第45話 魔女4

 僕は昔、魔物に助けられた。

 僕は捨て子だった。

 生まれつき才能がないと思われたのだろう。

 才能があるかないかは、生まれた時におおよそわかる。

 才能のある子は、生まれた時から内なる魔力が高い。


 その為、僕は生みの親を知らない。

 物心ついた時から魔物に育てられていた。

 なんの魔物なのかは未だにわからない。

 40歳になった今も同じ種の魔物を見ていない。


 僕の育ての親の姿は、羽もついていたし、長い尻尾もついていた。顔にはツノも生えていたし、身体中に固く鋭い鱗がついていた。


 僕の育ての親は、カタコトだが人間の言葉が話せた。

 おかげで、人間の言葉を話せるようになった。

 僕は最初それが当たり前だと思っていたが、成長するにつれて、それが異常だということに気づいた。


 僕はある日気になって、聞いた。

 どうして魔物なのに人間の言葉が話せるのかと。

 そしたら僕の親はこう言った。


「ワタシタチマモノハ、モトモトニンゲン。ダカラダ」と。


 小さい頃の僕はそんなこと気に留めていなかった。

 でも、魔法学園に入ってその意味がだんだんわかってきた。

 モトモトニンゲンダカラダ。

 魔物は元々人間だったということ。

 

 僕はこの魔法学校で魔物について多くの知識を得た。

 魔物は魔素から出来ること。

 魔物は知識がないこと。

 魔物は殺されると魔素になること。


 魔物の定義は以上三つとなっている。

 僕はそれに疑問を持っていた。

 

 どうして実体のない魔素から実体のある魔物が生まれるのか。

 そして、育ての親からの言葉。

 そこで僕は一つの仮定にたどり着いた。


 魔素とは人間から出ている物であり、その魔素から魔物ができる。

 魔素とは、人間の中から削り取られた何かなのではないか?

 そして、それは知識を取られた状態である。

 つまり魔物は人間が都合のいい人間になるために削り取られた人間なのではないかと。


 だから育ての親は元々は人間だったと言ったのかもしれない。

 でもここでもう一つ疑問が生まれる。

 どうして育ての親は知識を持っているのか。

 何か方法があるはずだ。

 もし、魔物に知識を与えることができれば、人間と分かり合えるのではないか。

 だって元々は同じ人間同士なのだから。

 

 それができれば古くから起こる魔物との戦いに終止符を打てるかもしれない。

 魔物から育てられた僕だからこそやらなければならない。

 そんな使命感があった。




ーーー




 魔法学校を卒業して本格的に魔物について研究をした。

 その時の僕にはアグニスという理解者がいた。

 彼女は使える。

 魔物についてかなり詳しい。

 

 どうやら、アグニスには昔魔物のペットを内緒で飼っていた過去があるらしい。

 でも、村のみんながその魔物を恐れて殺したとのこと。

 それから魔物について研究することに決めたとのこと。

 

 それに、アグニスは魔物と会話できるスキルを持っているとのこと。

 先天性のスキルであり、世界に一人しか持ち得ない異能だ。

 アグニスと会ったことは僕にとって運命なのかもしれない。 


 魔物を捕まえては色々と実験をした。

 体をどれだけバラせば魔素になるのか、仲間を殺されて悲しむ気持ちはあるのかetc……

 数年にわたる実験にてわかったことがある。


 一つ、人型に近い魔物(ゴブリン等)は人間とほとんど同じ感情を持っている。

 二つ、教育を施すと人型に変化する。

 三つ、教育を施すとゴブリンから生殖器ができる。


 つまり、人間と魔物との違いは知識の有無だと断定しても良い。

 だが、逆に人間から知識を取っても魔物にはならず植物人間となってしまった。

 これはまだ要研究だ。




ーーー




 

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