真夜中の怪異/巨人伝説研究家<角田六郎>の事件簿3
坂崎文明
真夜中の巨人
「三級遺物【猫の手】、確かに回収、致しました」
三級遺物【猫の手】は武蔵野美術女子大の学生寮、
天井裏から桐の木箱に入った猫の手のミイラが発見された。
この【猫の手】自体はポルターガイスト的な
問題はこの【猫の手】が巨人の眠る古墳から借り出されて、何らかの
その一件は
その後始末のために
長い黒髪、切れ長の瞳、華奢な身体と低身長、こりゃ、
単なる興味本位だったのだが、デートに愛車フィアットを貸し出して、少なからずデートのアドバイスをした身としては結果がどうなったかは気になるところだ。
私生活ではあるが、助手としても上司の動向は掴んでおきたい。
それから、単に食事を
「角田所長は忙しくて、ちょっと来れなくて。
軽く探りを入れてみる。
「実は
どうやら、誰もがそう思うらしい。
ちょっと安心した。
「では、
どうやら、話をまとめると、武蔵野美術女子大学の同級生の
毎晩ではないのだが、何となく気になるし、段々と何かの遺跡の奥の方に連れていかれてるようだという。
「なるほど、それはちょっとヤバい傾向だな」
「あ、
「あ、早めに終わったんで、
と、下手な言い訳をいう上司である。
もちろん、それを口実に
「うちの上司も来たことだし、では、その
†
「オラオラ、皆殺しだ! そんな所に隠れてもムダだ! ヒャッハー!」
と
別に彼女は殺し屋ではない。
プレイヤー同士が殺し合うサバイバルゲームなので、ちょっと不適切な言動が出てしまうだけだ。
明るいブロンド色のツインテールにした髪、小さな頭に仲間のプレイヤーと通話するするためのインカムをつけていた。
ニーハイソックスに短パンと『侍魂』のロゴの入ったTシャツを着ていた。
細身、小顔、肌は色黒で角田さん好みじゃない女子大生かもしれない。
「たまにだけど、巨人が眠ってる古墳の夢を見るんです。4歳ぐらいの女の子が石でできたトンネルみたいな所で手を引いてくれて、私は奥へ奥へと連れて行かれるんです」
性格が豹変するのはゲームの中だけらしい。
つぶらな瞳がかわいい。
「その4歳ぐらいの女の子というのが気になるな。巨人の眠る古墳に迷い込んで死んだ
その魂を開放するのも
「別にその夢で困ってる訳ではないんですが、段々、遺跡の奥の方に連れて行かれるのが不安なんです。ちょっと、気味悪くて」
これを放置しておくと、良くないこと起きそうだった。
「それでですね。巨人伝説研究所では巨人に関わる
†
真夜中、深夜零時。
小さな寝息が聴こえる。
脳波プロジェクターのセンサーが頭を
そこから伸びた配線がキューブ型の脳波解析機に接続されていた。
モニターには
脳波解析で夢を映像化したものだ。
周囲は細長い石室のようなような所で、天井は低く、身長156センチの
淡い緑色の光が石室の壁を照らしていた。
何かの蛍光植物、動物かもしれない。
しばらく、その映像が続いていたが、突然、視野が開けた。
巨大な空間が広がっていた。
天井は三十メートルはあるだろう。
横幅、奥行きも同じぐらいある。
淡い緑色の光が壁の岩肌を照らしていて、ぼんやりと中が見て取れる。
そこには巨大な巨人が王座のようなものに座ってる像があった。
巨人信仰の遺跡だと
実は
笛を使った特殊な音波で巨人をある程度、制御する技術も持っていたという。
「…お兄ちゃん、」
4歳ほどの少女が振り返っていた。
お下げ髪で白地に金魚の模様の入った
「まさか――、
そういえば、
その後、その古墳で妹を必死に探したののだが、ふたりが迷い込んだ石室は二度と現れなかった。
大規模な捜索隊が方々を探したが、彼女は結局、見つからず仕舞いだという。
それがこの少女なのか。
「お兄ちゃん…」
少女の目に涙がにじんでいた。
ほっぺたも紅くなっていた。
その時、唐突に映像が途切れた。
「
そして、低い声で泣き始めた。
真夜中の怪異/巨人伝説研究家<角田六郎>の事件簿3 坂崎文明 @s_f
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