郵便ポストが血塗られた朱に変わる時(小町物語り)

アオヤ

第一話 郵便ポストが血塗られた朱に変わる時

この物語りには実在する(した)場所や人物が一部出てきますが、この物語りとは関係がありまぜん。

この物語りは私の妄想で綴られています。



#

このおおまがりを過ぎれば自宅に到着だ。

少し霧が出てきて周囲の見通しが悪くなって来たので、私は車の運転に気を付けながらも先を急いだ。


おおまがりの入り口辺り差し掛かった時、車のすぐ前を左から右手に道路を横切る黒い影が現れ、私はドッキとして急ブレーキをかけた。

間一髪、私はその影の手前で停止する事が出来た。


その影は着物を着た女性の様に見えた。

着物を着た女性がやって来た左手奥には『小野小町の墓』と呼ばれているモノがある。

・・・この着物の女性はまさかこの墓から?


道路の右手には神社の鳥居が在り、その鳥居の根元には170cmくらいの高さの昭和初期に作られた郵便ポストが有る。

影の女性はそのポストの前まで移動するとスゥーと消えてしまった。

その郵便ポストを私はジッと見つめる。

その郵便ポストは昨日までと比べ濃い朱に変わっている。

それはまるでポストが血を浴びて輝いている様にも思える。

私は「キャー」って悲鳴を上げてしまった。


でもその時の私は恐怖より興味の方が勝っていた。

車を直ぐ左側の神社の駐車場に停めて、道路反対側のポストに向かった。


私は恐る恐る郵便ポストに近づいた。

まるで血塗られた様な色のその郵便ポストからはペンキのニオイがする。

そして手紙の投函口には『ペンキ塗りたて』の小さな貼り紙が有るのを見つける。


私は小さい頃お婆ちゃんに「郵便ポストが血塗られた様な朱に変わったら、手紙を入れてはいけないよ!」と言われていたのを思い出して笑ってしまった。

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