『#新匿名短編コンテスト・四季の宴』振り返り

 このたび、板野かもさん(https://kakuyomu.jp/users/itano_or_banno)主催のイベント、『#新匿名短編コンテスト・四季の宴』に参加しました。

 匿名短編コンテストは、テーマ(今回は春夏秋冬の四テーマ)に沿って書かれた短編をイベントページにて匿名で公開し、応援や感想で投票を行う仕組み。書き手としても読み手としてもドキドキする、楽しいイベントです。


 イベントのページはこちら。

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556846164332


 ということで結果発表がされたので振り返りを。




~春の部~


【春026】とける季節の隙間にて

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556846164332/episodes/16817139557018509071


 春ということで掲載順としては最初なので、軽いジャブを入れてみたというか、いえ。なんかKACのときもそんなことを考えていたような……。

 とにかく、ナナシマイの得意(?)な、わからなさそうで本当によくわからんタイプのお話です。なんにせよ他の季節で繋がりのあるお話を書くつもりだったので、最後まで謎のまま突っ走ろうと思った結果、こうなりました。ついでに、あとから繋がりを拾えるようにいくつか種もまいています。


 イメージとしては、童話に出てくるおとぎ話。メルヘンにメルヘンを重ねたあれです。やばいアレではありませんが、わからなさすぎて頭がふわふわするのがいいですよね。

 舞台は冬に閉ざされた世界なのですけれど、春の渇望、春をもたらす者の存在を以て春の部にエントリーしました。




~夏の部~


【夏021】つなぎ星

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556846164332/episodes/16817139557018600557


 イベントへの参加を決めたとき、最初に思いついたのがこのお話でした。そしていちばん思い入れのある作品でもあります。もともと、こういうファンタジックな世界の風習が垣間見えるお話は大好きなのですが、自分で書くのは上手くできないなと思っていて、頑張りました。

 夏の部で、二位と、「2500字とは思えない賞」をいただけてすごく嬉しかったです。


 ちょうどお盆を過ぎたあたりだったので、故人に思いを馳せるようなお話を書いてみたいなというのがきっかけでした。

 お盆はこちらの世に帰ってくるご先祖さまをお迎えする……なら逆ならどうだろう? と。つなぎ星の世界で行われるのは、こちらに遺された思い出や心をあの世へ送るという、別れを強く意識した祭です。

 その中で生きる人たちはどんなふうに考えるのかとか、ともすれば淡白にも感じられる風習にあたって生じる切なさとか、そういうのが伝わっていたらいいなと思います。




~秋の部~


【秋024】第XXXX期「秋」の選考会(最終審査)

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556846164332/episodes/16817139557296505525


 ……いえ、タイトルのインパクトはあるんじゃないかなとは、思っていたのですよ。でも、でもね、予想をはるかに超える反応をいただけて嬉し恥ずかしなんです。

 というのも、いざ秋の作品を書こうとしたときに、「あれ? 秋って書きたいこと多くない? 芸術の秋だし、食欲の秋だし、景色だってすごく綺麗」という混乱がやってきまして。自分の中で、なにを書いたらいいかぐるぐる悩み始めてしまいました。


 そこで開かれたのが脳内選考会。どの秋も素敵だ。悩む。あれ、もうこの葛藤を書いたらいいんじゃないか。それよりも選考会をそのまま使うというのはどうだ?

 という感じで方向性が決まり、そこからはあっという間に流れも思いつきました。あとのことは覚えていません。


 とにかく、ナナシマイの好きな秋を詰め込めたんじゃないかなと大満足でした。

 あ、あと秋の部の四位をいただけて嬉しかったです。



【秋029】むしろ自転車のカゴを壊してほしかった

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556846164332/episodes/16817139557296511730


 一つめの作品で秋を詰め込んだので、もう一つはチャレンジしてみようかなと思ってラブコメと恋愛の中間みたいなお話を書いてみました。えへへ。

 秋って隠れ恋愛チャンスだと思っていて。……ほら、春は「出会いと別れ」、夏は「ざ・青春☆」、冬は「ぬくぬくほっこり&クリスマス」じゃないですか。秋にはそういうのありませんが(しいて言うなら文化祭?)、空気感がロマンチックというか。


 現実の、自分の体験としてはくっつかない恋愛なんてまっぴらごめんですが、読み物としてはくっつきそうでくっつかない男女がとても好きです。……え? やだなあ自分の体験談ではありませんよぉ。


 こういうお話は多分初めて書いたのでちょっと不安になりながらの提出でした。すごくギリギリまで推敲した(結果、句点の付け漏れというアホみたいな失敗も……)。

 でもコメントでたくさん反応をもらえて、嬉しかったです。

 秋の部の四位と、「ナイスタイトル賞」も!

