マヨネーズは中に入れる? 外に出す? ドピュッ!

!~よたみてい書

そのツキはとても綺麗

 青髪女性は小首を傾げながら言葉を投げかけた。


「ん、マヨって中に直接入れるよね?」


 青髪女性は二十歳程の姿をしていて、百六十センチメートルくらいの身長をしている。目尻はやや垂れていて、赤い瞳を目に宿し、ふちが黒い眼鏡を装着していた。前髪は目の上まで垂らし、うなじで後ろ髪を綺麗に整えている。そして、薄手の白い衣服を身に着けていて、胸部に小さな膨らみを一対作り上げていた。


 白髪女性も首をひねりながら肩をすくめた。


「えっ、外にマヨでしょー?」


 白髪女性も二十歳くらいの容姿をしていて、身長は百五十八センチメートル程。青い瞳をしていて、目尻が少し吊り上がっている。前髪は眉まで伸ばしていて、両側頭部の少し上に小さな髪の球体を作って後ろ髪をまとめていた。それから、前髪に鳥のマスコットキャラクターのヘアピンで髪を止めている。また、生地が薄い黒い衣装を身にまとい、大きな盛り上がりが一対胸部についていた。


 二人の女性が、五平方メートル程の小さな部屋の中で討論していた。


 そして、青髪女性は顔を引きつらせながら会話を続ける。


「焼きそばは? 麺の上にブッシャー! ってかけるよね?」


「ブッシャー! って、なんか汚いなぁ。あたしはマヨ皿に入れるよ」


 青髪女性は目を見開いてたじろぐ。


「マヨ皿ってなに!? 焼きそばの話なんだけど!」


「え、マヨを小皿に入れて、そこに焼きそばの麺をつけて食べるんだよ? ……あれ?」


「うーん……」


 眉尻を下げながら頬を掻き続ける青髪女性。


「それってさ、つけ麺じゃない?」


 白髪女性は眉尻を上げて、目を閉じながら腕を組む。


「じゃあ、つけ焼きそばという新メニューを、たった今誕生させた!」


 青髪女性は顔を歪めさせながら体をよろめかせた。




 青髪女性はスマートフォンヌを持ち、液晶画面に視線を向けた。


「なんかお腹空いたなぁって思ったら、十二時回ってるじゃない」


 白髪女性は目を見開きながらうろたえる。


「えっ、もうそんなに時間たったの!?」


「あはは、そうだねぇ」


 窓に駆け寄り、額に手をかざしながら空を見上げる白髪女性。


「わぁ、太陽が闇に飲まれてる!?」


 青髪女性は目を細めながら小さなため息をつく。


「……上段じょうだんはそれくらいにしといてね」


 頭を撫でながらはにかむ白髪女性。


「えへへ、下段げだんだよ。代わりに、


 青髪女性は二本指を口に持っていく動作を数回繰り返していく。


「する?」


 明るい笑顔を浮かべて大きく頷く白髪女性。


「うん!」


 青髪女性は冷蔵庫に歩いていき、扉を開けて中を覗いた。

 

「あー……」


「どったの(どうしたの)?」


 頬を掻きながら冷蔵庫の中を見つめ続ける青髪女性。


「うーん……食材が無い」


 白髪女性は微笑みながら小首を傾げる。


「え、買いに行けばよくない?」


「こんな時間だよ?」


「こんな時に輝くのがコソビニだよ、真夜中だけに」


 青髪女性は勢いよく冷蔵庫の扉を閉めると、重低音が部屋に響いていく。そして、人差し指を白髪女性に向ける。


「うまいっ!」


 白髪女性も青髪女性を指さし返す。


「その言葉はこれから作る料理を食べたときに言うっ!」


「はいっ!」


「ところで、どっちが買いに行く?」


 腕を組みながら眉をひそめる白髪女性。


「うーん……じゃんけんで決めない?」


「だよね!」


 青髪女性と白髪女性は互いの顔を見つめた。そして、握り拳で軽く前方の宙を叩く。


「初手はグー」


「初手はパー」


 青髪女性は目を見開いて白白女性を凝視する。


「えっ、なにそれ!?」


「えっ、新じゃんけんだけど」


 口を尖らせながら半眼を白髪女性に向ける青髪女性。


「初めて聞いたんだけど」


「そうかな? とりあえず、勝ったから、あたしは家に残るね」


「まぁ、別にいいけど……。じゃあ、いってくるね」


「あーい、いってらっさい」


 青髪女性はスマートフォンヌをポケットに入れて、玄関へと向かった。




 月明りと街灯が光源勝負している夜道を、青髪女性が白い袋を手に引っさげながら歩いていた。


 そして、青髪女性は空を見上げながら歩み続ける。


()


 スマートフォンヌを取り出し、備わっているカメラレンズを月に向けた。


(いたっ!)


 しかしその時、青髪女性はゆるやかに地面に倒れ込む。


 袋の中から麺が飛び出し、マヨネーズの容器も道に放り出される。また、スマートフォンヌも道を転がっていき、排水溝の穴に吸い込まれて行った。


(背中が痛い……なに?)


 青髪女性は後ろに視線を向け、走って遠ざかっていく何者かの背中を眺める。


(え……?)


 それから、青髪女性は背中に手を伸ばし、体を触っていく。


(うん? ……あ、なんかれてる)


 立ち上がろうと試みるけど、再び地面に体を預けてしまう。


(あれ、あれっ!? 痛くて立ち上がれないんだけど!? えっ!?)


 眉尻を下げながら悲しそうな表情を作った。


(うぅ……これ、ダメなやつかも。迎えに来てもらわないと)


 目を見開きながら慌て、周囲に視線を巡らせる。


(……スマートフォンヌは……あれっ、どこ!?)


 首を忙しく動かして周辺の様子を確かめていく。


(あれ、さっき近くに落としたよね!? なんで無くなってるの! これじゃ助けを呼べな――あれ、わたし、もしかして)


 青髪女性はしばらくの間、体を静止させ続けた。そして、目に涙を浮かべながらゆっくり口を開けて声を漏らす。


「だれかぁ……」


 青髪女性は薄暗闇に包まれた街道に、弱弱よわよわしい声を響かせていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マヨネーズは中に入れる? 外に出す? ドピュッ! !~よたみてい書 @kaitemitayo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