あまりにも深く重く入り組みすぎた巨大な愛憎

 オリエンテーリングの大会を舞台にした、部員たちの複雑な愛憎のお話。



〈以下ネタバレ注意〉

 重くてデカくてあまりにも深い、ドロドロの愛憎渦巻く部活ものの物語です。
 とはいえ、ただの部活ものにとどまらない一面もあり、そこがまたこの愛憎劇をもう一段根の深いものにしている面があって、その辺が本当に強烈です。

 中盤以降の怒涛の展開。単純な衝撃と、でも「だからこそ」という納得感。
 ここまでしちゃう・させちゃうほどの深い情念、というのがゾワゾワくる感じ。

 そして個人的に好きなのはやっぱり人間関係!
 約7,000文字とコンパクトな掌編であるにもかかわらず、複数名の登場人物がいて、その中で複雑に好意や執着が入り組んでいること。
 単純な相関図を想像しただけでも楽しくて、それを本文でみっちりやってくれるのですからたまりません。

 オリエンテーリングという競技の珍しさも相まって、とにかく鮮烈な印象の残る掌編でした。