思いが深ければ深いほど生じる危うさ

 それぞれ光と闇の守護者として祀られた、双子の兄弟のお話。

 とある双子の弟の視点から国の動乱を描いた、異世界ファンタジー掌編です。

 生まれながらに課せられた役割のため、権力を持った人間たちから利用されてしまう、特別な双子の兄と弟。
 彼らふたりだけが持ちうるその苦悩が、そのまま彼らの関係性ともなっている、その描かれ方が魅力的でした。



〈以下ネタバレ注意〉

 これはちょっと誤読かもしれないのですけれど、
「この結末が本当に兄の望んだものなのか、実際に知る術はもうない」
 という点が大好き。

 主人公は果たして兄の遺志を汲めているのか?
 どちらの可能性もある、という以上に、もう確認する術がない以上、主人公の中にはずっと「なあ、これでいいか」という問いが残り続けるというのが、もう最高に美味しすぎて……。

 主人公が兄に向ける思いそのものの魅力に加えて、その思いの深さに見え隠れする、何か〝危うさ〟のようなものがたまらない作品でした。