第34話 VS唯奈②
「な、え……?」
ハッキリ嫌いだと俺が言ったのが信じられないのか唯奈が目を見開いて驚いている。なにをしようとしたのかはわからないが、行き場のない手が空をかすめていた。
「ハッ。なんで驚くんだよ。まさか俺がお前のことを好きだ。なんていうとでも思ったのか?」
「だ、だって……!リカちゃんとかジュリが、そう言って………」
リカ?ジュリ?……あぁ、昼に朝日から聞いた変なことを吹き込んだ子たちか。
「そういえば呼び出されたのは俺からの告白じゃないのかって盛り上がってたらしいな。でもそれがあり得るわけないってさっきまでのやり取りでなんで気づかないんだよ。」
未だ困惑して口をパクパクとさせている唯奈にそんなことがあるわけないとハッキリ否定した。
「第一お前には沢田がいて俺には小春がいる。恋人がいるのに告白するわけないだろうが。」
「そ、そうだけど……でも…もしかしたらって…!!」
「だから、ありえないって言ってるだろ…。はぁ……もう怒りを通り越して呆れしかでてこないな。」
「ま、また馬鹿にして……!!!!」
「うるさい、いちいち癇癪を起こすな。いいか、今日お前を呼び出したのは告白でも何でもない。お前に言っておかなければならないことがあるからだ。」
これ以上きゃんきゃん騒がれても鬱陶しいので睨みつけて黙らせ話を進めていく。
「これは沢田から頼まれたことなんだが、お前が小春にしようとしたことに対して罪を認めさせて二度と同じことをしないように約束させようってな。だが、さっき話してみてわかったが今でも小春が酷い目にあえばいいと思ってるみたいじゃないか。もし今日約束できないなら俺にも考えがあるから素直に認めてもらうぞ。」
さっきの小春に対する態度で一層強くわからせなければいけないと感じた。最悪唯鈴さんには悪いが任せることになるかもしれない。
「そして二つ目。俺たちの関係を、幼馴染という関係を完全に終わらせること。俺は確信した、お前は
「は、はぁ!?いきなりそんなこと言われてはいわかりましたなんていうわけないでしょ!!!いい加減にしなさいよ!!」
建設的に話し合おうとできるだけ優しい声で言おうとしたら遮られてしまった。
なにがいい加減にしろだ、こっちのセリフだわ。
「だからこうして一つ一つ話をしようって時間を作ってるんだろうが。いいから話すぞ、お前に付き合ってたら話が進まないんだよ。」
「なんですって!?」
「お、落ち着けって唯奈!!」
暴れそうになる唯奈を沢田が抑えてくれたので、それを無視して俺は話を進めていく。
「一つ目だがさっき言ったことだ。俺は小春に向けられた悪意をお前がいつか他の人を傷つけるかもしれないということが許せない。いいか、感情的になって周囲を巻き込んだところでお前の望む結果にはならないんだ。お前のくだらない妄想のために周りを巻き込むな。」
「はぁ!?別に今回だって巻き込んでないじゃない!!私が悪いところなんてひとつもないわよ!!!!!それに妄想なんかじゃない!!私と涼は───」
「いいや、お前が悪い。それに今回は沢田が事前に止めてくれたから何も起こっていないだけだ。……というか、今ここに誰がいるのかわかっててそれを言おうとしてるのか?そうやって周りのことを考えずに話そうとするのをやめろって言ってるのがわかってないようだな。なぁ、沢田?」
言おうとしたことを遮り沢田の名前を口にするとようやく自分が何を言おうとしたのか気づいたようだ。
「唯奈……。」
「あ、いや。違うの健司君!!今のは別に恋愛とかじゃなくて幼馴染って言いたくて……違うの!違うから!!」
必死に健司に言い訳をしているが逆に本心ですと言っているようなものだ。
「後先考えないでいるとこうなるんだよ。わかったか?もうあんなことはしないと約束しろ。俺たちだけじゃなく他の人にもだからな。」
俺の声に振り向いた唯奈へ自分の考えの足りなさがこの状況を作ったんだぞと念を押しておく。
「わ、わかった……。もう二度と同じようなことはしません……。」
悔しそうに、申し訳なさそうに返事をした。
さすがに応えたようだ。
「そうか、わかってもらえてよかった。それじゃぁさっさと二つ目にいこうか。俺たちの関係についてだ。」
そう、本題はこれだ。
「俺はお前との幼馴染としての関係を終わらせたい。これについてはあの日屋上でも伝えたはずだ。そして俺はそこで幼馴染としての関係を終わらせたつもりだった。」
「えぇそうね。あの日言われたことは覚えてる。私が悪いことも少しは認めてるけどそれだけで幼馴染をやめるなんて言われて納得なんてするわけがないじゃない!!!」
それだけ、か。
「やっぱりそうか…。じゃぁ俺たちの今までのことを順に辿って再確認しよう。」
「めんどくさ、それに何の意味があるのよ!!」
「意味はある。」
自分で気づかなきゃ、お前も前に進めないんだから。
何か言いたげな唯奈だったが俺の真剣な様子に何も言ってこなかった。
「朝日。俺たちが真実とは違うことを言ったら教えてくれ。」
俺たちの様子をじっと見ていた朝日に声をかけて俺と唯奈の近くまで来てもらう。
「りょーかい。まぁ俺も涼真側だったから唯奈ちゃんの考えはわかんねーけど、昔女の子たちが話してたことなら覚えてるからその辺で言わせてもらうぜ。」
「それでいいよ。少しでも認識のずれを正したいだけだから。」
すーはーと深呼吸をして一歩踏み出す。
顔つきの変わった俺のとった行動に唯奈と沢田がぎょっとしたような表情で驚いている。
僕は唯奈の手を両手で握って言った。
「清算しよう。僕たちが出会って今まで過ごしてきた楽しくて僕にとって残酷な日々を。」
僕は幼馴染に裏切られた。俺はもう自分を偽らない。 お狐丸 @yu_331
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