海とコップ

夕凪夕

まりんとあの子

 あの子はあの部屋で、いつもひとりぼっち。

ここに来たあの日から、部屋の外に出られない。

まりんたちは仲良しで、毎日お話をするんだけど、

あの子は海に行きたいらしい。


「じゃあ、まりんが海を見せてあげる!」


太陽にあてるときらきらコップ。

にじ色に輝いてきれいなの。

このコップに小さな海を作ってあの子に見せてあげるんだ。


 せっせと海へ向かうまりん、丘に沼地に森を抜け、

やっとたどり着いた海。何度も来たことあるからなれっこだ。

白くてきれいな砂に、ひんやり冷たい海の水。

それを少しすくって、小さい海の完成。

だけどあの子はいつもさみしい思いをしているから、

私がお友達を作ってあげるの。


 手でお皿を作って、泳いでいるお魚を1匹。

コップでゆうがに泳いでる。なんてすてきなんだろう。

森に沼地に丘を抜け、やっとおうちに帰ってきました。


 私はあの子にこう言うの。


「ほら、きみと同じ仲間ができたよ」


けれど大変。ずっと家を空けちゃったから。


あの子はさみしくて死んじゃったの。


この子はこの部屋でひとりぼっち。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

海とコップ 夕凪夕 @yunagi_yu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