4:ファーストコンタクト

 私たちは旧式のコンパスと地図によって東京に入ったことを確認しました。電子器機は全滅です。GPSは海上を指し、ジャイロ装置でさえ滅茶苦茶な動きをして正しい位置を指さないため、私たちは古い古い、神がまだ確認される前に使われていた原始的な装置でそれを知ったのです。


「じゃあ、聖域に突っ込むわよ!」


「私、神にさえ負ける気がしないですよ!」


「やるしかないですね、戦うしかないのでしょうね」


 私たちは目の前に広がる真っ白な空間へ足を揃えて飛び込みました。瞬間、上下左右が分からなくなり、私は無重力の空間に放り出されたような感覚を覚えました、いえ、無重力未体験ですけどね。


「美緒ちゃん! 麻衣さん!」


「聞こえてるわよ、見えないけど」


「ここでは私たちは見えないようね」


 私は手を伸ばして目の前にもってきた……はずだった。


 真っ白な虚無の空間、それが私の目の前にあるもの。手など影でさえも存在している様子がない。どうやら私たちは死んだかそれに近い状態のようです。


「武器は持ち込めましたか麻衣さん?」


「持ち込めたように見える?」


 ダメみたいです。意識だけでもしっかり持っておかないと私が誰であるかさえも忘れてしまいそうです。私は自分の姿を意識して保持しました。これを忘れたら戻れないような気がします。


「人間……何の用だ」


 低く重い声がワタシの精神に響いてきます。正直言ってやかましいですね、おそらく神なのでしょうが相手のことを考えられないクズのようです。


「うっさいですよ! もうちょっと声を小さくしてください!」


「神というのは初手で人間に喧嘩を売るものなのかしら?」


 二人とも文句をガンガン言っています。私は耳を塞ぐ動きをイメージすると音が小さくなることに気づいていました。


「いい加減お兄ちゃんを返してください! このたちの悪いイタズラをさっさとやめなさい!」


「何を……何を言っている? 我は貴様らに神の祝福を与えたのだぞ」


「「「はぁ?」」」


 私たちの声が重なりました。この神は何を言っているのでしょう? 路上で突然後ろから殴られて悪びれていないようなものではないでしょうか。


 私達と神はそんな出会いをすることになりました。いえ、姿は見えないんですけど。とにかく私たちは神と初めての接触をしたのでした。

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