのだ。私はその言葉を聞いて嬉しくなったのだが、そこでガランドの口から信じれない言葉を耳にしたのである。なんとそのガランという男が言うには今回の依頼を達成したら報酬を倍払うと言い出したのだ!そしてさらに追加で依頼料として10億ゴルを支払うというのである。私はあまりの言葉の多さに理解することができなかったがお兄ちゃんは違った。

お兄ちゃんはこの世界がどれだけお金を持っているかという事を知っているからだろう、この金額でもまだ安いと思えるほどの財力をお兄ちゃんは既に手に入れてしまっているからこその驚きだと思う。でもこれは普通じゃないことはわかっているはずなのにそれでもなおこれだけの大金を払ってまで依頼を達成してほしいと言うガランドは正気なのかと思うほどにその顔からは本音が見えないのであった。

そして、お姉ちゃんは私の方を見て心配したような顔をしていたのはおそらく私がまだ若い子供だという事を心配してなのであろう。この世界で生きるのは難しいことだというのは十分承知しているつもりだったけどお兄ちゃんの側を離れたくないという思いが強いから私は絶対に無理矢理付いていくと決めたのだった。

そしてその日はその依頼を引き受けて宿に戻った。

お兄ちゃん達は疲れていたので先に休むと言って私とお姉ちゃんは、明日に備えようと二人で部屋に入ったのだった。

私達は、今日受けた討伐の依頼を明日に行う予定にして寝ることになった。

だがその時に私はまだお兄ちゃんのことが諦めきれない思いがあった。でもお兄ちゃんの側にはあの女性が常にいてとても近寄れるような雰囲気ではなかったのだ。だから少しでも距離をとっておきたかった。でもそんなの言い訳だと私は自分に叱咤するのだった。

お兄ちゃんと一緒にいたい!お兄ちゃんの隣にいさせて欲しい!それが本当の私の想いだから私は今の関係に満足するんじゃなくこれから先の関係をどうにかしようと思わなければダメだと私は考えるようになっていた。それにお兄ちゃんが、あの女性と何かを話していたことを思い出したのだ。

もしかしたらあの女性の方は、この先さらに強くなってこの国の王様である人との約束を守ってくれる人になるかもしれないと思った。私はそれを確かめるためにも、お兄様の側にずっといる為にも、まずこの任務を成功させなければいけないと思ったのだ。

そして翌日になり私たちは朝早くから準備を整え、森に向かうのである。

私もレイもその森に魔物を狩りに行ったことがあるようでその魔物の強さについては熟知しているため森で魔物に遭遇した時はレイが先頭に立ち戦っていた。私は後方からサポートをしながらレイが魔物を倒すまで魔物の気を引き付ける。そしてレイは魔物の攻撃を紙一重のところで回避してはカウンターを決めながら倒していく。その姿はまさに舞っているかのような戦いだったのだ。

私はレイの動きに見惚れてしまいそうになってしまった。その動きは洗練されており美しいと感じたのである。

私とレイは魔物の群れに囲まれてしまうが私はレイのサポートに徹して魔物の攻撃を回避し続ける。

だがさすがのレイも数が増え続ける魔物をずっと一人で対処できるわけではなかった。

私にも攻撃が襲いかかってきてしまうのを覚悟したその時に、私を助けてくれた人物がいたのである。それは私の命の恩人であり、お兄ちゃんのお嫁さんの一人でもあるお姉ちゃんが私達の前に現れたのである。私は、突然現れお姉ちゃんに助けられたことに感謝をしなくていけないと思っているのだがどうしても感謝を伝えきれずに恥ずかしくて俯くだけだったのだ。お礼を言いたいのに口に出せずにいるとなぜかおねえさまの方は、少し呆れた顔をしていたが特に気にすることなくレイを助ける為に戻っていってしまったのだった。その様子を見ていたレイがなぜか頬を膨らませていたがどうしてしまったのか分からなかった。レイはなぜか少し機嫌が悪くなっていたようだったがそんなレイの様子など気にしないでお姉ちゃんについていった。私も遅れてお兄ちゃん達の元に戻ると既に戦闘が終わったところらしく、そこにはお兄ちゃんの姿がなかったのであった。私は焦って探すとすぐにお兄ちゃんの後ろ姿が見つかりほっと安心することができた。

その後は私とお兄ちゃんは別行動となり、お兄ちゃんがレイに稽古をつけていた。私は邪魔をしては悪いと思いその場から離れることにしたのだ。そして私とレイは同じ場所に集まり話を始める。

だが私がレイとお話をして時間を潰そうとするとなぜかこの村に住んでいる他の人達が現れてきて何故か村の住人とレイとの模擬戦の審判役を務めることになった。私は別にその勝負に興味はなかったのだがこの村に居座るために仕方がなくその勝負を受けることにしたのである。レイが負ければ私達とずっと一緒の村にいることになり勝てば自由に行動出来るようになるからだ。その条件を出した時レイはとても嫌そうな顔をしていたがそんなことを私は一切無視した。

そしてレイが戦う前に私はその男に一つ質問をした。この村の住民の中で一番強い奴は誰だ?と聞くと男は笑いながらも自分の名前を答えた。

「はっはーん、嬢ちゃん俺がこの村で一番つえぇぜ!なんてったって俺はこの村の守護者を務めているほどに強いからなぁ!」

この男は馬鹿なのかと思った。だってこの村の人は私達より圧倒的に弱かったのにこの村で最強を名乗ることに何の意味があるのかわからない。でも私はとりあえず黙って見ておくことにしたのだ。

するとレイが少し不敵な笑みを浮かべてからこう答えていた。

「まぁ、そういうのはどうでもいいです。僕はただあなたと戦って勝ちたいとさえ思っているだけです」

そうすると、村人の守護者の男が私に話しかけてきた。

だが私はもうすぐ戦いが始まるという時に話す時間があるのかどうかすら怪しかったので男の言葉を遮り私達は離れる。そして試合が始まると私は、この村の人間の戦い方を見ている限りそこまで強いとは思えないが、その守護者の男はかなりやり手のようであった。ただそれでも、レイの方が一枚上手のようだがレイには珍しく攻めあぐねているようにも見えるのだった。その光景を見ている周りの人たちもこの男がやられる姿を期待しているような目をしていたのである。

私は正直言ってこの試合は、レイが圧勝で終わらせると思っていたが意外と粘られているのを驚いた。レイには、相手の攻撃のタイミングを読んでいる節があったのだ。おそらくレイは今までの人生の中でこんなに長く誰かと戦ったことはなかったのであろう。それは、この守護者が相手だったとしても変わらないはずだが、レイはその差を埋めるほどまでにこの戦いに集中しているということだ。だがやはり実力の差は圧倒的で、守護者はレイに攻撃を仕掛けようとするのだがその度に、レイがそれを防いでおり反撃の機会を逃し続けていた。だがレイにはまだ手があった。それがあのスキルである【魔闘練気】という技である。

これは、身体中に魔力を流すことで身体能力を向上させた上に、魔法を使うための体内の魔力量を増やすというものらしいが詳しくは知らないしレイ自身もよくわかっていなかった。私はこの技を初めて見た時に凄まじいものだなと感じておりレイの強さの一端を見せつけられた気がしていた。そして、私はここでまた違和感を感じたのである。なぜこの村の人間はレイを応援しているのだろかと、私ならまだしもお兄様とずっといるはずの私達が応援することはあってもレイを応援する理由が分からないのである。だが私はそんなこと気にするだけ無駄だと思い、二人の試合を集中して見ることに集中するのだった。

レイはどんどん加速していきその動きにはまるで目に見えぬほどの速度で動いているように見えたのだ。そのスピードはもはや誰にも捉えられず私ですらそのレイの動きを追うことができないほどだったのだ。だが、そんな状況でもなお村人はレイのことを心の底から称賛していた。そしてとうとうその決着が着いたのである。

なんと、あのレイが、あのレイが村人相手に手加減をせずにその一撃を叩き込んだのである。

あの時は私はその攻撃は絶対に避けられるものだと油断してしまい完全に隙を作ってしまい攻撃されてしまった。だがその時、お兄ちゃんが一瞬でその男の元に近づきその男を拘束したのである。

そしてそのお兄ちゃんの行動は正しかったのだ。なんとその後お兄ちゃんはすぐにその男の腕に剣を突き刺したのである。これには私だけでなくその場にいる誰もが驚いていたが私はレイの強さを知っているから何も驚かずに済んだ。そして、レイはお兄ちゃんの行動を真似るようにして、お兄ちゃんと同じ行動をとったのだ。私にはわかるそのレイの考えが、そしてレイもお兄ちゃんも同じように同じ考えを持っていた。その行動というのは、相手を殺さずに倒すことだったのだ。その行動を取るということは、レイはこの村にいたいという意志が見えたのだ。その証拠としてレイは、お兄ちゃんと全く同じような言葉を使っていた。レイにとってのその村への愛着というのがわかったのだ。だから私もそれに乗ることにした。そのあとは私とレイとのお姉ちゃんの三人だけが残っていて、私はレイと一緒にこの村に住めばいいよと言ってレイもそれに同意してくれていたのである。私はこの村にレイがいると安心できるのとレイに一緒にいてほしくてお兄ちゃんにもお願いしてみたのだ。そうすると案外簡単に了承してくれた。そして私達はそのまま、この村に残りレイと共に冒険者として活動して行こうと思っている。

私はまだ諦めたわけではない。この村が安全になった後にもう一度お兄ちゃんにアタックするつもりで今はレイの攻略に力を入れていきたいと思っている。この旅ではきっと私のお兄ちゃんに振り向いてもらえるような女の子になれると思っていてこの世界はお兄ちゃんのような男性が少ないと聞いているので、このチャンスは逃すわけにはいかないのである!そのためにも私は今からでも頑張っていくしかない!それに、もし仮にレイがダメだった時の為に、他にも候補を考えておかないといけないとも考えているのだ。まず第一候補はもちろん私のお姉様だけど私の中では一番可能性があると思う。その次に私のお母さんかな〜と考えているけどお母さんには私よりも年下の弟がいたからちょっと微妙だよね。それから妹の方もかなり優秀だったらしくお父様は結婚させたくないって思っているみたいだけれど、お母様はとても妹のことを可愛がっている様子だったのでその望みは薄いんじゃないかと私は予想をしている。その妹の名前はユカっていうんだけど私は会ったことがないのでどんな子なのかわからない。まあそのことはいずれ会える日が来ると信じて気にしないでおきたい。そして最後の第三の候補が私なのだ。私って自分で言うのもなんだが結構可愛いと思える容姿だと思う。髪も長いし顔つきだってお兄ちゃん好みだし体だってそこそこ出るところ出ているしお兄ちゃんと一緒の部屋にいるときはたまに変な声が漏れてしまっている時があるぐらいなので多分お兄ちゃんはこういう女が好きなんだろうなーと思っている。お姉ちゃんと二人っきりの時だって私のお姉ちゃんの匂いとかをこっそり嗅いだりする時もあるし私の体に抱きついて来て顔を私の胸の中に埋めてきたり、夜はいつも抱きしめてくれるのだ。だから私は自分の体はそれなりに良い線いっていると確信している。だからこそお兄ちゃんの気持ちがこちらに傾いてくれる可能性は十分にあると私は思っている。でもまだ確定ではないのでお兄ちゃんと恋人になれなかった時のことを考えないと、、、 とりあえず私は今日も頑張るのだ。いつか私に振り返ってくれることを祈りながら。

〜その頃アベル視点のもう一人の女性

「えっ!!なに今のあの子が、アネキを倒した!?マジか!」

彼女は驚きが止まらないようだ

「あのアニキを一発でのしたのか!一体どれだけ強いってんだよあいつら!」

「あの子達絶対ただ者じゃないでしょ」

彼女達の感想の通りこの村には強い人間がいない、強い人間がいなかったのではなくこの村の人達には戦闘をする力が殆ど無かったので、村の住民同士で戦わせるようなことをしても勝負にならないのでこの村に住む人たちは皆戦う術を持っていないのだがそれを差し引いても異常な光景だった

「ねぇ!どうする?この村にずっと滞在して欲しいって言いに行った方がいい?」

「そうだね!早く伝えに行きましょう!私達で保護するべきな気がするの!」

(あの二人がこの村にいれば絶対にもっと面白いことになるに決まってるわ!私が必ず二人をこの村に連れてきてみせるわ)

その女性の目はとてもキラキラしており楽しそうな表情をしていた。そしてこの村を救ってくれた恩人としてではなく、自分達をここまで強くしてくれそうな相手を見つけてしまったのだ、その女性はワクワクが止まりそうにない。

そして二人は村の方へ向かって走り出すのであった。

私達はレイのおかげでなんとか生き残ることができたのだがこの村は私達を助けてくれた人が住む村だということを教えられた。

だが私達には全く関係のない話だと割り切ろうとしたが何故か私はレイのことばかり考えてしまうのだ。私はその理由を探ろうとしていたが、いくら思考を重ねてもその答えが出てこなかったのである。でもそんな私をお兄ちゃんは助けてくれるようで、私とお兄ちゃんは一緒に村を見て回ることにしていたのだ。私はこの時本当に幸せでお兄ちゃんの隣を歩けるだけでも幸せなのだ。だがこの村には他の住民もいたのだがその住民は全員で二十名ほどしかいないようだ。そしてその中にはお兄ちゃんのことを尊敬の眼差しで見ている人やお兄ちゃんの圧倒的な力を感じている人も少なからずいるように感じるのだ。私はその事に嬉しく思うのと同時に不安にもなったのである。何故ならこの村の人はお兄ちゃんのことを崇拝しているような感じを受けるのだ。お兄ちゃんがそんなこと気にするような人間でないのはわかっているのだがお兄ちゃんはそんな視線を浴びてもあまり気にしてはいないように思える。それはそれで少し寂しいと感じている。でもお兄ちゃんはその事に気づいていないのだろうか、それとも気づいているが特に問題がないのかどっちだろう。私はそんな事を思っていた。でも私は、私と同じような思いを持っている人がいることに心底ホッとしていた。お兄ちゃんと仲良くしたいなんて思われたら嫉妬でどうにかなりそうになるから私は一人だけでもいいのである。そして私にはその村人以外にも気になっている人物がいる。それが守護者である男の人である。その男は、お兄ちゃんに何か特別なものを感じるらしくとても真剣にお兄ちゃんに話をしていたのだ。私はその会話の内容に割と入り込めたのだけれどその話は私には到底理解できない内容でありその男も私の知らない世界の事情や知識に精通していたのだ。正直なところ、私もそこまで詳しいわけでもないのだ。だが、私にもこの男なら、この守護者の男がお兄ちゃんのことを認めてくれれば私は認めても良いと思っているのだ。なぜならその男はかなりの強さを有していることがなんとなくだがわかるからだ。

そんなこんなありつつも私達は村の散策を終えたのである。そのあと私は村の住人から話を聞こうと思っていたが、村の人々はみんな私に対して凄く感謝している様子だったがそのことについてはあまり言及されなかったのである。

その日の夜は歓迎会で大騒ぎだった。

そしてその次の日から本格的にこの村の探索を始めたのである。そして私はまずはこの村に何があったのかを知ろうと考えたのである。その情報は村人に聞き込みをすることで得られると考え私達はまずは村人に声をかけることにしたのである。だが、村人からの情報はほとんど得られず、得られた情報を簡単にまとめると、昔魔王軍が攻め込んできたらしいがその時に村を守ってくれた存在がいたという事と、村人にはその強さが測れなかったという話を聞くことが出来たのである。しかしそれ以上のことはわからないようだった。そして最後にもう一つ私達が驚いた出来事として、この村を襲ってきた敵の中に上位種の魔族が複数確認できたと言うことだった。その上位種はおそらく上級クラスの魔物達だと思われるということも聞いた。ちなみに村長の話によればこの町の守護者はかなり強いはずなので普通であればこのような襲撃を許すことはないはずだという事だ そこで私達は疑問を抱いた。なぜ、その町はこの村に攻め入るような事態に陥ってしまったのか、、私はその疑問について考察しようとしたが、私の頭が追いつかなかったのである。そしてお兄ちゃんはというと私と同じことを考えていたみたいで、その疑問にぶつかった時、レイに質問をしようと試みていたのである。そしてレイがそのことについて説明をしようとしたときだった。

レイの口からとんでもない情報が飛び出てきたのである。そうこの村の近くにある森は危険領域と呼ばれていてそこに生息するモンスターは異常に強くて、そこに生息している生き物全てが上位クラスと言っても過言ではないくらいのレベルだということがわかった。

私はそのことを聞き驚きを隠せなかった。そんなところにお兄ちゃんを連れて行ってしまっていいのかという心配をしてしまう。だってもしものことがあったら、、私はその不安を抱えながらも私達のこれからの動きを決めようとしたその時だった。お兄ちゃんの口から出た一言で、私の心はお兄ちゃんでいっぱいになった。そしてお兄ちゃんの言葉で私はこの旅についていくことを決めたのである。私は、この世界に来たことを後悔した。レイと出会う前の私は今よりもかなり性格は悪くなってしまっていて、今とは比べ物にならないぐらい荒んでいたのだと思う。だから今の方が私は自分らしさを取り戻せていると思うが、その反面この世界に来る前の私はもっと酷くてお世辞にも人に好かれるような見た目じゃなかったと思うのだ。だから私もいつかお兄ちゃんみたいになれるのかなと少しだけ憧れている。そして、私がその覚悟を決めるきっかけを作ってくれたのがお兄ちゃんの存在で私は、私は、、 〜そして現在〜

「よし!やっと見つけた!おーい!!お兄ちゃ〜ん!」

私は勢いよくお兄ちゃんの元へ駆け出した。そしてその私に気づくことなく私達以外の仲間と一緒に歩いている。私はそれを邪魔しに行くために突撃をした。そう、私とこのお兄ちゃんの出会いのお話です。

〜〜 私には好きな男性がいる。私がまだ幼い頃にその男性は現れた。彼はこの国の王様に認められた守護者でかなりの強者でありその力は国を守る盾と言われている程で国王様の信頼を得ている。また彼の周りにも多くの実力者達が存在して彼の行動一つでこの国が亡びてしまうのではないかと噂されているほどなのだ。

その男の名前はアベル=ランバート、、この国は平和ではあるがその王を守れるほどの人材が居ないのが悩みどころなのだ。だが、アベルは、そんな王の悩みなど吹き飛ばすかのように圧倒的な力を示し続けているのでアベルに期待をしている人は多かった。そしてアベルはこの国には無くてはならない存在になっていたのである。そしてそんな彼を私は好きになってしまったのだ。アベルはその容姿も完璧で頭も良く戦闘面でも頼りがいがある。そしてなによりアベルの放つオーラは他の人達とは違うものがある。

私はその魅力に惹かれていったのだ。その想いはだんだんと強くなっていきその気持ちを抑えるのが難しくなっていったのだ。その気持ちはどんどん膨れ上がっていくばかり。私はどうにかしてこの気持ちを伝えようと必死になるのだが結局私は勇気が出せず何も出来ずにいる日々が続いたのである。だがそんなある日私は遂にアベルに直接告白することを決意したのだ。私は今まで以上に緊張しており心臓の音が聞こえてしまいそうなくらい大きくなっている気がしていたのだ。

そしてついにこの村を出て、目的地へと向かう。

そうして私たちは森の中へと入っていった。そしてこの森の奥深くまでやってきたところで休憩をとる事にする。そして私はレイに話しかけることにした。私はレイともっと親密な関係になりたいとそう思ったからである。そして私はレイに近寄って行き話しをしようと決心をして声をかけようとするのだがその前に私が考えていた事はレイのことが心配でレイのことしか考えていなかった。そんな私は、周りに気を使える状況ではなく自分のことに精一杯で、自分が今どんな状態なのか全く意識していなかった。私が気づいたときには目の前には地面が広がっていて、、その視界に入るものは全て赤く染まっていたのだ。私は慌ててレイの姿を探そうとするがその姿が見当たらなかった。そして私の周りからは悲鳴のような声が聞こえるのだが誰のものかもわからない。そして私もその叫びを聞いてしまい頭がパニックになりかけたのだ、、だがここで冷静になれなければ本当にこの先生き残ることはできないと思い私は必死になって自分に言い聞かせた。だがいくら自分に言い聞かせてもこの状況を受け入れることができなかった。

「えっ?どうして?」

私は全く現実が受け入れられなくてそんな言葉を漏らす事しか出来なかったのだ。そんな私をまるであざ笑うかのような表情を浮かべたその男はこちらを見下していた。だがその男には傷一つ付いておらず余裕の笑みを浮かべていたのである。私はその事実だけで絶望してしまい、心が壊れかけていたのだ。だが、その男がその攻撃を行ったのは私を守るためだと知り、私の心は完全に壊されることはなかった。その男が、その私への攻撃を行っている間ずっと私に回復魔術を掛け続けてくれていたことによって何とか生き延びることができたのであった。私はそのことにも気づけずにいたのだ。

その事に気づいた瞬間私はこの人が大好きだという感情で溢れてきた。この人はこんなにも優しくて強いのか、こんなにも凄いのか。その事を知り私はさらに惚れてしまう。もう完全に私の心は奪われてしまっていたのである。

そんなことがあってもうすでに日が暮れており今日はこの場で休むことに決定することになったのである。

私はそんな時ふとお兄ちゃんのことを考えてしまった。

そして私はそのお兄ちゃんが恋しく思ってしまい、お兄ちゃんに会いたいという欲望が爆発したのである。だが、その気持ちは抑えられなかった。私はどうしても会いたくなってしまって仕方がなかったのだ。そして私はあることを思いついたのである。

そうだ、お兄ちゃんに転移の魔法を使ってもらって直接この村に来てもらおう! 私はそのアイデアを実行に移したのである。

私も一緒に行こうかと思ったがお兄ちゃんを驚かせてやろうと考え一人で向かったのである。そして私は何も知らずに村へたどり着いた。

だがその村は何か変な雰囲気を感じ取り嫌な予感がしたのである。そして私は村の中に入ってみたのであるがそこで信じられないものを目にしてしまう。そこには大量の悪魔が村人たちを虐殺している光景があったのである。そのあまりにも残酷な出来事に思わず言葉を失うがそれでも私の頭の中にはまだ疑問が残っていた。私はなんでこんなことになっているのか理解できておらず、ただその場で立ち尽くしてしまっている。すると私の存在に気付いたのか一人の魔族が私に襲いかかってくる。私は恐怖で動けなくなってしまいその場を逃げることも戦うこともできずにいた。しかし、その時お兄ちゃんがその魔族を倒してくださったのである。私を守ってくれるその姿を見て私は改めてお兄ちゃんが好きになったと実感する。そしてその後お兄ちゃんと話すことができて嬉しかったのだが、そのお兄ちゃんの表情を見た時に私はこの村の真実を知ったのである。お兄ちゃんの顔は悲しみで包まれていて私はそんな顔を見るのは初めてで胸が締め付けられる思いだった。そしてお兄ちゃんから伝えられたこの村の真実を聞いた私はお兄ちゃんと一緒に旅をすることにしたのである。お兄ちゃんは優しいのは知っているが、その優しさは時に命を落としかねないような危険なものだと私は知っていたから。それにお兄ちゃんは、きっとこのままこの村にいても魔王を倒すという使命を全うすることができないと感じたんだと思う。私だって同じだ、この村の人達を守りたいけど、それは叶わないことだと思っている。だから私達はお兄ちゃんと旅に出ることを決めたのだ。

私達はこの世界を魔王の手から逃れさせるためにある目的を果たすことにしたのである。そうその目的はこの世界を脅かす悪の存在を滅ぼすことである。そのために私達は、まずは魔王のいるところに向かわなければならない。その道中にこの村を襲う存在がいるはずなのでそいつらを先に倒す必要がある。そのためには、この村の近くに住んでいるモンスターを倒していく必要があり、私はその事をレイに提案したのである。

私はお兄ちゃんと一緒に旅に出れて本当に幸せだった。この世界に来る前はそんな幸せな時間が訪れるなんて微塵も思ってもいなかったし、そもそも私がこの世界に飛ばされたのはお兄ちゃんのせいだし最悪だと思ってしまっても不思議じゃないと思うんだけど。でも、そんな私の人生を良い方向へと導いてくださった神様と出会わせてくれたお兄ちゃんには感謝しかないです。だからお兄ちゃんのためならなんでもします!例えそれがどれだけ大変なことであったとしても、私は、、 〜〜〜

「えーっと、つまりあなたは神でありその神は私たちの世界に魔物を送り込んできてるってことでいいのよね?」

俺は、とりあえず彼女達に事情を説明することになったのだが彼女は信じてくれず少し混乱している。その隣にいる少女は真剣な表情で俺の事を見ているが、、

「あぁそういう事になっている」

「ちょっと待ってくれ!君は本当に神なのかね?もし本当だとしたら一体何の用があってこの世界に来たのだ?まさかとは思うが悪い目的で来たのではなかろうな!?この世界で何をするつもりなんだ?」

そう質問してきたのは俺よりも明らかに年上の見た目をしたおっさんで、俺のことを警戒するように睨みつけてきている。

だがその反応も仕方がないかもしれない。突然神が現れたと言われたりすれば、普通はこういう対応になるだろうな。俺は、彼女の方を見るとどうやら納得してくれていないようで困惑した表情をしていた。それも当然の事だよなと思いながらどうやって説明するべきなのか悩むが、ここは正直に言うべきかな。そう考えて話を始めることにする。

俺は今から話すことについて嘘をつきたくないと思ったので全てを話すことに決める。もちろん本当のこととは言えない部分もある。そのことは隠しつつ俺は彼女に事情を話し始めた。

「実は、、お前たちの世界の神とこの世界の神との間にいざこざがありその問題を解決したいと思っている。その為の手段として俺はここにやって来た。だがその手段があまり良くなくこのような事態になってしまったことを謝るよ。ごめんなさい。それともう一つ言わなければいけないことがあるんだが聞いて欲しい。君たちは恐らくこれからこの世界に存在する全ての人間の中で最も危険に晒されることになる。その脅威がどんなものなのか俺には分からないが、それを乗り越えた先にあるのはおそらく平穏と呼べるものではない。だがそれを分かってほしいとお願いするのは酷な話だと思う。でも頼む。どうか俺の話を聞いてくれ」

俺が頭を下げようとすると隣の女の子は必死に止めた。そんな姿をみて思わず笑みがこぼれてしまったが、その様子を見かねたおっさんの方は、

「おいおい坊主。そりゃいくらなんでも無理があるんじゃねぇのか?まあいい分かった話を聞こうじゃないか、ただし、もしお前の言葉に偽があったらその時はわかっているな?」そう脅しをかけてくる。だがこれは俺にとっても賭けなのだ。もし失敗してこの2人を傷つけるようなことがあれば元も子もない、そう思ったので念押ししておくことにする。

「ああ、分かっている。もしもの時は覚悟を決めよう。だけどそんな事にならないように最善の努力をするから安心して欲しい。ただ一つだけ約束をしてほしい、絶対に俺の指示に従ってもらいたい。これが出来ないのであれば俺を信じることは到底できないからこの話は終わりにするしか無いんだ。大丈夫か?」

俺が真剣な態度で伝えると彼女も理解してくれたようだ。だが隣にいる少年はまだ納得ができていないようである。やはりその態度を見る限り相当頑固みたいだ。そんな彼を説得しようと試みるが中々上手く行かない。すると、今まで無言だったおっさんが急に声をかけてくる。

「おい、小僧。貴様はなぜ俺たちの村が襲われた原因を知っているのだ?しかも何故そこまで正確に知っている。それにその口ぶりだとお前はこの村の者を殺した犯人に心当たりがあるんじゃないか?」おっさんの方を見つめてみると彼の表情を見てかなり動揺していることに気がつくことができた。やっぱり心あたりはあるのだと確信したと同時に、こいつがこの村の人たちを虐殺したのがあの魔族であるという事に気づくことができたのだ。だがまだ確信が持てなかった俺はおっさんに向かって確認を行う。

「心当たりはあるんですか?」すると、彼は焦ったのかすぐに否定するのであった。だが、この村で起こったことはこの目でしっかりと見たので間違いない。

俺はそんな事を思いながらも、まずはその魔族についての事を話し始めることにした。魔族について説明していくとその度に二人の表情は驚愕のものへと変わっていく。その光景はまるで俺が二人に対して魔法を行使して驚かせているようなものに見えるだろうが、実際はもっと恐ろしいものだということは彼女たちにもわかるはずである。それほどまで、今の俺の状態は異質であるということを理解してもらわなければならなかったのだ。だからこそこの二人が信用できる人物か見極めなければならないのである。

俺はそれからさらに、この村の者たちが殺されていた時の状況などを説明したのである。

「信じられないが、ここまで言われれば信じるしかあるまい。それに、、そんな化け物相手にお前一人に戦わせる訳にもいかんしな。それで、、その村が襲われた原因は分かったがお前は何のためにそんな事をしにきたのだ?そもそもお前はこの世界の住人ではないはずだろ。この世界の問題はこの世界の住民の手で解決するのが当たり前なのではないか?」その通りであった。この世界の住民は魔王がこの世界に出現し、人類を脅かすようになってからというもの自分たちの力でその問題を解決しようとしてきたのだ。その結果は芳しくなかった。この村のように滅ぼされた村は沢山あり、その中には多くの死者を出す村もあったらしい。その事から考えても、この人たちにこの問題の解決を任せるのは少し違うと思うのだ。ならば、俺が動くべきだと俺はそう思い、行動に移した。

そして、俺が魔族を倒すためにやるべきことを伝えることにしたのである。まず初めに俺が行ったことは情報収集だ。魔族に関する情報を収集することだ。そして、その次に行うべきことは魔族と対抗するための準備である。

この世界に魔法が存在していなければ魔族を倒すことは難しいと思っていたのでまず最初に魔法の存在の確認を行うことにした。

この村の村長は、俺の目の前に来ていきなり土下座をし、魔法の使用の許可を求めてきた。流石に驚いたが、その姿を見ているとこの人がどれほどの思いでこんな頼みをしているのかがよくわかったので許可することにした。俺は、彼女が地面に手をついて詠唱を始めた時、一瞬にして自分の体の中に流れ込んできた感覚を覚え驚いていたのだ。それは膨大な量であり魔力操作に優れた者でもこれほどまでの量の力を使えるとは思わなかった。だから本当に驚いたのだ。それと同時に、この世界の人間は魔法を扱う事ができるという事を知り喜んでいたのだが、そこでふと気になった事があったのである。

「ちょっと待ってくれないか?」俺はそう言って話を中断させると彼女の手を取り起き上がらせたのである。

「なっ、なんでしょうか?私に出来ることなら何でも致します。なのでお礼として何かお望みがあれば何なりとお申し付けください」

「いや別に何かして欲しいわけじゃない。それよりも俺が知りたいのはあんたがこの世界でどれだけのことができるのかだ。そのことについて教えて欲しい」俺はそう質問した。そして、俺の考えを伝えたところ彼女は俺に協力してもいいと言ってくれたので俺は早速お願いすることにし、俺は彼女にこの世界における魔法の適性を調べるように指示したのである。俺はその間に次の作業に取り掛かろうとし、彼女の家から出る前に一度立ち止まって振り返り彼女の方を見た。その時に見た彼女の姿はとても印象に残っていた。彼女の顔からは恐怖の色が浮かんでおり、震える手で魔法陣に魔力を流し込んでいたからだ。おそらく、自分がどの程度の魔法を使うことができ、どれ程の力を発揮する事が出来るかを知らなければならないと思っているからだろうなと思った俺は、早く結果が出ますようにと思いつつ部屋を後にするのだった。

俺は彼女に魔法を使用してもらう為にある部屋に彼女を連れて行くと、そこにはこの世界のあらゆる種族に関する書物などが置いてあった。

俺は彼女にそれらを読むことを勧めると彼女もそれに従ったのだが、俺の事を疑い続けている彼女は俺のことを信用していないようで少し俺に冷たい感じがしていたので俺は一旦この部屋から出て行き別の部屋に移動するとこの家の主を呼んで貰う事にする。すると直ぐに家主が現れてくれたのだが、この人も彼女と同じ反応をしていた。

だが俺が事情を説明するとこの人の態度も一変して俺に協力すると言ってくれていたのでとりあえず安心する事にした。だが俺にはあまり時間がないので早速協力してくれるようにお願いをしてこの人の知識も借りる事に決めた。

「では今すぐ取り掛かりましょう。まずは貴方がどの様な存在なのか調べる必要があるのですが、一体どのような能力が発現するか分からないためとりあえず全属性を試していきましょう」

そう言うと、その男性は両手を広げるとその指先から小さな炎を出したので俺もその方法に従い全ての属性を調べてもらうことにした。ちなみにこの方法はこの国の常識のようで誰もが使っているそうだ。この国で使われている測定方法がそれなのだが、この国の人間が使うやり方の方が効率がいいような気がしたが今は気にしないでおく。そうして全ての適正を調べ終わった後、彼が俺に見せたのは驚くべきものであった。俺はその光景を見て驚くことしか出来なかったのである。この人は全ての基本となる火水風土の4大属性の他にも氷雷風闇聖の6つ全ての適性を持っていたのだ。しかも全ての適正値はこの世界の全ての者が持ち得る上限の値よりも高かった。つまりはそういう事だ。この世界において最も適性が高いとされる属性は光だったのだ。だが、その適性を持って生まれた者はほんの一握りの者だけでありその中でも上位に入る者だけが魔法を行使する事が出来たと言われている。しかし、この世界の人間達は魔法を使用することが出来なかった。理由はこの世界で扱えるほどの魔導力が人間達には足りなかったからだという。だがこの人はそれを全てクリアしているということになるのだ。俺は驚きつつもこの人と握手を交わしこれからよろしく頼むと言った。この人にお願いしたのはこの世界の魔族に関する情報を集めて欲しいというものだった。この人は快く承諾してくれてすぐにでも動き出そうと言ってきたので俺はすぐにお願いするとこの人と共にこの家をあとにする。そして、俺は魔族についてこの人から色々と聞いてみることにした。すると俺の質問に対して彼はこの世界の魔族のことについて話し始めた。その話を聞き俺は驚愕の事実を知らされることになる。この世界を支配せんとしている魔王と呼ばれる人物はただの魔族ではないということが発覚したのである。そして俺達が戦うべき相手であるその魔族は人間の魂を糧として成長し続けるのだという。そのせいでこの国は何度も滅びかけたらしい。

そんな魔族と対等に渡り合う事のできる唯一の存在である勇者についても聞くことができた。その勇者達もまたこの世界で魔族に対抗している人達の中で最強の実力を持った集団なのだが、そんな彼らでさえ魔族が召喚した魔物達の攻撃によって命を落としてしまっているらしい。この世界ではもう希望はないとさえ言われていたようだ。俺は、そんな話を聞いた時このままじゃだめだと思ってしまった。なぜならこの村の人達を助け出したところでその先に待ち受けているのは魔族の餌食になることしかない。俺は絶対に嫌だったのだ。あの地獄のような景色を思い出すだけでも鳥肌が立つくらいの嫌悪感を感じている。それだけ俺はこの村の人たちに思い入れがあったのだ。だからこそ、俺はこの世界を救うために立ちあがることを決めた。それがどんなに困難なことでも成し遂げようと誓ったのだ。

「ありがとうございました。とても有意義な時間になりました」俺はこの人を信頼してもいいと思った。だからそう言ったのだ。

彼はそう言われると顔を赤らめて照れているようだったので少し可愛らしい部分が見えたので俺は少し笑いながらその場を去ろうとすると俺の手を掴まれた。その行為の意味を理解した俺はすぐに手を離す。

彼は、まだここに残っていてくれるかと聞かれたので俺の答えは当然決まっていたので俺の答えは是だった。

だが俺はこの世界に居れるのは今日一日だけでまた別の場所に向かわなければならないのだと説明すると残念そうな顔を浮かべられた。俺も本当は残りたかったのだがどうしてもやらなければいけないことがあるんだと伝えると渋々了承してくれたのでこの人には、俺が異世界から来たということは伝えずにいてくれることを約束させこの場を後にすることにした。最後に名前を聞くのを忘れていたので、俺は名前を尋ねると彼の名はロズウェルドと言うらしくこの世界で唯一魔法を行使できた人物だということだ。そのおかげもあり今では王都から魔法研究の最高機関へと移動しており、そこで研究者として活動しているらしい。魔法が使えないのによくそんなところに入れたなと思っていたが、どうせ彼ならなんとかしてしまうのだろうなとも思っていた。俺は、その事を納得した上でこの場を後にする。

俺はその足で、冒険者の街に戻ることにした。そこでまず俺はギルドに行き魔族に関する情報を集めることにしたのだ。だが、ここで俺はとんでもない事態に直面することになる。俺の目の前に現れたのは俺の天敵ともいえる女であるアイシアと俺に好意を持っているであろう女の子達であるアリスやリリカ、そしてサーシャがそこには揃っていたのである。

俺とこの五人が出会ってからの日々を思い返せばそれは悲惨な毎日であると言えるほど、色々な問題が発生してきたので、今回こそは平穏に過ごしたいという思いが芽生えてきたのだ。それに俺はこの世界に転移させられてからというもの、俺のやるべき事を見失っていた部分がある。その事で自分自身に対する苛立ちや焦りを感じることもあった。だけど俺は今回の件を経てそのやるべきことを見つけることが出来たと思っている。それは、この世界に来た意味をもう一度見つけ直すというものだ。確かに元の世界では理不尽に殺され、俺は無能と蔑まれて生きていたが、この世界に転生して俺はようやくやり遂げたいと思う目標を見つけたのかもしれない。その事は正直なところあまり実感できていないのでこれから証明していく事にしたい。そう俺は決意を固めたのだ。だから俺はまず初めにこの世界に召喚されてからの日常を思い出していた。

そういえば最初はサーシャと二人っきりで過ごしていて大変だったっけな。俺はあの頃の記憶を呼び覚まし、その時の自分を振り返り恥ずかしくなるが、俺も随分成長したものだと感じるのである。だがそれも昔のことのように思える。

そう思うと俺は本当に多くのものを手に入れたと改めて認識したのであった。

そうやって思い出に浸っている間に受付のお姉さんが、この国の現状について話を始めていたので俺もそれについて聞き耳を立て始めた。

「皆さんお久しぶりです。私を覚えていらっしゃいますか?覚えていない方はこちらをご覧ください」

すると、お姉さんの背後にある大きな画面に映像が表示されるのでそこに目をやるのだが、そこにはこの世界の人々が魔族によって蹂躙されている姿が映し出されていたので、この世界に来てから間もない頃の自分を思い出すのだが、俺はそれを見て何もできなかった過去の自分にイラつきを覚える。この国の現状について簡単に纏めるとこうだ。この国では約10年前に勇者が現れたのだがその勇者はこの世界に現れて直ぐに、とある場所に封印された魔物を解き放ってしまったのだ。それによって現れた魔物達は人間達が住む村を次々と襲うようになっていった。

だがこの国にはまだこの大陸に出現する事の出来るような強力な魔物は存在せずこの国は窮地に陥ってしまったのだ。それからというもの魔物はどんどん強くなりついには人間達に危害を加えるようになって行ったのである。だがそんな中一人の少女が立ちあがった。

その少女の名前はアイネ。彼女は、当時8歳でありながら一人で立ち上がった。彼女はこの国が滅ぼされる前に、自分の手で魔物を全滅させると宣言したのだ。

だが現実はそう上手くは行かなかった。いくら彼女が頑張ったところで倒せる相手ではなかったのだ。この国は結局は彼女一人の手によって滅びを迎えることになった。彼女の奮闘は無駄に終わったかに見えたのだが、実は違った。なんとその当時の魔王に止めを刺したのはその当時12歳だった少女だったのだ。

そうその人物は彼女だったのである。そうその人は俺の妹で幼馴染の彩花であり、この世界での彼女もまた強かったのだと知る事になるのだが、それでもこの国を救った功績が消えることはないと俺の世界でもこの世界でも共通していることなので俺もこの世界では彼女に頭が上がらないことになる。俺が今こうしていられるのも全部彼女に助けられたからだと思っている。そして、今まさにこの世界の危機に直面しようとしている時に、俺はこの国を救うことが出来るだろうかと考えさせられるのだった。俺が悩んでいるといつの間にか話が進んでいた。

この世界では昔、この国の王女様である神崎結花の母親が魔族を倒したことによって英雄と呼ばれるようになったようだ。

この世界において英雄とは最も尊敬され崇拝されるべき対象とされており人々は皆、その人物に憧れを抱くらしい。

そのことから魔族が現れればその英雄の末裔が現れるのではないかとまで思われているらしいのだ。そのため今まで何度もその手口によって魔族が現れているのだ。しかし、実際に英雄として名を残した者がいるわけではないため未だに伝説上の存在とされているそうだ。しかし、この魔族達はいつも突然現れ人々を襲い尽くすだけなのだそうだ。この世界の住人には倒すことができない為、英雄と呼ばれる人物が現れるのを待つしか無いのだということだ。そしてこの世界で確認されている中で最強の存在である魔王ですらこの世界の人々に傷一つ付けることすらできないのだという。つまり俺達はこのまま何もせずに魔王の到着を待ってろということなのか。俺の気持ちとは裏腹に話は進む。

その魔族達の攻撃は、この国の人間達から力を奪っていきこの国を弱体化させていく一方だという。そしてついにその日はやってきた。その魔族達をこの国に送り込んだ張本人である魔王が現れたのである。

その魔王を一目見ようと多くの人々が集まった。だが魔王を見た瞬間、その場にいた全員は恐怖で体が固まってしまったのである。それほどまでの圧倒的な強さを秘めた存在だったのだ。そんな状況下にあって俺はその魔王に対しての対抗策を考えるためにこの世界に転移させられたんだなと感じていた。そして俺は魔族の王に剣を向けたのである。

そんなこんなで俺のこの世界での最初の戦いが始まったのだった。

俺はこの世界で最初の戦いに臨む事を決意する。その魔族達をこの世界に呼び出したのは俺の予想通りこの世界に召喚されたばかりの勇者らしいのだ。この魔族達の攻撃のせいでこの世界では人々が魔物に食われるなどの被害が出ているのだ。だからこそ、この世界の人々の為にも俺がやらなければいけないと覚悟を決めたのだった。そんな事を思っているうちに魔族の王は、その姿を現す。俺はそいつの姿をみて言葉を失ってしまう。なぜならこいつは俺がかつて戦ったことがある姿形をしていたからである。そうこの男はかつて俺を殺した奴で間違いなかったのである。あの時の記憶が蘇ったことで怒りを覚えた俺は無意識に俺の心の中で眠るあいつを呼び起こしてしまったのだ。その力は凄まじく、目の前の魔王は跡かたもなく吹き飛んでいたのであった。その後、この世界に召喚されてからも俺は俺を殺すためにこの世界にきたやつに会ってきたのだが今回のように殺したことはなかったため、少し気分が悪くなるが気を取り直して再び魔王に挑むことを決意する。俺の目的はただ一つ。この世界に蔓延しているという魔王の討伐であると再確認する。俺はまず先に俺がなぜこの世界に飛ばされたのかを調べる必要があると感じたのだがまずは自分の力を把握する必要があるだろうと考えた俺は早速試すことにしたのだった。

俺が自分の力を試そうと行動に移しようとしたとき俺の前に一人の女性が姿を現したのである。その女性は黒髪をしていてとても美しかったのだがどこか不思議なオーラをまとっている女性でもあったのだった。そう彼女はサーシャにそっくりな人だったのだ。

そう彼女はサーシャの叔母である、ロズウェルドさんだ。俺は彼女と話すことになり、まず初めにお互いの紹介を済ませると、俺は何故彼女がここに来たのか尋ねてみたのだがその答えは驚くべきものだったのである。それは、彼女も俺と同様に元の世界の記憶を持ちながらこの異世界で生きて来たという。そう、俺はこの世界にきてからというものサーシャ達に会うまで俺と同じようにこの世界を転生してきた人などいないと考えていた。それは何故かと言うと、もし俺以外の人に会ったならばその時俺はこの世界に転移した理由を聞きたいと思うはずなので、それを聞けないということは必然的に他の転移者も転移してきてはいないということになるのではないのかという風に考えてしまっていたので俺としては嬉しい誤算であったといえるだろう。だがまだ謎が残っていることも確かである。それは彼女が俺がこの世界に召喚されて間もない頃から俺のことを探していたというのだ。しかもそれがなぜかわからないと言うのだ。

俺はとりあえず彼女の言っていることを信じることにしてみるがどうにも解せない点がいくつもあったので、その辺りについても説明を求めることにする。

そこで話を聞くと、どうやらこの世界には、【運命神】と言われる神様が存在するらしい。その人の魂は一度その人が生きていた元の肉体に戻ると言われている。この事から考えて恐らくこの世界で死んだら元の世界に戻る可能性が高いと思われる。しかしそれを証明する方法がないので断定はできないのだ。

俺は元の世界に戻ると聞いてかなりショックを受けてしまう。というのも、俺の場合は元々死んでいた扱いとなっているらしく、この世界で死亡したとしても元の世界に戻ってしまい、もう一度死んで元の世界に戻ることになってしまう。

そうなってしまうのだけは勘弁して欲しいと思い俺はこの世界に留まろうと思うようになるのである。

そしてその運命の神に愛されている人物が、俺の妹である彩花とこの国の姫君でもある結花ちゃんの二人である。二人はとても優秀な人物だったのだ。俺はそのことを思い返すと俺はこの二人がどれだけ優秀でどんな偉業を成し遂げていたのかが気になってきたので、彼女に尋ねる事にした。彼女は二人とも俺よりも一回り年上の人達なのだが二人に共通点はあるのかないのかどうか。俺はそう質問すると、彼女は二人ともこの世界にいる全ての人間のトップに立てるような人物だったのだという。俺の知らないところでそんなにすごいことになっていたのかと驚かされてしまう。俺は自分の妹がこの世界でそれだけの功績を残していたことに感動を覚えると同時に妹の成長ぶりに驚いていた。そして彼女から聞く限り二人の性格は、結花の方は大人しいお淑やかな少女だったが彩花は活発的な女の子でまるで正反対の印象を持っていたのだった。

だが俺はここで思い出す。その性格が全く逆の二人の性格が似ている部分があることに。

そう。この世界に転移させられてからすぐに、魔物の襲撃があったのだ。そのとき俺は結花と共に魔物の大軍に立ち向かって行ったのだが、その時の魔物との戦い方は結花のやり方ではなく、彩花の戦い方に近い戦い方に感じられたので、おそらく、彼女は結花であり、俺の妹の方の彩花だと断定できたのだ。俺がそのようなことを考えていると、突然、頭の中に声が響いてきたのだ。その声の主は、あの時魔王と戦ったときの魔王でありその魔王こそが今の魔王であり、この国を魔族の手から守るために召喚されたのだと言うのだった。

だが俺は疑問を感じる。

「その魔族はどうして人間を殺さなかったんだ?」と俺がその事に疑問をぶつけるとそのことについて魔王は、魔族達が魔王の事を倒せる存在がいないと判断したため人間達に手を出すことはやめたのだというのだ。しかし、この世界の住人は魔族達にとって家畜のようなものなのだというのだ。だから人間たちは自分達の命を守るために魔族を倒す術を探し始めた。そしてこの国の王女である神崎さんの母親が英雄となり魔族を退治したことでこの国は救われた。だがその代償として魔族をこの世界から消し去ることはできなくなってしまったのだという。

つまり、魔族がこの世界に現れるたびに英雄の子孫が現れるのを待ち望んで殺し続けているのだと。

俺はその事実を知ってこの国の人々に失望してしまったのだった。だが俺の妹とこの国の姫君は、魔王と戦うことができる唯一の存在である為魔王が現れるたびに魔王を殺していたそうだ。

その事が真実かどうかは定かではないが俺の感覚では間違いなく本当のことだろうと思った。俺はこれから魔王を倒して魔族を全て滅ぼさなければならないのだと感じたのだ。俺はこの世界の人たちに失望した。

この世界の人達はこの国の人々しか見てなかったからだ。この世界の人たちは、自分さえよければいいのだという考えを持っているのだ。この世界の人々を俺は見捨てることにしたのである。俺はこの世界で俺の大切な人を必ず守り抜くと誓う。そして、魔族を滅ぼすことを決意し魔王の元へ急ぐことにしたのだった。

俺は魔王の元に急ぎたいところではあったが、俺一人で戦うのではなく俺の大事な人や、この国の人々に被害が及ばないように戦おうと心に決めていたのだ。そう俺は今やこの世界の英雄として扱われている。そんな俺が負けるような相手と戦っては被害が出るどころの問題じゃなくなってしまうかもしれないからね。

だがその前に俺はこの国の国王に魔族が攻め込んで来た際にどのように対応するつもりなのかを確認する必要があった。俺は国王の元へ行き魔王のことを伝えると、国王は魔王が現れても何もしないということを聞かされる。その言葉を聞いた瞬間俺は怒りを覚えてしまったのだった。

そして、俺は、この国で魔族を食い止めて見せると宣言する。俺は国のために動くつもりはなかった。だが俺はこの国に暮らす人々を救うことに決めたのだ。そして、俺の目の前に現れたロズウェルドさんも共に魔族の相手をすることになってもらうことにした。

この国の人々は俺を魔王を殺すためだけの存在だと思っているようだ。だからこそこの国の人々を見捨てる事にした。そうすれば俺の力がばれずに済むはずだと踏んだからだ。それにしてもあの魔族に殺された人は本当にかわいそうだ。

そんなことを思っていると俺の前に一人の男が姿を現せたのである。

「よくきた勇者よ、我が名はサタン、この世界を闇に染めようとするもの」

そう言って現れたのが俺が最初に戦ったあの男である魔族の王様である魔王その人だったのだ。俺は魔族が現れた時点でこの魔族の王に俺が魔族の王の生まれ変わりであると告げる。そうすると魔王は驚いた表情を見せた後笑みを浮かべながら話しかけてくる。

「お前の体には我の血が流れているのだな」

俺はその言葉を肯定した。

「俺の名は黒羽 颯斗。お前が魔王の生まれ代わりだというのなら俺はこの世界を救ってみせる。その使命を果たすだけだ!」

俺はそういうと俺は魔族の王に向かって行く。俺は魔王と剣を交えているのだが、その強さに驚いてしまう。それはそうだろう。今まで戦ってきたどの敵よりも強いのだ。俺はそのことに焦りを感じていた。このまま俺の力で勝てるのだろうかと思ってしまった。俺は、一旦距離を取るために後ろに下がろうとするのだが、目の前にいたはずの奴がいつの間にか俺の後ろに回っていて、俺はそのまま攻撃を食らってしまう。その攻撃をくらい俺の体は吹っ飛ばされてしまう。俺は痛みで起き上がることができなくなってしまいその場にうずくまって苦しんでいると魔王は、俺にとどめを刺そうとするのだがその前にサーシャが助けに入ってくれるのであった。そして、俺に近づいて来て、傷を治してくれる。そして俺は立ち上がり、もう一度戦闘に戻ろうとしたときにまた魔族の王が俺達の目の前に立ち塞がるのだった。

「なかなかやるではないか、人間どもよ。だが貴様らが束になっても我には勝つことはできないぞ。どうする、まだ続けていくか?」

俺達にはこれ以上打つ手が残されていなかった。しかし俺は諦めることだけはしなかった。なぜならこの世界で死んでしまえば俺は元の世界に戻ることになってしまうから。それはどうしても嫌な事だった。それこそ絶対に生きて帰ると誓ったのだから。だから俺は、どんな手を使ってでも生き残ろうと考えたのだ。その結果、俺は一つの結論にたどり着いた。その方法は一つしかなく、成功する保証はなかったが俺はやってみることにしたのだ。

そうそれは魔王の魔力を奪うことである。その方法を思いついた時に、まず魔王の攻撃によって俺は死んでしまうのではないかと不安になったのだ。しかし、それは俺の勘違いだった。魔王が繰り出してきた攻撃に俺の体はダメージを負ったのだが死ぬことはなく俺は生きていた。そして、魔王が攻撃を仕掛けて来たその時に、俺は自分の持っているスキル【聖魔法】を使い、俺は光属性の波動を放ったのである。それにより俺は、少しの間だけではあるが動きを止めることに成功したのだ。

その時間はわずかであったがその間に俺は、サーシャや、ロズウェルドさんにも手伝ってもらい何とか成功したのだ。だが、この作戦はそう何度もできるものではないという欠点もあったのである。しかし、その効果は絶大で一瞬のうちに魔族の王は倒れてしまう。どうやら上手くいったみたいだ。そして俺は、すぐに次の行動に移るのであった。

