第77話
「そういえばカミラのやつ、結界石は用意したのか?」
この前カミラに聞いた時は、一度に大量の結界石は用意できないと言っていたが、せめて草原まで抜けられるぐらいには結界の範囲を広げておきたい。
俺はジャンたちにバレないように『資材ショップ』を発動し、タブレットを手に取った。
「ん?メッセージが届いているみたいだな……」
いつも通りカミラからのメッセージの受信を示すアイコンが点滅しており、俺はそのアイコンをタップした。
◇From カミラ◇
お疲れなのじゃ。
今急ピッチで結界石は用意しておるのじゃが、わらわ一人では1日に20個程度作るのが精一杯じゃ……。
とりあえず、今まで作った結界石25個を資材ショップの商品欄に載せておいたから好きに使うのじゃ。
P.S……結界石は持ち歩くと効果がなくなる仕様なのじゃ。森に設置する時にはモンスターに気をつけるのじゃぞー。
「用意できていたならさっさと教えてくれたら良かったのに……。危うく死ぬところだったぞ……?」
カミラのメッセージを見て少し腹が立ってしまったが、用意してもらってあまり文句も言えないだろう。
『資材ショップ』を確認すると、確かに結界石が用意されていた。
俺は一旦外に出て、結界石20個を無料で購入した。
現れた木箱を開くと、俺が今発動している結界石と全く同じものが入っていた。これで安全に森を抜けられるようになるだろう。
俺はジャンたちを置いて森に結界石を設置してくることにした。
「ジャン、ちょっと森に行ってくるから留守番頼めるか?パプリは餌付けしておけば大人しいはずだから面倒見てやってくれ」
「はあ?死に物狂いで抜けてきた森にまた戻るのか……?」
「ほら、俺の家の周りはモンスターが近づかないだろう?それと同じ安全な範囲を広げるための魔道具を設置しに行かないといけないんだ」
「それなら一応俺もついて行く。万が一モンスターに襲われたら流石のお前でも危ないかもしれないからな」
そうして、俺とジャンはアンネとクロードに留守番を頼んで森に向かうことになった。
少し森を歩き、大体100メートルごとに結界石を設置していく。
結界石の範囲はもっと広いが、あまりギリギリを攻めてモンスターに襲われることになるのは避けたかったのだ。
しばらく設置して歩くと、大体森と草原の中間あたりまで来たところで結界石を使い切ってしまった。
もちろんそれは計算済みで、今度は来た道を折り返し1個飛ばしで結界石を回収していった。
まあ、そんな効率の悪いことを繰り返しやっているものだから、ジャンもかなり不思議がっていた。
「コーサク、さっきからその魔道具を設置したり回収したり、何をやりたいんだ?」
「効率は悪いけど一番安全にこれを設置する方法なんだよ。その証拠にあれだけいたモンスターの影も見ないだろう?こういうのは焦って作業するとかえって危険な目に遭うことが多いんだよ」
「たしかにそうかもしれないが……。でも同じ道を行ったり来たりするとは思わなかったぞ?その魔道具の設置もすぐに終わると思っていたし……」
ジャンはそんな文句を言いながらも、俺について来てくれた。
一人が好きだとは言え、この真っ暗な森を一人で歩くのはさすがに度胸がいるのでついてきてくれて正直助かった。
そうして地道な作業を繰り返し、1時間が経った頃にようやく草原までの道に結界石を設置することが出来たのだった。
錬金農家〜異世界でも野菜が作りたい〜 まぐな @arstagram_125
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