第15話 決着!!そして……
「こ、こ、こ、これは……チャンピオン、勇者に向かっての宣戦布告だッ!!」
「「うぉおおおおおおおおおお!!!!」」
…………どゆこと?
い、いやあのギガンドイルとかいう岩のやつを数秒で木っ端微塵にした。うん。それで、俺が新しいチャンピョンになる。これは、理解できる。
これ、どうしたほうがいいんだろ……。
リージュと戦うなんて嫌だわ。とりあえず、なんとかしてこの場を切り抜けないといけないな。
よし!
「申し訳ない! 俺は、ここでこのスターマインド・インフィニテット・ダーク・リージュにチャンピオンの称号を譲ろうと思う! 俺が戦う理由は、監禁されてる仲間のため。チャンピオンであったギガンドイルのことを倒したのなら、もう俺は戦う理由なんてない!!」
「「ぶーぶー!! ぶーぶー!!」」
魔物たちが好きそうな勇者を演じてみたけど、違ったか……。
戦いを辞退することがときないんなら、もう選択肢は一つしかなくなっちゃう。けど、そんなことしたら仲間割れみたいになっちゃう。
「はっはっはっ!! まさか勇者くん、われと戦うことを躊躇っているのか? そうなのか?? ふふふ……この賢者であり、天才発明家であるこのスターマインド・インフィニテット・ダーク・リージュは一切の躊躇いはないぞ!!!!」
いやお前は一応俺の仲間だろ。
なんで一切躊躇わずに殺し合いができるとか、胸を張って豪語しできるんたよ。
「おぉ〜と!! ギガンドイルのことを一瞬で木っ端微塵にしたチャンピオン勇者に向かって、恐れ知らずの挑戦者が挑発してしまったッ!! 一体どうなるんだ!?!?」
「「リージュ! リージュ! リージュ!」」
さっきまで、渚に向かっていた黄色い歓声がすべてリージュにいった。
あいつ……。
もう、この広い闘技場の中で一人も勇者もとい渚のことを応援している声は聞こえてこない。
渚は自分のファンがとられたことに、嫉妬のような怒りを覚えた。
「……いいじゃねぇか。辞退なんてするか!! かかってこい、この変人マッドサイエンティスト!! 正面から叩き潰して、その捻くれた心を去勢してやる!!」
「ふっふっふっ……。やれるものなら、やってみろ!!」
「きたぁああああああ!! 両者、戦いに了承したことを確認したということで、今ここから……新たなチャンピオンの座をかけた戦いの始まりだぁあああああああ!!!!」
カーン
開始のゴングが鳴った。
あれ? 今回は、握手とかそういうのないの?
そんときに、軽くどういう感じに戦うのか打ち合わせしたかったんだけど。
「ふっふっふっ……われは、ただの天才発明家ではないということを証明してやる!!」
ポケットから、フリスビーのような円盤を取り出した。
いやそれ、小さいぽっけにどうやって入ってたんだよ。あきらかにサイズ感が数倍違うんだけど。
「とりゃあ!!」
掛け声同時にフリスビーを投げてきた!
しゅぴんしゅぴんしゅぴんしゅぴん!!
「えっと……これって、どういうやつなのかな?」
うん。普通に、飛んできたフリスビーを取れた。
別段、めちゃくちゃ重い! とか、くっ……力が吸い取られていく!? とか言う感じのすごすご機能はついておらず、今のところ普通のフリスビー。
「な、な、な、なんで!? それは物体に当たったと同時に起爆するやつなのに……」
は? 起爆?
起爆っていうと、爆発だよな?
こいつ、まじで俺に勝とうとしてるじゃん。
ていうか体に当たって爆発したら、普通死ぬと思うんだけど。何考えてんだこいつ。
「おぉ〜と!! さすが、チャンピオン勇者!! 挑戦者の渾身の攻撃をなんなく受止めたッ! さすがの自信満々だった挑戦者もこの結果には、しかめっ面を隠せません」
さっきのギガンドイルとかいうのは一瞬で倒したからわからなかったけど、この戦いってずっとこうやって生で実況を聞きながらしないといけないのか?
てか、なんだよしかめっ面って。
まぁたしかに、変な顔をしてるけども。
なんかリージュは戦いたいらしいけど、今はそんな面倒なことしたくない。
「リージュ……次で俺は負けるふりするから、なんか適当に派手で死なない攻撃をしてくれ」
受け入れてくれないかもしれないけど、ここにいる観客たちに聞こえないように小声で要求した。
リージュのしかめっ面はより一層濃くなった。
どういうことなんだろうか?