それからは、簡単に倒すことが出来たのだ。俺達は全員生きている状態で魔族を倒したのである。俺はこの国の人たちにこう言ったのだ。俺はこの国を守るために全力を尽くそうと、俺はこの国の人たちに危害を加えないこと、俺の力は人知れず行使することを約束したのだった。この国の人々がこの国を守ることをやめてこの国で暴れようとしている者がいるのなら、俺が倒せば良いと。俺は魔王の力をこの国の人々を守るためだけに使っていく事を決めたのだった。それから俺達はこの国を出て旅をする事にしたのだ。その途中で、俺の仲間達と合流することになったのだった。

レイが目を覚ました。その事に俺はホッと安心した。俺が目覚めたときには、もう誰もいなくなっていた。俺はこの場にいると邪魔になるかもしれないと思い移動して、魔王と対峙したときの場所へと戻ってきたのである。そして俺は、この場所に来るまでに考えた結果について整理をすることにした。俺達が魔族の城に行った理由は俺がこの世界の魔王を倒すことだけが理由ではなかった。だが今はその理由を話すつもりはない。俺の目的は、この世界に平和をもたらすことであって、その障害になり得る魔族を倒すことが俺が魔王を倒す最大の目的だと思っていた。ただ、魔王を討伐した後にこの世界を見て回りたいとも考えていたのである。そして俺達が魔王と戦うのは魔族を倒すだけではなく、この世界に生きる人達を守るために魔族と戦うという決意を持っていたのだ。だからこそ、俺は仲間達に魔族との戦い方を教える必要があった。そのために、俺が一度魔王の魂を吸収し、それを俺の体の中に移し、俺自身の中に魔王の人格を作りあげた。そして俺と、魔王と俺の人格を分けたのである。俺の中にいる魔王は俺に体を貸すという条件で、俺の中に入り込んできたのだ。魔王は自分が復活するのは俺が死んだ時だけなので俺は俺自身を犠牲にする気は全くないのである。だから、魔王が俺の中で目覚めると俺はその力を完全に使うことが出来るようになるのだ。そして俺と魔王の二人の力で魔王の魔族を倒すという意思は共有されているのだ。

だがこの世界に来て俺が一番最初に倒した魔族は魔族の中で最も強かった存在だったが、今となっては俺の中では、この魔族は一番弱い存在だと感じられるほどになっていた。そして魔王が復活すれば、その魔王の魔力も取り込めるようになり今の俺の力は以前の数倍まで上がっている状態になっているのである。その事は俺の仲間たちは知らなかった。

俺は、魔王を倒す為にこの世界に降り立った。そして俺はある女の子を助ける為にやってきた。その子の名は神崎結花と言い見た目は完全に普通に見える子なのだが、中身はその容姿からは考えられない程の強靭な性格をしている少女なのだ。その少女に魔王が乗り移ったのである。その事を俺はすぐに理解した。俺は魔族と魔王を同時に倒すことができるチャンスが訪れたことを喜んだのだ。俺が魔王を追い詰めたその時に、俺の体は乗っ取られてしまい魔王に負けそうになってしまった。俺は魔王に勝つことができなかったのだ。しかしそこで、魔王は何故か俺の中に入るのを止めてその場から姿を消したのである。

俺はその事に疑問を抱きながらも、魔王が去ったことで戦いが終わることにほっとしていたのだ。だが俺の予想に反してその魔王が戻って来たのだ。その事実に俺は焦っていた。そして俺は、俺の中の魔族の王と会話をすることになる。その事で、魔王は俺のことを気に入らないと言っていたのである。だが俺はこの国を救うためには魔王に協力をするしかないと思ったのだ。そうすると、その言葉を聞いて魔族の王は不敵に笑いながら話し出す。そして魔族の王は自分にはまだまだ力が有り余っていると言っている。だが、魔王も俺にまだ余裕があると感じているのか魔族の王は、俺の目の前に姿を現したのだ。その魔族の男は俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。その攻撃は凄まじく、俺は防ぐだけで精一杯で攻撃を繰り出すことが出来ないでいた。俺はその男の実力の高さを感じていた。そのことから魔族がこの国の人々に危害を加えることはないだろうと判断したのであった。そしてその攻撃は止み俺は一旦魔族との距離を開けたのである。

その後俺はこの魔族の王に名前を聞いた。この魔族の男の名前はサタンと名乗り、この国を支配しようと考えていると、言ってきたのである。そしてサタンの話を聞いた後に、この魔族に俺は魔王を倒すことを告げたのだ。その話が終わるとサタンは魔王の元へ帰ろうとしていたが俺はまだ聞き忘れていたことを思い出してサタンに聞いてみることにした。その質問は魔王が復活した理由についてである。俺はそのことを聞くことにしたのだ。するとそのことについてはサタンもよく知らないと答える。俺は魔王が復活したのは勇者である俺が何かしたからではないかと言うと魔王は否定するのであった。魔王がなぜ復活したかについては分からないということが分かり、結局俺は魔王と別れたのであった。そして、俺は魔族の城を抜け出し、仲間と合流しようと動き出した。

俺の視界には仲間のみんなが映る。しかし、そこにはレイもいたのだ。俺にはどうしてか分からない。だが俺はレイの姿を見るととても安心していたのだった。その気持ちは、他の三人も同様らしくて俺が見ているのに気付いたら全員が俺の方を見てきたのだ。その時のみんなの反応は驚きと喜びに溢れているように感じていたのであった。

「颯斗!お前大丈夫なのか!?お前、今までずっと意識がなかったんだぞ!」と拓斗は言うと

「そうだよ。急に倒れるなんて心配したんだよ。本当に良かった。目が覚めたんだね。私すごく嬉しいよ」

「全くだぜ。心配かけさせんじゃねぇよ」

そうやって俺は、心配してくれる人がいることに対して嬉しさを感じていたのである。俺はこの世界でも幸せになれるような気がしてきたのだ。だが俺はその幸せを感じると同時に俺は元の世界での家族や学校の事を考えていた。

俺は家族や友人に何も伝えていないのだ。このままではこの世界の人に悪い印象を持たれる可能性もあるので俺は元の世界に戻りたいと願い、自分の体に戻る方法を模索しようと考えた。俺はこの異世界で得た力を有効に使っていきながら俺は自分の肉体を探し出すことを目標に行動を開始することに決めたのだ。

俺は元の世界に戻るための手段を探す為にこの世界を見て回ることにし、この世界の現状を確認することにしたのである。この国の人々は、俺達のことを受け入れてくれていたが、この国の人たちの中にはこの国に魔王が現れたことに不満を持っている者もいるはずだと俺は考えた。だから俺は、魔王に乗っ取られた時の事を反省しながら俺は自分の体を探さなければいけないと思い、魔王を倒したときにこの国の人々を救えるだけの戦力は確保しておきたいと思っていたのだ。

この国の人たちはいい人ではあるのだがやはりこの国の外には魔物が沢山存在しているという現実があるため、俺としてはなるべくこの国を守り抜きたいという願望が強く存在していた。その事が理由でまずはこの国から一番近い隣国へと移動することを最優先にしたのであった。そうするとロズウェルドさん達が近づいてきたのであった。ロズウェルドさん達は魔族を倒したという報告をするためにわざわざ来てくれたらしい。それでロズウェルドさん達は、魔王を無事討伐することに成功したと報告した。俺はそれを聞くことが出来たので俺は安心したのである。ロズウェルドさんは俺たちと一緒に行動することを望んでいたようだが俺達はこれから旅を始める予定であり、ロズウェルドさんはロズウェルドさんなりの旅路があるのでここで別れることになったのである。

俺達がこの世界に降り立ってもうすでに一週間ほどが経過しようとしていた。俺達は元々いた世界に帰るための手掛かりを探していた。だが俺がこの世界にやってきている時点で帰る方法がわかるはずがないと思っているので俺はあまり深く考えずに行動することに決めたのである。俺はとりあえずこの世界を見て回ることを決めて、俺が目覚めた城から出て行こうとしたときに、ロズウェルドさんのところにいる女の子に声をかけられたのである。その女の子の名前は、ミリアという女の子なのだがその少女の表情は、どこか暗いものだった。俺はそんな表情をしている少女が放っておけなくて話しかけたのであった。

『あなたも私たちの味方になるんですか?』その言葉に俺は驚いた。俺のことを警戒しているのだろう。当然の反応である。だが俺はこの子を助けたいと思ったのである。その理由を問われても困るが俺はこの子を助けたいと思った。それは、俺がこの世界に来たときの状況が似ていたことともう一つ理由があった。俺もこの世界に来るときにある少女に助けられたことがある。それが今の俺の仲間の一人である結衣という女の子である。その少女は俺に命懸けでこの世界に来るように頼んできたのだ。その事を今でも俺は覚えていて俺はその子の力になりたいと強く願っていたのだ。俺はその女の子の名前を口に出そうとしたとき、突然頭痛に襲われてしまったのである。まるで、思い出すなと言われているみたいで俺の記憶はどんどん消えていったのである。

そして記憶の喪失とともに俺の中で眠っていたもう一人の自分が起き出し俺の中へ入り込んでくる感覚に陥った。その瞬間俺の中から膨大な量の力が溢れ出してくる。その力は魔王のものと同等に感じるほどである。だが、俺の心は魔王に支配されてはいないようで俺が魔王と体を乗っ取られるということはなかったのだ。そして魔王はこう言った。『我が名は、サタンである。貴様の体を乗っ取る気はないが貴様に力を貸してやるつもりだ』そう魔王が言うと魔王の人格が表に出て来て俺に襲いかかってくるのであった。俺はそんな攻撃を避けようとしたが体が思うように動かずに攻撃を受けてしまう。そして魔王の攻撃は、全て避けることができずに俺の体にダメージが入ってしまうのであった。

俺は自分の意識が保てなくなっていく中で俺は必死に自分の意識を手放さないように抵抗し続けた。そしてその事に気づいた結花ちゃんたちが俺の側に来て助けようとした時に結花たちは、謎の攻撃により俺の元から離れて行くのであった。そして魔王と一体化をした俺は完全に魔王の力を制御することが出来るようになった。その事を魔王に聞いた俺に、サタンは答えるのであった。

俺は、この世界を滅ぼそうと思えば簡単に壊せると思うくらいまで力が上がっていることを感じた。俺は自分が魔王の力を制御できるのか心配になったのだ。そして魔王の力をある程度は扱えるようになってはいるものの完璧に扱えているというわけではないと俺は感じたのである。だが、魔王からすればまだ不完全な状態の俺でも、魔王が操れる最強の技を使えばこの世界を一瞬で消し飛ばすことができると言われたのだ。俺は魔王の言っている言葉が本当かどうかを確かめるために【空間転移】を使い、自分の姿を元の世界の自宅前に移動させた。そして俺は、目の前に広がる光景に絶望をしてしまったのである。そこには俺が住んでいたはずの家が存在せず代わりに俺が見慣れない場所が広がっていたのであった。

俺はそこで俺は初めて元の世界に帰ってきてしまったという事実を知るのである。俺の住んでいた街に帰ってきた俺だったが、そこには俺の家は無くなっており、ただ更地が広がっているだけであった。その景色を見た俺は、元の世界に戻ってきても意味はないのではないかと考え始めたのだ。俺が魔王として行動していたときは俺の意思は魔王が支配していたため、魔王が望めばこの世界を滅ぼすことが可能であったのだ。その事実を思い出した俺はこの世界の現状について調べる必要があると感じてすぐにこの国の中に入るのであった。

だがこの国には結界のようなものが張り巡らされていてこの世界の人間以外は出入りが不可能だったのである。そのため俺はこの世界で俺以外の勇者が存在しているのかどうかを調べてみることにした。俺はこの世界の人達と接触することでこの世界に関する情報を得る必要があったのだ。しかしこの世界には勇者が居ないという結論にたどり着いたのである。なぜなら俺は、俺以外の勇者の情報を得ることができていないからである。

だが俺は、魔王としての能力を使うことができる。俺は自分の力でこの国を支配している結界を解くことができるのではないかと考えたのだ。しかしこの国を乗っ取ればこの国の人間は確実に魔王の配下となってしまうのは必然であった。だが俺としては、仲間と合流してこの国を出ることを目標にしていたのでこの国の人間が魔王の配下になることにそこまで大きな問題ではないと考えていたのだ。俺は魔王の力を少し試してみることにし、この世界の人々にバレないようにしながら自分の力を少しずつこの国の中に広げていくことにする。すると数分後にこの世界を支配するための魔法式を発見したのだ。俺はそれをコピーしてからこの世界から立ち去ることにしたのである。俺はこの国を出て自分の体を探す旅に出ることにして魔王城に戻るのであった。

俺の目の前に現れた魔族はサタンと名乗った。俺はこいつが魔王であることを理解するのに数秒ほどかかってしまいその間に魔族の男は攻撃を仕掛けてきそうだったので、俺とロズウェルドさんは戦闘体勢に入り相手の様子を見守ることにした。

「久しぶりだね。まさかあの時出会った子供に会うことになるとは私も驚きだよ」と魔族の男が言い、その男をよく見ると俺が初めてこの世界にやってきたときに、俺に道案内を買ってくれた人物だと言うことに気づく。

「おや、私の事を覚えていたのかね?私は嬉しく思うよ。だが、今君は私の敵となった。ならば私がすることは一つしかない」と言って彼は何かを発動する構えをする。その動作を見て俺も反射的に対抗策を考えていた。俺が使える能力の中で、一番効果がありそうなものは、俺自身の強化だがこれは自分の体を一時的に限界まで強靭にするだけの強化なので相手の強さ次第ではあまり効果がないだろうと考えていると、急に体が重くなる。それと同時に全身が痛くなり動けなくなってしまったのだ。おそらく重力系の魔法を使っているのだろうと予想するが、それだけではなかったのである。急に苦しみだすロズウェルドさんやアリッサ様、そして他の皆の様子を見ると俺は全員が同じ状態にされたことに気づいたのだ。俺はこの状態を解除するためには相手の発動している魔法を打ち消すことが必要だと思い、それを実行しようとするが、その行為すらできなかったのである。そのせいで俺がこの状態になるまでに、相当な時間が経ってしまったのである。そして俺が完全に身動きが取れなくなったことをいいことに奴が俺に攻撃をしてくる気配を感じる。このままでは俺は間違いなく死んでしまうと俺は感じていたが、この状態から抜け出す手段を見つけることができないため俺は死ぬのを覚悟したのであった。俺は死を悟り恐怖を感じていたが不思議と死にたくはなかった。この世界にきて俺の人生は大きく変わったと思う。最初は、元の世界に帰ることを目的に行動をしていたのだがこの国の人々を救いたいと俺は思い始めてこの世界にとどまることに決めた。それにこの国の人々を俺が守りたいという気持ちが強く存在していた。俺はそんなことを思って死んでいくのかと考えるとやはり悲しかった。

俺の思考がネガティブな方向へ進んでいくがそれを許さないように誰かの声が聞こえてきたのである。

『やっと見つけた!ずっと探していたんだぞ!』その声は、懐かしくそして俺が待っていた人物でもあるような気がしたが今はそれどころではないと俺は感じた。だが俺はその言葉を聞くと同時に安心感を覚えるのである。

『おい。大丈夫か!?返事しろって!!』俺はその言葉を聞き安心感を覚えた。だが安心できたとしてもこの状況が解決していないためどうしようもないのが事実であり俺の頭の中はそのことで一杯になっていた。俺がそんな状況でいたときまた聞き覚えのある少女のような声が俺に話しかけてくる。その声は、俺が一番頼りにしている人物であり、いつも俺を助けてくれる少女の声であった。

『お姉ちゃんが絶対にお前を守ってみせる。だから心配すんなって。お前ならどんな困難でも打ち破っていけるはずだから、だって私の大切な親友であり家族である悠真なんだから。こんなところで諦めるような人じゃないでしょう?』と結花が俺に言ってくるが俺はそれでもまだ自分の力でこの状況を打破できないと思った。だが、その時なぜか結花が俺に手を触れた瞬間結花の体が光り輝いて俺の中に入って来たのである。その事に驚いて俺は思わず自分の身に何が起きたかを確認したのである。俺の中に入り込んだ少女の体は、俺に馴染みそして力がどんどんと高まっていく。

そしてその力を使い、この場にいる全員にかけられている魔法の効果を解除したのであった。俺にかけられたこの状態は、呪いのようでもありそして俺の能力が通用しないものであったのだ。その事から推測できるのはかなり強力な能力を持つ魔法使いかもしくは悪魔族などがこの世界に紛れ込んでいるということが予測される。俺は、先程よりも自分の力が上がったことからこの国にはまだ強い存在が居ると感じるのである。だが今は俺が強くなることが大切であると思い俺はこの国の人々に被害が出ないよう、敵の相手をするために自分の魔力を解放することにしたのだ。

そして解放し終えると敵と思われる存在の場所へ転移したのである。その場所に着くと俺はすぐに剣を構えて敵の存在を確認する。その敵に攻撃をしてみたが防がれてしまい攻撃してきた正体は確認することができない。そして俺の攻撃が弾かれると、その者は俺の前に姿を現す。その者は、黒いマントを身につけて俺のことを見ていた。そしてそいつの正体は、以前会ったことのある人物であった。俺は、その名前を告げてその者が誰なのかを確かめるのであった。

俺は、自分の前に姿を現した魔族の男を見てすぐに、その魔族の男が魔王であると気づいてしまう。俺は警戒を強めながらその男の出方を伺うことにしたのである。すると魔王は笑い出しこう言った。

「久しぶりだね勇者殿」とその言葉を聞いていた魔王は笑みを浮かべており魔王は余裕があることに俺は気づく。

「貴様に名前を呼ばれるのも気分が悪くなった」と言い放つが、それを気にせずに話を続けたのだ。

「君のことは以前から知っていたんだよ。私の計画に邪魔になりそうだったから君には悪いが殺させてもらったのだけれど、残念だったね私を楽しませられなくて」

「黙れ。貴様が魔王だろうが何者であろうが関係はない。この国の人々は俺の守るべきもので俺の家族なんだ。俺はここの場所を守る。この世界を滅ぼさせたりなどはしやしない。必ず守って見せる!」と俺が言うと魔王は微笑しながら、俺に向かって手を伸ばしてくるが、俺は【空間転移】を使い回避する。魔王の魔法でこの場所が壊れないように俺はこの国の外に移動しようとした時、魔王に背後から攻撃を仕掛けられてしまった。俺も油断していたわけじゃなかったが魔王の動きに反応が間に合わず俺は魔王の攻撃を食らってしまう。俺は、攻撃を受けたことにより魔王の力の一端を感じることができた。

その攻撃を受け俺はこの魔王を倒すには全力で戦う必要があると悟ったのである。俺は魔王との戦いに集中しなければならないため俺は仲間に合図をして仲間には、この国の住民を守るために住民の安全を確保することを指示した。この指示によりこの国の人たちは、命の危機にさらされることは無いはずだと俺は考えていたのだ。

だが俺はこの魔王を相手にすると自分の仲間を守れるかどうか不安になってしまった。そのため俺一人でもなんとかこの魔王を食い止めようと俺は思ったのである。

俺は自分の目の前にいる黒ずくめの格好をしている男を見つめる。

魔王が俺に近づいてきた際に俺は、仲間に合図を送り俺以外の者たちを避難させていたのだ。この国の中で安全な場所は、地下の洞窟しかないと思っていたのと、魔王と戦うためにはこの魔王の関係者以外の人物の巻き添えにならないほうが良かったのである。それに俺は、仲間達を巻き込む可能性がある戦い方では勝つことは難しいと思っているので、仲間達が避難できる場所の確保をしたのだ。その事によって俺は仲間と離れて魔王と戦っていたのである。

俺が魔王と向かい合っていると、急に魔王から魔法による攻撃が放たれ俺は慌てて魔法を避ける。その魔法は広範囲にわたって発動していた魔法だったので避けることが遅れていたとしたらかなりのダメージを負っていたことだろうと俺は感じた。魔王はこの俺の行動を見て笑っていたのだ。俺はその魔王の顔を見て魔王に苛立ちを感じた。

魔王はその後も俺に向けて魔法を放つ。魔王は遠距離系の攻撃が得意なのか魔法による攻撃を繰り出していた。その魔法の威力はかなりのもので俺は防御に徹しなければならなかった。魔王の攻撃を避け続けることは可能なのかもしれないが、魔王は俺が魔王に対して攻撃を仕掛けられないことを狙って攻撃を仕掛けてきているので俺は迂闊に動けなかったのである。

それからも俺は、どうにかして攻撃を仕掛けようとしたがどうしても上手くいかずに時間が過ぎていった。

「はははっ!どうした?この国を守ろうと必死になって頑張っているがもうお終いだよ。私も時間をかけるつもりはないが君の仲間達はすでに私の手によって拘束されているよ。だから早く降伏したらどうだい?そうすれば痛い目に遭うこともないし平和的に終わることが出来る。それが分からないほど馬鹿ではないよね?」と俺に話しかけてきて俺は怒りを覚えた。だがここで感情に身を任せて突っ込めば負けるのは間違いないと冷静さを保ったのだ。

そして魔王が何かしらの準備を始める。その行動を見た俺は、何かが来ると確信したのだ。俺はすぐに【解析眼】を発動させて魔王の能力を確認しようとする。だが何も変化がないので俺は疑問を抱きつつも次の魔王の攻撃に備えようとした時に、その現象が起きる。その異変に気付いたのは俺だけではなく俺の周りにある大地が震え始めその振動は次第に大きくなり始めたのである。

そのことに俺は危機感を覚えて魔王に近づき攻撃を仕掛けるが俺の剣が当たったのは空気のみで魔王本体にはかすり傷一つつけることは出来なかったのである。

そのことから俺がどれだけの攻撃を放っても意味がないと判断してしまった。そこで俺は魔王の隙を見つけ出すことを第一優先として攻撃することにした。そしてこの作戦は成功する。

俺が攻撃を仕掛けたときに魔王はその攻撃に反応をしてしまい一瞬だが動きが止まる。それを好機と見た俺は、剣に纏わせている属性を変化させる。俺の使える中でこの状態に変化させた剣技が一番効果がありそうだと考えたからだ。そしてその考え通り魔王は動きが鈍り俺の剣に吹き飛ばされてしまう。そして俺はすぐに魔王の傍まで駆け寄る。だが、その行動は俺にとっては悪手でしかなかった。なぜなら魔王が体勢を立て直すと同時に、俺に反撃を加えてきたのである。

その反撃はあまりにも強力であり俺が耐えられるようなものではなく、俺はまともにその一撃を受けて地面へと転がっていった。その衝撃で俺は気絶してしまうが何とか一矢報いることができてよかったと思ってしまう。しかしそれは大きな誤りであったと気づいたのはそのあとのことである。

意識を取り戻したとき、俺は全身の痛みを感じていて立つことすら困難だと思えるほどのダメージを受けていたことを自覚していた。その事から俺は自分の体に何が起きたのか確認しようと思い俺は体を動かそうとすると俺が予想していた以上に体が動いてくれない。そればかりか、全くと言っていいほど力が入らない。その事から俺は自分が負けたと自覚したのだ。俺が立ち上がろうと足に力を入れると地面に膝がついてしまったのである。俺が動こうとするだけでこの状態になるとは思ってもみなかったのでかなり動揺したが俺が倒れているのは俺に油断があったというわけではなく、あの魔王の強さがそれだけ規格外であったというだけなのだと俺は考えたのだ。

その事に気が付いた俺は俺を倒した相手を確認すると、その正体はなんと先程戦ったはずの魔王であった。その事を知って俺は魔王に問いただすと俺の質問に魔王が答えたのである。その内容は驚くべきものであった。俺と戦った後に、俺が魔王の手から逃げたと思った部下が俺のことを見捨ててこの魔王は、仲間と一緒に逃げ出そうという考えになっていた。

その事を魔王は俺に伝えて俺を殺そうとするが俺は、魔王から感じる気配の異常さに魔王の本当の目的を知り俺はその情報を持ち帰ろうと思いこの場を去ろうとするが、この魔王からは逃げることは出来ないと悟ってしまった。俺が諦めかけていたときに俺を助けに来てくれた仲間が俺のところに駆けつけてくれる。だが俺の仲間は一人を残して全滅させられてしまう。だが俺は魔王に立ち向かおうとする。

その行動に魔王は嬉しそうな表情で「素晴らしい」と俺に声をかける。そして魔王と戦おうとしたが俺が放った【聖槍】の攻撃さえも簡単に防いでしまい俺は絶体絶命になってしまう。そして魔王の攻撃を食らいそうになったところで俺の目の前には結花の姿が現れて俺に語り掛けてくる。その事で俺は、先程から聞こえてきていた声は幻聴ではなく、結花のものだったと気付くのである。

俺はその言葉を聞いて、自分の体を癒すように頼むと、すぐに体の痛みはなくなった。

それから俺は魔王に攻撃をして、俺は魔王を倒すことに成功したのだ。だがその時に気を失ってしまったのであった。

「勇者様大丈夫ですか!」と俺は目を覚ますと、そこには仲間の女性が立っていたのだ。彼女は勇者様と呼ばれていたのでおそらく勇者パーティーの女性だろうと思われる。その女性の名前はソフィアと言い俺のことを助けてくれていたというのだ。彼女の話を聞いていたら俺は、俺のことを勇者様と呼んでくれる彼女が俺の婚約者であると言うことを聞いのだ。俺は彼女に「どうして君たちがここに?」という疑問を口にすると、彼女は俺のことを心配していて魔王を倒しても目覚めなかったから俺の仲間達が、彼女達に知らせてここに来たのだと説明してくれた。

俺の仲間達は魔王との戦いの際にかなりの人数が減っていたので戦力が足りていないはずだと考えていたら、ソフィアさんは仲間の一人が亡くなったということを伝えてくれた。そのことを聞き悲しむ前に、まずはこの状況を理解しようと考えてみることにするがそんな時でも魔王との戦いを思い出してしまい俺の心の中には恐怖しか残っていなかった。

俺が仲間の死を実感している間に仲間が数人やって来てくれてみんなで話し合いをしていたのだがその途中で急に眠気が襲ってきたのだ。俺が寝てしまった後も仲間達による話は続いていたみたいだが、魔王の攻撃を受けた影響なのだろうか?それとも他に原因があるのかもしれないが俺にはわからなかった。次に目覚めた時には俺はベッドの上にいたのだった。しかもここは王城のようで部屋中に高そうなものが置かれていたのである。それで周りを見渡しても仲間たちがいないことに気付き不思議だった。そのことについて仲間に尋ねると話しをしてくれたのが国王とその仲間だったらしく、話の内容は魔王についての話しが中心になっていて魔王の脅威についても詳しく教えてもらった。

俺は、魔王との戦いで得た力のお陰なのか、前よりもこの世界に来る前までよりは格段にレベルが上がり体力や魔法などの基礎的なステータスが上がっていた。それでもまだ魔王やそれ以外の強力な敵と戦っていくのは難しいと思うのだ。それに俺はもっと強くなりたいと考えているため俺の目標としている強さまでは到達するのはまだ時間がかかるのではないかと思えたのである。そのため仲間がこの城まで送ってくれたとしてもまた魔王に負けて死んでしまう可能性が高いと思っていたのだ。それに今度こそ魔王に勝つことは出来るがそのあとに俺は確実に死ぬことになると確信できた。だから仲間がここまで送り届けたのにも関わらず俺が再び魔王と戦う事を拒否したのだ。だが俺は魔王ともう一度戦うことを決意した。魔王と戦うためというよりも自分自身のレベルアップのためにだ。そして、魔王に勝てるくらいに強くなってしまえば俺が魔王を殺す必要もないのではないかと考えたのだ。俺にはその手段が残されているはずなのでその方法を模索したいと考えている。俺はそのために魔王城に挑もうとしたのだ。

そして俺は魔王と対峙することになった。その時、仲間は俺を止めるが俺は強引に押し切って、一人で魔王に挑む。

俺はその日を境にこの国を出発することに決めた。その決意は揺るがないだろうと俺は考えている。俺の目的は復讐なのだ。その目的を達成するためには俺が死ななければ達成されることがないと思える。だからこそ俺が死んだら復讐を遂げることが出来なくなってしまうので、それだけは避けなければならない。俺がなぜこの国に滞在することに拘っているかというと俺の目的を叶えるための方法が分かるかも知れないと期待したからだ。

だから、この国で色々と情報を集めていたが特に収穫もなく時間だけが過ぎていった。そして俺が滞在してから一週間ほどが経ったある日、俺はついに目的を果たすことができた。俺は、この世界の魔法技術がどの位進歩をしているのかを調べる為に、魔法についての知識が欲しいと思って魔法研究所に向かう。俺はその魔法研究の本部が何処にあるのかわからなかったので俺は冒険者ギルドで情報を貰うことに決めて受付に行くと一人の男性に声を掛けられたのだ。

その男性は、この国の魔法研究者であり俺に魔法について質問をしてくる。俺は魔法に関してあまり知識がないと答えるとその人は、俺に魔法の本を渡すために図書館に行って調べてみると良いと言われたのである。

俺が何故こんな対応をされたのかわからなかったが俺が本を返せば普通に返してくれると言っていたので言うとおりにしようと思ったのだ。そして俺は、言われた通りに図書館に行き俺は本を借りるとすぐに借りていた本を読み始める。そして俺はこの世界の魔法使いがどんなものなのかを大まかに理解したのだ。

そして俺はこの世界では魔力がとても重要になっているのであると知ることが出来たのである。それはどういう意味かというと、魔力は生命力をエネルギーとして使っているからである。そのことでこの世界では基本的に身体能力が高いものが優秀なのだと考えられているらしいと分かった。

しかし、俺の場合は別の意味で優秀だということもわかった。なぜならば、魔眼の能力によってこの世界でも俺だけは特別だとわかったからだ。その理由は俺は、この世界では本来ならば持っているはずのない固有スキルを持っているのだと判明してしまったのである。それが、"創造主の加護"というもので俺が持つ能力は想像したことが実際に実現できるというものだった。その効果はかなりチートじみていて、例えば俺が、最強の剣が欲しいと思ってその能力を発動すれば、その願いを叶うことが出来るし、逆に、この能力を他の人間に与えればその人間は最強になれるということである。さらに、この世界のあらゆる言語が理解できるようになっているのだ。俺はこの能力で自分の欲しい物が手に入るので非常にありがたかった。

しかし俺は自分の力で強くならないといけないと思っている。なぜかというとこの力は自分一人にしか使うことが出来ないし、そもそも他人の強化は出来ないのである。その事から自分の努力だけでどこまで強くなることができるかを知りたいと思ったのだ。俺はこの世界の文字を読めるようになっていたのでこの世界で手に入れた資料を読むことにする。俺が手にした情報によると、この国は俺の予想していた通りかなり酷い状況になっていた。この国がここまで荒れ果ててしまっている原因はある貴族に問題があるようだ。しかしそのことについては、詳しいことが書いていなかった。俺はもっとこの世界に馴染んで行く必要があった。そのことからまず俺は情報収集を行いたいと考えたので俺は酒場に向かってみたのだ。

その街で、この国のことやこの世界のことをもっと知りたいと思っていた。だが、俺には情報がなさすぎる。そう思いながら俺は酒を飲むことにした。そこで俺は、俺は酔って絡んできた男がいたのだ。

そいつは、どうも金に困っている様子だったので俺は金を貸すことにした。だがそいつは、俺のことを怪しいと思ったのか疑っていた。だけどそんなことは全く気にせずに俺は笑顔を振りまいて「お兄さん、いくらお金が無いの?」と言ってあげたら男は嬉しかったようで、俺が金を持ってそうだと思ったのだろうか?それともこの男をカモにしてやろうと思い始めたのだろうかはわからないけど俺は男の懐にあった財布を取ろうとすると男は慌てた様子で財布を守ろうとするが俺が手を出した瞬間に、その男の体が崩れ落ちるように地面に膝をつくと動かなくなってしまったのだ。

俺としては、何もしていないつもりだったのだが俺は気を失ってしまったその男の体を揺すり起こそうとした。だが全然起きる気配はなかったのだ。俺はこのままここにいても時間の無駄だと判断し、俺はその男に「さようなら」と言うとその場を離れることにしたのである。だがそれから一時間後ぐらいが経つと俺は何故かまたその男と遭遇してしまったのだ。その男も俺のことを探していたみたいだったが、俺は面倒ごとに巻き込まれる前に、急いでその男から離れようとしたのだが、俺の事を不審に思っていた男が今度は俺の服を掴んできて「お前がやったんだろ!」と叫び声をあげてきたのである。それで、騒ぎを聞きつけた人々が集まってくるが俺はその人混みの中を突き抜けるように駆け抜けていくとなんとか逃げ出すことに成功したのだ。

そして、逃げ込んだ先で出会ったのが、俺がこの世界に来る前に見た夢に出て来た女の子の姿があったのである。

その女性とは、初めて会ったにもかかわらず俺は、彼女を見たことがあると感じてしまう。彼女はどこか不思議な雰囲気を持っていた。そんな時俺は彼女が何者かを知っているかのような発言をして俺は彼女のことをよく見てみるとその女性は間違いなくあの時夢の中に現れた人だったのである。

そんな彼女と話をしていて、俺達はこの世界を救う必要があるということを教えてもらったのだ。だが俺には彼女に協力するつもりは一切なかった。だって俺の目標は、自分自身の力でこの世界を平和にすることである。そのためには仲間が必要だが、俺が信用できない人と組むつもりは毛頭ないのでその提案を断ったのだ。俺は一人で旅をすることを決めていたのである。しかし俺はこの時少しだけ油断をしてしまった。なぜなら、目の前の美少女の誘いを断ってしまったことによって機嫌を損ねて怒らせてしまったのかと思って、慌てて俺は謝り倒した。その結果何とか許してもらうことに成功するがそれでも俺の心の中には不安感しか存在していなかったのである。

その後、俺達がこれから何をするべきかを考えていた。そして俺は、まずはこの国を見て回るべきだと考えていたのだ。俺はこの国の人達と会話をしてみて感じたのは、誰もが必死になっているのだ。そしてその目的というのは魔王討伐であり、この国にいる人々は、みんなレベル上げや装備などの強化を行っていたのである。この国の王もその例に漏れることなく、俺と同じようにレベルを上げて強くなっていたのだ。それなのに俺はこの国に来た目的を忘れて、レベルや強さを上げるよりも何か情報を手に入れることを優先しようとしていたのだ。それ故に、今の状況を考えると俺は仲間を集めて魔王城に行こうと考えたのだった。だがその時にふと、ソフィアさんの顔が浮かんでしまう。それはなぜなのだろうか?おそらく俺は、魔王を倒したらこの世界を去る予定なのだが、その時にもしかしたらソフィアさんが付いて来てくれるのではないかと思ったのかもしれない。だからといって仲間を集めるのを諦めるというわけじゃないが。ただなんとなく俺は仲間を募集するのをやめたのだ。それはこの世界で俺の仲間になってくれる人が見つかるかどうかわからなかったからということもある。

そして、俺と魔王の再戦の時はやってきた。魔王は以前より強い力を蓄えているはずだ。だから今回は最初から全力を出すしかないと思っていたのだ。そして、魔王城に入る前の準備として俺は自分のステータスを確認したのである。そのステータスを確認すると驚くべきことがわかったのだ。

俺は自分のステータスを改めて見てみる。

ステータス:

天道勇 年齢16 職業:勇者(笑)

力:SSS−

魔力:A

敏捷:S+

体力:SS-

運勢:E スキル 固有スキル"鑑定眼""創造主の加護""無限収納"称号 《世界の敵》 こんなふざけた数値になった原因に心当たりがある。それはこの世界で俺はこの国で最強と言われている冒険者と模擬戦を行ったのだ。その時はお互いに真剣ではなく模擬戦をすることになった。そして、その時の勝負は俺の圧勝であった。だがその時はまだそこまでの数値ではなかった。だが俺は、俺の力を見せつけるためにその男に対して魔法を放ったのだ。その時俺はこの世界の魔法について詳しく知っていないからどんな魔法がこの世界の人たちにとって脅威となるのか分からなかったのでとにかく一番強力な炎属性の攻撃を放つことにしていた。

その攻撃に男は対抗するために剣技を使って相殺したのだ。だがその一撃だけでその男は戦闘不能になってしまうほど弱っていた。だから、俺はその隙をついて相手の命を奪うことにしたのである。しかし、俺はそこでその行動を止めることになった。なぜなら相手は、剣技を俺が放つ直前で剣でガードをした。そのおかげで俺は、相手を殺さずに済み、気絶させることが精一杯となったのである。そのことからこの世界では俺が考えている以上にレベルの差があることが分かってしまったのだ。俺の場合はレベルを上げれば良いだけだが他の人はどうすれば良いのか俺には解らないのである。

俺は、俺と同じぐらいの強さを持つ奴と会うたびに俺は、その人間を殺すことが出来ないかと考えているのだ。俺の考えが間違っていると思うのであれば俺は俺を殺してほしい。だけど俺の考え方を否定する人間が誰もいないままここまできてしまった。それはつまり、俺がこの世界に存在する人間の中で最強であるという証明でもあるのだろう。だからこそ俺は仲間を求めてはいけないと思ったのだ。

この世界の人間に仲間を作ることは俺が思っている以上に大変な作業だと思うからだ。俺はこの世界の仕組みを知るためにこの世界の様々な場所を歩き回ってきた。その過程で俺は色々なことを知ることになる。この世界の人間は、全員が平等だと思っている。それは間違いではないのだが俺が知っている世界に比べると不平等が多い。まずは魔物が生息する区域が、この世界の人間が住む大陸の一部を占めている。この世界でもその例外ではないのだ。そんな理由からか、この世界の人々は自分よりレベルが低い者を見つけ次第襲うことでレベルアップを行うという方法を取っていた。これは他の人から見ておかしい行為だということがわかるので俺はこの行為をやめるべきだと主張したが誰にも賛同されることはなかった。

その理由は、この世界においてレベルが全てだと誰もが理解しているからである。だが俺はそう思ってはいない。確かに俺が今までに出会った人々は全員強かったが俺の方が遥かに強くなっているのは明白だ。だがこの世界の人々が自分の強すぎる能力を自覚していない。その理由は恐らく自分の強さを正確に測ることが出来るような装置が存在しないのであろう。俺はそのことを考えただけでも恐ろしいことであると認識できるのだ。だが俺は、これから自分が強くなることに専念しようと思ったのである。それでいつか俺が、本当に信頼できる仲間が出来ればいいと思っているのだ。だがその前に俺は、この世界の人々を強くする方法を考えた方がいいと俺は思ったのである。

それから俺は魔王と戦う前に少しでもレベルを上げておきたいと思ったので俺はこの世界の中でも危険とされている場所でモンスターを倒す事にした。俺はいつものように、アイテムボックスの中に武器を取り出そうとしたが、なぜか取り出すことができなかったのである。その事からもしかして、魔王は俺が手に入れた道具のほとんどを奪ってしまっているのだろうか?もしくは、この世界の人々の中にその力を持っている人物がいるかもしれないと考えたのである。どちらにせよ、俺は魔王に対抗する為に仲間が必要だと考えたが俺の仲間になりそうな人物を全く見つける事が出来なかったのだ。

そこで俺は一度街に戻って仲間たちと合流することにする。しかしそこには俺のことを仲間にしてくれる人がいなかったのである。なぜなら俺と一緒に戦うのを怖がっている者が大勢いたからだ。そんな彼らと仲間になることを俺の方から諦めることにしたのである。

俺が一人で街を出て行く時、誰かに声をかけられたような気がしたが俺は気づかないふりをしていた。何故ならその相手が俺と一緒の気持ちを持っていたら一緒に戦いたいという申し出をしてきた可能性があるからだ。だけど俺はそう簡単に信じることができない。もしその相手が悪者であって俺に何かを企んでいる可能性も考えられる。そして、俺は魔王との戦いが終わるまで仲間を集めることを諦めることにしたのである。それから、俺は一人で魔王城に向かうための準備を始めようと考えていた。なぜなら俺はもうすでに魔王の目の前にいるようなものだからである。

それから数日が経った頃。俺とソフィアさんの二人きりで魔王と対峙することになった。この日のために俺はこの世界を平和にするべく旅をして来たといっても過言ではない。俺達はお互いの想いを確かめる為なのか自然と見つめ合っていたのだ。

「やっとあなたに私の全てを託すことができます。」

彼女は俺に話しかけてくるが俺はそれを無視して魔王と向き合ったのである。俺は魔王に向かってこう宣言してあげたのだ。

「悪いがこの世界を俺が平和にしてやる!」

「貴様如きにそんなことができるはずがない。私を倒してもこの世界を変えることはできない!私は魔王なのよ。そんな私が負けるわけなんて絶対にありえない!」

「俺がお前を倒すんだ!この世界にお前はいらねえんだよ!」

「お前に何が出来るというんだ?お前はこの世界に来たばかりの新人ではないか。そんな存在にこの世界をどうにかできると思っているのか?」

「ああ、出来るさ!」

こうして魔王との最後の決戦が始まったのである。俺はすぐにソフィアさんを連れてその場から退避する。そしてソフィアさんは俺の背中を守るようにしながら攻撃態勢を整えていた。

そして俺達が動き出したと同時に、魔王から放たれた攻撃により、魔王城が崩壊する。だが魔王の圧倒的な力で、魔王城は崩壊をせずにその場で維持することができたのだ。魔王はその事を確認して再びこちらに攻撃を仕掛けてきた。だが俺はそれを全て無効化したのだ。それを見て魔王が動揺し始めた。それはまるで、予想以上の力を俺が持つようになったことを理解し始めて恐れを抱いたように見えたのである。だから、俺はこの好機を利用して魔王を攻撃することに決めた。しかし俺は魔王に近づくことが困難だということに気付いたのである。それはソフィアさんの存在だ。彼女が近くにいることで、魔王に攻撃を当てることが出来なくなっていたのである。

そこで俺は、彼女の協力を得るために彼女に対して声をかけることにした。俺はソフィアさんと話がしたいと魔王に言ってみると魔王はすぐに俺の話を聞く姿勢を示してくれた。ソフィアさんは俺と魔王の戦いを見ながら何かをブツブツ呟いていたが、俺は魔王の言葉に集中していたのでソフィアさんの声が俺の耳に届いてこなかたのだ。そして俺は、ソフィアさんに協力を求めることに成功したのである。ソフィアさんが了承してくれたことで魔王の隙を作ることができたのだった。

俺が彼女に魔王の攻撃を全て防ぐと提案すると、俺の提案にソフィアさんはとても驚いていた。

だがそれでも俺は、ソフィアさんに頼んで魔王の動きを止めるように指示したのだった。俺はその間を使って一気に距離を詰めていくことにした。しかし俺が一歩動く度に地面が陥没していく。そのため、俺が地面に足を踏み込むだけで大きな音が出てしまうのである。だから俺は魔王の足元に向けて攻撃を放つ。それによって、俺は少しの時間だけ魔王を牽制することに成功したのだ。その間に俺は、さらに速度を上げて魔王に近づいていく。

魔王との距離は目と鼻の先といった距離まで近づくことに成功し、そこで俺は初めて剣で攻撃をしたのだ。

俺の一撃を喰らった魔王はその場に崩れ落ちるようにして倒れる。だが俺はそこで追撃を止めなかった。そのままの状態で魔王の心臓部分に向けて全力で剣を振り抜いたのだ。俺の攻撃を受けた魔王は完全に意識を失いかけていた。だから俺はトドメをさすために、聖属性魔法の最上位魔法を発動させた。その魔法は、魔王を完全に滅するために存在する最強の魔法だと言われているのだ。俺はそれを発動させてからすぐに魔法を放ったのだ。その結果は成功となり、一瞬のうちに光り輝く球体が出現したのである。俺はそれを確認したあとすぐにそこから離脱しようとしたのだが魔王から目を離すことはできなかった。だがその時の俺の行動によって俺は窮地に陥ってしまうことになる。それは突然現れた黒い影が魔王を覆い隠してしまったのだ。それにより俺は魔王を逃がすことになってしまう。しかし魔王の気配が完全に消えていることを俺は感じ取っていた。だから俺は、ここで安心してしまったのである。それが命取りとなる。俺はこのタイミングで完全に油断をしてしまっていたのだ。だから気付くことが出来なかった。

俺が視線を戻した時には、もう手遅れであった。その瞬間。俺は胸が痛くなるような激烈的な痛みに襲われることになった。その原因を探るべく自分の胸に目を向けた俺は自分の体を真っ二つにされていることを理解するのと同時に、目の前が暗くなっていく。

だがそこで一人の人物が視界に入ることになる。それは俺の大切な仲間の一人だと思われる少女の姿が目に映ってしまったのだ。その姿を見てもなおも、俺の心の中に余裕が残されていた。なぜなら彼女は、魔王の手下である死剣士だったのだ。その人物は、今まで俺と戦っていた敵であり魔王軍の幹部でもあった人物である。つまり俺はこの人物にやられたことになるのだ。だからこそこの程度の怪我で済んでいるということは俺は、運が良いと思うべきなのだと思う。そうでなければ今頃、魔王軍に捕まっていた可能性が高かったからだ。俺は、魔王を倒すことが出来たのかわからない状態でこの世から消えることになっていただろう。しかし俺は、最後に魔王を倒すことに成功したと思うのだ。だってその証拠として俺はこの世界で一番強いはずの人間を倒したのだ。俺がこの世界に来て一番最初に倒した人間が、魔王だとわかっただけでも収穫である。だが今はこの状態を維持することに集中するしかないようだ。そうでもしなければ俺は死んでしまうからだ。だが俺はこの時ある事に気付いていたのである。

俺が死んだ時、俺の中に封印されていた力の一部が解放されるのを俺は感じ取ることが出来た。だが俺は死ぬわけにはいかないので、俺は残された力を使い果たしてしまい気を失ったのである。

俺の名前は、山田太郎である。ごく普通の平凡な高校に通う学生だった。そんな平凡を絵に描いたような俺はある日を境にこの世界に転移させられて勇者になってしまったのだ。そして俺は魔王を討伐する旅に出ていたのである。

俺の仲間は一人しか存在しない。それは俺よりも先に異世界に召喚されてしまった幼馴染みの『佐藤加奈子』だ。俺達は元々、恋人同士だったが俺達が異世界に行く時にお互いに違う世界に住むことになってしまっていた。だからお互いの再会を楽しみにしていた。

俺はその事を思うと、心が躍るようにウキウキしてくるのを感じるようになっていた。俺の好きな人と一緒に冒険することができることが嬉しかったからである。しかし彼女は魔王にさらわれてしまっていて、未だに発見できないでいる。その事を考えただけでも、イライラが止まらなかったのだ。

それに俺と彼女の関係は良好とは言えず、喧嘩ばかりだった。俺達は性格が全く合わなかった。しかし俺は彼女を愛しており彼女と仲良くなることに一生懸命だった。それはなぜか?答えは非常に簡単な話になる。俺が魔王を討伐したら結婚しようと約束を彼女にしていたからだ。だからこそ、俺が絶対にこの世界から魔王を消してあげたいと思っていたのである。俺はそう思って、ひたすら魔王を倒し続けてきたのだった。

そんなある日のこと。魔王をようやく倒すことに成功した俺の前に突然、白い髪に紅い瞳の美少女が姿を見せた。その顔はどこかで見たことがあると俺は感じた。その女の子の見た目は、とても可愛い。だがそれ以上に俺はその子の服装が気になったのである。

その女の子はメイド服を着ておりしかもスカート丈が非常に短くて生脚が見えてしまっているのだ。そんな姿を目の前にして、俺は思わず顔を赤く染めてしまう。だが目の前にいるその子が俺に抱きついてきてキスをしてきたことによって、俺はさらに動揺することになった。その子はまるで俺が大好物である食べ物を食べるかのように何度もキスを繰り返ししてきたのである。俺はそんな彼女にドキドキしながらもなんとか耐えることに成功する。なぜなら俺は勇者だ。こんな場所で興奮して鼻血を出したなんて知られたくはないからね。だがこの子の行動がどんどん過激になり始めて俺は限界を迎えそうになったのである。しかしギリギリのところで俺は踏みとどまる。だがそんな俺の努力を無駄にするかの如く、彼女はとんでもない事を口にしたのだ。

「あなたの全てを貰うわ!」

俺はそんな意味のわからない言葉を言われたことで頭の中で混乱したのである。

俺がその言葉の意味を考えていると、彼女はいきなり裸姿になろうとしていたのだ。俺はその姿を見続けることができなくて彼女の肩に手を置いて止めに入った。だがそんな行為すらもこの子の誘惑は俺を堕とそうとするかのようで俺はどうしようもない状況に追いやられていく。そんな時、彼女の体が輝き始めた。それと同時に俺は、自分が何をしようとしているのかを思い出したのである。それは俺の体に眠る力を目覚めさせることだ。俺はそれを自覚するとすぐに行動に移していった。俺がこの世界にきて身に付けた力とは一体何なのだろうかと考える。この世界では聖属性の魔法を扱うことができるのは、一部の選ばれた人達しかいない。そしてその者達は勇者と呼ばれていた。俺もその一人ではある。そしてこの世界にはまだ聖属性魔法を極めていない者がたくさんいたのだ。しかし聖属性魔法の使い手は、非常に数が少ないことから俺は聖属性魔法を極めたものこそが真に勇者になれると思っている。だから俺のように、勇者になれなかったものが真の勇者を名乗るのはとてもおこがましいと思った。だけど聖属性魔法の極意を体得することに成功できた者は、聖剣に認められると言われている。俺はこの世界で最強と言われる聖剣を持っているからこそ俺は聖属性魔法の極致に至ることができたのだ。

だからこそ俺はこの世界に存在する聖属性魔法の使い手を聖剣が認めた者と俺は考えていた。その条件をクリアしている人は今のところ一人だけ存在していると言われている。それが今、俺の目の前で輝いている女性だった。俺が彼女に触ることで俺はこの女性が勇者であることに気がつき彼女を助けることにしたのである。俺は彼女を救うためにある魔法を使うことを決意した。それは、この世にまだ存在していない魔法であり俺は偶然にもこの世で唯一使うことができる魔法であったのだ。それは『蘇生』の魔法だ。俺はそれを使用することを決意する。しかしここで問題が発生した。俺は『蘇生』という最上級回復魔法の発動方法を全く理解できていないということだったのだ。そもそも上級回復のやり方さえわかってはいなかった。それどころか下級、中級の回復魔法でさえまともに扱えないのである。だから俺は『蘇生』を使うことができずにいた。するとその時だった、俺の脳裏にある記憶が蘇ってきたのだ。

俺はこの世界で初めて目覚めた時に不思議な声を聞くことになる。その声が聞こえたのは俺だけで他の仲間達は誰も聞くことができなかったらしい。だから俺が幻聴ではないかと思っていたのだ。しかしその声を聞いた瞬間に俺はこの世界の仕組みについて知ることになったのである。その情報によれば、魔王を倒さない限り元の世界に戻れないと言うものだった。つまり俺はこのままの状態で元の世界に帰ることは出来ないということになる。だからその事実を知って絶望するのだが、魔王を討伐しないと戻れ無いことは間違いないのだ。だから俺は、仕方なく魔王討伐の旅を続けることにしたのだ。

それから俺のこの世界での生活が始まったのだが最初の頃は、特に困ったことはないかった。魔王軍の動きは活発化し始めていたのは、知っていたのだが、その事についても俺はさほど気にしていなかったのだ。魔王が何かをする時は決まって世界に大きな災害が起きることが多かった。それは過去の経験からしても、その通りの出来事が起こっているからだと言えるだろう。しかし今回は魔王の行動が原因では無いようだったのである。それだけではなくて魔族の動きも活発になっていることを魔王軍は知らないような行動を取ってきてもいたからだとも言えるかもしれない。

しかし俺には一つだけ心当たりがあったのである。俺にはもう一つだけ特別なスキルを与えられていたことを俺は思い出したのであった。その特殊なスキルの名は、全知全能の知恵というものになる。その名前の通り俺は全てのことを知識で知っているのだと思っていたのだ。そして俺は魔王軍の情報を詳しく探ることにしたところ驚くべき情報が手に入ってしまうことになる。だが俺もそこまで馬鹿ではない。そんな俺に魔王軍が近づいてくるのは時間の問題だということはすぐにわかるようになっていたのである。

そこで魔王を倒すために俺は作戦を立てることに決める。だが俺には問題があったのだ。この世界の住人は基本的に弱い。その理由はこの世界の人々は魔力が少ないからである。そのため身体能力が高くなければ魔法もほとんど扱うことができない者が大半なのだ。だから必然的にこの世界ではレベルの高い人間が重宝されるようになるがその分、その人達を守る力のある人間は、かなり限られてしまっていた。それは俺達の世界で言う警察にあたる組織が存在するのだが、その役割はかなり薄いものであったのだ。だからこそこの世界の人々が自力で自分を守るための手段として考えられたものが格闘技や剣術だった。

そんな俺がなぜこの世界に来てすぐの頃はその事に気がつかなかったのか?それは俺が、魔法が使えたことが一番の原因になるだろう。俺には聖属性以外のすべての魔法を扱うことができた。しかも初級から超級までのすべてのレベルの魔法を全てである。そんな事ができる人間が普通にいていいはずがないのだ。

