才ある君と畝る

SHOW。

進路と追試

 進学はしないむねを担任教師に伝えた。

 私の学力なら道内の国立大学だって合格出来るレベルだと諭されたけど、帰結として実家の喫茶店を手伝いたいと理由を付け加え、それに渋々折れる形で進路相談は終了する。


 出席番号二番。畝村うねむら 瀬那せなと記されたファイルがなおざりに仕舞われる。


「失礼しまし……た——」


 三年生教室が等間隔に連なる本校舎三階。

 白藍のリュックを背負って自教室のドアを開くと同時に、いささか不満気な先生に告げる。


 将来をいているのか、はたまた進学を選択しない生徒は成果にならないから気に食わないのか不明だけど、そんな表情をするのはあんまりだと思う。


 まるで私の人生の選択として、不正解だと言わんばかりだ。


 心境を反映させるようにドアを閉ざす。

 白塗りの材木がかち合う、乾いた反響。


 教室と対面にある窓枠の向こうには、夕焼けに染められた市街地の一部が映る。


 基本は退屈だけど、私が感傷的な気持ちでいるときはなぜか癒される見慣れた風景。


「……」


 そんな景色を、大人達からは非行少年扱いされている同級生が気怠そうに眺めている。


 無視をしたい気分ではあった。

 なのに私は一声掛けてしまう。


「——才原さいばら?」

「……おお。先生との話は済んだか、畝村」


 才原は私の方へと気楽に向き直る。

 特別美形ではないけど当たり障りもない、想像通りの容貌ようぼうと相対した。


 天然のうねりを生かそうとした試行錯誤の整髪が少し乱れ、紺色ブレザーとシャツの間にパーカーを着て赤ネクタイを緩めている。


 家鍵かどうか分からないけど、首から紐をぶら下げていて、ちょっと子どもっぽい。


 猫背気味の姿勢をそのまま、窓下の内壁に凭れ掛かりつつ私に訊ねてきた。

 とりあえずは、適当にあしらう。


「まあね」

「……なんか冷たくね?」

「別に。才原には全く関係のない話し合いだったから、説明するのが面倒なだけ」

「あー……そう、か」


 才原は手持ち無沙汰をやり過ごすように、両手をポケットに突っ込む。


「……」


 その行動原理が私には違和感だった。

 いつもなら関係ないと突き放したり、面倒だと邪険にすると即座に反論してくる。


 特別仲の良い関係ではないだろうけど、同郷出身で幼少期からの顔見知り。そして私の実家の店『純喫茶 ウネムラ』にも度々お客さんとして来るから、嫌でも少し分かる。


「それで、そっちは何用?」

「ああ、赤点追試の結果待ち」

「……」

「いや無言が一番怖えよ」


 私は息を漏らす。呆れているというよりは、またかといった具合な気がする。


 才原が勉強に関しては卒業が出来るのかどうかも怪しい成績で、遅刻常習犯の授業居眠り魔ということは、同学年のクラスメートなら周知の事実だ。


 最下位争いの常連でもあり、今更驚くこともない。


 それよりも一つ。その競争の相手の姿がどこにもないことの方が疑問だ。


「……ベーちゃんは?」

「横浜? あいつは昨日で終わり」

「ああ、一緒にテストを受けたわけじゃないんだ」

「いや、昨日は僕と横浜で受けた」


 私が愛称のベーちゃんと呼び、才原が苗字で呼ぶ子は、唯一の友人とも言えるかもしれない横浜よこはま うめのことを示している。


 才原と同じく成績が壊滅的な女の子で、追試関連なら大体一緒に居るのをよく見る。


 因みに渾名の由来は、苗字の横浜の都市名関連、梅花という名前がなまった、偏食レベルのパン好きが高じてベイカーと揶揄されたのが転じたなど、もうどれか起源なのか誰も分かっていない。


 まあ何はともあれ、べーちゃんだ。

 それよりも話を整理しよう。


「えっとごめん、どういうこと?」

「つまり、僕と横浜が期末考査で振るわず赤点。その後の追試でも僕は赤点、横浜はギリ回避。それで今が赤点追試の結果待ち」


 どうやら追試の追試ということらしい。

 そんな制度が存在し得るものなのだろうか、縁のない私には解りかねる。


「……それもう、落第で良くない?」

「いや、終業式までは大丈夫って言ってた」


 鏡越しに見てないから正確には分からないけど、私は何も大丈夫じゃないと、眉を顰めたまま苦笑しているだろう。


「結果はいつ出るの?」

「うーん、まだ掛かるかな? だから採点待ちの間、教室でダラダラしてようって来たら畝村と先生が話し中、みたいな感じ」

「ああ……——」


 図らずも気を遣わせてしまったと悟る。この進路相談は私の為だけに追加で設けられたもので、他の生徒は誰もいない。


 高校三年生の複雑な時期。

 担任教師との込み入った雰囲気。

 私に対して行った先程の対応。


 多分才原は、色々と察しが付いている。

 開き直って、触りだけ話してみようか。


「——ちょっと、卒業後の進路のことでね」

「それ、前にやらなかったか?」

「うん……才原と同じで追試みたいなものかな」

「ははっ、進路相談の追試ってなんだよ」


 才原は私の冗談を戯けるように笑いながらも、少々堅苦しく頷いていた。

 そして何か気が付いたように壁にもたれ掛かるのを止め、階段の方へ三歩進む。


「あっ、畝村ってこれから家に帰るよな?」

「そうだけど……」

「僕も職員室に行くから途中まで方向同じだろ? だからそこまで歩きながら、ついでに追試の答え合わせでもしないか?」

「……はあ?」


 感じの悪い口調で返したのは申し訳ないけど、ちょっと何言ってるか分からない。


 この校舎では三階の自教室から、一階の下駄箱までの経路に職員室がある。


 クラスで集めた提出物を一緒に運ぶくらいなら手伝うけど、なんで私が才原の追試の解答を共有しないといけないのか意味不明だ。


「だって畝村、昔から勉強出来るだろ?」

「……成績が良いとは言われるけど——」


 褒め言葉でも嫌みでも、学校内の私が評価されるのはテストの点数くらいだ。


「——あと進学しない事、先生になんか言われたのか?」

「えっ……なん、で——」


 不意打ちで上手く反応出来ない。


「——いや、いつもより不機嫌だったから」

「……」

「違ったらごめんだけどな」

「……どうだろうね。こういうの自分では気付かないものだし——」


 進路のことを才原には言っていない。

 でもやはり、勘付いてはいたみたいだ。


「——才原が思うなら、そうなんじゃないかな?」


 持論として、人間の価値は決してテストの点数だけじゃないと思う。


 例えば赤色の数値しか取らないけど、才原もべーちゃんも周りの子を惹きつける魅力があって、きっと沢山の人に愛されるポテンシャルが絶対にある。


 学校内では、特に教師陣の心象は最悪だろうけど、二人とも我が道を行くスタイルをぼんやりと持っていて、理解してくれる他人が増えれば増えるほど発揮出来る。


 唯一の取り柄すら放棄しようとする私とは、大違いだ。


「……ここだと先生から傍聴されるかもしれないし、歩きながら話そうか?」

「……そうね」


 才原が先行して階段を降り、その高校生男子にしては少々矮躯わいくな背後ろを私が追う。


 一定のリズムで一段ずつ確実に踏む単音と、鼻唄と共に所々蛇行して、自己満足のステップを奏でるタップダンスもどき。


 波長が合っているのかどうか、音楽に精通していない私だと判別は困難だ。


「……才原邪魔、私が歩きにくい」

「えっ? ああ……悪い。なんか今、僕一人の感覚で居たわ」

「影が薄いと?」

「いや、畝村の足音が綺麗過ぎるせいだな」


 吹き笑いしながらそう言うと、踊り場に着地した才原は反転して数歩だけ後ろ歩きをする。私と向かい合う、ほんの一瞬。


「畝村は良いな」

「……いきなりなによ?」


 才原が再度向き直り、私よりも沈む。


「わざわざこんな面談まで設けられて引き留められてたんだろ? 僕だって進学の予定はないってのに」

「……それは学校での態度の差でしょ? あと単純に就職組だと思ったんじゃない? 受かる大学なんて皆無だろうしね」

「おいおい、ひでぇー言い方だな」


 才原は軽口で返す。

 実際には内申点を加味した推薦や学校同士のパイプもあるし、曲がりなりにも高校三年生まで進級出来たのなら、受かる所がないと言うことはないだろう。

 非常に分かりにくいけど、冗談だ。


「えっと……クッズ野郎、だったかな?」


 更に冗談を重ねてみる。これはべーちゃん経由の受け売りだから、言葉遣いからして私の台詞にはなってくれない。


「なんだその口調。あっ横浜にも昨日、同じ感じで言われた……さてはグルだな?」

「うん。元々はフラの真似だけどね」


 話題に上がったフラこと富良野ふらの じゅん太郎たろうは、才原と良く悪友のようにつるんでいる同級生で、べーちゃんの想い人だ。


 富良野をフラと呼ぶのは、道民だと苗字か地名か分からないから、代わりにその渾名あだなが広く浸透したという経緯がある。


 逆に才原が未だ苗字で呼んでいることが不思議ではあるかもしれない。


 アイドルグループに属していてもおかしくないルックスとスタイルを兼ね揃えた聡明な美男子だ。


 けれど不良少年扱いの才原と共にすることが多く、同じく不良少女扱いのべーちゃんからの猛アプローチを保留し続けるネタ的な関係性があるせいで、相対的に何かと損をしている男子生徒だ。


 因みに、保留し続けているとはいえど当人同士は満更でもないと私は予想している。


 いつか学生的なテンションが無くなったときに、二人がちゃんと通じ合えたらと、ずっと密かに思っている。


「……富良野ってそんな感じじゃなくね?」

「んー、フラの真似をするべーちゃんの真似を私がした」

「ややこしい……」

「その自覚はある」


 話が脱線している間に階段を降りきり、入学してすぐを過ごした一年生教室がある廊下を変わらず歩く。


 一応別ルートもあるけど遠回りになるし、こうして生徒がいない日にちと時間帯なら馴染みのルートが懸命な気がする。


「畝村は卒業しても喫茶店にいる感じか?」

「まあね。子どもの頃から手伝ってるし、最近はコーヒーも豆から挽いて提供してるし」


 前々から合間を縫い、私用で作っている。

 そうして昨年の冬頃。改良と正確性を磨いた結果、お店の商品として出して良いと両親から正式に許可を貰った。


「そういえば僕、あの店で畝村が作ったコーヒーしか飲んだことないな」

「そりゃそうでしょ。家族経営だし、みんな畝村なんだから」

「あっいや違う。お前が淹れてくれたやつってことで……——」

「——……分かってるよ」


 高校生になってから時折ときおり。ランチタイムによく来る才原にお金は貰わず、試飲を頼んでいた。今となって振り返れば、私にとって初めての顧客だったのかもしれない。


 べーちゃんも喫茶店の真裏にある実家へ遊びには来る。だけどコーヒーが匂いからして苦手だから、お客さんとしてお店を訪れるのは数える程度だ。


 ニアミスだろうけど、同時にこの二人がお店に居たことって一度もない気がする。


「……ねえ、何か言って」

「はあ? 何か——」


 沈黙が続いていたら誤解されそうで、雑に話を振ってしまった。


 一年生教室の通りを抜けてすぐ左折し、校門に近い別館へと続く小道を伝い移動する。


 下駄箱への仄暗い通路の途中にある、職員室周辺の雑多なロッカー類の側面が見える。


 うろんな会話も、もうすぐ終わり。


「——あの……来年もこの市内に居るってことだよな?」

「そうなるね」


 私は才原を流し見る。

 話し方の間合いから、何かを企んでいる雰囲気を感じ取れた。


「じゃあ卒業した後も、畝村を冷やかしに行けるのか」

「……出禁にするよ?」

「いやそれは無理だ」

「ふーん。その心は?」


 碌な期待もせず、投げやりに訊ねた。

 対する才原は両眼を閉じ、丸まった背筋を伸ばして雄弁に語る。


「畝村がお客さんを大切にしない訳がない」

「……精神論じゃん、聞いて損した」

「心を訊かれたからな」

「あー、はいはい」


 結局まともな話もせず職員室に着く。

 お客さんを大切にするのは間違っていないと信じたいけど、才原に指摘されるのはなんだか釈然としないものがある。


 そういえば。私がどうでも良過ぎて無視してたけど、当初の理由はなんだったのか。


 才原がドアに手を掛けようとしていた。

 仕方ないから、確認として訊いてみる。


「ねえ才原」

「んっ、なに?」

「そういえば追試の答え合わせ、全くしてないけどいいの?」

「あー、それな——」


 才原の迷える右手が後頭部に取り付く。

 これはくだらない嘘を吐くときの所作だなと思いつつ、静かに待ってみる。


「——えっと……追試の問題を憶えてなくて、答え合わせどころじゃなかった」

「……こんなこと言いたくないけど、流石にバカが過ぎない?」


 本当にバカなごまかしだ。

 素直に白状してくれたら私からの好感触間違い無しの場面なのに、もったいない。


「あっ、設問一の二番は[ア]って書いた。畝村、合ってるか?」

「……その説明だけで分かる訳ないでしょ」


 べーちゃんの追試問題を見たことがあるけど、本テストとは微妙に異なっていたから断定は出来ない。


 すると才原が困ったように微笑む。

 追試結果待ちに緊張しているのか、はたまた私へのごまかしネタのストックが尽きたのか、とりあえず素知らぬフリをする。


「追試のテスト、受け取ってきたら?」

「……畝村、扉の前で待っててよ?」

「おばけにおびえる子どもの深夜トイレか。才原から聴きたくないから早く行け」

「えぇー……」


 あどけなく駄々だだねる才原に、私は手を払い促す。実際にはぐずってるだけなんだけど、えてそのように表現する。


「留年しかねないのに、私に構う暇なんてないでしょ?」

「……」


 ブレザーが擦れる音が鮮明に聴こえるくらい、辺りが沈黙する。


 でも言い淀んでいる姿はちょっと面白い。

 これは私の意図は通じていると受け取っていいのかな。


 もう気を遣わなくても大丈夫だと言えたら分かりやすいんだけど、才原相手だと口が悪くなって、台詞がめんどくさくなってしまう。


「……いや、そうだな——」


 硬直していた才原がわざとらしく苦笑しながら微動すると、息を整えながら腰に手を当てる。欠伸のように気怠い一時だ。


「——ちゃんと、一人で帰れるか?」

「ふふっ……、才原は私のなんなの?」

「……お爺ちゃん?」

「交通安全のね」


 多分、思い浮かべたお爺ちゃん像は私と同じのはずだ。


 小学生の頃にそう訊いてくる陽気な人が居たんだけど、まあそんなことはどうでもいいとして、才原をあまり留めるのも良くない。


「じゃあ私帰るけど——」

「——ああ。そうだ明日、僕がダメだったら勉強を教えてくれ」


 そんな嬉々として言うことじゃないよ。


「……嫌だし、その懇願情けなくない?」

「恥を忍んで質問することが、赤点回避の一番の近道だからな」

「うん、出来てないんだけどね?」

「うるさいなー。テストって運要素もあるから多少は仕方ないんだよ」


 どうせ範囲の山を張っているか、サイコロ鉛筆で神頼みでもしてるんだろうと内心でツッコミを入れる。


 直接伝えると話が間延びしそうだから、自重しておく。


「はいはい、じゃあまた明日——」

「——あと畝村」


 適当にいなして私が下駄箱の方へと体勢を変えようとすると、何故か呼び止められる。


「……まだなにか?」

「えっとな……終業式の日。昼飯を畝村の店にしようと思って、それでいつもの——」


 後に続く要望が予測出来てしまって、私は苦笑いしながら才原を遮る。


「——コーヒーとカツサンドのセットだよね、在庫あるか確認しとくよ」

「……ああ、定番のやつな」


 あくまで才原の定番セットだ。

 他の人もそうという訳じゃない。


「定番かどうかは知らないけど、了解。

 あっ、追試は終わらせときなよ。味がしないとか言われたくないし」

「……善処はする。気を付けて帰れよ」

「はいはい、また明日」


 簡素に伝え、下駄箱へと向かう。

 なんだか先生のような台詞だなと所感しながら、才原の声を反芻させる。


 私が歩くたび、背負ったリュックの中にある書物が上下に揺さぶられ、なんとなくエネルギーに転換される気分になる。


 胸の内が晴れやかになったなんて能天気な表現をしたくないけど、足取りは随分と軽快に動いてくれる。


「悪くない時間だったね……」


 今日の選択肢が正しいのかどうか、現状ではなにも分からない。大人の言う通りにすればといつか後悔するかもしれない。


 才原も、べーちゃんも、フラも、他の同級生も、勿論私も。人生の経験が乏しいから、あやふやな解答しか導き出せない。


 きっとほとんど人が将来に迷走したまま、学生生活を終え、制服を脱いでしまう。


「……そう言えば才原のこと、訊いてなかったな」


 まあ私が訊いた所で参考にならないだろうから別にいいけど、密かに推測だけはある。


 才原は両極端な人生を歩む気がする。

 置かれた立場に満足していなくて、たまに突拍子のない提案をして、何より他人の機微に敏感なことだ。


 平然と停滞する社会全体に異議を唱えそうな気がしてならない。それも動力源が自身じゃなくて、他人の為に実行しそうだ。


 例えるなら億万長者か、どうしようもないニートか、みたいな差だと思う。


 だかはあえて本人に言ったりはしないけど、あまりに堅実な選択は、才原には似合わない。


「とりあえず帰ったらすぐ見とこうか……」


 上靴から革靴に履き替えながら呟く。

 吹き抜けの下駄箱は冷気を帯びている。


 終業式後のあれこれを考える。

 才原からお金を頂戴して、コーヒーとカツサンドを振る舞うだけの私の未来は、とても退屈するかもしれない。


 いや、そもそもそんな日々も光景も、なんにも保証されてなんていない。

 どうにもすぐに結論は出そうにない。


 でも、私が進学しないと決めた理由はある。真っ先に想起したのは、実家の喫茶店から離れたくないこと。


 成績以外の価値を、ちゃんと私自身に見出したかったこと。


 文句ばかりの同い年の常連客から以前、コーヒーを作るのが巧いとこぼれるように言って貰えたことを追加しても良い。


 安直だと諭されたらそれまでだけど、まだこの市内に私の生きるヒントがある気がした。


「はー……ちょっと寒いね……」


 最北端にある都市の見飽きた街並み。

 真冬になると銀色の極寒地に変貌するこの場所は、田舎と揶揄されたらきっと否定は出来ない。


 けれど私はこの街で産まれて、この街で育てられてきた。だからどうしても贔屓目に眺めてしまう。


 そしていつかここから居なくなる日も、もしかしたら来るのかもしれない。


 そのときの私は一体どう思うだろう。

 叶うなら故郷として一生、広大で退屈な風景を、どうか忘れないで欲しい。

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