5:永遠の終わり、有限の始まり
「ふざけないで! あなたが神? 邪神の間違いじゃないですか!」
「私は平和主義者だけど誰かを本気で殴りたいと思ったのは初めてね」
「あなたが神だというのならこんな事をしたのに理由があるとでも言う気ですか?」
私たちは全力で喧嘩を買いました。向こう様には喧嘩を売った自覚すら無いようですがね。しかし神とやらは人類を妹にしたことの正当性をたれてきました。
「一人の兄がいた、昔の話だ……」
「そのお兄ちゃんを返せと……」
「聞け、人間、いや、妹よ」
「その兄は病気の妹がいた。それ妹を救ってくれとやつは熱心に我に祈りを捧げておった」
「「「……」」」
なんでしょう、話がおかしくなってきました。
「やつは自分がどうなろうと妹を自分より長生きさせてくれと誰よりも熱くつよく祈っておった」
「だから……」
「我は感心をしたのだ。欠片も信仰心を持たない者達、永遠の愛を我の前で誓い平気で反故にするもの、我の名を騙って同種の人間を平気で騙す者、神の名の下に我が作った者同士で殺し合いをする者達……多かった、我はその全てにうんざりしていた。その上、信仰心など欠片もないのだ、金を払っただけで信仰心を示したと確信している者が大量に居た」
「何が言いたい?」
怒気をはらんだ麻衣さんの声が響きます。気のせいか神の声より大きく響きます。
「純粋な祈り、我の求める者をそやつは持っておった。人類の全てが信仰を捨てつつある中我に純粋な祈りを捧げたのだ。我はその願いを叶えただけだ」
「だから……妹を不死身に……」
「そうだ、その者は世界の全てが妹に優しくしてくれと願っておった。我はその願いを聞き届け、全ての人間を妹にした。そして決して老いることも病に倒れることもない存在にした」
「勝手な……」
「奴はもはやおらぬ、我を信じる者もな。最後の信仰心を我は希望に変えたのだ。貴様らの望みを叶える気は無い」
「くっ……」
「神でしたっけ? 一言言いたいんですけど」
「なんだ」
「ふざけないで! 私たちはお兄ちゃんを必要としている! あなたはそれを奪った、それだけが事実です! 信者しか助けないなんて随分とみみっちい神様じゃないですか! それでも文句があるというなら……あなたは信者の心すらも理解できないまがい物じゃないですか!」
「まがい物だと……我は真の神だ!」
「そうですか、人間の心も分からないのに願いを叶えたつもりですか、結構なことですね」
「貴様は永遠の命を捨ててもいいというのか! 永遠に悩みの無い世界を捨てるというのか!」
「捨ててやりますよそんなもん! だからお兄ちゃんを私に、私たちに返しなさい!」
「貴様ら全員が同じ意志だとでも言うのか」
「当然でしょう」
「当たり前ですよ」
「ふん、もうよい。この世界に紙は不要と言うことか。良いだろう貴様らが神を否定したことを公開しつつ生きるがよい。望みは叶えてやる」
その刹那、私たちは三人でビルの合間にたっていました。正面には光の柱があります。私はその光から現れるのが誰か分かっています。だからずっと言いたかった正直な気持ちを叫びながらその空間に飛び込みました。
「お兄ちゃん! 大好きです!」
妹しか居ない世界 スカイレイク @Clarkdale
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