まって…!

クォ=ヨ=ムイは<ハーレム>の為だと言って女の子を動けるようにしたけど、僕はそのつもりはなかった。こんなことに小さな子を巻き込む訳にはいかないし、ましてやハーレムに加えるとか有り得ない。


「クォ=ヨ=ムイさん。僕はこの子を連れていくつもりはありません。元に戻してあげてください」


お漏らしの始末を終えて、僕はクォ=ヨ=ムイに向かって改めて言った。こんな状態で一人にしておくわけにはいかないし、だったら、家族と同じように元の早さに戻してあげれば、不安もない筈だ。


なのに……


「断る」


と、クォ=ヨ=ムイの態度は素っ気ない。


「せっかくお前への褒美として用意してやったのにその態度は何だ? 貴様、まさか私とお前がそういう交渉ができるような対等な立場だとか思ってるんじゃないだろうな? 私は気まぐれでいい加減な存在だが、貴様の言うことなど聞いてやるかどうかは気分次第だ。


貴様のその態度、気に入らん。だから言うことなど聞いてやらん」


さっきは、僕のことを『面白い』とか『気に入った』とか言ってたクセに、無茶苦茶だ。確かに気まぐれでいい加減で我儘放題だということはこれで良く分かったよ。


だけど、だからと言ってこの子を連れていく訳にもいかないし……


「オジサンはこれからこの人と行かなくちゃいけない。君はお父さんとお母さんと一緒にいたほうがいいよね?」


言い含めるように話しかける僕に、女の子は不安そうに頷いた。可哀想だけど、両親の傍にいる方がマシだと思う。


「オイオイお前、ひどい奴だな。こんなところに小さな子を一人残していくつもりか?」


『元はと言えばあなたが勝手にやったことでしょ…!』


と言いたかったけど、それは呑み込んだ。口に出さなくても読まれるのは分かってても、口に出すよりはマシだと思ったし。


「いいから、次に行きましょう。やるからにはさっさと終わらせます…!」


そう言って僕は、病室を出た。その後ろをクォ=ヨ=ムイが「やれやれ」と肩を竦めながらついてくるのが分かった。


でもその時、


「まって…!」


って声を掛けられて思わず振り返る。見ると、あの女の子が病室から顔を覗かせて僕を見てた。


「パパとママうごかないの? びょうきなの? なおらないの?」


女の子が必死に問い掛けてくる。するとクォ=ヨ=ムイが、


「それを治す為に今から出掛けるんだ。なに。お前にだってできるくらい簡単なことだ。だが、パパとママの傍にいたいなら待っておけ。と、こいつが言ってる」


と、親指で僕を指し示しながら厭味ったらしく言った。ムカツク……!


なのに女の子は、


「わたしもいく!」


って。


な、なんですとぉ…!?


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