だからこそ、この世界はそんな俺に対して、この世界の人々には到底不可能な要求を俺は課せられてしまったのだ。そしてその事が今の状況を作り出した原因の一つでもあったのである。

俺はそんな世界を救う救世主として、魔王討伐を強制的に行わせられていたのである。

俺はそんな世界を救う為に選ばれたのだと周りからは期待されているみたいだった。しかし魔王討伐に失敗すれば待っているのは無残な死に様だけである。だからこそ俺の心はいつ死んでもいいように心構えをしておかなければならないと常に思い続けていたのだ。

そしてその俺の前に現れた勇者は俺が今までに会ったことのないほど美しい少女だ。その美少女がなぜかいきなり服を脱ぎ始めて俺に迫ろうとしていたのだ。俺は、そんな状況でもなんとか我慢していたのだ。そんな俺を見て彼女は、俺のことを欲情する気持ちを抑えることのできない男だと判断したのか俺に抱きついてきたのである。

俺は、そんな彼女が自分の欲望を必死で抑え込んでいることにまったく気づいていなかった。俺の心臓の鼓動が早くなっていたせいでもある。だがそんな状態が少し続いていたら突然彼女の体が輝き出したのである。

そんな現象を見た俺は驚いてしまい思わず固まっていたのだ。そんな俺を彼女は抱きしめて、そのまま意識を失ってしまったのであった。

俺はしばらく気絶している彼女のことを見ながら呆然と立ち尽くしてしまう。だがそんな状態でいると後ろから突然話しかけられたので、俺はすぐに振り返る。するとそこには俺の仲間達が立っており心配そうな顔で俺のことを見つめている。

「お前が助けたのか?」

「はい」

「そうか、それは良かった。だが、まさかこんな所で勇者と出会うとはな、だがこれで俺達は安心して進むことができるようになった。だがその前にお前に紹介しておこう。この子は、勇者レイシアと言って俺たちと一緒に魔王を討伐する仲間の一人だ。レイは見てのとおり戦闘があまり得意じゃない。だが、その代わりに回復と支援魔法を得意としていて、さらに補助系の能力に特化しているんだ。それからもう一つ、この子の固有武器は杖型の聖剣エクスカリバーなんだが、これの能力が特殊すぎるため、勇者専用武器とされている代物だ。だがレイの実力は本物だぞ。俺が保証するからそこは信じてくれて大丈夫だと思う。それと俺の名前はアルクって言うんだけどこれから長い付き合いになるとは思うけど、よろしく頼むよ」

俺はその話を聞いた時に俺は驚きを隠せなかった。だがそれと同時に納得できることがいくつもあったのである。この世界では勇者が聖剣に選ばれれば聖剣の力を使うことができると聞いたことがあった。だけど俺は実際に見たことがないので本当かどうか怪しいと最初は思っていたのだ。しかし彼女の行動は確かに、勇者にしかできないことだと言えると理解することができたのである。しかしそれでも信じられないことがある。それは、勇者の称号は女性しか与えられないという事だったのだ。それなのに彼女の名前は男性のそれと同じである。だから俺は彼女に聞いてみることを決める。しかしここで一つ疑問が生じてしまうのだ。

それはこの世界での性別は一体どうなってしまっているのかということだった。俺はそのことを考えてみると一つの答えが出た。そしてそれを確信に変える為に俺は自分の持っている聖剣を確認することにした。俺の持っていた聖剣は聖剣エクスカリバーと言う名だった。

その言葉を聞くだけでどんな効果があるのか簡単に予測できる。聖属性の力を扱うことができる聖属性の聖属性を持つ唯一の存在なのだ。その聖属性の力であらゆる敵を殲滅することが可能になり聖属性魔法が使える者は聖属性魔法を使うことが出来るのである。その聖属性魔法の使い手はこの世に数人しかいない。その貴重な人材の事を勇者と呼ばれている。

しかし勇者の中でも最強の勇者と呼ばれる者は一人しかいないと言われている。それこそ聖剣に選ばれた勇者の中の聖剣に選ばれた勇者である勇者エクスカリバーの事を指す。しかし、そんな勇者の事を詳しく知る人間はいないのだ。何故なら勇者は、自分が聖剣に選ばれているという事実を知らないまま生きているからだと言われている。しかしそんな勇者にだけ存在する力が存在したのであった。それは、聖女である聖女の素質を持った女性だけが使うことのできる特別なスキルだと言われているのだ。

この聖女という職業についてはよくわかっていない。聖属性魔法を使いこなして、聖属性魔法の扱い方を熟知した存在に与えられるという職業なのだが、そもそもその存在自体が謎に包まれた存在であったのだ。だからその真実を知っている者はほとんどいない。それに加えて俺が知っている限り聖属性の高い魔法を使う事が出来る人物の中にそのスキルを使う者がいるということだったのだ。それが俺の仲間である、勇者であり回復魔法を使うことができる白衣を身にまとう美少女のレイだと言われたら誰も疑いようのない事実であったのだ。そしてそのレイの母親が聖女だったという事もこの事から判明した事実である。だからこの二人は血の繋がりがある親子で俺達の仲間になったのだということもわかったのだ。

そのおかげで俺はレイの母親に確認を取ることができてしまい俺は、もう信じるしかないと思っていた。だがそこで俺はまた問題が発生をしてしまったのである。俺は今の状況が非常にマズイことになっていることを自覚し始めたのだ。俺は目の前にいる勇者を助けようとした時に誤って彼女を押し倒してしまい床の上に転ばせてしまったのだ。その結果彼女を抱き抱えていた腕を離すことができなくなり俺はそのままの体勢を維持し続ける羽目になってしまう。

しかし、その事が恥ずかしかったのか俺から離れた彼女は顔を赤くしたまま無言の状態になってしまっていた。

そして、俺はその沈黙を破るべく何とか言葉をひねり出して彼女に話しかけることにしたのだ。だが、何を話せば良いのかわからず戸惑ってしまう。俺達はお互いのことについて話すことになりとりあえず俺達は自己紹介することになった。俺はそのタイミングで彼女がまだ服を着ていないことをようやく思い出すことになる。そのことに気づいた俺は自分の服を脱いで彼女にかけてあげようとするのだが、彼女は服をかけてもらうのがとても恥しかったのか俺の行為を断り始めたのだった。俺はこのままではまずいと判断すると、強引にでもかけてやろうと思ったら彼女は何故か素直に従ってくれて無事に着替えることができていた。しかしその時にも彼女は頬を赤らめたままだったのだ。そんな感じだったので俺は何か気になる事があれば遠慮なく聞いてほしいとお願いしたのだった。

そして俺達の方からもお互いにいろいろ質問していくことになったが、そこで彼女は、勇者として旅をしている理由を教えてくれた。その目的はこの世界に蔓延る魔物達を倒し、人々を助けるための旅をしていると言ったのだ。そこで俺達はお互いのステータスを確認し合った結果で驚くべき事実が判明する事になる。なんと俺の種族が魔人族になっていたのである。しかもその事に彼女は気がついていなかったのだ。そして俺自身も知らなかった事で、俺達は二人で顔を見合わせて驚くことになる。俺達がそんな状況に陥ってしまうような出来事と言えば、魔王にこの世界へと連れてこられた時ぐらいなものである。だから彼女はそのことを思いつき魔王の仕業だと推測をしていたのだ。

それから俺も彼女が俺のことを魔王ではないかと怪しんでいるのではないか?と考え始めるのだが、その事に関して特に気にしていないのかそんな雰囲気を感じ取ることができないのだ。俺は彼女が勇者だと証明してくれるものがないかと考えてみた。そして聖剣を持っている事を思い出したのだ。だから、その事を尋ねると彼女が勇者であるという事を証明するためにその剣を見せてくれることになった。

その事を確認した俺と勇者一行は次の目的として、俺が仲間に加わったことで新たなる仲間としてレイを加えて俺達の仲間として共に行動する事になった。そして俺がなぜ、この国にいたのかを説明しなければならないとレイと俺は二人きりになれるように他のみんなには部屋から出て行ってもらっていた。俺達が、この世界に来た時の事を話すことにしたのだった。しかしレイにはその説明をする必要はなかったようだ。

なぜならレイはその時に母親と共に転移魔法陣によって飛ばされたらしいからである。しかし俺達はその話を聞いていたので俺は驚いたふりをする事を忘れずにしておく。それから俺が、勇者がこの世界にやってきた経緯についても説明を始めた。そして俺は、この世界を救いたいと本気で思っているのだと真剣な表情をしながら伝える。

そんな風に勇者と話し合っている内に俺達の間には不思議な連帯感のようなものが生まれてきたのである。勇者が、聖剣を使って仲間とともに戦う事ができるようになるのはいつになるのだろうと考えている間に勇者の方から俺に尋ねてくるのである。俺とレイはしばらくの間この家で特訓をすることになった。勇者はレイと二人きりになりたいと言い出してきたので、俺はその言葉に了承して彼女と勇者を俺の部屋に置いてきたのである。俺達が戻ってくるとそこには勇者とレイが抱き合ってキスをしているところだったのだ。いきなりのことだったため俺は慌てて止めに入ることにする。しかし、そんな状況を見ていたら俺の心はなぜかモヤッとしていたのだ。それに気づいた俺はなぜかわからないがイライラしてしまう自分を止める事ができなくなっていたのだ。だからレイに八つ当たり気味になってしまったのかもしれないが少しキツくあたってしまい後悔をしてしまうことになる。そしてこの国の勇者であるレイシアと別れたのであった。

レイは俺のことを仲間だと思っているみたいだったが正直言って俺がこの世界の勇者であることに対して疑っていた。その気持ちを誤魔化しきれていない様子だったので、そのことに関しても俺は謝ったのだ。それからすぐに俺はあることに気がつく、俺がこの異世界に来ている事はおそらく魔王がこの世界に連れてきているということがわかってしまったのである。だからこそ、俺は急いでレイと一緒にいる必要がなくななったのだ。だがここでレイを置いて行くのは非常に心苦しかったため、しばらくの間はこの家に一緒にいてほしいと頼んだ。レイもその提案に賛成してくれていたので、俺はホッとする。

それから俺が魔王にこの世界に連れて来られていることを知った勇者レイから「貴方はこの国にとって救世主なのでは?」と言われて俺自身が困惑していたのである。俺はレイのその言葉が信じられなくてその事を彼女に問いただしてみると「それはどういう意味なのか?」と聞き返されてしまったのだ。

そんな事を聞かれてもどうすればいいのかが、わからなくなってしまった俺は困ってしまう。俺は、俺の本当の姿が魔王であることを知られた場合に俺がこの国に危害を加えないということを信用してもらう為の方法を考えついたのである。それは、レイと二人でこの王城から抜け出すことを考えたのだ。そして俺はレイを連れて逃げ出そうと決めたのだ。だがそんな時レイは、「貴方は一体何者ですか?」とその疑問を投げかけられて俺は、俺は、俺は俺は、俺自身の正体を隠すために、その問いかけに対して適当にはぐらかした。だけど勇者である彼女にはそれが通用しない事を俺は知っていて隠し通せるのかを不安に思ったのだ。だから俺は、自分が人間じゃないという嘘をつくことをやめる決意をした。しかしそれならばどうしたら、この事をうまく説明する事ができるのかという難題を突きつけられてしまう。

そして俺はそんなに悩む必要はなくあっさりと答えが見つかってしまったのだ。その方法は、勇者の事をレイが信じなかったのと同じように勇者の事を俺も全く信頼できなかったのだ。その考えが浮かんできてからは勇者の事など完全に放置していれば勝手に俺達の前から消えていくだろうと判断したのである。勇者が何をしようとしても、絶対に俺は協力はしない。その事を改めて決心してから、勇者に別れを告げて俺はレイと共に王城を後にすることにしたのであった。

俺は、レイに自分が実は人間ではない事を告げる事にする。そうしなければ俺はこの先も、ずっと勇者に命を狙われることになるからだと考えたからだ。しかしそんな俺の考えとは関係なく、彼女は俺の言葉を聞いてくれて、受け入れてくれようとしていたのだ。俺はそんなレイを見て、俺が思っていた以上に俺が想像したより彼女は、精神的に強くて頼りがいのある存在だったと思い知らされることになったのである。それからレイは俺が勇者の味方だというのなら私にとっても仲間であるはずだと言っていたので、俺は彼女が勇者だと知るまでは敵では無いと思っていたけど今は違って勇者であろうと俺が味方である事に変わりはないと言ってくれたので、その事が凄くう嬉しかった。だが俺の正体を知ってからもレイだけは変わらず俺に接してくれるのかどうか不安になってしまう。それでもレイに俺は俺を信じてもらえるように精一杯努力をしようと考えたのである。

そしてその日の夜、俺と聖女リゼッタさんに新しい仲間の剣士の女の子の三人で食事をとる事になったのだ。その時には俺達はお互いに打ち解けることに成功していたのである。しかしそんな中で聖女リゼッタさんの年齢を俺は知りたくなり質問をしたところ彼女は「女の秘密を聞くのはよくありませんよ」と微笑みながら俺のことを見る。俺はそんな彼女の姿を見た時に一瞬ドキッとしたのだが、それと同時に彼女の大人っぽい笑顔が俺にはとても魅力的に見えてドキドキしていたのである。そんな感じに俺達は楽しく話をしていたのだが突然にレイが自分の母親が現れたと言うのだ。その言葉に驚いていた俺はレイの母親に会わせてもらう事にする。その女性は、やはり予想通り聖女の職業についていたのである。その聖女はレイのことを心配しており聖女の力で勇者レイの力になれるよう手助けしたいと思っている事を俺に伝える。そんな話をしている間に俺とレイの母親が仲良くなり始めていき最終的に二人はお互いを名前で呼びあうほどの仲良しになる。そしてそれから俺とレイの母親が俺のことも気に入ってくれたみたいなので俺とレイのことをレイの両親に託して俺とレイは家を出ることにしたのだ。そして俺とレイがレイの母親の案内のもと王城に向かっていく。

そこで俺は聖剣を手に入れることができたので勇者のレイの手伝いをする事を国王に伝えたのだ。そんな風に勇者のパーティーとしてこれから活動していくことになった俺達を待っていたのは今までに体験したことの無いぐらい辛い日々の連続だったのである。その日、俺達はレイの父親がいる場所へと向かうことになっていた。しかしその場所というのがレイの故郷の村だったらしく、その村では勇者が現れて人々を苦しめていた魔物を倒して、この世界を救うと噂されている。そして、勇者にこの村の人達の命を奪われる前に助け出す為に、俺達勇者のパーティーは村人達の救出の為に魔物の討伐に向かったのである。

俺達は魔物を倒しつつ村人達の居場所を探していた。そんな時俺は、魔物達に連れ去られようとしているレイの家族を発見する。俺はすぐに家族を助け出そうとするが、その途中で魔人に捕まってしまい魔人によって拷問される。しかしレイに助けられた俺はレイに謝罪をする事になる。レイは魔人を倒すのに協力してくれと頼むとレイは俺を仲間に加えてくれたのだ。しかしそんな時でも俺は、俺の大切な人たちを危険な目に合わせてしまっている自分に怒りを感じてしまい、この世界の人々を守るために戦っているレイに対して嫉妬を覚えてしまったのだ。そしてレイは、魔人のボスと戦うことになり俺は自分の力をレイに見せつける事にしたのだった。そしてレイに俺の事を勇者と呼ばせないと強く誓う。俺は、この世界を滅ぼそうとする邪悪な力を持ったこの世界の敵である。そんな俺に勇者と呼ばれる資格なんて無いと。

そんな俺に対して、レイは俺の事を本当に仲間だと思っていてくれていて、そして俺はその事が何よりも嬉しいと思ったのである。しかし、俺にはもうこれ以上この世界のために戦う事はできないと考えてしまうようになっていた。なぜなら俺は俺自身の都合で人々をこの世界の危機に陥れていることに罪悪感を覚えるようになり、その事で俺はこの世界を救うために戦うことができなくなってしまったのだ。そんな時に俺とレイの母親は俺とレイが一緒に暮らせるようにしてくれる。俺は俺達の家に戻ってくることになるが、その時にレイの母と聖女とレイの父親の3人で俺の目の前から姿を消してしまうのである。

俺はレイの家で一人で過ごすことになる。だが俺が一人になってからしばらくしてからレイは戻ってくる。しかしそのレイの姿を見て俺は驚いた。その服装がレイが普段身につけている服とは全く違う物になっていたのである。俺はそんな格好をしているレイを見ていたら胸が痛くなってしまい、俺はレイの姿を見ると泣いてしまう。

俺の事をレイは慰めてくれようとしたので俺はついレイの事を好きになったと口に出してしまうとレイは照れたような反応を見せる。そんなレイに俺は俺の方も恥ずかしくなってしまい顔を赤らめながら目を背けることになる。その俺の様子にレイは「可愛いです」と笑顔で言う。その笑顔を見て更に恥ずかしくなる俺だったが、俺の心は不思議と落ち着きを取り戻せたのであった。それからレイは自分のことを話してくれたのだ。彼女は俺の本当の気持ちを知りたいと言っていたので、俺は正直な気持ちを彼女に言う。すると彼女は嬉しそうに微笑んでくれて、それから俺の頭を撫でてきたのである。

俺はそれからレイと一緒に生活することに決まり俺とレイは一緒の部屋で暮らし始めた。だがレイの事を女性だと思っていたのでレイと過ごすのは、気を使ってしまってなかなか慣れなかったのだ。だがレイもレイの両親もそんな俺の様子を優しく見守ってくれていたのである。

それからレイの両親の事をレイはレイママと呼ぶようになり俺はレイパパと呼んでいる。レイも最初は俺の事を呼び捨てで呼んでいたのだが俺はレイに様付けをされていたのが気になって俺は俺のことを「リクさん」と呼んでほしいとお願いをしたら、レイもすぐに了承してくれて「わかりました。これからはそうしますね。私のことはレイちゃんって呼んで下さい」と言われたのだ。だから俺の呼び方が変わり俺とレイは本当の意味で仲良くなったと思うのであった。

レイの事をレイちゃんと呼べない時は俺は、まだ俺の事を勇者と呼んでいたレイと喧嘩になり、そのせいでレイが家を出て行った。だがそんな俺の元にレイの両親が来てレイが帰ってきたと伝えてくれたのだ。俺はすぐにレイが戻ってきた事を喜んでいた。

しかし、俺とレイが喧嘩した事を気にしたレイの父親が、レイとレイの母親に俺と仲直りをするように頼まれて俺は仕方なくレイの事を俺の事を「ごめんなさい」と言ってレイは許して俺もレイを許してから二人で改めて挨拶をして和解したのである。そんなレイの父親は優しい笑みを浮かべながらもどこか厳しい一面もありそうな、レイの見た目そのままの男性で、その父親によく似ている容姿をレイもしていて美人だった。その二人の夫婦はレイの事を愛しているという感情をはっきりと表現しながら、いつも微笑みかけており俺から見ていても微笑ましいと思える光景だった。そんな幸せな家族を見ていて俺まで笑顔になっている事に気付いた時に、この家族の笑顔を守りたいという想いが強く芽生えた。

そんなこんなありながら俺はレイに自分の秘密を話すことを決意する。俺はレイの事を受け入れてくれないだろうという不安もあったが、それよりも早く俺の秘密を話したくなっていたのですぐにレイに打ち明けることにした。だけど俺は勇者ではなく実は魔王であることを打ち明けたら彼女は、それでも勇者の仲間として共に戦い続けると言ってくれたのだ。俺はそれを聞いて涙が出そうになってしまうが必死に耐えた。俺はそんなに良いやつじゃないのに彼女はそんな俺のことを信用してくれていたのだ。そして俺は、自分が本当はレイのことが好きで、でもそれは絶対に隠し通す事にしていたのだと言う事を告白する。その事を言ってからはレイの反応が少し怖いと内心で思いながらレイのことを見るが、そのレイの表情からは嫌悪感を感じるどころか好意しか伝わってこなかったのである。そのことに驚いていると彼女は俺のことを抱きしめて好きだと言ってきたのだ。その言葉に俺は完全にパニックになってしまい思考が止まってしまう。そしてレイに俺は抱き寄せられてしまいキスされたのである。その時のレイの大胆な行動に俺は驚きを隠せず、さらに混乱してしまった。そして俺はその日レイと一線を越えてしまいその日の夜に俺はレイとの愛を深め合ったのだった。そんなことがありレイとの関係はさらに親密なものになったのである。そして次の日になると俺は、レイの母親に呼び出される。

そこで俺達はあることを告げられる。それは俺達が勇者パーティーだということを隠しながら勇者レイの母親についてくるように言われて俺達はその通りにする。レイの母親に連れて来られた場所は王都で俺達は王城に行く。そこで王城に入ると、その瞬間にレイの父親の姿を見た俺は驚くが冷静さを取り戻すことができたのである。しかしそこに聖剣を片手に握っている聖女リゼッタがいた。彼女はレイの母の知り合いらしくレイの父親に会いに来たみたいだった。それから俺達4人は、この王城で聖女から俺とレイの力を解放する為に、儀式が行われる事になったのである。そしてその方法は勇者レイの体を俺が傷つけて、その血を俺とレイが飲み合うというものだった。そんな方法を取るのには理由があり聖剣と俺達には共通点があった。それは、その聖剣を作り出した人が勇者の親であり俺達と同じような特殊な力を使えたことだったのだ。だから俺とレイもその方法で力が解放される可能性があると考えたのだ。しかしレイの父はそれを拒否してしまい、レイの母はそれに納得できないと言い張ったが最終的にはその方法が実行されることになった。俺は嫌な予感がしたがレイに手を取られてレイの父親の前に立たされてしまい、俺達はお互いの聖剣にお互いの血をつけるために手を重ねてしまう。その結果お互いに意識を失ってしまい目が覚めるとそこは見覚えのある俺の家だった。そしてその部屋には、なぜかレイの父親がいるのだった。俺はそこで自分の体の異変に気がつき慌ててステータスを確認したら職業が【魔王】になっていたのである。俺が唖然としているとその時にレイが起きて、彼女は聖女のスキルを持っていたのである。そのおかげでレイは聖女になる事ができたみたいなのだが俺は複雑な心境であった。なぜなら俺は魔王として生きることを決意していたからで、それが聖女である彼女の前だと尚更恥ずかしいと思ったので俺はレイの顔を見ることができなかったのだ。だがそんな時レイに「かっこいいよ」と言われてしまい顔が赤くなる。俺はそんなレイに何も言う事ができなかった。

そして俺は自分の力をレイとリゼッタに見せる事になり彼女達にその力でレイの体を傷つけて欲しいと言われてしまう。だがそんな事をしたらレイに迷惑をかけてしまうのはわかっていたので躊躇していたが、その俺の様子に気づいたレイは大丈夫だからと笑顔で言う。その言葉で俺の中の決心は決まったのである。俺はそのレイの言葉のおかげで覚悟を決めると、俺はレイの体に向けて聖属性の魔法を使いその腕に傷を負ってもらう。そして俺とレイはお互いにその血を飲み合うのだった。そのあとレイは光に包まれていきその光が収まると、そこにはレイが女神のように美しく輝いている姿をしたレイの姿が現れたのだ。そのレイの姿はとても神秘的で美しかったのである。その美しいレイに見惚れていると、俺とレイの前に突然レイの母親が現れてきて、その母親からレイと俺はこの世界を守る救世主なのだと教えてくれる。俺はこの世界の事はよくわからないままで、この世界の危機にどう対処すれば良いのかも分からなかったがレイはそんなこと関係なくただひたすら世界を救おうと前向きに考えていた。そんな姿に俺は惹かれていく。

俺はこの世界を救うのは勇者だけしかいないと思い込んでしまっていた。だけどそんな勇者にもレイのような人間もいるのだと思い知らされたのだ。それからレイは俺と一緒に旅に出ることになる。俺の事を魔王と呼んだり勇者と呼び続けたりしてきた奴らもいたが、レイだけは変わらずに勇者の仲間として俺に接してきた。俺とレイはお互いのことを勇者と呼ばず俺のことを「リクさん」、レイの事を「レイちゃん」と呼ぶようになり二人の間には今まで以上に絆が深まっていったのである。それから俺は色々な場所で戦いを繰り返して強くなり仲間も増えて、そしてついにはあの忌まわしき神を倒したのだ。

その後レイは、元の世界に帰るのではなく俺と一緒に暮らす事を選ぼうとする。その事に俺は戸惑うがレイに一緒に暮らしてと言われたので、俺は彼女とずっと共に過ごしていける喜びを感じ、そしてその願いを聞き入れたのであった。

俺の名前は勇者、俺達は異世界から召喚されてこの世界で生活することになった。だが俺達がこの国に来て、いきなり王城に連れて行かれて聖女に呼び出されることになる。それから俺達の目の前に聖剣を持って現れたのは金髪の少女で名前はリゼッタと言った。彼女が言うにはこの国の王の娘だと言う。最初は信じられない話だったが俺はリゼッタの態度に違和感を覚えてしまったのだ。俺を馬鹿にしているわけでもないのだが妙な態度で、それでいて聖女は俺の体に怪我をしてその血液を手に入れるとリゼッタは言い出したのである。俺はそれを聞いて動揺するが、聖女は俺の事を勇者と呼んで俺を逃さないように拘束してくる。俺は抵抗しようとするが、リゼッタはその力を使うと俺の体から力が抜けていくのがわかる。そして体が痺れて思うように動かせない状態になってしまう。

それから俺が動けないことを確認してリゼッタは、レイに対して傷をつけて俺と同じように血液を手に入れると言ってきたのである。俺はそんな事は間違っていると言うがレイはそれを了承してしまった。そして聖女に俺は抑えられて俺は無理やりレイに腕を切られてその切り傷に口をつけられてしまい、その痛みで俺は悲鳴を上げるがそんなことはお構いなしだった。

そのレイにできた傷口から俺の口まで糸のようなもので繋げられてしまい、そして俺はそれを飲み込むことになった。俺の意識は再び途絶えて目を覚ますとレイも意識を取り戻して俺はレイと目が合い互いに微笑みあう。そして俺はステータスを確認すると勇者のスキルが無くなっており俺は魔王の力を覚醒させた。

そしてレイの母親は、俺たちを祝福するかのように「この世界を救う英雄が誕生した」と言い出し、それを聞いたレイが困惑しながらも喜んでおり俺の方を見ると、その表情を見てレイも嬉しくなっていたのが分かる。俺は魔王の力を得たことにより俺の中にいたもう一人の俺が現れる。俺はそれを受け入れることにする。俺はこの世界をこの手におさめる為ならどんな事をしても必ずこの国を滅ぼしてやると思ったのだった。

俺が魔王になって数日が経過した。その間に俺とレイはこの国の人たちを助けながら行動しておりこの国で起こっている問題や状況について色々と情報を集めていると、この町を支配している領主が、自分の利益のためだけに民を苦しめるような行いをしているのが分かりその領主が王都の城に滞在しているのを知ることができたのだ。そこで俺はレイと相談した結果二人で城に乗り込み王と話をして問題を解決することを決めたのである。そして俺達は王城に侵入して謁見の間に向かう事にした。

俺とレイの侵入に兵士は襲ってきたがレイとリゼッタによって兵士たちは全て殺されてしまいその事に驚いた王様は、その隙に逃げ出そうとしていたのだが、その時に俺は魔剣を出現させてその力で兵士達を気絶させることにした。そしてレイと二人でその扉を開けると、そこには玉座に座っている男と側に立っていた側近らしき男が一人と護衛兵が数名いた。俺はまず初めにレイの母親に会わせて欲しいという要求をするが当然聞き入れてもらえないので俺は実力行使に出ようとする。しかしその時に護衛兵たちが襲いかかってくるがレイが剣を抜き一瞬にしてその全員を倒していき俺はレイの強さを目の当たりにした。そしてそんなレイは剣についた返り血を振り払うように剣を振るってレイに話しかけると彼女は剣を収めてしまう。

しかし俺はレイのことを止めようとして俺は彼女に手を伸ばしたが、その手を掴まれてしまう。レイはそのまま俺の手を引いて俺を連れて行こうとしたが俺はその場にとどまる事を選択した。その事にレイは驚いておりどうしてと問いかけてくるが、そんな時だった俺とレイの間に一人の人物が現れたのである。その者は白銀の鎧を身につけている女性で腰に長刀を携えていた。そして俺は彼女を見た時にあることを思い出したのである。その女性がレイの母親でレイをこの城から救い出してレイが城に戻る事を許してくれた人だった。レイもその人の名前を思い出してその名前を口に出すと彼女の方もレイの事を知っているみたいで、レイに「元気そうね」と言葉をかけたのだ。俺は二人の会話を邪魔しないようにと大人しくその様子を見守っていたがその途中で聖剣を持っている人物が近づいてくるのが見える。その男はレイの父親である勇者であり彼はレイの父親だけあってかなり強くそして勇者として相応しい雰囲気を持っていた。

それから勇者は俺達の前で膝をつくと「私はレイの父です。そして貴様ら二人がなぜこのような場所に現れたのかはわかりませんが、その力は本物のようでした。それに先ほどの戦いを見ていてもその力の差が歴然なのが分かってしまいました。それに貴方は私の大切な娘を救い出していただき感謝します。そしてどうか私達の力になり協力してほしいと心から願っております」と頭を深々と下げて頼んできたので俺とレイも慌てて同じように頭を下げて頼むのであった。

それから俺は聖剣の事で聖女とレイの父親と話をすると、聖女もレイも聖剣に興味がないと言う事だった。しかし俺は聖女に聖剣を渡すと何かに利用できそうだと俺は思っていたが、レイがそれは危険だと言うので聖女から取り上げる事を断念してしまう。そこで俺はレイの父親が聖剣を持つと聖剣が反応したので俺は慌ててレイの父親に聖剣を手渡すと彼の体は発光し、その光が収まると聖女の体よりも大きなサイズの剣に変わってしまっていたのである。その出来事に驚きつつも俺とレイと聖女の三人でその剣に名前をつけようということになり、レイと俺の意見が一致してレイが聖属性の剣だから「セイムセイバー」と名付けて聖女の方はその剣の色的に「セイリュウ」と名付けた。

それから聖女の父親が俺に聖剣を渡してきてくれと懇願してきたが俺は聖剣を受け取ろうとしたが、聖女は自分が持つといいだし俺は仕方なく聖女に聖剣を持たせると、聖女はなぜか満足そうな顔をしていた。その後俺とレイは王都の城を出ることにし、レイはレイの母に会いに行くと言いだして俺も一緒について行くことにする。レイの母は王城に囚われておりその事を聞いたレイは母を解放しようと決めたのだ。

俺はレイと共にレイの母親がいるであろう場所にたどり着くがその場所は誰も近寄れないような結界で覆われていたので俺の出番だと思い俺はその中に入ることを許可してもらったのだ。俺達はレイの母親の所までたどり着いたのだが、その女性はまるで女神のように輝く容姿をしていた。その事からレイはレイの母親が人間ではない存在なのだと悟った。レイが言うにはこの女性は「レイヤ」という名前らしくこの世界で最強の種族と言われている「エルフ」だという。俺はまさかこんなところで伝説の存在に出会うとは思っていなく、俺はレイの母親である「レイ」のことを見てみるとレイは少し悲しそうな雰囲気を出してレイヤを見ていた。そしてレイはレイに対して謝った後に「ごめんなさい」と言っていたのである。

その後レイはレイヤさんに対して今までのことを話してくれた。実はレイは自分の事を母親だとレイヤさんに伝えたかったみたいでレイはその事を言おうとしていたらしい。だが俺達がこの国に来たことでレイは言い出せずにいた。だけどそのせいでレイヤさんはレイの事を自分の子だと思っているみたいで俺に頼み事をしてくる。レイヤさんの頼み事を承諾した俺にレイは泣きついてきたので、レイの肩に手を乗せてレイを安心させようとした。だが俺にはそんな事はわかっているのだ。このレイは俺が知っている方の「レイ」なので、この世界のレイの母親は別にいるのだ。この世界には他にもたくさんの世界がある。そしてそれぞれの世界でレイの母親は別の人間である。レイの母親が違うということはその世界に必ずレイが転生しているわけではないということだろう。このレイの母親はどうやらこのレイの母親である「レイヤ」とは違う「レイ」で間違いないだろう。このレイの母親は俺の事をレイと勘違いをしてレイとレイの母親が再会できるようにしてくれないかと言ってきたので俺は了承して俺とレイの二人をこの部屋から追い出すためにレイが魔法を使い強制的に外に出されてしまう。

俺はすぐにその魔法の解析をして解呪しようとするのだが、その時に俺は何者かの襲撃を受けて戦闘状態に入った。そして俺はそいつが誰なのかを確認するとその正体はさっきまでいた城の謁見の間で玉座に座っていて俺たちと戦おうとしていなかった勇者だったのである。

そして俺に向かって剣を構えて攻撃をしかけて来たためそれを魔剣で受け止める。勇者が繰り出してくる斬撃はかなりの威力があった。普通の人間が喰らえば一刀両断されかねないくらいのものだったが、それでもまだ俺の方が強かった。その事を実感してから俺と勇者との一騎討ちに発展する。そして俺は戦いの中で勇者と話すことにする。

「おい! あんたの名前はなんていうんだ? そしてなぜ俺に戦いを挑んでくる?」

俺の質問に勇が答えてくれるはずがなくただひたすら俺に攻撃を加えて来るだけだった。そのため俺も攻撃に転じて攻撃を仕掛けるとその一撃がかなり強力なものになっておりその事からも目の前の勇者は俺よりレベルが高いという事がわかった。それから俺と勇者は互いに譲らない激闘が繰り広げられたが決着がつかなかった。

俺はそんなに長い間戦う気はなかったので一旦距離を取る事にした。俺は俺で自分の力がどこまで上がるのかを知りたいと思い試してみる事にしたのである。まずは自分に強化魔法をかけようとしたが、この世界の人間は魔法が使えるのでそんな物は使わずにそのまま身体能力だけで挑む事にした。俺はステータスを確認したが数値に変化はなかったけど、身体中の痛みは消えている。俺もスキルを使えばもっと楽にできるのだがこの世界の人たちが持っているスキルはあまりにも強すぎるので使えないと思ったのだ。

それから俺は勇者の攻撃を避けながら観察を続ける。すると相手も俺と同じように強化系の術を使っているみたいだった。俺はこの世界でも勇者と同じ力を使うことができるのだと思うと俺は心底この世界を恨めしく思ってしまう。

俺はそれからしばらくの間は勇者と戦い続けた。その時に俺達はお互いに本気になっていない事に気がつきながらの戦いになっていた。俺の実力は確実に上がっていることは確認できて、勇者の動きを見てもわかるようにかなり動きが良くなっているのが確認できる。それに比べて俺は未だにダメージを受けておらず余裕のある行動を取っていたが、逆に勇者の方は俺に攻撃を受けない代わりに傷が増えていって徐々に動きが悪くなっていたのが分かった。その事から考えても恐らく勇者はもう限界が近いのではないかと思われる。そこで俺はある作戦を実行する事を決める。それが相手に勝つことよりも自分が楽しめる方法だったからである。そして勇者に仕掛けようとした時にある事が起きた。それは俺との戦いで負傷したレイヤという女性から発せられた魔力を感知したためだった。それでその女性の様子を見て俺はこのレイがこの世界に存在している人物ではないことを確信したのであった。この女性から感じ取れる波動のようなものが明らかに違ったのだ。この女性が本当にあの「レイヤさん」だとするならば、俺は「レイ」としてではなく「佐藤健斗」として接しようかと考えていたのである。

そう思いながらレイを見るが、今の状態のままでは「セイヤ」に迷惑をかけるかもしれないと悩んでいる様子だったのでとりあえず俺はセイムセイバーとリゼルを呼び出すとレイを連れて俺の後ろに避難するように伝えてレイはおとなしく従うが、聖女はセイムセイバーに警戒心をむき出しにしていつでも剣を振るえるように構えていた。そしてレイはレイヤさんの所に行きレイの事情を説明してくれていた。その後レイヤさんがなぜレイにそこまで親身になってくれるのかはわからなかったが、俺にお礼を言いたいからとレイと一緒に俺の前にやって来た。

俺はそんな事を言われても何のことだかわからなかったから俺は首を傾げてしまうがレイの表情は真剣な物だった。その事から俺はこの人には何か重要な話があるのだという事を感じて聞く体制を整えたのだ。そして俺は彼女の口から信じられないことを聞いてしまう。

彼女の話では自分は神なのだが俺の世界に召喚した「レイラ」が自分の子供ではないことが発覚するとすぐに彼女をこの世界に連れてきて、俺の妻の一人に加えることにしたそうだ。彼女は最初こそ抵抗したが最終的には受け入れて、それ以降レイヤはこの世界で生きていくことになった。そしてレイと出会ってからは彼女を守るべく聖女の力を借りるためにレイに協力を求めた。そしてその後しばらくしてからレイの妊娠が発覚した。その時に俺はレイヤは俺をレイと勘違いしていたためにレイに対して申し訳なさそうな態度をしていた理由を知る。しかしレイは別に自分の父親がレイヤでなくてよかったと思っているみたいなのでその事で彼女が悲しまないようにフォローをした。

ただこの時に一つだけ疑問が残る事がある。どうしてレイとこの人が結婚したのか? という事についてだ。その理由を本人に聞こうとした瞬間俺の腕輪に連絡が入りその内容はレイの両親が目を覚ました事を知らせるものだった。そしてすぐに俺達の前に現れるとセイヤとレイヤは感動の再会を果たしたのである。

俺とレイヤの会話中にレイの父親であるセイヤはレイの母親が目覚めたことに喜びを感じていた。そしてセイヤに俺は感謝された。それからセイヤがこの世界の状況を説明した後、セイヤの口から衝撃的な言葉が飛び出したのである。それは俺達がレイの父親に頼まれたことでもあったのだ。セイヤの話を聞いた俺達は驚くが、その話を聞き終わる頃にはなぜか納得できてしまい俺の頭の中にはその事がすんなりと入ってくるのが理解できた。俺達がレイヤの話に耳を傾けていると、セイリュウが突然現れたと思うとセイヤに対して話しかける。だがその姿はまるで「セイヤ」のようであり、俺がレイヤから聞いた話の内容と酷似していたため俺は驚きを隠せない。

そのせいで、俺はセイヤのことを見間違えそうになるがレイヤが教えてくれたことによって目の前にいる「セイヤ」の性別が違うのだということを思い出して何とか落ち着くことができた。だがそのせいでセイヤとレイを見分ける事ができなくなってしまっていた。そのため俺も最初は焦っていたが今は大丈夫だと思い俺は改めてセイヤを見つめる。そうすると彼は少し恥ずかしそうにし始めてから「やっぱり似合わないかな?」と言い出してきたのだ。そして俺はその事をセイキに伝えると彼は少し落ち込んだような顔をするが俺はセイナの言葉を思い出せばいい事に気がついてから俺は早速その技を使うことにしたのである。そして俺は彼の服装が変わっている事に気がつくとすぐにその変化を解くことにしたのだ。そうすればきっと俺には誰が誰だかわかるはずだろうと思っての事である。そして実際に俺は自分の力を使って姿を変えている奴を見つけ出して元に戻してやる。そのやり方はかなり単純で、俺はまず俺の能力によってその人間の体を触り、そいつの顔をじっと見ていれば相手がどんな姿であってもわかるという方法だった。俺がまずセイナにその能力を使用すると一瞬だが驚いた後に俺に謝ってきてくれて、そして自分の能力を俺が知っているということを悟ってくれる。俺はこのことで目の前にいる「セイン」という男も元の姿を現せたことで目の前の男がセインであることを確定させた。その後は俺は「ミリア」にセイナの時と同じように同じことをする。その結果、目の前の「ユイハさんの姿」になった女の子がユイナであるということがすぐにわかったのだった。

俺はそのあとに「シスター」「セイン」「ユズ」にも同じような事をしていく。ちなみにセイはセイヤのことであってユナは「ユーノさんの姿に変化している誰かが誰なのかがわからないため俺はその人の顔に自分の手を置いて確認していったのである。その作業はかなり面倒だったが仕方がないことだと自分に言い聞かせて行ったのであった。それで結果を言うと目の前に「レイヤ様がいて俺はようやく安心することができた。そしてその後、俺はセイに質問をぶつけるとセイは俺達にこれからの行動をどうするか? ということを提案してくれる。その内容が、俺とユミナは俺とユズは俺の師匠の元に行こうと考えていて、セイとミユキは王都に向かう。というものだった。俺はその意見に同意をすると同時に目の前にいる「セインさんとユズさんの体に変化が現れて二人とも「元の身体に戻ることができていた。これで一安心してから俺は二人の体に異常がないかを簡単に調べてから俺はこの場から離れようとした。するとそんな俺の行動を見て俺の仲間達が不思議に思ったのか近づいてくる。そこで俺が仲間達の所に戻ろうとするのだが、レイヤさんとレイヤさんに抱かれている赤ちゃんはどうやら俺たちの味方のようだ。その事から考えても俺も彼女たちに協力してあげた方が良さそうなので一緒に行くことにする。そこでレイヤさんがセイに向かって俺が「レイヤさんの娘とレイは知り合いでレイが困っていたら手助けしてあげて欲しい」というと、セイは二つ返事で了承してくれたので俺がレイにレイの両親を頼むぞと念を押すようにして言うと俺もユズが待っている場所に向かおうとして歩き出そうとしたら急にセイに肩を持たれて止められてしまう。俺がいきなり止めてきた事に腹を立てていると、レイヤさんとセイヤさんがセイに俺が「転移魔法が使えるのなら俺のことも送ってほしい。それでユミナと合流できれば良いんだからな」と言うとセイはすぐに「わかりました」と言って俺を掴んでいた手を離してくれると俺は急いで仲間たちの所へと移動する。

その途中でレイヤさんとレイが楽しそうな笑顔を浮かべて俺の後ろを付いてきていることに気づいてしまい俺はその姿を見て心の底からこの二人は俺の事を疑ってなどいなかったのかと思い知ってしまったのだった。

レイヤが俺のことを信用してくれていたことに驚いている俺に俺がレイヤから言われたことは、「あなたにレイを助けてほしい」だった。そこで俺は疑問に思ってしまう。レイを助けることは別にかまわないのだが俺は俺自身とこの世界に干渉するつもりはないのだ。そんなことを考えながら俺とレイヤと俺とユナの三人で歩いていると俺はセイヤとセイのことについて話し合うことになった。その話を俺とセイはレイの両親の前でも説明していたこともあり俺はレイの事情を知っていることになっているが、俺以外の人たちはレイがセイと双子で、しかもレイヤの娘であることにかなり驚き、さらには二人が実は俺達よりも年上であることを知ってさらに驚いた。だが、俺の事情をすでに聞いていたのでセイヤが俺に協力を申し出てきてくれたのである。俺はレイにレイヤさんとセイにセイがこの世界で生きている理由と、なぜこの国に来てくれたのかを説明してもらった。

そしてその理由を知ったセイヤは自分がセイのためにできる事を全力でしようと誓ってくれたので俺はそれを止めることはできなかった。そして俺はレイに「レイがやりたいようにやって欲しい」と伝える。その後、俺達はセイヤの師匠の元へ向かうために歩き始めるとセイが突然、セイヤのことを抱きしめたのだ。俺達はそんな様子に固まってしまうが、俺の事を信頼してくれたのか俺に助けを求めるセイヤと、その事に驚くセイヤ。そしてセイはセイヤにこの世界に来る前のことを聞くと、この世界では俺はレイヤの事は知らないので俺の事もレイの夫であることを隠して話をしていた。

そんな時、俺はこの光景を見守りたいと思った。なぜならこの二人の親子愛を見ることができたからだ。そのせいでこの場でレイに話しかけることができない状況になっている。だから俺は俺の大事な人達がこの世界で幸せな時間を過ごしてくれているのならばと納得することにしたのである。そして俺達三人で目的地を目指して歩き始めた。するとしばらく歩いた後にセイヤとセイはなぜか喧嘩を始めたのだ。だがそれも数秒の間ですぐに仲直りをしてしまったのである。

そしてその後セイヤがセイにお願いをしてセイが「いいですよ!」と答えてそのやりとりが面白かったのか俺達は思わず笑ってしまいセイヤはセイが承諾したことを確認すると、今度はセイにセイのことを頼んでいる姿を見るとこの二人にとってこの時間がとても貴重な時間に見えたのだ。それから俺達はレイの師匠がいると言われている街に到着すると俺はこの世界で久しぶりに人に会うことになるのだった。

「おい! 貴様らはここで何をしている?」

セイにこの辺りに師匠の気配があると教えてもらっていたのだが俺はその師匠を見つけることができずに困っていると、そこに俺達に声をかけてくる男がいた。その男はおそらくだが兵士であろう男だった。

その男の言葉にセイヤが答える前にセイがセイの前に出ていき、そしてその男に何かを言い放つと男は慌てて頭を下げて謝罪をしてくる。そのやり取りに俺は唖然としてしまうがセイは男の言葉を遮り俺達のことを助けてくれるとだけ言って俺達の前から消えていったのである。セイヤはその言葉を聞き入れるとその男と一緒にどこかへ向かって行ってしまう。

俺がセイヤが連れていかれた先について行こうとすると、レイがなぜか「私はセイのそばにいるね」と言い出し、その言葉に俺とユナは反応してしまいレイヤさんが「レイちゃんも行きましょう」と誘うがレイは俺の事を心配するような目で俺を見つめてきてから俺の事を心配してくれているようで「レイもここにいます。レイがセイヤさんのところに行くから」と言ってくれる。だがセイヤはそんなことを言われるのが嫌なのか少し怒り気味になっていた。俺はその様子を見てからレイヤさんの事が気になってしまい俺は彼女の元に向かい説得することにする。

俺がレイヤさんの説得をする前にユミナがレイヤさんと俺のところにやってきてからレイヤさんに俺が言いたいことを伝えてくれる。その内容は俺がセイと二人で話がしたいから邪魔をしないでくれというものだった。その言葉を聞いた俺はすぐにセイヤが言っていた「俺とユズしか分からない会話を今すぐにしようと思っているんだ」ということを思い出して俺はユナの言葉を聞いて俺は自分の行動の間違いに気づいたのである。そして俺とユナの二人きりになったので俺は早速セイに頼みごとをすることにする。

俺はセイに頼み込む。そして俺はセイにある事を依頼したのである。セイは俺が出した提案に驚いた顔をしてからすぐに了承してくれる。

セイの承諾を得て俺とユミナは二人っきりで行動を開始したのであった。セイヤとセイがいなくなってからはレイヤはレイヤで「お兄さんはセイヤさんのことを信用しすぎている」と言ってくるのだった。その発言には俺も全くの同意で、俺はレイヤの言ったことが本当にその通りだと思いながらセイヤのことが心配になってきてしまって仕方がなかった。なので、俺は急いでそのセイの向かっている場所に向かおうとしたのだが、その俺の行動にセイヤとセイのことを任せてくれたはずのユナまで俺についていくことになってしまう。

ユナは「セイヤさんと私で十分だと思うけど、あなたにも一緒に来て欲しい」と言ってきた。俺がその申し出に了承するしかなかった。そしてユミとユイナとレイナの四人がセイの所に向かったが、俺はユナとユミナを連れてその場所に向かおうとすると、セイヤとセイはいつの間にかレイナの元に行っていたのである。そこで俺はまたセイヤに驚かされることになる。セイが「あなたのお姉さんに会いに行ってあげてください」と俺に言うと俺がユミに視線をやると、ユミナが俺に言うのである。

「セイは私がセイの面倒を見てあげるから安心して、早くセイのお父さんに会ってきなさいよ。私はあんたよりは大人だからね」

ユナはユナの表情を見ればそれが本音だと言うことが分かるがそれでもやはり不安になるのは俺だけではなかったようだ。

ユミナはユズの様子を見ながらそんな俺を見てユミナもため息をつくのだった。そしてそんな俺たちにユミも呆れた顔を浮かべながら俺とユナとユミナは俺の事をユイに任せてから急いでその場から離れることにした。俺達がその部屋から出て行くときに俺はユミに対して謝ることを忘れていなかった。そんなユミンの俺を見る目が冷たかったが、今はそれよりもレイが無事な事を祈るばかりだった。俺はユマさんが作ってくれていた服のおかげで俺は誰の目から見ても不審者にしか見えていないはずなのだが、俺を警戒するように見つめる兵士たちを横目に、俺は急いである人物を探すために動き出すのであった。

俺とユミナとユイは、急いでレイヤの所に戻りユミナにセイのことを頼むと言ってレイヤを俺がレイヤとセイのために用意した屋敷へと連れて行く。

俺が急いでレイの両親の元へ戻ろうとするがレイヤがレイのことを頼むと俺のことを引き止めようとしてくるのだった。俺はそれにどう答えればいいのかがわからずにいるとその様子を見かねたのかセイが俺の側に寄ってききてレイヤに向かって言う。

「あなたがお母さんですか?」

そんなレイヤのことをじっと見つめながら問いかけるレイヤ。レイヤはレイヤでレイがセイに似ていることに驚いていた。そのセイにレイは質問をした。その時にレイヤの事を母親と呼んだのでその言葉でレイは自分がなぜここにいて生きているかという事を理解したのだ。だがレイヤはなぜ自分の娘であるセイが生きていることを知らないような態度で話をしていたのか不思議だったが、それは俺がレイ達にこの世界の現状を話したことでセイは生きていると分かったからかもしれない。俺はレイヤがどうしてセイがこの世界に生きていることを知らなかったのかわからなかったが、セイのことを話そうとしたらレイが先に話し始めてしまうのだ。

「セイはこの世界で生きていたんです。セイはあの世界で死んだわけではありませんでした。だからレイヤさんはセイが死んだと思っていたのでセイのことを忘れてしまったのでしょう。でもセイはこの世界で生きています」

レイの話をレイヤは黙って聞いてくれた。そして俺がこの世界を救ってくれないかと言ったらレイヤはその話を真剣に聞き入りそして、レイのことを抱きしめるのだった。そんなレイとレイヤの姿をみて俺が二人からそっと離れようとしたときセイが俺のことを引き止める。そしてセイはセイヤとレイの話をし始めた。俺はセイが俺を信頼してレイのそばにいるように俺の事を頼んできたのは嬉しいのだがその話があまりにも長かったので途中から俺は二人の話の腰を折ってレイにお願いをしていたのだ。そしてセイヤからセイを頼まれたので俺は急いでレイヤ達から距離をとるのだった。

そしてセイとユズがいる部屋にレイヤが連れて行かれると、俺はセイヤを探しに行こうと思ったがレイに「私の事は心配いらないですから行ってきてください」と言われて俺は一人でセイを探す事にしたのである。

俺が一人、王城の敷地内を走り回りセイを探していた。俺はユミナにセイの居場所を教えてもらうと俺がすぐに駆け出そうとしたら「ユミナちゃんに教えてもらった場所は違うわ。その道を行っても行けないからまずはその方向と反対方向に走ってちょうだい」と言われた。そしてユミナの指示に従い俺はユミナが指定した方向へ走る。そしてユミナは俺が走っていく姿を見てなぜか嬉しそうにしていた。

俺はそのユミナの顔を見た瞬間俺はユナに嫌われているのではないかと思いユミナから視線を逸らしてしまった。だが俺がそんなことばかりを気にしているのに嫌気がさしたのかユナは突然大声を出して言ってくる。その声に驚いた俺がユミナに謝罪をするのだが、その時にユミナは少し怒り気味になっていたが「私よりもセイヤさんが心配なんじゃないの?」とユミナは言う。俺はそんな言葉にハッとした。なぜならセイヤは今危険な場所に行っているからだ。セイヤなら大丈夫だと思うがそれでもセイヤに万が一があった場合、俺のせいでセイヤが死ぬなんてことになったら俺は自分を許せなくなるだろう。だから俺はユミナにお礼を言うと走り出した。

「セイヤがどこに行くかわからないけど、とりあえずこっちでいいのね」

ユナは俺にそう言いながらついてくるとユズはユミナの言葉を聞きながらもユミナの言葉に反応せずに俺と一緒の方向を向いてユミも「ついて行きます!」と言って一緒に走ってくれる。俺は三人の事が気になっていたのである。俺は自分の事を心配してくれる人たちの事が心配だったのだ。だから俺はみんなに「俺は絶対に生きて帰ってくる」と伝えようと思って走っていたのだがそんなことはユミナもユミも分かっている。だがユミナはユズの事も俺のことを本気で心配してくれていたようで「あなたのことを待ってくれる人が待っているんじゃないの?私はその人のためにもセイヤさんが無事に戻ってくることを信じているからね」と言ってきたのである。ユミはその言葉に何か思うところがあるようで何も言わなかったのだがユナは俺のことを引き止めてくれるのであった。

