ひとりの人間をここまで狂わせる美貌

 ひょんなことから拾ってしまった麗しの超絶美少女(ただし性別は男)、その魅力にひたすら悩まされまくるおじさんのお話。

 実はかなりガチ目の古代中国ものなんですけど、物語の要約としては上記一文で間違いないであろう作品です。

 もうとにかくウルトラ美少女(男)たる素懐忠さんの魅力がすごい!
 外見は言うに及ばず、その振る舞いなどを含めた内面まで。もう何から何まで主人公を惑わし狂わせるために存在しているとしか思えないような、その怒涛のような筆致の勢いたるや!

 単純な描写そのものに加えて、それが主人公の視点から描かれた一人称体であるところが大好き。
 煩悶する様をそのまま追体験するかのような読み口が最高なんですよ……。

 自制心と情欲の狭間で葛藤する姿の、そのコメディ的な面白さもさることながら、単純に素懐忠さんのキャラクター造形にも惹かれてしまう作品。
 楽しく読めて滋養もたっぷりの掌編でした。