第三話 巻物
「唯、土蔵の中のモノ出すのを手伝って!」
休日の朝なのに母にたたき起こされた。
古い土蔵を壊して小屋を建てるらしいのだか、私の部屋が増える訳では無いのであまり気乗りしない。
蜘蛛の巣くらいはなんとかなるけれど・・・
古い土蔵は埃っぽくて虫や鼠が居そうで、もし
遭遇してしまったら私は気を失ってしまうかもしれない。
土蔵の中は意外と広いが・・・
訳の分からないモノが積み重なっている。
私から見たらガラクタみたいなモノが辺り一面に積み重なって、よくこんなにガラクタを溜め込んだものだ。
幾つか木の箱の様なモノが積み重なっていて・・・
ホコリを拭いて母と一緒に倉庫の方に運んだ。
「ママ、これ何が入ってるの? 」
ママは億劫そうに私の方を見て
「私も分からないわよ! 自分で開けてみて確かめればいいじゃない? 」
なんて言われたので、私は恐る恐る木箱の蓋を開けてみた。
中には古い着物の様なモノがはいっていた。
寺崎家は古くからこの地に在るので、相当古いモノなんだろうと思う。
私の家は分家だけれど、本家は神社の神主をしている。
その神社は室町時代に建てられて、県の文化財にも指定されている由緒ある神社だ。
着物はきっと神社の何か式典とかで使ったモノなんだろう。
其処の神社では神楽とかも舞われたりしているのでその時使われたのだろうか?
私は着物には興味が無いので勝手に価値のないモノと判断し、箱の蓋を閉めてまた土蔵に向かった。
また薄暗く埃っぽい部屋に私は入って行った。
まだ土蔵には神社の道具の様なモノや古い本が山積みになっている。
私は見ているだけでため息が出てくる。
そんななか部屋の隅に製図ケース位の木箱が置かれて居るのを私は見つけた。
「お宝、オタカラ?」
思わず口ずさんでしまった。
私はその木箱の埃を払って明るい場所へ運んだ。
桐の箱なんだろうか?
スゥっと蓋が開く。
中にはシミだらけの巻物が入っていた。
挿し絵の様な模様と文字が書いてあるのだけは辛うじて分かるが・・・
それが誰のモノであるのかなんて私には分かるはずもなかった。
『鑑定に出してみたい。』
恥をかくだけだと分かっているが私のウズウズは止まらない。
「あら、お宝見つかって良かったわね!お宝に触りたかったら、さっさと片付けてね!」
母にはガラクタが一つ増えただけに映った様だ。
母から仕事を急かされ私は我に返る。
さっきまでのつまらない片付けが玩具を貰った子供の様にウキウキに変わった。
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