色鮮やかな写真たち【KAC202211・日記】
カイ艦長
色鮮やかな日記
毎日欠かさず撮影してきた私の写真。
道端で可憐に咲いている花や、季節を告げる梅や桜、紅葉など。
ここでは毎日なにがしかの花が咲いている。また太陽の昇る頃沈む頃を写してきた。
それを毎日記録して、パソコンで管理していた。
自然が最も美しく見える瞬間を切り出すのが私の趣味といってよい。
趣味が高じて、将来は写真家になろうと思っている。
いつかは誰もが見惚れるような、そんな写真が撮りたかった。
今朝も日が昇る前からデジタル一眼レフカメラを持ち出して、薄ぼんやりとした世界の端々を切り取っていく。
毎日商店街を歩いていると、お店の写真が何枚もたまる。しかし先月撮った写真に写っているお店が、今日は「閉店」を知らせる紙が張ってあり、そして来月には建物が解体されていたり居抜きで他の店舗が入ったりして、街が少しずつ変わっていく。
そのさまを写し取っていくのも、私の趣味のひとつである。
今日はとくに川沿いのスポットに咲く菜の花と満開に咲き誇った桜との色の対比が素晴らしい。ここに朝日が昇ってきて世界が色鮮やかになる絶好のタイミング「ゴールデンアワー」を狙い、橋の上でデジタル一眼レフカメラをセッティングしていく。
望遠レンズに川面の反射を抑える円偏光フィルターをセットし、三脚の上に載せ、ノートパソコンとUSBケーブルで接続し、シャッターリモコンの設定をし、画角を決めていく。これで準備完了だ。
すると鴨の親子が川を泳いでいることに気づいた。
ゴールデンアワーまでは時間があるものの、菜の花と桜と鴨という対比も悪くないなと思い、親鴨に焦点を合わせてシャッターを切った。
すぐにノートパソコンで現像し、色調補正をして手早く保存していく。
スマートフォンが写真の世界を大きく変えた。
コンパクトカメラはすべて淘汰された。すでに二千万を超える画素数を誇るスマートフォンが販売されているからだ。そのため、とくに写真にこだわりがない人は、スマートフォンだけで済ませているのだ。コンパクトカメラは廃れていった。
しかし、写真家を目指すとなれば、一眼レフカメラと援護システムが不可欠で、私のように自然写真を狙っている人ならばノートパソコンとの連携は欠かせない。
こればかりはスマートフォンでは代替不可能であり、いまだ一眼レフカメラに需要があるのもそのためだ。
スマートウォッチを見ると日の出の時間が近づいていた。
先ほどの鴨からピントを変更して、シャッタースピードをいつもの設定に戻しておく。
東の空は橙色に染まっており、もうじき太陽が顔を出す。
「ゴールデンアワー」の到来だ。
ノートパソコンを操作して、シャッター間隔を1分に設定。一分おきに自動的に撮影されるようにした。
軽量のデジタルカメラでスナップ撮影をする。先ほどの鴨の親子を追ってみたり、橋の上にやって来たスズメや鳩、それらを蹴散らすカラスなども写真に収めていく。
そうしているうちに日の出が始まった。
菜の花の黄色、桜のピンク、陽光の橙色が絶妙な配色を見せ、ノートパソコンへ順次写真が転送されてくる。
スナップ撮影の手を止めて、ノートパソコンでの編集に移る。
ISO感度やシャッタースピード、露出をまったく同じ設定にしていても、太陽の光によって写真にかける補正はまちまちだ。
慣れた手つきで一枚手早く補正を行なっては保存し、次の一枚にとりかかる。
その中で、一枚、とても気になる写真が撮れていた。
陽光の映り込みによって写真全体が橙色に傾いており、一見すると失敗作品だが、こういうときこそ補正の腕前が試される。
色温度を変更し、明るさを調整すると、現れたのは太陽の橙色が最も盛んで、菜の花の黄色、桜のピンクが際立った一枚に仕上がった。
これが今日の一番かな?
そう思いながら、太陽が完全に顔を出すまで写真を撮り、ノートパソコンで補正をし続けた。
結局、その日一番の作品は先ほどの一枚となった。
太陽が昇りきった後は、いったん色合いが薄れていき、太陽が頂点に差しかかる頃にまた色鮮やかな時間がやって来る。
私は急いでノートパソコンからUSBケーブルを外して、三脚からデジタル一眼レフカメラを外してカメラバッグをしまっていく。三脚を畳み終わるとじきに大学の友人が迎えに来る頃合いとなった。
カメラバッグに三脚を固定してから担ぐと、ノートパソコンとスナップ用デジタル一眼レフカメラをショルダーバッグに入れて彼を待った。
やがて迎えに来た彼の車に乗り込み、自宅に寄って機材を置いた後、ショルダーバッグのみを持って大学へと急いだ。
車に乗っている間も、パソコンで補正して保存していく。
それが終わった頃に、今日の写真をグループ化してその日のコメントを書いていく。
これが私にとっての日記となっていく。
色鮮やかな写真たち【KAC202211・日記】 カイ艦長 @sstmix
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