夜道のふたり

結騎 了

#365日ショートショート 084

 なあ、どう思う? あの電灯。点いたり消えたりしてみっともないよな。店主がしっかり電球を変えてないから、ああなるんだよ。あ~あ、もったいない。ああいう店からは物を買いたくないね。程度が知れる。しかし、真夜中の散歩ってのも乙なもんだよなあ。こう、世界が止まってるっていうかさ。ほら、見て。前も後ろも、右も左も。俺ら以外には誰もいないんだ。猫だって見当たらない。この静寂。ヒソヒソ声だって響き渡りそうな、独特の雰囲気。これが真夜中の良さだよな、うん、ほんとそう思う。あ、ところでさ。ハブラシって買い置きあった? え、無いのか。じゃあこの散歩の帰りに買って帰ろうぜ。今使ってるやつ、ほら、同棲はじめた時に買ったやつじゃん。もうかなり古くなってきてるんだよね。コンビニあったかなぁ。こうも暗いと、コンビニの光は目立つはずなんだけど、見当たらない。ってことはもうちょっと歩いてみようかなあ。ふたりでこっちの道路きたことなかったもんね。街とは反対側。うける。しかし、お前も散歩好きだったとは知らなかったよ。そういうことは早く言ってよね。ほらさ、カップルの価値観が合うのって、大事じゃん。うん、すっごく大事だよな。やっぱ価値観なんだよ。金とか、体の相性とか、そんなものより価値観の一致が一番だよな。些細なことでも、結構でかいって言うぜ。だからさ、こうやって趣味の散歩を一緒にできて、俺今すっげぇ嬉し

「そうね。やっぱり、私たち別れましょうか」

 え、なに言ってるんだよ。唐突すぎるってお前。俺たち価値観ばっちりの最強カップルだって今話してばっかりじゃん。ちょっとちょっとお前

「私もね、真夜中の静寂が好き。。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜道のふたり 結騎 了 @slinky_dog_s11

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