「さざなみクリニック」というタイトルからハートウォーミングな物語かと読み始め、読み進めた序盤。
思わぬタイミングで思わぬ方向へとストーリーが展開します。
なるほど!そういう話だったのかとそのままずるずる世界観に引き込まれます。
ストーリーの壮大さもさながら、情景描写がとても繊細で美しい。
私はこのような細部まで表現している描写がとても好きです。
ぜひこの情景を感じてほしいです。
そして一番は登場人物の魅力。
主人槇村と市ノ瀬の関係性の変化が短編にも関わらずみるみる変わっていく。
それがとても尊いです。
そのような点ではハートウォーミングも間違いではないのかもしれません。
高峠美那様、すみませんが続編希望です。
もっと二人の人生(人生?)の旅を見ていたいのです。
できれば過去やサイドストーリーも摂取したいほどです。
この物語を読まれた方は、私のように思うはずです!
現代の日本で繰り広げられる、神話の神々の戦記もの。それだけに留まらず、チクチクと胸に言葉が刺さりました。
優れた異能者は、『ただの人間』の純粋な賛美を、鼻白みます。
また、自身の異能を笠に着て、『ただの人間』を蔑む者も。異能者と無能者は、はたして共存でくるのか。そこに、畏怖や嫉妬や恐れによる排除はないのか。
差別はないのか。
特殊した美貌や能力者を、『普通』の輪の中から締め出してはいないのか。
この小説には、筆者による見解が述べられています。ぜひ、多くの人に読んで頂きたい物語です。
ちょっとしたBL要素がほんのり漂っていたのも、私としては、好感度アップ。
現代の医療現場と神話が違和感なく描かれる筆力も、卓越した作品です。