KAC2023 振り返り

 近況ノートにて簡単に挨拶はしましたが、改めてKAC2023お疲れさまでした。

 そしてお付き合いくださったみなさん、ありがとうございました。


 せっかくなので今年もひとつずつ振り返っていきたいと思います。作品をまとめたコレクションはこちら。


○KAC2023作品集

 https://kakuyomu.jp/users/nanashimai/collections/16817330653938074869


 去年、一昨年のコレクションと比べると面白いですね。よしよしちゃんと成長しているぞと、隙あらば自分を褒めていきます。




①本屋

『水底にてページをめくれ』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330653923668497


 企画やイベントに参加するとき、一発めって様子見をしてしまいがちなのですよね。なので今回こそ最初はまっすぐぶつかるぞ! という気持ちで挑みました。

 とはいえお題は「本屋」。シンプルすぎて難しいやつです。

 まっすぐ書きつつナナシマイらしさを出すには……やはりファンタジーかしら……と考えていたら思いついたのが水底の本屋でした。キャッチコピーも一緒に。

 水濡れ厳禁なはずの本が水中で出会うべき人の手に渡るのを待っているなんて、いかにも幻想的でよいではありませんか。

 そこから文章の雰囲気を試行錯誤し、なかなか出てこない本屋にあわあわし、本来の結末まで書いていたら間に合わないと区切りのよいところで終わらせる覚悟をし……と、なかなかにギリギリの戦いをしました。今年のKACは「雑に書かない」を目標に掲げていましたので、そういう面でも最初にふさわしいまっすぐさで書けたのではないかなと思います。




②ぬいぐるみ

『いつか、ぬいぐるみだけになる』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330653962018251


 七周年のイベントらしく777字で書くとなにか当たるかもキャンペーンがありましたので、早いうちに消化してしまおうとお題を見た瞬間から字数縛りで書くと決めました。

 ちょうど祖父の法事へ行ってきたばかりだったこともあり、なんとなく人の死や弔いによって繋がる家族性みたいなことに関する思考が頭の中にあったのでしょう。本当は可愛らしいファンシーなお話にするつもりだったのですが777字という印象につられて暗めの内容を選択してしまいました(天の邪鬼)。


 どう考えても死を残しておく風習は異常だと思うのですけれど、こういうのを考えるのは楽しいですよね。

 ただ自分のコメント返信の補足具合から「伝えたいこと書ききれてないな」と感じたので、そこは反省点です。言葉選びをもっと上手にできるようになりたいなと思いました。




③ぐちゃぐちゃ

『「売り込みたい」という人の性について考えるエッセイ(ミツボシカイ/著)』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330654127801829


 あらあらさっそく意地の悪いものを書いてしまいましたね、という感じで。お題を見たときは「そういえば青春バンドマンなお話って書いたことないな。ギターをかき鳴らしてぐちゃぐちゃの感情を歌う女の子とかめっちゃいいじゃん」などと考えていたのですけれども。数行書いてペッとしてしまいました。

 日頃感じていることなどを破れたオブラートで包み、キャッチコピーにも答えを書き、エッセイという物語を書く。……いや、本当に、こういう性格悪いことするのも好きなんですよね。性格悪いですね。

 その上でぐちゃぐちゃの感情を使うのはなしだなと思い「ぐちゃぐちゃ」を出すのは例の商品だけにしました。

 うん、例の商品、欲しいですよね……。


 タイトルの著者名はひそかなお気に入り。これ以上話すと性格の悪さが以下略でどうしようもないのでここまでにしておきます。




④深夜の散歩で起きた出来事

『春の夜を拾う』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330654209693915


 これはいくらでも書けそうなお題がきたぞ……と逆に悩むお題でした。ぱっと出てきたのが後述の現代ドラマと、昨年末に書いた『ユーリカの栞』に出てくる二人のお話で、ひとまず並行して書いてみることに。

 両方とも半分くらい書いたところで、やはりこちらの世界は書き慣れているからか面白味のある感じになりそうだなと思い採用としました。

 このお話単体でも楽しめるようにしつつ、本編を読んでくださったかたには相変わらずな二人の関係と、でもちゃんと時間は進んでいるのだということがわかるように考えるのが楽しかったです。

 春の夜は甘いような、でも命の動き出す怖さみたいなものもあるところが好きなのですが、夜の魔術師を通して書くことでさらに好きな感じに書けたかなと思います。


 作者的には素足の魔術師さんがツボです。え、だって彼はいつも、ジャケットに革靴にという夜会に出るような格好でキメてるのですよ……? たぶん余計な汚れが付かないようパンツの裾はまくっているでしょうし、くるぶしとか、その、見えてるんじゃないでしょうかね……(突然の変態的発言)。




⑤筋肉

『時計大臣』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330654256600559


 自分でもわけがわからないまま今日も作品一覧に佇んでいる、おそらく今回いちばんのダークホース。

 ツイートを見る限りお題発表から十五分くらいでこのネタを思いついた実は筋肉ネタが好きなナナシマイです。マッスル系統の持ちギャグがあります。そういうわけでプライドもありまして、筋肉を普通には使ってやらんぞと気合を入れました。気づけばキャッチコピーの台詞が浮かんできて、混乱しながらも筋肉に任せて書いたというわけです。

 コメントもたくさんいただけて嬉しかったです。みなさんの言葉を見てはニヤニヤ混乱しています。

 それにしても童話と筋肉の相性っていいですね(真剣な表情)。こういう組み合わせはどんどん見つけていきたいなと思います。




⑥アンラッキー7

『運勢管理局七課は忙しい』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330654412185393


 ここで七周年に寄せたお題が出てきたので、またしても777字で頑張りました。ルビで調整するというズルはしましたが、それっぽい感じにメタいのができたのではないかなと思います。

 ネタ自体はお題発表当日の仕事帰りにうんうん唸りながら考えました。ラッキーセブンの裏側としてのアンラッキーセブン、という大枠だけはすぐに思いつき、そこからどうやって広げるか、そもそもアンラッキーに対してどのような立場の人が登場するか、というのを考えるのがとても大変でしたね。現象を管理する存在に思いを馳せるは好きです。


 あ、ちなみに。

  >もはや名前に「七」とかつけてる奴を見ると無性に腹立たしくなるんだが。

 これはちょっとしたお遊びでした。まあナナシマイの七はラッキーセブンとは関係ないのですけれど。




⑦いいわけ

『雨が降って、予知夢。』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330654507027607


 最後なのでさわやかに締めようと思って書いたお話がまったくさわやかでなくなってしまい、また文字数も足りない状態で終わってしまったので保留とし、次に考えたのがこちらでした。

 キャッチコピーが気に入っていたのでそれだけ流用。最初に書いたほうは違う意味でも使いましたが、こちらは「いいわけ」を「言い訳」としてのみ使っています。


 主人公のあまねは現在連載中の長編『雨音は鳴りやまない』の主人公レインです。彼女は主人公にあるまじき弱さで言い訳もしてしまう、このお題にぴったりな性格だなと思いながら書きました。

 確かなものの伴わない受動的な言い訳。ずるくて退廃的で、とても人間って感じがしますよね。

 歌詞っぽい感じの構成がお気に入り。


 あと、これはひっそり活動だからこそできることなのかもしれませんが、そして「夢」という言葉を二重にすることでぼかしてはいるのですが、実はこの夢(予知夢)はまだ書いていないこれからの本編にかけています。

 この予知夢がそう繋がるのねと、主にわたしが楽しむための仕掛けでした。




 と、ここまでがKAC参加作品の振り返りでしたが、ついでに参加を見送ったお話の紹介もさせてください。


番外編④深夜の散歩で起きた出来事

『確かめるように』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330654582276796


 彼の言葉がわずかに理屈っぽいところを除けば、とても普通で何気ない深夜散歩のお話です。

 なんてこともない時間が当人たちにとってはとても特別なものなのだろうなと思いながら書きました。深夜って、そういう感覚を増しますよね。




番外編⑦いいわけ

『青は青に染まりて』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330654539150570


 前述のキャッチコピーから、「いいわけないでしょ」と答える「わたし」が思い浮かんで書いていました。

 さわやかなお話をと思い題材に青を選んだ安直さがバレてしまいそうです。でもこういう浮遊感のある表現はとても好きで、書いていて楽しかったですね。


 歌を重ねる二人、体を重ねる二人、そもそも人間ではないなにか……などなどいろいろに想像してもらえたら嬉しいです。

 どうしても解釈を決定づけてしまうセルフレイティングをつけたくなくて、そういう意味でも人目に触れやすくなるKACに参加させるのは躊躇われました。




 ということで、番外編を含めた九作品を振り返りました。

 お題が少なかったぶん、そしてお題そのものの難易度が下がったぶん、ひとつひとつのお話にたくさん向き合えた気がします。「雑に書かない」という目標は達成できたのではないでしょうか。


 去年もいろんな雰囲気で書けたと思いましたが、今年はその上をいきましたね。……雰囲気というより、なんでしょう。方向性?

 最近はなんとなく「ああ自分はこういうものを書きたいのだな」とわかってきた部分もあり、とはいえ自分の謎の発想に振り回されてばかりですので、今後はそれを上手くコントロールできるようになりたいなと思う二週間でした。


 なんだかんだで長文になってしまいましたね……。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

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