第2話
中学校3年生。初夏。
受験に対して真剣な者は雰囲気が変わっていく。
俺は、勉強はしたくなかった。それは、嫌いだからに他ならない。
自己肯定感が低いからか「将来、肉体労働しかさせてもらえなくなっちゃうよ!」という親からの警告もそこまで響かず、焦るような事も無かった。
そういえば、春に来た転校生はもう馴染めたのだろうか。
答えが分かりきった事を、俺は頭の中で考える。
視線を廊下側の最前列に送ると、机に広げた数学のワークの上に突っ伏す褐色の少女を見る事が出来た。休み時間だと言うのに、話し相手もおらず、悲しいこって…
まぁでも…
「はやく話しかけりゃ良いのに…」
転校生に視線を送っているのは俺だけじゃない。
俺の2つ隣に座る男子、斎藤。
整った顔立ちをしているしサッカー部にも所属しているいわゆる陽キャだ。
でも、俺は彼が嫌いではない。いや、もちろん他の陽キャ達も嫌いではないんだが…
なんというか彼は「中学生といったらコレ!」っというような分かりやすい思春期な性格をしているので見ていて楽しいのだ。
午前の授業も終わり、飯の時間になった。
流行りの曲を流す校内放送に耳を傾けながら弁当をつつく。
ふと、気になって斎藤の方を見てみた。
期末テストに向けて勉強を教えてくれとせがまれる斎藤。微妙な顔をしていたが、押しに負けたのか承諾したようだ。
そうだよな、斎藤は断れないよな。自分のクラスカーストにはすごく敏感だからな。
斎藤はイケメン、高身長、優しい、と、良い部分しか無いので何言っても嫌われないとは思うのだが、本人はそうは思わないらしい。
友達は居ても親友は居ないか…
斎藤が何か自己主張したり、突っ込んだことを言った所は見た事がない。
斎藤の分析をしていると、校内放送から知っている曲名が飛び出した。割とマイナーな深夜アニメのオープニング楽曲だ…
曲が流れ始める。知らない曲だと興味を無くす者、アニメの曲特有の厨二病感漂う歌詞を馬鹿にする者、反応はせず静かに楽しむ俺。そして…
「「あ、『ぜんつか』の曲だ」」
俺の隣に座る(飯の時間だから今は対面だが)女子。向と斎藤が同時に声を出す。
他の奴らにその声は聞こえなかったらしいが、2人は目を見合わせ「お前も!?」みたいな顔をしている。
この学校にアニメ好きは少ないし、みんな隠してるからなぁ…それにしても、異世界転生系ファンタジーアニメ『全員、俺の使い魔になれ!』から絆が生まれようとは、俺も思わなんだ。
みんなが飯を食い終わり始め、校庭に出る少数派以外は、教室で駄弁ったり勉強を始めた。
斎藤は、いつもつるんでいるグループが校庭に行ったのを見送ると、おずおずと向に話しかけに来た。
想像通りのオタク×2の会話だ。横から聞く分には面白くもなんとも無い。まぁ、当人達は楽しいのだろうから良いが。
しかし、向は割とミーハーな様子で、斎藤が少し困った様な顔をしていたのが気になった。
ところで、俺は彼らの会話に入らない。アニメ好きがバレたくないという訳じゃあない。
ただ、前述した通り、彼らの会話はつまらない。だから興味の無いフリをする。それだけだ。
んなことより…
昼の校内放送。例の曲で盛り上がっていたのは、何もこの場にいる3人だけではない…
廊下側の最前列。褐色の少女は何かをノートに書き込んでいた。
昔、いじめられていた女の子と、それを助けた幼馴染の男の子と何もしなかった俺。 プラチナ床ペロ魔王 @cocoyasi1415
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