「カクヨムでアドベントカレンダー2022」振り返り

 十一月二十七日より始まりました、くれはさん(https://kakuyomu.jp/users/kurehaa)主催の「カクヨムでアドベントカレンダー2022」に参加しました。


 イベントのページはこちら。

 https://kakuyomu.jp/user_events/16817330650060032054


 わたしは『ユーリカの栞』という作品で参加しました。

 対立する魔女と魔術師が、祝祭で決着をつけるために準備をし、互いをもてなすまでのお話です。


 『ユーリカの栞』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330650067697944


 イベント参加にあたり、初めは長編作品の番外編を書いてみようかなと考えていました。が、どうにもしっくりこなかったもので。

 さてどうしようかと考えていたら、気づいたのです。

 色々なところで「魔法が好き、魔女になりたい」と公言しているナナシマイだけれど、そういえばいかにも魔法らしい、胸がいっぱいになるような世界を描いたことはなかったような……と。

 よしそれならぎゅうぎゅうに詰め込んでしまえと。あとはクリスマスだし、ほかほかするような、それでいてドキドキするような物語がいいな。

 そうして思いついたのが、この魔女と魔術師の勝負でした。


 ということで、いくつか振り返っていきたいと思います。




○素敵な魔法の世界について


 外せない内容としては、やはり数々の魔法世界らしい物や、やりとりでしょうか。

 お喋りをする家や、意思のこもる石、男の甘い言葉に恥じらった雪の酒、などなど。たくさんのコメントでこの素敵な魔法の世界を「素敵」だと言ってもらえて、本当に嬉しかったです!

 ちなみにわたしのイチオシは、「満月の夜に聞こえる狼の遠吠え」を隠し味に削り入れたシチュー。

 このように五感をごちゃまぜにできるのはファンタジーならではって感じがして、大好きです。


 書いててすごく楽しかったので、またこの世界の物語を書いてみたいなとも思います。魔女と魔術師が出てくるかどうかはわかりませんけれども。




○気になる勝負の行方について


 本文中に明記はしていないのですが、魔女が贈ったのは暖炉宝石です。それも一般人には到底作れない、宝石から紡がれた純度の高いもの。妖精だって既製品の宝石に想いを込めるのが精一杯ですからね。それを魔術師あんたってやつは……!


 まあ魔女は、その宝石が自分の意思を紡いだものとは理解していても、暖炉宝石のことや、そこに付随する意味なんて知らないのですけれどね。

 今後彼女は気づくのか、気づかされるのか。どうなのでしょう。


 一方で魔術師からは栞と新しいメッセージカード。

 栞はタイトルにもある重要なものですし、そもそもこの物語自体が、という設定です。サブタイトルの「p.xx」もそれを表しています。

 彼は魔女に対して割とおもーい感情を抱いていますので、これからも二人の思い出を刻む気満々なのでしょうね。がんばれ。


 そしてメッセージカードは、魔女からの贈り物が想定外だったので、急遽こしらえることにしたものです。

 彼はもともと今後も二人の物語を紡いでいこうとは考えていましたが、暖炉宝石を見て、そうかそっちがそのつもりならこうするぞみたいなスイッチが入ってしまいました。この世界で、言葉を重ねていくというのはそれくらいの意味を持つこともあるのです。

 これからの祝祭はすべて二人で過ごすのだと、魔術で言質をとる徹底ぶり。頑張って魔女の情緒を育てられるといいね。




○更新について


 そういえば、こうして毎日更新(途中で遅れてしまった期間はありましたが)する作品は初めてでした。

 振り返ってみると、まあ、これを年中やれと言われると無理だなと思いますが、あらかじめこれくらいの期間だと決まっていればできるものなのだなという発見がありました。


 他の参加者さんの書きかたは存じませんが、わたしは今回書くと決めた際に、まず最初と最後(前夜と当日の二日間)分を確保しました。それから、そのあいだをどう埋めるか考えるため、某表計算ソフトでベッと日付を出しました。

 そう、そのおかげで(?)、「あ! これはふたりの勝負なんだし、視点は交互にして、あと互いの進捗をメッセージで報告しあうことにすればいいのでは?」と思いついたのです。

 ついでにサブタイトルの方向性も決まりました。

 サブタイトルの「p.xx」の真実については前述の通りですが、いい感じにミスリードっぽくなってたらいいなという感じです。いえ、別に正解もなにもないのですけれど。


 ちなみに書き始める前に、毎日の書く内容は決めていました。

 流星群とか満月の日は現実と連動させたかったのでそこは優先的に、ストーリに必要な内容もいい感じの場所に、そしてその残りを埋めるのはちょっと大変でしたね。

 でもその分たくさん、楽しい魔法や魔術に囲まれることができました。




 さて、当初の予定より思い入れのある作品に育ったので、ここからはもう少し突っ込んだ話や小ネタでも残しておこうかなと。

 長くなる予感がする(すでに長い)のでさらっと流してください。




○二人の名前について


 本文に魔女と魔術師の名前が出てこないのはちょっとした理由があります。


 魔女の場合は、そもそも名前がありません。

 識別という意味では「森の魔女」という、いちおう一意である通り名があるので、それが名前のようなものなのでしょう。魔女はその元となるものからぽろりと生まれるので、基本的に誰かに育てられるということもありませんし。

 とにかく、ユウカだとかキャサリンだとか、そういう名前は持っていないのです。


 魔術師は一般的なお家で生まれましたので、当然名前もありますし、家名も持っていました(こちらは例の過去で失いましたが)。

 ですが、魔女はその名前を知りません。

 もともと魔術師は普段から、自身が妙なものに紐づけられないようあまり名乗らないようにしているのですが、まあ、魔女はそのあたり興味なさそうですからね。


 いつまでも魔女が「魔術師さん」と呼ぶので、仕方なく名前を教えてやった魔術師が、今度はお前の番だと魔女を見ても首を傾げるばかり。そこでようやく魔女には名前がないということを知り驚くまでがセットでしょう。

 ……うん、魔術師が魔女に名前をつけてあげたらいいんじゃないかな。




○魔女と魔術師の過去の因縁について


 魔術師の回想によって、二人は昔に出会っていたことが判明します。


 これはとても悩みました。

 最初の時点では、魔女が少年時代の魔術師をなにかの事故や戦乱から救った、という設定にしていたのです。

 でも話が進むうちに、その過去を持ちながらこんなふうに捻くれてしまった魔術師に違和感が出てきてしまい、また、魔女も人間とそういう関わりを持つことはないだろうと思ってボツにしました。


 ならばこの出会いにはどこか悪い印象の残るものが必要かと考えて、少年の家族を損なったのが魔女だった、ということにして書くことにしました。

 でも、思ってしまったのです。やっぱり違うと。

 実のところ、この段階ですでに更新日を迎えていたので少し焦りもあったのですが、少年時代の魔術師に芽生えたのが復讐心にせよ諦念にせよ、このような対決を望むことはないだろうと思ったので、そこは妥協しては駄目だと感じました。


 そうしてできたのがあの回想シーン。

 インパクトもあるし、二人らしいものにできたなと思います。いやあ、ギリギリだった。




○寿命の違いについて


 わたしの中で、魔女は長命で人間とは違うもの、という概念が定まっていたので、相手が人間だと……まあ、あとから大変そうだなあ……とか思いつつ、そのままの認識でいくことにしました。


 魔女はほわりとしていながらどこか人ならざる酷薄な側面があって、人間の魔術師は残忍で享楽的に生きているけれど確かな情は持っていて。

 そんな二人がすれ違うのは面白いよなあとか思っていました。

 ……あ、この二人の特徴をコメントでも気にしてもらえたのすごく嬉しかったです。


 たぶん、この二人の性格なら寿命の長さは逆なのが王道なのだろうなと思いつつ――たとえば素朴な村娘のひたむきさにやられて魔王が絆されてしまうような。寿命とかちょちょっと与えてしまうような(言いかた!)――、途中で難しくなるだろうなとわかっていながらも、やっぱりそのまま進めることにしました。


 残忍で悪い魔術師だけど、彼はただの人間。なので魔術師自身が頑張って長命の術を見つけるか、残された魔女がもらった栞を大事に大事にするかしかないんじゃないかな。それもきっと愛。

 なんて、残酷な作者は考えております。多分魔女さんは魔術師の寿命をどうこうするつもりないでしょうし。




 さて、ということでものすごく長くなってしまいましたが、以上振り返りでした。

 とても楽しいアドベント期間でしたし、いつもよりクリスマス気分をたくさん味わえたのが幸せだった、という気持ちをここに残しておきたいと思います。


 あらためて、読んでくださったり応援してくださったりした皆さん、企画を開催してくださったくれはさん、本当にありがとうございました!

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