学生トーク「日記編」

山田 武

学生トーク「日記編」



「日記……」


「…………」


「いや、真夜中トークの時の熱意は?」


「日記って言われてもな……自分から率先して書いたことも無い物だからな」


 学生が経験したことのある日記など、課題として出された観察日記だろうか。

 半ば強制であったため、話を振られた友人に熱意は無かった。


「そりゃあ漫画とかアニメとかなら、まあよくあるヤツだと思うぞ? 絵日記とか、交換日記とか……少し外れるけど、真実の歴史が載ったヤツとか未来が書かれているヤツとかいろいろと」


「過去と未来か。日記って、今を記す物だから矛盾してるよな。いや、書いた後は全部過去になるのか? でも、未来は無いか……一番欲しいけど。って、話題は日記関係にしてくれよ」


「はいはい。じゃあ今のお前の話を少し伸ばすか。日記は今を記して、過去を写す。そして──未来に残すわけだぞ」


「えっと……どういうことだ?」


「日記は過去を、今書くものだけども、書いた内容を観るのはいつだってその時点からすれば未来だ。つまり、過去も現在も未来も内包した完璧な存在……それが日記なわけだ」


「おおっ、マジでなんか凄そうだな!」


「ま、今三秒で考えたネタだけど」


 特に深く考えたわけでもなく、なんとなく思いついたことを語った友人。

 だがどうやら、少年の心に刺さるような内容だったようで……。


「こういうことも、日記に書いておいた方がいいのかもしれないな」


「……いや、どんな締め方だよ。日記なんて書いたことないくせに」


「日記と掛けて、先人たちの功績と説く」


「…………その心は?」


「どちらも、『記す/印す』ことが大切になります」


「……いや、全然意味が分からん」


 彼らの日々もまた、どこかでは日記のように書き記されるのかもしれない。

 あるいは何もない日々であるからこそ、誰もがふと懐かしめるのだろう。


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