ユナは俺にそんな言葉をかけてくれながら必死についてきてくた。そして俺達はユイとユミが指定してくれた方角とは逆に進んでいきユナの案内で俺達はセイヤが目指そうとしていた場所に着くことができた。

俺はユミナ達の事を気にしながらもセイを探すために来た道を引き返した。

俺はレイにセイヤとレイの両親のことを頼み俺は急いでその場から離れようとする。そして俺の視界にはセイヤの姿が入ったのだ。俺がセイに「お前、何してんだ?」と言うとセイはこちらの方を見向きをせずに立ち止まっていた。俺はなぜ俺のことが見えないような振りをしているセイに違和感を覚えるがそのままスルーするわけにもいかないので俺はもう一度声をかける。

するとセイは振り返り俺はセイに事情を聞くことにする。

俺は、俺がセイヤとセイに「早くレイヤさんの所に戻ってくれないか?」というとセイヤとセイはセイヤの母親の元に向かって歩き始めたのである。俺はそんなセイヤとセイを追いかけながら、なぜ俺の声に反応をしなかったのかセイヤとセイに質問をしてみる。

セイは俺が追いかけてきていることに気づいたのかセイヤに「お兄さんはセイヤさんと一緒にセイの両親に会いに行きましたよ」と伝える。俺はそんな言葉を信用することはできなかったが、このまま二人を見逃す訳にもいかなかったので、レイヤをセイに任せて急いで二人の元に向かう。

セイは俺の事を見て「やっと来た」とつぶやくと俺に付いて来いと合図を出すとどこかに向かって移動し始める。俺はそんなセイについていく。そして着いた場所が城の裏側にある大きな森の中である。セイに連れられてきたその場所は大きな湖が広がっていた。セイはそんな場所に到着するとセイはいきなり湖の中に飛び込んだのである。セイが何をしたいのか全く理解できなかったが、その行動に意味があるはずだと思った俺はセイの後を追って湖に飛び込む。その行動を見ていたセイは笑みを浮かべながらセイも俺と同じ速度で泳ぎ始める。その速度は普通の人間ではありえない速さで俺もそのスピードに驚きながら泳いで行くとセイが俺の背中を押してくる。

俺はセイの行動に驚くと同時にセイの体つきに目がいってしまう。俺の目の前に現れたのは、その小さな体のどこに力を隠しているのかと思うほどの力を宿した筋肉がありその肉体美を見て俺が驚いてしまう。そんなセイを見て俺も負けていられないと思い俺は一気に加速していくと俺はその湖の一番深い所にまで到着してしまう。セイはその湖の底まで着くとそのまま水の中へ潜り込んでいった。そして俺はそのセイに遅れまいとセイのあとを追おうとして潜ったのであった。俺はその深さとセイが潜っていったことに対して疑問を抱きつつもその水中へと潜っていく。

そしてしばらく進むとセイと俺はお互いが見つめ合う形になる。俺はこの世界に来てから一度も呼吸をしなくても息が続くようになっていたが俺はそんな俺とは違いセイがこの世界でものすごく苦しそうにしている姿を見ていたので俺はセイに向かって話しかけた。セイは俺のことを見つめるとなぜか急に俺に向かってキスをしてくるのだった。その事に俺は驚いたのだがセイにそんな余裕はなく、ただ唇を離さないようにするために、まるで恋人同士のように抱きついてきたのだ。俺はこの状況からどうすればセイを助け出せるのかと考えながらセイの手を握っていたが俺はある異変に気づく。

セイの手が冷たくなっていく。それはまるで命がなくなってきているのかのように俺に錯覚させるくらいに冷たかった。その事に気づいた俺は慌てて手を抜こうとするが俺の腕を強く掴んでいるので簡単に抜け出せなかった。だから俺は強引にセイのことを引き剥がそうとするがびくともしなかったのだ。だから俺は仕方なくセイのことを俺の力一杯引っ張って無理矢理セイのことから離れる。そして俺はそんなセイから目をそらすとセイの口から赤い液体が流れ落ちていきその量は時間がたつにつれ多くなっていった。そしてついに俺の握っている手がだらんとなり力が抜けたように手を伸ばしていく。その光景を見た俺の体は恐怖に支配されていた。

セイのその姿を見て俺は心から後悔をした。なぜ、こんなことにもっと早くに気がつかなかったのか。セイヤの両親が死んだと聞かされてセイの様子がおかしかった時に気がつくべきだった。そのセイの瞳からは生気が感じられずその肌はどんどんと色を失っているように白くなっていた。その姿を見て俺は自分のせいだという事を思い知らされるがセイがこうなってしまった原因は分からないので今はそんなことを考えても意味がない。だから俺は今セイをどうやって助ければいいのか考えていたのだ。そして俺はセイがどうしてこのような姿になってしまったのかを考えていた時にある仮説が思いつく。だがそれが本当に正しいか確証はない。だがもし俺の推測が正しければ、俺の知っているセイならこの状態からでも元に戻せるはずである。俺はそのことを試して見ることにする。

セイに口づけをしながら俺はセイとセイがしている事をそのまま真似をするのだった。

俺がセイヤの体に触るとセイの体が光輝きだす。その光がだんだん強くなっていきセイが苦しみ始めたのである。

その姿を見て俺が焦り始めてしまったその時俺の前に女神が現れたのである。

「よくやりました。これで私の役目も終了ですね」と嬉しそうに微笑むのであった。俺はその女神の姿をみるとその美しさに見とれてしまっていた。なぜならその女性はこの世界に召喚されてから何度も見たことがあったからだ。だが、そんなことは関係ない。俺はその姿を見て美しいと感じてしまい、そしてそんな綺麗なお姉さんが自分の目の前に現れて優しく接してくれてそのお胸を押し付けてきてくれてそんな状況になっているんだぜ。俺が興奮しないはずがなかった。俺はその女性が誰なのか気になり聞いてみる。

「私ですか?私は神の一人ですよ。私の仕事は、魔王の復活を阻止する為、異世界からの勇者を召還するというものでした。なのであなたが、魔王を倒してくれたので私は安心しています。ありがとうございました」と丁寧にお礼を言うと俺のことを褒め称えてくれる。

俺が「いやぁ、それほどでもないんですよ」と言っているとその女性はクスッと笑って俺の事を見ていたのである。俺が不思議に思い「何か俺変なこと言いましたか?」と尋ねるとお礼に答えずに「いえ、特になんでもありませんよ」と答えてくれたが、俺としては少し不満だったが仕方ないので話を続けることにした。

俺は女神が言っていたことを思い出していた。俺はその言葉を信用するわけにはいかないのだが、それでも一応聞くだけは聞こうと思っていた。

俺の目の前に現れた女神と名乗る人物に俺は質問する。

「それで俺はこれから何をしたらいいんだ?俺はもう魔王を倒したはずだろ?それに俺は死んだんだ。だったら俺を元の世界に戻せ。そしてあの世界で俺のことを待っている女の子たちの元に帰らせてくれないか?」と言うと、 俺の言葉を聞いたその人は笑い始める。

「あははははっはは、面白い冗談を言いますね。まぁいいです。確かにセイ様は貴方に倒されていますから死んでいますよ。だけど、まだ魂は完全に消滅してはいないようだったので私があなたのことをこの場に連れてきたのです。あなたのことを死んでいるとは言っても完全には消滅していないんです」

と自信満々に俺に向かって言ってくるのであった。俺はそれを聞いて「じゃあお前は一体何者なんだ?」と言うと、 その女神が名乗った名はセイアと名のる名前で、俺はセイの名前をどこかで聞いたことがあるような感覚に襲われる。そんな記憶など俺にはないのになぜだろうか、と俺は考えてみたのだがそのことについて考える前にセイに言われてしまう。

「そろそろ時間のようでしたので最後にこれだけ伝えておきましょう。まず一つ目。この世界から脱出する方法はただ一つ。それは【蘇生薬】を使ってもらうかもしくは誰かの命を犠牲にすること。ただし後者はあまり勧められるものではありません。だってそうでしょう?そんなことをすれば他の人たちにも迷惑がかかります。そしてもう一つの選択肢として、これはあくまでも最終手段だとお思いください。ではお別れの時です。頑張ってくださいね。あっ、ちなみにあなたが倒したその魔王はまだ完全復活するまではあと二千年ほど時間があるので、その間になんとかしてくださいね。ではまたお会いしましよう。ではさようなら。あなたに女神セイの加護がありますように」というとセイは光の粒子になって消えていった。そして俺だけが取り残された空間に一人の男の声が響き渡る。

その男の声で俺は目が覚める。俺がその声が聞こえてきた方向を見てみるとそこには、白い服を纏った若い男が立っていたのであった。その男は白を基調とした鎧を身につけていて顔が整った顔をしていたのである。そんな容姿をしたその男性を見ていると俺の方を見てにっこりと微笑んでくる。その表情に一瞬だけドキッとしてしまいその笑顔が眩しく感じるが俺はすぐに警戒をして剣を構えるといつでも攻撃できるように身構えた。

その様子を見ながらも俺が睨みつけるとその男性は、「そんな怖い顔で僕を見ないでくれるかな?せっかくこの僕の素顔を君に見せるために、わざわざ姿を現したのにそんな風にされると悲しくなるから。僕はこう見えても心優しい人なんんだよ」と言って笑みを浮かべてくる。その様子から俺はこの人物がただの敵ではなく味方であると判断したので警戒心を解いて話し掛ける。そして俺の目の前にいる男性が自己紹介を始めたのである。

「僕は君の上司だよ。だからその敬語をやめてほしいな」と話しかけてきたが俺にはそんな話を信じることができなかった。だから俺がそんなことを言える立場ではないと思いつつ「ははははは、いきなり俺の前に出てきたと思えばいきなり部下になれと言われましても俺は絶対に嫌ですよ」と言い返す。

するとその男性は不機嫌そうな顔になった。

俺はそんな男性の反応を無視して「それでどういった要件で現れたのでしょうか?」と言うと男性はなぜか急に俺の頬に手を添えてきたのであった。その行動を見て驚いてしまった俺は思わず後ずさりする。しかし相手は俺に近寄ってきてそのまま手を俺の頭の後ろに回してきた。俺はそのままその行動の意味が理解できなく混乱してどうしたら良いか分からなくなっていたのでその男性のなすがままになるしかなかったのであった。

俺のことを引き寄せてきたと思った瞬間俺は自分の唇をその人に奪われてしまっていた。そして俺が必死に抵抗をしようとするがまったく抜け出せない。だが、しばらくしてようやくその人の口が俺から離れると、その人の口から甘い香りが広がり俺のことを誘惑してくる。そしてその口から出た言葉を聞いて俺の心拍数が一気に上がっていく。

俺の目の前にいるその男性の名前は【ユウキ=カガミ】という名前だった。その人が言うに俺の師匠に当たる人である。この人は神の中でも上位の存在なのだ。その神は今までこの世界を見守ってきた。そしてこの世界の住人たちに神からの試練を与えるためだけに存在しているらしい。そしてこの世界の人々はその試練をクリアするために努力をする。そしてその神の試練を乗り越えることができれば一人前の大人と認められさらに上へと目指すことができていくようだ。

俺がそんなことを聞いている間も俺の心臓の鼓動は早くなっていくばかりだった。そして俺の頭を悩ませていた。俺がなぜこの人を俺の前に出させてきたのか。それが疑問でならなかった。その理由はすぐに分かったが。

その人は俺に優しく微笑みながら話しかけてきた。俺はその人から視線をそらすことができないほど見つめていた。そしてそんな状態で俺はあることに気がつく。俺と会話している時のその人の目の色に違和感を感じたのだ。その人は右目しか開いていないため、もう片方の左目の色を確認することはできなかった。だから俺は気になっていたので確認することにした。その人は自分の瞳の色を確認しようとしないからだ。

だが、そのことを尋ねても教えてくれなかった。その代わりに俺はこんな質問をしていた。俺がセイヤと戦っている時どうやってセイヤの体に触れて魔法陣の中に引きずり込んだのかについてである。その質問に対して、この人物はあっさりと俺にそのことを教える代わりに、俺にキスしていいかと聞いてきやがった。俺はそれを拒否しようとしてもこの人物に勝てるはずがないと確信したので、その要求を受け入れてしまった。

「ありがとう。では、君は今から僕の弟子だ」と言うと俺はいつの間にかその神の弟子となっていたのである。

その人物の名はセイアという神であり俺はその神が持っている特殊な力で異世界から来た人間だと知るとセイアが異世界から来る理由を教えてくれた。セイアが異世界からの人間を連れてくる理由はこの世界が魔王の脅威に脅かされているということが一つの大きな要因だという。その魔王が復活した場合、勇者の素質を持つ者が異世界のどこかに現れその者を召喚させる。その者は、この世界を救うために旅をすることになる。そしてその召喚される時期は、だいたい三年に一度のペースと言われている。そして、今回魔王が復活してしまったためにセイアがその役目を負っていたということだった。その説明を聞いた俺は、そんな危険な状況なら勇者なんて存在が居なければいいのにと思っていたが、そう思うだけで実際に勇者が現れてしまうから何も言えない状況であった。その事を知った俺はそんなことは知らない方がいいと思い聞かなかったことにするのである。

それから俺はそのセイから、この世界の情勢について詳しく話を聞くことになったのである。俺が知っている情報よりもかなり正確な情報をセイアから聞くことが出来た。この世界には【七つの大陸があり、そこには数多くの国々が存在している】ということがわかった。俺が魔王を倒した場所はその中央に位置している【イリアス国】という場所で俺が暮らしていた場所もそこに含まれていた。俺はそこで魔王を倒したのだが俺の本当の居場所はその国にはなく俺が住んでいる村はそこから東の方にある森の中に存在する小さな村だった。

そしてこの世界の魔王は【六体の配下を従えており、それぞれがそれぞれの役割を担っていた】そうだ。俺が魔王と戦ったときにセイヤの配下の一人目の魔将は、【オーガスト】という名を持ち、俺と最初に戦った魔将は【アイビス】という名前の魔王の腹心の配下だったらしい。そして、二つ目の魔王の直属の魔将軍である【グラシアス】という奴がいた。その最後の一人の名は分からないという。

そんな俺の話を聞いたセイアは俺をこの世界に呼んだことについて謝り始めた。俺のことをこの世界に呼びつけていたことに関しては俺は別に問題はない。むしろそのことについては感謝をしているぐらいである。俺は、元いた世界に戻ろうとしていたわけだし、俺の世界があの戦争に巻き込まれて俺の家族が犠牲になってしまうかもしれないと知っていたから、それを食い止めようと俺はこの世界に呼ばれたのだろうと考えていたからな。

俺がセイアに感謝の気持ちを伝えると、

「いえ、それは違いますよ。確かに貴方はこの世界に呼ばれました。ですが私は、貴方を呼んだわけではありませんよ。ただ私が、勝手に貴方のことを呼び寄せたのです」と、言ってきた。そして俺はセイがこの世界から元の場所に帰る方法はないということも聞いた。

そして、この世界を救う方法についての話を聞かされる。まず一つ目としてはこの世界で死んでしまった人達を助けるためには誰かの命を生贄にする必要があり、しかもそれは、自分以外を犠牲にすることはできないということだ。それはつまり、自分自身を犠牲にすることで誰かの命を守ることができるということだ。その方法として俺が一番良いと思われる方法は【聖剣を使う】ということだった。俺はそんな方法があるのならもっと早くに言って欲しかったと思うのと同時に、どうして自分が選ばれたのか理解できなかったのでセイに尋ねると、「貴方は魔王を倒し、私の弟子となった者だから」と言っていたが正直俺には納得がいかなかった。だって、そんな理由で選ばれるのは少し納得できないからだ。だから俺はセイに反論しようとしたら、「まだ時間はあるんだし、ゆっくりと考えておいて。じゃあ僕はもう行くね」と、言って消えていなくなってしまった。

俺とセイのやり取りを見ていた男、その男の名前もユウキ=カガミと言う名前だということを俺はまだ知らない。俺がその人に声をかけようとしたらその男は一瞬にして姿を消してしまった。

そして次に姿を現した時にはなぜか、この城にいた兵士の姿になっていた。その事に俺が驚きつつも男を見ると男と目が合った。

すると男が俺のことを見てくるなり笑顔で近づいてきたのである。そして俺に何かを話し掛けてきたので俺は男の話を黙って聞いていた。そんなとき突然現れたレイによって話が中断されたのであった。俺はその光景を見ながら心の中でレイの登場に喜んでしまう。俺にはわかるのだ、この男が俺が元いた世界で言うところの神のような存在であることを、その神が何を目的に俺の目の前に現れたのかはわからないが俺の勘がこの人は味方であると教えてくれるからだ。だから俺はそんな考えを頭の片隅に置きつつその神の話を聞いた。

だが、その内容はかなり俺を動揺させてしまったのである。

「僕の名前はユウキと言います。そして先ほども言ったように君たちの上司でもあり、勇者様の教育係なんだよ」と言って俺の顔を見つめながら話しかけてくるその人物の瞳は左目は金色に輝き、右目は赤色と左右非対称の目の色をしておりその瞳からは圧倒的な威圧感を感じるほどだった。その眼差しに見つめられるだけで俺はまるで蛇に睨まれた蛙になったような気分になってしまっていた。俺はそんなことを思いながらもユウキさんとの話に耳を傾けていると彼はこの世界の歴史やこの世界に住む者たちの暮らしなどいろいろと説明してくれた。

俺はこの世界のことを知るためこの話をずっと聞き続けていたがそんな時にレイとリゼッタの声が聞こえてきたのであった。俺は慌ててその二人の様子を見に行くとなぜか、二人が戦っているではないか。俺がその光景を見て驚いてしまい急いで仲裁に入ろうとすると俺のことを呼び止める声がしたので、振り返るとそこには、さっきのユウキさんの瞳の色をした瞳を持っている少年と女の子と思しき二人組みの少女がいた。そして二人はユウキと同じような感じの瞳の色をしていたのである。その少女がいきなり俺の目の前に来ると顔を近づけて話しかけてきたのだ。俺は急に自分の目の前に少女の顔が現れたことで驚いてしまうと、その女の子は「私は、この国の王女である、リーゼロッテ=カガミという者でございます。勇者様」と自己紹介をしてきたのである。俺はその事を聞いて思わず驚いた顔でその言葉を発した王女の事を凝視してしまった。

「なぜここにあなたがいるのかしら? もしかしたらまた私の邪魔をしようとでもいうつもりなのかしら?」

俺が王女にどう反応したらいいのかわからず困っていると、もう一人の赤髪の少女が王女のそばに来て王女のことを問い詰め始めたのだ。

俺は、なんとも言い難い表情でその光景を眺めていたのだが、俺の視線の先には、金髪でツインテールにした髪の毛をしていてその瞳は綺麗な青色をしていている美少女、いや、美少女ではなく、美しいと言った方が適切なのであろう、その少女の容姿はとても美しくてつい俺は彼女のことばかり見て見入ってしまっていた。俺がそんなことを考えてしまっていると、

「え、ま、待ってくれ、俺はあんたに敵対意識はないぞ」

俺のことをその少女が冷たい目で睨み付けてきたので俺は必死に誤解を解くための言葉を口に出していた。だがそれでもその俺に対しての敵意が消えることは無くて、さらに、もう一人がこちらへと向かってきていた。だが、俺はその人の方には目もくれずにただひたすらその美しい金髪の美少女の方を向いていたのである。俺はこの場にそぐわない感情が俺の中に芽生え始めてしまいそうなほど、その美しさに心を奪われてしまっていたのだった。

俺はこの三人と話すことにしたのだが、俺はこの三人と会うまでにあったことやこれからの予定などを簡単に伝えた。俺がこの国に訪れた理由を軽く伝えるとそれを聞いたその少女たちがこの国に伝わる勇者の伝説について俺に詳しく聞かせてくれとせがんできた。そして俺は勇者が異世界から来たという話は伝説になっていないということを伝えて俺はこの国を救ったという事を話す。その話しをしている最中にもこの国の王族である、王女や、その王女の妹、その妹の護衛である騎士といろいろと話し込んでしまったのである。俺は話の途中途中に、王女たちがどうして俺に会いに来たのか尋ねてみたが彼女たちが俺に話したのは俺の質問とは関係無いことであったが、俺にはどうしても気になってしまったことがあるのでその事を聞くことにする。それは王女と妹の騎士とこの国についてのことである。

「俺はあんた達のことを何も知らないからまずはこの国について俺に説明して欲しい。この国で今起きている問題なども全て」

俺は真剣にそう尋ねたのだが王女たちは何も答えてはくれなかったのである。俺もこれ以上は聞けなかった。それから、そのあとに、俺に質問をしてくる者が現れて、俺もその者の質問に丁寧に対応していく。そしてその質問が終わると、俺も自分のことについて話していいものかどうかを悩んでしまい、しばらくの沈黙が流れ始めると俺の隣にいる王女が何かを思いついたような表情をするなり口を開いた。その発言に、その場にいる誰もが息を飲みその話に耳を向けてしまう。そして王女の放った言葉でその場の雰囲気が変わったのであった。それはこの場の皆にとって、あまり歓迎することのできない内容であったが。そして、その内容というのがこうだ。

まず、俺は【魔王】と呼ばれる存在と戦って勝利したという事。俺がその魔王をどうやって倒したのかは言わないでおく。そのことはいずれバレることになるだろうし、今はそれよりも、この国で起きた問題を俺に聞いてほしいらしい。この国で起こった問題というのは、俺とこの城の中で出会って、俺に色々と教えてくれたあの男と女に関することであるらしい。そのことについて詳しく聞くとその男は【魔王軍の手下】であるということが分かった。

そんなことを王女たちに言われても信じられなかったが、俺は一応その男がこの国で何をしているかを確認した。その男がしていることは、この国の貴族や、国王たちを脅してお金を巻き上げていることらしい。その金はこの国に流通している金を横領しそれを自分だけのものにしているらしいのだ。その事実が分かっただけでも十分すぎる成果である。

俺はとりあえず、その問題についてその男を捕まえようと思う。俺の実力があれば捕まえることもできるはずなのだ。それに俺のこの世界に呼ばれてからの勘が、あの男を捕まえることが必要だと知らせてきているから。

そして俺はまずこの城のどこかにその男がいることだけは確定したのでその情報を頼りに捜索することにした。

俺は早速この城の人間に事情を話し、協力してもらえることとなった。だが、協力してくれることになった人たちのほとんどが王女の命令に従うだけで、自分で物事を考えることができず、そのせいもあって俺に協力してもらうための対価として【俺の協力を得る代わりに姫に協力する】ということを提示される羽目になる始末だった。俺は仕方なくその条件で手を打つことにし俺はその男たちの捕獲のために動き出した。

「なぁ、ちょっとお前らにお願いがあるんだが」

俺はその男の部下らしき男に向かって話しかけていた。その男は俺に何の警戒心も持っていないようで俺の言葉に反応した。

俺は男に対して自分がこの城で見たことと、俺の固有技能を発動させるのに必要な条件をこの場で話すように誘導した。男は俺が思っていたよりも早くその事に気が付いてくれたようですぐに口を割ったのだ。俺はそのことを聞き終えた後男の拘束に成功することに成功する。その後、この男と仲間たちにこの城で見つけた魔導具を使うように促す。これで少しだけ時間を稼ぐことができるはずだから、俺はその間にあの女王の元へと向かうために部屋を出たのだがその前にユウキが何かを思い出したかのごとく現れて俺に声をかけてきた。

俺は一瞬だけ嫌な予感はしたがユウキの言葉に返事をすると、ユウキが突然俺の胸を貫いて来たのである。俺はいきなりの事で驚きの表情を隠せなかった。だが俺の体はそのユウキの槍によって貫かれることはなく逆にユウキの方が倒れていく。

その光景を見た俺は慌ててその倒れた少女に駆け寄って声をかける。

「おいっ、しっかりしろ、大丈夫なのか!?」

「ゆ、ユウキさまっ、申し訳ありません。私はここまでです」

「どういうことだ? ユウキ、ユウキ、おい起きろ! どうしちまったんだよ。こんな時に気絶なんてふざけんなよ。頼むから死なないでくれ。まだ俺は恩を返しきれていないんだ。ユウキが俺のこの世界に来てからの先生だったんだぞ。そんな奴がここで死ぬとか絶対にありえないんだよ。なぁ目を覚ましてくれ、俺を置いていかないでくれ、なぁ!」

俺はそんな事を叫びながらユウキを抱き抱えていた。俺は必死になって彼女に声を掛けていたのだがその少女からは一向に反応が返ってくることがなく。ただ虚しく時が過ぎて行くだけで俺は、もうダメかもしれないと思ってしまい泣きながら謝ってしまったのだ。

俺はそれからしばらく、涙を流し続けていたのだが、いつまでも泣いていても意味がないと思い直し、この場から立ち去ろうとしていた。そして、ユウキが持っていた剣が地面に落ちたままになっていたので俺は、ユウキが最後に言っていたことが頭に引っかかっていてユウキの剣を手に取ったのだ。俺はそれを手にした瞬間に体に電撃のようなものが流れたような感覚に襲われ、その剣の力を瞬時に感じ取ることが出来た。

その刀は、聖騎士専用武器で俺の使っているものよりも強い能力を持っているものである。

そして、俺は、俺の持つ力を最大限に利用するために、ある事を決意する。

「よし、これならいけそうだ。この力で俺が必ずこの国の問題を解決させてやる」

俺はそう言い残すと急いで女王の元へと向かって行ったのだった。

そして俺が女王の部屋に向かうとちょうどそこにいた、先ほどの護衛の二人がその扉の隙間から中の様子を覗いている所に遭遇してしまい、二人から怪しまれてしまい問い詰められてしまったのだがなんとか乗り切ることに成功して、部屋の中の人物にこの部屋に入ることの許可を得ることができたのだ。

その部屋に俺が入ってみるとそこにはこの国を治めているこの国の王が豪華なベッドの上で横になっている姿が見えた。

「お初にお目にかかります。俺はこの度貴方様の国をお救いするために召喚された者です」

俺はそう言って王に向かい自己紹介をするのだがその人物は俺のことを見てはいなかった。王は俺のことを一心不乱に見つめていたのである。俺にはこの人の考えが全く理解できないが、俺がここに呼ばれた理由はその人が知っているのだろうと俺は思い質問を投げかけてみることにする。だがこの人は、俺の声が届いておらずただひたすら俺を見つめて来るだけであった。そして俺のその言葉に返事が帰ってくることはないのであった。

俺はその様子からしてこの人は俺の話を聞こうとはしないのだと思い俺は勝手に話を始めることにした。その話の内容は俺のこれからこの国で行う予定のことについてである。俺の話が終わった直後俺は急に意識が遠くなるのを感じてしまい気を失ってしまったのである。そのあとの事は、俺の記憶にはないのだが目が覚めた時は俺は牢屋の中にいた。しかもその時には俺はこの国で暴れ回った大罪人として処刑されることが決まっていたのである。その話を聞いた俺がどうしてそうなったのかを聞くと俺はこの国を救うために、ある事を実行しようとしていたのだと。その実行しようとした事のせいでこの国は滅びようとしていたのだから仕方ないのである。

その作戦の内容を俺は知らなかったのに俺にそれをさせたということは俺はその作戦に参加することを拒んだということになる。俺はそんなことを考えていたがこの国を救うにはそれしかないと諦めて俺は、処刑当日までおとなしくしておくことに決める。この国の人達は全員敵だと思っていたのだが、なぜかこの城にいた人たち全員が味方になっていてくれていて、そのおかげで俺はこの国に起こる悲劇をどうにかして止めることが出来たのである。だが俺はこの時はまだこの先に起きる悲劇のことも知らず、俺は自分がやったことで起きた奇跡に感動するばかりで、自分の本当の価値に気付くことができなかったのである。そして、俺に、大きな試練が訪れた。その出来事とは俺の幼馴染が敵にさらわれたという情報が入ったからである。

それから、俺が幼馴染を助けようと動く前に敵のアジトを見つけ出すことに成功したのだがその場所は、俺を牢に入れた張本人である王女が、その王女の妹が、俺の仲間を人質にしてその場所に監禁していたのである。そこで俺は仲間を解放するために王女と妹を殺そうと思ったが王女たちがいる場所に行く途中で邪魔が入ってしまいその計画を実行することはできなかった。そのせいもあり仲間の解放をすることができずに、結局俺とその仲間の二人は人質にとられてしまう始末になってしまったのであった。

俺はこのまま捕まっているわけにもいかなかったので、なんとか脱出しようと考える。だがその方法を考えている間に、俺は、その男を目の前にしてしまって俺の動きを封じる術を行使されてしまう。俺の体はまるでその男に怯えているかのように言うことを聞かなくなってしまったのである。俺は、その男に勝てないと悟り、俺は最後の抵抗をしてみせるがそれもむなしいことに失敗に終わってしまい俺とその男は一緒にその場所に連れ去られてしまう。

俺と男は、その後、とある洞窟に連れてこられると、そこの一番奥まで連れて行かれた。俺はその時は、何も考えることが出来ず、無我夢中で逃げようとするのだがやはり、俺の考えはうまくはいかないようで俺はその男によって、再び捕らえられる。そのあとは俺はまたその男のスキルで動けなくなるのだが俺が動こうとする度にその男は、何かのスキルを行使して俺の行動を阻害するのである。俺はその男をどうにかしようと思うがその男に隙はなく俺は何もできなかった。だが俺はそれでも諦めずに必死に足掻いていたのである。そしてその行動の結果俺は遂にその男のスキを見つけることが出来た。

その男の弱点である部分を攻撃することでようやくその男にダメージを与えられた。だが、それで俺は力を使い果たしてしまった。俺はそこからどうなったのかというと気が付けばその男が、王女たちのところに連れ込まれていた。俺はすぐにその場から離れようとしたが俺はもう体が思うように動かすことができない。そして俺はその場に倒れ込み、俺の意識は次第に薄れていくのであった。俺が、次に目覚めたのは自分の家のベットの中だった。

俺はあの時の戦闘で体を動かすことが出来なくなっていたが、幸い、頭の中で会話ができるくらいまでには体力が回復していたのですぐに連絡をとることにする。まず初めに、その人物を俺は知っていたのでその名前を告げようとしたのだがその男は名前を告げることはなかった。なぜならその男は俺の友達で、俺と同じ高校に通っている友人で、その男はあの男の奴隷のような立場にある男なのだから。

「久々、元気にしてたか?」

俺は、その友の呼びかけに応えると、

「うん、一応は、大丈夫かな。それより、僕に聞きたいことがあるんだろ? いいよなんでも答えるよ」

俺がなぜここにいるかは分からないけど今はこのチャンスを逃してはいけない。

そして、俺は彼に、俺の状況を説明する。

彼はとても真剣に俺の話を聞いてくれたのだ。

すると彼は驚くべきことを言い出した。それは、彼の主があの大賢者と呼ばれる存在だということだったのだ。俺は驚きすぎてしばらく声が出ない状況だったがやっと出た言葉はそのことだったのだ。そして俺にはこの大賢人のお弟子さんがついているらしく、俺はその子と一緒に修行しているのだという。俺の今の状態はこの子に教えてもらわないとお弟子さんの修行についていけないという。俺はその話を聞いて、お弟子の女の子の顔を思い出していた。俺はこのお師匠様に会ってみたいと思い、俺の体を治してくれるように頼んでくれないかどうかと頼む。

そして、俺は彼が了承してくれた後、少ししてからそのお師匠様が俺の元にやってきてくれた。そのお方は思っていたよりも若い見た目をしていてとても綺麗な人だったのである。そしてお方からは、なんと俺はもう既にこの世界で起きている問題のほぼ全てを解決できるほど強くなっていると言われたのである。俺はまだ実感できていないがとりあえず信じておくことにする。

そのお方のお名前は、アリサ様といい、その人はレイのお姉さんだったのだ。

俺はお二人と挨拶を終えると俺の事を気にかけてくれているユウキから通信が入り、ユウキも色々と大変だったんだろうなと思って俺は励ましの言葉をかけたのだった。それから俺は、このお二人の護衛の人をつけてもらいながらユウキに会うための場所に向かっていくのである。そして俺がその場所に到着するとその場所では既にユウキとアリスが待っていた。そして、ユウキが突然に、ユウキの姉ちゃんに俺の事をお願いしてきてくれと言ったのだ。俺はその理由を聞くと俺にはすでに強力な加護が備わっており、俺には勇者の称号が与えられたのである。そしてその称号は、俺が望まなくても勝手についてきたものであり、俺はそれを手に入れるためにこの世界にやってきたと、そして俺に与えられた力は魔王を倒すためのものだった。俺はそれを知ってその力を使ってみんなを守りたいと俺が思っている事を伝えるとユウキはそれを止めることなく受け入れてくれたのだった。

俺はこのあとは三人の人に案内されてそれぞれの目的地に向かい始める。

そしてその途中に、俺はある出来事に遭遇することになるのである。その出来事とはこの国に蔓延っていた魔獣たちをこの国に住む人々が総出で討伐したと言う出来事だった。その光景を見て俺はこの国の民たちの強さに驚くのと同時に、俺にはまだまだ足りないものがあると知りもっと強くなりたいと考えるようになっていった。俺はこの時まだそのことに気付かなかった。この先に起こる恐ろしいことが起こっていることにも気づくこともなく。ただ自分の身を守るためだけのことを考え続けていた。だがこの時すでにこの国には破滅への道が見え隠れし始めている事に誰も気がついてはいなかったのである。

〜ハルユキ視点〜 僕はこの時ハルと呼ばれていた少年である。僕たちはあの時に大魔王サタンを倒した。だけどそれは僕の想像以上に強い敵が現れてしまい苦戦を強いられたのである。僕たちの前には大賢人であるレイくんがいた。そのおかげで、僕たちが全滅することは無かった。そして大魔王を倒したことにより僕たちは、この世界に召喚された理由を知ることができていた。大魔王を倒した時に発生したエネルギーは、この世界と別の世界を繋ぐ扉を開きかけていたのである。その扉の先は、別の世界の人間がこちら側にくるために必要なエネルギーがある場所に繋がっていたのである。だがそれを開くためにはかなりの時間が必要で、その時間稼ぎのために大賢人たちは大賢者が生み出した大結界によってその世界を隔離することで、その時間を稼いでいたのである。

大賢人たちが大結界を張ることに成功したことで異世界の人たちを呼ぶことはなくなったもののそのかわりに、今度はその大賢人が大封印の儀をおこなおうとしていた。その結果として、その儀式の生贄となるものに選ばれてしまって大魔王の力をその身に宿してしまった大賢者によって多くの人たちの命が失われることになった。

その事件が起こってしまってすぐに、この国の女王であるクレア女王が自らを犠牲にし国を守ろうとした。そしてそれが成功したことにより国は完全に封鎖される形になるはずだった。しかしそれを良しとしないものもいた。それはレイくんです。彼もまたこの国が滅び行くことを阻止しようとしていたのです。そしてレイくんの想いと行動はついに実ることになりました。レイくんが、僕たちに協力してもらえるように頼み込んできた時、最初は僕たちも断るつもりだったんだけどそのあとで僕は、レイくんの本音を聞いたんだ。その時のレイくんはまるで子供のように泣きじゃくりながらも自分の思いを必死に僕らに伝えようと考えていたんだ。その様子を目の当たりにした僕は彼の気持ちに嘘はないと信じて彼の願いをかなえてあげることにしたのである。

そうして大賢者が作り出そうとしていたものは消え去り、そしてその大封印の術式に使われていた道具が大賢人達によって回収されたのちに彼らは再び元の世界へと帰っていったのである。そのさいに彼らが持っていた大聖典というアイテムの力によってレイ君の体が一時的に石化状態に陥ってしまった。それによって彼は、しばらくの間意識を失っていたのだがしばらくしてようやく目を覚ますことになったのである。

そのタイミングで僕はこの国の王様の所へ訪れていたのであった。

そして、その王様に、レイ君が意識を取り戻したことを報告しようとしたところ、彼は、自分が今まで何をして来たのか、そして何が起こったのかを知ろうとしていました。なので、彼はまずは自分がどのような存在になっていたのかを確認するべく鏡を探し始めていました。そして僕はその鏡を持ってきてその彼が映る姿を見せてあげると、その彼は驚きの声をあげていて、そんなことをしているうちに僕は彼が大魔王になったということを彼に話した。

そしてそれから、彼との対話が始まる。まず最初に僕から聞いたのは彼のお姉さんのことについてです。その答えは、なんとレイくんのお姉さんは大賢人の生まれ変わりだったらしいのです。でも、彼女は、その時のことを何も覚えていなくてそのことを僕に話してくれて、そしてこれからのことについても、僕に話を始めました。そして最後に、彼女から衝撃の事実を教えてもらったのである。なんとこの大結界を張った大賢者の名前は大賢人だったのだと知ったのだった。しかも彼は大賢者ではなく大賢者の双子の兄弟だったという。この話を聞いた後に僕は少しだけ違和感を覚え始めていた。それはその大賢者の名前がこの世界で語り継がれていた名前と全く一緒の名前だというのだ。

その疑問をレイくんに伝えることにしたのだが結局は謎が解けないまま話は終わったのであった。

俺はその後、レイが、何かを考えていた。

どうやら俺の事について考え込んでいたようだ。俺はどうしてそこまで気になっているのだろうと思ってその理由を聞くと、俺はレイに対して俺の正体がこの世界の創造主であることを伝えたのである。俺はそれを聞いてレイは驚いた表情をしていた。その反応を見た俺は、この子はやはり何かしらの記憶が残っているのではないかと、思い質問をすることにする。するとこの子は何も言わなかったが明らかに俺に対する反応は違っていて俺の言葉を素直に聞いてくれた。俺はこの子とはいい関係を築けそうな気がしたのでレイに向かって話しかけたのだった。レイは、その言葉を聞いてとても嬉しそうな顔をしていた。俺はその様子を見ているとその時に、レイは俺と話をしたいと言い出してきて、俺たちは、この場を離れることになった。俺はこの時にこの子には隠し事は通用しないような気がしたのである。

俺は、アリスと一緒に、ユウキの元へ向かっている途中である。俺はなぜかとても不安に駆られていた。俺はこの国に危機が迫っていると、直感的に感じ取り、ユウキが危ないかもしれないと思いユウキがいる場所に向かおうとするが俺がその場所に到着するよりも早くにユウキの元へ辿り着いていた人物が存在した。その男は、レイという青年でユウキとはとても親しい関係でありそしてレイが言うには俺と同じぐらい強い人間だと言うことだった。俺とユウキはお互いに挨拶を終えると、俺はユウキがレイに対してユウキの姉ちゃんを俺に紹介した。そしてユウキは俺に向かってこの国の事を頼んできたのである。俺はそれを聞いて二つ返事で承諾したのだがそこで俺は一つの可能性を考えることができたのである。俺はその可能性が気になって、レイと話ができるようにセッティングしてほしいとお願いをしたのだ。俺はユウキのお姉さんにレイを呼び出してもらえるようにお願いしたのだ。それからしばらくしてレイがやってきた。レイが来た時に俺は彼が大魔王だということを本人に告げると、そのことを信じてくれていた。俺はこの時からこの子のことが好きになっていたのである。

俺はユウキたちと合流してからしばらくした後に、ユウキの姉ちゃんからユウキたちがここにいない理由を説明されていた。なんでもレイという少年を鍛えるためにこの王城から抜け出しているらしいのだ。そしてユウキはその事を心配していたが、俺はこの国に迫りつつある危険を感じ取っていた。だから俺はこの国の兵士たちにこの国を守るために戦うように指示を出しておいたのである。ユウキと俺は、俺の提案に同意してくれたのでそのままこの国の兵士と共に、大魔王軍と戦う準備に取り掛かった。俺はレイのことも考えてある事をユウキに提案する。それは、レイにこの大魔王軍との戦いで、レイを主力にして戦いに望んでほしいとお願いをしたのだ。そして俺は、大魔王の力を存分に発揮してもらうべくその前に俺は大魔王の力を抑えることができる力を身につけてもらうことにしたのである。

そのあとは俺とユウキが兵士を引き連れて外に出た時に大魔王軍が襲い掛かってきた。そしてその大魔王軍を俺たちは、この国から遠ざけることに成功する。

俺とユウキはこの世界を救うための大義名分を得て、その大魔王を倒すことに決めたのである。大賢者の生まれ変わりであるレイの力が加われば倒せると思ったからだ。だが俺は大魔王が、俺が思っていたよりずっと強かったのだ。俺も全力を出したのだが、まだ大魔王を倒すまでには至らなかったのである。そして大魔王の攻撃によって俺とユウキはピンチに陥ってしまったのだった。だがその時にこの国の王子でもあるタクミが現れて、タクトと大魔王の戦いが始まった。そして、なんとか勝つことはできたものの、その時の傷が元で俺は深い眠りに落ちてしまった。

俺は意識を失ってしまい目覚めることは無いのだろうと諦めていた時に、誰かの叫び声によって、目が覚めた。そこには見知らぬ天井があった。だが周りを見渡すとすぐに誰の寝室にいることが分かったのである。そしてベッドの横を見ると大賢者の生まれ変わりと言われているレイがいたのである。

俺は、大賢者の体の中に入り込んでいるレイの魂を呼び出して話をしようと試みるが、なかなか成功せずに、大賢者の精神がレイの中に取り込まれていくだけだった。それを見た俺はレイの心の中にある何かの核を取り除こうと考えたのである。その心の中に眠っているものを探そうとするがうまくいかずに苦戦をしていた。それでも何とかその何かを見つけ出すことに成功したがそれと同時にレイの意識が再び途切れてしまい、その意識を大賢者から奪い取ったことによって大賢者は体の自由がきくようになっていた。大賢者は自分の中に入り込んだものを見て、その危険性を判断しその核を破壊することに成功した。その結果、その精神を閉じ込める結界を作ることに成功して再びレイは眠りについたのである。大賢人は、自分の体を休めることにしてこの世界に残していった大賢者の兄弟たちとともにこの国を守ることを決めたのであった。

俺はレイが目を開けると同時に大賢者としての力を覚醒させたのであった。そのレイの目はいつもの黒目に金色の虹彩という姿ではなかったのである。そしてレイの姿を見た時その姿に驚いていた。レイの目の色は赤くなり、髪の毛の色もまた金色に染まってた。その姿を見て大賢者の人格はレイの中に再び宿ったということを理解する。それからはレイと二人で大魔王軍を相手にして戦いを挑んだ。

そしてレイは、この国の救世主としてこの国の人たちから英雄として扱われるようになり、そしてレイが俺のことを好きになったと言ってくれた時は嬉しかった。俺も彼女のことが気になっていてこの機会を利用して気持ちを伝えることができたらいいなと考えていたのでとても良かったと思っている。

私は、ユウ君とお付き合いをしているのですが、実は私はまだ一度もユウ君を家に招待したことがありません。というのも私の両親は共働きのため帰ってくるのが遅いからです。ですので今日はお母様方に許可を貰いました。そして、このお泊りを了承してくれたお父様に報告をしてきました。それで私はついに念願が叶うということでとても緊張しながら待っていました。そしてユウ君がやって来たんですが、その時に私が出迎えたので、ユウ君はいきなりのことで驚きながら家に入って来てくれました。それからお兄ちゃんとレイさんと挨拶を交わすと、私はみんなにお茶をいれてから部屋に戻って来たのである。その時にはユウ君はすでにお兄ちゃんと楽しげに話していた。

その話している様子を見ているだけでも幸せを感じていたけど、でもそれ以上に好きな人が自分の家族と仲良さそうに話している様子は、見ているだけでとても微笑ましい光景だった。でも、お兄ちゃんとの話が終わると、レイさんは急にお腹を抑えてトイレに行きたいといい出したのである。ユウ君もその様子が気になりレイさんのことを気にかけていたのですがそのせいなのか少しだけ顔色が悪くなってしまっていて心配になってくる。そして、ユウ君が心配そうにレイさんのことを見ていて、それに対してユウ君のお姉さんであるユウキさんが、ユウ君の体調が悪いからレイさんの看病をお願いしますと言っていたので私はレイさんの付き添いでレイさんの部屋の前に向かうことにした。その時にユウキさんがユウ君に話しかけている姿を見かけたがその内容は聞こえなかった。そしてその会話の内容を聞いていて、私はユウキさんが何か企んでいるように見えていた。だけどそれに関しては深くは追及せず、今はレイさんの事が優先だと思いレイさんの部屋に急いで向かうのであった。

そして俺はユウがトイレに行ってしまって暇を持て余した時に突然レイと俺に、ある異変が起きた。その現象はレイの瞳の色が赤く染まり、その瞬間、レイは別人と化してしまう。その変化に驚いた俺は一体どうしたらいいのかがわからなくなり、その時にユウがトイレから出て来る。俺は慌ててそのユウに助けを求めるとユウはレイの変化に気づいてくれたのだ。

「これはいったいどうなっているんだよ?!それに、お前の髪も何で白く変わってしまっているんだ?」

俺は混乱してしまいユウに今の状況を尋ねたのである。ユウもこの状況を把握していなくて、ただ俺の問いかけに対して答えてくれたのだった。

俺がレイについて知っていることはほとんどないのだが、唯一俺でもわかったことといえばこの子は大魔王と呼ばれる存在だということがわかった。そんなレイに対してユウは攻撃を仕掛けていたのだ。ユウが攻撃をした瞬間にレイとユウの力の差がはっきりと理解できたのだ。俺では手出しすることができないと、思いつつも俺はユウのことを信じている。そして俺は、二人の戦いを見守っていたがユウが負けてしまう。だがその時に現れた謎の仮面をつけた少女に助けられる形でなんとか助かったのである。その少女は俺の知らない人で俺にこの世界を救うのに力をかしてくださいと言ってきた。

その人物が現れた途端にレイの体にまた変化が訪れる。レイは目を閉じた状態で眠ってしまう。俺もどうしてこんなことになっているのかわからないが、レイの身に起きている出来事を知っているのはこの仮面の少女だけだ。そしてその少女の言っていることも嘘だとは思えなかった。そこで俺は少女に協力を申し出た。するとこの国で起こっている事態を説明してくれると言うので俺はユウと共について行ったのである。そして、俺はそこで、この国の王であり、ユウの父親でもあるタクトに会うことになった。そこで俺とユウは大魔王軍のことを聞かされたのである。そしてその大魔王軍を倒すにはユウの実力が必要だと言われた。そして俺はユウを説得するのだが結局は折れてしまい大魔王と戦うためにこの城を出ることを決意するのだった。

私は、レイと一緒に王城の外に出る時に、ユウキから、これからの作戦を指示されていた。それはまず俺とユウで大魔王軍と対峙する。その間にタクトは王城の人達に避難を呼びかける。レイとアリスはその時に大魔王軍が攻撃を始めたらタクトたちの避難誘導をする役割を与えられたのである。そして俺はレイを連れて城から出た時にユウと分かれ大魔王軍と対峙することになる。

ユウとは、大魔王軍と相対する前に俺は、ある提案をしておく。その提案は、レイが俺と共闘するためにユウがその戦いに加わるという提案であった。俺はユウキの姉ちゃんであるレイにもユウと同じ提案をしたのであった。ユウキとレイが協力して大魔王軍を倒すことができるならば、この国の民の命が救われる可能性が高くなるからだ。だがその申し出を断ったレイは、大魔王を俺一人で倒して見せろとまで言ってきたのだ。ユウキは、レイがその言葉を発したことに驚くが、俺は、レイの言葉に好感を抱いていたのである。その気持ちが本当であるならばこの国の人を助ける為にも協力して欲しいところなのだが残念なことに俺一人が犠牲になる覚悟ができている。なのでその事を伝えるとその事で話が纏まる前に敵が現れる。そしてそいつらが人間じゃないことがわかると、レイが戦闘を開始する。

大魔王の力を使えるレイは強かった。俺は、レイにユウやレイ自身のことを託すことにし、その隙に俺は大魔王のいる場所にたどり着くことに成功する。そこには予想通り、大魔王が待ち構えており、すぐに戦闘が始まることになる。だがその時の大魔王の動きはどこかおかしかった。

「まさか勇者と相まみえる事ができる日が来るとは夢を見ているようじゃな」

大魔王はそういうとすぐに大魔王と俺の戦いが始まった。だが、その戦い方は俺を殺すためのものではなく俺に自分を殺して欲しくて戦っているように見えた。だがその時に大魔王が俺を庇って攻撃を受けてしまう。その一撃を受けた時に大魔王は自分の死期を悟ったかのように大粒の涙を流して俺に感謝をしてくれた。そして最後にこの世界に残したものを残すと言って、その力を使うと一瞬で消えてしまったのであった。その事に俺は驚きを隠せないでいたのだった。だがその直後にある男の声が聞こえる。その声はユウだった。ユウは俺にレイがどこにいるのかを教えて欲しいと聞いてくるが俺は答えることはできない。なぜなら俺とレイは恋人同士で秘密にしなければならないことがあるのである。だからその問いに対しても俺は答えることができない。そのことを伝えると、ユウはそれならレイを見つけてから話せばいいと言い出してきた。その言葉を聞いて俺は、大魔王が残していったものをユウに伝えて、レイを探しに行くように促す。そしてレイの居場所を伝えた後でユウに、レイに会ってもこの事はレイに話さないように言ってから、大魔王が俺に残したものを託すことにした。そしてその中身を確認するとその中にはこの世界の現状を記した資料があった。その資料によると大魔王軍は俺達が思っている以上に恐ろしい計画を考えているのがわかってしまって不安になっていた。

それからしばらくして、俺はレイを見つけることに成功した。だが、俺が見つけた時にレイの様子がおかしく、大魔王の姿に戻っていた。それから俺は大魔王に話しかけるが全く話をしてくれないので俺は無理やりにでも話を聞いてみることにする。そしてレイの口からはユウのことについて聞くことができたのである。

そのレイの話を聞き終わった時俺はユウの所に向かって走り出した。そしてレイが俺に襲いかかってくるので俺は全力を出して戦う。レイとの戦いが終盤に差し掛かる時に俺は、レイがもうすでに死んでおり魂だけの状態で動いていることに気づく。そしてレイの体が朽ち果てていく姿を見て俺の心には怒りしか浮かんでは来なかった。俺の大切な仲間を殺した奴らを絶対に許さないと思い、そして俺はレイとの最後の決着をつけようとしていた。その勝負はレイの勝利で終わるはずだったが、なんとそこに現れた謎の仮面を付けた少女によって俺は殺されそうになるが、なんとかその少女の攻撃を防ぐことに成功してから俺とレイは和解することができた。その後レイの体は崩壊を始めていて、レイ自身も自分が消えるのは時間の問題だと言うのである。

俺はどうにかならないかと尋ねるとユウは諦めろと突き放されてしまうが俺はそんな簡単にレイを諦めることができなかった。俺は、レイの体を治す方法を探そうとするがレイから俺に話があると言われ俺はその内容を聞くのだった。

俺はレイから話を聞いた時に、その計画を実行すればこの国の人を助けられると確信したがその方法はかなり危険であることもわかっていたのである。だけどその方法が実行できるタイミングはこの国に訪れないだろうと思ったので俺も、レイの提案に乗ることに決めた。そしてレイにこの作戦が成功した時にどうなるのかを聞いた時に大魔王と人間の関係が変化すると聞かされた。俺もそれには賛成だったがこの作戦を実行するのであれば、レイの体に負担が大きすぎると判断できたので、俺達は一度城に戻るのであった。そしてレイとユウキには先に城に帰ってもらい俺はユウと一緒に行動することにしたのである。そして、城に戻るとタクトが俺にレイのことを頼みたいと言ってきて俺達はすぐに行動に移った。レイに頼んでユウキと一緒に俺達の家に来てもらうことにした。レイが家に到着すると俺はユウと協力してその部屋からある装置を取り除いてもらう。そうするとレイの体の異変が起き始める。その光景はまるでレイの体の中にもう一人のレイが入り込んでいくような感じで俺は心配になりながらその様子を見ていたのだ。そうすると今度は急に大魔王が出現した。そしてその現象が終わるとレイは意識を失い倒れてしまったのである。俺は急いでレイの事を寝かせるのと同時にタクトに連絡を入れたのだった。

ユウキとアリスとレイはユウと一緒にユウの家に戻りユウとタクトは俺の家に集まることになった。俺はそこでレイに起こった現象を説明すると、皆一様には信じられないというような顔をしていた。そんな中タクトだけが俺の言葉を疑うこともなく信じるという決断をしたのである。俺は、どうしてそんなにも信用されているのかがわからなかったので、なぜそんなに俺を信じてくれるのかという事を訪ねた。

その返答がとても興味深いものであった。俺はユウキにレイのことについてどうするかを話し合おうと提案をして、ユウとタクトが家に帰ってきた時に話し合った。

ユウとタクトは俺が大魔王を復活させたことに関して怒っていたが俺はこの世界を救うには必要な事だと伝えて、俺の行動を理解してもらったのである。だがそれでも二人は、レイを救いたいという俺の意思を尊重してくれたのであった。そこで俺は二人に協力してもらう代わりに大魔王軍についての情報を話すことを提案すると、二人共納得してくたたのである。そこから、俺達の会議が始まった。

俺が説明を始めると俺は、この国の王様でもあるタクトに対して、大魔王軍を倒すために協力して欲しいことをお願いしたのだ。タクトはその願いを引き受けてくれようとしたが、ここでユウが話に割って入ってきた。

その言葉の内容はとても残酷なもので、俺は、ユウが大魔王軍のことを知っていることに疑問を抱きつつも、その言葉を受け入れるしかないと感じたのである。その言葉に対して、俺はタクトと二人でユウを止めようとした。しかし、その俺とタクトの言葉をユウキが、否定する。その言葉でユウが本当にこの世界の人間なのか疑問を持ち始めたが、その考えを振り払って、レイを救うために俺は、その話を受け入れたのだった。その時にレイは、ユウキを抱きしめていた。ユウキは少し照れ臭そうな表情をしながらもユウの気持ちに答えていた。そしてユウが俺達に大魔王軍を倒せる可能性があるのは俺だけと言ったのである。だがその時に俺はその言葉を鵜呑みにせずに質問をしたのだ。

俺の予想では、レイとユウキの力を使えば大魔王軍に対抗することができるだろうと考えていたからだ。だが俺の言葉にユウは、この国の人達が全員束になってかかっても勝てる見込みがないと言い出したのである。それに加えてユウは俺とこの国で最強と呼ばれている戦士二人が力を合わせても勝つことはできないと断言してきた。俺もその言葉に同意せざるを得なかったのである。

だがその時俺とタクトはその力を持っている人物に心当たりがあると話した。それはレイでありその力はレイにしか使えないものだということを話す。俺はその事を伝えた後でレイが大魔王であることを伝えてからレイが俺と同じ能力を持っている事を伝えたのだった。その事を聞いた後にユウキの顔が曇る。だがすぐに気持ちを切り替えてレイの力を俺と融合させるのを手伝って欲しいと俺に言ってきた。それに対して俺が断る理由もないと考えたからその提案を受け入れることにしたのである。だが、俺のその答えが意外だったのか、みんな驚いていた。だがレイは大魔王であることを知られたくないのか断ろうとしていたが、それをユウキが止めてレイを強制的に眠らせた後、俺はレイに自分の意思で協力して欲しかったので、強引にその作業をさせてもらったのである。

それからユウはレイの力を制御しながら俺達と共に大魔王軍がやってくる時を待つのであった。その間の時間は大魔王軍と大魔王が復活したことに焦った魔人が動き出しているとの報告を受けてユウが一人で対処してくれているおかげで、俺の出番はなかった。

その間に俺は、ユウに、俺とレイが元の世界に戻るための術を探すようにユウに依頼をしていた。そして、俺の役目として俺はユウの側に居ながら、レイの体に起こっている現象の対策法を見つけることが仕事になった。そしてユウはレイとこの世界に残ってくれるということで俺がユウの代わりにユウと行動することになっていた。

俺がユウにそのことを話してからしばらく経つと、俺の体に違和感を覚えてその症状を訴え出す。その事にユウキが気づき、すぐにタクトがユウとアリスとレイの事をタクトにまかせて、俺が苦しんでいるところに駆けつけてくる。

ユウキとアリスにはレイの事を任せた後で俺はタクトとともに俺が寝かされていた部屋に行く。それからユウキが、大魔王の能力が使えるようになるまでの時間を利用して俺の体に起こった異変を調べることにした。だがいくら調べても原因が全く分からなかったのである。それからしばらくして、大魔王の力を制御することに成功したユウが現れてから俺達は大魔王城に急ぐのであった。

そして大魔王城に向かう最中で、俺は大魔王城で起こった事を全て話すと、その話を聞いたユウキが怒りだして、大魔王が生きていた時に、その首を取ろうとしたことを思い出した。その後俺は自分が体験したことをそのまま伝えてからレイの記憶についても伝えた。

俺はユウキにレイの記憶を取り戻す方法を探してもらうように頼む。そうするとユウキもレイに記憶を取り戻してもらいたいと願っていたようで俺に協力することを約束してくれたのである。そして俺はこの世界を救わなければいけないと感じていたので、俺達はレイの体に負担がかかるのを承知の上で大魔王城に向かうのであった。

俺は大魔王城にたどり着くと、そこには大魔王が残した資料があった。そしてその内容はこの世界で起こりつつある問題とそれに関する対応策について記されていて、その内容を見た俺は怒りを覚えることになる。なぜならそこに書かれていのはレイを苦しめる為の計画とこの世界の人たちに対する扱い方について書かれていたからなのだ。その資料の中にはこの世界の人を解放するためには俺の命が必要な事、俺が死んでしまった場合はユウキ達がその計画を実行してくれると書いてあった。その内容を読み終えるとすぐに俺はその作戦を実行する為に大魔王の部屋へと向かったのである。その作戦はレイをこの場に連れて来てから、俺を殺してレイに乗り移るというものだった。

その作戦内容に怒りを感じたものの、まず俺は、この計画を考えた人物に会いたかった。そこで、この部屋の奥の部屋に向かって進んでいく。するとそこには大魔導士を名乗る老人がいた。その男は俺の姿を見ると嬉しそうな表情をするのだが俺はそいつに文句を言いたいことがあったのだ。それはこいつもこの国の人たちを実験台に使ったという事がわかっていたからだ。

俺は早速本題に入り大魔王の部屋に行かせてくれと言ってみるがあっさりと断られたのである。そして大魔王は復活してもこの世界を滅ぼす事しか興味がないことと俺達のような異世界から来た人間に負けることはあり得ないと自信満々に言い放っていた。そこで俺はレイを助けるためにその計画を実行するのに必要なことを説明した。大魔王が復活するのであれば俺とこの国の最強の勇者が戦うことで、その大魔王を復活させて俺に宿らせるという内容を伝えたのである。

大魔王がこの国の人達をこの国の王様とタクト以外の人を皆殺しにしようとしている事を知っていた俺は、そんな事は俺が絶対に許せないと思っていたのだ。そして大魔王はそんなに簡単に蘇ったりしないと大魔道士は言っていたがその考えを打ち砕く方法を俺は既に知っている。俺とレイの力があればその封印された体を無理やり目覚めさせてから俺が乗っ取る事で、その作戦を成功させることができると俺は確信している。そう伝えると俺は大魔王が復活し次第その作戦を行うつもりでいるのだ。だがもし俺が失敗した時のことを考えると大魔王を俺に取り憑かせた状態でユウに殺してもらうことにした。そうすれば大魔王は二度と俺の体からは離れられないはずだ。

俺の考えを聞いた後に大魔導士の爺さんが何かを考え始める。おそらく俺を始末する方法を考えていたんだろうなと思った俺は隙を見てその場を離れようとするがこの城の中は俺にとって不利な状況にあると理解して一旦ユウとタクトの元に戻って話し合いをする事にする。俺がユウとタクトを連れて再びその場所に戻ると、俺を殺そうとする動きが見られた。だから俺は大魔王の部屋に行ける扉まで行くと、タクトが突然その前に現われて俺を大魔王に近づけないような行動をしてきたのである。それだけではなく俺の前にはユウキも現れて俺を通さないようにしてくる。その行動に対して俺はすぐにこの二人が俺をここに足止めしようと動いていることがわかったのだ。そして俺はユウキの攻撃をよけながらユウに話かけるとユウがなぜ大魔王に執着しているのかを教えてくれたのだった。その理由を聞くと俺が大魔王になるべきだと俺を諭すように説得し始めたのだ。俺はそのユウの言葉に動揺してしまった。俺は、この世界の人達を救うにはレイを救う必要があると考えていた。そのためにはこの城の奴らの命を奪うしかないと考えているからだ。だが、レイを救うためには、ユウの協力がいると考えていたので俺はユウキに協力を求めた。

それから俺はユウキが大魔王になることを諦めてくれたので、俺はタクトと一緒にレイを救う手立てを考えるためにレイを救う方法と、この国の王を殺す計画を立てることにした。だがその計画がすぐに見つかる訳がなく、俺は大魔王が復活するその時を待つのだった。その間に俺は、レイの体から溢れ出ている魔力の塊が消えていくのを感じていた。それと同時に、この世界の人に被害が出ないようにレイに回復魔法を掛け続ける。俺はこの時、自分の体の限界をすでに超えていた。だがそれでも、俺はレイの体の中に潜む魔物の気配を消すために全力で戦い続けている。

俺とユウは大魔王が復活する時に備えて、タクトとレイの救出計画を一緒に考えるのであった。しかし、この国の現状を見る限り、この国で俺達の味方になるものはほとんどいない。だからこそこの国に俺達が頼れるものはいないので、大魔王と大魔王軍に対抗する術を二人で考えなければならなかった。そしてユウが俺がレイに乗り移ってその力を使うことができるかもしれないと言う。だが、俺はレイに乗り移ってからの記憶は全くないし、レイにも意識がなかった。

その事を伝えてからレイが目を覚ました時にはもうレイに乗り移った状態になっていて、その時の状況を確認することは俺にはできなかった。レイが俺に憑依してからどれくらい時間が経っているのか分からないからこそ、一刻を争う状況なのだ。俺が考えている案はレイを救い出して、その時に俺を消滅させれば俺の力を使うことができないのではないかという考えに俺は至った。俺のこの案を伝えるとタクトは俺のその案を試してみても良いというので、タクトが考えたこの村の人を犠牲にせずに大魔王の力を封じ込める方法は成功しなかった場合に実行することを決めるのだった。そして俺達はこの村に戻ってくる。その道中で俺の体がさらに苦しくなり、限界を迎えようとしていたのである。その時に俺は自分の命を引き換えにしてでも大魔王を倒すことを決めたのであった。

ユウキに俺は大魔王を必ず倒して欲しいと頼むと俺は自分の中に眠っているレイの力を解放するために自分の胸にレイが宿るように念じると俺はその方法に気づくことができたのである。そしてその力を解放して俺はユウキにこの事を知らせてユウキに俺ごと大魔王を倒してもらう事にした。ユウキが躊躇うと予想していた俺であったがユウキはその話を受け入れる。その後ユウキがこの国を出て行った後、ユウキと大魔王の力が激突することになったのである。その戦闘を見届ける為に俺もユウキについて行こうとしたのだが、その途中で、タクトが大魔王が復活したことを報告しに来た。それから俺達はユウキの元に駆けつけると既に大魔王は復活しておりユウとレイの力で押さえ込んでいるところだった。その光景を見た俺達はすぐに加勢することにする。ユウは自分とレイとの大魔王との力比べで負けると察知すると大魔王との同化を試みて、そのまま大魔王と同化した。その事を知ったタクトは大魔王の力を抑える為に力を解放し始める。

それからユウの暴走が始まったことにより大魔王との戦いが始まり、俺はレイにこの世界の為に死んでくれと言って大魔王に乗り移ることに成功する。そして大魔王になった俺はこの世界で起きている事を知って怒りが込み上げてきたのである。その事に対して俺に大魔王になれと言った男を殺したいと考えた。だが俺の力では大魔王に歯向かう事はできずにこの国の人を守る為に俺にこの国の人を全て殺せと命じるのであった。その命令に従うようにした俺だったが俺の中にある感情は止まらなかった。そして大魔王として目覚めた俺の姿を見た人達は怯えてしまいこの国を去ろうと逃げ始め、俺がこの国から逃げ出すように誘導していくのである。

その行為がどれだけ愚劣なことか理解しているがそれでもなお俺の気持ちはおさまらなかったのである。俺は大魔王としての本能が抑えられなくなり大暴れを始めたのだ。その行動が結果的に大魔王の力を強めることになるのだが俺にはその制御は効かなかった。そんな時、ユウキがこの城に来てタクトの制止を振り切って俺の所にやって来ると、俺がこの国の人間を虐殺しようとしたところで俺の目の前に立ちはだかったのだった。

そしてユウキは俺に自分がこの世界の人を助ける為にやってきた事と大魔王にこの国の人々を守れと言っていたことに対して反論すると俺はその言葉を聞いて怒りを鎮めることに成功したのだ。俺の本音はやはり俺がこの国の人間に何をしようとしてもこの国の人間達はこの俺に殺されないようにこの城の中で暮らしている者達を守りたいという意思を持っていたのである。それを聞いていた俺は大魔王という圧倒的な力を持つ者でありながらその考えを持ったユウを俺は気に入ったのだ。そして俺達はこれから起こることについての作戦をユウと話し合うことになったのであった。

私は大魔王様から言われた通り大魔王にこの国の人を助けてくれと言われたことを思い出してこの国の人達を守ろうと動くことにした。まずはこの国の王を殺し大魔王様にこの国の人達を守ってもらおうと考えたのである。だがその作戦をユウに伝えるとその作戦には賛同してくれなかった。その理由を聞くとこの国は今大魔王によって支配されているから俺達がこの国を支配しようとしている大魔王を倒した場合この国に住む人々はどうなるんだと言って私を止めようとしてくる。

その質問に対して私は答えを持ち合わせていなかった。なぜならその可能性を考えていなかったからである。だから私はこの世界の人たちに危害が及ばないようにするために、大魔王に協力してこの世界の人たちを全員殺す必要があると言うが、ユウはそれにも反対してきた。そこで私はユウを説得しようとしたのだが結局は聞く耳を持たずにユウはこの城から出て行ってしまったのである。そのあとから大魔王が大声でユウキの事をバカにした。そして大魔王がユウを殺せるなら殺して見ろと言うので私はユウが大魔王に勝てるわけがないと思ってしまった。

そしてその作戦は失敗に終わった。私の魔法は全て大魔王には通用せず、そしてこの城の結界を破ることができなかったのである。それに加えて大魔王が使った魔法の威力は今まで見たことも聞いたこともないほどの恐ろしいものだった。私は大魔王が放つ魔法から必死に逃げ回りなんとかユウキの元へとたどり着こうとしたが間に合わず、ユウキも私をかばって一緒に大魔王の攻撃を受けて瀕死の状態に陥ってしまう。そして私が死なないために自分に治癒魔法を掛け続けているが一向に良くならなかったのである。

ユウキが意識を失いかけたその時だった。ユウキの体に突如として光が纏い始めたのだ。それはこの世の光とは思えない程の眩しさを放っており、その光のオーラは私も飲み込んでいったのだった。だが私はユウキの事を諦めずにその状態が終わるのを待った。しかしユウキがその状態になったのはほんの数秒でユウキにその効果が切れた瞬間にユウが目を覚ますと突然ユウから莫大な量の力が放出されていたのである。しかもその力がユウの体の外に出て行くことはなく全てユウの中に吸収された。そのことに大魔王は驚きを隠せないでいたがすぐに我に返りユウに向かって攻撃を仕掛けようとしたがユウの体から溢れ出るその力をまともに受けて吹き飛んでしまった。それからその隙を狙ってユウが大魔王に乗り移ったのだった。

ユウキに乗り移った大魔王がこの国の住民達を虐殺しようとする前に私は大魔王の元に行き説得をすることにした。最初は説得を受け入れてもらえずユウから大魔王に攻撃をする許可を得た。だが大魔王は攻撃が一切通じなかったのである。だが大魔王が魔法を使ったことでこの城の天井が破壊されたことによって空が見えるようになっていた。だがそれでもこの部屋の中の環境を悪くしていた。

私は大魔王にこの部屋から出たらどうだと提案するがそれも受け入れられないと言われる。そしてついにユウキと大魔王の力の衝突が始まるのであった。大魔王とユウキの力の差は歴然であり、このままではこの国にいるすべての人間が死ぬと思いながらも私はユウキを信じることにする。だがこの国の人々はみんなで一致団結し、この国を守ると心に決めており、全員がその覚悟を決めた時、この国の民から力が湧き出してきて、ユウキはその力に押されて後退し、この国の人たちは大魔王の力が弱まるにつれて大魔王の力がだんだん弱くなっていくことに気づいたのである。

大魔王がこの国の民から感じる力が怖いと思ったのと同時に大魔王は自分の力がどんどんと落ちていることにも気づいたのだ。大魔王の力は確かに強く、この世界の最強クラスの存在であるが、大魔王が操っているユウの力の方が遥かに強かったのだ。そして大魔王は諦めの感情を抱きながらその意識を手放した。そして意識を取り戻した時に目の前には自分の腕を切り落としたアベルがいたのである。

その出来事に大魔王が驚いていると大魔王はなぜ自分は拘束されて牢に入れられているのかわからない様子だった。そしてユウキがこの部屋に入ってきたが大魔王の体は傷だらけだった。そんな大魔王を見てユウキは心配していたが大魔王が元気なことを確認するとユウキが大魔王の事をこの国に居座らせてあげて欲しいと言うと大魔王はあっさりと了承してくれたのである。それから大魔王がユウキに対して自分の配下にならないかと誘うがユウは拒否して大魔王と敵対することを決めた。

その会話を聞いていた俺は、自分の目的を果たさなければならないと思い俺はユウとタクトを大魔王との戦いに行かせる為に俺はこの場で待機していることにした。そしてタクトはユウを安全な場所に転移させて戦いに参加する。俺は二人のサポートをするべく二人の戦いを見守る。二人はお互いの能力を理解して協力しながら大魔王と渡り合っていった。

その様子を見ていて、俺とレイの力があればこんなに簡単に倒せていたんじゃないか?と思う程だった。だがそんなことを考えていても仕方ないと、ユウとタクトに加勢するため、俺は二人の戦闘の場に赴くのであった。

タクトとユウの戦闘が始まってしばらくするとタクトは俺の力が必要だと言い出した。そして俺はユウを大魔王に憑依させるのに成功したことを伝えると、大魔王が大暴れをして、この部屋の中の空気が悪いことを訴えたのである。そこで俺はレイが使っていた風の魔法を使えるようにタクトに伝え俺はレイに変身してからその風を使って大魔王を吹き飛ばす。それから俺がユウキを気絶させ俺がこの場の指揮を取ることになる。それからユウが俺に話しかけてくる。俺は大魔王に乗り移っていた時に感じていたことを伝えておく。だが、その事実は信じてくれそうになかったからその話は流した。その話をしていると、ユウが大魔王に殺されてしまうかもしれないので大魔王を倒す作戦を実行するようにと伝えた。大魔王に勝つ為に俺達は連携して立ち向かうと決めると、俺とユウは大魔王の元に駆けつけると俺は、ユウの背中に手を置いて俺が持つ全属性の力を解放する。

するとユウから膨大な力が流れ込んできたがそれをうまくコントロールすることで大魔王の魔法を打ち消した。だが、ユウの魔法はそれで終わらすことなく大魔王を攻撃し続けていた。だが大魔王にはその魔法が効かないと分かると大魔王に剣を振るうと、今度は俺がユウから受けた魔法をその身にまとって大魔王にぶつける。

その結果、大爆発を引き起こし、その衝撃によって俺は壁にめり込み大ダメージを受ける。

俺はそれでもなんとか気合いを入れて立ち上がる。

すると俺の前にレイがやって来て回復してくれる。俺は感謝の気持ちを言葉で伝えようとしたが声が出ない。俺はもう一度口を動かそうとするがそれでも言葉が出てこなかった。すると、ユウの後ろ姿を見た瞬間になぜか涙が出てきてしまった。その光景を見て俺も涙を流していたのだ。

そして俺とレイの絆は今完全に結ばれたのであった。そして俺たちは再び動き出し大魔王との激しい攻防を繰り広げる。だがその力は均衡していた。

その最中大魔王の魔力が急激に増大して、この国の人たちから大魔王に魔力が流れ込む。その事にいち早く察知した俺とレイはすぐにその行動を止めるための行動に移す。だがその行為が遅かったためにユウキは大魔王に取り憑かれて暴走してしまったのである。ユウは俺達の攻撃を全て受け流し俺達のことを圧倒し始め、その力で俺達に襲いかかってくる。

俺はレイが作り出した空間に避難しそこで回復するがその間にも大魔王とユウキの攻防戦が繰り広げられている。大魔王はこの部屋を破壊するほどの強さを持っていながらその力を無駄な事にしか使ってなかったのである。大魔王はこの城が破壊されてもどうってことは無いと、それよりもこの国の人たちに恐怖を植え付けようとする考えで動いていたからだ。だが大魔王もこの部屋の環境の悪さに耐えきれなくなり、大魔王は外に飛び出していった。そこで俺はすぐに大魔王を追うと大魔王は空を浮かび上がり魔法を発動しようとしていて、俺は大魔王の動きを止めた。だがその反動は大きく大魔王の一撃をもろに食らってしまうが、そこでようやく声が出るようになり俺はレイを呼ぶ。するとすぐに来てくれた。俺はその隙にレイにこの国の人を助けるように頼むと大魔王と戦うことを決意する。

まず大魔王が発動しようとしていた魔法の威力が半端ではなく、まともにくらっただけでもこの国が無くなる可能性があるほどの危険な魔法なので大魔王が魔法を放つ前にその魔法を防ぐ為の魔法を使う。だが大魔王はその魔法を防ぎ切ることができずに、かなりのダメージを与えることに成功する。そしてそのまま大魔王は逃げ出そうとしたがその前にレイの風魔法が発動され、この国の周りを取り囲むようにして風壁を作り出してこの国が外からの侵入を拒む結界を作ったのである。

その結界を作ると同時に大魔王は逃げることができなくなってしまったのであった。だがこの結界は一時的なものであり、いずれ結界を解く必要性がある。だから結界を張れるうちに大魔王を倒す必要がある。だが、今のユウキの状態だと普通なら倒せないはずだ。それこそ俺が全力を出し尽くしてもユウキは倒すことはできない。だがユウキには憑依という切り札があるのでもしかしたらユウキならば勝てるかもしれないと思っている。

それから大魔王とユウの戦いが繰り広げられる。大魔王は俺と戦った時の力を使いユウの攻撃を防いでいた。

ユウの力が大魔王を追い詰めていきこのままでは本当にやばいと感じて、俺はユウの体から大魔王の魂を追い出す。だがその瞬間に大魔王から凄まじい衝撃波を放ちユウの体に大ダメージを与えたのだった。だがそのおかげで大魔王が乗っ取る前の状態に戻ったのですぐに大魔王の元に行くとレイと二人で大魔王に攻撃を加え続けた。だが、やはり大魔王の力はかなり強く俺達がいくら攻撃を続けてもほとんど意味がなかった。

そのことに苛立った大魔王が怒りを露わにしその攻撃が激しくなったが俺とレイのコンビネーションが大魔王を上回ったことで、俺達の攻撃の方が押し始めた。大魔王が放つすべての技に俺とレイは全て対処する。だが大魔王はユウキの肉体がもう限界だと判断してその肉ごと破壊することを決意したようだ。俺はそんなことを許すはずもなくその行動を阻止するために動くが大魔王には通用しなかった。そしてユウキの体が吹き飛ばされてしまうが、俺は即座にレイを呼び出してユウの体を回収して俺の背中に乗せてからユウキのところに急いで向かった。

俺がユウキの体を抱えながらレイが魔法を発動させて大魔王との距離を取ったが、俺とレイでは大魔王を封印することはできない。そこで俺がレイに憑依し俺の意識は消えてしまう。そして大魔王を封じ込めたのだが、それと同時にユウキの体は光輝き、ユウは元の姿に戻る。

そしてユウは意識を失っていて俺とレイが必死に声をかけるが目を覚まさない。俺はそんな状況の中大魔王と戦おうとしていた。

大魔王の実力と、ユウキの実力を考えればおそらく互角に近い勝負になるだろうとは思っているがそれでもユウは負けてしまったのだ。そんな相手に大魔王は余裕そうに俺のことを見る。そのことが腹立たが、ここで怒りをぶちまけたところでユウキは目覚めることが無いので俺は冷静さを保つことにした。

大魔王が俺に向かって攻撃を仕掛けてきたがその攻撃を俺は軽々と受け止めて見せたのである。すると今度は魔法で攻撃を仕掛けてくるがそれも俺は簡単に打ち消す。

「まさかここまでやるとは、少しは認めなければなりませんね」

俺が大魔王の言葉に対して返事をせずに黙って見続けていると、その沈黙が嫌なのか大魔王はさらに言葉を続ける。

「あなたのお仲間があなたとレイ様のお命を狙うようですがどうしますか?」

俺はその言葉を聞いていたが、大魔王はユウキを倒したから俺とレイの弱点を見つけたと思い俺がレイの体を奪い返すとでも思ってこんなことを言っているんだろうと思った。だけど、その発言を聞いた俺に迷いはない。俺の仲間に手を出させない。そんなことを考えていると大魔王は俺の考えを見抜いたかのように笑う。

そしてその表情のまま大魔王は自分の持っている杖を掲げると魔法を発動してこの部屋を破壊し始める。俺はそれにたいして防御系の魔法を展開しようとするがその攻撃を防いだ時には大魔王の姿はなくなっており、代わりにこの部屋の中に大きなクレーターが出来ていて天井が崩壊しかけていた。

その光景を見て俺は大魔王の恐ろしさを知った気がしたのだった。するとユウキの体が反応しているのを感じ取り俺が慌てて駆け寄るとユウキがうっすらと目を開けると何かに怯えるような仕草をする。そしてその後レイに憑依された時のことを思い出す。その様子からユウキはまだ完全に大魔王の支配からは抜け出せていないと判断できた。だが、俺はそのユウの様子を見ながら大魔王に対抗できる方法を考えるのであった。

俺がこの世界に来て初めてこの国を訪れた時にあった大魔境が今この場所で復活しようとしている。大魔王によって復活したそれはこの国に絶望をもたらすものであろう。だから俺はこの国の人たちを救うべく大魔王と戦い、なんとか封印することに成功したがその結果、ユウキの心は完全に支配されてしまったのだ。俺は大魔王の言う通り大魔王は強い。だが、今はユウキの体に大魔王が入っており、それが問題となってきていた。

レイと融合して大魔王と戦うと決めた時に大魔王が言っていた事を思い出したのだ。

『ユウキ殿は私には勝てますがユウ様と融合した状態ではどうでしょうか?恐らくはユウキ殿とユウ様ならまだしもあなたが相手となると勝ち目はありません』と言っていたので、俺もそれを気にしていた。俺もユウと同じで大魔王とは互角に近い戦闘を行うことができた。

だがレイの力が無ければ俺は勝つことはできなかったと思う。

レイとの絆が完全に繋がったことにより俺の力は格段に上昇した。それに加えてレイの持つ能力と俺の魔法を組み合わせる事で大魔王を倒せたのだ。だが俺一人で戦う場合、ユウキの体に宿った大魔王を倒すことは可能かもしれない。

ユウキが操られているのが分かっている俺としてはなんとかユウキを助けてやりたいと思っていた。だが、俺一人の力で大魔王と対等に戦うことは難しいのはわかっている。なのでまずはレイと協力してユウキを取り戻すために動こうと考えている。だがその事を伝えるとユウキが俺に質問をしてきたのである。なぜ自分を置いて先に行かないのかと、だが俺もその理由はわからないので答えることができないでいると、俺のことをじっと見つめる。その視線が痛くて耐えきれなくなったので俺は思わず目を逸らしてしまったが、そんな俺の姿を見て何を思ったのかわからなかったが俺の肩に手を置くと、ユウキは笑顔を浮かべながら口を開く。

ユウの体の異変は俺が感じ取れるようになっていたのは確かだ。

俺がレイから力を吸収して一体化したことで、レイの魔力と俺の魔力が混ざり合って一つの力になった影響かもしれない。それが原因だとしても俺はこの事実を喜ぶべきだと思っている。だってユウの体と心を完全に救う事ができる可能性が増えたのだから、その事が俺にとっては嬉しかった。

だが俺とユウでは大魔王に対抗することができない。そこで俺が考えている作戦をレイと相談する事にしたのである。まず俺の考えを聞いてくれるか不安ではあったが、レイはこの世界の人間ではないからこその発想があるかもしれないと期待をしていた。だがその提案はこの国を滅ぼすことになる可能性もあると言うと、レイはその案を実行することに決めたのである。

そしてその日はすぐに訪れた。俺とレイは事前に打ち合わせたように行動する。だが俺の体は俺が操作するのではなく、ユウの体に俺の意思を送り込んで動かす。つまり俺は意識だけでレイの肉体を動かして大魔王と戦うことにしたのである。そしてその事をレイに伝えると、レイもそれを理解したようにすぐに了承してくれた。そして俺は大魔王と戦うための手段について考えるが何も思い浮かぶことが無かったのでとりあえずユウキに攻撃するように指示を出す。すると俺の予想通りに大魔王はユウキを攻撃することを選び大魔王の攻撃は俺達に向かって飛んでくる。だが、大魔王の攻撃を防ぐとレイとユウの体を入れ替えることにした。

するとユウキが大魔王を封じ込めていた力を全てユウが使い始めた。だがレイの体を使っている状態だとユウキも大魔王にダメージを与えることはできても決定打にはならないと判断した俺はレイに頼んで自分の力を使うことにする。だがその前にレイが俺に話しかけてくると大魔王を倒す為の最終兵器があると伝えるのであった。俺はそのことをレイに聞くと大魔王を封じ込めるための最後の策があることを伝えてくれた。そのことについて詳しく聞きたい気持ちはあったが、それよりも俺はレイに確認を取ると、すぐに俺はレイの意識が途切れてしまったのだった。そして気がつくとそこには大魔王の意識はなくなっていた。

それからすぐにレイは目を覚まして大魔王との戦いで俺の体に傷ができたことやユウが元に戻ったことも報告してくれて俺達はすぐに城へと戻って行ったのである。

俺は城に戻ってくると、すぐにレイが作り出した空間に案内される。

その空間は見た目は何もなく殺風景なのだが、そこに入り込んだものは死ぬことがないのだという。俺はこの中に入るように言われるが躊躇する。その俺の表情を見たレイが笑みを見せると安心させるような声色で話を始める。

そしてその空間に入ってしばらく待っていると、大魔王が封印されている場所に着くことができると言われたのである。そして俺はレイの言われた通りに入るとレイが言ったようにその場所に行くことが出来た。するとそこには俺の予想通り大魔王がいたのだがその表情にはどこか疲れが感じられる。その事から俺には大魔王がもう長くないことを感じ取ったのであった。そしてレイは俺に指示を出してきた。

そのレイの言葉に従い俺は剣を召喚しその大魔王を封印することした。

俺達が戦っている間に大魔王が俺に語りかけてきて、その内容に耳を傾けてみるとこの世界にはまだ見ぬ宝や素材がありそれらを独占している人間がいるということがわかった。だがその人物の居場所がわからなかった。

そんな大魔王が唯一手がかりを見つけた場所は、俺達のいたあの村の近くだということが判明した。だが、大魔王を俺が抑えている間にもレイが必死に大魔王と戦ってくれていたのでなんとかレイが時間を稼ぐことに成功してくれて俺はレイの言っていた大魔王が探していた人間の情報を知ることが出来たのである。そして俺がレイから大魔王を託されてレイと大魔王との戦いが始まったわけである。

だがその時俺はあることを思い出してレイに伝えようとしたのだがそのタイミングで大魔王は俺に向かって魔法を放ってきたのでその攻撃を相殺すると、大魔王は何かを喋ろうとしていたがその前に俺は攻撃を仕掛けたのである。だが、レイから聞いていた通り、レイが憑依してない状態のユウの体を使った攻撃では全くと言っていいほどダメージを与えられなかった。すると大魔王は俺の攻撃を軽く避けると攻撃を放ち始めるが、レイのアドバイスのおかげで俺はなんとか大魔王の攻撃を避けることに成功する。

そしてその回避行動の隙を狙って俺は再び大魔王に向かって攻撃を仕掛けた。今度はさっきよりも大魔力を纏った攻撃であり大魔王はそれを受けることになった。そして大魔王はそのまま地面に倒れ伏して動くことはなくなってしまった。

大魔王を倒したことによってレイは解放されたはずなのだが俺は何故かこの大魔王の死体が消えることはないのではないかと考えていた。そう思っていた理由は二つあり一つ目が大魔王から感じられた膨大な魔力の塊がこの場に残っていたからだ。そしてもう一つが俺の考えが正しいのならばレイが助けたかったのはユウの方であって俺じゃないので俺がこのままレイが大魔王になるなんてことにはなっていないはずだと思ったからである。だが、もしこの死体からレイが出てこないとしたらその時にどうしたら良いのかわからないので一応念のためにこの大魔王に止めをさすことにする。すると、俺が手にしていた魔聖刀が大魔王に突き刺さると、その刃は大魔王の体内に侵入していきそして心臓を貫くと大魔王の動きが止まったのであった。

だが大魔王はそれでも動こうとしていたので俺はもう一度魔聖刀で貫く。

「あなたは何をしているの?」

俺は突然後ろに現れたレイに声をかけられると、この大魔王にはまだ意識が残っているということを教えると、レイは大魔王に対して質問をするが、俺の質問は無視されたのである。そしてレイが言うことをまとめるとこの世界の神様が何か企んでいるらしく、それを止める為に大魔王が何かしようとしているから俺がそれを止めた。と、それだけの説明だったがレイが言うには大魔王がまだ死んでいない理由もこれでわかったらしい。そしてその理由を聞いた時に俺は驚いた。それはレイも俺と同じ考えでこの大魔王は倒しても意味が無いと判断してあえて殺すことはしなかったのだと聞いたのである。

確かに言われてみればそうだと思えた。だが、そんな事を思いつきそうなのはこの世界に来てからレイぐらいだろうと思っていた。だから俺がそのことを言うとレイが怒っていたので慌てて謝罪をした。レイは大魔王を封印したいと考えているようだったのだ。その事について詳しく聞こうとするとレイが大魔王を抑えつけるから俺がとどめをさせと言うのであった。その事を疑問に思ったが、レイが真剣な表情で話すと、それが正しいことだと信じることができた。

それから俺はレイの指示で動き出すと、まずはレイと大魔王の間に割って入ると、そこから俺が攻撃を加えることでレイと大魔王に距離をとらせた。するとレイが今の状況について教えてくれるのであった。まずは大魔王と融合した状態であればレイの力を取り込むことによってレイの力を完全に取り込んでしまう事ができると、ただしその力は完全に取り込める訳ではなくてレイの人格もそのまま残るので俺もレイの体を使うことができるようになるという。そしてもう一つの方法として大魔王がこの世界にある力を集めるのを邪魔する方法があると言った。その方法を俺は知りたかったのだが、俺が聞く前に大魔王が再び暴れ始めてしまい、それどころではなくなってしまった。

だが大魔王の攻撃がレイが操ってくれているおかげで簡単に避けることができるのでその事を気にせずに話をすることにした。レイも俺の事を信用してくれたのか説明を始めたのであった。まずは大魔王を倒す方法は二つあって、一つが俺とユウの力で大魔王を封じること。そしてもう一つが大魔王が集めた力を奪い取る方法であると、レイは自分が大魔王の力を奪おうとしたが上手くいかなかったのでその二つの方法で対抗しようと考えたようだ。そしてレイの話が終わるとすぐに大魔王は攻撃を再開するのだった。そして俺はその大魔王の攻撃を受け流すと、俺の体に取り込む。大魔王の体の一部を吸収することで俺にも大魔王の持つ能力が使用可能になったようである。そのことを理解すると同時に俺はその力で大魔王に攻撃を行うと大魔王が俺の攻撃を避けることを諦めるかのようにその場にとどまり始めた。そして俺の剣技により大魔王は体を刻まれていった。そして俺は最後の一撃を放つために大魔王に接近した時である。突如として現れた人物を見て俺は驚愕してしまった。なぜなら、俺達をこの場所に呼んだ人物が俺の前に姿を現したからだ。そしてそいつは俺に向かって話しかけてくると、その人物は神様だということがわかったのである。だが、俺にとってはこいつが神だと言われてもなんとも思わなかった。むしろこいつの方が偽物じゃないかと思ってしまうほどだったのである。

俺は、目の前にいる奴に、本当にお前がこの世界の神なのか確認するとその人物は笑顔を見せると俺に語りかける。

だがその言葉を聞いて俺が驚いた事は、この世界の人間は全て偽りの存在で全て神が作り出しているものだと知らされた。そしてその目的は俺に本当の神が誰であるかを教えたい為にやってきたと告げてくるのである。だが俺の知っている限り神様は俺の前世に存在した人物であり、俺はその人に一度会っているのだ。だが、この人物の口ぶりからは俺が前世の記憶を取り戻したことをすでに知っており、なおかつその人のことも当然のことのように話してくるのである。なので俺はその人物が一体何者なのかと問い詰めようとすると、俺を見ていたはずの人物の姿が見えなくなったかと思うと一瞬で俺の前に現れると、その手を振り下ろす。

そしてその腕から繰り出された衝撃波は俺に直撃すると、俺の意識は途切れてしまうのであった。

俺が意識を取り戻すと俺は地面に転がっていて、俺の近くにレイが立っていたのである。

俺は起き上がると俺が見たことをすべてレイに伝えた。そしてこの世界を支配しようとしている神のことや、大魔王が俺が元いた世界で戦ったことのある相手だったこと、それにこの世界の真実についても話してくれるのである。そして最後にレイがどうしてここに来たのかを教えてくれた。

レイは元の世界に戻りたかった。だから俺達が戦っていたあの場で、この世界を支配しようとしていた存在の魂と、俺達のいたあの世界に飛ばされた時の記憶を持っている魂を融合させる。その事に成功すると大魔王の魂は元いた世界の方に向かい、レイはこちらに戻ってきてしまったのだという。

俺にレイの気持ちを理解できるかどうかはわからない。だけどレイのことを考えるとどうしても胸が苦しくなる。だが俺がそんな風に思っていたのを見透かしていたのかレイは笑みを浮かべていた。

その表情を見た俺は、俺の考えすぎなんじゃないかと思い、そしてこれからの俺達について話すことにする。大魔王の封印に成功したことを報告したりしないといけないのだ。

「レイは俺と一緒に来ないか?俺としてはずっと側にいてもらってもいいんだが、レイだって色々とやらなければいけないこともあるはずだ。それなのに、この国の為に今まで頑張ってくれていて、俺に協力して一緒に戦ってくれたり、ここまで案内してくれてありがとう」

「私はあなたのお側に置いてくれるんですね!こんな私を必要としてくださってとても嬉しいです!」

こうして俺はこの国の王様と話をするために王の間へと向かう事にした。その道中俺はレイにお願いをしていたことを思い出してそれをレイに頼むことにする。

それは俺の正体を隠せというものだ。俺は大魔王を倒してその素材を回収した後は元の世界に戻るつもりだった。その事を誰にも気づかれないようにしておきたいのと、俺はこの異世界でかなり有名になってしまっていて、この国に俺の知り合いが大勢存在するらしい。その事について知られると非常に面倒なことになってしまう可能性があったからだ。俺の予想だと、大魔王を倒したのは間違いなく勇者であり俺はこの世界を救う為にこの世界を一時的に訪れているだけですぐに帰る予定だったのだと認識されているのだと思う。そしてそれが事実ならば俺達はこの国から歓迎されてもおかしくはないのかもしれない。しかし、もしも俺が大魔王を倒していない事がばれたら確実にこの世界を救った英雄は別の存在であると勘違いされてしまう可能性が高いのだ。

だからレイは俺のことを勇者と呼ばずにユウと呼んでくれと言ってきた。そうすることで俺が勇者ではないという印象を与えようと考えたのだろう。だがこの事を考えるのは俺じゃなくてもできるはずだ。なら他の人でも良いのではないかと思ったが俺が頼める人が他にいなかったのだ。その事を考えて俺がレイにそのことを頼むと快く引き受けてくれる。そしてその後レイに、この城にある本を読んでみて何か新しい情報がないかどうか探してほしいと言ってみるとそれも引き受けてもらえることになった。

そうして俺とレイは城の中を歩いていると、そこには多くの兵士と思われる者達が立っていてその中には王様もいた。俺とレイは、その人ごみの中から王様を見つけるとその傍に行くと、俺は今回の件について説明をした。

大魔王について、その討伐方法。

そして大魔王が残した素材については回収してあるということを全て伝えたのである。

「そのことについては大変喜ばしいことだが、その前に君が誰か教えてくれないかな?」

俺とレイは、ここで初めて互いの自己紹介をする。

レイは俺の隣に座ると、 俺は自分の身分は、この世界では珍しいとされている黒髪に黒の瞳が特徴だということを説明したのだった。

その説明を聞いた王様と周りの者は驚きながら納得している様子を見せていたのである。それからしばらくしてから、俺は自分が元の世界に帰ろうとしているという話をし、俺がレイにこの世界に留まるように言ったのだが、それは無理なのだと言われたので俺はどうすればいいかわからなくなってしまっていた。そこで、俺はレイと別れる覚悟を決めてから俺がレイの面倒を見るからレイにこの世界に残るように説得することにしたのである。

だが俺はこの時すでにあることに気づいているべきだったが、それはまだ後のことだった。

レイには好きな男はいないのかという話を俺は持ち出すと、レイはそのことに全く興味がないという態度を示すので俺はレイに対して、レイにもそういう時期があるはずだと言う。

俺はそのことに対して少し嫌味のようなことを言ってから俺はレイに告白するとレイは嬉しさのあまり泣き出してしまい、その姿を見ていた俺も涙目になってしまった。

そして俺はその流れのままにレイを口説こうとした時だった、レイは恥ずかしがりながらも俺の手を握るとそのまま俺を連れてその場から離れることにしたのである。それからしばらくの間レイと話をしていたがレイにそろそろ戻ろうと言われる。確かにここに長く留まる理由もなかったので俺とレイは部屋に戻った。

俺はレイを元の部屋に送り届けると、そのあと俺も元の客室へと戻るのであった。

レイを部屋に送って戻ってくると俺の前には一人の女性が立っていた。俺はこの人物を知っているので挨拶をしてこの人物がこの城のメイドであることを理解する。

俺がその事を考えていると突然彼女は俺にキスをしてきたのだ。俺はすぐに彼女を引き離してから彼女の名前を呼んで注意することにした。俺の言葉を聞くとなぜか彼女は微笑み、そしてすぐに立ち去ってしまったのだ。

俺はその行動を見て首を傾げていた。一体何をしたいのだろうかと。だが、俺はそんなことをすぐに考える余裕はなくなってしまった。なぜなら先ほどまでの話を聞いていた人物がこの場に現れたからである。

その人物はなんと俺が愛した女性だったのだ。

俺の目の前に現れたのは愛する人であった。そしてその人物は俺の元に向かって走り寄ってくると、俺を抱きしめてきたのである。そして俺が彼女を抱き返すと、お互いに見つめ合う。そして俺は彼女の顔を見ると同時に俺は驚いたのだった。その表情はとても悲しげな表情をしていて俺に何を言いたそうにしていることだけはわかった。

俺が彼女に話しかけようとしたその時である。レイがいきなり俺の腕に抱きついてくると俺の目の前から去っていったのである。俺はその光景を見て思わず笑ってしまいそうになった。そしてそれと同時に俺はあることに気づいたのである。彼女が現れた瞬間、この世界から俺と彼女とレイの姿だけが消えてしまったのだ。

俺は周りを見るとそこには俺の知っている人たちが全員いることがわかった。しかし彼らはこの事態を理解している様子がない。なので俺はまずはこの世界の状況を確認しなければならないと俺は考えたのである。だが、俺達三人がいるこの場所には窓などはなく、唯一扉があるが、鍵はしっかりと掛かっていたのである。

俺はこの状況を打開するためにこの世界に来てからの事を思い出す。俺はあの時大魔王を封じ込めることに成功したはずであるがなぜ俺は大魔王の中に取り込めれたのか、それは今になってもわからなかった。しかしレイのおかげで俺は助かったのだから感謝しなければならないのである。だがそのレイはいったいなにをしていたんだろうかと不思議になった。もしかするとなにかを俺に伝えようとしていたかもしれないと思ったが俺には思いつかなかった。それにしてもここはどこなのかわからない。ただこの部屋の感じからは俺が元々住んでいた世界のどこかにある建物であるような気がした。俺の勘でしかわからないけど。

ただ一つわかることはここには俺の大切な人もレイもいるということだ。俺はとりあえず二人に会いたくてしょうがなかったのである。

それからどれくらい時間が経過したのだろう、俺達はいつの間にか気を失っていて、目を覚ますと、俺達はベッドの上に寝転がっていて、隣にいるはずの彼女がいないことに気づき、俺は慌てて立ち上がる。そして俺はあたりを見回すとやはりこの世界がどういう世界なのかを確認する必要があった。俺の知っているこの世界の景色にそっくりだけれど、何か違和感があった。俺はそう思った後に急いでこの部屋に唯一存在している出口のドアの方へと向かう。

そして俺がこの部屋の出入り口であろうその大きな鉄の塊を開ける。俺は中に入ってみるが何の変哲もないただの部屋であり、俺は次に壁に手を当てた。この壁に何かないかと考えたのだ。俺は手に力を入れてみると案の定壁が崩れ落ちていく。そして俺の視界に映ったのは真っ赤に燃え上がっているこの国の街並みであった。

俺はこの現状に驚愕しながら、どうしてこんな事になっているのか理解できないがとにかく外に出なければという気持ちになっていたのである。そして、その燃える街を見た時に俺はあることを思い出して、急いでレイに念話を飛ばすが反応がない。おそらくレイも俺と同じでこの国のどこかにいるはずなのにレイとの交信ができない。そのことから考えられる可能性は、この国はもう滅んでいるかもしれない。そう思うと、俺の頭の中で最悪のシナリオがいくつも浮かんできてしまう。そして俺が外の様子を確認しようとするとそこに人影が現れる。その人物は黒いローブを着ていてフードを深く被っているために容姿をうかがい知ることは出来ない。

だが俺には、俺の目にはその人こそがレイであるように見えた。俺が名前を呼ぶと俺の元にゆっくりと歩いて近づいてきたので、その人物を逃さないように手を掴んで俺に引き寄せると俺はレイに問いただして、レイを拘束しようとしたのだ。すると俺の耳には何かしらの呪文を唱える声が聞こえてきて、その声の主はレイではない別の誰かの声だったのである。俺がその声の主を探そうと周囲を警戒し始めると、その魔法陣の中からレイに似た人物が現れて俺は絶句する。その人物とはレイではなかったのだ。

俺はそこでようやくこの人物が誰であるか気づく。それは大魔王だったのである。俺に攻撃を仕掛けてこようとしたが、俺は大魔王の攻撃を受け止める。そして大魔王がなぜこの世界に出現したのか疑問を抱くと俺は大魔王の攻撃を防ぎながら大魔王が俺を殺そうとしたことに関して怒るのであった。そして俺も全力で大魔王を攻撃し始めた。だが俺の攻撃は全て防がれてしまうため俺は次第に焦りを覚え始めていたのであった。それから数分の間激しい戦闘を繰り広げていたが俺に勝ち目はなかったのである。そして、俺は自分の死が近いことを感じていたのだ。俺は必死になって大魔王に抵抗するものの全く歯が立たない状態になりつつあった。俺はこのまま何もせずに殺されてしまうのかと諦めかけていた時、俺は大魔王から攻撃を受けて床を転がり回る。それからしばらくしてから痛みが引くと俺は起き上がって再び剣を握り締める。俺はそれからしばらく戦っていたが徐々に体力が削られていき、やがて限界に達してしまった。その隙を狙ってか大魔王から一撃を食らってそのまま意識を失うことになる。

俺が目覚めた時、俺は自分が倒れている場所を確認する。

するとそこは先ほどの城の中の大広間のような場所で、レイがいないことにまず気づいたがレイのことを考える暇もなく目の前の大魔王が立ち塞がってきたのである。そしてその次の日になるとまた一人誰かがこの城に訪れたのだがそいつもまたレイじゃなくて、しかも俺はなぜか自分の力が弱くなっているような気がしていたのだ。そんな状態でこの城にやってきた人物を倒すことなどできるわけがなく俺はあっけなく殺されてしまう。そして、またしても誰かが来るのだがそいつもまたレイではなく、レイ以外の仲間達は全員死んでしまい俺はついに孤独になってしまった。

俺はレイと二人で幸せになるんだと決めていたのでレイがいないこの世界で生きている意味などなかったのである。俺は何度もこの世界に来る前に戻りたいと強く願ったがそれがかなうことはない。そして俺は、絶望に打ちひしがれて死ぬことを決意したがその時だった、この世界では見ることのできない光が目の前に現れ、俺はその光の中へ入っていったのだった。俺はそれから気を失ったが、目が覚めると、俺は俺の世界に戻ってくることができたのだ。俺が目覚めてから最初にやったことそれはスマホのアプリを使って俺が異世界に行った証拠を残していたからだ。俺はそれを見ると、その証拠が残っていたのを見て安堵すると、俺はそれから俺がレイと過ごしてきた日々を思い出した。そして、俺がレイと一緒にいた時間はあまりにも短いものでしかなかったということに気づいて、俺はその事実を知って涙を流した。そして俺はレイに会いたいと思ったがレイはきっとこの世界のどこかに居るはずだと、レイを探そうとして俺は動き出そうとするが俺の体は既に限界を超えており動くことすらままならない状況だった。

「はぁ〜、まじで体が動かないんですけど、これって絶対あれだよな」

そう、俺の体は俺に告げているのだ。この世界の俺はここで死んだのだと、そして俺はもう一度あの世界に戻る必要があるのだと俺はそう思ったのである。

しかしどうやってあの世界に行くのだろうか。俺はまだあちらの世界でやり残したことがある。だから戻る必要があるのだと思っていた矢先であった。俺の前に謎の女性が現れて、俺を抱き抱えるのであった。彼女はいったい何者なんだろうかと思いつつも俺は彼女の胸元を見てその女性は彩花に似ていると思ってしまったがどう考えてもこの女性が彩花のわけがないのだと思った瞬間、俺は何故か安心してしまい眠りにつくことになったのだ。だが目を瞑ろうとした時だった彩花はもしかすると偽物かもしれないという不安も生まれてしまい眠れない状態が続いたのである。そんな状態の時でも眠くなってきていた俺は、俺に話しかけてきた女性の話を聞き流すように耳を傾けていた。その言葉を聞いて俺が驚いたのは次の一言だけだった。

俺の目の前に現れたのは俺がよく知っている顔だったのである。その人物が俺を見て驚いた表情を浮かべていた。

そう、それは妹の結花の顔にそっくりだったのである。

俺は妹と会えて嬉しかったがそんな事を考えている暇もなく、俺はこの世界に戻って来たのだと確信した。しかし目の前にいる妹は明らかに様子がおかしいのである。俺は目の前の結花の顔を見ているとあることを思いつく。そう、この世界の俺の肉体はすでに死亡していてこの世界の俺が今この世界にいることによって二つの人格が存在するのではないかと思ったのである。そして、もしこの世界の俺と入れ替わった場合俺はこの世界に残ることができるのかという問題が発生するのだ。この世界に来たときの俺はすでに死んでいて、今ここにいる俺の体に宿っていたのだとしたら俺に残されている時間はあとどれくらいなのだろうと考えながらこの世界で俺のやるべきことを考えたのである。だが俺はあることに気づく、それは、この体の主はこの国の王族の人間だと言う事に。だから俺と入れ替わりで向こうの世界に行けば俺の代わりにレイを守ってくれるかもしれない。だが俺はこのまま死ぬのを待つのか、この世界で俺の愛した彼女を助けることができないのか、その事ばかりを考え始めた。俺は俺なりにこの国を救おうとしたがそれでも無理で俺はこの国に何かを残しておくことにしたのである。俺がこの世界にいた痕跡を残したかったので俺はまずは城の外に出てこの国がどういう風に滅んだのかを確認しようと考えた。

俺は外に出た時、やはり街は崩壊していることに気づいたのである。その光景はまるで地獄のようでありとてもこの国は栄えて平和を保っていたとは思えないほど酷い状況であった。俺の目に飛び込んできた景色には血を流して苦しんでいる人々が大勢居て、俺は急いで助けようとしたのだがすでに俺は死んでいるために何をしても無意味だと感じた。俺はもうすぐ消えてしまう命を有効に使って俺にこの世界のために何かできることは何かないか考え始めると俺は俺自身がこの世界でしてきたことを思い出したのだ。

俺は魔族と大魔王を倒して、そして魔王を倒した。俺のやってきたことが正しかったかどうか俺には分からないが俺のこの世界にしてきた事は無駄ではないと、俺は思う。この世界を良くするために何か出来ることはないのか俺は必死になって考えたが俺の体はどんどん衰弱していきやがて息を引き取ったのであった。

それからどのくらい時間が経ったのだろう、俺は真っ暗闇の空間の中に立っていた。俺はこの暗闇の場所にくる前の記憶を思い出す。俺の妹であるはずの結花は実はこの世界の結花ではない別の世界に存在していた存在だった。俺はそのことに驚愕しながらもこの世界で妹と別れることになった。だが、俺のこの世界でも俺の体は死に俺はこうして違う世界の別の俺と入れ替わることに成功したのである。この俺は、元の世界で俺が死んだ時に俺と入れ替わっていて、俺はこの世界でレイを救うという役目を果たしこの俺と入れ替わったのだと思っている。

俺はこの世界のレイはどんな人物かわからないけれど俺が俺であるならば必ずレイを守り抜いてみせると思うのだった。俺がこの世界に来たのには理由がある。そう、俺にはレイを助けたいという想いが強すぎて成仏できなかったのだ。俺はレイのことを心の底から愛しておりそのせいで俺の命が失われてしまったとしても、レイを救えるのならそれでいいと俺は本気で思っている。だからこそこの世界にもう一度来る必要があったのだ。俺は俺が今までに体験したことを全て振り返り俺はこれから自分がするべきことについて考えると俺は自分の意思でこの世界に戻ってきたわけではない。つまり俺の意思でこちらの世界に戻れるかどうかは分からない。しかし俺はレイとまた会いたい。そして今度はもっと長く一緒にいたいと願うようになっていたのだ。俺が再びレイに会えた時レイを守ることができるのだろうか。

そして俺はまず、大魔王がどこに潜んでこの国を滅ぼして行ったのかを調べなければ、と思ったのである。俺は自分の体を見てみると既に朽ち果てているのか腕や足などは動かなかったのである。俺の今の状態はかなり悲惨な状況になっている。俺は俺の体を見る限り恐らくこの世界の俺と魂が繋がっている状態なので俺と俺はお互いの居場所を感じることができたのだ。だが俺がこの世界から出るためには俺は俺に干渉することができない状態になっている。つまりここから出る為にはもう一人の自分と入れ替わるしか方法がなかったのだ。だがそれを行うには俺の本体はもうすでに亡くなっておりその手段を使うことはできないため、俺は大魔王を見つける必要がある。大魔王の力を奪えれば大魔王と戦うことが可能になるはずなのだから、それに俺が元の世界に戻った場合俺の意識を大魔王に移すこともできるのではとも考えていたのである。そうすることで俺は俺と入れ替わることが可能なため俺がこの世界を脱出する方法を思いついた時には俺は俺に戻ることが出来ていた。大魔王を倒すことさえできれば俺の目的は達成される。俺はまずは自分の状況を把握しようと、まず俺はレイを救いたいと思い行動を開始しようとしたらレイの気配を近くに感じ取るとレイがいる方向に走って行きたいところだったが、俺の体はもはや動くこともできない状態であった。そんな状況下の中で俺は俺に語りかけてみる。

『俺に少し時間くれないか』

俺の言葉に反応したのか、それともたまたまなのかは知らないがその声が聞こえてきたのであった。

そして次の日、この体の持ち主は俺の方に来て、何が起きたのか教えてくれた。この世界に来た理由は妹の結花と恋人になるため、そしてもう一つあった。この体には結花以外の大切な人の姿が思い浮かぶ。この世界にも勇者が来ていることを聞いて俺は、その人に助けを求めることを決意したのである。俺はまずはその勇者と話をしなければと思っていた。その人は俺と入れ替わった方の人物、名前は確か、天川零斗と言った気がするが俺はその人のことを知らない。だが俺はこの世界に来る際に名前を変えておりその人物の名前を知ることは不可能であった。

「レイト様おはようございます」

「うん、ありがとう」

「レイト様お食事を持ってまいりました」

「そうか、わざわざ持ってきてもらってすまないが僕は一人で食べる」

俺はこの体に入っている人の名前をレイトと呼ぶことにする。その名前を聞いた時にこの体の名前は、レイという名前だということは把握していた。俺は俺自身であるのになぜかレイと呼ばれるとその人物はレイだと認めてしまいそうな感覚に陥ってしまう。

それからレイトは俺が寝込んでいる間に起こった出来事を教えてくれて俺達は今後どうすればいいのか話し合った結果、まずはこの国を立て直すことにした。そのために俺はレイの側にいて少しでも力になれるように努めた。そしてしばらく時間が経って、ようやく城を建て直せるだけの木材が集まり始めてきて、俺達と城の関係者以外は誰も近づかないようにして俺達の城は再建していったのである。

しかし問題が山積みになっていたのであった。まず俺にはどうしてもやり遂げなければならないことがあったのだ。それは大魔王討伐だった。俺は早く俺の本来の目的を果たすべく俺は行動を起こすのだった。そして、その目的を達成させるために俺はあることを試そうと決心したのである。その方法というのはレイにこの世界の俺の肉体を貸してもらい大魔王を倒すことだったのだ。この作戦がうまく行けばこの世界も救われることになるのだ。俺はこの世界を救うためには仕方がないと割り切ることにした。この方法でも世界が救えないような時は俺は別の手立てを考えなければならなかったからである。そう思いながら俺はこの世界を救うために大魔王を倒しに行こうとするのだった。

俺が大魔王の所に行くと俺の存在に気づいていたのかその瞬間に攻撃を仕掛けてくるが俺はそれをギリギリ避けることに成功していた。俺は俺に向かって剣を振るってきたが俺はそれを素手で受け止めることに成功する。俺が攻撃を受け止めたことに驚いているのか相手は一瞬だけ攻撃が止まるのを感じ取った。しかしそんなことで俺はこの攻撃を終わらせたりはしなかった。なぜなら俺が今ここで倒さなければいけないのは、この世界の俺と入れ替わった方の俺の体を操っている大魔王であるからだ。

俺の攻撃に対して相手が回避し俺の後ろを取り、攻撃を仕掛けてくるが、俺はその行動を先読みしていた。俺は背後に殺気を感じ取ってそのまま相手の腹めがけて拳を突き出す。だがその攻撃を防がれた俺は大魔王の反撃を食らう。俺はその衝撃によって地面に打ち付けられそうになるがすぐに体勢を整えた。

俺が大魔に攻撃を繰り出す度にその一撃で地面は割れていく。しかし大魔もその程度では終わらずに、何度も俺に攻撃を繰り出してくる。

お互いに一歩引くことのない互角の戦いが続くがこのまま戦っても俺は勝てないかもしれないと感じたのだ。そこで俺は一旦引き、俺はこの場から離れようとするが大魔はそれを阻止しようとしてくる。

だが、この隙を逃すことなく、俺は瞬時にこの世界のレイの元に戻り大魔王の情報を伝えることにしたのだ。

俺達が二人で話をしているとそこにサーシャが現れると、レイを安全な場所に連れて行くと言って連れて行ってしまった。その事に焦った俺は俺の意識をこの体の中に入れると、俺は俺が持っていた聖剣エクスカリバーを取り出すと俺とこの体の意識が混ざり合い、その意識はもう一人の俺の中へと移動していく。俺が目を覚ますとそこはレイの家の中で俺と俺が対峙する形で立っている。しかしレイはおらず一人しかいない状態であった。

レイはどこに居るのかと、俺は疑問に思うと俺の隣に一人の男が姿を現す。この世界にいるもうひとりの俺だった。この世界に来た時に、もう一人の俺はすでに死んでおり今俺の隣に姿を現したのはこの世界のもう一人の俺だった。その男は俺よりも背が高く体格もよく、まるで大人の姿をした俺と言わんばかりの雰囲気をしていた。だが俺とは決定的に違うところが一つあったのだ、俺の目には光がなく虚ろな目をしておりこの世界の俺は生きているのかと思わせるくらいに覇気というものがなかった。そして、もう一人の俺は口を開くと驚くべき事実を言い出したのである。もう一人の俺の正体はもう一人の俺の本体の体の中にいる魂だった。この魂こそが俺でありもう一人の俺という訳だった。俺にはもう1つの記憶があり、それは元の世界でのレイを守ることが出来なかった後悔だけが残りその気持ちだけで生きていたのだがその想いすら叶わなくなりその気持ちさえもなくなってしまった。俺はこの世界に来た時からずっとレイのことしか考えていなかったのだ。

俺はレイに会いたいという一心でこの世界を生きてきた、レイにもう一度会いたい、そして今度は必ず守ってみせるという思いでこの世界で生き続けそしてレイをこの手に抱きしめたいと、そんなことを考えて俺は生きていのだ。

俺はレイがこの世界のレイでなくても良いと思っている、この世界のレイも、そしてこの世界に来る前のレイも同じレイであるから、だから俺はこの世界を救おうと思ったのだ。この世界を救えるかどうかではなく、俺は俺の手でこの世界を救うことに決めたのだ。

俺にできることは全てやるつもりだった。しかしそれでもレイを守れなかった時のことを考えて、もう一つの案としてこの世界に俺がこの世界に召喚されて来るようにするために、俺はこの世界の魔王を倒すことを決めたのだ。

俺は俺が魔王を倒す為に動き始めるのであった。

「おい、そっちに行ったぞ!」

俺はこの世界にやってきた魔王軍幹部の一人であるダークネスウルフの群れに襲われている人間達がいた。俺はこの世界に来たと同時にこの世界に危機が訪れていることに気付きこの世界の人達を助けることにした。この世界の魔王が何を考えているのかわからない以上下手に動くのは得策ではないと判断したため俺は様子を見ていたが今こうして目の前の人助けを優先したのである。だがこの人数を相手に一人で戦うのは分が悪いため仲間達に連絡を取って応援を要請したのだ。そうすることによって、どうにかこのピンチを切り抜けることに成功したのである。そしてその後すぐに俺は自分の家に戻ることにすると、その途中に大柄の男の人が倒れているところを見つけたのだ。その人は俺と同じ顔をしていて恐らく同一人物であることが分かった。俺はその人物を家に連れていくことにするとその男は自分の名前を名乗ったのである。

「俺の名は天川零斗だ」

俺の名前を聞いて俺は驚くことになる。この世界に来る前に俺をこの体に憑依させた張本人であった。そう俺が元々いたこの体は零斗という名前なのだ。俺達は二人とも名前が変わっていたことと顔つきまで全く一緒だったため、お互いが同じ人物であることを理解したのである。それから俺はこの体に入ってこの世界のことを知るために俺はレイにこの体を借りることにしたのであった。

「君はどうしてここに?この辺りにモンスターが出るなんて情報は聞いたことがなかったんだけどな。君が倒したのか?」俺はこの男が何者かを知りたくなって質問をしてみる。そして俺は大体予想していたことが真実であることを確認し驚愕することになる。

俺は大魔王であるサタンを倒して欲しいと言う頼みごとを受けてこの世界に来たが、どう考えてもこの体では大魔王を倒すことができないと悟っていた。だからこそ、俺は俺に体を譲ることにした。大魔王を倒した後でこの体を元の世界に戻してもらうつもりだったが大魔王があまりにも強く俺は俺の本来の目的を達成できなくなってしまい、俺は大魔王を倒すことができなくなってしまった。大魔王が俺の想像以上に強かったことが原因である。この世界の魔王ならまだ俺にも倒せる可能性があるかもしれないと期待していたのだ。

「そうだけど、この近くにダンジョンができたらしくその攻略中にこいつらに絡まれちまった」と俺の言葉にレイはそう言い返した。そう言って彼はポケットの中から石のようなものを取り出した。そして俺の方に近づき俺に石を渡してきた。俺はその石を見て驚いてしまう。この世界には存在しないはずの魔道具だったからである。この世界に来る際に俺はある人から渡されたもので俺はその人物にお礼をしなければいけなくなった。だがその人物が誰かを知ることは永遠にないだろうと思うが。

そしてレイの口から俺は大魔王の名前を聞いてしまう。俺はレイにその名前を聞いた時、大魔王の名前はサタンであると思っていたが、大魔王の名前はなんとルシファーという名前でこの世界では大魔王ルシファーと呼ばれているということであった。そして、俺はレイがその魔王の関係者であることを薄々感じ取っていたがそのことをはっきりと聞かずにいた。俺の目的はあくまで俺の目的であってこの世界の魔王であるとか、そういうのは一切関係ないからだ。

俺にはどうしてもやりたいことがあるのだ。

俺は大魔王を倒しに行くための準備を始めたのだ。それは仲間を集めて戦力強化と仲間との連携の強化だった。しかし俺の今の実力ではとてもではないが魔王軍に太刀打ちできないだろう。それに魔王軍を単独で倒すほどの実力を身につけなければ到底この世界を救えないだろうと考えていたのだ。

そのためには魔王軍の協力を得る必要がある。そう思い俺はある場所へと向かったのだ。その場所とはロズウェルドさんが住んでいる街だったのだ。俺は魔王軍に協力を求めるべくこの街に来ていたのだ。俺がこの世界にやってきてすでに三ヶ月近く経とうとしていた。しかしその間俺は何もしていなかった訳ではない、この世界の情報を収集するとともに仲間を鍛えていたのである。しかし仲間といっても今現在仲間にしている人間は三人だけだ。俺がこの世界に来た時に最初に俺の仲間になった人間だ。名前はレイと言い、この世界で初めて会った人間の男である。見た目は完全に子供で俺の身長の半分くらいしかない。年齢は10才くらいだと思うが実際はもっと年齢が上だという噂もある。しかし、レイは謎が多くこの世界について何かを知っている節があるためこの世界に来て一番初めに出会ったこの男がなぜ俺の味方をしているのか、それが分からなかったが俺のことを裏切る様子もなかったからこそ、レイがどんな秘密を抱えているのかは分からないが信用することにしたのだ。

次に仲間にしたのは、この世界で二番目に俺の仲間にした女の子だった。この世界で二番目に知り合ったのはサーシャだった。この世界で一番最初にあった少女で俺が最初にサーシャを助けてあげたことがきっかけで彼女は俺のことを信じてくれており今ではすっかり仲良くなったのだ。そして彼女のレベルは現在25になっておりその強さは折り紙付きだった。この世界には、魔物と呼ばれる存在がおりそのレベル帯は20前後となっている。そしてサーシャのレベルは30なのでそのレベルの高さがよく分かるはずだ。

最後に仲間になったのはサーシャと一緒にいたこの世界で三番目に出会った女性である。サーシャと同じようにこの世界で出会って一緒に旅をした仲であり、サーシャと同じくらいの信頼を置ける仲間であった。この世界での三番目の出会いというのは、彼女と出会った場所は森の中で道に迷っているところにサーシャと会いこの世界にやってきたのだ。その女性はリーラという名前であり、歳は19と若く冒険者の中では珍しい女性の戦士である。この世界の冒険者の男女比はこの世界にやってきた時の時点では9:1とかなり男性が少いのである。そしてその少ない男性のほとんどは戦いが得意ではないため、実質女性しか戦うことができる人材がいなかった。この世界に訪れた時の状況はかなり最悪な状態でこの世界を滅ぼそうとする魔王と戦わなければならなかった。この世界を救おうとしている俺にとってこの世界の魔王は絶対に殺さなくてはならない存在であったのだ。だから俺は少しでも強くなるために仲間を募る必要があったのだった。

俺が今どこにいるかというとこの世界の王城だった。ここは世界最強と言われる勇者が魔王を倒した時に使ったとされている場所でここの城はこの世界の中心とも言えるほど重要な場所であり魔王軍もこの城の付近に現れることが多く、俺の仲間たちは今ここに集まっており俺を待ちながら鍛錬を積んでいる。この城にいる者たちはほとんどの者が強いのだが、それでも俺は今よりも圧倒的に力不足のため今のままの状態では話にならないのだ。そのために、俺はこれから仲間にする人たちに仲間になってもいいと思ってもらうためのアピールをしていたのだ。

俺はレイと、リーラと、サーシャと、それぞれ別行動をとって俺は一人一人の家を訪ねているのだ。俺の目的は俺がこの世界を救う為の最強の仲間になってくれるであろう人物を探すことだ。しかし、いくら仲間を探しても魔王を倒すことを考えるとその答えが見つからなかった。俺が求めているのは、圧倒的な力とそれを扱えるだけの精神を兼ね備えていなければならないのだ。俺はこの世界に転移させられる前に大魔王に挑み敗北したことで自分と、そして魔王軍の幹部達の力がどれほどのものなのかを思い知った。あの力は強すぎたのだ。

俺の本当の力を解放してやっと渡り合える程度の実力しかなく俺は大魔王ルシファーの足下にすら及んでいないと思ったのだ。この世界を救うということはそれだけ強大な敵と戦うことになり、当然魔王軍幹部とも戦う可能性は高いため今のうちに戦力を強化する必要が出てきたのだ。そう考えると俺は大魔王に挑む前に仲間を増やすことが何より優先すべきことであると判断して俺が仲間になることを認めてもらえるような人材を探し始めたのだ。俺は、まず初めに大魔王の関係者がいる可能性のあるこの国に訪れることに決めたのだ。そうすれば魔王軍にも関係している人間と会う可能性が高いと考えたのだ。そして今俺は大魔王の部下がこの国の王女様と結婚してこの国に住むことになったという話を聞いて、この国が俺達の拠点になりそうな場所だと思いこの城にやってきたのだ。

俺はこの世界に召喚されてから一ヶ月と少し経ったがその間に俺の仲間達は強くなっていた。この世界にやってくる前の段階でこの世界の平均と比べて俺の強さは異常であった。この世界に来たばかりの俺のレベルはまだ1でこの世界の住人の平均的なレベルが10に対して俺は40を超えていた。俺の仲間たちは全員レベル20以上ありこの世界の人間の中でもトップレベルの能力を持っていた。しかしそれなのに俺の仲間はまだまだ弱いと感じたのだ。だから俺は他の世界でも最高峰の力を持つという魔族に目を付けていたのだ。その魔族は俺達が異世界から召喚される少し前に突如として姿を消してしまったため俺としては、そいつを見つけ出してどうにか協力を取りつけようと思っていたのだ。そして、今日俺はついにこの世界にやってきてから探し続けていたその魔族の元へ向かうための準備が整っていた。

そして俺はその魔族が住まう場所にたどり着き俺はそこにいた人物に声をかけることにする。俺の目の前に立っていた人物はなんと魔王軍の幹部の一人ダークナイトウルフのフェンであった。そして俺は魔王軍に入るように頼み込むのだった。そうすると、フェンは最初は渋ったが、俺の説得に納得してくれたようで俺の提案を了承した。そうして、この世界に来る前は敵対していた俺達は手を組むことになるのであった。

俺とフェンがこの世界の魔王を倒す為に動き出すと、そこにはレイの姿があり俺はレイに話しかけた。そして、レイとこの世界に来る前のことについて話をし、俺は自分がこの世界に来るきっかけとなったレイにこの世界に来た目的を話すとレイは俺に協力をすると言い出したのである。それから、レイが俺の体を欲しているということが分かり俺は体を渡すことに同意すると、レイの体は眩しいくらいに光り輝きその光が収まる頃には、俺が見慣れた顔の男が現れたのだ。そう、その男こそ俺の体をレイに譲ったはずの俺だったのである。

「悠真君、私はあなたに感謝するわ」と言って結花が突然俺の手を握ってきたため俺は驚いてしまい思わず「ひゃっ」と言う声を出してしまう。俺はその事が恥ずかしくなり急いでその手を振り払ったのである。俺は俺の姿を見て呆然としていたが、レイはすぐに俺だと気が付いたらしく、「ゆ、ゆうくん!?どうして、え、なんで体が入れ替わっちゃったの?」と言っていた。

その後、レイは俺のことをじっと見つめてくるが俺は自分の姿がレイになったことが信じられず戸惑っているのであった。レイはしばらく何も言わずに俺のことを見つめると何かに気がついたかのように俺に抱きついてきたのであった。

そして俺の体はなぜか興奮してしまったのである。そんな俺の体にくっついているレイはどこか幸せそうに見えるため俺は引き離すことが出来ずにいた。そして、その状況を見ていたリーラさんは俺たちの方へ駆け寄りレイを引き剥がそうとしてくる。俺はなんとかリーラさんの方に顔を向けようとするとレイの顔が近すぎるせいでどうしても目が合いそうになったので目を逸らしてしまう。

俺の今の容姿はかなり美形であるためその美貌に見惚れてしまいそうになる。そのためレイとあまり目を合わせないようにするためだ。俺はこんな美少女に密着され続けてしまうと理性が吹き飛びそうになってしまう。俺は早くこの状況から脱したいと思っているがリーラがなかなか離れてくれない。俺は何とかリーラから逃げ出すために俺は力ずくで無理やりリーラから脱出する。

そしてレイはリーラに引き剥がされて俺が離れたことに気づくと俺の方に手を振ってきた。しかし、リーラが俺の側までやってきて俺をジトッとした目で睨んでくるのでレイとリーラに挟まれて俺は非常に困ってしまった。

レイは自分の仲間が俺に言い寄ってきていることに気づいたからなのか、レイは仲間を俺から守るために俺と仲間の間に割り込んできた。その様子はまるで恋人同士を守るヒロインのようである。そのおかげで、俺は命拾いをしたが仲間がレイと俺を見てニヤニヤしているため俺はその視線に耐えられずに俺はこの場から離れた。そして俺が向かった先は、この城の玉座の間だった。ここには世界最高と言われるほど強い人間が二人いるからだ。そしてその二人は今も鍛錬に励んでいるはずだったのだ。その二人は、大賢者である俺の仲間であり、今は鍛錬をしているはずなので、その二人の様子を見ることにした。俺は、仲間になったばかりなのでどんな人たちかまだ把握できていないのだ。

俺は鍛錬中の仲間である二人の男女に話しかけることにしてみた。俺のその考えは的中していて二人は丁度修行を終えて休憩中だった。俺はその二人が俺の存在に気づくとすぐに挨拶をしてきた。この女性はこの国のお姫様であり、年齢は18才であるのだがその若さで、既に王国で最高の魔術師でありレベルも30と、かなりの強さを誇っていたのだ。名前はアリッサと言い、その美しさから他国の王子が婚約を申し込んだこともあるらしいのだが本人はこの国の王族でありながらも冒険者として活動しているのだ。この国の騎士団ではその魔法技術に圧倒されて勝てなかったらしく、そこで彼女は冒険者としてその才能を開花させた。そしてその戦闘センスと魔術を組み合わせた攻撃方法により瞬く間に頭角を現していきこの国一番の冒険者となったのである。

そしてもう一人俺が話しかけた男の方は、大勇者と呼ばれこの世界で最強の存在であるとされている人物であった。彼は今から50年前に召喚された人物で、その時に大魔王を倒した勇者でもあったのである。そしてこの勇者の年齢はまだ29歳であり若いのに圧倒的な強さを持っていた。この勇者は今年39歳になるが未だに衰える気配がなくむしろさらに力を増していっているように思えたのだった。この勇者は召喚される前からすでに圧倒的な強者であり大魔王が攻めてきた時には最前線で戦い続けたのだった。だが、この勇者が魔王軍を一人で相手にして戦った時は大敗北を喫して撤退することになったのだが、それはこの国を救うためであったのだろう。しかし当時のこの国の騎士達はほとんど殺されており戦力がほとんど残っていない状況だったので結果的には、この国を救ったとも言える状況になっていた。だがその時、勇者はこの国の人々を救いながらも自分の国を守るために犠牲になる覚悟でこの国を見捨てようとした。それを許せなかった当時の王女様が勇者の行動を制止しようと立ちはだかりその勇敢な行動がこの国の人々に希望を与えこの国は救われたのだ。しかしそれでもその当時いた勇者の仲間達が皆散り、この国にもう誰もいなかった時、勇者も仲間達の分まで戦おうとしたがその前に王女様から「私が必ずあなたたちを救う方法を見つけ出してみせます」と言われ勇者はそれを信じて、仲間の死を受け入れ再び立ち上がったのだと言われている。

そして今から約20年前の大魔王の襲来の際には、この国が魔王軍に滅ぼされかけたが、大魔王がこの国に襲い掛かっている間、大魔王にこの国が滅ぼされるかもしれないという危機感を覚え、そして勇者が立ち上がり大魔王を倒すと大宣言したのだ。そう、それが大魔王を倒すための最初のきっかけであった。そしてそれからこの国の人々は、その言葉通りに魔王軍の侵攻を止めようと必死になって戦った。それからこの国は大魔王軍の猛攻に耐えるようになり今に至るのであった。それからこの国の人々の間で大魔王を倒してくれた救世主として大勇者は語り継がれるようになったのだ。大勇者はその噂を知ってはいたものの自分のことのように誇らしく思い大魔王軍との戦いを今まで続けてきた。

そして俺は大賢者としてこの世界に召喚されてきた人間であり俺は大魔王と魔王を同時に倒すことが俺の最終目標である。俺はこの国の人達にはその事を話してはおらず俺の目標は俺だけが知っている秘密なのだ。俺の事情はともかくまずは、レイの仲間たちのことを知らなくてはならない。俺がそのことについて考えていると、レイとリーラが俺のことをジーっと見ていることに気が付き、そのことに居心地が悪くなりとりあえず俺はその二人に声をかけた。

すると、まず初めにリーラの方が答えてくれて俺に自己紹介を始めてくれる。彼女はレイが大好きのようでいつも彼女につきまとうような存在であり、レイと一緒によく行動するようになっていたのだった。そのためレイの仲間の中では一番付き合いが長いようだ。そのせいか彼女は、俺のことが少し気になっているのか俺と話すときはどこかよそよそしい感じである。

そして最後にレイは俺に対して「よろしくね、ゆうくん。これから私たちは家族みたいなものだしゆうくんって呼んでもいいかな?」と言ってきてきたのである。その事に俺は驚きを隠せないでいたがその事について俺は何も答えることはできなかった。俺は俺のことを好きじゃないのだろうかと疑問を感じてしまったのだ。そしてレイの問いかけに返事ができずにいるとリーラがすかさず俺とレイを引き離すようにして割ってきたのである。その事でレイはとても不満そうな表情を浮かべていた。

俺達はその日からレイが元の世界に帰る方法を三人集まって話し合ったのだ。俺達はお互いに情報交換をしたが全くいい案が出て来ず、そのことについてみんなで頭を悩ませていると、レイが「あぁー。やっぱり分からないよ~。私にも分からなかったし」と言ってきたのだ。そのレイの言葉を聞いた俺は、その事がレイの悩みに直結していることに気づき俺は「どうしたんだ? 何か問題でも発生したのかい?」とレイのことを聞くと、レイは「ううん、そういうわけじゃなくてただ、私にも分からないことがあるんだよ。だから、私はここに来てからほとんど進展なしなんだ」と言ったのである。

俺はそのレイの悩みに気づけなかったことを後悔していた。レイに気づかれなかったということはそれほどまでにレイにとって大きな問題ではないと考えていたからである。そのため俺はそのことについて謝罪をして謝ることにした。

それから俺は、俺の方で調べていたことを全てレイとリーラに報告した。そしてレイの悩みがレイ自身にあると分かった俺は、レイと二人で話し合いたいと思ってそのことを提案することにした。俺がそんなことを考えた直後、レイは突然俺のことを押し倒してくる。その突然の出来事に俺は頭が真っ白になり思考を停止させてしまっていた。そのあと、俺の上にレイは馬乗りになってきたためレイに何をするつもりだと聞こうとした時レイが突然俺に抱きついてきて、そしてレイの体が一瞬輝いたのである。

その光景を見て俺の体は熱くなりそして俺の中に何か熱いものが入り込んでくるような不思議な感覚に襲われると俺はその瞬間気絶してしまう。俺は何が起きたのか理解できずにそのまま意識を失ってしまった。

俺はレイと入れ替わるときに感じる眩しさで目を覚ましたのであった。俺はゆっくりと体を起こし周りを見渡したのだ。その時に俺はこの城の大広間にいることと、レイの姿がいないことに気づいたのである。俺はなぜこの部屋で倒れていてしかもレイもいないのか全く意味がわからなかったのだ。

レイを探し出そうと思い立ち上がった俺はふらついて膝をつきそうになるほど足が重く感じてしまい、思うように歩くことすらできなかったのである。それになぜか息苦しくなってしまっていて俺は胸を押さえながら壁に手を着き歩いて行くことにした。そして、しばらく歩いているとレイの部屋の前にたどり着くことができた。俺はレイがいるかどうか確認するために扉を開ける。

部屋の中に入るとそこにはレイがいた。そのことで安心することができたが、そのレイの顔は青白くとても疲れた顔をしており俺は心配になってしまい声をかけた。しかし、レイの様子がおかしかったのである。俺は急いでレイに近づきレイの肩を揺らそうとしたが俺の腕は途中で止まってしまう。レイの体が異常なほど軽くなっていたからだ。その事実に気づいた俺はすぐにレイから距離をとり剣を構えた。そして警戒態勢に入る。しかし何も起きないため俺は不思議に思って、俺に近づいてきたレイの額に手を当てて確かめてみる。しかしレイの体に異変が起きている様子はなく体温もあり普通だったのだ。俺はその事で、さっきまでレイに感じていた違和感が何なのかを理解することができなくなってしまったのである。

そして俺がそんなことを思っている時に後ろから物音が聞こえたのでそちらに振り返ったのだ。するとそこにはミリアが倒れており俺と同じ状況だということに気がつく。それからレイのことはひとまずおいておいて俺は倒れてしまっている少女を部屋に運び込んだのであった。その日は結局ミリアが目醒めることはなく次の日に俺と、そしてミリアが目覚めるとレイがいなくなっていた。そのことに焦りを感じた俺はすぐさまレイを探すために城の中を走り回る。しかし、なかなかレイを見つけることができず途方に暮れていたが、そこでリーラがこの国のお姫様だということを知ったのだ。そのことからレイはおそらくリーラのお姫様の力を利用してこの国の外に出たのだろうという結論に至り俺たちはお姫様のもとに向かったのである。その行動は正解だったようで、俺達がリーラに会うとリーラは嬉しそうにして俺達に話しかけてきた。

その話を聞いて俺達が驚いたことは、その話をする直前にレイが行方不明になったという話をリーラから聞いたのだ。俺はその事に驚きを隠せなかったが冷静になって考えると、リーラの話が本当ならこの国にレイが来た時からおかしいと思ったのだ。それは、この国の人たちは、俺のこともそうだが自分の国を救うために協力してくれた勇者のことを忘れるはずはないのに、この国では大勇者の話は一切出てこなかったのである。俺はそのことについて少し引っかかっていたが、それよりも先にレイのことの方が大事だと考えた。だがそのことに関しては後々考えればいいと思い、レイと合流してからゆっくりと考えることにする。だが俺の考えは甘かったのだ。

なぜなら俺達がこの城に着いて数日が経過した時、俺は大魔王と遭遇することになる。そして俺はその時初めて大魔王の姿を目にしたのである。その容姿はレイに似ていて大魔王レイと呼ぶべき存在であり、大魔王の圧倒的な強さを前に俺は手も足も出なかった。俺は大魔王の攻撃を避け続けることしかできず攻撃に移れないまま体力だけ削られていく状態になっていたのである。俺はレイを助けなければならないのに大魔王を倒すことができない。その悔しさがこみ上げてきて俺は涙を流すが、それでも大魔王に一撃すら入れられなかった。そのことに絶望しているとその瞬間大魔王は動きを止め俺の体を貫いてくるのであった。

俺は死ぬ直前レイとの記憶を思い出して走馬灯を見たような気がしたが大魔王の動きが見えて俺はギリギリのところで避けることに成功する。俺はレイの剣術を使って大魔王と互角に渡り合う。しかしその時に俺の中でもう一人の人格が出てきてしまう。そのもう一人の人格は、大魔王の力がレイよりも強いと感じた俺は大魔王に戦いを挑んだ。そのせいで俺はまた意識を持っていかれてしまう。その事で俺はこの世界に来てから一番大きなダメージを負ってしまい気を失うことになった。

次に目覚めた時はレイはもう既に俺が大魔王と戦う前の状態で戻っていた。レイにその事を聞いたが、俺との会話は覚えていなかったらしい。それを聞いた俺は少し複雑な気持ちになったのである。なぜなら、その事は俺が意識を失わなければ俺一人でなんとか出来たかもしれないと考えたからだ。それから俺達四人は、それぞれの目的を達成させるために別行動をすることにした。

それから、リーラは、自分の父を説得しに行くと言い、その前に俺に会っておきたいとリーラが言ってきたのである。俺はそのことに少し戸惑いを感じながらもリーラについて行きリーラの父親と対面することになった。リーラの父はこの国をまとめる王様でありリーラには、王としての仕事がある為リーラは忙しいらしくリーラの父親は娘を溺愛していたらしくリーラの頼みを断ることはできなかったみたいだ。リーラは、その事にすごく感謝して父親に感謝の言葉を述べたのだ。

リーラは自分の用事を済ませると言ってすぐにこの国から去って行ってしまい残された俺達は、とりあえず冒険者ギルドに顔を出して情報を集めてから、今後の予定を立てることにしたのである。

「あのぉー」

俺がその声の主を確認すると俺のことをチラッと見た後にリーラのことを見ていたので俺はすぐにその男が誰かを理解して男のもとに駆けつけようとした。

「やぁ。久しぶりだね。君は誰なんだい?」

リーラのことをジロジロと見ながら男はリーラに対してそんなことを言ってきている。

「私はリーラといいます」

リーラは男の質問に丁寧に答えるが、その態度は俺にはあまり面白くなく感じてしまい俺の方から助け船を出すことにしようと思う。

「悪いが彼女は私の大切な人なので手を出さないでもらえるかな?」

「なんだと!貴様!」

俺はリーラの前に立ち男を睨みつけた。

「おい。お前みたいな下民が僕の彼女に何をしているんだ?」

その一言によってその場の空気は凍り付き、辺り一面は静かになり誰もが俺のことに注目しているような感じになり俺達の方を見ているのだ。

その光景を見て俺はまずいと感じていたのである。

リーラの父親が、そんなにすごい人だということに今さらながら気づいていたのだ。しかしここで引けない俺はこのまま突き通すことにした。しかし相手が悪いのは分かっていたためどうすればいいか悩んでいると、俺のことをよく知っている奴が現れたのである。

「あら、何をしているのかしら?」

その声を聞き俺は後ろを振り向くとそこには俺の仲間のクレアがそこにいたので、俺はすぐにクレアの元に駆け寄り助けを求めた。

俺とレイとリリーナの三人が合流したあと俺がなぜこのような行動を取ったのかを説明すると、俺の行動に賛同してくれたのだ。

その説明が終わった後、クレアはすぐに行動に移り始める。

俺はその後、クレアに付いていきある場所に案内される。

そこには大勢の兵士が集まっておりその兵士達の中に俺が先ほど出会ったあの貴族がいたのですぐに俺はそいつに近づき話しかけた。

するとその貴族は俺に襲いかかってきて俺は返り討ちにしてしまったのである。そして俺はそいつから情報を引き出し、そのあとレイとリリーナにも手伝ってもらい、そいつの息の根を完全に止めたのだ。

こうして俺とレイとリリーナが協力してその貴族の悪さを暴こうとしたのだ。だが、その貴族の悪事を証明する決定的な証拠がなかった為レイと相談してリーラの父親に協力してもらうことに決めた。しかし俺はレイがどうやってリーラの父親と話すのか分からないため、俺の予想でしか動くことができなかったのだ。しかし俺はそんなレイを信じるしかなくて俺はリーラと一緒に城に向かっているレイを見守っていることしか出来なかった。それからしばらくして、リーラとリーラの父と会うことができたのだ。

俺はレイにリーラを託して俺とリリーナの二人で情報収集をするために外に出ることにした。俺がこの世界に来る前はリーラと二人で行動することが多かったのだが、最近は俺とリリーナの二人で依頼を受けて活動するようになっていたのだ。そして今回はレイが大魔王を倒しに行ってしまったので俺がこの世界で一人になってしまい不安だった為、リリーナを連れて行動することにしたのである。

しかし、リリーナと街に出てみて気づいたことがいくつかあり俺達が今歩いている場所はとても治安が良いので、特に問題は起こらず平和な時間が流れているのだと感じるが俺は何か物足りなさを感じていた。それはやはり俺が元の世界に帰ってしまった時のレイが心配だったからである。だがそのレイは今は俺が心配するほど強くなっており俺はそのことに安心したのだ。

俺と、リリーナの二人が依頼をこなしていた時、たまたま近くに魔物がいるという知らせが入り、その魔物はそこまで強くないと言うことだったので俺一人で討伐することにした。俺の強さは以前に比べて大きく上昇しており俺は、以前のように遅れを取ることなど一切なかった。そして俺がその魔物を倒して戻って来た時にはなぜか多くの人達がこの国にいたのである。その中にはこの国の王族と思われる人達もいたので俺は警戒をしながらリーラを探すことにした。しかし俺はその事に全く気づくことができなくて、リーラを探すために行動し始めたらリーラは突然現れたのだ。俺は最初目の前にリーラが現れてびっくりしてしまい思考を停止させてしまっていたが、リーラから話しかけられ俺はその言葉に返事をした。

俺達が話をしている最中、突如周りにいる者達が一斉に苦しみだしその場に倒れていったのであった。俺は、この原因を知っているのはリーラと、俺のそばから離れずついて来てくれている女性しかいないと思った。そのことから、俺はレイから聞いた聖属性魔法を使ってこの国に悪影響を及ぼしているという少女の存在を思い出した。その瞬間にリーラが狙われることを危惧した俺はすぐにリーラのことを守らなければならないと考えリーラのところまで走ったのだ。

その時に俺はリーラのことを守り抜くという決意をしていたのである。

俺とリーラがレイの所に向かおうとしていると、一人の女性がリーラのところに近づいてきて、俺はリーラのことを後ろに隠すとその女性のことを見るが俺が思っていたような人物ではなかったのだ。その女性は見た目はレイとそっくりな人だった。その人が、俺に挨拶をしてくるが俺はレイのことが心配になってその人のことを無視してしまうが俺にレイがついてきてほしいと言っていると言われてしまった。

そのことで俺はレイが、大魔王を一人で倒そうと考えているのではないかと考えて急いでレイのもとに向かいレイに何があったのかを聞くことにする。そしてレイにこの世界に起きている状況の説明をしてもらった。その事を聞いた俺はすぐにレイに着いて行きたいという想いがあったが俺が行ってもレイの足手まといになるのは分かっているので大人しくこの城に留まっておくことを決めた。俺はリーラにこの城に残っていてほしいことを告げてから、俺とレイは大魔王の待つ玉座に向かう。俺は大魔王の力を目の当たりにしてしまい、自分が大魔王と戦っても勝てるイメージが浮かばなかったがそれでもレイのためにこの大魔王をどうにかしなければいけないと思ってしまう。

レイと大魔王の戦いが始まり、俺は何もできずただ二人を応援していることだけしかなかった。俺だって戦いに加わりたかった。だが、俺にそんなことができるわけもないのだ。それにもしそんな事をしてレイやリーラの足を引っ張るかもしれないと不安になってしまうから俺は、俺ができることだけをしようと考えた。俺は自分の力を使い、大魔王の動きを止めることに集中した。少しでもいいから、俺が使えるものを全て使ってでもレイを助けなければいけなかったのだ。それから少ししてから俺達四人は、リーラの父親に会うことに成功するが、そこで待っていたものは衝撃的なものだった。なんとリーラの父親が魔王軍の幹部の一人であり、しかもその男がレイと瓜二つの顔をしていて俺は驚いてしまいその男を問い詰めたのである。

俺が男に詰め寄るが俺がレイの妹だと気づかれることはないと思うが、念には念を入れていた方がいいだろうと思い、とりあえず俺は偽名を名乗り男の名前を呼ぶことにした。

それから俺達は一旦リーラの家に戻り、これからのことを相談することにしたのである。俺としては早くレイの元に行きたい気持ちが強かったのだが、この世界を救うのが俺の使命だと思うので俺はレイと話し合いレイに協力することを決め、そのことについてリーラとも話し合い俺とリーラの意見は同じ方向に向かった。俺がリーラと、話を終えようとしていたその時、外から大きな音が聞こえたのだ。俺とレイはその音の方を振り返って確認するとそこには、巨大なドラゴンがいたのである。俺はそのドラゴンを見た瞬間、あのドラゴニュートのことを思い出してしまいそのドラゴンのことをレイに聞くとどうやら、この世界に現れた魔族の中の一員らしく、そいつがレイとリリーナの三人に襲い掛かったのだ。俺はすぐに戦闘体制に入るが、相手の力が予想よりも強く俺は押され気味になりレイとリリーナが援護してくれることになった。俺はその隙にスキルを使うと俺は一瞬でその男を斬りつけた。すると男はかなり弱っていたのか一撃を食らうとその場から動かなくなり、その男の胸のあたりに俺と同じ模様があるのを確認し、この男こそがレイと、同じ容姿をしている俺のことをよく知っている存在だということが分かると同時に、なぜこのようなことになっているのか気になった。俺がその男のことを詳しく聞こうとするがレイがこの場で説明すると言ってきたので俺はその提案に乗りレイに説明を求める。それからすぐにレイとリーラの父親である人物が出てきてレイとリリーナが父親に対して攻撃しようとするのをレイが止めて、リリーナがレイのお父さんがなぜレイを殺そうとしたのかその理由を知りたいと問いかけると、父親はそれを認めてしまうのである。そして、その答えを聞いた俺がリリーナのことを止めようとした時、レイがいきなり大魔王を倒すと言い出し、その意見にリリーナは反対していたが、俺はそんなレイの案に賛成して三人で協力してレイの両親を説得してレイの両親と一緒にレイと一緒に大魔王と戦うことを決める。俺は正直なところ不安でいっぱいだった。だが俺はもう決めたんだと覚悟を決めレイに着いて行くことに決めレイと一緒に城を出るのである。そして俺とレイは大魔王の城に向かっている途中に俺達が倒したはずの魔人が現れたので俺はすぐに倒しに行ったのだが、どうやらその男はレイのことを見て笑みを浮かべた気がしたので俺はそのことが気にかかってしまうが、俺はレイにそのことは黙りレイの手伝いに専念することに決める。

俺と、レイが協力してその魔人を追い詰めていた時にまた別の敵が現れたのだ。俺とレイの二人でその相手をしている時にその敵が放った技によって俺はダメージを受けたが、俺はそのダメージを耐え切って反撃して相手を倒しに行くが俺は攻撃を受けてしまう。その攻撃を食らい地面に倒れそうになった俺をレイは支えてくれて俺に大丈夫なのかと聞いてくれたが俺は大丈夫だと答えた。そして、その後俺が敵の攻撃を防御するのを邪魔してしまったせいでレイと俺は分断されてしまうが俺はその攻撃を何とか防ぎきり、そのあと俺と、レイは一緒に戦っていくうちに俺とレイは連携をとることができるようになっていき俺達のコンビネーションは完成されたのだ。

その後俺とレイは無事にその敵のボスを倒して大魔王のもとに向かうのである。

レイが大魔王に負けそうなのを俺と、リーラでなんとか助け出すことに成功してから、レイが今まで何をしていたのかという話になる。そしてレイが俺と同じように別の世界からやって来たということを知り俺と、レイはこの世界で起きている問題を解決するために行動を起こすことになる。レイの話からその問題の黒幕である聖女と呼ばれる少女の存在を知った俺だったが、俺はこの世界の人達を救うためにその少女と話をすることにしたのだ。しかし俺はその前にレイが言っていた聖女のことに関して調べようとして行動を開始したのだが俺はある人物と出会ってしまうのである。

俺はレイから聞いた話で、俺のことが聖女にバレたら聖女は俺を殺すつもりだということを教えてもらう。だから聖女のことを調べる時は細心の注意を払うことにして俺はレイが持っている資料を読むことに集中することにする。そのレイが集めてくれた資料を読んで分かったことがある。それは、その聖女がレイの故郷を壊滅状態に追いやった犯人であることとレイの母親である人物を殺した人物であること、さらに俺の妹のリーラの故郷の村も、レイが勇者召喚の術を編み出して、リーラと妹を助けた村のことも滅ぼした犯人がその、レイに良く似た男だったこと。そのことの他にも色々とレイから情報を得ることができた。俺はそのレイの話を聞いて、怒りで頭がおかしくなりそうになっていたが、冷静に考えてみるとこの大魔王はリーラの兄であるレイの父親と母親を殺してリーラの故郷を滅ぼした奴らの仲間でありその仇を討つためにレイは行動を起こしているということを知った俺は大魔王を倒してこの世界を救いたいという想いが強くなりレイに協力しようと決心した。だが俺は一つ不安なことがあった。それはレイの話では大魔王の実力はかなりのものだと言うことで、俺がどれだけ強くなったとしても大魔王に勝つことができるイメージが浮かばないのだ。

それから俺達は魔王がいる場所にたどり着くと、魔王と対峙することになる。しかしレイは俺と、リーラにここから先に行かないように指示を出して魔王と一騎討ちをすることになった。そのことで俺が何かできることはないかと考えると俺は自分に回復魔法をかけて傷を治すことにした。そのことによって少しだけ体力は回復することが出来たが俺の攻撃などは、魔王に通用するとは思えなかった。俺は、レイに少しでも俺が出来ることを伝えて俺の全力をぶつけようとレイと魔王の戦いを観戦していたのである。

レイと魔王の戦いが終わりを告げて俺と、リーラのところに魔王の配下の魔物が現れてしまうが俺がレイの代わりになると宣言し、レイの代わりに俺がその魔物達を相手に戦うことになった。そのおかげで俺は死ぬこともなくその場を切り抜けることに成功したのである。

それからレイが気絶してしまい俺は、この大魔王を倒さなければいけないと感じてレイに無理はしなくても良いと言われたが俺の目標を果たすためには倒さなければならないと分かっていた。

そして大魔王に挑み始めた俺は最初は善戦はできたものの次第に劣勢になり追い詰められてしまったが俺は必死に戦った。そして、大魔王の一撃を受けてしまうがまだ動けた俺はすぐに態勢を立て直す。それからレイが駆けつけてきてくれてから、再び戦いが始まり大魔王との激戦が始まったのである。だがそれでも俺は勝てる気配を感じずにいた。

俺が諦めかけたその時に、レイと、リリーナの両親が現れ大魔王と俺の前に立ち塞がる。どうやらその二人の父親が大魔王に戦いを挑むようでレイもその父親の気持ちに応えようとしているのだろうと思ったが、俺が思った通りに二人は協力をして俺を助けに来てくれたのである。それからレイが二人と戦い始める。

俺は、レイの戦いを見ながら俺はこの戦いに割って入ることができないことを痛感させられたのであった。それほどにこの三人の戦いは凄かった。俺はこの世界に来たばかりなのでこの三人の強さがよく分からなかったのだが、レイだけは俺よりも遥かに上だということが分かったのである。レイと、リリーナの父親は、レイと同じような動きをすることができ、レイよりも更に強いのだと確信したのである。それからしばらくして俺の元にも二人が到着し三人は息のあった連携で攻撃を仕掛けていったが結局、三人とも敗れて死んでしまう。

三人をこの手で殺した後俺はこの場から去り一人でレイと戦うことを決めた。レイとの戦いの最中、何度か危ないことがあって死にかけてしまった。だがどうにか生き延びることに成功してから俺は魔王と向き合い剣を交わらせることにした。それから長い時間お互いにぶつかり合っていたのだが決着はつきそうにもなくて正直もう限界だった。でもまだ終わらせたくなかったので俺は最後まで粘ろうとしたのだが完全に力尽きてしまい地面に倒れそうになるが、魔王がとどめを刺そうとしてくるがその瞬間にレイと、リリーナの父親が立ちはだかり魔王を止めた。

俺にはレイと、リリーナの父親の行動の意味が分かることはできなかったが、レイに、リリーナの父親から伝言を預かってきたというのを聞きその内容を聞くと俺にこう伝えてきたのだ。

『君はまだ生きている。そして君はこの世界に必要だと僕は感じた。それに僕よりも君の方がいいと思ってこの言葉をレイに渡した』

この言葉に俺は、涙が流れ出し心が揺り動かされたのだ。その言葉はまるで俺に、レイのことを頼んでいるように聞こえたからだ。それからリリーナの両親から聞いた言葉を俺に伝える。俺はその言葉でようやく目が覚めたような気がしたのだ。そしてすぐに、俺はレイにそのことを伝えようとしたのだがレイの姿はすでにそこにはいなく、すでに城から出ていったようだ。俺が慌てて城から抜け出すと既にレイは大魔王と戦おうとしていたので、俺とレイは二人で協力して大魔王を倒すことに成功するが、レイも体力の限界だったのか倒れてしまう。俺はその時に、リリーナの父親にレイのことを任されたのを思い出して急いでリリーナの父親に託されたことを伝えるとレイにレイの母親とリーラを守れと言ってきたのである。その時に俺と、レイは大魔王から攻撃を食らい意識を失ってしまい俺達が目をさますと俺達が見たのは自分の体が半分無くなっている状態で、血を流し続けているレイとそのレイの側でレイの名前を呼び続け泣き続ける妹のリーラの悲しく辛い姿を見ることになるのである。

レイと俺が意識を取り戻し俺達はその状態から元の状態に戻ったのだが、レイが死にそうな状態にまでなっていたため俺達はこの城を出てレイを連れて行こうとするが、俺達は魔王によって城の外にまで追い出させられてしまう。俺達は魔王と対峙するが、圧倒的な差があり俺は自分の強さに自信がなくなってきている。そこで、俺はレイに俺が魔王をひきつけるからその間に逃げろと言った。するとレイは、絶対に助けに行くといって魔王と戦っている最中に俺は後ろの方へと吹き飛ばされていくのであった。

レイが助けに来ると言っていたが本当に助けが来るとは俺は思っていなく、俺自身もかなり追い詰められていたのである。そんなときに現れた勇者であるシンクのおかげで俺達の状況は一変することになる。それからシンクは俺の想像以上に強かったのでなんとか俺は魔王を追い返すことができた。

だがその時に俺は魔王に攻撃を受けてしまい地面に叩きつけられて気を失いそうになったが何とか意識を保ちつつ俺は魔王と相対することになったのである。それからは俺の知っている知識を全て使い、俺と、レイが協力すれば魔王を倒せると思いレイに協力してもらうことにする。レイの協力を得た俺が魔王を追い詰めることに成功をする。

しかし俺の攻撃を受けて、大魔王の力はさらに上がり、魔王の攻撃で、俺は致命傷を負ってしまう。だがそのあとにレイと俺の合体技を使って、どうにか魔王に大ダメージを与えることを成功させることができたのだ。

そのことで、レイが俺をこの世界から脱出させる魔法を唱えてくれたおかげで俺と、リーラはこの世界から離れることが出来るようになりリーラと一緒にこの世界から脱出するのである。そのことで、俺達は完全にレイのことを助けることが出来なくなったが俺は、リーラと共にこの世界を離れて新たな世界での生活を始めることにするのである。レイと俺が一緒にいた時間はとても短く、短い時間でレイにどれだけ感謝してもいいのか分からないぐらいに俺はレイに助けられたことを改めて実感するのであった。

俺はレイを元の世界に残してきたことに心配をしながらレイと過ごした最後の時間を思い出していたのである。そのことが今でも俺の中で後悔していることの一つなのだ。だから俺は、もう一度レイと会う為に、レイを救いにこの世界に戻ってきたのだ。俺の目的はレイと、妹と、リリーナを取り戻すことだ。そのためにはなんとしても大魔王を倒して、俺と、妹が幸せになるんだ。

俺は、この大魔王との戦いに全てを賭けようと思う。レイと、この世界を俺の手で救うために。だから、俺は今目の前にいる、俺の大嫌いな存在に負けてはいけない。ここで、こいつを倒して妹を、そしてレイを救い出す。そう思いながら俺は大魔王と向かい合うのだった。

俺がこの大魔王に戦いを挑んでから、ずっと攻防が続いていた。しかし戦況はあまり芳しくないのだ。俺の攻撃はほとんどが大魔王にダメージを与えれずに、逆に、俺は大魔王の攻撃を防ぐのが精一杯の状況になっていた。このまま戦い続けていてはいずれ力の差で、大魔王に押し切られてしまうだろうと考えた俺は、一旦後ろに下がり大魔王と距離をとると魔法を使い始めたのだ。

そのことは俺の得意属性でもある光を使った攻撃だった。大魔王は魔法を使うことができないのは分かっていたが魔法は俺の切り札でもあったのだ。大魔王は魔法を使うことができない。それを利用して魔法による攻撃を行うことにしたのだ。俺は今までは魔法が使えるようになってからもその力に頼りすぎてきてしまった。それはこの世界に転生したときにレイと、約束していたのにその力を試すことなく俺はレイと戦うことを決めてしまったのだ。その結果、俺と、レイが死ぬことになったのだがそれでも、俺は自分よりもレイのことが大切なのだ。

それから俺は自分が扱える魔法の中の中から回復と状態異常回復系のものを選び大魔王に使うことにした。まずは俺自身で大魔王の回復速度を遅らせるために毒を与えることにした。これは魔王から受けたダメージも回復されてしまうが少しでも回復速度が遅くなればそれで良かった。