 タイトルは自分でも気に入っていて、明確な繋がりを求めたい、でも求めてはいけないという主人公の心情を表せたんじゃないかなと思います。




~冬の部~


【冬030】凍る季節の埋立地にて【性描写あり】

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556846164332/episodes/16817139558772106790


 『【春026】とける季節の隙間にて』の少し後にあたるお話です。これ、絶対気づかれないだろうなと思いながら書きました。言われてようやく「ああこれがキーワードか」とわかる(気がする)レベル。こういうことするの好き。


 冬を閉ざした世界に、様々な世界を渡り歩く男がやってきて、閉ざした冬に春(意味深)を送る行事に参加するという、口調も含めて、重いんだか軽いんだかわからないストーリーですね。

 主人公の、報告者としての性格もあるのですけれど、説明過多だったかなというのは反省点です。



【冬035】冬ごもりの攻防

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556846164332/episodes/16817330647602059007


 最後なので、大好きな魔女をどどんと出しました。るんるん系の魔女です。可愛くてお気に入り。

 魔法で動く調理器具とか、代々伝わる料理の歌とか、邪険に扱われる不憫な使い魔とか、ワクワクしますよね。魔法最高!


 ただ、遊ぶには文字数内で上手くまとめられなかったなというのと、そもそも冬要素が薄かったなというのが反省点です。




~エキシビジョン~

 参加を決めたのが遅かったので、一作しか書けなかった春と夏を意識した作品を追加で書きました。



【Ex-冬030】知らぬ季節を夢に見て

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556846164332/episodes/16817330648112944972


 『【春026】とける季節の隙間にて』『【冬030】凍る季節の埋立地にて』に関連するお話。本文で『とける~』との繋がりは明らかなので、表記上は『凍る~』のエキシビジョンとして出しています。

 主人公の外務大臣、『凍る~』では異世界人の男に「胡散臭い」と評されていて、実際そう言われても仕方ないことをしているのですが、レールを引かれた人生の中でもなにかを欲する人を描きたかったのです。さざ波のようなそれは、きっと大きな出来事へと発展するのだろうなと思います。


 タイトルもお気に入りです。本編の二作品は「〈どんな〉季節の〈こんな場所〉にて」という形だったので、エキシビジョンではそれを継承しつつ、裏話ですよ~感を出してみました。


 ちなみにこのシリーズは三作通して「渇望」を裏テーマに書いていました。強い感情でもありますが、淡々とした世界観に放り込んだらどうなるかなと思った……のですけれど、まぁ、難しかったですね。

 あと地味に「世界転移者」がいろんな世界を見て回って、故郷に情報を売ることで生計を立ててるという設定が気に入ったので、またなにか書いてみたいなと思いました。



【Ex-秋029】底に残ったコーヒーの一滴が薄くて苦い

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556846164332/episodes/16817330648183574913


 『【秋029】むしろ自転車のカゴを壊してほしかった』の続編です。本編から一年近く経った、夏休みのお話。

 相変わらずなんとも言えない距離感で、でもちょっと近づいたのかなという感じで。「もどかしい」とたくさん言ってもらえて嬉しかったです。この二人にはくっつかないままでいてほしいなという鬼畜作者が通りますね。


 タイトルは『むしろ~』が気に入っていた分、こちらは決めるのに時間がかかりました。ちょっとありきたりかな。

 でもギリギリまで一緒にいたくて、でもそんなことしてなにになるんだろう? という、甘さより虚しさみたいな雰囲気にできたと思います。




~まとめ~


 匿名ということで、先入観なく読める、読んでもらえる、というのが本当に楽しかったです。普段読むときはタイトル・あらすじ・作者名で雰囲気を掴むので、三分の二を縛られるのは新鮮でした。

 それから、二千五百字というのは書いてみるとかなり短いもので、この中で一つの話を完結させることがとても難しかったです。他の作者さんの綺麗にまとまった話をたくさん読んで何度感心したことでしょうか。……あれ、その中で夏の「2500字とは思えない賞」をいただけたのはものすごく光栄なことですね。嬉しさがじわじわきた……。


 ちなみに、エキシビジョンを除いた六作はどれも違う雰囲気で書いたのですが、いかがでしたか。

 そもそも今回の参加者さんに知り合いがほとんどいなかったので、ナナシマイ作だとバレることはないだろうなとは思っていました。でも、せっかくなら匿名を存分に利用したいではありませんか。

 そういうわけで雰囲気の違いに全力を出していたら、見事にジャンルが偏りました。また参加する機会があれば他ジャンルにもチャレンジしてみようと思います。


 ということで長くなりましたが、これでおしまいです。

 ここまで、そして作品を読んでくださった皆さま、楽しいイベントを主催してくださった(大変な作品管理・集計まで!)板野さん、本当にありがとうございました!

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