第34話 VS唯奈①

お久しぶりです。

だいぶ期間が空いてしまいましたがようやく書けるようになってきたのでポツポツと更新していきます~。


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ようやく迎えた放課後。

授業が終わったばかりだというのに小春からメッセージが届いた。


<五十嵐小春:待ってますね。ファイト(猫の絵文字)>


もしかして授業が始まる前から準備していたのだろうか。メッセージを送るためにソワソワしている小春が頭に浮かびふっと笑みがこぼれる。


<ありがとう。待ってて。>


そう小春に返事を送るが嬉しさのあまり今すぐに話を終わらせて小春の元まで行きたくなってしまう。

そんなことができるはずもなく一先ずはこの教室内に人がいなくなるまで待たなければいいけない。


……なぜあのときは屋上で話をしたのに今回は教室にしてしまったのだろうか。

どうも唯奈のことになると思うようにいかないことが多いな。くそが。


まぁ今更そんなことを悔やんでいても仕方ないなとしばらく待つつもりでいたのだが、いつもは放課後に教室で残っているクラスメイト達がせっせこと荷物を整理して教室を後にしていく。

なぜだろうとクラスの様子を見ていると教室の出入り口には見知った二人が早く早くと声をかけているのがわかった。

どうやら朝俺が唯奈に宣言したことで女子は柊木さんが、男子は野田が主導で声をかけて教室を空けてくれようとしていた。


しばらくみていると俺の視線に気づいたのか、柊木さんが照れ臭そうに軽く手を振ってくれる。

俺は彼女に対してありがとう、と感謝しながら手を振り返す。


数えるほど少なくなってきた教室を見てこれならすぐにでもと思ったのだが、いつのまにいなくなったのか、教室には唯奈の姿は見当たらなかった。



「はぁ……。」


「おろ?唯奈ちゃんは?」


溜息をつく俺にトイレから戻ってきたのか朝日が不思議そうに聞いてくる。


「ちょっと目を離したらいなくなってた。」


「ありゃーそれはまた…。」


「クラスメイトが気を利かせて早めに教室出てくれたのにどこ行きやがったんだよ。あいつ…。」


「あ、あはは。これは俺も予想外だわ。」


「よっす。わりぃな、飲み物買ってきたらちと遅れたわ。ほいよ。」


せめて出るなら声かけてくれよと、唯奈に対して不満を漏らしていると手に紙パックのジュースをもった沢田がやってきた。


「おうさんきゅー。別に待ってないから大丈夫だぞ。」


「そかそか、んならよかったわーって、ん?あれ?唯奈は?」


「……どっかいった。」


俺は沢田にもらったジュースを飲みながら不満げに応える。


「あーー………なんかわりぃ。」


「あぁ、いや俺こそ悪いな。別に沢田が悪いわけじゃないから謝る必要はないよ。あぁそうだ───」


沢田も来たことだしちょうどいいかと唯奈が来るまでのあいだで二人には今日話す内容についてもう一度打ち合わせしておくことにした。


そうして待つこと20分。


ガララララ!バンッ!!


3人で駄弁っているとどこか機嫌がよさそうな唯奈が勢いよく教室に入ってきた。かと思えば、この教室に俺以外の人物がいることに気づくや否や険しい表情になり苛立った様子で俺たちの方まで近づいてくる。


「ちょっと!なんで話があるって言ったのに涼以外に菊池君がいるの!?それに健司君も…!どこにもいないと思ったらなんでここにいるのよ!!」


「あぁいや、俺は……」


詰め寄られている沢田を庇うようにして二人の間に入り、なぜこの場所に朝日と沢田がいるのかを説明する。


「まてまて。沢田は無関係じゃないから俺が呼んだんだ。それに朝日は俺が心配だからきているだけだ。」


そういうこと~と先ほどまで3人で話していた席から朝日は立ち上がって俺の半歩後ろほどまでやってくる。


「ごめんな唯奈ちゃん。俺は二人が話すって聞いたからどーーーしても涼真が心配でなー。それに二人のことはなんだかんだ俺が一番知ってるだろうし、今までのことで間違っていることがあればちょっと口を挟ませてもらうけどそこは許してね~。」


「だそうだ。お互い都合のいい記憶はなしだからな。」


「ふんっ。別にそんなのないからいいわよ。」


二人がここにいることにはとりあえず納得してもらえたようなので俺は唯奈になぜ呼び出したのかを話すことにした。





「まずは急に教室に残るよう呼び出して悪かったな。きてくれてありがとう。」


「ふんっ。いいからさっさと話しなさいよ。」


そういいながら頬を赤らめ腕を組むと催促してくる。


「そう焦らすなよ。最近どうだ。沢田とはうまくやってるのか。」


「はぁ??なにそれ……別に普通よ。」


「そうか。それはなによりだ。あんな風に浮気されたがこれでも二人が幸せなら俺はそれでいいと思ってるんだよ。」


「佐伯ぃ…。」


涙ぐみながら俺の言葉に感動しているところ悪いがお前の彼女は『普通』って言ったんだぞ。それでいいのか?


