フェニックスミサイル乱射

 F111は、マクナマラが強引に空軍と海軍の新型機開発を統合して出来た機体だ。

 アメリカ海軍は早々に配備を諦めたが、日本は開発を続けた。


F111

https://kakuyomu.jp/works/16816927862107243640/episodes/16818093087273095591


 その理由は一八〇キロを超える長射程ミサイルフェニックスミサイルを装備するためだ。

 機動部隊を運用する都合上、敵機の攻撃を遠方で迎撃しなければならない。

 そのためフェニックスミサイルと共に独自改良を行って開発配備し運用していた。


フェニックスミサイル

https://kakuyomu.jp/works/16816927862107243640/episodes/16818093087273351109


 米海軍さえ導入を止め、手を引いたことから日本に開発費の負担がかかり、配備時点で必要だったのか疑問が呈されていた。

 その真価がようやく発揮できる瞬間が訪れた。

 信濃は迎撃の為に甲板上に常に迎撃機を待機していてくれた。

 第一波は敵の攻撃が速すぎて間に合わなかったが、警報を受けて緊急発艦した機体が第二波攻撃に間に合った。


「すごい数だ!」


 F111パイロットの隣に座る兵器士官はレーダー画面に映る画像、多数のミサイルを前に驚きの声をあげる。

 迎撃の訓練でもせいぜい標的が一発、いやフェニックスミサイルが高価なため、実際に発射を経験した者はほとんどいない。

 驚いても仕方なかった。


「全機迎撃開始!」


 数少ない発射経験者である飛行隊長が命令し、各機、指示に従い目標をロックすると発射。

 次々とフェニックスミサイルが発射され、対艦ミサイルへ向かっていく。


「F111迎撃開始しました!」


「おう!」


 大和のレーダー画面上でF111から発射されたフェニックスミサイルが敵ミサイルに向かっていく。


「フェニックスミサイル! 敵ミサイルに到達!」


 次々と命中していくが、実戦で初めてということもあり、初期故障や操作ミスもあって命中は半数のみ、残りは大和に向かってくる。


「対空砲火用意!」


 残った二五発、向かって来るミサイルは、大和自身が迎撃しなければならない。


「ターター迎撃開始!」


 大和に搭載されているターターミサイルが発射される。

 だが、ミサイルの数が多くすべてを撃破出来ない。

 ターターをかいくぐって一一発に接近され五インチ砲、三インチ砲、機銃で迎撃する。

 大半は迎撃出来たが二発のミサイルが大和に命中した。


「ミサイル被弾!」


「落ち着け! この程度で大和は沈まん! いや、沈ませない!」


 砂川は大声で叫ぶ。


「大和が沈むか沈まないかは俺たちにかかっている! 応急班! 被弾個所に行き、消火! 各部損害の確認! 航空管制能力の維持に努めろ! 味方機を誘導できれば俺たちの勝ちだ!」


 北ベトナム上空には多数の味方機が飛んでいる。

 彼らを誘導し、勝利に導けば、作戦は成功する。

 そのために大和の能力を維持する砂川は自分、そして大和の任務を理解し、命じ続けた。


「沈むのではなく戦い続けよ! 大和が生きていれば、この戦いは勝てる!」


 幾度もの攻撃を受け、嵐の中を突き進み、満身創痍になりながらも沖縄に到達した大和のように、自分も戦おうと砂川は心に決めていた。

 この程度でひるんではならないし、屈しない。

 味方のために浮き続け、誘導することを決意していた。


「ミサイルの発射個所に爆撃要請。完全に破壊するんだ」


「はい!」


 やがて対艦ミサイルを発射した地点にB52の編隊が到達し絨毯爆撃を行った。

 一機当たり二五トンの爆弾により投下された地域は巨大な溝となり、対艦ミサイル部隊を巻き込んで壊滅。

 対処能力を失った。


「脅威が無くなったと判断する」


 砂川は、報告を聞いて宣言した。


「代替ピアズ艦としての役割を果たす、大和を沿岸部へ」


「了解」


「攻撃隊の誘導を行え、概要は機密ファイルにある。開封は許可されている。遅滞なく実行せよ」


「了解」


 命令された管制要員は従った。

 部下はともかく、三十代の彼は生まれこそ戦後だが、焼け野原となった東京を幼い頃に見て育った。

 それからの復興は驚異的だったが貧しい暮らしを体験し見ている。

 ハノイを同じような状況にする爆撃機を誘導する事に抵抗感を感じている。

 しかし、命令とあらば、従わざるをえない。


「爆撃隊の誘導を開始する」


 大和からの誘導によりB52はハノイに殺到。

 主要施設を破壊し北ベトナムは継戦能力を失った。




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