「……わかった」
あ、あれ?
結構あっさり受け入れてくれた。
こいつってもしかして、あのエロフとは違って話せばわかる系の変人なのか?
「なら、今さっき私が作った一番の発明品の威力を勇者くんに試してみる。大丈夫。死なないことはないから…………………………多分」
おい。なんだ最後の保険の言葉は。
「まぁいいよ。さぁ、俺はほかの人間より多少は頑丈だからどんと来い」
俺がそう言って両腕を上げると、リージュは服の下からなにやら棒のようなものを取り出した。棒、と言っても本当に棒。木でできているような見た目の棒。
長さは30cmくらいなので、剣として振り回すのだとしたら少し物足りない。
なんか、見た目が魔法の杖に似てる。
魔法の杖なんて映画でしか見たことないんだけど。
「はぁぁ〜…………」
なにやら、力を溜め込むようなそんな息を吐き始めた。右手に持ってる杖の先端を円を描くように回している。
この棒が発明品で、その力を使うためにはなにか条件を満たさないといけないだとかそういうのだろうか?
「「挑戦者! 挑戦者! 挑戦者!」」
「「勇者! 勇者! 勇者!」」
渚がリージュの攻撃が来るのを待っていると、なにか始まるのだと勘ずいた観客たちは、掛け声を始めた。その中には、さっき完全になくなっていた渚のことを応援する声も。
うんうん。黄色い歓声はこうじゃなきゃね。
「勇者くん!」
俺はひとりでに納得し、ひとりでに頷いていると緊迫感のあるリージュの声が耳に入ってきた。
慌ててリージュのことを見る。
俺はそれを見て、バンドゥという魔王軍幹部を目の前にしたときと同じくらい絶句して鳥肌が立った。
「ふふふ……はっはっはっ!! どうだい? この発明品は!? こんなにも、すごいものを作り上げることができるんだぞ!!」
リージュが今までにないほど嬉しそうに口角をあげ、見上げる先にあるものは大きな球体。
水のような透明な液体と、炎のような真っ赤に燃えたぎっている謎の物体が混ざり合わさって球体となっているように見える。
…………え?
これを、俺の体で受けて負けたフリしないといけないの? こんなの当たったら死ぬよ?
「「やれ! やれ! やれ! やれ!」」
ちょっとちょっとちょっとちょっと!
なに観客、リージュのこと煽ってんだよ。
こんなやばいの見たら俺が死ぬかもしれないってわかるだろ。
「「いけッ! いけッ! いけッ! いけッ!」」
「いっちゃうよぉ〜!!!!」
って、なんでリージュもノリノリなんだよ。
いつものマッドサイエンティストはどこいった。
「なぁ、リージュ。もう少し小さくすることって……」
「はぁああああ!!」
リージュは渚の言葉など、耳に入っていないのか勢いのまま球体を放った!
「あ、え、お、あ?」
な、なんか遅くない!?
もっとずばぁ〜ん! みたいな感じで来ると思ったんだけど、空気中をゆらゆら近づいてきている。
「ふはっはっはっ!! 勇者くんよ!! 君は今日が最期になるだろうろ……。はっはっはっ!!!!」
「そんなこと、なるわけねぇだろ」
こいつまじでなんなんだよ。
さっき俺が小声で話した、加減をしてわざと負けるふりをする作戦、全く理解してねぇじゃん。
てか今思ったんだけどこのマッドサイエンティスト、同調圧力に弱すぎない?
と、渚はそんなことをダラダラと思っていたらいつの前にか目の前にまで球体は近づいていた。
やば!?
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」
球体を両手で受止めた!
「「うぉおおおおおおおおお!!!!」」
「やりました!! またもや、現チャンピオンである勇者が挑戦者の攻撃を受け止めました!!」
痛いというか、熱い。
なんなのこれ。まじもんの炎じゃん!