「なによ、そんなことが言いたくて呼び出したの?期待した私がバカみたい。もう帰っていい?」


「別にただの世間話くらい付き合ってくれてもいいだろ?まぁでもそんなに急かすんならとっとと話すか。」


思ってもないことを口にしつつも、どうしても話しがしたいという唯奈のご期待に応えてあげるとするか。


「.........お前最近俺と小春に対してなんか企んでたらしいな?」


「は、はぁ?な、なによそんなの知らないわよ。」


ビクッと肩を震わせるがあくまでもとぼけるつもりのようだ。……それにしてもわかりやすすぎだろ。


「はぁ…とぼけても無駄だ。ほら、こいつらの顔に見覚えはあるだろ?」


俺はそういって2枚の写真を唯奈に見せる。


「っな!!なんで涼がこいつらの写真をもってるのよ!!!」


「なんでってこの場所に沢田がいる理由を考えればわかるんじゃないか?」


「.....ま、まさかっ…!?健司くんが涼に告げ口したの!!?最低!!!あんなに涼のこと馬鹿にしてたのに今更味方するなんて!?」


唯奈は沢田を睨みつけ今すぐにでも掴みかかろうとしているが俺は唯奈の視線を自分の手で遮る。


「そうやってすぐに噛みつくなよ。沢田から話を聞いたのは本当だ。だがな沢田はお前のためを想って俺に教えてくれたんだぞ。」


「はぁ?なにが私を想ってよ。本当に私を想ってるなら涼にそんなこと言う必要ないじゃない!!」


あぁ、昔からそうだ。

俺が何を言っても自分が中心に回っていると思い込んで都合の悪いことがあれば自分じゃない誰かが悪いと喚く。


「いい加減にしろ!まだわからないのか、沢田が来てくれなかったらお前が考えていたことが本当に起こっていたかもしれないんだぞ!!それに自分もどうなってたのか考えなかったのか!?」


「な、なんでそんな怒ってるのよ……。それに私がどうなっていたかなんて涼が助けてくれるんだし何も起こるはずなんてないし……。それに実際には何も起こってないし、起きたとしても私は提案しただけだから関係ないわ!!」


「そうだな、お前の考えでは自分がナンパされているところを俺に助けさせて俺を手籠めにしたあと小春をそいつらに連れ去らせて後は好きに犯させる。そんなことを考えていたんだもんな。」


「ええそうよ。人の幼馴染を勝手にとっとっていった女なんてどうなったっていいじゃない。男に犯してもらえるんだからあの子だって嫌じゃないんじゃないの?ま、失敗したけど。」


「っ!!!?」


「落ち着け涼真!!!!!それはだめだ!!」

唯奈の言ったことに我慢できず動き出した俺の腕を朝日に掴まれる。


どうなってもいいだと?小春があいつらになにかされたとしても人のモノを勝手にとったということにして自業自得だとでもいいたいのか?

小春のことを知らないで好き勝手言いやがって。彼氏がいるのに好きでもない男に抱かれて喜ぶ子なんているわけないだろ。

そんなの考えれば……あぁそうだよ、そうだよな。こいつには自分で考えるということができないんだもんな。


せっかく言葉を選んでやろうと思っていたがもうやめだ。こんな奴に少しでも優しくしようなんて考えた俺がバカだったんだ。


「ふぅ……。悪い朝日。もう大丈夫だ。」


俺がそういうと朝日は俺の手を離し元の位置へと下がっていった。


「あぁそうかよ。お前が言いたいことはよくわかった。それをふまえたうえでお前に言いたいことがあるんだ。」


「そう!涼にわかってもらえてよかった!ふふふ、言いたいことって何かしら♪」


あのときはまだ情があったから言えなかった。

でも今はもうこいつに情なんてない。

あるのはただひとつだけ。


「俺はお前のことが大っ嫌いだ。」

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