戒律違反

大善寺の奥の院は山に囲まれた中腹にある。

ゴツゴツした岩場で以前はロッククライミングとかする人もいた場所だ。


仏教って、もともとインド発祥だけどインドの人々もこんな感じの所で修行したんだろうか?


こんなゴツゴツした岩場で修行?

円仁様もココで修行したんだよね?

密教ってどんな修行したんだろう?

こんな岩場で一日中、座禅して無の境地に至るとか?


千数百年も昔の人のやっていた事なんて分からない事ばかりだ。


「なぁ唯、こう考えられないだろうか?」


「なぁに、お父さん?」


「円仁様と小野小町は恋仲だった。もしかすると寺崎家で小野小町をお世話していたのかもされない。」


「えッ、何いってるの? お父さん。」


「そうでなかったらあんな日記が有るはず無いじゃないか?」


「まぁ小野小町の日記あるんだからそんな事も考えられるかな?」


「そして二人の間には子供が生まれた。」


「ハッ? お父さん飛躍しすぎ。」


「ある日、奥の院で円仁様は座禅されていた。その姿を見たくて会いたくて小野小町はここまでやって来たが、足を滑らせ落下してしまった。」


「えッ、自殺じゃないの?」


「円仁様はその後、遣唐使として中国に渡りお経や曼荼羅を持ち帰られる。しかし、小野小町を死なせてしまった事はずっと心のキズとして残る。」


「まぁ、心のキズは残るよね。」


「帰国後、円仁様は東日本を周り寺の再建や開山に努める。」


「それで・・・」


「そこで小野小町との事を懺悔していたのではないだろうか? 」


「それが何と関係するの?」


「いいか唯、当時の仏教は女人禁制の戒律がある。それを円仁様の様な方が破られては話しに成らないだろう。」


「あぁナルホド・・・ ん?」


「円仁様の弟子達は忖度してそれを誤魔化す為にあちこちに小野小町の墓を造っていったんだよ。」


「日本のあちこちに小野小町の墓があるのはそう云う事なの? 」


「ハハハ、あくまても俺の妄想だがな・・・」


「なんだか本当の事みたいに思えて来たわ。」


その時イタズラな春風が山の間を吹き抜け私の髪を揺らした。

日は西に傾き、辺りはオレンジ色に輝きだしている。

多分今のココのこの景色は1200年前と変わらないだろう。

本当に円仁様と小野小町は愛し合っていたんだろうか?


「なぁ唯? 」


「何、お父さん? 」


「寺崎家は小野小町のお世話をしていた。もし小野小町に子供が居たとしたら寺崎家でお世話していたはずだ。もちろん小野小町が亡くなった後も・・・ だとすると、俺や唯は小野小町の子孫になるかもしれないぞ? 」


「まさか、そんな事・・・? 」


父が真面目な顔して言うから私は笑ってしまった。


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郵便ポストが血塗られた朱に変わる時(小町物語り) アオヤ @aoyashou

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