お母さん、日本に帰りたいです。
話を聞くとこの暗殺者の少女クレンは見た目とは裏腹に暗殺者としては超凄腕だったらしい。
暗殺者と言っても人を殺したことはなくターゲットはみんな気絶させたり、屋敷などに忍び込んで情報を入手したりとそれは凄腕だったらしいがそんな後ろめたい事に嫌気がさして冒険者になったみたいだ。
だが今まで何かを殺すことをしてこなかったから気づかなかったみたいだがモンスター相手でも命を奪うことに抵抗を感じるらしくモンスターを殺すことができなくて、いつしかモンスターに直接攻撃ができなくなっていたみたいだ。
そんなクレンの話を聞いて新一にはもはや不安しかなかった。
火力は高いが高すぎてモンスターを討伐した証が取れなくなり、金が永遠に手に入らない魔法使い。
モンスター相手でも殺すことができずに決定打がなく、サポートしかできない暗殺者。
そして最弱職の新一。
もはや誰もが見ても詰んでるパーティーである。
前衛が無職の新一ではゴブリンならまだしも2階層から出る敵には勝てないだろう。
不安だが金を稼ぐためにはダンジョンに潜るしかないので仕方なくこの不安しかないパーティーでダンジョンに向かった。
第一層に潜り早速ゴブリンと遭遇した。
とりあえず唯一前衛ができる新一が前に出てゴブリンと戦う。
剣で切り掛かりゴブリンの注意を引きながら後ろの二人にゴブリンが向かわないように戦う。
暗殺者のクレンはナイフなどを投げて援護してくれるお陰で割と簡単に倒すことができた。
だがやはり初の本格的な戦闘ということもありこれがなかなか疲れる。
自分の判断次第で即死に繋がり、それがまた仲間が死ぬことにもなるので神経を普段以上に使うのだなかなか慣れない。
だが初めてこの世界に来てからまともな戦闘をしたおかげでようやく自分にも冒険者としての自覚が出てきた。
討伐の証に耳を切り取って先に進む。
今回はパーティーの戦闘の確認とあって一階層をとりあえず回って終わることにした。
終わる頃にはゴブリンを15匹ほど倒すことができていたがこれを3人で分けるとなると一人2500ルナほどになる。
これは1日ご飯を食べて消えるぐらいの額なので儲けとしてはマイナスと言ってもいいだろう。
1日ダンジョンに潜りその結果がご飯代に全部消えるとなれば命をかけているのに割に合わない。
初心者用ダンジョンなのだから仕方ないのだがそれでも納得ができるものではなかった。
やはりこのパーティーだとやばいと思う新一はパーティーの解散をしようとするが、
「いい感じのパーティーだよね!私が後方確認して二人でモンスターと戦って、いざとなったら私の魔法で吹き飛ばせばいいし」
「そうですね。これであと回復職がいれば完璧ですね。」
あの二人は何故かこのままパーティーを継続することに乗り気のようだ。
しかもあと一人パーティーに加えようとしてるなんて冗談ではない。
ただでさえご飯代で稼ぎが消えるのにそこに一人加わるとご飯代すら払えなくなるのは死活問題だ。
だがパーティー内で一番レベルの低い自分は肩身が狭いのでなかなか意見を出しづらいのも事実なのでなかなか口にだせない。
このパーティーに不安しか見出せない新一はなんとかしてせめてまともな人材を入れよう心に誓う。
憧れの異世界転移したが現実はそう甘くなかった件について みそぎ @aiaisama
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