Undulatusー日記ー

MACK

文房具屋にて

 

 あたしは人生で失敗をしても、何度でもやり直しはできると思うの。


 あらあら、見ず知らずのおばあちゃんの妄言なんて聞いてられないなんて顔をしないで欲しいわ。長く生きて来たからこそ得られた知見は、聞いて損はないのだから。


 チャンスは何度でも訪れるのに、一度のミスでもうダメだと思い込んで見逃してしまえば、そりゃあやり直しができないように思ってしまうわよねぇ。

 でも前提が違うのよ。


 何度でも、やり直せる。

 一度の失敗で挫けない方が、人生はお得だと思うわ。むしろ波乱万丈な方が面白いかもしれないわよ?

 

 人生はあなたを主人公にした壮大な物語とも言うわね。誰とも被る事のないあなただけの物語。人類全員がもし、その日あった出来事を綴りはじめたら、日々膨大な量の物語が生まれて行く事になるかしら。何億ものオリジナルストーリーが毎日出来上がっていくのって、すごい事よね。今日はどんな物語が生まれているのかと思うとワクワクしない?

 哀しみも、楽しさも、恋も、別れも、怒りも、喜びも。どれほどの感情が溢れているのかしらね。


 だから日記をつける事はいいなと思ったの。あなたにもぜひお薦めしたいわ。


 え? 毎日そんなに書く事がないですって? そんなはずないわよ。

 

 打ち寄せる波は平坦でワンパターンに見えても、同じ形では現れないわよ。空の雲だって、二度と同じ形を作らないんだから。単調だから今日も昨日と変わらないなんて思うなんて、本当に間違いよ。それは、同じ出来事しか見えてないのかもしれないわね。わざわざ辛い事だけを選んで見るような過ごし方は良くないわ。


 季節は日々移ろい、同じ景色だって二度とないのだもの。日記をつけるために昨日と違う事探しをするのも楽しいかもよ? タンポポが咲きそうなその時に、たまたま郵便配達の赤いバイクが通りすぎる絵的に素晴らしいタイミングが、毎日あって?

 すべては瞬間瞬間で異なっていくの。昨日と今日、今日と明日は全く別の日なんだから!


 そうそう、日記って普通は年末に買って、新年から書き始めるものよね。だから「日記買ふ」は冬の季語。

 そうなると一月一日からはじめないといけないって、思っちゃうでしょう? でもね、今は四月始まりの日記帳もあるんだから! 年度始まりだなんてきりがよく、日記をはじめるのに最適じゃない。


 三日坊主だから、始めてもすぐに途絶えちゃう?


 ふふ、大丈夫。十月始まりの日記帳もあるのよ! 日付を自分で記入するタイプなら、今日からだって始められるのだから。

 ほら、日記ですら途中で挫折しても、仕切り直して一から始めるチャンスが一年の間に何度もあるじゃない。

 

 だからあたしは、挫折をしても何度でもやり直しはできるって思うのよ。あなたも日々を記録してごらんなさいな。何度も立ち直った記録でいっぱいの英雄の物語が出来上がるかも知れないわ。


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