第3話 砂漠の遺跡 入口

先生は自分の感覚に絶対の自信を持っている。


例えば、聴覚。

常人では聞き取れないような微細な音も見逃さない。


それに方向感覚。

絶対方向感覚とでもいうのだろうか。東西南北を方位磁石と同等の正確さで言い当てることが出来る。

しかも磁気が乱れている場所でさえ正確に方角を言い当てるのだから、方位磁石いらずだ。


これら以外のも先生の感覚は人より優れている部分が多い。


そんな自分の感覚に絶対の信用を置いている先生だからこそ、今回のように感覚を頼りにして不用意に、何の躊躇もなく遺跡に手を出し、何かを作動させてしまうのだ。


「どうするんですか⁉」


「今、明らかに嫌な音がしましたよ!」


「正しい開け方があって、その通りに開けないとトラップが作動する仕組みのドアとかだったらどうするつもりだったんですか!?」


遺跡までの距離についての文句などとうに忘れて、先生の不用心さに対してつい口を出してしまった。


「その時はその時だよ。」


「現状の何も手掛かりのない状況では扉の開け方など分からなかっただろうからね。どのみちこうしていたさ。」


先生はさも当然のように笑いながら言った。


先生の助手として行動していくなかで分かってきたことがいくつかある。


その内の一つに、先生が考えを巡らせた結果こういう行動に出たのだというニュアンスで話した時には何も考えずに行動してしまったことが多い。

今回はその典型的な例だろう。


先生は腐っても一流の探索家である。

少しでも危険性があると分かれば必ず同伴している者と相談をしてから次の行動を決める。

今回はそれがなかったということは、遺跡を触りながら調べていたら気付かずにスイッチか何かを押してしまったのだろう。


おそらく今後ろから脅かしたら先生の心臓は破裂するだろう。


「あの石はこの扉とは関係なかったんですか?」


少し意地悪をしてみる。


おそらく先生は石の存在など忘れていたことだろう。


とっさの言い訳で手元には何もないと言ったが、実際にはこの石があるのだ。


「なかった。」

先生がこちらを見てくれない。


「えっ!でもこの石、前より少し光が強くなってませんか?」


「なってない」


一向にこちらを向いてくれない。

どうやら白を切るつもりらしい。


僕自身も扉の周囲を調査してみたが、どうやらこの石と関係がありそうな箇所はないようだ。

扉は大きな光沢のある一枚岩をわざと荒く削り、棺桶の形に整えて作られたようだ。

それに文字も彫られてはいない。


偶然だとは思うが、今回は先生の行動が正解だったと認めてこれ以上の言及はやめておこう。


「さすがは先生ですね!」

「あの短時間で石と扉は関係がないこと、そして扉の開け方まで見つけてしまうとは」


そういうと先生は振り向きながら満足げに

「そうだろ∼」

と笑いながら言っていた。


最近、先生の扱い方が上手くなった気がする。

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ミライさんはミイラ取り 9×9 クク @99_kuku

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