お漏らし
クォ=ヨ=ムイが脅したせいでお漏らししてしまった女の子をそのままにもしておけなくて、僕はとにかく体を拭いてあげようとした。
なのに、水道の蛇口をひねっても水が出てこない。
って、そうか。こっちが二百万倍に加速してるから、出てこないんじゃなくて殆ど動いてないように感じるんだ。
「お前達の体に直接触れている液体などは、お前達に取り込まれて一部となったとして、普通になる。だからまあ、溜水を掬うといい」
とクォ=ヨ=ムイは言うが、その<溜水>ってのがこの病室にはなかった。が、僕のベッドの枕元に置かれたミネラルウォーター入りのペットボトルが目に付く。
何気なくそれを手に取って傾けてもやっぱり水は出てこない。でも、ペットボトルをぐっと握ってみると、まるでゼリーか何かが詰まってるような手応えがあり、そして本当に水がゼリー状になって出てきた。それでも、空中で止まったような状態になる。もっともそれも、僕の感覚では動いてることが知覚できないほどゆっくりなだけで、動いてるんだろうけど。
こういうことか……
それを僕の手の中のタオルで受けると、なるほど普通の水になって染み込んでいった。
「ったく、不便な…」
思わずそう言葉が漏れる。
「まあ、力を行使するにはリスクも伴うということだ。このくらい我慢しろ」
なんて好き勝手なことを言うクォ=ヨ=ムイは無視して、僕は濡らしたタオルを持って俯いたまま涙を我慢してる女の子の前でしゃがみこんで、とにかく拭いてあげることにした。
普通ならこんなの余裕で<事案>だと思うけど、他に動ける人間がいないし、クォ=ヨ=ムイは論外だし、仕方ないってことで。
「ごめんね、気持ち悪いよね」
僕は女の子を気遣う言葉を掛けながら、彼女の下着とサンダルを脱がし、漏れたおしっこが水たまり、と言うかこれも彼女の体から離れた途端にゼリー状になったからか、ホントに少し黄色がかったゼリーが床にこぼれてるみたいな状態になってた。
幸い、女の子の服はワンピースで濡れてなかったし、裸足に樹脂製のサンダルだったから、完全に濡れたのはパンツだけで済んだみたいだ。
濡れたパンツとサンダルは脇に置いて、とにかく股間と脚を拭いてあげる。なんか<そういう趣味>の人間なら狂喜しそうなシチュエーションかもしれないが、この時の僕はとにかくそれどころじゃなかった。もともとそっちの趣味はないし。
女の子の体を拭いたタオルで床も拭き、下着と一緒に洗面台に置く。さらにタオルをもう一枚出して、空中に浮かんだままの水をさっきと同じ要領で染み込ませ、それで今度はサンダルを拭いたのだった。
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