「どりぁあああああああああ!!!!!!」
「な、な、な、何ということだ!? あの、勇者は巨大な禍々しい球体を空へと軌道を変更させたッ!!」
「すごー!!」
「くっかぁ〜!?!?」
観客たちは、渚のしたことを見て目をあんぐりと開け驚いていたのだがその本人である渚は全く別のことを考えていた。
あの球体がすごい、ではなく黄色い歓声最高! でもない。
あのマッドサイエンティスト、まじでやばいやつ作ったんじゃね? である。
棒の先から、球体が出てきたように見えたのであの棒になにか発明品としてのカラクリがあると予想できる。だがもちろん、発明だとか一切したことのない渚には理解できない。
だけど今回のものは、以前作っていたドラゴンを原材料とした謎の板よりもやばいんだということはわかる。あれもあれですごいけど、今の球体は間違ったところに放ったらその場所すべてが爆発して消し去ってしまうほどのもの。
本当に理解できないのは、発明品などではなくそれを作ったリージュがノリノリで俺に向かって放ってきたことである。
正直あいつには、マッドサイエンティストという肩書に加えてサイコパスと言う肩書も進呈してもいいほとだ。
「現チャンピオンの勇者!! さっき球体の軌道を変更してから、一切動いていないぞ……。これはまさかまさかの展開があるとでも言うのか!?」
「「勇者!! 勇者!! 勇者!!」」
正直今、何食わぬ顔で体を動かして今日一番の黄色い歓声を受け止めたいけどそんなかことしたら、こんな大チャンス無駄にしてしまう。
「……ぐはッ!? おのれ、おのれ!! 俺はま、まだ戦え……」
バタン
反応が顔に出ちゃうかもしれなかったから、顔から思いっきり地面に倒れ込んだ。
「「…………」」
し〜ん
俺が倒れてから早、10秒。
観客たちからの反応が一切聞こえてこない。
あ、あれ? もしかしてわざと負けるふりをしてるのが、バレちゃってんのかな?
演技に自信あったんだけど、何も反応がないと心配になっちゃう。
「わ、われが勇者を倒したぞぉ〜!」
よし。ナイスフォローリージュ。
あとは誰かが最初のきっかけを作れば、連鎖していくはず……。
「すげぇ……まじじゃねぇか」
「すご……」
観客席の方から、少しずつざわめきが連鎖していってる。
「な、な、な、な、なにぃ〜!? まだ全然状況が理解できてないが……おそらく、勇者はあの挑戦者が放った球体の軌道を変更するのは成功したのだがそこで、力尽きたのか!?!?」
実況の動揺してる声が闘技場に響き渡っている。
「だがしかぁ〜し! 事実として言えることは、挑戦者がチャンピオンでもある勇者のことを負かしたということ。それすなわち……彼女こそが、新たなるチャンピオンだッ!!」
「「チャンピオン! チャンピオン! チャンピオン! チャンピオン!」」
俺が負けたことになり、リージュが新たなチャンピオンになってから色々あった。
主に俺が廃棄物として魔物の餌になりかけたり、リージュに生きていることを忘れ去られて助けが一切来なかったりと……。
うん。もう、忘れよう。
って、まぁ本当に色々あって今なんか酒くさいリージュと一緒に、未だ監禁されているであろう仲間を探しに迷宮の中を走り回っていた。
「ゆうらくん! ほんらうに、あろへんだいえろふたりがかんりんさえていうのか?」
飲みすぎてまともに滑舌回ってないじゃん。
大体だけど多分、「勇者くん! 本当にあの変態エルフたちが監禁されているのか?」という具合に話してるつもりだと思う。
そんなことを思っていたら目的の場所についた。
「あぁ……俺は、あいつらが監禁されている映像を見たからな。監禁されてるのにゆるい映像だったけど、あれは完全に監禁されてた。だから俺たちは今、すべての親玉である魔王軍幹部、バンドゥの部屋の前に来ている。そうだろう?」
なぜ、目の前にある大きな扉の部屋がバンドゥのものかわかったというと……大きく看板があったからだ!
正直、こんなわかりやすく道案内する看板があっていいものかと思うのだが、そんな魔物のこと勇者である俺には関係のないこと。
「マッドサイエンティスト……。この先にまっているのは死かそれとも絶望。それでも、ついてきてくれるかる」
「やら。われ、そんなこわいところいかなぁ〜い」
「ちょちょちょ、ちょっと。ごめんごめん。カッコつけたくて誇張して言っただけだから。俺、一度バンドゥとかいうやつにあったことあるけど大したことなくて骨でも投げたら、従順に持ってきそうな犬野郎だったから」
「ほへぇ〜。ほね、とってきてくれるりょ!? それなら、われそいつにおすわりっておしえこむ!!」
ちょっとたとえが違かったきがするけどま、いっか。
今はそんなことよりも……。
「よし、行くぞ!」
ガチャ
渚は、自身の体のゆうに数倍ものさがある扉を開けた!
扉の先にいたのは……。
「おい。この扉、見た目より結構薄いから外の声ってまる聞こえなんだよ」
怖い顔のバンドゥだった。
自重を知らない勇者御一行〜仲間になった女三人、癖強すぎだろ〜 でずな @Dezuna
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。自重を知らない勇者御一行〜仲間になった女三人、癖強すぎだろ〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます