第65話 私が姿を現した時

 説明は、次元をつなげて、魔帝城と天帝城の中間で行う事になった。

 説明と言っても「蛇」を可視化して、私の人生を見せながら解説するだけである。

 天界勢も魔界勢も(特に天界が)黙り込んでしまった。

 「蛇」はかように人(人ではないが)の人生を歪めるのだ。


 「蛇」と「野生」と「秩序」の巫女を前世に持つ天使を見つける事ができた。

 天界の思考は今まで読んでなかったので見落としていたのだ。

 今は違う。この世の全ての生命体の思考が分かる。

 全部並行して読む事はできない。

 が、ちゃんと記録できるだけの容量の脳が(一つではないが)今の私にはあった。


 その天使たちにはいずれ協力願うと思う―――と天帝にこっそり囁いておいた。

 あと、天魔帝両方に、全ての記憶を記録・読解していることも言っておく。

 私を殺せる能力者は、3代魔帝の奥方レイシィ様ぐらいだろう。

 了解してもらうほかない。


 その代わりに私は「約束」する。誓いは無効だが自分の意志で約定は守る。

 犠牲をゼロにはできないが、世界全体を守護すると。

 天使も悪魔も人間も、全ての魂を守ろう。

 だからあなたたちも協力して欲しいと要求する。


 天人魔どれが欠けても世界は成り立たない。

 これは口には出さない。

 が、紅龍がよき魔帝になるというから、私は全てを守る覚悟をしたのだ。

 魔帝が成立つためには魔界だけでなく、天界と人界が必要なのだから。

 だから護る。私にできる精一杯の愛だ。


 超越者オーバーロードと呼ばれる私の誕生だった。


 そこから後にあったのは「蛇」への対策方法の伝授。

 「蛇」を倒す役目を持つ戦士―――ワーウルフ達の情報開示。

 ワーウルフキングとの接触。

 などなど、いろいろあったが―――


 一番疲れたのが、結婚式だった。

 すさまじく豪華な宴と式が30日間続いた。

 10億年前にタイムスリップして戻ってくる方が正直マシだった。

 そう紅龍にこぼしたら「試練だと思え」と言われた。彼の目は達観していた。


 そりゃあ紅龍は大好きなお父様の暴走だから耐えられるでしょうけど。

 私にしてみれば「この小娘が」なのよ。ええ。

 耐え抜くのは苦行だと思って、ひたすら我慢したわ。


 苦行が終わり、魔帝庁の書類に捺印して。

 後、魔帝庁の掲示板の探し人は私だとカミングアウトもしたりして。

 平和は訪れないけど、私は紅龍と結婚した。

 仕事夫婦に見えるようだけど、十分に幸せ。


 紅龍の部屋のベッドで、彼の仕事が終わるのをまどろみながら待つのが幸せ。

 異界からの侵略者や「蛇」の陰謀の阻止をしたりするのも彼のためと思えば幸せ。

 私にはこれからも、色んな試練が降りかかるだろうけど―――。

 できれば紅龍と一緒に生きたいし逝きたいと願う。


♦♦♦


 雷鳴、ここまでが話せるすべて。この先は私もまだ知らないわ。

 でも私を手伝ってくれるあなたは、本当にいろんなことに巻き込まれるはず。

 私より先に死んじゃダメよ?そうならないように鍛えるけれど。


 そう、絶対先に死なないと「約束」してくれるのね、ありがとう。

 

 可愛い可愛い私の坊や。

 語る事が長すぎたわね。

 もう眠りなさい。


「ある少女のモノガタリ」―――ここから先はあなたの目で―――


―Fin―

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ある少女のモノガタリ フランチェスカ @francesca

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