ミッドナイト🌙ハイトクッキング
空本 青大
ミッドナイト🌙ハイトクッキング
ぐぐぅ~~~・・
床で寝っ転がってマンガを読んでいると、お腹から虫の鳴き声が聞こえた。
掛け時計を見ると針が12時を回っている。
「晩飯食ってからもう4時間、なんか買いに行くか・・。おい
「ん?どうした
俺の声に反応し椅子に座りながら、俺のほうへ向く礼二。
左手に【のり塩味ポテトチップス】と書かれた袋を持ち、右手で中からポテチを取り出し口に運んでいた。
「おまえ何食べてんだよ!それ確かこの間の飲みで俺が買って持ってきた、お菓子の残りじゃねーか!」
「ああそうだ。残念だがこいつはもう俺の
「てめぇ!俺の
のり塩ポテチの取り合いを繰り広げること数分後、疲れと飽きを感じた俺達は一旦小休止を取ることに。
「もうコンビニに買いに行って来いよ、ここから徒歩15分ぐらいにあるぞ」
「絶妙に遠いな・・。礼二のアパートの周りなんもないよな、最寄り駅まで30分とかだし不便すぎるぞ」
「家賃の安さを対価に勢いで決めたからな。あとなんもないことはない、裏に墓地があるぞ」
「えぇ・・。おまえ怖くないの?」
「ぶっちゃけ怖い。慎也、週6~7で泊まりに来てくれない?」
「ほとんど同棲じゃねーか!物件決め下手くそか!」
はぁっと呆れ声が漏れた俺は不意に窓を見る。
ポツポツと水滴が窓中に付いていた。
「雨が降ってきやがった・・。自転車で買いに行こうと思ったけどあきらめるか・・。」
「墓地に行ってお供え物残ってないか見に行くか?」
「幽霊の恨みを買いそうだからいいです」
会話の途中で椅子から立ち上がった礼二は台所の方へと向かう。
冷蔵庫の扉を開き中を確認すると部屋へと戻ってきた。
「喜べ慎也。のり塩の礼にお兄ちゃんが良いもん作ったる!」
「のり塩あげたつもりはないんだけど・・。おまえって自炊してたっけ?」
「そりゃあもう履歴書に載せられるレベルよ。俺の料理食べたら胃袋掴ませられるどころかクラッシュしちゃうよ?」
「1ミリも信用に値しないけど、腹減ったしなんでもいいや。何作るの?」
「それじゃあ今日のスタメン達を紹介しよう」
□食材
・冷凍うどん
・卵
・のり塩
・あんぱん
■調味料
・麺つゆ
・バター(チューブタイプ)
「うどん茹でて麺つゆかけてぶっかけうどんにするのか?深夜だし胃に優しくていいな」
「バッカヤロ☆そんな日和ったもん作るか!まあ見とけ!」
コンロでお湯を沸かし、うどんを鍋へと投入。
茹でている間に丼に卵を溶きほぐしておく。
2~3分ほどでザルにあげ、水でしめることなくそのまま卵入りの丼に移す。
即座に礼二はチューブ型のバターを絞り、湯気が立つうどんの上に乗せたのだ。
「え⁉うどんにバター⁉」
「そうだ!さ・ら・に、これもだ!」
すると礼二は半分ほど残っていたのり塩味のポテチの袋を叩いて、
中身を粉々にし始める。
そして細かくなったポテチをザザッとうどんの上へと盛る。
「乗せちゃうの⁉」
「要は揚げ玉みたいなもんよ」
仕上げに麺つゆをかけササっと混ぜ合わせ、礼二は丼を俺の前へと差し出す。
「旨そうだけど見るからにこってりしてて罪悪感が・・」
「それがいいんでしょーが!あともう一品いくぞ!」
まな板を用意した礼二はあんパンを乗せ、垂直ではなく水平に真っ二つにする。
むき出しになったあんこの真ん中にバターをこんもりと乗せ、トースターの中へとセット。
そのまま3分ほど焼くと、香ばしいあんパンとバターの香りが台所に広がる。
「はい完成!」
「おおう・・これまた重そうな・・」
「いいから食卓に並べるぞぉ!!」
いそいそと料理を運ぶ礼二を手伝いながら、俺達は部屋の真ん中にあるローテーブルの上に料理を置いた。
「え~こちら本日のメイン【釜玉バターのり塩うどん】!そしてデザートの【焼きバターあんパン】でございます!」
俺は目の前に並べられた料理のビジュアルと香りに思わずごくりと唾をのんでしまう。
だが、掛け時計の針は1時を過ぎていた。
「こんな時間に食べちゃっていいのかな?不安だ・・」
「むしろこんな時間だからだろ!その背徳感が極上の味を生み出すのだ、ククク・・」
怪しげな笑みを浮かべながら、礼二は手でほら早くと勧めてきた。
空腹に負けた俺は意を決してうどんを勢いよくかきこんだ。
「ずるずるずる・・。バターと醤油の風味がベストマッチ!ポテチの食感と風味も相まって美味い!」
「でしょー?☆」
夢中で食べる俺の姿をしたり顔で見つめる礼二。
コップに注がれたレモン風味の炭酸ジュースで喉を潤しながら、一気に完食した。
「これもいってみ?キマルぜ?」
「う・・」
礼二が焼きバターあんパンを手に持ち、俺の目の前でチラつかせる。
いともたやすく誘惑に乗った俺は、パンをひったくるように受け取りかぶりつく。
「あんこのドシンとした甘みにバターのまろやかな風味・・脳が溶ける・・」
「ようこそ
「悔しい・・でも美味しい・・」
すっかり空になった食器を前にご満悦の礼二。
「これからもあらゆる背徳飯を作ってやっからまた泊まりに来い!というかさっきも言ったけど裏手にあるお墓が気になってしょうがないからマジでお願いします!」
「おまえまじ引っ越せ」
こうして禁断の味の囚われてしまった俺は、
この日以降も礼二の家に自主的に通い詰めてしまうことになるのであった・・
背徳の味おそるべし・・。
ミッドナイト🌙ハイトクッキング 空本 青大 @Soramoto_Aohiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます