かけら

水玉猫

真夜中の空のかけら

 よく知られていることだが、黒猫はで出来ている。

 つまり、真夜中に空が落ちてきて、それが黒猫になるというわけだ。

 もちろん、すべての黒猫が真夜中の空から生まれたわけではない。毛皮がたまたま黒かっただけの猫もいる。白猫や三毛猫、虎猫や斑猫ぶちねこと同じで、毛皮の色や模様が違うだけの猫だ。


 真夜中のかけらの黒猫と、毛皮が黒いだけの黒猫の見分け方は簡単だ。

 猫に聞いてみればいい。YesかNoで答えるはずだ。しかし、猫語が堪能でなければならないという条件がある。もし、猫語に精通していなければ、YesもNoも「にゃーん」としか聞こえないだろう。

 

 重要なのは、真夜中のかけらの黒猫は外に出してはいけないという点だ。なぜなら、夜空に戻ってしまうからだ。 

 一旦夜空に戻ってしまえば、猫は二度と帰ってこない。二度と会うこともない。

 いくら夜空を見上げて探しても、見付かりっこない。空は果てしなく広いのだ。ましてや呼び声など、届くはずもない。


 だから、真夜中のかけらの黒猫を外に出してはいけない。そして、それは、他の猫たちにもいえることだ。


「夜空が、砂漠を歩いていた家猫の先祖リビアヤマネコに一目惚れし、その結果、真夜中のかけらが落ちてきて黒猫に姿を変えた」という学説が有力である以上、ミックスが進んでいると考えるべきだろう。多かれ少なかれ、どの猫にも真夜中の血が入っているのだ。


 いくら猫が「No、わたしは真夜中のかけらの猫ではない」と答えたとしても、努努ゆめゆめ油断してはならない。本猫ほんにんが気が付いていない場合も多いのだ。


 ほんのわずかでも真夜中が混じっていれば、56,562%の確率で空の一部になるそうだ。

 それは、純血種の真夜中のかけら以外の猫にとっては、不本意かつ不幸極まりないことだ。


(中略)


 結論としては、どんな猫も外に出してはいけない。猫というものは、家の中で下僕にかしずかれて暮らす存在だからだ。



—— 『猫の下僕のための手帖 3月号』222ページより抜粋




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