【エッセイ】進少年が夢見た新婚の風景

進藤 進

ニュービーズって、何?

唐突ですが。


洗濯洗剤。

何をお使いですか?


小学生の頃。

進少年には、お気に入りの洗剤CMがありました。


今でも。

「ガンコな汚れが落ちる」的なのが多いけど。


そのCMは。


抜けるような青空で。

白い洗濯物がヒラヒラと。


大きなシーツを広げ、白い歯をこぼす。

美しい女優さん。


そのシーンが大好きでした。


特に。


くびれた細い腰の。

エプロンの結び目が斜め上。


※※※※※※※※※※※※※


「そこかいっ・・・!」

男達のヤジが飛びます。


時は流れ。

進少年は大学一年生。


秋の学園祭の打上コンパ。

二次会の居酒屋。


ウチのクラスというか、学年は。

男しか、いませんでした。


学園祭は他の学部との交流もかねて。

その日、一緒のクラスは女子の方が多く。


みんな、テンション。

高い、高い・・・。(^o^)


「何で、小学生が腰のくびれなんだよっ・・・?」

「チョウチョ結びが斜め上って、細けぇっ・・・。」


普段の男臭さからのギャップか。

皆さん、饒舌です。


クスクスと笑ってくれる女子達。


(あぁ・・・えぇなあ・・・。)

幸せを噛みしめる私。


おバカな話を。

みんなが聞いてくれます。


最初は「母ちゃんのプリン」の話で。

盛り上がってくれました。


そのあと。

クラスメートの島君が。


「進藤って・・・。」

「変な奴でさあっ・・・。」


と、始めて。

「ニュービーズ、なんだよね?」


「何、それえ?」

女の子が食いつきました。


そこで始まった。

私、「進少年の憧れの新婚風景」の話。


いつもながら。

長い前振りで、スミマセン。


・・・で。

話は続きます。


「場所は・・・。」

「フンフン・・・。」


「新居、一軒家の庭。」

情景が浮かぶように、ゆっくり、丁寧に語ります。


「ポカポカとした、いい天気。」

「縁側で、ボクが眺めています。」


「タバコ・・・セブンスター(細かい)を吸って。」

「ぼんやりと、煙が縦に流れていくの・・・。」


今から思うと、聞いてくれていたのが不思議です。


「庭には、洗濯物・・・。」

「青い空に白いシャツが、ひらひらと・・・。」


そこで、冒頭のCMの話。


「何で、小学生が腰のくびれなんだよっ・・・?」

「チョウチョ結びが斜め上って、細けぇっ・・・。」


一通りのヤジの後。

チョッと嬉しいのと、酔いも手伝って。


続けていきました。

ノリノリで。


「ボクの将来の妻が・・・。」

「そこで、干しているの・・・。」


「背伸びなんかして・・・。」

「サンダルから、かかとを伸ばして・・・さ。」


「やっぱ、細けぇっー・・。」

「ギャハハハァー・・・。」


みんなも酔っぱらってるので。

何、言っても、笑ってくれます。


「白いうなじに・・・。」

「ほつれ毛が・・・。」


「キャーッ・・・。」

女の子もすれてない(多分?)ので、うけてくれます。


「二本、三本・・・。」

「ボクは、数えながら見てるの・・・。」


「そこで・・・。」

ためます。


「つぶやくの・・・。」

更に、ためます。


「俺の・・・・女房って・・・。」

更に、さらに・・・。


「けっこう・・・・・。」

ヤジも、いつのまにか、やんでます。


「イイ・・・。」

「おんな・・・・。」


「だなぁ・・・と・・・.。」


【何じゃ、そらぁ・・・!】


終わったと同時に、大ブーイング。

それでも、笑いは渦巻いてました。


喧噪が静まるのを待って。

続けます。


「そこに・・・。」

さすがに、みんな、真剣には聞いてませんが。


少し、ざわざわと。

喧噪の名残が残っていいます。


それでも。

構わず、続ける僕。


「妻の足元に・・・。」

でも、みんなの目は笑ってます。


「洗剤、ニュービーズの箱が・・・・。」

「あるのでした・・・。」


一瞬の静寂の後。

笑いと、どよめきが。


【ギャーハハハハハ・・・・・】

【しょーも、なー・・・・。】


これ、実話です。

あの時の感動は忘れられません。


一生で一番、受けた飲み会でした。


それから、しばらく。

キャンパスで私をみかけると。


女の子達が。

「ニュービーズ君」と言ってくれました。


あぁ、あの頃に戻りたい・・・。(^o^)


※※※※※※※※※※※※※


「・・・で?」

浴衣姿の妻が聞きます。


新婚旅行の時。

箱根に二泊三日。


仕事が忙しかったので。

とりあえずの短い旅行です。


「どう・・・・なの?」

大きな瞳が、潤んでます。


「わたし・・・・のぉ。」

お風呂上りの良い匂いがします。


「エプロン・・・すが・・・た・・・。」

少し、頬をそめて。


(しょ、しょれわぁ・・・。)


「がルル〜・・・!」

「キャッー・・・!」


その時。

少年が、オオカミに変身してぇ・・・。


ハイッ、カットォー・・・・。o(≧▽≦)o


すみません。

すべりましたぁ。m(_ _)m


≪進藤、話、なげぇー・・・。≫


皆様の心の声が聞こえます。


それにしても・・・。


ああ、あの頃にもどりたい。


・・・・です。


・・・ね?(^o^)

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