トラゴロウくん 🐶
上月くるを
トラゴロウくん 🐶
外飼い犬のトラゴロウくんは、自信や誇りというものをまったく持てずにいます。
年頃からすればアオハルの盛りなので、ナルシストであっていいはずですが……。
だいたいからして、名前からしてヘンなのですもの。(-_-)zzz
なんていうお名前? え! フーテンの? うふふ。( ^)o(^ )
どうしてみんながみんな笑うのか、トラゴロウくんには、わけが分かりません。
舐めるように可愛がってくれるリョウタ兄さんですが、こと命名に関しては……。
それに、声は太くて低く、老犬のようにかすれていて、「ワン」と言ったつもりが「ウォン」になってしまいますし、脚だって、気のせいかかなり短めのような……。
🐯
それやこれやでトラゴロウくん、雄々しい見かけと異なり極端な引っ込み思案で。
自己アピールなんてまったく無理で、近所の犬たちにも、あなどられがちで……。
ですから、おじいさんの自転車の前籠にのせられてやって来るスミレちゃんにも、上目づかいのオドオド顔しか向けられず、「ぼくなんかどうせ」尻ごみしています。
そんなトラゴロウくんの気持ちを知ってか知らずか、ふわふわの白い被毛のスミレちゃんは、シャンプーしたての頭に赤いリボンを付けてもらったりしてお澄まし顔。
外飼いの、見るからに野性的なミックス中型犬と、小型でチマチマしたお姫さま犬とではハナから合うはずがないと、トラゴロウくんはとっぷりタソガレていました。
🐕🦺
ところが、ある日、腰の曲がったおじいさんがひとりで自転車でやって来ました。
ムニャムニャとなにか話してくれましたが、トラゴロウくんにはサッパリ。( ;∀;)
むなしい日がいくつか過ぎたある朝、トラゴロウくんの眸がピカッと光りました。
恋しいスミレちゃんがおじいさんの自転車の前籠にいたのです!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
どうやら動物病院に入院していたようなのですが、すっかり快くなったみたいで。
われをわすれたトラゴロウくんに跳びつかれたスミレちゃん、満更でもなさそう。
だって、本当は、スミレちゃんもトラゴロウくんに恋をしていたんですもの。✨
ふたりの小さな幸せがいつまでもつづきますように……。🍐🎀🌼🍒🍪🎏🍹🌻
🏠
ところで、ここにもうひとつ別の視点が存在します。👀
ご近所のワンちゃん大好きおばあさんのクミコさん。👵
通りすがりに、いつも「おおい、元気してる~?」と声をかけてくれるのですが、トラゴロウくんは恥ずかしいので、寝たふりをしたまま耳だけピクピク動かします。
すると、おばあさんは「ったくあんたと来たら。でもいいよ、元気なら。リョウタくん、たまに朝帰りするみたいだけど、ちゃんと面倒みてる?」ブツクサブツクサ。
ま、たしかにイケメン独身のリョウタ兄さんは、月に一度か二度、夜明けに帰って来ることがありますが、飲みに行く前にも事後にも律義に散歩をしてくれています。
なのでリョウタ兄さんを守るつもりでトラゴロウくんがムクッと半身を起こすと、おばあさんは「あんた知らないだろうけど、あんたはあたしの生き甲斐なんだよ」。
犬と人間……種類は異なっても、こういうことはなんとなく通じ合うものらしく、トラゴロウくんも、スミレちゃんへのラブとはちがった親愛を育てているようです。
トラゴロウくん 🐶 上月くるを @kurutan
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