日記

キヲ・衒う


夜、私の時間

そこのけそこのけ 嫌われ者の時間だ


ご老人と虫しかいない無人の駅を出て

目に張り付く膜を取る

途端に視界不良 

だけど多少目が悪い方が

嫌なものを見なくて済むからね、


やたら眩しい人工の星がお行儀よく並んでいる

走行性のある蛾のように導かれていく


道端に吐き捨てられたガムのような私も

夜だけは道の真ん中に躍り出て スポットライトを浴びる


小学校前のグラウンド

私の前髪を引っ掴んで引きずりまわしていた先生はもういない

夜だからね 寝ているのかな 

誰かを不幸にしたその手を枕代わりにして すやすや


手の中に残したままのコンタクトがいつの間にか渇いていた

知らずに握りこぶしを作ってから気づいた

蝉の抜け殻を壊してしまったときの感触

それよりも幾ばくか 硬くて手に刺さった


このまま滲んで消えそうな錯覚

不安定な足取りと自我を 取り戻してくれるのは

光から生まれる影

記憶と付随して思い出す痛み



空を見上げれば本物の星

きっと誰かが名前をつけた 道しるべ


でも今の私にはよく見えないや

コンタクトレンズを外した目に 涙の膜が張ってきたからかな



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日記 キヲ・衒う @HanketsuZoroli

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