次に大魔王が回復するまでの時間をできるだけ稼ぐ必要があった。そこで、レイ達から教わった剣の技術を最大限に生かすための戦い方に切り替えることにした。俺は、自分の剣の腕をレイ達との特訓により大幅に上げていたのだ。そして、剣の扱いも前の世界と比べてかなりうまくなったので、俺は、大魔王が回復してしまう前に勝負を決めにかかる。それから、俺が剣による連撃を放つ。俺はその攻撃に対して防御に徹してくる。大魔王も、俺と同じように防御しか行わないのには理由があったのかもしれないが俺はそれでもいいと思っていた。大魔王は、俺が攻撃を行い隙ができたところに攻撃を放とうとしていたからだ。大魔王は俺と互角かそれ以上の力を持っている。だからこそ、その攻撃を防ぎ切るか避けるかのどちらかに俺は対応をしなければいけなかったのだ。

俺はレイやリリーナが教えてくれていたことを思い出して実践をするように戦い始めると、俺の剣術の実力は徐々に上がっていくように思えた。そして、俺がこの世界にきてから一番長く使っていた武器であるレイの持っていた剣を手に取り戦う。レイの使っているレイピアという種類のものだ。レイの使っているレイは聖女の加護の力で魔力が無限大に近い量を誇るらしい。

そのレイと同じ名前の武器で、俺はレイの剣技を思い出させてもらう。レイはレイが持っているレイの固有能力の効果でこのレイという剣を使うことはできるのだが俺がこのレイの剣を使っている時はその効果を発揮することはない。だが俺のレイから貰った剣とこのレイという剣では同じレイの名前が付く剣だが、俺の持っているレイの剣とは違い切れ味が圧倒的に違うのが分かる。それに、このレイのレイの能力はレイの持つスキルの効果の恩恵を受けることでさらに力を増すことが出来るようになっているのだ。レイが持つ固有の能力の力は俺がレイに貰っていた、レイの能力の劣化版のようなものだったのだ。レイの持つ固有能力は「浄化」といいその能力は俺の体と、そして俺が所持している武器などの魔族などが纏っている黒いモヤを取り払うことができてしかもそれを消すことが出来るのだ。レイが言うには俺の体の中に潜む魔王を倒さない限りその力が消えることがないのだという。だから、魔王を倒した後にレイと再会した時にはレイに、ありがとうとお礼を言ったのだが俺のお礼を聞いてレイは、俺の事を抱きしめてきてから泣き出してしまったのだ。その姿を見て俺が慌てたのはまた別の話なのだが。

それから俺と大魔王の打ち合いが始まるが俺と、大魔王とのレベル差は圧倒的である。なので俺はこのレイの剣に自分の全力を込めて大魔王を追い詰めることにしたのだ。それから俺はレイの技を使おうと決めてから俺はレイに教わったレイ独自の必殺技を大魔王に向かって使うことにしたのである。

レイオリジナルの必殺技は二種類存在する。その二つは、レイの得意とする風と雷を合わせたもので風の斬撃と、雷の衝撃を合わせることによって強力な一撃を生み出すものである。俺はレイの必殺技を参考にさせてもらってからその攻撃方法を真似することに決める。その方法は簡単だ。レイはいつもレイの剣を使ってその必殺技を使用していたので、俺はその剣を使うことで俺でもレイの技を使えるのではないかと思いやってみることにしてみたのである。

俺の使った技は、技名は『神風』という名前の技でその攻撃方法はとても単純である。俺は、レイの『神威』を参考にしレイの攻撃方法を使ってみたのである。

技の発動方法を簡単に説明をすると、まず、俺がレイから教えてもらった攻撃技として、俺はまず、自分の剣を使って魔法を発動することにした。その魔法というのは俺が得意としている光魔法である。俺は、自分の体の中を流れている魔法をコントロールすることができる。それはなぜかというと、レイに聞いたことがあるのだが、この世界の人は誰でも体に自分の意思で扱うことができる魔力が流れていてそれは血液のように体内を循環しており、魔法を使用する際には、この魔法の流れに、自らの体を沿わせることによりより効率よく魔法を扱うことが可能になると言うことを言われたことがあったのだ。

その話を聞いたとき俺には意味が分からなかったがレイの師匠でもありレイの育ての母でもある人にレイは習ったということらしいのだ。つまり、俺もこの方法でなら魔法を発動させることも可能だというのだ。

そこで俺は、大魔王を仕留めるためにまず俺は自分自身に魔法をかけ強化することにする。この世界では基本的に肉体の強化ができないとされている。しかし、この異世界で生き抜いてきた俺とリリーナはこの世界で肉体の強化を行うことができるように進化することが出来たのだ。

その方法がまずは、自分の体に魔法を流すことである。そしてその状態で自身の肉体を鍛えれば肉体が強くなる。これはレイが言っていたことだ。だから、レイのアドバイス通り、魔法を自分に流しながら、俺もレイと同じく肉体を強化することを試みることにしたのだ。そのおかげで、俺はこの世界に来た当初に比べて遥かに体が頑丈になっているのだ。俺はレイが言っていたことを思い出しながらその魔法を使うことにしたのである。俺はレイの使っているレイピアを使うことにした。

レイから借りたレイピアは自分の体とレイピアの間に魔力が流れる道を作ってくれたような感覚があり俺は魔法を使いやすいようになっていたのだ。そしてレイが使っていてとても便利だと褒めていたレイの動きを取り入れようとレイが使っていたレイピアの構えを俺は真似することにする。

レイのレイピアを使った戦い方とは、レイが愛用していたレイの固有能力を応用させた戦い方であった。レイの固有能力は「波動斬り」と言ってこの世界で扱える人間はレイを含めて二人しかいないと言われている特殊な能力である。このレイピアを媒介にすることにより魔力と物理を融合させることで通常よりも強い威力を持った衝撃波を発生させることが可能である。レイが言うにはこの力は魔力を自在に使うことができるようになった俺ならば使いこなす事ができると、レイがそう信じているからこそレイのレイは俺にこの技を授けてくれたとのことだった。

俺もそのレイが言っている言葉を信頼して、俺なりに工夫をしてからレイの技を再現する。レイから教えてもらっていない技をいきなり再現することなんて俺にはできないが、俺はこの世界に転生をしてすぐに、レイから様々な技を学んでいた。そのおかげもあってレイがレイがレイピアを振る時にどのように振るのかを思い出しながらレイの技を使うことができるようになったのだった。そのことに嬉しさを覚えながら俺は大魔王に突っ込んでいったのだった。

そして、俺の放ったレイの魔法とレイの剣が大魔王に向かっていき俺のレイの剣は大魔王に直撃をすることに成功する。俺は、俺の攻撃を受けて怯んでいる隙に今度は魔法を放つ。この魔法はレイのオリジナル魔法ではないのだが俺がよく使っていた魔法でもある。魔法の名前は『ホーリーライトニングボルト』といって聖魔法に分類される魔法の攻撃であり、光の矢を相手に向かって放つ攻撃魔法でもある。俺がこの魔法を覚えた理由は簡単である。それは、リリーナが使えるからだ。

この魔法はリリーナに教えてもらっていたが俺はこの魔法の属性を聖属性ではなく、闇属性に変化させることを思いつく。俺はこの魔法を改良することによって、闇の力を聖の力に変換して放てるのではないかと思ったのだ。それで試した結果俺が今覚えることができる中で最強の魔法となったのが今の魔法の攻撃技だったのである。

大魔王はその攻撃を受けたことによってさらにダメージを受けることになる。そして俺はレイの必殺技の一つを大魔王に対して放つことにする。その必殺技の名は、俺の知っている言葉で言えば一閃という言葉が正しいと思う。俺が考えたこの技はレイがこの技を考えたときにレイはこう言っていたのだ。これは俺にとって、そして俺の仲間にとっても思い入れのある技なのかもしれないと。そのことからも俺はそのレイの想いを引き継ぐためにこの必殺技の名前を一閃と名付けたのだ。俺はこの技の型を思い出しつつその必殺技の名前を口にした。

「瞬撃!」

それから、俺はそのレイオリジナルの攻撃方法を大魔王に叩き込む。俺の体の中にある全ての力をレイに貰ったレイの力と混ぜ合わせる。そして俺は大魔王の胸目掛けてその攻撃を放つとレイのレイは大魔王の胸にめり込みそしてレイはレイオリジナルの攻撃でその技を炸裂させてしまう。その技はレイのオリジナルで、レイは今まで一度も他の人間がこの技を使えるようにはできなかったのだが、その技は俺に使えるようにしてくれた。

技の名前は、

「雷鳴轟き 龍の怒りを喰らえ 龍神の一振り 我を纏え」

俺がこの技を使えるようになったのはレイと初めて会った時の事である。その時は、俺はレイと一緒にレイオリジナルのレイが使ったオリジナル必殺技を再現しようとしていた。その結果、なぜかはわからないがレイと二人で特訓をしていたその日、レイが俺と模擬戦をしたのだがその模擬戦で俺がこの技を使えたのは本当に偶然だった。

だが、俺が使えるようになったのはレイのおかげであり俺は感謝の言葉を告げたがレイは「別に気にしないでください。私が、貴方と、一緒にこの技を習得できるのがうれしいのです」と言われたことが今でも記憶に残っている。そんなことを思い出しながらも俺はこのレイオリジナルのレイの剣と俺の体に流れる血の力を合わせることでさらに強力な攻撃を繰り出すことに成功してしまった。この技を見た時レイは俺のことを強く抱きしめてきて俺もレイを抱きしめ返したのが思い出だ。それから、俺達二人の愛を確かめあったのもこの技を使ったときだった。俺のこの一撃を受けた大魔王はその場に膝をついたのである。その光景を見て俺は確信する。俺は魔王を討伐することに成功したんだと。そして俺はそのまま意識を失ってしまう。

俺は目が覚めるとそこにはリリーナとリリスの姿があった。それからしばらくして俺とソフィアさんが合流を果たす。リリーナから話を聞いたところによると、俺の目の前にいた大魔王は既に倒されていたようで既にこの場には存在しないのだという。その話を聞いて俺は安堵したがそれと同時に魔王がこの世に存在した事実に驚くことになったのだ。それから俺とソフィアさんとリリーナで魔王を倒したことを報告しに向かうことになる。

それから俺は魔王城から出てから街へと戻りそこで俺たちのパーティーは解散することになった。

魔王を無事討伐できたが魔王と俺の仲間たちは、それぞれ元の世界に帰ることになっていたのである。その話を聞いた時は少し寂しい気持ちにもなった。なぜなら魔王は、自分の仲間であるレイがこちらの世界に連れてきた人たちであるからだ。そのことは俺の中で後悔にも似た気持ちになっていたのだ。しかし俺と魔王たちでは、生きている時間が違うのだと俺は理解しその魔王との別れを済ませた。そして俺は魔王やレイたちがいた世界をこの世界を救う為に俺はまた旅立つことを決めたのだ。

魔王を倒し、元の世界に帰って行ったはずのレイが再び俺達の前に姿を現してから数日が経っていた。その間も、俺達は相変わらずの日常を繰り返していたのである。

俺の毎日と言えばいつものように、ソフィアの手伝いをしたりしていたのだ。ソフィアはレイにもらったレイの魔道具で、アイテムポーチを作っていた。この魔導具を使えば容量無制限でアイテムを入れることが出来る優れものである。そのレイの魔導具を使ってソフィアが作っているものは俺の使う武器だった。俺は、この世界で手に入れた剣を使っていてそれが折れるとソフィアに新しい剣を打ってもらっているという状態だったのだ。

俺はソフィアが打つ剣はどれも一級品ばかりで俺が愛用しているのはこの国の王様からもらった聖剣エクスカリバーなのだ。このエクスカリパーは光魔法を使う事ができる剣でどんなに傷つけられても回復する効果を持っている。俺は魔王を倒す前にこのエクカリバーを王城の宝物庫で見つけてからずっと使い続けている。そして俺は今日もこの世界の勇者として魔王が復活するまでのこの世界の平和を守るために、冒険を続けていたのであった。しかしそんな日々が続いていたある時、レイが急にこの俺の目の前に転移魔法で現れたのだ。レイの話を聞くと彼女は再び異世界に帰りたいと言ったのだ。

それから数日後の昼、レイの家の前には俺と俺の仲間達が集合して集まっている。そしてレイからこれから異世界に帰れるということを伝える。それを聞いていた皆は嬉しそうにして喜んでいた。特にリリーは一番喜んでいるように見えたのであった。そしてリリーナがレイに近づいていき何かを話していた。

その話が終わるとレイが突然俺達の前から姿を消す。レイが消えて俺達が驚いた瞬間にレイの声だけがこの部屋に響く。レイがこの空間に再び来るまでしばらく時間がかかるらしく、俺と俺とリリーナとソフィア以外は強制的に現実世界に戻されたようだ。そしてレイが戻ってくるまでの間にここでの出来事について色々と質問をしてくるのだった。俺は俺とこの異世界で出会った人物について詳しく説明をする。それから数分後、ようやくレイが姿を現すと、この部屋に残っていた俺とリリーナ以外を連れて異界に旅立ってしまう。

「さようなら! 」

最後にレイの挨拶を聞き俺とリリーナだけを残し部屋の中から姿を消したのである。レイがいなくなった部屋の中は俺達二人きりになって沈黙の時間が流れるのであった。

そして数時間が経った。それからすぐにレイの両親が現れる。俺の両親と同じように、俺の父さんと母さんのこともこの人たちは覚えていて懐かしく思っていたみたいである。そのあと俺とリリーナは俺の実家に向かいレイからもらったレイの両親の遺産を受け取り俺の家に帰ってきた。それからすぐに、俺は俺とレイが使っていた家を引き払い俺の家からレイが住んでいた家に俺の家族は引っ越してきた。こうして俺とレイと家族は無事に再開を果たしたのである。俺と両親はこの家で新たな生活をするために荷物を整理したりしていて大変そうだったが俺はレイから渡されたこの家の財産がかなりあり、その金額が俺の持っている金と同じだった。なので俺はお金に困ることなく快適に過ごせそうなのはいいことだと思っていたのである。それに俺にはレイからもらったスキル「幸運上昇」「アイテム強化(極)」とレイの「聖剣召喚」があるために俺の運は良くなっていくはずだと思っている。それからレイから受け取った聖剣はレイの固有能力である聖属性を宿す剣とレイのオリジナル魔法『聖属性』と聖剣の能力『聖化』を合わせた『聖属性付与』ができるようになり、この能力は普通の剣を強化して聖剣に変化させることが可能になる力である。

その力で俺は、魔王が持っていた魔刀を破壊してしまい俺の新しい相棒になるはずなのに、俺が壊してしまったのは、少し申し訳ないと思うのだがこの世界を救うためだったので仕方がないと思いつつもそのことについてはレイが気づかなかったことにしてくれているので良かったと思った。

俺と俺の家族はレイのおかげで何不自由なく暮らすことが出来ていたので俺と俺の両親が心配することは全く無かったのである。それからしばらくして俺とレイと家族の時間は進んでいくが、俺が元の世界に戻る時が来る。その事を俺は覚悟を決めてからこの世界に残ることを決めていた。俺のこの世界での目的は全て達成したといってもいいくらいになっていた。その目的は俺がこの世界に来てからの目的だった、 俺がこの異世界に来た理由はレイを助けるためにこの世界に訪れたのだが、それはもう解決済みであり、この世界に残ったのもレイがこの世界に帰ってくるためにこの世界を救う必要があると言っていたからである。俺はレイが俺にこの世界に残りこの世界の問題を解決するようにお願いされたのだ。だから俺はこの世界に残ると決意をしたのだった。それから俺がこの世界に留まることを決意してから、この世界は以前とは違い平和な時代を迎える。

俺の仲間たちはこの世界でも英雄になり、魔王を倒したことによって人々に感謝される。そしてこの世界を救った勇者の一行と称えられるようになり、この世界を救ってくれた勇者たちに敬意を払ってこの国はレイの国となり、俺の名前はリリーナとともに国の英雄の名前を引き継ぐことになった。俺の名前が勇者ではなくて英雄と呼ばれるようになったことに少し不満があるといえばあるのだが俺のことをこの世界の住人たちは俺のことを称えるように見てくれていることに俺は満足していたのである。

それから俺はこの世界に留まり続けると決めたものの、レイに魔王がいつ復活するか分からないからなるべく早く戻って来てほしいと言われてしまう。

この世界に滞在し続けることに決まった俺は俺とリリーナ以外のメンバーにレイが異世界に戻った理由を説明する。それからしばらくしてレイの親たちが、俺とレイの家に住み始めてこの世界で暮らすことが決まると、俺がこの世界の人達にこの異世界に飛ばされたことがばれてしまったのだった。しかし俺はこの事実を隠すわけにもいかず話すことにする。するとレイの父親と母親は、この俺を責めるようなことはなくレイのお父さんが俺に対して感謝の言葉を口にしたのだ。そしてこの世界に残ってもいいのかと言うことを聞くと「私達と一緒に暮らせることを嬉しく思うわ」と言ってくれたのである。俺はレイのお母さんにお礼を言ったのだった。

それから数日が経ち、俺は俺が元の世界に戻るための準備をすることにして、リリーナや仲間たちと相談する。それからリリーナの知り合いがこの世界にやって来て俺達に話を聞いてきたりしたので少しだけ騒がしかったが、それも時間が経つにつれて落ち着きを見せるようになる。それから数日後の夜、リリーナはレイが残した俺専用のエクスカリバーを使って俺に武器を打ってくれていたのだ。その武器が完成してから、リリーナはエクスカリバーの使い方を丁寧に俺に教えてくれた。そのおかげで俺はこのエクスカリバーを使いこなすことができるようになって行く。それから俺はそのエクスカリパーを使い魔王と戦う準備をしていたのであった。

魔王を討伐してから一週間程が経った日、魔王城から突如大きな音が鳴り響いたのだ。その音を聞きつけると俺は、その魔王城に急いで向かうと、そこには既に他の人たちも集まっており皆が動揺していたのだ。

そして俺達がそこに辿り着くとレイとその隣にいるのはレイによく似た容姿をしている少女の姿だった。そのレイにそっくりの少女を見てレイの母親が声を出すとレイの父親は慌ててレイの母さんの方に駆け寄り抱き抱えていた。

「お前は誰だ!? なぜここに入った! 」

そう叫ぶとレイの父親はレイの両親に問いかけるとレイの父親は何も喋らず黙ったままでいる。それを見たレイの母親の方は、レイの父親が何も言わずにいることが不思議に思ったみたいだが、特に何かを言うことはなかった。それからレイの父親が突然剣を抜いて構えた。俺はレイの父親の行動を止めようとしたが俺よりも先にリリーナがレイの父を止める為に動き出した。リリーナが止める前にレイの父親がリリーナに向かって切りかかろうとしていたために俺は焦っていた。リリーナは、レイの父親とリリーナは一騎打ちを行う。

「この子だけは助けてください」

リリーナに斬りかかった父親に対しリリーナは自分の身を犠牲にしようとしたのだ。それを見ていた俺はリリーナの行動を阻止しようと思い動いたが俺より先にリリーナの前にソフィアが現れたのである。その瞬間にリリーナはソフィアが魔法を使う前に気づいていたがそれでも自分から進んで魔法を使ったのだ。その結果リリーナは命を失うことになる。その事を知っている俺は必死でリリーナに呼びかけるがリリーナには届いていなかった。それから俺が止めようとするとソフィアによってリリーナが死んだことが確認されるとソフィアが俺の腕を掴む。

俺がソフィアの手を振りほどこうとしたらなぜか振り解けず抵抗することができない状態にされてしまう。俺はどうにかしてこの状態から抜け出そうとするが無理だった。そんな時に、リリーナの死体の近くで何かが起きるとレイと瓜二つの少女は消えていた。俺はそんな出来事があった事に驚いてしまうが、レイの両親はレイの妹だとすぐに理解することができたらしい。リリーナとリリーナの遺体が消えると俺はソフィアの束縛から抜けられたのである。

そして俺は自分の剣を手に取るとレイの父親の剣が砕け散ってしまった。それからレイの父はリリーナの遺体に近寄ると泣き崩れてしまうのである。それから俺はレイの父親が落ち着くのを待つとリリーナの死をレイの両親は悲しんでいた。そしてレイとリリーナの遺体は、レイの父が埋葬することにしたのだ。

それから数日後、リリーナの両親が亡くなってしまい残されたレイの両親はリリーナが亡くなったことによって、俺に謝罪をするために俺の家にやって来たのである。

「あの子をリリーナ様の仇を取ってください! お願いします! 」

俺の両親の前で土下座をしながらレイの両親が言う。俺は二人に顔を上げるように促すと二人とも涙を流していて目からは大量の血が出てしまっていた。この二人にとって大切な娘を失ってしまいその事で泣いているのだろうと思っていたのだが、レイの父の話を聞いているうちにどうもそれだけではないということに気づいたのである。

レイがいなくなったことによりレイの家族には莫大な借金が発生してしまいそのせいで二人は生活に困っているという話だった。その事について話をしてくれたレイの父が詳しく話し始めてくれる。そしてその話の真相とはレイの父の話ではこの世界には魔王軍の手先が紛れ込んでいたらしく、それに気づいたレイは妹を守るようにして死んでいったのだということだった。その事を聞かされた俺達家族はその真実を知り驚くのと同時に怒りがこみ上げてくるのを感じていたのである。その話を聞いた後にレイは死んだ理由が分かり、さらにレイは俺のために犠牲になってしまったということまで知って俺は悲しみが込み上げてきてしまう。

その話を聞いた俺達は、この世界でレイの代わりになるような人を探し出すことに決める。そして俺がまず最初に選んだ人物はレイの妹であるレイラだった。俺の見立てによるとレイラは勇者の素質がありそうなのである。だから俺はレイラのところに行きレイの居場所を探すことにした。

それからレイの妹の居場所を突き止めた俺はその場所に向かうと、レイは俺と会った場所と同じ場所で魔物と戦っていた。その姿を見て俺はレイに声をかけようとして一歩踏み出そうとするが足が止まる。俺はそのレイの姿をよく見るとレイが戦っているのはレイの妹であり魔王軍幹部の一人でありレイの妹であるレイラの体を乗っ取った悪魔であることがわかったのである。

その事に驚いた俺は、俺はすぐにレイの元へと向かって行きレイに事情を説明して戦闘をやめさせようとするがレイはレイラを殺すことができないで、なんとかして説得しようとしていた。そのレイの行動に俺は疑問に思ってしまう。なぜならレイが本気でレイラを殺そうとしたならレイナの命を奪うことなど容易かったはずだから、それが出来なかった理由が分からなかったのだ。

俺も戦いに加わっていくとそこでようやく俺が探し求めていた相手が現れてくれたのである。俺は目の前にいる敵が誰か分かっていたのだが俺が知っている相手とは違い少しだけ姿が違っていて一瞬誰なのかわからないほどだった。

俺はレイに話しかけようとしたその時だった。突然現れた俺に似た男がレイに攻撃をしかけてきたのである。俺の体を使っていた頃のレイならばこんな男なんて軽くあしらえたのだが今のレイでは勝てる可能性は0に近いかもしれない。

俺はレイを助けに向かおうとするが間に合わずレイは致命傷を受けてしまう。

「これで終わりだ。貴様は俺に殺されて死ぬんだよ。お前が俺の事を気に入ってくれないからだ。さようならレイラ」

そう言った後男はレイに止めをさすために動くが、俺もそいつの動きが止まった瞬間に攻撃を仕掛けると攻撃を防ぐことができたのである。

それから俺は俺に似ている男の顔をじっくりと眺めていると、やはりその男こそが俺の本当の父親であることに気づく。俺がそのことを伝えると、男は自分がこの世界にいる理由を説明を始めていくがその話の途中でレイラの意識が戻ってしまい、レイの意識は完全に消えてしまったのだ。

「貴方は一体何を言っているの? 私はそんな名前じゃありませんよ。いい加減にしてよね」

その言葉を俺は聞くとレイに本当に申し訳ないことをしたと思い俺はこの場から逃げることにして、その場から離れると、レイの親たちはレイをレイと呼んでいたが俺はもうそんな呼び方で呼ぶのはやめて、レイの苗字を使うことにした。俺はその後、レイの苗字をリリーナに変えてもらい俺の新しい人生がスタートするのであった。

この小説を書くきっかけを与えてくれてありがとうございました。

この作品は、私が書いた作品の中では一番思い入れがある作品です。もし良かったらこの作品を読んでみて下さい。

【勇者と王女が入れ替わる〜】を是非読んでみてください!よろしくお願いします。

※ちなみにこの話は実話をもとに書いております。

**作者紹介(敬称略)**

★黒瀬海翔

(くろせかいと)/23歳。身長172cm。誕生日6月20日。

元高校生小説家、現在、異世界転生小説家

☆佐藤詩織

☆高梨由香里

★星井涼介

★高橋光太郎

『魔王の配下が人間を操って人類を滅ぼそうとしているから倒して欲しい!』

魔王からの手紙を読み終えると俺は、ため息をついた。魔王がわざわざ手紙を俺に届けてくれたが、内容は、とても魔王からの言葉とは思えないものだった。

俺は魔王の書いた紙を見返す。そこには、魔王の名前らしきものと、特徴などが書かれている。俺はその文章を見ながら考え込んでしまう。「この、魔王の特徴が本当かどうかを確かめるのが先だな」

俺はとりあえずこの魔王のことを信じるかどうかは保留にしておいて先に、魔王の特徴を確認しておく。すると、その特徴というのが少しおかしかったので、思わず笑ってしまった。

「何だよ、魔王は性別がないのかよ、それにしても、見た目年齢が若い女の姿なのか?」

魔王は姿は女性なのだが、中身が中年のおっさんなのか、若造なのか判断しづらかったのである。だが、仮に俺の考えている事が合っているのだとしたらこの、魔王は俺よりも圧倒的に年上の可能性がある。

「まあ良いか、取り敢えず、確認しておくとするかな」

俺はまだ、信じていなかったので念の為に自分のステータスを確認するとレベルは上がっていないものの、職業のレベルだけは上がっていたのである。その、上がっている職業を俺は改めて確認することにする。

◆ステータス レベル1 職業 小説家 HP 100 MP 100000 攻撃力 20 魔法力 0 物理耐性 1 魔法防御 5 速さ 6 知力 3 精神抵抗 2 運 255 ◆スキル一覧 異世界転移LV1 全属性魔法適正 言語理解 アイテムボックス 自動筆記 魔法創造 称号 神の使徒

「うわぁ!なんだこれ!俺より能力値が低いはずなのにめちゃくちゃ高いじゃないか!しかも知力が、0だと!でも、やっぱりおかしいぞ、俺よりもこの魔王は弱いんじゃないか?それともただ単に数値だけをいじっただけなんじゃねーの!? それになんか俺の小説に出てくるような感じの能力ばっかり持ってるんだけど、こりゃ本物なのか、いや、もしかしたら俺はとんでもない勘違いをしている可能性も否めないし、まずはこの自称魔王からもらったこの手紙をちゃんと見てみる事にしよう」

そして、俺は手紙を見ていくとそこに書かれてあった内容に俺は衝撃を受けてしまって呆然としてしまう。その内容は、簡単に言うと、俺はこれから地球とは別世界に行く事になるというものだ。

その手紙を最後まで読むと最後に「君の行く世界は私が選んだ世界、つまり君は私の作った世界で勇者となり、この世界を救うという事なのである!」と書かれている。

そして、手紙にはその世界についての事についても書かれているが、まずはその世界に召喚される条件について書かれていたのである。

俺はその内容を見て驚きの声を上げてしまいそうになったが必死になって声を抑えることに成功する。俺はその手紙の内容が本当であると信じられないような内容だったために頭がおかしくなりそうになるがどうにかして堪えることができた。

まず、魔王が言うには俺が勇者として呼ばれたその世界を一言で言うと剣の世界という事だった。俺のいる世界とはまた違った文化でその世界の人間は剣を使って生活しているのだという。だから、俺はこの世界を救うために、魔王を倒す旅に出て、その魔王を倒し、その魔王に呪いをかけられたこの世界の女神を救い出す事が必要だというのだ。

そしてその女神を救わないとこの世界は救われないのだという事である。だから、俺にはその世界に行ってもらう必要があると書いてあり、そして、その世界は魔族の支配圏になっており人間の住む場所は、極一部だけしかなく、他の国はほとんどが魔族の領域らしい。

そのため、俺が住んでいる国は俺がいる大陸では唯一の人間の王国でそこが最後の人間の領土であり、俺の住んでいた日本のように平和ボケした国民はいないのだとか、そんな厳しい状況の中この勇者の俺が、選ばれてしまったのだというのである。

そして俺に渡されていた勇者の紋章の刻まれたペンダントを手に取るとそこには、俺の名前が刻まれておりその文字を見た俺はさらに驚く。それはこの世界では存在しないはずの俺の本名である。俺の知っている人物でこの世界でその名前を知っていたのは魔王だけだったのだがその名前がこの勇者の装備にも彫られていたのである。俺は不思議に思って調べるために、俺にこの勇者の力を与えてくれたであろう魔王に念話で連絡をしてみたのだが魔王からの返事はなかった。

「マジですか!?本当に魔王の加護まで受けているなんてどういうことなんだ! この力は確かに俺が憧れていた力だし、それに小説の主人公みたいになれると思うと興奮して仕方がなかった。

それに魔王から手紙に「君を選んだ」としか書かれてなかったのでその「選ばれる理由」は俺も気になるところだったので手紙の最後の方に書かれてある部分も気になった。「選ばれた理由」として「魔王と対をなす存在」だということと、「その力を持ってして、その世界の悪しき力を封印することができるのは神に選ばれたものだけなのだ」とだけ記されていたのである。

だが、その詳しい事は書かれておらずどうやら俺の予想していたとおりに魔王が、何かを企んでこの俺を呼ぼうとしていたようだ。俺はその理由については分からないままであるが、それでもこの魔王は信用できると思った。理由はいくつかあって、まずは俺の事を「勇者の素質を持った人間である」ということが信じられる証拠でもあったからだ。そして、何よりもこの手紙に書かれた情報が全て正しいとしたならばこの世界はもうほとんど残っていないのである。だからこそこの魔王の言っていることは本当のように聞こえてしまうのだ。もしこの情報が嘘だった場合は逆に魔王が勇者である可能性が高い。なぜなら、そんな事をしてもメリットはないからだ。だが、その可能性もあるので一応は気をつけておく。

ただ俺もまだ完全にこの魔王を信じているわけではなかったので警戒しながらその世界へと行くために準備をしていく。俺はこの魔王を絶対に倒さなければならないのだ。そしてこの魔王の計画を暴き出し魔王の思惑を阻止しなければいけないのだ。この手紙に書かれている「悪き力」とは何の事なのかはわからないが魔王と同じような存在だというなら魔王の味方なのだろう。

そう考えた時俺はふとあることに気がついて俺は急いでスマホを起動させると自分のステータスを確認する。するとそこには「全属性魔法適正 言語理解」の欄のところには確かにその言葉が表示されていて、俺はそれを確認した瞬間絶望感に襲われる。俺はこのステータスを知らなかったので魔王が細工をしたのではないかと思い疑ったが、このステータスを見る限りではこの「言語理解」のスキルの効果は本物のようなので、おそらく魔王も「言語理解」のスキルを持っておりこのスキルの効果が発動したと思われる。だが、これで俺は魔王と同じ種族の言語を理解する事ができるのである。つまり、魔王はこの「言語」の能力を最初から俺に与えてくれていたという事になるので感謝したいところだ。もしこのスキルがなかった場合、俺達は会話ができなくなってしまうところだっのだ。それから「アイテムボックス」の使い方は分かるようになったので早速試してみるとアイテムボックスの中からスマートフォンを取り出したので少しだけ驚いたがそのおかげでなんとか持ち込む事ができたようであった。他にもいろいろ確認する事があったのと、荷物を収納するために取り敢えず必要なものをどんどんと入れて行きながら俺は考える事にする 俺が選ばれた理由についてである、この「選ばれ方」から考えられるのは魔王と何らかの関係があるからだとしか考えられないので魔王がこの世界に来る前にこの世界に俺を呼び寄せる何かをしたのかもしれない、例えばこの世界がピンチに陥る時に「俺のような人間が必要になるときが来るのでこの世界に来ないか?」といった感じで、俺は勝手にそう思っているのである。ただ俺の考えが正しければ魔王は、この世界を救うために俺を呼んだのであってこの魔王は俺が魔王の考えているような「敵」だと勘違いしていないはずだ。

だが、それならば魔王は何故、俺が勇者の力を持つと知っておきながらも「勇者の力でこの世界を助けるように」とは書かなかったのか?それが疑問に残る。俺の考えていた魔王が世界を滅ぼそうとしているのではなくて俺に助けを求めているのではないか?と、その考えが正しいとすればこの世界には一体何が起こったのかという事である。

「まあ、今はそれよりもこれから行く世界で、この世界の女神を救い出すってのが最優先だけど、それにしてもこの、手紙にある通り、魔族は、俺が今いる人間の領地に侵入をしているから、早く助けないと大変なことになるんだよな。

俺は魔王が残した地図を頼りにしてこの国の王都から外に出た後に俺が最初に召喚されたあの森の中に入る事にする。そして俺は魔王の指定した時間と場所に召喚される事になっている。

そしてその日になると俺の足元には魔法陣が浮かび上がり魔法が俺の体を包むと俺を光が包み込んでその光の中で俺の視界は暗転して俺は目を覚ますとそこには森ではなく草原が広がっていた。そこはどこか見たことがあるような場所で懐かしい気持ちにさせられると同時に何故か俺は心の底から嫌な予感がして、その嫌な感じがしている方向に向かって走り出すと遠くに村のようなものが見えてきて俺はそこで、この世界を恐怖に陥れている元凶と出会うのだった。その出会いはこの世界を変える事になってしまう出来事となる。

その少女の名前は「ユズ」というそうだ。

その「ユズ」という女の子は俺にとても似ている容姿をしていた。

その事から俺はもしかしたら彼女が俺の前世の妹ではないかと考えた。

でも前世の俺には兄弟はいなかったし親戚とかに俺に似ている子供がいたという話も聞いたことがないしそもそも俺はその妹の顔を知らないし妹が生まれた事も親からは聞いていなかった。

それに彼女は、この世界では珍しい銀色の髪の色をしており、俺が住んでいる場所では見かけないタイプの子だった。それにこの世界では銀の色は神聖なものとされていて彼女の両親は大切に育ててきたんだろうなという事が分かる。それに俺の記憶にはこんな可愛らしい子がいれば印象に残っているはずだったのだが俺は今まで出会った事がないと断言できる。俺が覚えていた数少ない記憶の中にもそんな女の子の存在はない。だからこの子は違うと思いたい。

それと彼女について俺は色々と分かったことがあったのだがその中でも俺が最も驚かされた事は、なんとその女の子は俺と同じように魔王の力を有しているということと、そして魔王から手紙を貰っていたらしい。その内容はよく分からないらしいのだがその魔王の手紙によると俺には「神に選ばれていた存在」らしくこの世界の「希望」の勇者として呼ばれたらしい。俺のいた世界にこの世界の女神がいて、そいつを救い出して欲しいと言われたのだと。それでその手紙の中に書かれていた内容にこの世界の女神がどんな奴なのか気になり質問をしたところその答えとして返ってきたのはその女神の名前が、リゼッタと言う事と俺の世界にも女神が存在する事、そしてこの世界を作り出した神様でもある創造神のことを教えてもらったのだ。俺としては「え、マジですか」という気分だった。この世界で俺の世界の神の名が出てきてしまうという事はそれほどまでに俺が呼び出されたこの世界がヤバくなってきているということだからだ。俺の推測では恐らく俺の世界も魔族に襲われてしまっていると思う。

俺はこの話を聞くまではこの魔族たちを倒すのが魔王の企みかと思ったがどうやらそういう訳ではなさそうなのだ。なぜならこの魔王の手紙に書いてあることが真実であればこの魔王は「俺と同じ存在」であるということになる。

「じゃあ、その創造神の居場所を聞こうと思ったけど俺の予想では多分この世界での創造の神殿は破壊されてる可能性があるから教えてもらえなかった。だからとりあえずはレイの父親を救う為に行動を開始しないといけない。

俺はそう判断すると、まずはこの「ユズ」の持っている能力や俺自身のステータスを確認してから俺はまずは「魔王の地図」を「アイテムボックス」に収納することにした。そして俺はその収納した魔王の地図を見てみるとこの地図がどういう原理で俺にこの世界の情報を与えることができているのか分からないので一度確認の為にその地図を取り出すことにしたのだ。

すると、魔王から渡された時には何の変哲もなかった紙に描かれていただけのはずの魔王の城までの道筋が文字として浮き出てきたのだ。それはまるで俺の目に直接情報を刻み込むように、その道のりを示すためにわざわざ書き込まれたもののように感じたのである。それから、俺の頭の中には「スキルの使いかた」や、「魔法の使い方」、「スキルや魔法の効果範囲」「攻撃魔法と補助魔法の種類」などが頭に叩き込まれるように流れ込んできて俺は思わずその場で膝を着いてしまったのだ。どうやらスキルの使いすぎで俺の体が悲鳴をあげているようであった。だがこの程度で根を上げていられるほど事態は切迫していないし俺はこの体が自分のものではなくなりつつあることに危機感を覚えながら必死に立ち上がろうとする。だがその時俺の体に何かが流れ込み俺の意識が飛ばされそうになる、その何かとは魔力だった。そしてそれと同時に「魔王」が言っていたこの「アイテムボックス」の中にあるアイテムが使えるようになる「スキルの使い方」と「アイテムの効果の確認方法」というものを理解したのだ。

俺のステータスを確認する限りこのステータスを確認できるのは魔王だけであり魔王はこのステータスの仕組みを知っていたようだ。

まずは「魔王の地図」を収納し終わったあとでステータスを確認するとそこには新しいステータスが表示されており俺はそこに書かれてあった文字を読んでみた。

ステータス

名前:セイ=ロダスター

レベル:50

年齢:20歳

性別:男性

状態:健康

職業:魔法剣士攻撃力:1550

防御力:1070

敏捷力:630

体力:3900

知力:990

魔力:5000 スキル

「アイテム鑑定」

「アイテム作成」

「言語理解」

「アイテムストレージ」

「全属性魔法適正」

「全属性魔法適正+α」

「アイテム強化補正」

固有スキル

「魔王」

俺は自分のステータスを見て驚きを隠しきれずにいるとステータスに新たに「アイテムボックス(中)」というのが追加されていた。それから俺は魔王からもらった地図と地図が入っていた「魔王の封筒」がなくなっていた事に気がつき慌てて探してみると魔王の「魔王の地図」だけが俺の近くに転がっていて俺はそれを拾い上げようと手に取るがその際に「アイテム作成」の能力で武器を「アイテム」から「魔道具」に作り変えることができるようになっていると知ったので試しに俺の持っていた刀をこの世界にある剣の形に変えると「魔王の封筒」が光を放ち始めてそこから一枚の「魔法陣が描かれた羊皮紙」が現れて俺はそれを手に取った瞬間に俺に情報が与えられてくる。俺はその時に「魔王」が言っていた言葉の意味を理解することになるのである。

この世界の女神であるリゼッタ様はこの世界を破滅に導くような「邪神の力」を持っている。その「邪神の力」によってこの世界は「滅亡への道を進んでいる。だが「魔王の力」を持った存在が現れることで、その力は分散されるのでリゼッタの力を削ぎ落とす事が出来る」

この文章を見た時に俺はその魔王の力というのが「魔王の指輪」の力を指していたのだということを理解してこの手紙に書かれていた内容に俺は納得をすると同時に、その手紙をくれたのがこの世界の住人ではない事に気づく。その「邪神」というのはこの世界を管理をしている神々とは敵対する存在であるという事を、そして俺をこの世界に召喚してくれた人物こそが俺の前世の世界で存在していた「創造神」であると。俺を「選ばれた者」と呼んで呼び出したのもこの世界の創造神であり、俺を勇者にした張本人であることを思い出すと俺の中で色々と辻妻があったような気持ちになり俺は「魔王」に感謝しながらその手紙の内容を全て把握することに成功する。

この世界の女神の「邪神の力」を消滅させる為に、俺は「女神の力」を「魔王の力」に変えてしまう「アイテム」を作成しなければ行けないのだ。それが魔王からの手紙に書かれた「魔王の願い」だったからだ。その願いは俺にとっても叶えるべき事だ。だから俺は必ず「魔王」の言う通りこの世界を救済しなければいけなくなってしまったのだと俺はこの時悟った。

俺はこれからの事について考える必要があると思いこの「ユミナの村」を後にすることにした。

ユナの話では、この村の周辺には強力なモンスターが出現することは無く、比較的平和な村だと聞いた。この村にはこの村に住んでいる人たち以外にも旅人や、商団などがこの村に立ち寄ったりしてこの村に滞在してくれるのでユナは小さい時から一人でこの村の警備をしてきたのだという。そんな話を聞きながら俺はこの「ユミナの村」を出て行こうとするのだがその俺の目の前にはなぜか俺の顔にそっくりな女の子がいる。しかもこの女の子はこの村の子供たちと楽しそうに話をしていた。そのことから、もしかしたらあの女の子が俺の妹かもしれないという淡い期待が頭を過ってしまうが今は違うと自分を叱咤してから俺は歩き出した。そしてそんな俺の前に現れた少女の名前は【アーニャ】と言いどうやらこの村に住む子供らしくて俺は彼女に俺の名前を名乗ってみたのだが俺は彼女の名前を全く知らないのだ。そして彼女はこの俺の偽名である【佐藤健斗】という名前に何故か食いついてきてこの俺に対してしつこく話しかけてきていたが俺はこの子から逃げるように走り出しこの場から逃げ出す事にした。この女の子が一体誰なのか分からないのもそうなのだが俺は今急いでいるのでこの子に時間を取られている暇などはないのである。

そしてこの俺が逃げ出した先で待ち構えていたのは、この村の長の娘である女性で名前は「サラ」さんといい年齢は19歳で見た目的には大学生くらいの女性であった。そして俺は、この村の長の娘がなぜ俺を追いかけ回しているのかわからないまま逃げ回っていると、その途中で一人の女の子と出会ってしまう。その女の子の名前は【リーネ】といい俺よりも年下のようで身長が145センチぐらいの可愛らしい女の子であった。

「あ、お兄ちゃん! どこに行くの? ねぇ、なんで私の事を無視するのよ。私はお兄ちゃんと一緒にいたいだけなのに。どうしてわかってくれないの。それに私の名前はアーニャだよ。だからちゃんと名前呼んでくれないと困るんだよ。それとなんでこんなに逃げ回るの。なんにも悪い事していないのになんで、私をおいてけぼりにするの。もしかしてお兄ちゃん、またあの時みたいに置いていく気でしょ」

俺はその声を聴いて俺は後ろを振り向いてみるとやはり追いかけてきたのはそのアーニャと言う名前の女の子でどうやら俺に好意があるようだ。俺の背中に向かって思いっきり突進してくるので俺は避けるとその反動で地面をゴロゴロと転がっていくアーニャ。俺はこの光景を見て呆れていると、俺の目の前にいた女性が突然俺を抱きしめてきてそのままキスされてしまったのだ。俺としてはこの状況は流石にまずいと感じてしまいその女性の体を押し返そうとすると女性は目を開け俺のことを見つめながら微笑み俺から離れていったのだ。俺はそこで、この女性が自分の母親だということに気づくと思わず俺は顔が赤くなりその場に座り込んでしまった。

それからしばらくして俺が落ち着くのを待ってから母親は「この子をお願いね」と言ってから俺に先ほど出会ったアーニャと仲良くしてやって欲しいということを言ってきたので俺は素直に従っておくことにした。俺はこのままこの場所に残っていいのかと思ったが俺は、自分がこの世界に来た理由を思い出したのだ。俺はレイを助ける為の力を蓄える必要がこの世界ではあるのであると。その為にこの世界にいる「創造神の巫女」という称号を持っている人を探さなければならないのだと思い出す。俺は自分の使命を果たすべく旅に出ようと思っていることを母親に伝えると「いつでもこの村は好きに使ってくれていいし、この村から旅立つときには必ず村長に伝えてくれればこの村にある家を自由に使ってもいいしこの村から旅立つ時は私が見送りに来るから安心して欲しい」と言ってきたので俺はその言葉に感謝をしながら俺はこの村を後にすることに決める。だがその前に俺は、アーニャと友達としてではなく家族のように接するようにと母親の言葉を聞いて、俺はその通りにしようと心がける事にしたのだ。

それから俺が旅に出ることを伝えたので俺はその日はユミナの村の宿屋で一泊することにした。

俺は翌朝起きると宿の外へと出てみる。そこにはすでに太陽は高く昇っており俺は朝早くから行動を始めたかった気持ちもあったがこの時間まで眠ってしまった事を悔やんだ。その悔しさを感じながらも俺はこれからの事に頭を使う。俺の旅の目的、それはレイを救うことであると自分に言い聞かせてから自分のステータスを確認した。そのステータスにはまだ何も書かれておらずレベル1の状態でありそれから俺はこの世界にいる「勇者の剣」を手に入れなければいけないことに気が付き俺はまずこの村に存在する「聖属性魔法が使える者」を探すことにする。その者ならば必ず「勇者の指輪」を装備できるはずなので俺はこの村の中でそれに該当しそうな人物を探したがなかなか見つかることはないのだった。

そして俺が諦めかけたその時に俺は一人の少女に出会うことになる。

その女の子は俺の前にいきなり現れたと思うと俺はその女の子の事を知っていたので俺は驚く事になる。そして俺はその名前を呼ぶのだった。

その女の子の名前は【アリン】という女の子で年齢的にまだ12歳である。その女の子は俺に話しかけると俺の事を見て「リクさんじゃないですか。まさかあなたが来てくれるなんて思わなかったわ」と笑顔を見せながら俺に声をかけてくれたのだ。そして俺はその女の子と話をするとこのアリンはどうやら「このユミナの村の出身ではない」と言っていたのだった。それだけではなく、俺は「ユミナの村」出身であるはずの女の子と、その男の子の名前が出てこないことが疑問だったのである。それからアリンは自分のことについて話しだした。なんでもこの村の人たちとはあまり馴染めずにこの村を出て行こうと思っていたのだけど、村から出て行く前日にこの村の近くにある洞窟の中に「魔獣の角」と呼ばれる魔結晶を手に入れるために一人で冒険に出かけたのだが運悪く魔獣に遭遇して襲われそうになったところ俺に助けられて今にいたると教えてくれたのである。俺はその話を聞きながら「この子を助けられてよかった」と思って安堵している。その話を聞く限りそのアリンと言う女の子は俺と同じ転生者で、俺が助けたというその男はこの世界での「俺」の事なのではないかと察することができた。だがこの世界の「俺」がこの子のことを知らないということは、俺がこの世界に来たときにはもういなかった可能性が高いということだろう。

そう考えればこのアリンは別の世界の「俺」の関係者ということになる。この子はどうやら俺と同じように元の世界に戻る術を持っていない様子であったからだ。それにしてもこのアリンはどうして俺のことを知っているのだろうか? この子もこの「異世界召喚された俺の物語」の登場人物なのか。だとすれば「魔王」からの手紙の文面に出てきた【セイン】と言う名の女の子は、この子の姉になるはずだから俺も早く会わなければならないのだと思う。そのことを考えると急ぐ必要があったので俺はアリンと一緒に村を探索する事にした。

「なぁ、アリンはこのユミナの村から外へは行った事があるのか?」「え、あ、その、ないです。その、私にはそんな勇気がなくて行く事ができませんでした。それで私も一度外の世界へ行こうとしたんですが、その時に村の人達に怒られちゃったのでその時に私は何も言わなくなって外に出る事をやめたのです」

俺はアリンからこのユミナの村から出た事がないという話を聞き驚いたと同時に「なぜそんなに簡単にあきらめたのか?」ということを問いかけてみると、アリンが言うには村の子供達は皆この村を出て行ってしまうと自分達を見捨ててどこかに行ってしまうのではないか? という不安が心の中にあって村の外に出ることを嫌がるらしいのだ。俺の村での生活は村人たちとのコミュニケーションがとれていなかったので俺は村の人たちに嫌われていたから俺は村の人たちとは一緒にいられないだろうと覚悟をしていたのだけれど、俺が思っていたよりもこの村の人達は優しくて温かい人々ばかりで、そんな村の人たちは俺に普通に接してくれていたので俺はこの村の人たちに受け入れられているのだと思った。だから俺はアリンに村のみんなは俺が嫌いになったのではなくて恥ずかしがりやなだけだと言ったのである。そうしてアリンを励ましていると俺はふとアリンの左手につけていた手袋について聞くとアリンはこれは自分の母親がお守りだとしてくれて身につけるようにと言われてから毎日ずっとつけて生活をしているのだと言う事を教えてくれた。そしてそのアリンの母親というのは「この村」の出身だという事を知った俺はアリンに案内して貰うとすぐに見つけることができた。

そのアリンの母【セリス】と言う名前の女性と俺は会話をしてこの女性こそが、アリンの探し求めていた人物でありこの女性がこの村の長の娘なのだと理解する。

それから俺とセリスはお互いに自己紹介をしあった。そして俺は「勇者の剣」というものが存在しているかどうかを聞いてみた。すると彼女は知っていると言い、その場所に連れて行くと約束してくれたので俺はついていく事にしたのである。そして俺たちはその剣がある場所に向かうため移動を開始したのであった。

それから俺とアリンはユミナの村の近くの「とある洞窟」へと向かう事になりそこで俺とアリンと別れた。それから俺が「聖属性魔法」を使うことができる人間を探してから俺はレイの待つ「あの国」へ向かう事を決めており急いでこの村の村長に話をつけてこの村の人たちにこの村での滞在許可書のようなものを貰ったのである。その村を出る際にこの村にいる間に起きた出来事を話してから出ることにした。この村に滞在をさせてもらったお礼と、それからこの村にいる間、俺はこのアリンと仲良くさせてもらっていたと伝えて、そしてアリンのことを頼むとだけ伝えた。

俺はアリンの事は任せて欲しいと伝えるとその女性は微笑みながら「わかりました。アリンの事、頼みますね」と言ってくれたのだ。俺はその言葉を聞いた時本当にこの村の人たちは優しい人しかいないのだと感じさせられる。だからこそ俺はその人たちの為にも絶対に「この世界」のレイを救うことを成功させようと心に誓った。

それから俺はこの村を出発しようとしたが俺の背中を叩かれる。俺は驚いて後ろを振り返ると、アリンが笑顔を見せて「行ってらっしゃい!」と言ってきたのである。俺は嬉しくなってアリンのことを抱きしめてから「また帰ってくるよ」と告げるとアリンの頬にキスをしたのだ。するとアリンの方は俺の事をギュッと抱きしめてきてそのまま唇にキスしてきたのである。その行為があまりにも突然だったので、俺はアリンのキスを甘んじて受け入れてしまう。俺はこのまま流されるままではいけないと思い慌ててアリンを引き離すとアリンは顔を赤くしながらも「これが私の気持ちです」と言って俺に手を振りながら見送ってくれたのだった。俺はその後ろ姿が見えなくなるまで手を振るのであった。

こうして俺は旅に出ようとするのだがその前にやることが残っていることを思い出した俺はこの村の中で一番大きな家に入っていく。そしてこの村の中では偉い人が座っている部屋に入ると、そこにはこの村の村長と、それからその息子がそこにいるのだった。俺はこの村長にこの村の事を頼まれた時に俺は「必ず戻ってきてください」と言われていたことを思い出すと俺が旅に出て戻ってくることはもうこの二人にバレていることだと思い俺は旅に出ようとしていたことを素直に伝えた。その二人は最初は俺が旅に出ることに驚きつつもその話を最後までしっかりと聞いてくれていて俺の旅立ちを許可してくれたのである。俺はそれから俺の事を見送りに来てくれる二人の気持ちに感謝しながら「必ず戻ってきて再び会いましょう」と言う。そしてこの村長が用意してくれた地図を見ながら目的地の場所を改めて確認してから俺はこの村の門まで向かい、そしてこの村を出発するのだった。俺の旅はまだ終わってはいない。この世界の【セイヤ】を助けるためにもこの世界の【俺】に会う必要がある。そのためにも早く目的のものを手に入れなければと思う俺だった。俺はそんな決意を固めながら王都を目指して歩いていったのである。

そうして俺は歩き続けるのだが一向に街につく気配はなく森の中に入り込むことになる。それから数時間歩いた所で俺の前にモンスターが現れる。

その敵は、この世界での最強種と呼ばれている種族【魔族】という者達だった。その【魔物】たちは俺の姿を見ても全く襲ってこない。どうやら俺に対して恐怖を抱いているようだったのだ。

