これはネタバレになるのだろうか。医者である夫が、病気の妻の看護をしている日記です。でも、淡々とつづられた日記に、愛情が見え隠れしています。そして、日記の最後は……愛の行きつく先はもしも、彼や彼女がいたら、一緒に読んでみるのもありかも。そんな作品です。
妻の看病をする男の日記。日付とその日の出来事が淡々と綴られます。 日記という形態のせいか音は感じられず、文章から見える映像は最初は部屋全体が見えている気がするのに、どんどんと日記の書き手の手元だけしか見えないような感じがしていくのは、日記の文章が短くなる事だけが理由ではない気がします。 短文にこめられた気持ちが、胸に苦しく刺さるような。 ラストの数行は息が詰まるような気持ちになります。
とある夫婦の看病日誌を思わせる入りから、歪みつつも明確で麗しき愛の囁声。ミステリアスな結末も相まって、これぞ正しく愛に溢れた短編だと言えよう。個人的な嗜好を述べるならば、より生死を予感させるフレーズが欲しいかとも思索したが、この話にそのような邪念は相応しくない。本作はそれほどの完成度を誇っている。日記というお題から、このような展開を導き出した作者に喝采を。
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