4427文字という短いお話の中に、ときめきと切なさと悲しみと希望が詰まっています。
この短さで読者の感情を上下に揺さぶるなんて、天才なのでは!?
アングレカムはランの仲間で、白が美しいお花です。
開花して一ヶ月以上咲く種もあるそうですが、それでも花の寿命は限りある時間。
その短い時間の中で精一杯美しく咲きます。
この物語の主人公たちも、運命という時間の中で、出会って、笑って、恋をして、泣いて、想いあって、願う。
その願いの美しさに、ホロリと感動の涙が。
結末は、読者の想像に委ねられています。
不思議な終わり方。どのような解釈をするかは読み手次第。
どうであれ、彼と彼女が過ごしたあの時間は色褪せることなく、本の中で輝き続けることでしょう。
人生が儚く脆いものだという現実。
儚いからこそ今のこの瞬間を大切に生きることがいかに重要かという真実。
そして、人生は儚くとも縁や愛といった絆は永きに渡って心の支えとなる。
五千文字にも満たない物語に、そんな人生の悲しさや美しさが詰まっています。
難解な表現や、読む方が理解を拒むような理屈っぽさは微塵もありません。
物語は、ただ優しく読者の心へ染み渡るように、慈愛に満ちた言葉を届けてくれます。
物語の構成も秀逸です。
恋愛モノがお好きな方はもちろん、老若男女多くの方にお楽しみいただける内容です。
隙間時間でも楽しめる短編ですので、ぜひご覧ください。