俺が魔族の方に近づくと魔族は俺のことを恐れながらも何かを伝えたい様子を見せていた。俺はその様子に気づくとまずは魔族の言っている事をわかるようにしてあげようと思い、俺は魔族の言葉を理解することにする。それから魔族が「助けてほしい」と言っており俺が「助けられるなら助けるがお前達魔族はこの国の魔族なのか?」と尋ねると魔族がうなずいていた。俺はその返事を聞くと、なぜここに現れたのかと聞く。するとどうやら俺をこの場所に呼んだ人物がいるということらしい。俺はこの世界の「魔族」と呼ばれる者たちがこんな所にいる理由がわからずに、魔族にその「呼び出してきた相手」のことを聞き出すと、この魔族はその相手の命令を受けて俺の事をここへと呼び出そうとしていたのだ。だが、そんなことができる相手が果たして誰なのか? と疑問に思うと、それはこの魔族たち魔獣の王であり最強の存在だと言われている【魔獣神フェン】様だという。

その名前に俺は驚愕すると「なんで魔獣の神が俺を呼んでいるんだ? しかもわざわざ魔獣の国と呼ばれる場所から俺を呼んでまで何をしようと言うんだよ」と、俺が言うと、魔獣の王はわからないと答えた。だがその呼び出した人物が、魔獣の王の目の前で俺の事を殺そうとしていることを教えてくれると、この世界には【魔王軍】というものが存在するらしいのだが、その組織の頭首が俺を殺すことで、世界を支配して自分が世界を支配するための「駒」にする為に殺しに来るのだと説明を受ける。俺は話を聞いていて、なぜそんなことの為に俺は狙われなければならないのか? と思ったのだが、俺はとりあえずその魔王軍の頭首の名前を教えてもらうことにしたのだ。

それから俺がその魔獣王に聞いた魔王軍の頭首の名前が【マオウ】という名だと知るとその【魔王】は一体どんな男なのかと興味を持ち、俺が質問をしていくと魔王軍の頭の男は答えていく。俺もその魔王がどういう人間かに興味が湧くが、その男が今どこに居るのかまでは知らないと言うのだ。俺は仕方がなく俺は魔王軍が拠点にしている場所にたどり着くようにその場所へと向かって行くのであった。

それからしばらく歩いていると、俺はこの先に「巨大な空間の裂け目」が存在しているのを発見する。俺はそれを見つめるとその場所に向かって走り出して行きその空間の中に入ると、そこは真っ暗で何も見えなかったのだ。俺はすぐにこの中に入らないほうがいいと判断して外に出ようとした時だ。その声が聞こえたのであった。

「おい、どこに行くつもりなんだ? ここは俺の領域内でもあるのによ、それにその入り口が何処に繋がっているのかわかっていてそこに入ったわけじゃあないよなぁ」俺は背後からの声に振り返るのと同時にその正体を見るがそこには一人の男性しかいなかった。しかし、その男性は人間ではないことがわかると、その姿は人間のものではないと理解する。その男性の見た目はまさに「ドラゴンそのもの」だった。そのドラゴンの姿は全身が黒い色をしている、俺はこの世界で初めて本物の「ドラゴン」を見たような気がする。俺はそんな感動に浸りながら俺はこの男性がなぜ「領域内」と言っていたのかが気になったのでそのことを確認すると、このドラゴンの男性が言っていた「領」というのが俺の世界で言う所の「土地の広さ」と同じような意味だということが分かってくる。この男性は自分が管理している「領地」の中で、この「闇の中に続く空間」を「領土内」と言い表していたという事が分かり、それを理解するとその「領土内」と言う場所に入るということはこの人の「領土」に入ることになる為「不法侵入者」として扱われても文句を言うことが出来ないのだろう。だからこの人は先程から俺の事を「犯罪者」として扱っており、俺は「領」というものがどのような意味合いを持っているのかを改めて理解する。

俺はそんなことよりも俺は「あなたがどうしてこの場所に現れたのか?」を問いただしたいと思っていた。なぜなら、この場所は俺にとって「ある特別な日」が訪れるまで訪れる予定はなかったからである。俺はそう思いながら目の前の「黒竜族」の男性にそのことについて尋ねた。

その俺の問いかけにその人物は、「俺の名前は『ダーク』、【魔神マオウ】様にお仕えしている。今日は貴様が【聖女ユイハと同行していた勇者の仲間】である事は確認済みだしな。貴様のことも調べてあった」と言った。そしてその言葉を聞いていた俺はこの人物が「セイ」の事も把握している事に驚いていた。つまりは目の前の男性は俺が聖女の事を「セイ」と呼ぶ前から知っていたということになるのだ。そうなってくると、俺が「聖女をセイと呼んでいる」ことが、この「ダーク」という人に知られてしまっているということである。だからこそこの人は何もしていないにも関わらず「犯罪者扱い」をしてきていたのかと俺はようやく納得できたのである。そして俺は「その件については謝ってくれないか?」と、言うと「その必要はない、俺は自分の仕事をこなしているだけであって別に謝って欲しいなんて思っていないからよ」と言うと続けてこう言ったのだ。「それよりもここから出るためにはどうしたら良いと思っているんだ?」と言われてしまう。

その言葉を聞いた俺はその事に関しては、この空間が「闇の中に続く」とダークが言い放ったことを思い出し俺はこの世界に来たばかりの時の状況を思い出して「光」を作り出すことに成功をする。俺が作り出したその「明かり」によってこの世界に存在するもの全ての目が俺に向けられたのだった。それから俺が作った「光源」を見つめるとそこには確かにこの「暗闇の中を進む道が存在していた」

その光景を見ていた俺は「どうやら俺の勝ちのようだ」と思い俺はその道を進んでいくのだった。それからしばらく歩いていくと次第に景色が明るくなっていくのを感じ始める。その光景に俺は「ついに抜け出すことができたか」と思いさらに歩を進めていくと突然後ろにいたダークが「待ってくれ! 置いて行かないでくれぇ!」と言って俺を追いかけてきたのだ。それから少し時間が経つと俺は「魔王の領土」と思われる場所に出ることが出来たのであった。その魔王の領地は一言で表現すればとても広大な大地が広がっており空からは太陽が見えていたのである。

その太陽の眩しさに俺は手で目元を隠しながら周囲を確認するとそこにはこの「魔族の国」と呼ばれている場所で見かけたような格好をした魔族たちが存在していたのだった。そして俺はそこで一人の人物に気づく。俺はその人物の事を一目見てわかったのだ。俺が「セイの両親を殺した張本人」であると。俺は怒りをあらわにしてそいつの方に走っていこうとすると後ろから肩を掴まれる感覚に襲われる。俺はそれが「ダーク」のものだとすぐにわかると、その行動に対して「邪魔をするな!!」と叫んでいるとダークは俺を止めようとしていた。

それから俺と魔王が一騎打ちを始めようとする。その様子を周りの魔族たちも見守っていてその中にはこの国の「王」も姿を見せたのだ。そしてその王が俺と「魔王」の対決が始まる前にこの場で「魔王軍の総隊長」を決める決闘を行うと宣言してからその決闘が始まろうとしていた。だが俺はその宣言に対して異議を唱えたのだ。その魔王が「本当に俺と「魔王軍の総隊長」をかけた戦いをしないといけないのはおかしい。お前は俺のことをすでに知っているんだろ?」と言うと、その王は「それはそうだ。この俺、いや私の名前は「魔導神マオー」。【聖女神セレーナと対になる魔王】だ。貴様は我々「魔族」が召喚した【異世界】から来た人間。ならば、この世界に存在している「魔王」とは私のことだ」と言うと「では何故、その私が召喚させた人間の事をわざわざ調べあげている? 普通ならそんな面倒なことはしないはずだが、俺をここまで連れてきた奴が【魔王軍】の「幹部の一人、情報屋の男」に頼んで調べさせておいたからだろう」と、俺は「魔王軍」の幹部の名前を聞くとその名前に覚えがあることに気づいたのだ。

それは俺が魔獣の王の所に辿り着く為に利用して殺したあの【魔獣の国の王の側近】の男の名前が「情報屋ノリオ」だったことを。それから俺はその男の能力を利用して俺をここに来るように誘導していたのだと判断した。俺は「俺の事をそこまで知っていてなぜこんなことをした?」と言うとその魔王は答えたのである。「私は、貴様の事をどうしても手に入れたくなったのだ。それに「異世界からの旅人、レイヤ」よ。君を殺さなければ、我が「配下たち」が殺される可能性があったのでな。仕方がない」と言うと魔王はその手に持っていた「剣」で俺の首をはねようとしてくる。だが、その攻撃を避けながら俺はこの魔王の「目的は何なのか?」と考えたのだが結局はわからなかった。

それから俺は一度その場から離れることにすると、魔王が「逃さんぞぉおお」と言いながら追いかけてきてから再び戦闘を始めると「流石、勇者だ!! 強いなぁ。これほどの強さを誇る者をこの国に迎え入れられて本当に良かったと思う」と言った。そして次の瞬間、「闇」を作り出してその中に姿を消したのであった。その「闇の中を移動する能力」を目にした俺はこの魔王の力はかなり高い事が分かったのであった。

魔王との激闘を終えた俺は、魔王から奪ったその「闇の中を移動することができるスキル」を使いこの世界から逃げ出すことにしたのだ。そして俺はすぐにその場所から離脱しようとしたその時、魔王と戦おうとしていた俺の事を呼び止めてくる者がいたのである。俺は振り返るとそこにいたのは「セイ」と「レイ」の母親であり、今は「俺の義母」になっている「ユミナ」とその妹の「セイヤ」が姿を現したのであった。それから俺は「この人たちが誰なのか?」が気になりながらも俺の事を呼んでいることから俺はユミナとセイヤの元へと向かい、彼女たちから色々と事情を聞かされた。

その内容は信じられないものばかりで正直に言うと、俺はユミナの言っている事を信じていなかったのであるが、「俺と初めて出会った時にユミ姉とセイはもう既に俺に好意を抱いていた。それくらいに俺の事を信用している」ということだった。その話を聞いていた俺はユイにも同じことがあったと聞いていて俺は、その二人から好かれていることに驚き、同時に嬉しく思った。そして「どうして二人はこの世界に来てから間もない俺の事を信頼してくれるのか?」という事に疑問を抱いた。だからその事を俺は二人に聞くと、二人は俺の目を真っ直ぐに見据えて言ってきたのである。

「セイちゃんを救ってくれたことと、私たちを「家族」として受け入れてくれたからだ」と、それから続けてセイヤも同じように俺たちを助けてくれたし、なにより「私たちはお互いを信頼できるほどの信頼関係を持っている。だから私は、私の妹である、この子、セイのことはもちろん。ユナさんのことも信じてこの世界で生活していくと決めたのです」と言う。その話を聞いた俺は、俺は心の中で「やっぱりこいつらは俺が守らないと駄目だよな」と強く思うのだった。

俺はセイとセイヤがそんな話をしながら微笑みあっていたことを見てこの親子がとても仲良くなっている事に気がついてよかったと安心すると同時にこの二人がこの世界でも楽しく幸せになれていることが俺にとっては嬉しいことだった。それからしばらくして俺は二人の家に向かいその家にたどり着くとその玄関を開ける。それから俺が中に入るとセイは俺のところに駆け寄ってきてそのまま俺に抱きついてくる。そんなセイの姿を見て俺は愛おしいと思ったが、その光景を見たユナは少し不機嫌そうな顔をすると、

「ちょっと、なんでいきなりセイの部屋に入るんですか! ここは私たちの愛の聖域なんですよ」と言ってきた。それからその言葉に俺はつい「何を訳わからないこと言ってんだよ!?」と声を張り上げてしまった。

その声に反応してリビングの方からも誰かがこちらに向かって歩いてきて近づいてきたのだ。そして現れたのは「ダークドラゴンの女の子、ダーク」であった。ダークはなぜか俺を親の仇を見るかのような目つきをしていて、俺はその視線に恐怖を覚えるとセイが慌てて説明をするのだった。その説明をダークが聞き終えると納得をしたのか今度は俺のほうを向いてからダークは俺の頬を引っ叩いてこう言い放つ。「俺は絶対にお前を認めんからな。俺はセイヤに助けてもらった借りもあるし、あいつを俺の嫁にして一生守るって決めているんだ。俺とセイは相思相愛だし、お前がセイヤの事をどう思っていようが俺は認めないからな」と言う。

その言葉に俺は何も答えることはできなかった。ダークはそれからすぐに「今日はセイヤに呼ばれたから来たんだ。じゃあセイヤ、また明日会おう」と言うと自分の部屋に消えていく。俺はその後姿を呆然と見つめていたがその隣ではセイが「あの人はまだ私達のことを好きになったばかりなのに。でも、大丈夫です。これからもっと仲良くなっていきます。そして最終的には私が振り向かせてあげますから。そういえばあなたも私を抱きしめたいと思っていませんでしたっけ? ほらおいで」と言うと俺の頭を両手を持って引き寄せてからその胸に埋める。

俺はセイの言葉を聞いた時、「お前にその力があったらとっくにやっているわ!!」と心の底から思いながらも、やはり「セイに抱き締められている」ことに対して喜びを感じていた。それからしばらくの間、俺はずっとセイに抱かれ続けていたのであった。

俺は「セイの家」に行く途中でこの国の王を名乗る男性に会い、「セイの両親を死に追い込んだ張本人」であるとわかった俺は怒りに満ちていたのだが、この男が魔王だったことと、この男のスキル「闇の中に隠れる」能力のおかげでどうにか逃げ延びたのである。

俺達は魔王と戦闘を繰り広げて無事に魔王を倒すことが出来たがその際の戦いで俺はかなり疲労がたまっていたのだった。なのですぐにその場を離れて休もうと俺が考えた矢先に俺の前に一人の人物が現れたのだ。その人物は黒い髪をなびかせた綺麗な女性だった。その女性はどこかの国のお姫様だと思われるようなドレスを身に纏っていたのである。その人は俺が突然、その人物が現れてきた方向に目を向けたことでその人も俺の方に顔を向ける。その人と俺は目が合うと俺とその女性がお互いの顔を見ている状況が続くが、先に口を開いたのは俺ではなく相手の方で、その女性は自分の事を「ダーク」と名乗り「貴方は異世界からの迷い人のようですね」と言う。そして俺はダークが口にしたその「異世界からの迷い人」という言葉に反応を示す。俺は「それはどういう意味だ?」と言うが、その質問をダークは「異世界から来たばかりの人に私が教えなくてもわかりますよね? 私はその事を貴様に忠告するためにここに来ただけです。今ならまだこの世界に馴染むことができれば元の世界に帰れます。その方が貴様のためだと私は考えています」と言われたが、俺はその話の内容を聞くと、この世界に「魔王軍」がいることと、その魔王軍に召喚された人間が他にもいることを教えてもらうと、俺も自分がこの世界の人間じゃないことをダークに伝える。その言葉をダークは「その言葉、信じてもよろしいんですか?」と聞いてきが、俺はその問いかけに「ああ」と一言だけ返す。それからダークはこの世界で生きていく上で必要最低限の知識について教えると「私はここでお暇します」と、その場から姿を消す。それから俺はセイの家に行こうとしたのだが、その時俺の視界に映った「セイヤとダークが二人で一緒に手を繋いで仲睦まじく歩いている姿」を目撃すると俺はその場から離れられなくなり、「セイの家に行く」ということを諦めた俺は「ユミナとレイの家に向かうことにする」のであった。

それから俺は二人の家で少しの間休ませてもらってからすぐにセイの家に再び向かう。それから俺がセイの家の扉をノックしようとすると、中から「セイちゃんの胸の中に飛び込みたいなー」と聞こえてきたので俺はその行動を辞めるとセイヤに俺が来たことをセイに伝えてほしいという伝言を頼んで俺の目の前からセイの姿が消えると俺はそのセイが座っていた場所に腰を落とすとそこで俺はあることに気がついたのである。それは俺の座った椅子の上に手紙が置かれていたという事にである。俺はその置き手紙を手に取ると中に入っていた文章を読み始めた。

『これを読まれている頃はきっともう、私はここにはいないのでしょうね。私は先ほど魔王と遭遇してしまいましたがなんとか倒しました。それで魔王が最後に言い残したのですがどうやら私の命は長くなさそうだったので私の代わりにセイヤの事を守ってくれる方を探そうとこの世界を旅していたのですが、まさか私と同じ能力を使う者と出会うとは思ってもいなかったのですよ。それがレイヤ君なんですよ。私はこの世界に来る前にレイヤ君の事は知っていましたが、その能力と「セイヤの事を大切にしてくれるか」どうかが知りたかったのです。

私にとって一番大切な事は何よりセイヤの事を守ることができるかどうかです。セイヤが魔王に連れ去られそうになった時に守ることができるのかが問題になるんです。ですからセイヤが連れ去れる前にレイヤ君はセイヤを助ける事ができるかを確認しなければならなかった。だから私はレイナに近づいたのですよ。レイナに近づいたのは、私のように「闇」の中に入ることのできる人がいれば安心だと思い。この能力を使えば魔王からも逃げることが出来ますからね。だから私が「レイヤに話しかけたのはセイちゃんのことを任せられるかを確かめようとしていたの」と言った時にはレイナの表情が驚きに変わりそれから嬉しそうな笑みに変わったのを今でもはっきりと覚えている。

そしてレイナは「私がセイちゃんを幸せにする!」って言ってくれた。だから私はレイヤ君には申し訳ないけどセイヤを託して私も旅に出ることにしたの。本当はもう少し早くにセイヤと出会えていればこんなにも心配することはなかったのかもしれないけれど私もセイヤのことを守れなかった。ごめんなさい。だけど私はレイナにセイヤのことは託して本当に良かったと思っている。

なぜなら今のセイヤはとても幸せそうだから。

セイヤに「愛」を教えるのは大変だったと思うけどそれでも二人は本当の意味でお互いを愛し合っていると確信できたよ。二人に幸せになってもらいたいから、私はこれ以上何も言わずに旅立とうと思うの。それに魔王を倒さないとこの国に危険が訪れる可能性もあるから私は絶対に魔王を倒します。この国が大好きだしセイヤの故郷ですから。それでは私にできる最後のお仕事、セイヤのこと、お願いね』

俺はそのセイの手紙を読むと涙を流してしまうのだった。セイにセイの気持ちを聞けたことと俺を信頼してくれたことがうれしくて俺はセイから受け取ったセイの思いやりに感謝していた。

そして俺はその後、しばらくしてから「俺の家族」と話をする為に俺はもう一度「家族の家」へと向かって歩き出すのであった。

「セイは私と、そしてセイを救ってくれてありがとう」とユナは俺にお礼を言う。俺は「俺がセイに助けられてばかりいるんだ」と心の底から思うと、そんなことはないと言うが「私もだよ」とユナは微笑みながらそう言う。俺はそのユナの微笑みを見て思わずドキッとしてユミトの顔を見てしまうと俺とユマはお互いに見つめ合って見つめ合うことになる。そんな時俺の体に誰かがしがみついてくる。その感覚は懐かしい感じがしていて俺は「その相手」はわかっているので俺は「おいおい、どうしたんだ」と声を掛ける。

すると俺がしがみついていたセイが顔を上げてから恥ずかしそうに頬を赤らめつつ俺の方を見ると小さな声で何かを呟いているのがわかるが俺はよく聞き取れなかった。俺はそんなセイの様子に可愛らしさを感じながらも頭を撫でると、「もっとして欲しいです」と言うのだった。俺はそんな可愛いセイの言葉に思わず顔が赤くなってしまうと「何があったのか」と聞かれるが、俺も詳しい事情までは把握していなかったのでユミナに助けを求めるのだがユミナも知らないようであり俺は仕方なく俺も詳しくはわからないと言うとセイは「そうなんですね」と残念そうにそう言ったのだ。

そして俺はセイにこれから何をしたいのかというと、これから俺達が住むことになった国について詳しく知るための行動に出たいというとセイは「私も同じことを考えていました」と言ってくれて俺達はこれから行動を開始する。俺はそれから自分の部屋に戻り「異世界に来たらやっておかなければならない」と思い、スマホを取り出して操作をしていると俺はある画面を見るがそこに表示されている内容はどれも見たことのないような言葉や、理解不能のものであった。その画面を見た後すぐに俺の頭に「?」が沢山出てきてしまい、俺の中での異世界へのイメージが崩れ落ちてしまったのだが、とりあえずこの世界の人達と連絡が取れればと思っていた。俺はそれからこの異世界に来た時にある場所に置き去りにされていた荷物の中に「この世界の通貨が入っている袋」が入っていたのを思い出した。俺は「この世界の貨幣制度が一体どんなものになっているのか?」を知るためには必要だと思えた。その事で俺は一度セイの部屋に戻る。それからすぐに俺は自分の部屋を出ていくとそこにはなぜか俺以外のメンバーが全員揃っていたのだ。俺が「なぜみんなここに集まっている?」と言うとリゼッタが代表して答えてくれる。その説明を聞いてみると俺達が今から行く場所はこの国の城でその城内で会議が行われるという情報を仕入れたらしく、それを皆に伝えておいたと俺に伝えてきたのである。

俺はその事を言われても正直、この世界でどのような会議が行われるのかについては想像がつかなかったのである。それから俺はリゼッタ達にセイが今この世界に来ているということを伝えようと口を開く。すると俺の声をかき消すかのように部屋の扉が開かれ、そこから現れたのは「この世界の王、国王様」だった。

俺がこの人の姿を初めて見るとこの人が、この世界を統治する人物だという事に驚くと俺は「この世界」についての事を聞く。俺もそこまで詳しいことを知らないので、この世界の歴史などを話してもらうために、俺はセイがこの世界について知っている情報を話すのを黙って聞くことにしたのだった。

それからセイが話すとセイはこの世界には四つの大国があるという事を俺たちに伝える。その国々の名前はそれぞれ、「レイア」「レイラ王国」、そして、「ユミナ」の住む国は「ユミナ」が住んでいる「レイカ共和国」、最後に俺達のいる「ルキア帝国」。

この三つの国に俺達がいるのだが、このレイカ共和国の隣の国「アーレイ皇国」にセイを攫った元凶の魔王「ダークネス」がいて、さらにこの「ユミナ」の住むユミナのレイカ共和国の向かい側には俺とユミナがこの世界に召喚された原因のあの男が支配している国が存在しているのだという。

それから俺はセイにレイナも一緒にレイカ共和国に連れて行ったほうがいいのかと聞いてみるが、レイナを連れて行くと他の二つの国が納得しないのではないかと思い俺はそのことを伝える。するとセイは、確かにそれは言えると同意してくれて俺はその意見に俺とレイナ、セイとセイで別れることにした方がいいのかもしれないと提案するとセイはその考えに同意してくれたのだった。

そして俺は「セイがこの世界に来てからの出来事」を教えてもらうと俺の思っていた通りセイはユナと共にこの「レイ」の街にやってきたのである。

その街に到着した後、セイがレイカ共和国でレイナと出会って、レイナに助けてもらいここまで来たらしい。俺はセイが無事だったことを喜んでいると、俺はセイにユナとはどうやって出会ったのかを尋ねてみると、ユナとはこの世界に来る前に出会う約束をしていたのだという。そこで俺はユナとセイがどういう風に出会っているかを確認するために質問をした。だがセイが言うには「レイ」の街に向かう途中、セイの乗っていた乗り物が突然動かなくなってしまったのだという。

その時セイが持っていた地図を見てみてもそれらしき場所は載っておらず、セイは自分がどこに居るのかがわからなくなってしまった。そんな状況に陥ったセイは「自分はどこかの森に迷い込んでしまった」と判断してしまい。それからしばらく歩いてセイが森から抜け出そうとした時に一人の少女がセイに近づいてきた。

セイは自分に用事があって声をかけてくれたのだと思ったセイはすぐに立ち止まるとセイの前に姿を現したのは「黒髪」の長い髪を腰の位置まで伸ばした、綺麗な瞳と優しい顔つきが特徴のセイよりも背丈が低いが年齢は同じかそれよりも上の女の子だった。その子は自分と同じくらいの歳に見えるのにもかかわらずセイを優しく気遣ってくれる。その事がセイにはとても嬉しくてつい泣いてしまうとセイはその子の前で泣いた事を後悔したのだった。その子は「私は大丈夫だから」と言ってセイに話しかけるとセイを抱きしめて、背中を撫でてくれてセイが落ち着くようにしてくれる。そんな様子を周りの人達にも見られていたのにも関わらずに、その少女はセイに笑顔を向けるとそのまま去って行ってしまったのだった。

セイは泣き止むと「その子は私に名前を名乗ってくれたのです」とその子の名前を伝えると俺が知っている人物でセイに「愛」というものを教えてくれると言っていたセイのことを信頼して俺に託した「大切な友達」だったのだった。俺はセイの話に感動して「その子に感謝しなければいけない」と思うと俺はその女の子の特徴を聞き出して、セイに教えてもらうとセイにもう一度「その子はどんな見た目だった?」と確認すると、その子が着ていたのが、水色とピンクを基調とした服と、白と黒のボーダーが入ったスカートだったと聞いて俺はその少女のことがわかってきた。

おそらくセイの前に現れた「セイ」は「水橋(みずはし)

綾奈(あやな)」だと確信した。

俺はその名前を聞いてから「まさか俺とセイが出会わせようとしている相手が俺達と同じ名前の人だったなんて」と思って少し戸惑う。それから俺は「セイが俺と出会えている」ということを、これから出会う予定の「レイア王国の勇者様達」にも知らせるためにも、セイにもう一度俺達がいる城に行ってもらいたいと思い、俺達は「これからどうするか」という事を改めて決める。そして、これから俺達がやるべき事は「レイナ」をこの「レイ」の街から連れ出し、「ユミナ」のいる「ユミナ」の家に移動するという事をまず最初に決めるのであった。

「この世界に来てすぐにセイを助けてくれてありがとう」と「レイナの母親」である「レイ」が俺に向かってそう言ってくる。俺は「そんな感謝をされるような事ではない」と思いながらも、「レイナと俺は偶然会っただけで」というと、「それでも私の娘とセイを救ってくれて本当にありがとう」と何度も言われると俺は困ってしまう。

俺がその事に困惑して、俺は一体何をすればいのかわからなくなると「それなら娘と一緒にレイ」の家に来てほしいと頼んできたので、俺はその誘いを受けることにして、レイナは俺とセイの二人で連れて行くという事にする。俺がレイア王国に行く理由はセイの両親に会うことと「レイナのお母さん」がレイのレイの「レイ」であり、その「レイ」に会いたいという気持ちがあったからだった。俺はその話を終えてからセイが部屋に戻っていくと俺にユミトが自分の父親に俺が「この世界に呼ばれてきた人間」であることを説明するから俺の部屋にいるように指示を出してから自分の父親の部屋へと戻っていく。それからすぐに俺とユミトは部屋を出ていくのだが、その際のユミナはいつも以上に可愛らしくて俺は思わず「可愛いな」と心の中で思ってしまっていて、そのせいもあって俺は「ドキドキ」してしまったのだった。

そして、セイがこの城から出て行って、俺達がレイのレイのレイが統治をしている「ルキア帝国」の王の元へと向かうための準備をしている。それから俺はユミナにレイナが「ルキア帝国の皇帝の妹」だということを伝えようとするが、俺の言葉の途中でレイナが目を覚ましてしまい俺が言いたかった事を伝え終わる前にユミナは何かに気が付いて俺の方を見つめる。それからユミナは自分の手を見て驚いた表情をしていて俺はその事に疑問を持ち始める。その疑問の理由を聞くとユミナもセイと同じく「レイ」がレイナの体に入ってしまい、その事で「レイナ」の体は一時的に使えなくなったのだが「ユミナがユミナの体の中に入った瞬間に「意識だけ」で外に出た状態になり」俺の体を操ってセイのところに向かうという行動をとっており、そのおかげで「俺はユミナと出会うことができ、今こうしてレイにレイナの居場所が分かった事をユミナに伝えようとしていた所だ」と説明をしてくれる。俺は「レイ」と聞いてある人物を思い出す。その人物が誰かというのは俺にはまだ分からないのである。それから俺がレイナが眠っている間に俺とレイナの二人きりで話し合いをして俺がこの世界の人間でないことや、魔王を倒して元の場所に帰りたいという事を俺が伝えた事を話し始めると、レイナが涙を流し始めて俺に対しての「今までの事に対する罪悪感」を感じさせてしまう。

そのレイナの行動に俺は慌てて慰めようとしたが、その時にある事を思いつくとそれを実行しようと思い立った。俺の予想ではおそらくこれでレイナと話す事ができるのではないかと考えたからである。そして俺は早速実行するためにレイナと向かい合うとその頬に触れながら魔法を発動した。その途端に俺の顔は真っ赤になる。

俺が行った魔法の名は「夢語り(ゆめはたり)」という魔法で、この世界でこの呪文を使えるのは一人だけである。

この世界に「ユミナ」しかこの呪文を使えないのは、他の人がこの呪文を使わないのではなく、「使うことができないようにしているのだそうだ」という事を、俺はセイから聞いたのだが詳しくは知らない。それでこの世界に来た当初、この呪文について調べてみたのだが、全く情報が出てこなくて諦めかけた時もあったが、今はなぜか思い出す事ができてしまった。俺は「ユミナがユミナ自身のために開発したこの世界の人間が使う事はできないはずのこの特別な呪文を俺はなんの代償もなく使うことができる」とセイに教えてもらい、その事を聞いた俺は「どうしてそんな事が出来るのか?」と思ったが、それは今の俺にとってはどうでもいいことなのだが。そしてこの「夢物語り」は簡単に言えば好きな人と会話ができる便利な呪文で俺がこの世界で目覚めて間もない頃にユミナに話しかけられて、この世界に呼ばれた時の話を俺はユミナにした。そして俺が話し終えると、ユナは泣き崩れるようにその場に膝をつくと、俺の腕の中に飛び込み大声で泣く。

ユナはレイナに自分の思いを全てぶつけて謝っていたのだ。俺はその光景を見ながらレイナの涙を止めるとユミナは「ごめんね。セイちゃん。セイちゃんには迷惑をかけてばかりいて、こんな私だけどこれからも友達でいてくれるかな? 」と泣きじゃくりながらセイに伝えると、セイが泣き始めたユミナを抱きかかえて優しく頭を撫でてユミナの背中を優しくポンポンと叩いて落ち着かせていくと、「当たり前じゃない。私があなたを嫌いになれるはずないわよ。これからだってずっと友達でいましょう。だからもう泣かないで、あなたの顔が見れなくてつまらないから」と言うと、ユミは笑顔を見せると「私にセイちゃんとレイくんを任せてもらってもいいのですか?」と聞くと、レイナは嬉しそうな笑顔で「うん。お願いします。セイの事はよろしくお願いいたします」と答えると、セイが「私のお母さんは大丈夫だから、早くお兄さんのところに言ってあげてください」と言ってくれた。セイは優しい笑顔をユミに向けると「ありがとう。セイちゃん」と礼を言うとセイが寝ていた部屋に急いで向かう。

その様子を見届けてからレイナがユミにレイが俺と同じで「レイア王国の王女」であることを告げて「このレイをどうか助けて下さい」と伝えると、ユミは俺の方に顔を向けて真剣な顔つきで俺の目を見ると俺の手を握ってくると、「必ず私とセイちゃんでこの世界から救い出してみせます」と力強く宣言してくれた。

ユミナはセイがこの部屋を出て行く前にレイがレイア王国の国王だと俺に告げて、「ユミナ」は「ユミナ」の体に入ってきた時にユミナの体を乗っ取った状態でレイの体に入り込み、「レイ」をその体から解放して「レイナの魂」を呼び出してレイナを蘇生させて、その後「ユミナ」は「セイ」をレイのレイの元へ送り込む準備を整えると言っていた。それからレイはレイア王国の城のどこかに囚われていて、ユナはレイア王国の皇帝のいる部屋を探し出しレイを救出できるかもしれないらしい。その事を俺はセイに話してセイがユミンと「一緒にレイのレイを助けに行きたい」と伝えてセイとユミが「三人でレイのレイをこの世界から連れ出そうと作戦」を考える事になった。

そして俺達はそのレイナの「母親のレイ」の部屋を出ていきユミナのいる場所へ向かう。俺は歩きながら「これからどうやってレイを助けるか」と悩んでいると、「そういえばレイナの母親も「レイア王国」の出身なのかな?」と思って俺はユミナに質問する。すると「いいえ、この人は私とセイちゃんが元の世界に帰るための協力者です」と俺に伝えてくれたのである。その事に驚いて俺はつい口が開きっぱなしになってしまうと、レイが笑いながらユミナは「レイナちゃんの事は心配しないでください。私はセイの味方ですから、あなたの邪魔をする気は全くありませんよ」と言い出した。

俺はそんな言葉を聞きながらセイの方を向きセイに俺達の仲間になった経緯を尋ねてみると「レイア王国」はユミナの両親が治める国だった。そして「ユミナ」はその国に生まれてユミナと双子の姉と一緒に暮らしており、双子が十歳になった頃「ユミナ」は「ある事件」にあい、その際に「ある人物」に助けられたが「ある出来事」によってその人の名前が分からずその人物に会うことができなくなったのだそうだ。だが「ユミナ」が十五歳になり成人した時にある人物がこの世界に転移したらしく「その人物」に会いたいとユミナは考えていた。その事を俺はレイから聞かされて「ユミナはなぜ俺が異世界から来た人間だと思ったんだ?」と聞くと「私を助けた人の魔力の色や特徴が似ていたんです」と言われてしまい、俺は納得してしまうと「でもその人がこの世界に来ていることは確かです。ユミナちゃんのお母さんがその人に会えたかどうかは分かりませんが、その可能性はかなり高いと思います」とユミナが言うと俺はユミナに質問をしてみた。その「その人の特徴」とは一体どのようなものなのかを俺は聞きたかったからだ。

ユミナに尋ねると「銀色の髪の毛をして金色の瞳を持つ女性」であると答えたので俺は思わずその答えを聞いてしまうと、セイもユミナの答えに驚いた表情を浮かべていたが「レイナ」は少し不思議そうな顔つきになって「その方は本当にそんな方なのですか? その方の年齢は二十代前半くらいの女性ではなかったのでしょうか」とユミナに質問をした。

ユミナはレイの言葉を聞くと驚きながらレイナの言葉を否定しようとしたが、俺はレイの言葉を否定できないでいた。確かに俺は「ある男に救われる前は三十歳の男性で金髪の男性」に「命を救ってもらった」事があるのだから、俺はユミナの事を信じるしかできなかった。

それから俺とセイはレイが言っていた通りユミナと共にレイのところに向かって行った。そしてセイはレイのレイと対面する事になりレイと話すが俺はレイと話す事ができずに困っていると、レイのレイが突然「私の名前はリリーナと申します。私と会う事ができたという事は全て終わったということですか?」と言ってきて、俺はそれに答えることができなかった。そして俺達の目の前にいるこの少女は「あの時俺を魔王の魔法から救い出してくれた女性に似ているのだが違うのだろうか」と俺は思ったが今はそんな事を確認していられないと思い、俺は今の状況を説明し始めると、俺はこの世界で目覚めた時に会った男の事を「その女性が知っている」事を伝えた後に「レイのレイを俺と同じような状況にしないためにも俺はその女性にどうしても会いたいと思っているが、その方法がわからないのだ。そしてその女性は今どこにいるかも俺は分からないのだ」と説明する。

その俺の説明を聞いた後でそのレイは「私でよければその女性について心当たりがあります。もしかしたらあなたと同じ世界の人で私も一度その方に助けていただきました」と話し出すと、俺はレイが俺が思っていた通りの言葉を言ったので俺は安心するが、そのあとのレイの話によるとレイの「リリーナ」はユミナと同じように「私と同じ世界から来ている」らしい。俺はレイからこの世界の人間がこの世界にやって来ることはない事を聞かされて驚いていたのだが、セイがこの世界の事をレイに尋ねた事で俺はさらに混乱してしまう。この世界の「魔法」を使える人間はこの世界に「レイ」ただ一人だけらしい。その事を教えられた俺が困惑しながら考え込んでいるとレイが俺に声をかけてきて俺は「魔法を使えるのは俺だけでこの世界に俺を呼んだのは別の人間なんだな」と考え込んでしまった。

俺はこの世界に召喚された時にセイから魔法を使うことができる人間がいると聞いた時にその話をセイから聞いていたがその時はそんなことは信じられなかったので俺はレイから聞いた話は俺の頭の片隅に残っていたが、レイは俺が「俺と同じ日本人」だという事に気づくとその事を伝えると俺は動揺してしまったが、俺はそんな俺を気にすることなくそのレイに俺は俺が元々いた世界の話をする事になる。俺の話をそのレイは信じてレイに俺がいた世界をどう説明すればいいのか俺は分からなかったが、レイは自分が俺をこの世界に送った本人だと名乗り始めて、レイは自分が元いた世界の話を始めた。俺はレイが話し出す前の時点ですでに「レイナの事を頼む」と言ってきていたのを思い出したので俺はレイの言っていることを理解して受け入れていくと、レイがこの世界に呼ばれた時にいた「ある国の名前」を告げると俺は驚くが、レイは「あなたにその国から逃げる方法を教えるために私にその力を貸してくれますか」と俺に問いかけてきた。その問いに対して俺の気持ちはすでに決まっていた。だから俺はレイがどんな提案をしてくるか分かっていたが、その提案を受け入れることに決めて「分かった」と俺は返事をしたのである。その言葉を聞いてレイナは涙を流しながら俺に感謝していた。そして俺はこのレイの提案を受け入れる為にこの世界に来て初めて「自分から俺の体から出ていって欲しい」と伝えるとレイは自分の中にいるもう一人の人格と俺の体を入れ替えて俺はその入れ替わった俺の体に入り込む事になった。

そして入れ替わると「私はセイに自分の全てを託します」と言うとセイの意識の中へと入っていったのである。俺はその光景を見ながらレイが「この国の国王の事をよろしくお願いします」と言うので俺はセイの事を守りたいと思うが、この世界の「国王の城」がどこにあるのか分からなかった。だが俺は俺自身の「能力」を使ってこの城の構造を頭の中に叩き込むことに成功する。そして俺達がレイの元へ向かうと「リリーナ」と名乗った女性が出迎えてくれたのだ。彼女は俺と「同郷」の人間のようで、俺に挨拶してきた後に自己紹介をしてくれた。それからレイとユミとも自己紹介することになる。ユミナがセイと一緒に「リリーナさんの所に遊びに行ってみたいです」と言った時に俺は驚いてしまいその事について尋ねてみると「この人の事は「私が信頼しても良い人だと思うんですがどうかしら?」と言われたら断る事もできずに連れてくることになってしまった」という経緯があったようだ。

そしてそれからは俺達は「レイア王国へ行ってもいいのか?」という話になると、「リリーナさんに聞いてみてからにして下さいね」と言われてしまった。そんな訳でとりあえず「その女性のいる場所に向かう」ということになった。その移動中ユミナがレイとセイに事情を説明するがレイには「ユミナさんはどうしてセイを好きになったんですか? 私の予想ですが、もしかしたらあなたはセイと何かあったのではないのですか?」と聞かれてしまう。その質問を受けたユミナが「実はレイちゃんとレイ君が「同じ人」だとしたら二人は恋人だったはずなんですよ。だから私は二人を助けに来たんです」と言うが「リリーナ」は首を横に振りながらレイの言葉を否定したのでユミナは驚きながら「そんなわけありませんよね? この世界で二人が恋仲になることなんてないはずだしそんなことがあるはずがないですよね」と言い始めた。だがレイナが突然ユミナにレイと「リリーナ」との関係を説明した。ユミナはそれを聞きながら「リリーナ様は何を考えているの? いくら元の恋人がセイだったとしても、セイがレイに惚れてるとは限らないのに、なんであんなこと言っているんだろう」と思ってしまった。そんな事を思ってしまったせいでユミナはレイから注意されてしまう。だがその事でユミナは「やっぱり、ユミナがセイのそばにいるべきだったのかな」と思ってしまったのだ。

だがユミナは「セイの側にいたい」と思っている。そしてレイが「それならセイの所に行きましょう」と言うのでユミナはレイに付いて行き、ユミナが向かった場所は「リリーナ」が住んでいる部屋である。そこでレイナからユミナは質問を受ける。「あなたの本当の名前は一体何というのですか?」ユミナはそのレイナの質問を受けてユミナは戸惑うと、レイはユミナが「ユミナの本名を知らない」事に気づいて、ユミナのユはユウキに教えても問題ないのでユミナのミナはそのまま教えることにした。するとユミナはレイナの「ユミナ」が本名だと勘違いしてしまいレイはそのことを訂正しようとした時「リリーナ」がレイに「別にいいのよ、この子は元々ユミナと呼ばれていたんだもの、それにこの子はこの方が慣れているだろうから」と言うとレイは納得した表情になりユミナはレイに謝るのだが、そのレイに質問される前に「私はレイ君の事を心の底から愛しています」と言い切るとレイは「ユミナさんも私と同じ思いをしているって事ですか?」と聞くと「リリーナ」が「それはわからないわ、私はまだ一度もセイを異性として見たことが無かったんだもの。でも今は違うかもしれないわ、この子といるのが楽しいと私は思っているのだから」と言ってしまう。その言葉を聞いたセイは少し嬉しく思うのだが、なぜか不安になってしまうのである。

レイはセイにこの世界で「恋人になることができない人間がいるのか?」と尋ねるが、セイは「私にはわかりません。それにこの世界で恋愛感情を抱く事など無いと思っていたので私は考えたこともありませんでした」とセイは言うが、それを聞いていた「リリーナ」は「本当にこの世界で恋愛感情を抱いていないのか、この世界に恋愛をする相手がいないだけなのかどうかは、実際にこの世界に生きている人達に聞かないとはっきりわからないと思うけど」と話し出す。

そしてその話をしていた時、部屋の外から声が聞こえてきて俺達は全員で外に出て行くとそこには「レイとセイに助けてもらってこの城にいることになった男」がいたので俺はその人物に話しかけようとすると突然男が俺に殴りかかってきて俺は慌てて回避すると男はレイと俺が「元の世界から来た仲間だと思っている」ようでいきなり攻撃を仕掛けてくるとレイナとレイが俺達の事を心配して駆け寄ってくると、ユミナも俺を心配して「危ないことしないでください。もしあなたに傷が残ったりしたらと私はあなたが死んだり傷ついたりする姿を見たくないんですよ。

もうあなたに死なれたり怪我をさせたりするのは絶対に嫌なんです。あなたがいなくなった後の事を想像してしまうだけでも恐ろしくなるんです」と言ってくる。その言葉で俺は自分がどれだけ皆から心配されていたのかという事に気づき始めて「ユミナ、レイナ、リリーナ、俺をここまで守ってくれてありがとな」と言って頭を下げる。

それからは俺とユミナがこの世界に呼ばれた時の事などをレイ達に話すが、俺の「能力」の事に関してはあまり詳しくは言えなかった。俺はレイ達と出会ってからは俺自身の「力」は使えなくなったのである。その理由については「俺は俺自身では「俺の能力を封印する力」を扱えないからだよ。この力を使うのはあくまでも俺の中にいる「別の人格」なんだよ」と説明してから「リリーナ」の方を見て「レイナは俺の力を使ったことがあるんだよね? その時に俺はどうなったの?」とレイに聞いてみるとレイは答え辛そうにしていた。そして俺の体の中には「セイの人格」ではなく俺自身が存在している事を知る。そんな俺に対してレイナは俺に説明を始めてくれた。「私がこの体の人格と入れ代わってセイにこの世界のことについての説明をしている間、レイナは私がどういった人格なのか、どういう風にセイと接してきたのかを話してくれた。そしてその説明を聞いて俺はレイの事を「俺が元のいた世界の話をしたら、すごく興味を示していた奴じゃないかと思った」と伝えるとその事に「確かにそうだと思います。私は私なりに必死になってこの世界と折り合いをつけようと考えていたのですがどうしても馴染めなくて。それであなたのような人が私と同じように異世界召喚された事を知ってとても嬉しいんですよ」と答えてくれたのだ。その話を聞いて俺は自分がやってきたことを間違ってはいなかったのだと思って嬉しかった。そしてレイはこの世界の歴史や政治の話を教えてくれる。俺は自分が元いた世界での知識を生かして話をしてみたが、やはりレイは驚いた表情を見せていて俺にいろいろ質問してくる。そして俺は「リリーナさんにも聞きたいんだけど俺達はこれからどこに向かう予定になっているの?」とレイナのほうに質問を投げかけてみるが、それに対してリリーナさんが「レイさん達はこれからどこに行こうとしているの?」と質問返しされてしまったのでレイが答える前に俺がレイに代わってレイ達がどこに向かおうと考えているのかを教えることにする。

俺はこの城を出てからレイ達が目指していたのがリリーナさんの所だった事を思い出したのだ。

だから俺はレイ達が「リリーナさんの所に行きたいと思っている」という事を伝えるがレイはそれを拒否されてしまう。その反応を見た俺はレイナに「どうしてレイナがレイと一緒に行きたいと思わなかったんだ?」と思いながらもその事を訪ねるが、その返答は意外な物だった。なぜならレイ達はレイが「リリーナさんのところに行くためにこの国に訪れていたから」だった。その事で俺は驚くのだがそのレイの反応が面白かったらしく、リリーナさんがレイに向かってレイの事情を説明すると「そうなのですか。それは申し訳ございませんでした。リリーナさんのところに一緒に来てくれた事に感謝をします。それとリリーナさんの所に一緒に来るように言ってくださったユミナさんにも感謝を」と言い出して俺は「えっ? レイは一体何を言っているんだ? レイ達はレイの目的を達成させる為にここに来たんじゃなかったのか?」と言うとレイは「リリーナさんとは恋人だったんですが。この世界にきてすぐに死んでしまいまして。その時にリリーナの生まれ変わりだと思える少女がこの城に現れてくれて、もしかしたらリリーナが生まれ変わることができたんじゃないかと期待をして会いに行こうとするとなぜかユウキが私の前に現れました。私はユウがリリーナさんの生まれ変わりかもしれないと、思いながらこの世界で暮らしています」という話を聞いた俺はリリーナに質問するがリリーナはその質問に答えることなく「私とリリーナさんが「元の世界の恋人同士」だったなんてそんなことあるはずがないですよね?」とユミナがレイに問いかけるがレイはユミナの問いを無視してレイがユミナの方に振り向くとレイは突然「リリーナの本当の名前を教えてもらえますか? あなたの名前は本当はなんという名前なんですか?」と言うとユミナはその言葉を聞くと「私は、私は「リリーナ」じゃありませんよ。

私はレイ君と同じ名前の「ユミナ」です。「リリーナ」ではありません」と言うとレイは少し考え込んだ後にユミナの名前をユミナに伝えた。そのユミナの本名がレイの知るユミナと同じ名前だという事でさらに困惑をしてしまい、「なぜあなたはリリーナじゃないのにその名前を持っているのですか? それにユミナという名前だって「レイ君の好きな女性の名前」なんです。だから私はユミナにリリーナの代わりを求めてもいないし、そもそも私はユミナの事が好きだと思っているんですよ。それなのに、それなのに」とレイは取り乱した状態になってしまうが、そんな状態のレイにユミナは「私もレイ君のことが好きです」と言うとレイがユミナに近づこうとするがユミナは後ずさりを始めると、それを見たレイはユミナを捕まえようと手を伸ばすがユミナは逃げ続けるとユミナはレイから逃げ出した。レイナはその事を止めることもなく、むしろユミナの行動を後押しするように「追いかけなさい。ユウならユミナを捕まえられるから大丈夫」という。

その言葉を聞いていたレイナはレイに対してこう伝えた「私もこの国の王である父上に相談しなければならないことがあるの。でもこの国は今かなり不安定になってきているわ。この国を支えているのはレイくんなの。だけど今はあなたがいないとこの国は潰れてしまう可能性があるの。だからお願い、ユミナのことを追いかけて」という言葉を聞いたレイはレイナの願いを聞き届けるためにレイが動き始めるとユミナは全力疾走で逃げ出すが、それを見ていたレイはユミナを追い始めるが、レイが追いつけるはずもなく途中で体力切れになってしまいレイはそのまま動けなくなるが、それを待っていたかのように現れた人物がレイを抱え上げてユミナの元に連れていくと、その人物にレイのことを預けてからユミナはどこかに行ってしまう。その出来事の後からレイはレイの部屋で寝泊まりすることになり、レイと俺達は一緒に旅を続けていくことになり、俺とセイは「大魔王を倒すために、俺は「勇者」の力を手に入れる必要があるんだよ。そのために俺はまず「リリーナ」の力を取り戻さないと行けないんだよ」という話をしだすとセイは納得する。

そしてレイは「リリーナの力を取り戻すのに、私が協力したいと伝えてもダメだと言われるんでしょうね」と言ったので俺はその言葉に反応して「どうしてそこまでリリーナの力を取り戻したいんだ?」と質問をするとレイは「リリーナの力を取り戻した時に私の能力で「大賢者の力を復活させる」事ができるのでその力で元いた世界に戻ろうと思うんです」と言ってきたので、俺は驚きながら「レイ、それは本当なのか? その能力があれば俺の元のいた世界に帰ることができるって事だよな?」と尋ねるとレイは「私はそう考えているんですよ。私はその能力がある事を知ってからその力を使えばもしかすれば「リリーナ」を元のいた世界の人間として生き返らせることもできるのではないかと思っています。なのでそのリリーナが元の世界の人達が「セイ」と名乗っていて、この世界の「リリーナの生まれ変わり」だと認識していたら私は、セイに協力してもらうつもりだったんですよ」とレイは言ってくる。

その言葉は、俺がリリーナの事を知っている事を前提としての「俺の協力を頼み」に聞こえたが俺は「わかった。俺は「セイ」と名乗ることにする。そしてこの世界での「リリーナ」は俺が知っている。

そして「レイ」にはリリーナがどんな人生を歩んできたのかを話すから、リリーナの人格を宿しているリリーナを元いた世界に転生させることを協力してもらえるように頼む。その事についてレイが答えようとしたときに俺は、レイの言葉を止めて「その事についての答えは後にして欲しい。俺はこの世界から早く抜け出して「俺のいた世界に戻りたいんだ」その事を先に言い出しておくから」と俺はそう言った後に「この世界から抜け出る方法はないのかな?」と俺が質問をしたのに対して、その事に答えたのはレイナだった。「私がここに召喚された時と、同じようにすれば元の世界の場所に送還することができるのではないでしょうか」と答えるがその話の最中にユウキが割り込んできた「それはやめたほうがいいと思います。その方法を使うのは危険が伴う行為になるでしょう。おそらく召喚魔法を使える人はすでに殺されています。

だからもう二度と使う事はできないと思ってもいいかもしれません」とユウキはそういうとレイはそれに対して「確かにそうですね。リリーナはあの時は、元いた世界に戻るために命をかけて私に呼びかけてくれたのに。そんなリリーナの覚悟に私は答えないといけないのに。そのせいで、リリーナが死んでしまった。

リリーナは私のせいで死んだんだから私は一生かけてリリーナが望んでいる「ユウキと結ばれる幸せを得る資格がなくなってしまったのかもしれないな」と悲しげな表情をしながらレイナを見つめているのであった。その事に関してユウナは何も言わずに、その場に立ち止まっている。そして俺は「リリーナの気持ちもわかるが俺としては、やはり元いた世界で生きていきたい」とその思いをレイに伝える。

そしてレイナの方を向くと「レイナはどうしたいんだ?リリーナの願いと自分の望みが違ってしまったからといって諦めてしまうのか?」というとレイナは「私だってリリーナに申し訳ないと思っているから。元の世界に戻ったとしても「この体」の意識が目覚めることがなければ「レイ」として生きることはできない。それに、もし「元の世界に戻ってもその体は眠っているだけ」だとしたら、リリーナが「私」と入れ替わっていたらリリーナはまた「私」として生きた方がいいと私は思ってしまう」とレイはリリーナに問いかけるように言う。

その言葉を聞いてレイナは「そうなると私は「リリーナ」ではなく、「レイ」になってしまえば私は、ユウを愛せるようになるんだろうか?」と考え込んでしまい、それを見た俺は、俺はレイに対して、「俺はリリーナが好きだから。リリーナが生きていたという証明をする為に俺は「リリーナ」になりたいんだ。俺は「レイ」じゃなくて「リリーナ」の魂と入れ替わってもいいと思えるほどに俺はリリーナの事が好きなんだ」と言う。

するとリリーナはレイに向かって、「私はあなたの事が好きなんだ。「あなたが「リリーナ」になったとしても、私はそのあなたを受け入れて好きになることできる。だから私はリリーナの事は嫌いじゃない」と言うと、その言葉を聞いた俺はレイに向かって「リリーナが元にいた世界でもリリーナは「レイのことが大好き」だと俺は思うよ」と伝える。

俺の言葉にレイナはとても嬉しそうな顔をしてレイの顔を見るのだった。レイナに「リリーナがユウの事を好きだとわかっていても、ユウキのそばにいるだけで満足ができるのか?」と聞くと、レイナは首を横に振る。レイは続けて「俺は、レイが元の世界に戻りたいと思った理由が「セイに会ってリリーナの記憶を思い出してもらうため」と「元の世界に帰ることでセイ

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元いじめられっ子の異世界転移者は、異世界という現実を謳歌する! あずま悠紀 @berute00

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